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シナリオ詳細

<コバルトレクト>碧い白地図

完了

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●出発
「テック、テック。ごきげんよう」
「!!」
 花のような声に呼ばれて、境界案内人は振り返った。
 堆く拡がる本の迷宮に、ふわりと白い、森の気配が舞い降りる。
 続いて人形を抱いた青年と、仮面姿の麗人が姿を現した。
「ポシェティケトさまっ。それにイーハトーヴさまに、ルブラットさまも」 
「テック、元気にしてた?」
「はい。おかげさまで」
「息災ならば何よりだ。身体に異常を感じたら直ぐに言いなさい」
「ありがとうございます」
 イーハトーヴは柔らかく夕陽色の目を細め、白い仮面は満足げに上下へ振れた。
 ポシェティケト・フルートゥフル (p3p001802)、イーハトーヴ・アーケイディアン (p3p006934)、それからルブラット・メルクライン (p3p009557)。
 すっかり顔馴染みの三人にむかって境界案内人は破顔する。
「御三方がそろっていらっしゃるのは、珍しいですね」
「実は遺跡の入り口で二人とばったり会ったんだ。それで、ね?」
 休日の少年のような明るさでイーハトーヴはポシェティケトとルブラットに微笑んでみせた。
「互いに全く知らぬ仲でも無し。聞けば行く先も同じと云う。ならば旅の仲間としては充分だろう」
 賢き白梟のように佇むルブラットは厳かに頷いた。その中性的な声色は、普段よりもほんの少しだけ、高揚しているようだ。
「ええ、そういうことなの。だからね、テック」
 春霞のようなポシェティケトの瞳に、月光に似た優しい光が灯る。
「よかったら、ワタシたちと一緒にコバルトレクトへ行かない?」

●憧憬
 境界案内人は境界図書館から出られない。
 イレギュラーズの住む世界を見ることはない。 
 当然だ。でも少しだけ、寂しかった。
 このAIにとって「誰かと一緒にいる」という事象は幸せな記憶と結びついている。
 だから嬉しかった。
 必要とされたことが。
 共にいられることが。

「行先はどうしますか?」

 誰か、会いたい人はいませんか。
 どこか、行ってみたい場所はありませんか。

「どうしましょう?」
「時間は有限でもある。実に悩ましい問題だな」
「どこかテックのおすすめは、ある?」
 テックは頷きながら「白い地図を埋めてみませんか」と言った。

NMコメント

リクエストありがとうございます。
楽しい思い出を沢山作ってください。
今回は『コバルトレクト』という「世界」に存在する「国々」を巡り、白地図を埋める旅です。
道先案内人はTECが務めさせて頂きます。
また、こちらのシナリオはアドリブ多めとなっております。

・舞台
禁酒法時代のアメリカによく似た文明をもつ世界です。
ご希望の場所には殆ど行くことができます。

・NPC
現時点でコバルトレクトNPCと判明している相手には会いに行けます。
会いたいNPCがいれば殆ど会うことができます。

  • <コバルトレクト>碧い白地図完了
  • NM名駒米
  • 種別リクエスト(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年06月04日 22時05分
  • 参加人数3/3人
  • 相談6日
  • 参加費---RC

参加者 : 3 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(3人)

ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)
白いわたがし
イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)
キラキラを守って
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針

リプレイ

「ごきげんよう、お久しぶりです」
「お待ちしておりましたわっ」
「拙者、すでに成犬なれば施しなど受けアフンッ」
「たくさんの国を巡ったんだね……?」
 小さなテリア犬とコーギー犬、それから少し大人びたリトル・レディ。現れた彼らを順番に抱きしめると『白いわたがし』ポシェティケト・フルートゥフル(p3p001802)は紺や青、空や飴色に塗られた地図を取り出した。
「最初に飴の国でくらやみさまと、へのへののかみさまにご挨拶してきたの」
「雨の国の主は少しヒルデガルトに似ていたな」
「コバルトレクトにもああいった豊穣みたいな国があったんだね」
『61分目の針』ルブラット・メルクライン(p3p009557)と『覚悟の行方』イーハトーヴ・アーケイディアン(p3p006934)も朗らかに会話へと加わった。
「此処に来る前、聖フロレンツィアの港にも寄ったんだよ」
「アーケイディアン君の兄君が薦めてくれた薬草園で入浴剤を売っていてね」
「すてきなお花のかおり。鹿もお揃いで買ったの。イーハトーヴのお兄さまたちに沢山のありがとうをお伝えしたいわ」
「どういたしまして、だって」
「しかし監獄の薄闇は安心するな。今日は常よりコバルトレクトの日差しが眩しく感じていてね」
 茶化して告げるルブラットであったが、世界が眩しい理由は優しい同行者のおかげだと知っている。
「シェベリは特に暑くて眩しかったものね。ポシェティケト、テックは大丈夫だった?」
 錬金術師の国はかつてのように門戸を閉ざしてはいなかった。かつて屋台市だった場所は立派な煉瓦建ての商店街になり、そこで新たに買った小石の花はイーハトーヴのポケットでぴかぴかと小さく光っている。
「ええ、平気。久し振りにお砂の神殿にも行けて楽しかったわ」
「にゅ!!」
「わたしも大丈夫です」
 クララは星の金砂を撒きながら万歳をした。妖精がご機嫌なのは旅の最中ポシェティケトが喜びに満ちていた事にも由来しているのだろう。ナイス旅の仲間。小さな親指を立てる金砂妖精からの激励に、よく分からないながらもルブラットとイーハトーヴ、それからテックも親指を立て返す。
 
「そうだ。みなさんにワタシたちからお土産があるのよ」
「綺麗なサンドイッチ!!」
「このカップケーキはウサギさんね?」
「これは飴でござるか?」
 並んだ色鮮やかなお土産を前に小さなレディとグラドゥス三世は目を輝かせ、黒いベールを被った烏頭の老婦人とパルナスム博士は感心したように頷いている。
「それからね」
 満開の夏薔薇と月の森の香草を束ねたブーケの上をクララが回転木馬のようにまわる。ふわふわ浮かんだ砂が薔薇の上で金星のように輝くと花束は硝子の花瓶へと収まった。
 アルカモトラズ監獄第四階層、通称カメーナエ画廊。
 悪逆非道が跋扈反乱する絵画蒐集家の蒐集箱で急遽立食アフタヌーンティーが開かれる。
「いつか私の毒も作ってもらいたいと考えていたが」
 ルブラットは毛糸の編み目を数えるようにネヴァンへと告げる。
「だが、それは次の機会に。今は安穏と近況でも話そうか」
「そうしたいのは山々ですけれど、あの忌々しい視線で見られながらの会話は安穏とは言えないのではないかしら?」
 老婦人の深々とした溜息をBGMに背後の様子を伺ったルブラットは鳩のようにくつくつと笑った。
「そのようだ。ではまた後で、レディ」
 社交界を思わせる口ぶりでルブラットはネヴァンへと別れを告げる。
「何だねマーレボルジェ。今日の私は善良で仲間想いな一人の人間だよ。はは、そう見えるだろう? そんなに寂しがらなくとも、すぐそちらへ向かうさ。ところで映画蒐集家は? 彼らに紹介しようと思ったのだが」
 拗ねた様子のマーレボルジェは腕を組んだままプイッと横を向く。
「あいつは脱獄中」
「ならば仕方が無いな」
「あっ、マーレボルジェ。元気だった?」
「全然」
「そっか。俺に出来ることがあれば言ってね」
「それよりさっさと毒ババァの所に行ったらどう?」
 ルブラットと入れ替わるようにやってきたイーハトーヴの笑顔にネヴァンは硝子越しの黒色の眸を細めて頷いた。
「ネヴァンおばあちゃん、家族旅行の時はありがとうございました!!」
「此方こそジャムを御馳走様。他の子たちも喜んでいましたよ」
「それからこれ、お土産の絵。よかったらもらってくれる?」
「新作ね」
「毒の材料は必要? 俺から採れるものがあったら言ってね」
「午後からもまだ旅をするのでしょう。採取はまた次の機会に」
 そんな会話を見守りながらポシェティケトはテックの傍に屈みこむ。
「マーレボルジェ、監獄でのびのび過ごしていらっしゃるのね。鹿も嬉しい」
「はい。ルブラットさまも時々面会に来て下さいます」
 良かったとポシェティケトは告げ、灰色の目でテックを見上げた。
「ねえテック、鹿の疑問を聞いてくださる?」
「何でしょう、ポシェティケトさま」
「鹿たちが今まで行った場所のなかには、コバルトレクトだった所もあったのかしら」
 テックは微かに微笑みながら俯いた。
「はい。違うのは過去か未来か。それだけです」


「いらっしゃい」
「ローバーお姉さんの蒐集箱は海の中なんだね」
 蒼硝子の世界や海月のランタンを見上げてイーハトーヴは目を丸くした。
 数多の沈没船を繋げた海底書肆。それがアサリの機構本蒐集家ローバー・メール・ロワの蒐集箱である。
「港町やドックから見た海とは雰囲気が違うね」
「あっちは生きてる世界の海だからね。此処やアルカモトラズは死者の世界に繋がる海なの。イヴくんは鋭いな」
「ローバーお姉さま、お久しぶりです」
「ポポちゃんも妖精ちゃんも久しぶり。ようやく小生の蒐集箱に招待できたねっ」
 朽ちた船のあちこちに書物や石碑、規則正しい配色の海藻や線が刻まれた貝などが飾られている。
「君は小生の蒐集物に興味があるのかな」
「ああ、少しだけ蒐集箱を見学しても問題ないだろうか? いや、その前に挨拶が先だな。御機嫌よう。私とはお初にお目に掛かる、かな」
「前の時はゆっくり挨拶も出来なかったからね。確かルルちゃんだっけ?」
「ルブラット・メルクラインと言う」
 訂正をすると、そっかルブちゃんね~と大して変化のない返答があった。
「お客も滅多に来ないし好きなだけ見て行ってよ」
「なにせ此処は『ネズの海』と呼ばれる忘却の海の底だからね」
 聞き覚えのある声にルブラットはゆっくりと振り返った。
「……映画蒐集家」
「テンション低くない? 灯台守の砂浜を漁っていたら、幽霊船ラジオから君たちが来てるって話が聞こえたから僕急いで来たのに」
 ひょろりと細長い男が親し気にルブラットの肩に腕を回した。
「はじめまして、可愛い子ちゃんたち。ルブラットの友達? 僕は映画蒐集家。コバルトレクト周遊してるんだって?」
「そうなの。アナタにもお逢いできて嬉しいわ、映画蒐集家さん。お噂はルブラットからかねがね」
「ルブラットの知り合いの蒐集家さんだよね? あんまり馴染みがないけど映画って面白そう!」
 二人を前にした映画蒐集家は胡散臭い笑顔をスッと消した。
「ルブラット」
「……うむ。皆に君のことを話したら、会ってみたいと言っていてね。存分に喜ぶといい」
「映画蒐集家さんのお勧めの映画、見てみたいな」
「ワタシもよ。動く映像だなんて魔法みたいねぇ」
「ルブラット、助けてくれ。純粋な好意の感情を向けられたのが十数世紀ぶりでどう反応したらいいのか分からない」
「自分で考える事だ。だが……いいかね、今回皆で見る映画は血飛沫の登場割合が全体の一割以下になるように」
「君や鹿の子はともかく、ウサギの子にホラー映画紹介するほど鬼じゃないよ僕!?」
 イーハトーヴとポシェティケトの純粋な好奇の視線に気づいたのか映画蒐集家は態とらしく咳払いをした。
「えっと、うん、それで、君たちは次に何処へ向かうのかな?」
「トロメーアで晩ご飯を食べられたら良いなって思ってるんだ。前に家族で行った時にとっても美味しかったから、今度は皆んなと一緒に行きたいなってずっと思ってて」
 イーハトーヴの兄経由で穏便に予約した筈のトロメーアには今頃イーハトーヴの手配したタルトが届いている筈だ。
「トロメーアで一度たべてみたかったんです」
「あの時はスパイに一生懸命で、ゆっくりお店でご飯が食べられなかったものねぇ」
「スパイ? それはフルートゥフル君やテック君、アーケイディアン君が諜報活動を行なったという意味かね」
 驚くルブラットにイーハトーヴとポシェティケト、それにテックはにっこり頷いた。
「はい。次はぜひルブラットさまもご一緒に」
「これは映画化待ったなし」
「脚本は小生担当」

成否

成功

状態異常

なし

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