PandoraPartyProject

シナリオ詳細

【魔国サイカ】魔女王陛下のティーパーティー

完了

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●序章

 世界はひとつではない、というのは、混沌世界やライブノベル、境界図書館についてご存知の皆さんなら周知の事実であろう。
 無限の異世界があり、異世界によっては、そこに『魔王』と呼ばれる存在がいる。
 つまりは、『魔王』も無限に存在する、ということ。
 今回の舞台――魔国サイカの魔王、いや正確には女性なので『魔女王』か。
 彼女は他の魔王と区別するため、『渇愛の魔女王』と呼ばれている。
 その通り名の由来は、のちほど境界案内人の水鏡に説明を丸投げするとして、『渇愛の魔女王』ノルン=ニュクスは、水鏡透にコンタクトを取った。
 別にその世界に異変が起きているわけでも、魔女王に危機が迫っているわけでもない。

「わえはイレギュラーズというものに興味がある。わえの城に招いてお茶会でもどうじゃ? 別に悪いようにはせんし、獲って食ったりはせんから、なぁ? 今後、お世話になるやもしれんから、お近づきになっておきたいのじゃ」

「……それは、今後そちらに『何か』が起こるという予言と受け取っていいのか?」

「そうなるかもしれんという話じゃ、そんなに警戒するな。言うて、わえの『魔国』も、わえの『結界』があるから安全を保証されている、というだけの話。万が一のために、布石は打っておきたい」

「……わかった。だが、俺はあくまで『案内人』。こういう世界がある、と案内するだけの存在だ。イレギュラーズが実際に来るかどうかまでは責任を持たないからな」

「く、ふ、ふ。分かっておる。イレギュラーズとやらは、丁重におもてなししなければ、なぁ? 水鏡もたまにはこちらに来ぬか? 美男子は歓迎するぞ? 美男美女、美少女、美少年は国の宝じゃからなぁ?」

「遠慮しておく。お前の『結界』が効かないとはいえ、お前の国は居心地が悪い。『不自然』だからな」

「イケズじゃのう。まあ、よい。イレギュラーズ、どのようなものか。楽しみじゃのう。楽しみじゃのう。く、ふ、ふ! 趣向を凝らしたティーパーティーを、魔女王の威厳にかけて催さねば!」

 ――本の世界の住人を「友人」「隣人」とみなす水鏡も、今回ばかりは珍しく渋っている。
 彼は魔女王ノルン=ニュクスが苦手だった。それに、今回の依頼はなんだか嫌な予感がする。
 なにか良くないことが始まる『序章』のように思えてならないのだ。
 それは、物語の世界に親しんできた、かつての図書館の司書、そして境界案内人としての勘が告げているものであった。

●魔女王陛下のティーパーティー

「この境界図書館に来ている者なら既に知っていることだろうが、異世界は無限に存在する。それこそ、まだこの図書館に所蔵されていない世界もあるだろう」

 水鏡は『ネイバーランド』と表題された一冊の本を手に取る。

「今回の世界は、俺達の世界の隣にある異世界――『ネイバーランド』の話だ。ああ、ネバーランドの間違いではない、ネイバーランド、だ。『魔国サイカ』という魔族の住む国を核としている異世界でな。この世界を詳しく説明すると込み入った話になるし、今回はサイカにしか用はないから、とにかくお前たちが向かう先には魔族がいる、と考えるだけでいい」

 とはいえ、魔女王が歓迎している以上、魔族もイレギュラーズには友好的である。
 その魔族たちがこぞってイレギュラーズを歓迎し、お茶会を開きたい、と言っているらしい。

「魔国サイカを治めているのは、『渇愛の魔女王』ノルン=ニュクス。なぜ『渇愛』なのか、だと? あの女は自分の国に呪いにも近い結界を張っているんだ。結界内に入った者は、どんな生物であれ、あの女を好きになる、とかいう。まあ、異世界から来た者には効かないようだが」

 つまり、イレギュラーズにも境界案内人にも、その結界は無効だ。

「俺はあの国があまり好きじゃない。みんながみんな同じものを愛するなんて『不自然』だからだ。だが、俺は案内人。ひとまず形だけは招待状を渡さなければならない。招待に応じるかどうかは、お前が決めてくれ」

 水鏡は、あなたに魔国サイカのティーパーティーへの招待状を手渡すのであった。

NMコメント

●ご挨拶
 はじめましての方ははじめまして、ご存知の方はこんにちは。NMの永久保セツナです。
 今回は異世界『ネイバーランド』の核となっている、魔族たちの暮らす国『サイカ』を中心としたお話です。
 このラリーシナリオは三章構成の予定です。
 採用人数に制限は設けませんが、プレイングの内容あるいはタイミングによっては採用されない場合もあります。
 NMがキリがいいと思ったタイミングで節を区切るため、一節ごとに複数人あるいは一人のプレイングが採用される場合があります。

●世界観
 あなたの世界の隣にある異世界『ネイバーランド』が舞台です。
 イメージとしては西洋風RPGに近いです。
 天使が治める『義国ジャスティー』と魔族(悪魔)が治める『魔国サイカ』が世界を二分に分かち、にらみ合いを続けています。
 人間(ヒューマン)はジャスティーかサイカのどちらかに住み、天使あるいは悪魔と共存しています。
 今回、イレギュラーズは『魔国サイカ』側から招待を受けることになります。
 魔女王ノルン=ニュクスは純粋にお茶会を開きたいようですが、なんだか不穏な気配もするような……?

●一章の目標
 魔女王ノルン=ニュクスの城の中で開催されるティーパーティーに参加して、お茶を楽しみましょう。
 紅茶やお菓子、料理など、一通りのものは揃っているようです。
 お客人の好みに合わせて、緑茶やせんべい、烏龍茶や中華まんなど異世界(和風や中華風)の食べ物も取り寄せてあるとか。
 あとは魔女王陛下とお茶会をしながらご歓談ください。

●詳細設定
・魔女王ノルン=ニュクス
 魔国サイカの女王。
 姿は若く美しい女性だが、何百年生きているのか、本人も途中で数えるのをやめた。
 義国ジャスティーに覚えのない罪を着せられ、にらみ合いを続けている。
 攻め込まれないよう、対策として「国の領土に入った生物は魔女王に好意を抱き、戦意を喪失させる」大結界を張っている(ただし、異世界から来た者――イレギュラーズや境界案内人には効果はないようだ)。
 それゆえに、『渇愛の魔女王』と呼ばれている。
 実際、美男美女、美少女、美少年が大好物で、ハーレムを築いているとかなんとか。
 好きなものは紅茶とマカロン。

・魔国サイカ
 魔族の女王『魔女王ノルン=ニュクス』が築いた国。
 魔族の他に、魔女王に賛同したヒューマンや、魔女王の結界に入った影響で魔女王に忠誠を誓うようになった敵国の兵士などが暮らしている。
 混沌世界の住人にとっては、この国の暮らしは馴染みやすいだろう。

●サンプルプレイング
 魔王は聞いたことあるけど、魔女王ってのもいるのか……世界は広いな……。
 ひとまず、招待されたからには挨拶しなきゃだよな。
「この度は、我々イレギュラーズをご招待いただき、誠にありがとうございます」……ってとこか。
 それにしても、温かいお茶飲んでせんべいをかじってると、安心感あるよなあ……。ティーパーティーって感じじゃないけどさ。

  • 【魔国サイカ】魔女王陛下のティーパーティー完了
  • NM名永久保セツナ
  • 種別ラリー(LN)
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2023年06月03日 21時30分
  • 章数3章
  • 総採用数12人
  • 参加費50RC

第3章

第3章 第1節

 魔国サイカの街の門を破壊しようと大砲を撃ち続ける機械兵士の群れ。
 驚き、逃げ惑う魔族や人間の群衆。
 魔女王は拡声魔法で国全体に自分の声を伝える。

「皆の者、魔女王ノルン=ニュクスが命じる! 近くにある丈夫な建物、および指定避難区域に移動せよ! 老人や幼い子供は若者が率先して一緒に連れてゆけ! 近くに避難場所がないものは、わえの城を開放するゆえ、疾く避難せよ!」

 魔女王の城の門を開けると、国民がドッとなだれ込んだ。

「勇者、説明せい! あの門を壊そうとしとる、よく分からんのは何じゃ!」

「見ての通りの機械兵士さ。アンタの結界の弱点を突いて、義国ジャスティーが仕入れた兵器でね」

「わえの結界の弱点……じゃと? 異世界から来た者には効かないのは知っておる。何故、あやつらには効かぬと申す?」

「アンタの結界は『国に入ろうとする生物すべてを魅了する』もの。つまり、100%純粋な機械であるアイツらには結界が効かないってワケ」

「なにっ!? あやつら、中の人はいないと申すか!?」

「いねぇよ、機械兵士って言ってんだろ」

 どうも、魔女王は機械など最新のテクノロジーには疎いらしい。この異世界には今まで「機械」というものがほとんど存在しなかったのだろう。

「言っておくが、オイラを人質にしようと思っても無駄だぜ。王サマは奴の信じる正義のためなら犠牲を問わないからな」

「義国王のことは貴様よりもよく知っておるし、貴様に人質としての価値がなさそうというのもわかる」

「おっと、辛口だなあ~? 凹むぞ普通に」

 魔女王と勇者が漫才をしているのを後目に、あなたの危機に駆けつけてくれた境界案内人・水鏡透がイレギュラーズのために状況の説明を始める。

「魔国サイカと対立している義国ジャスティーが、不可侵条約を破って侵攻してきた。イレギュラーズには機械兵士の撃破を頼む。機械兵士は一体一体はそこまで強くはないが、とにかく数が多い。できれば大勢のイレギュラーズが参加するか、多数を同時に相手したり、一気に薙ぎ払えるイレギュラーズがいればいいんだが……」

 こうしている間にも、魔国の門は破られようとしている。
 魔国を侵略される前に、機兵隊を撃破しなければ!
 イレギュラーズは、城を出て街の門へと急いで向かうのであった。

●三章の目標
 機械兵士の撃破、および国の門を破られないように守備を固める。
 参加イレギュラーズの数が多ければ多いほど有利だが、機械兵士自体がイレギュラーズほど強くはないため、全体攻撃などで抑えられれば数人でも攻略は可能。
 NMの判断で次のシーンへ進みます。プレイングはいくつ送っていただいても構いません。

●新たな詳細設定が開放されました
・義国ジャスティー
 正義の軍を率いる『義国王ジャスティ=ソル』が築いた国。
 魔国サイカを「災禍をもたらす国」と何者かに吹き込まれ、正義軍を結成してサイカに攻め込もうとしている。
 異世界から勇者を召喚し、サイカに攻め込ませた。
 魔女王の結界により、サイカに迂闊に攻め込めなくなったが、機械兵士を導入し、再び侵略を行っている。
 ヒューマンと天使のみで構成された国で、差別意識が強く、魔族や異世界から来たイレギュラーズを危険分子として排除しようとする。

・義国王ジャスティ=ソル
 義国ジャスティーの若き王。代々、国と名前を引き継いでいる。現在は十三世。
 血気盛んな若者で、思い込みが激しく、人の言うことをあまり聞かない。
「魔族はどんなものであれ危険分子」という極端な思想を持っており、魔国サイカを悪の掃き溜めと思っている。
 異世界からやってきたイレギュラーズをも異端のものとして排除しようとし、イレギュラーズが魔国サイカの味方をすると聞いてはいよいよサイカごと浄化しなければ、と意気込んでいる。
 何者かに「魔国サイカは災禍をもたらす国」と吹き込まれ、機械兵士を融通してもらっている。
 好きなものは(自分の信じる)正義。

・量産型機械兵士
 機械で出来た自律型自動兵士。要するに軍用ロボット。大きさは三メートル程度。
 この異世界ではどう見てもオーバーテクノロジーだが、どこから融通してもらったのだろう……?
 生物ではないため、魔女王の結界をやすやすと通り抜けることが出来る。もちろん魅了もされず、感電以外の状態異常は無効。
 武器は胸の部分に組み込まれた大砲。当たると結構痛い。
 二本脚で歩行し、大砲を発射して魔国の門を壊そうとしている。
 一体一体はイレギュラーズほど強くはないが、とにかく数が多い。城から遠目に見た感じでも五百体以上はいるだろうか?
 ただし、動きは遅く、大砲を発射するのにも溜め時間がかかるので隙が大きい。重すぎるため、飛行も出来ないようだ。
 素早さを上げて速攻で倒す、全体攻撃などで大勢を薙ぎ払う、こちらも大勢で立ち向かうなど、様々な戦略が考えられるだろう。


第3章 第2節

ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜
レイン・レイン(p3p010586)
玉響
幽火(p3p010931)
君の為の舞台

「これだから正義を掲げた頭の固い真面目いい子ちゃんどもはよ……どの世界でも天使を名乗ってるやつらは碌なことをしねぇなぁ」

 ペッカートは「はぁ~あ」と大袈裟にため息をつく。
 まさかとは思っていたが、本当に勇者の援軍が来てしまうとは。
 ……いや、この『援軍』は勇者ごと魔国を破壊するつもりで来ているのだろうが。

(義国ジャスティーと戦う理由なんてこれっぽっちもないが、ここの天使は気に入らねぇな、全力で抵抗してやる)

 門を飛び越え、てっぺんから国の外を見渡す。
 ……数えるのもうんざりする。どうやら数の暴力で魔国を圧し潰すつもりらしい。
 こんな量を丁寧に全部スクラップにしていたら、こちらの魔力が尽きて干からびる。

「ねぇ、ああいう手合いって電撃に弱いのが相場だけどどうだろう」

 同じく門の上から外を眺めている幽火がペッカートに声をかけた。

「あぁ、俺もちょうどチェインライトニングで感電させた後、とりあえず焔華皇扇で焼こうかと思ってたとこ」

「焼くのは……ちょっと待ってもらってもいいかな……?」

 そこへ、レインが提案をしてきたのである。

「なんかいい考えでもあるのか?」

「とりあえず……機械兵を破壊して……部品を集めたい……。材質と動力……それから仕組みを調べたほうがいいと思う……」

「それじゃ!!!」

「うわっ、びっくりしたぁ!」

 背後からの突然の大声に幽火がぎょっと振り向くと、一羽の鴉がいた。どうやら魔女王の使い魔らしく、その鴉から魔女王の声が聞こえる。

「機械兵の部品を集めて、この鴉に渡すがよい! わえが部品を解析して、結界の術式を組み換えれば、機械兵士とやらにも対抗できる!」

「ん……じゃあ、みんなで連携して……機械兵を壊そ……」

 そこから、イレギュラーズと魔国側の逆転劇が始まる。
 レインが街の外の動物との『動物疎通』と『広域俯瞰』で敵の居場所や戦況、味方としている魔国側の兵士の配置などを確認し、その情報をもとに、「ここが足止めされたら後ろにいる機械兵も詰まる」ポイントを狙って、幽火の『スケィントンの娘』とペッカートの『チェインライトニング』で要所要所を感電させる。機械兵が進路に詰まって一団に固まったところを、レインの『ワールドエンド・ルナティック』でまとめて破壊。壊れた機械兵の部品は魔族の兵士たちに回収させて、鴉の群れが羽ばたいて魔城まで届ける。
 最小限のAPで最大効率の働きを見せた。

「皆のもの、よくやってくれた! これより大結界を強化し、門に入った瞬間、同じ部品を持った機械兵がすべて自動的に破壊されるように組み換える!」

 魔女王の声に、魔族の兵士たちは大歓声を上げていた。

「それにしても、あの機械兵士って『この世界』じゃ明らかにオーバーテクノロジーだよね? いわゆるゴーレムでもなさそうだし……さて、『正義の国』には何が関わっているのやら」

「天使が関わってる時点でロクなことがなさそうだが……義国って正義を名乗る割には狡猾というか、悪ど……誰かに誑かされてんのかな」

 幽火の言葉に、ペッカートも肩をすくめながら同意を示す。この戦争に『黒幕』がいることを、誰もが感じ取っていた。

成否

成功


第3章 第3節

●大結界強化

 イレギュラーズの活躍により、充分な量の機械の部品が集まった。
 魔女王はそれらを魔力で解析し、大結界を強化。
 共通した部品を持っている機械兵士が入り込むと即故障するように結界を作り変えたのである。

 門から魔国になだれ込んだ機械兵士は全て大結界により破壊された。
 故障した機械兵士の起こす黒煙の向こうに、ワナワナと怒りに震える若い男の姿がある。

「おい、話が違うぞ! あの機械兵士とかいうのを使えば、魔国を落とせるのではなかったのか!」

「落ち着きなさい、義国王よ。私は、いつでも貴方の味方です」

 王冠をかぶった人間の王と、白い鳥のような翼を生やし、純白の服を着た――おそらく天使なのだろう、その二人が話している。義国王ジャスティ=ソルは天使に激昂している。それを天使は平静な顔で聞き流している。

「ハッ。やはり、いけ好かぬ天使が絡んでいたか。奴らは義国王を傀儡にして義国ジャスティーを裏から操っておるからのう」

 魔女王は吐き捨てるようにつぶやいた。
 それを水鏡透はジロッと睨んでいる。

「魔女王、お前、このティーパーティーのことを外部にわざと漏らして義国軍を動かさせようと企んでいたわけではないだろうな」

「知らぬなあ。もしかしたら魔族の中にスパイがいて? 義国に匿名で『密告』したかもしれぬがなあ? ……まあ、さすがに城の中に異世界からの勇者が入り込んだり、機械兵士? を使われるのは誤算じゃったが」

「ほう? そのスパイとやらはどんなやつなんだろうな。イレギュラーズを魔国と義国の戦争に巻き込むような女王様じゃなければいいんだがな」

 魔女王は黙って肩をすくめる。それは自白したも同然だった。
 水鏡が何かを言おうとするが、魔女王の言葉に遮られてしまった。

「で? 義国の若造よ。これからどうする? わえの結界を破る策はこれで終いか? 不可侵条約を先に破った国がどうなるか、知った上での今回の暴挙であろうな?」

「フン、悪の掃き溜めのような国の女王が吠えるではないか。そのイレギュラーズとかいう危険分子もろとも魔国を浄化してやる!」

 義国王が「放て!」と号令をかけると、空からゴゴゴ……と轟音が響き渡った。
 雲を割って、顔を出したのは……巨大な爆弾である。

「何じゃアレ!?」

 もちろん、機械を知らない魔女王は爆弾など生まれてこのかた見たことがない。おそらく混沌世界に住んでいるイレギュラーズの中にも、初めて見た者はいるだろう。
 ただ、全員が分かることがある。
 あの爆弾が魔国の城をめがけて落とされていること。
 そして、その爆弾が城に着弾すれば、魔国はまるごと滅びるだろうということだ。

「おかしい……この世界にこんなテクノロジーはないはず! まさか天使が他の異世界に干渉して技術を盗んできたのか!?」

 水鏡は驚愕していた。境界案内人のように、様々な世界を渡り歩く能力のある天使がいるのだろうか?

「それならついでに異世界から『勇者』を連れてくることもできそうじゃのう……」

 ちなみに、勇者ブレイ・ブレッドは既に混乱に乗じて魔女王の動揺から緩んだ鎖をくぐり抜け、魔国から逃げ出していた。
 ついでに避難民の家から持ち出せるだけの金品を盗んでいた。火事場泥棒である。
 まあ、その後勇者は魔国にも義国にも戻れず、そのへんで野垂れ死になり山賊になるなりするのだろう。もう彼のことは放っておいていい。

 それより、イレギュラーズが今対処しなければいけないのは、あの巨大爆弾である。
 ゴゴゴ……と凄まじい音を立てながら、爆弾は刻一刻と城に近づいていた。

●三章中盤の目標
 巨大爆弾が魔国に着弾する前に破壊すること。
 この世界『ネイバーランド』は魔国サイカを核にして成り立っている異世界です。
 魔国が滅びると自動的にネイバーランドも滅びます。
 頑張って守りましょう。
 一節~三節程度進行したところで、NMの判断でクリアとします。

●特別ルール
 巨大爆弾は空中にあるため、遠距離戦が有利ですが、魔女王の魔法により全イレギュラーズはこのシナリオに限り、特別に【飛行】を得ます。
 そのため、爆弾に近づいて近距離で攻撃も可能です。
 一定のダメージを与えると爆弾は空中で停止、その後破壊されます。
 魔国に着弾する前に破壊しましょう。
 爆弾は一個ですが国を一つ滅ぼす程度に巨大です。
 その分、かなりゆっくり落ちてくるようです。
 頑張りましょう。

●新たな詳細設定が開放されました
・天使カナエル
 義国王ジャスティ=ソルに付き従っている天使。
 他の異世界に干渉し、勇者ブレイ・ブレッドを連れてきたり、この世界には明らかにオーバーテクノロジーな兵器を開発したりとやりたい放題。
 魔国サイカを滅ぼそうとする目的はいったい……?

・巨大爆弾【D-37564】
 魔国サイカを『浄化』するために義国が開発した最終兵器。
 おそらくこれが着弾すれば国一つが巨大な穴に変わることだろう。
 この兵器の恐ろしさを若き義国王が理解しているとは思えない。


第3章 第4節

玄野 壱和(p3p010806)
ねこ

「おー、機械兵はあの三人が一足先に片付けてくれたみたいだナ。ラクができていい……とも言ってられねえカ。今度は爆弾とか、ホント義国はぶっ飛んでやがル」

 壱和は準備運動をするように伸びをしてから、[ツキハネ]で跳び上がった。

「ねこのても借りたいってんなら、茶の礼もあるし、ちっと本気出しますカ。[ねこ]の王の力を御照覧あれってナ!」

 魔女王の魔法の力を借りて、飛行しつつ爆弾と適度に距離を取る。それは爆風に巻き込まれないように、そして他の民やイレギュラーズを自分の攻撃に巻き込まないようにだ。

「っと、ここらへんでいいカ。あの女王サマの欠点ってのは結局相手が生物限定なトコだよナ。結界も多少は強化したようだガ。その点コイツの対象は、オレから見た”現行犯”ダ」

 勇者相手には披露できなかった、あの技が放たれる。
 それこそは[すろうとーる]。ティーパーティーでは全員を巻き込んでしまうため、使えなかった大技である。

「術式起動!
 罪状:器物損壊、不法入国、その他諸々!
 射程内全罪確認!

 白き言の葉、罪摘積詰、
 猫の諸手に七十五と二振りの。
 つみをつみつみつめ、くいもてほし×す、
 slaughter,auto,all!クイにてクイろ!
 汝執行するもの[すろうとーる]!
 制裁執行!!

 あっハハハハハ!!」

 高笑いを上げる壱和が放った[すろうとーる]は、すべて爆弾に命中した。

成否

成功


第3章 第5節

●巨大爆弾、空中爆発

 壱和の放った[すろうとーる]、その強力な一斉掃射を一挙に食らった爆弾は空中で静止し、破裂した。
 もともと魔城に少しでも触れた瞬間、即座に爆発するように設定されていたのだろう。
 その爆散した光景は、まるでイレギュラーズを「おめでとう」と祝福する花火のようにも見えた。

「そ……そんな……俺が義国の血税を集めに集めて作らせた最終兵器が…………」

 義国王ジャスティ=ソルは完全に戦意を失い、ガクッと地に膝をついたのだった。
 天使カナエルは、まるで人形のように表情のない顔、表情のない目で義国王を見下ろしていた。

 こうして、イレギュラーズの活躍により、機械兵はすべて使い物にならないほど故障し、巨大爆弾は空中で破壊された。
 魔国を『浄化』するための最終兵器を失った義国王ジャスティ=ソルと、その王に仕えていた天使カナエルは捕縛された。

「答えろ、天使。お前の目的はなんだ?」

 水鏡はいつもより恐ろしい顔をしている。
 それはそうだろう、自分と同じように異世界を渡り歩く能力を持っていながら、それを悪用する存在を許すわけにはいかない。

「私はカナエル。天使カナエル。人の願いを叶えるもの」

「そうだ、カナエルは俺が召喚に成功した最初にして唯一の天使。この天使は俺の願いを叶えるために必要なものだった。貴様ら魔族をこの世界から消し去るためになぁ!」

 義国王ジャスティは縛られた鎖を引きちぎらんばかりに暴れて喚き散らす。

「若造が、吠えるではないか。では、このカナエルとかいうやつを殺せばそれで終いじゃな?」

「殺せるもんか! こいつは最強の生物なんだ! 毒も呪いも即死も効かないんだぞ!」

 魔女王が睨みつけているにも関わらず、義国王は高笑いをしている。

「――じゃあ、オイラの願いを叶えてくれよ、カナエル。……『死ね』」

 ドッと、義国王と天使の背中に、投げナイフが突き立てられた。
 その投げナイフには猛毒が仕込んである。下手したら、魔女王ですら衰弱させるほどの――。

「……勇者、なぜ戻ってきたのじゃ?」

「知らねえのか、魔女王サマ? 勇者ってのは、世界を救うためにいるんだぜ」

「ゆ、勇者……貴様ァ……」

「勇者:ブレイ・ブレッドの願いをカナエマス……天使カナエル、機能停止……」

 義国王は血を吐いて息絶え、天使カナエルもガクッと頭を垂れた。
 カナエルが機能停止したことで、義国の他の天使もカナエルのクローンだったためすべて死滅。
 勇者ブレイ・ブレッドは魔国を救った英雄として、永住権を獲得した。
 イレギュラーズも功績を讃えられたが、魔国に永住するわけにはいかないので盛大なパーティーで住民たちに見送られた。
 その後、義国は世継ぎもいないため、魔国に吸収されることになるが、魔女王は「他に攻めてくる敵もいない」という理由から、彼女の命を削るほどの大結界を完全に解除した。

 もう彼女を無条件で愛してくれる国民だらけの国ではない。それでも、『渇愛の魔女王』ノルン=ニュクスは満足そうだった。彼女は愛する国を守り通したのだ。もう悔いはない。

「おぬしら、大儀であった。もう無理にわえに従う必要は無い。結界がない以上、おぬしらは最早わえに強制的に忠誠を誓うこともあるまい」

 魔女王の言葉を聞いた執事やメイド、衛兵たちはキョトンとして、お互い顔を見合せたあと、クスクスと笑う。今度は魔女王がキョトンとする番であった。

「やはり、ご存知なかったのですね、陛下。私たちは心から、貴女様に忠誠を誓ってついてきたのですよ」

 その言葉に感極まった魔女王は、どんな顔をしたのだったか――。

【魔国サイカ】魔女王陛下のティーパーティー
〈了〉

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