PandoraPartyProject

シナリオ詳細

激しい『ろうき』・息切れ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ろうどうのよろこび
 幻想・某貴族領内。ごく小さな、しかしそこそこの需要と多くの労働者を抱える鉱山では、今日も人々が激しい労働に精を出していた。
 正確には、精を出していたというより……なかば強制的に働かされていたというのが実情だろう。
 彼らは、債務者である。そして貴族は、債権者である。
 彼らにとっての報酬とは、債務の軽減。そして報酬の規定は、鉱山内から取れるわずかな鉱物、いわば『宝石』を収めることで成立する。

 ここまでの説明で、察しの良い者は何が起こりうるか理解できただろう。
 報酬を得る為には、真面目な労働が意味を成すのではない。報酬とは、労働時間とイコールではない。
 そして、債務者達は……貴族にとって『労働力』ですらないのだ。彼らが生むであろう騙しあい、奪い合いの果てに何人犠牲になろうと、己の手元に宝石を蓄えられればそれでよい。
 さらに言うなら、宝石の奪い合いで醜悪に演じてみせたものには上積みで債務を減らしてやっていい、とすら思っている。
 どこまでも醜い争いだが、それもまた人間社会の一側面である。持つ者の特権、というわけだ。

 貴族にとって、一つだけ計算違いがあったとするならば……債務者のなかに、旅人が混じっていたこと。旅人の出身が、『現代日本』と割と近い価値観を持つ世界だったことにある。
 水は一滴の色素で大なり小なり濁るように、一滴の毒が井戸を汚すように、旅人がきっかけとなって状況は変化していく。
 もとより利益を得ていた強者がなびくことはなかったが、弱者があつまり思念が集まったことで、ひとつの『災厄』がここに生まれてしまったのである。
「『ユウキュウ』 ヲ ヨコセ……『ロウキ』 ヲ マモレ……」
 鉱山の奥から響き渡る地獄のような声とともに、衝撃が繰り返し坑道を伝わってくる。今まさに、人々の思念が結実した化物が、権力ある者達を打倒すべく動き出していた。
 ……どっかでみたようなアレげな旗印を掲げて。

●なんか『アレ系』に恨みとかあんの? →ないです。
「ふむふむ、つまりは旅人殿が中心になって生み出した思念が鉱山の規律を乱して、それどころか力関係もひっくり返して貴族殿の利益に悪影響を与えているので。思念体と旅人殿と迎合する有象無象の労働者を……殺害? 殺害はやりすぎではありませぬか公直殿?」
「いやぁ、一度権利を主張しだしたら大体止まらないし、あいつら債務者だってんでしょ? 自己責任だよ」
 平等大好きっ子のくせに自分で設けたスタートラインが後ろなんだもん。
 『無明の明』ドルト・ペオン (p3n000035)の質問に対し、『博愛声義』垂水 公直(p3n000021)は当たり前のように応じる。以前も似たような思想に恨み言を向けていた情報屋だが、なんかトラウマでも抱えているんだろうか。
「なるほど、仰りたい理屈はわかったであります。それで、その鉱山で権力を持ってる債務者というのは?」
「自由に対処せよ、だってさ。債務者であることに変わりはないから特段価値のある命でもないけど、多少いないとパワーバランス的にうまく回らないから、だって。最終的に労働者ゼロだと回らないもんね。仕方ないよね」
 なんとも世知辛い話をする公直。というか、そんなに大変なら生かしておけばいいのに、とドルトと居並ぶイレギュラーズはちょっと、思った。
「旅人も大して強くない、債務者達も同じ。……問題は思念体だな。こいつが吐き出す声を聞くと動きが鈍ったり行動の失敗率が上がったりするらしい。それと、攻撃手段が思念波になるから射程が長いし逃げ場も狭いし魔力を奪ってくるしでやる気が出にくい、結構厄介な敵になる。詳細はできる限り伝える。不測の事態が起きないように配慮はしておく」
 何時になく分厚い資料を手に、公直が続ける。ふむふむと応じるドルト。

「……ところで」
 イレギュラーズの一人が、たまらず話を遮って公直に問う。
「なんでそこのカワウソは両手両足に輪っか括られて天井吊りになってるんだ?」
「ああ、うん。高所作業の安全帯って腰巻き型が禁止になるらしいんだわ。ハーネス型じゃないとダメらしくて……って知らない? 知らないか。大変なんだよ労働基準」
 深々とため息をつく彼の闇の深さを垣間見たイレギュラーズであったとか、なかったとか。

GMコメント

 労基法が怖いので情報はあるだけ全部出ます。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●達成条件
・『ロウキノモリビト』の撃破
・労働者(旅人)の殺害
・下級労働者の7割以上の殺害
(上級労働者の生死とその生存率は問わない)

●ロウキノモリビト
 メインとなる敵です。『ロウキ』なる概念を聞きかじった下級労働者の感情が寄せ集まって生まれた思念体で、実態を持ちません(攻撃は当たります)。
 神中域の「不運・窒息・出血・呪殺」を持つ『諫言』、超遠ラの「Mアタック中・HP吸収小・必殺」を持つ『思念波』を使用します。

●労働者(旅人)×1・下級労働者×30
 鉱山に放り込まれた債務者集団の中でも、とくに善良で搾取される側に回り融通がきかない人々です。旅人は大体の元凶。
 旅人は多少実力はありますがイレギュラーズ一人で十分対処可能です。下級労働者は吹けば飛ぶ命ですが、放って置くと囲まれて逃げられないところに思念体の攻撃が飛んでくるので危険です。

●上級労働者
 下級労働者を搾取して債務を減らそうと努めてきた側。彼らも悪徳ではあるが、己の生存のために腐心した結果といえなくもない。
 彼らが多少残ってないとカオスになるので望ましく無いが、何人かうっかり死んでも誤差であろう。

●戦場
 坑道最奥部。
 多くの人間が集まり、戦うに十分なスペースが確保されています。
 他方、戦闘開始地点から後方50mほどから通路になっており、幅が狭めのため回避に不利だったり対多数での回避減少率が大きくなったりします。

●注意事項
 この依頼は『悪属性依頼』です。
 成功した場合、『幻想』における名声がマイナスされます。
 又、失敗した場合の名声値の減少は0となります。

  • 激しい『ろうき』・息切れ完了
  • GM名三白累
  • 種別通常(悪)
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月14日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)
共にあれ
祈祷 琴音(p3p001363)
特異運命座標
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
極楽院 ことほぎ(p3p002087)
悪しき魔女
ルナール・グリムゲルデ(p3p002562)
片翼の守護者
Morgux(p3p004514)
暴牛
梯・芒(p3p004532)
実験的殺人者
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜

リプレイ

●権利と義務の当たり前の話
「あぁ、何とも聞き覚えのある単語だなぁ」
 『紅獣』ルナール・グルナディエ(p3p002562)はどうやら、件の旅人と近い価値観を持つ世界の出であるらしい。仲間達が首をかしげる案件も、耳慣れた概念から来るものと思えば理解できなくもない。同情する気にはなれなかったが。
「ろうきであるかー。真っ当なお仕事ならあっても良いと思うであるがなー。さいむってつまり借金であるな? なら全うなお仕事ではないであるし」
 『ぽやぽや竜人』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)はなんとなくで相手の主張を理解したが、同じくらいになんとなく、相手の主張が道理にそぐわないことに気付く。
 債権者に宛てがわれた仕事、宛てがわなければ仕事もままならぬ連中が権利などと。如何に思考回路が緩めのこの竜とて、道理の有無くらいは肌で分かる。
「ふむふむ、これが俗に言うブラック労働現場というものかの」
「そもそも、リスクも判って無く借りて労働基準法とか草生えるんだよ」
 『大いなる者』デイジー・リトルリトル・クラーク(p3p000370)は聞きかじった言葉を駆使して眼前の状況の異常さを理解しようとする。労働の道理が通らぬ無法地帯の存在は、彼女も少なからず理解しているようだ。だが、『Code187』梯・芒(p3p004532)の言葉がその認識をあっさりとひっくり返す。
「そもそも個人採算の採掘業とかどう見ても委託契約で、各人が経営者扱いなんだから労働基準法とか適用されるわけ無いんだよね。闇金から借りたんだから法律の穴を潜ってて当然だよ」
 元の世界で法をかいくぐって行きていた人間だけに、貴族の手管は理解できるということか。ともあれ、自業自得の域を出ないということになる。
「『ゆーきゅー』だとか『ろうき』だとかよくわかんねーが、貴族サマがヘタな契約するとも思えねェし、ま、妄言の類だろうなァ」
 『瓦礫の魔女』極楽院 ことほぎ(p3p002087)の認識はより直感的で、しかも正しいものだった。彼女が請け負った依頼において、貴族が悪事を為す依頼は少なくないはずである。経験則からいえば、悪事にかけて彼らが穴のある理屈で自らを追い込むことはないだろう、という……いささか度の過ぎた信頼が根底にあるのだ。
「幻想で貴族に逆らうとどうなるか、っていうのはみんな分かっているものだと思っているのだけれど、それでもこういう事件は起こるのよねぇ」
「時間外、休日出勤、賃金不払いはあったけどそれ以上に好き勝手してたし、ロウキなんてあってないようなものだったな。つまりは日頃の行いだ」
 『飲酒シャトルラン』祈祷 琴音(p3p001363)は居合わせた仲間同様、十二分に割り切っている様子だった。後腐れのない仕事で稼げるなら、金の綺麗・汚いに関わらず結局は酒に変わるのだ。ことの善悪にかかずらう神経は持ち合わせていないらしい。
 他方、『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)に関しては……労働者として自由と権利をトレードオフで生きてきたからだろうか、『ろうき』を聞きかじっている面々のなかでも一際ドライであった。或いは、債務者達に暴れる道理なしと割り切っているからであろうか。
「債務者の分際で何をほざいてやがる」
 諸々言い分はあるのだが、結局は『暴牛』Morgux(p3p004514)の言葉に集約される。ボルカノも「寝言は寝て言えであるな」、と同意。
 鉱山の奥から気を吐く声が聞こえてくるが、尋常ならざる力を味方につけたとはいえ、社会の構図はそう簡単には変わらないのだ。それはおそらく、イレギュラーズが一番痛感しているところでもある。
「妾達が社会の厳しさを教えてやるのじゃー」
 ともすれば気抜けしそうなデイジーの声を号砲代わりに、一同は坑道を駆け抜ける。びっくりするぐらいあっさりと戦場にたどり着いた一同を迎えたのは、憐れなくらいに痛々しい姿をした、しかし目だけは爛々と輝くむくつけき男どもであった。……端正な男や子供、女は別の使いみちがあるということだろう。
「このナリじゃぁ、権利に見合った仕事もできなさそうだわな!」
 ペッカートが無造作に魔術を叩き込み、数名を巻き込んで混乱を呼び込むなか、琴音はどこからか取り出した一升瓶を一気に飲み干し、挑発的に笑ってみせた。欲の少ない場における彼女の所作は、劇薬にひとしく。欲求を隠しもしない視線が突き刺さっても彼女は動じなかった。
 ……彼女のことだ。「どうせ死ぬなら夢くらいは見てから死んでおくべきだわぁ」などと考えていても不思議ではなかろう。

●選択権の単純さの結末
「鉱山だけに湿っちゃいねぇか。……天井よし足元よし。言うほど危ない場所じゃねえな」
「そいつは結構。後腐れなく殺しに行けるなら上等だ」
 ことほぎは冷静に周囲の状況を見定めると、手頃な距離に身をおいていた労働者へと魔力を叩き込む。労働者自体はさして力もない。魔術を耐えられるわけもなく、あっさりと血の海に沈んでいく。
 他方、Morguxはあからさまに様子の違う労働者……旅人らしきそれを守るように立つ思念体へと一気に間合いを詰めつつ、視界に入る労働者を叩き潰していく。
  遠くから思念を垂れ流す敵は厄介でしか無い。だがそれ以上に、ひしめき合う力なき労働者達は、己から何か為すわけでもなく流れに従うままに命を差し出しているように見えた。気に入らないし、ただただ邪魔だ。
「労基やら有給やら喚いても、借金は減らないんだけどな?」
 ルナールは呆れ気味に労働者の胸を貫き、前進する。
 思念体が最大の脅威であるのは言うまでもないのだが、魔術により纏めて倒されてもなお怯えもせず向かってくる愚衆というのは邪魔で仕方がない。或いは、思念体の存在が彼らから恐怖というリミッターを外したのかもしれないが。
「ろうきが何だー! ここは混沌であるよ! 自分の世界の常識が通用すると思ったら大間違いなのであるキルオアダイ!」
「混沌が何だ! 知らない内に飛ばされて常識も通用しないところで生活しろとか頭沸いてんのか!」
 ボルカノは旅人の懐に飛び込むと、両手の剣で連続して相手を切り刻む。生半な相手なら血の海に倒れたろうが、旅人である以上は多少骨があるのか、肩で息をしつつも拳を放ってきた。実際油断ならぬ威力を秘めてはいるが、ボルカノからすれば児戯にも等しい。軽く受け流され、蹈鞴を踏んだ彼のなんと憐れなことか。
「哀れすぎて見ていられないのである……っと!?」
 旅人を間合いに捉えた、ということは、翻って思念体に剣が届く位置に近づきつつあるということでもある。つまりは、あと一歩か二歩踏み込めば、無防備な相手を一方的に殴り倒せる。
 一同の認識は、半分ほど正しい。だからこそ労働者の群れは期せずしてイレギュラーズに殺到して前進させまいとしていたのだろうから。
 だが、労働者の思念でこそあれ、思念体が労働者を慮るという道理はない。加えて、精度が落ちようと『諫言』が至近距離を狙えない、自爆は試みまいというのは。控えめに言って見通しが甘すぎる。彼我のチキンレースは、互いの実力を十二分に把握してこそ効果があるのだから。
 ……故に、思念体から吐き出された一撃は、近距離に迫ったボルカノや他数名、それと多くの労働者を巻き込んで炸裂した。
「こっちが排除する前に進んで減らしてくれるんだから有り難いわねぇ。少し痛いけど耐えられないほどでもないわぁ」
 琴音は全身を叩く衝撃に数度かぶりを振ると、気にしたふうでもなく更に前進する。既に殺到してきた労働者にさんざ殴られてはいたものの、仲間達の攻撃により数が減っていた分、余力を残して前進できていたというのもある。何より、彼女は自らがフレンドリーファイアの対象になろうとなんら気にした風でもないのが恐ろしいところ。
「頭を下げておれば命までは取らぬ、大人しくしておるが良い!」
 デイジーは思念波をたびたび受けつつも、周囲に対し繰り返し降伏勧告を続けていた。坑道の奥を見れば、縮こまった労働者の姿が見える。ガタイがいいのだから所謂上級の連中なのだろうが、情けないにも程がある。
 まあ、下級労働者達も声が届いている者など片手で数える程度だろうから大差ない、といえばそのとおりなのだが。
「たいして意味もよく分からずに喚き散らした結果がコレだ。割に合わないんじゃないか?」
 ルナールの血が旅人へと襲いかかり、その生命を奪い取る。吸い上げた命が肉体を巡る感触と、過剰に消費した魔力による脱力感。彼が我知らずアンニュイな表情を見せるのも致し方あるまい。喚き散らした結果生まれた『ろうき』が労働者を守ってくれないという冗談までがワンセット。まったくもって、彼の知る世界と似通っていて笑ってしまう。
「流石に、債務者になるようなのは見通しが甘いに過ぎるんだよ。生きて帰れるなんて思ってるんだから」
 芒は身軽さを活かし、次々と労働者達を殺し続けていた。無論、デイジーの勧告に従って武装解除した連中に対してもである。戦闘において前を見る他ない、周囲に声を届けるしかないデイジーは気付くまいし、芒の行いは『この時に限っては誤りではない』のだ。下級労働者に限っては、8割だろうが皆殺しだろうが殺してはならぬという道理を彼女は聞いていないのである。
 そう言う意味では、彼女にとってこれほど割の良い仕事もなかっただろう。法を掻い潜ってきた身は、依頼者の言葉の抜け穴すらも汲み取っていたわけだ。
「ハハッ、労働者同士が殺し合うのも見ものだと思ってたけど、自分達の願いに殺されるってのは中々面白いジョークだな!」
 ペッカートは上級労働者が行動を起こすなら、それに任せるつもりだった。結果として隅で縮こまっているのだから世話はないが、それより愉快なものが見られたのだから満足至極では、ある。
「自爆覚悟で殺し合いに来るとは考えてなかったが、だから手強いかって言えばそうでもねぇ。勝手に潰し合うような考え足らずが権利を喚くなんて笑い話か?」
 Morguxは血を撒き散らしつつも笑みを崩さず拳を止めず、至近距離で思念体を殴りに行く。思念体は殴れるのか? というのは、神の雷を纏った彼には愚問であろう。一発一発が虚を突いたタイミングで放たれるそれは、思念体の存在強度を見る間に削り取っていく。
 思念体は、Morguxや仲間達を能力で巻き込みながらも、自らを攻撃範囲に巻き込まぬように攻め立てる。無論、包囲陣形を取られれば一人ずつ狙わざるを得ないため、燃費の悪さは際立つだろうが。もとよりガス欠など考慮の外、なのだろう。その後先ない戦い方は、彼を満足させられるかどうか。
「どこかでは正しくてもここは幻想であるので! 生まれた場所が悪かったな! である!」
 ボルカノは相手に聞こえているかどうかは考えず、しかし言いたいことを言い切る勢いで撒き散らしながら正面から殴っていく。
 相手に聞こえずとも周囲には響く。上級下級の違いはあれど、ここにいるのは哀れな債務者どもである。今後、権利を喚き散らさないように。そうなれば自分達のようなものが現れるという証明とともに。彼らをしっかりと『教育』しなければならないのだ。
 不快であろうか? まさか。この竜人が自分と仲間と依頼主以外に思考のリソースを振り分けるなど無駄の極致だ。熟慮した上で無駄と切り捨てるのは、思考が足りぬとイコールでもあるまい。
 次々と叩き込まれるイレギュラーズの猛攻は、見る間に思念体の存在強度を削り取っていく。すでにそこにいるのかどうかも定かではないほど弱った姿は、哀れの一言に尽きるが。
 さりとてそれを逃がす、という道理もない。琴音のジョッキが炎を纏って振り上げられ、思念体を打ち上げる。虚をつかれ、動きが鈍ったところに打ち込まれたことほぎの魔力は、思念体の存在力を根こそぎ奪い取り、その姿をかき消した。
「やれやれ、やっと終わったか……ん?」
 ルナールは思念体の消滅を確認し、懐から煙草を取り出して咥える。ちらと脇を見ると、ことほぎが死体をまさぐっているではないか。馴れた手付きで死体に隠れていた宝石を見つけると、次々と布袋に放り込んでいく。
「これを全部依頼人に渡せば、ご贔屓にしてくれるだろ? また『こういう』話があれば尚更」
「いいね。そういうことなら芒さんも手伝おう」
 人を殺す依頼が舞い込んでくるなら、それに越したことはない。芒もことほぎの言葉に乗じて、死体漁りに興じ始めた。
 さすがにその思考に乗る気も、報酬以上の仕事をする気もなかったのでルナールは敢えて見なかったことにした。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 お疲れ様でした。
 まあ、ちょっと一部強い表現がありますが、取り敢えず戦闘マニュアルとか、この機会に再読いただくといいのかなって。
 皆さんがスキルや移動ルールで出来ることは、相手も出来るししてくるってことです。
 実力者揃いなんで大したリスクもなかったですが、ゆめお忘れなく覚えおきください。

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