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シナリオ詳細

再現性東京20XX:トールマンのうわさ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●トールマンのうわさ
「よく来たな、イレギュラーズ」
 希望ヶ浜学園校長、無名偲無意識あらため黄泉崎ミコトは相も変わらず校長室で酒を飲んでいた。
 ここは混沌、練達の一区画。その名も再現性東京20XX希望ヶ浜地区。現代日本のよすがを求めた者たちの作り出した、いわば異世界版ジャパニーズタウンである。
 ゆえにここで常識を語るのはやや滑稽だが、校長室で平日の昼間からその学園の校長がシャンパンをあけているというのはなかなかに非常識であった。
 部屋の扉をあけたままにしていたあなたに、黄泉崎校長はこっちへこいと手招きする。
「お前も飲むか。それとも、アルコールがない方がいいか?」
 などと問いかけながら棚からグラスを取り出してくる黄泉崎校長。
 ちゃっかりと自分のグラスにシャンパンを注ぎ直してから、悠然と足を組んで見せた。
「お前のスマートフォンに通知を送ったのは他でもない。お前の『力』が必要だ」

 ここ、希望ヶ浜地区には怪異が現れる。
 夜妖(ヨル)と通称されるそれは、妖怪幽霊都市伝説奇譚忌憚怪談話に登場するそれらとしばしば同一視される。要するに、怪異なのである。
「このところ、希望ヶ浜のSNSに『トールマン』の目撃情報が頻発しているのは知っているか?」
 そう言ってタブレットPCを操作し始めた黄泉崎校長は、テーブルにそれを置いてくるりと180度回した。そして、指でスッと押す。あなたからよく見えるように。
 画面に表示されているのはSNSのある検索結果。『トールマン』という単語で検索をかけると、それはいくつもの呟きによって多角的に浮き彫りにされている。
 曰く、それは夜道に現れる人間に似ている。
 曰く、それは首が頭一つ分ほど長く、こちらを見下ろしているように見える。
 曰く、目撃した人間が大怪我を負ったという。
 曰く、奇抜な格好の不審者として何度も素人による捜索がなされたがみつかっていない。
 曰く、バットで武装した学生が対抗しようとしたがバットがへし折られた。
 曰く、ホームレスがトールマンによって殺される事件があった。
 曰く、トールマンは何かを探しているらしい。
「インターネットの検索で分かるのは、せいぜいこのくらいだ。もっと深く潜ればなにか分かるのかもしれんが、それはお前の仕事だろう」
 酒の入ったグラスを揺らし、首を少しだけかしげて見せる。
「トールマンを捜し当て、倒す。これが、今回の依頼だ」

 希望ヶ浜に出没する謎の怪異、トールマン。
 あなたは校長が出してきた飲み物を飲み干すと、席をたった。
 偽りの日常を守るため、夜を渡る準備をしよう。

GMコメント

※こちらはライトシナリオです。短いプレイングと選択肢のみで進むアドリブいっぱいのライトな冒険をお楽しみください。

●シチュエーション
 調査、推理、そしてバトル。希望ヶ浜を舞台にしたシティアドベンチャーシナリオです。
 あなたは希望ヶ浜学園の校長から依頼を受け、『トールマン』なる怪異の調査と討伐を始めました。
 舞台は希望ヶ浜地区内。謎めいたSNSの投稿内容。噂話の上で出ている死者。
 偶然にも集まった仲間達とスキルを駆使し、この事件を解決しましょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はC-です。
 信用していい情報とそうでない情報を切り分けて下さい。
 不測の事態を警戒して下さい。


トールマンの探し方
 あなたは暫くの時間をかけて『トールマン』を探します。
 その方法を定めましょう。

【1】聞き込みを行う
人、あるいは動物や霊魂、精霊といったものに対して聞き込みを行います。

【2】資料を漁ってみる
インターネット、図書室の資料、特殊な報告書などを調べてみます。

【3】あえて休憩しておく
あえて休憩することでこのあとの戦闘に集中します。
活躍が戦闘メインとなります。


戦闘スタイル
 戦闘に突入した際、どちらのスタイルで戦うかを決めておきましょう。

【1】アタッカー
 率先して攻撃スキルをどかどかと撃ち込みます。
 威力やBSなど形は様々ですが、あなたは頼れるチームのアタッカーとなるでしょう。
 相手にバフをかけたりするのもアタッカーに含まれます。

【2】ディフェンダー
 優れた防御能力を用いて敵の攻撃を引き受けます。かばったり引きつけたりは場合によりますが、あなたがいることで仲間のダメージ量は大きく減ることでしょう。
 味方や自分を治癒することで戦線を支える役目もここに含まれます。

  • 再現性東京20XX:トールマンのうわさ完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別 通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年05月18日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談0日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

古木・文(p3p001262)
文具屋
イルミナ・ガードルーン(p3p001475)
まずは、お話から。
黎明院・ゼフィラ(p3p002101)
夜明け前の風
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)
無銘クズ
フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)
挫けぬ笑顔
佐藤 美咲(p3p009818)
無職
彷徨 みける(p3p010041)
おしゃべりしよう
トール=アシェンプテル(p3p010816)
ココロズ・プリンス

リプレイ

●トールマンのうわさ
「トール違いです。私はトールマンではありません」
 虚空を、或いはカメラ目線で『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は語った。
 隣でアイスコーヒーをストローで啜っていた『合理的じゃない』佐藤 美咲(p3p009818)が突然の奇行(?)に目をやる。
 トールはコホンと咳払いをして、手元のホットコーヒーに口をつけた。
「いえ、一度は言っておかないといけないかなと」
「律儀なんスねえ」
 美咲はそう言いながら、コーヒーの隣に置かれたチョコレートドーナツを手に取る。クラシックスタイルの揚げドーナツの半分にチョコレートをコーティングしたそれは、美咲にとってこれ以上とないカフェフードである。少なくとも今は。牛乳などあるとなおよし。
 今更だが、ここはカフェ・ローレット。特待生たちが通うカフェであり、右も左もローレットのイレギュラーズだ。
 故に一般に流布すべきでないような依頼の話を堂々とできる場所でもあった。
 サクッとドーナツをかじる美咲の向かいで、『挫けぬ笑顔』フォルトゥナリア・ヴェルーリア(p3p009512)がふかふかしたタイプのイーストドーナツを手にしていた。ピンク色のストロベリーチョコレートが上半分にコーティングされたそれは、フォルトゥナリアの性格も相まってなんだかよく似合っている。
「今回の依頼内容は、たしか『トールマン』を探し出して倒すことですよね。どこにいて、どうやって現れるかもわからないと?」
「希望ヶ浜の怪異にはよくあることだ。まあ、こうして探し出すところから仕事を受けるケースは稀だがね」
 『夜明け前の風』黎明院・ゼフィラ(p3p002101)はミートパイを芸術的なほど綺麗に食べながら、砂糖の入っていないホットコーヒーをちびちびとやっている。両手とも義手であるはずなのに、素手より器用というのはなかなかずるい。
 それとも、パイを囓っても粉がぱらぱら落ちない魔法でもかかっているのだろうか。……などとフォルトゥナリアはちょっと関係ないことを考えた。
「夜中に出てきて人を殺してる時点で怪人も怪人ですぞお? これはもういち早く見つけ出してキュッとしなくては」
 キュッとね、とジェスチャーで示す『夜善の協力者』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)。
 彼(?)の手元にもドーナツがあるのかと思いきや、カレーパンとコーラというなんかジャンクな組み合わせだった。そもそもこのフルフェイスのガスマスクみたいな頭で食べられるのかの時点で疑問である。ゼフィラとフォルトゥナリアが同時にそんな疑問を顔に浮かべたところで、ジョーイはそのフェイスガードめいたディスプレイに(*´ω`*)の顔文字を表示してみせた。
 謎なヤツである。
「私は街の猫たちに聞いてみるつもり。皆は?」
 『おしゃべりしよう』彷徨 みける(p3p010041)が自分の分のドーナツを片手に見回すと、『ifを願えば』古木・文(p3p001262)がくるくるとペンを指の上で回しながらうんと小さく呟いた。
 そしてぱしりとペンを握る。
 テーブルからとったナプキンを平たく置き、そこにさらさらと文字を書いていく。
「みけるさんは聞き込み、トールさんはカフェで待機だったね。僕は……そうだね、学校の第八資料室でもあたってみようかな」
「だいはち?」
「しりょうしつ?」
 みけるたちが初めて聞いたという声で返すと、文がくすりと笑って眼鏡のブリッジに指をあてる。
「秘密の資料室、ってところかな。そういうのを探すのは得意なんだ」
 表沙汰にならない資料はぱっと見た人間のことを警戒してか難解に書かれがちだ。そういった資料の構文やクセを理解している人間こそが素早く読み解けるようにできている、いわば天然の暗号のような側面をもつ。文はそのあたりを『ある意味で』ふまえてこう言った。
「慣れてるからね」
「へえ、じゃあイルミナも手伝いましょうか? 瞬間記憶と精密模写が火を噴くッスよ~!」
 しゃしゃしゃーっと手を動かしてみせるイルミナ。ちょっとまえから流行ったというもちもち食感のポンデ系ドーナツを囓り、クリームののったカフェオレへ手を伸ばす。格好も既に希望ヶ浜制服なあたり、この辺りでの活動になれている様子だ。
「じゃあ、頼もうかな? 図書館の新聞とインターネットをそれぞれ調べたいところだけど……」
「ネットは私がやろう。ジョーイ、一緒にやるかい?」
 ゼフィラの問いかけにジョーイが\(^▽^)/の顔文字を表示させる。どうやら肯定らしい。
「なら、私と美咲さんは図書館ですね。よろしくお願いします!」
 フォルトゥナリアがにっこり笑い、美咲はその純粋で人を疑わないような笑顔に『まぶしい!』という顔をしていた。
「よ、よろしくっス」
「決まりだ。それじゃあ、早速行こうか」
「!?」
 紙幣を置いて席を立つ文。美咲は当初四個くらい詰まれていたドーナツの残りを急いで頬張ると、さめかけたコーヒーで流し込みにかかった。そして喉につまった。

●トールマンとは?
「ねえねえ、『トールマン』を見なかった?」
 みけるは野良猫を見つけてはチュールを手に近づき、動物疎通でインタビューをするということをくり返していた。
 猫が可愛くて好きというのも勿論あるが、SNSに流れているトールマンが夜現れるという情報に着目してのことだ。
 なにせ猫は夜目が利く。人間よりも目撃情報が多いと踏んだのだ。
 実際これは、仲間の情報と照らし合わせることで役立つことになるのだが……。

「『トールマンなんていない!?』 どういうことでありますかそれは!?」
 (@□@)という顔文字を浮かべあたふた両腕をふるジョーイ。
 希望ヶ浜にあるインターネットカフェのツイン席にドリンクを二人分持ってきた彼に、ゼフィラがまず伝えた情報がそれであったのだ。
 ドリンクがこぼれないようにスッとよけてからゼフィラが手を翳す。
「厳密には『いなかったし、いた』だ」
「わからなさがマッハですぞ」
 困惑するジョーイに、ゼフィラは小さく笑う。
「そう慌てるな。字面から見て『トールマン』とはどういう意味だと思う?」
「ええと……背の高い……マン?」
「そうだな。自分達に比べて背の高い人物。基本的に小さい種族……たとえば小人のようなものが人間をさして『トールマン』と表現することが、混沌世界には昔からあったようだ」
「ほへ?」
「つまり、人間のことだよ。『トールマン』とは」
 ストローのささったドリンクに口をつけるゼフィラ。困惑したままのジョーイに、ゼフィラは続けた。
「けれど大抵の人間はそうは思わない。『自分達から見て長身の怪物』を想像する。そう、キミのように」
 ジョーイはそこで合点がいったようで、ぽんと手を叩いた。
「なるほど、そこから怪異が生まれた」
「そういうことだね」
「では早速、情報を切り分けて調査していきますぞ!」

 情報の切り分けは、特定の存在を追いかける上で重要だ。
 フォルトゥナリアは図書館の新聞を並べながら、『トールマン』にかんする噂話をノートに書き留めていっていた。
 ただ羅列するわけではない。
 『事実』と『予想』を別々のボックスに分けるのだ。
「おや、やりますね」
 それを横から見ていた美咲が感心したように頷く。
「なんとなくこうした方がいいかなって思ったんだけど……そんなに良かった?」
「人の目からは事実が歪みまスからね。起こったありのまま……まあ、新聞にも多少の客観は含まれるんでスけど、それでも事実として書かれたことと予想として書かれることは全然別モノなんでス。例えばコレ」
 美咲がノートの一部、『ホームレスがトールマンによって殺された』という一文を指さした。
「コレは事実じゃあありません。不審死を遂げたホームレスの死因を勝手にトールマンに置き換えただけ。もしかしたらホームレス狩りのヤンキーのしわざかもしれません。第一、無差別に見えるほど人を殺すような怪物が、『バットをへし折られただけ』で目撃者の学生を逃がすのもおかしいでス。どちらか、或いは両方が間違っている可能性があるんでスよ」
「へえ……学生のほうは、それっぽい大人を見間違えただけとか? けどバット折ってるよね……」
「木製のバットをへし折るくらい私達でも結構できますよ」
「あ、たしかに……」
 忘れがちだが、自分達も結構化物である。ソレと同等のことが出来る人間がその辺にいてもおかしくない。そしてそれがトールマンであるという確証はなく、むしろ違うケースのほうが大半だ。
「重要なのは、それが『噂についた尾ひれ』かどうかっス」

 この隠された資料室に置かれている情報の殆どは怪異に関することだ。
 そして、事実の順番もまた正確に並べることができる。
「一部の『トールマンのうわさ』は、トールマンと無関係だったッスね」
 イルミナは記述を要約したものをノートに模写しながら、それを時系列事に並べていた。
「そうだね。世の中に噂が広まったタイミングを考えれば、それ以降の発言は殆どが噂についた勘違い、あるいは嘘が大半になってくる。拡散されればされるほどね」
 ちなみにこれは、情報の隠蔽などにも時折使われる手段だ。
 センセーショナルで珍妙な事件を噂として流し、似たような事件を覆い隠す。
 文がよく触れてきた(あるいは実行もした)ことなので、よく知っていた。
「じゃあ、噂話の殆どが役に立たないじゃないッスか!」
 イルミナがうわーといって頭を抱えたが、一方の文は冷静である。
「大半はね。けどだからこそ、違和感のあるものを浮き彫りにできる」
 文は時系列で並べた際に、噂が広まる前に見つかった事件を抜き出してみる。
 すると……。

●怪異たるや
 皆の情報収集、そしてみけるの聞き込みによって夜の甲斐塚公園に情報が絞られた。
「『トールマン』という怪異はもともと存在しなかった。誰かが見かけた怪物を、そのように呼んだだけにすぎない」
 文は眼鏡をかけ直し、公園の舗装路を歩く。
 中央にあるという池に近づいた所で、がさりと茂みから何かが動く気配があった。
「『最初の目撃証言』こそが真実だったんだ。そうだよね、『トールマン』?」
 木の枝がザッと揺れ、そこから人の形をした怪異が姿を見せる。
 首は確かに頭一つ分延長され、身体は成人女性のそれによく似ている。
 両目や口からはごぼごぼと赤黒い液体を流しているその姿は、なるほどトールマンと呼んでもおかしくないだろう。
「来るよ」
 文は凄まじい速さで掴みかかってきたトールマンの腕を取ると、軽々と投げ飛ばす。
 柔術、あるいは合気道だろうか。
 ゼフィラがすかさずハイペリオンオーバーライドの術式を完成させ、解き放った。
 自身のオーラと混ぜ合わせたミニペリオンの群れが突進し、トールマンを踏みつけていく。
「暫く時間を稼ぐよ!」
 みけるが前へ出ると、鞘から刀を抜く。やや短めの直刀だ。忍者刀とも呼ばれるものだろう。
 起き上がったトールマンはみけるへと思い切り蹴りを繰り出し、それをみけるは刀で弾くように受け流す。
 ガギンという常人の蹴りではありえない音が鳴り、そしてみけるは派手にノックバックした。
 ザッと両足でブレーキをかける。
 美咲とジョーイが飛び出したのはそのタイミングだ。
 みけるにかばわれていた二人は同時攻撃を決行する。
 厳めしい顔文字(?)をディスプレイに浮かべたジョーイはガンブレードを起動。マガジンから供給される魔術弾頭がレバー操作によって弾かれ刀身に紅蓮の熱を纏わせる。短期間ながら魔術の効果を得たジョーイは、その刀身でトールマンへと斬りかかった。
 翳される腕とぶつかり、ギャリッという音をたてる。まるで石の柱でも斬り付けているような手応えだ。
 美咲はそんなトールマンの頭部。それも額をしっかりと狙って拳銃の引き金を引く。
 三発発砲。その全てが額に命中したにもかかわらずキィンと弾かれ火花すら散らした。
「最初の目撃証言……あの時点から少しおかしかったっスね。トールマンは、その時点では怪異ではなかったのかもしれないっス」
 掴みかかろうと襲うトールマンを押さえつけるべく、イルミナとフォルトゥナリアが同時に飛び出す。
 相手の腕を掴み押さえ込むイルミナと、後ろから治癒の魔法をかけるフォルトゥナリアのコンビネーションである。
「それって、どういう意味ですか!?」
「『幽霊の正体見たり枯れ尾花』……ッスか」
 イルミナは呟き、そしてこう続けた。
「されど尾花は、噂されるにつれ本当に幽霊になってしまったと」
「そんな……じゃあ、トールマンの正体って……」
 フォルトゥナリアは目を細め、真実を見極めようと意識を集中させる。
 すると、トールマンの身体に重なるようにうっすらと何かが見えてきた。
 それは石の柱にも見え、あちこちに突起の出たようにも見える。平たく述べるなら、電柱という物体に似ていた。
「けど、こんなものが……人に見間違えるなんて……」
「もう一押し、ですよ」
 そこでトールは輝剣『プリンセス・シンデレラ』を抜いた。柄だけの剣から、オーロラの刀身が伸びる。
 腕によってギャリッと止められた刀身はしかし、トールが更なる力を込めることで腕を切り落とすことに成功させた。
 ごとりと地面に落ちたそれは、やがて腐った人間の腕へと変わる。
 トールは刀身を操ると、トールマンの胸を貫くようにその刀身を延長させた。
 3mほどにまで延長されたそれは見事にトールマンの胸を貫通。そして……その正体を露わにし始める。
 電柱と、そこから首をつった女性の姿。
 ウッと思わず口元を覆ったフォルトゥナリアやみける。文やゼフィラは平然とそれを見つめ、『怪物が生まれるわけだ』と呟いた。
「皆さん、安心してください。このように見えているのは今だけのこと。所詮は、噂話から生まれた怪異です」
 トールは刀身を消失させると、柄をホルスターへと収める。
 そして戦いはおわったとばかりにトールマンに背を向けた。
 がくりと膝を地面につくトールマン。倒れ伏すより早く、その姿は灰となって消えていった。
「幽霊の正体見たり枯れ尾花――やがて花も消え果てて、残るは噂ばかりなり」
 トールはそう締めくくると、皆さん行きましょうといって歩き出す。
 報告書に纏めるには少々手間がかかりそうだが、少なくともこの『本物のトールマン』に襲われる人間はもう出ないだろう。
 一件落着、というやつだった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete

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