PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<月だけが見ている>蝕影の哭時

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<月だけが見ている> 蝕影の哭時
 広大な砂漠が拡がる国、ラサ。
 真紅の輝きが美しく、希少価値のある『紅結晶』を巡る事件は時を経て、遙か遠くの頭上にありし月へと至る。
 月に居りし『月の王国』の軍勢は、『古宮カーマ・ルーマ』を経て月に進軍してきたイレギュラーズ達を返り討ちにし、あわよくばラサへと攻め込み支配下に置こうと、吸血鬼や偽命体を含めた軍勢で以て進軍。
 しかし……それを良しとしないイレギュラーズ達は力を合わせ侵略を防ぎ、更には月の王国へと逆に攻め入る事となる。
 勿論無傷で……という訳ではない。
 多くの仲間達が、吸血鬼により烙印を刻まれ……その後遺症に苦しむ現状。
 だが……立ち止まる訳には行かない。
 目の前には、華美な装飾に彩られ、開かれた『月の王宮』の城門がある。
 『月の王国』の本陣である此処を制圧すれば、吸血鬼達が刻みし『烙印』の解放が出来るやも知れない。
『……奴らの侵入を許すな! 必ずや奴らを殺せ!』
 遠く響く声に、月の王宮の中より次々と姿を表す吸血鬼達。
 彼らを倒せば、事態は進む。しかし乍ら、この作戦に失敗すれば……ラサの国に、惨事訪れる可能性は高い。
 負けられぬ戦いを前に、イレギュラーズ達は……覚悟を決めねばならないだろう。


「皆……集まってくれたか」
 ラサの中心地、集まったイレギュラーズ達を前に、深刻な表情で皆を見返すファレン。
 そんなイレギュラーズ達の中には、烙印が刻まれている者も居り……日に日に烙印の影響が、目に見えて顕現しつつある状況。
 しかしながら、烙印の解除方法は未だ分からず、烙印の侵食は日に日に進んでいる。
 だが……烙印を解除する方法が、もしかしたら見つかるかもしれない。
「皆も知っての通り、『月の王宮』の城門を開くことに成功したんだ。ここは、月の王国の本陣であり、その中には女王『リリスティーネ』が居る筈だ」
「勿論『月の王国』の軍勢が、黙って居る訳は無い……皆を殺すべく、全身全霊、全力の力で迎撃してくる事だろう……更には『月の王宮』の中は、女王の力が一番強く発揮される地……烙印の効果がどれほど発揮されるかも分からない状況だ」
「不明確な状況が多い上に、更に中に居る吸血鬼達は、女王の下にイレギュラーズ達を行かせようと奮起している事だろう。かなりの激戦が予測される上に、不測の事態が起きる可能性も高い……だが、今このチャンスを失う訳にはいかない。皆の力を総結集し、『月の王宮』を攻略して欲しい……宜しく頼む」
 複雑な表情を浮かべるファレン。
 そう、月の王宮の攻略に向けて、今こそ決死の覚悟を決める時、であった。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 『紅結晶』を巡る事件も、とうとう終盤戦です。

 ●成功条件
  月にある『月の王宮』を攻略する事です。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はCです。
  情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

 ●周りの状況
  舞台となる『月の王宮』は、外見も華美な王宮ですが、その中もとても美しい光景が広がっています。
  まるで何処かの美術画の様な風景……そこを多くの『月の王国』の軍勢達が、イレギュラーズ達を排除しようと行動しています。
  今回、吸血鬼達は決して撤退する事は有りません(ここを突破されれば、彼らの主人である女王を危険に遭わせる事になって仕舞う故、強い不退転の心で相対します)。
  更に吸血鬼一人だけでなく、二人や三人やらでタッグを組んで迎撃しようとしてくる可能性すらありますので、かなり厳しい戦いを覚悟してください。

 ●フィールド特殊効果
   月の王宮内部では『烙印』による影響を色濃く受けやすくなります。
   烙印の付与日数が残80以下である場合は『女王へと思い焦がれ、彼女にどうしようもなく本能的に惹かれる』感覚を味わいます。
   烙印の付与日数が残60以下である場合は『10%の確率で自分を通常攻撃する。この時の命中度は必ずクリーンヒットとなり、防御技術判定は行わない』状態となります。

 ●討伐目標
 ・女王リリスティーネに従いし『吸血鬼』達。
   烙印を得て強力な力を手にした者達です。
   彼らは女王の下にイレギュラーズ達を行かせない様、見敵必殺の覚悟で全力攻撃を行います。
   攻撃手法としては近接型、後方魔法型と様々ですが……一発一発の攻撃力がかなり高く、更に付加効果として様々なバッドステータスが付与される事も有ります。

 ・烙印により強化された『烙印強化兵(ルベリウス・ソーン)』達
   晶獣の外見ではありますが、そこに烙印を更に付与されてしまい、強化&狂暴化されてしまった者達です。
   どうやら、その元となっているのは以前、ラサの国で人攫いをしていた者達の様ですが……既にその面影はありません。
   最早彼らは、元の『人』に戻る事は出来ません……彼らを救うには、『殺す』他にないのです。
   辛うじて『人』の姿と、時折苦悶の呻き、叫びの中から『タスケテ』と言う言葉を紡ぐ事でしょうが……その命乞いに耳を貸せば、彼らの思うがままです。
   彼らは特殊能力はありません……ただ前に出て至近距離で攻撃、加えて吸血鬼達の肉盾となるがのみです。

 ●特殊判定『烙印』
  当シナリオでは肉体に影響を及ぼす状態異常『烙印』が付与される場合があります。
  予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

 
 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <月だけが見ている>蝕影の哭時完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年05月24日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)
涙を知る泥人形
ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)
竜の狩人
ルーキス・ファウン(p3p008870)
蒼光双閃
ニャンタル・ポルタ(p3p010190)
ナチュラルボーン食いしん坊!
ユーフォニー(p3p010323)
誰かと手をつなぐための温度
佐倉・望乃(p3p010720)
生きて帰りましょうね

リプレイ

●月の力
 目の前に、広大な荒野が拡がる月。
 ラサと紅結晶を巡りし事件は、とうとう煌びやかな敵の本陣、『月の王宮』へと至る。
「……すんごい王宮……これは迷わない様にするだけで一苦労しそうね……」
 絢爛豪華、更にはかなり広大な敷地を誇る其れを見て、『剣閃飛鳥』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は虚空を見上げる。
 贅の限りを尽くしたといった感じの王宮は、ある意味悪趣味な光景でもある。
 声には出さないものの、そんな光景に『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)も。
(「うむ! これはこれは……わびさびのある建築も好みじゃが、こういう建築も面白いものじゃのう! ま、こういう状況で無ければじっくり堪能したかった所じゃが……まぁ仕方ないのぅ……」)
 どこか嬉しそうに頷くのだが……悠長に構えている訳には行かない。
 今でもまだ、月の軍勢の吸血鬼により烙印が刻まれ、苦しんでいる者が居る。
 ラサの国を混乱に陥れた吸血鬼達との諍いも……やっと決着の時。
「いよいよ敵の本拠地に近づいて来た様だな……」
「そうですね。文字通り、ここは敵地。相手の攻撃も苛烈になることでしょう……ですが、ようやくここまで来たんです。ならば私達は押し通るまでです! 生きて帰るためにも、阻むのならば討ち倒していただきます!」
「ああ、そうだな。吸血鬼達には色々とやられてきたが、そろそろ反撃の時、ってな所か」
「そうだね。相手も必死だろうが、こちらとて引く訳にはいかない。女王の下まで一気に突き進むとしよう」
 『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)、『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)、そして『竜の狩人』ミヅハ・ソレイユ(p3p008648)の交わす会話。
 此処を突破する事で、ラサと月の争いの一区切りにはなるのは間違い無い……だからこそ、皆の意識も自然と上がるだろう。
 ……ただ、そんな月の軍勢の中には烙印により強化された、元はラサに居たであろう『人』の成れの果ても含まれている。
 当然今回の作戦上、それをも含めて討伐しないことには、月の王宮の奥地まで到達することは出来ない。
「……烙印を請けた仲間を助けるためにも進むのに、目の前の『タスケテ』には答えられない。今日『敵』と称する相手だって、本当は……」
 胸に手を当て、瞑目する『相賀の弟子』ユーフォニー(p3p010323)。
 自分達の仲間を救うために、烙印を受けて変化してしまった元『ラサの住人』達は救えない……。
 それを思うと……やはり心が苦しくなる。
 でも……それに心を惑わされていて、自分達の仲間を救えない羽目になってしまえば目も当てられない。
「……大丈夫。きっと、大丈夫……必ず、皆で生きて帰りましょう……だから……どうか、あなたもご無事で……」
 大切な指輪をそっと撫でるように触れる『ふもふも』佐倉・望乃(p3p010720)。
 彼女の大切な人の為にも、この戦い負ける訳には行かない……それはユーフォニーも、同じ。
「……そうですね。近しい人を助けられなければ、悔やんでも悔やみきれません。彼等の声に……呑まれない為にも、必ず……」
 並々ならぬ思いを胸に抱き、目を開き豪華な王宮を見据えるユーフォニー。
 そんな彼女の想いを理解したのか、その肩をポン、と叩きながら『消えない泥』マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)とミルヴィが。
「そうだな……長い夜になりそうな戦いだ。疲れ知らずの泥人形の面目躍如とさせて貰おう」
「うん。ここを突破して後に繋げる為に頑張ろうね!」
 其れ其れの強い想いを心に抱き……そしてイレギュラーズ達は、仲間達と共に月の王宮へと突撃するのであった。

●月蝕
 そして、『月の王宮』へと足を踏み入れるイレギュラーズ。
 外から視れば絢爛豪華……そして中も金銀財宝に彩られた華美な装飾が至る所に張り巡らされており、目にも眩しい程の光り具合。
「これは……これで凄いわね」
 と肩を竦めながら溜息を吐くミルヴィに、ミヅハも頷く。
 だが、落ちついている暇はない。
 ミルヴィが先陣を切り、王宮内部を進む。
 曲がり角、分かれ道に辿り着けば、ニャンタルは聞き耳を立て、望乃は精霊達に呼びかけ、そしてユーフォニーとシフォリィは敵の気配や不穏な間隔を鋭く感じ取りつつ、先へと進んでいく。
 無論イレギュラーズ達の襲来を許した月の王宮の軍勢……これ以上進軍を許してたまるかと言わんが如く、全力で以て排除する為に動き始めており……それら全てを躱す事は不可能。
 数十分程進軍したところで……一本道の間に立ち塞がるのは、2体の吸血鬼。
『見つけたぞ! お前達をこれ以上先には進ませぬ!』
『覚悟しろ! 必ずや殺してやろう!!』
 強く、尊大な口調……彼等からすれば、イレギュラーズ達には何度も煮え湯を飲まされており、ここで倒す事で状況一変の好機である、と考えて居るのだろう。
 そして、そんな彼等の周りには、多くの烙印によって強化された『烙印強化兵(ルベリウス・ソーン)』が、彼等からの指示を受けて呻き声と共に次々と向かい来る。
 そんな吸血鬼に向けて。
「ふむ……早速現れた様じゃな。我等が憎い様じゃの? しかし簡単に諦める訳にはいかぬのじゃ!」
「ええ。私達の仲間達に、幾つもの烙印を付けて来ましたね? ……でも、もうこれ以上黙って居る訳には参りません! その悲劇の連鎖、必ずやここで止めてみせます!」
 ニャンタルとシフォリィの戦線布告。
 ただ、かの吸血鬼達はその戦線布告に熱くなることは無い。
『ふん。止められるだとか威勢も良い所ではあるな。ならばやってみるが良い』
 手を振るい、烙印鏡花兵の勢いに続けて後方から火炎の魔法を降り注がせる。
『……グゥアアア……!!』
 と、その炎は一部は烙印鏡花兵にも降り注ぎ、その身をも焦がしていく……だが、吸血鬼達は全く意に介する様子もない。
 呻きし声は、対峙するイレギュラーズ達の心を毒の如く、ジリジリと削ってくる……だが、決して立ち止まりはしない。
「彼等に可哀想、という気持ちは湧かなくはないけどね。でも……こっちも『不退転の覚悟』は同じだよ。さぁ、どっちの意思が勝つのか、いざ勝負!」
 とルーキスの言葉に皆頷き、望乃も。
「そうですね……皆、生きて帰りましょう……!」
 と口にすると共に、己が生命力を糧に仲間達の狙いと素早さを引き上げていく。
 その強化を受けて、シフォリィ、ルーキス、ミルヴィの三人が吸血鬼に向けて斬り込んでいく。
 とは言え、彼等の周りの烙印強化兵達がそれを邪魔しようと足掻いてくる。
 そんな彼等にミルヴィは少し悲しげに。
「貴方達は、元々は、ラサのろくでなしだったのかな。色んな人達を傷付けてきたのかもしれない。今回のが自業自得だ、って言う人はいるかもしれないけど……でも、その姿で満足かい?」
 と、問い掛ける。
 勿論……というか、聞く耳を持たぬ彼等は呻き、攻撃しかしてこない。
 いや、その呻き声の中に、ノイズの如く。
『……タスケテ……苦シイ……』
 と言う声が、僅か乍らに聞こえた様な、そんな気がする。
 そんな彼等に、ミルヴィは。
「……分かった。もう十分苦しんでるんだ……だから、もう苦痛を感じる事の無いように……安らかに逝かせてあげる」
 覚悟を決めた、二刀の剣舞が、その命までは奪わず地へと臥させる。
 とは言え不殺では、いつ復活するやもしれない……長期戦になれば、その情けが災厄となって帰ってくる可能性すらある。
「まぁ、優しい事で……兎に角纏めて惹きつけてやるとしよう。ユーフォニー殿、準備は良いか?」
「ん、良いよ。一気に……!」
 声を掛け合い、マッダラーとユーフォニーの二人は其れ其れの周囲に怒り付与の力を発揮。
 マッダラー側は烙印強化兵、ルーキス側は吸血鬼を中心……烙印強化兵達は、それに手行こうする事無く呻き、攻撃の手を切り替える。
 そんな大量の烙印強化兵達に対し、ニャンタルが種々の波長を口にしながら、三撃の殺人剣で一体ずつ、確実に命を切り落とす。
 それに続くミヅハも同じく殺人剣で切り臥し、大量に巣くう烙印強化兵の数を減らす事を優先。
 そう、烙印強化兵達を抑えてくれている間に、一気に吸血鬼へと間合いを詰める。
『ほう……!』
 不敵な笑みを浮かべる吸血鬼達……接近された所で、その腕に瘴気の様なものを纏わせる。
「これでも……喰らいなさい!」
 と、漆黒の片手剣を全身を使って振り落とし、一閃。
 かなりの勢いを持つが……血鬼はその手を盾の如く構え、瘴気を放射状に放射して反撃。
 カウンターではあるが、かなりのダメージを喰らう事になって仕舞うのだが……決して後退する事は無い。
 続きルーキスが周囲の烙印強化兵を一掃する様に。
「倒す遺骸に方法が無いのなら、この刃を以て彼等を苦しみから解放しよう」
 との宣言と共に、周囲への乱撃を撃ち下す。
『くっ……!』
 すると、ほんの僅かではあるが、表情が曇る吸血鬼。
 思ったよりもイレギュラーズ達の攻撃が重いのであろう……その苦悶の前に、今迄ならば戦略的撤退という手段を取ることが出来ただろう。
 だが、後退する訳には行かない……ここは彼等の拠点であり、退けば主に危害が及ぶ事になる。
 故に、どちらも全力で以て戦わざるを得ない。
『負けられぬ……! お前達をここより先に通す訳にはいかぬのだ!!』
 と、自分達に言い聞かせるかの如く、強い口調で叫ぶ吸血鬼。
 そしてその声を枷にされているかの如く、烙印強化兵達は死なば諸共で前へと前進し、攻撃。
 彼等の命を意識する事などはなく、彼等の使い捨ての駒として……ただイレギュラーズを殺す為に動かされる。
『グゥアアア……!!』
 先程まで、僅かに含まれていた救いを求める声も、段々と掻き消されてしまい……もはや闘争本能だけで突き動かされている様な状態。
「ふむ……そうか。吸血鬼の枷を振り解く事は出来ないという訳の様じゃの」
「ええ……救う道程は……やはりないのでしょう……」
「そうじゃな……なぁに、ならばこれ以上苦しませぬ様にするしかないじゃろう」
「……ええ」
 ニャンタルの言葉にユーフォニーは静かに頷く。
 そして、吸血鬼に相対する仲間達に吸血鬼を任せ、残る仲間達は烙印強化兵を倒す事に全力を挙げる。
 勿論吸血鬼陣容からの熾烈な攻撃は、イレギュラーズ達の体力をハイペースで削り去っていく。
 さすれば膝を突く者も出てきてしまう……だが直ぐに仲間達がカバーする為に入り込み、その間に望乃が後方から回復を飛ばして戦線を維持。
 イレギュラーズ達は、其れ其れの役割を果たして立ち回る一方、月の軍勢は吸血鬼の指示の下、烙印強化兵が死を前提にイレギュラーズ達を抑え、吸血鬼は遠近両方から半ばもろとも攻撃をする。
 仲間を全く以て蔑ろにしたその行動……様々な所から、悲鳴と苦悶の叫び声が上がる。
 ……其の声に胸を痛めながらも望乃は。
「……ごめんなさい。ここで、終わらせてあげることしかできないのです」
 と呟きながら、仲間達の回復に全力を尽くし続ける。
 そして……。
『ウグゥウウアアアア……!!』
 と、最後に残りし烙印強化兵が絶境と共に崩れ去る。
『……何だと。全滅しただと……!?』
 イレギュラーズ達と対峙し続けていた吸血鬼達が、流石に驚きの声を上げる。
 そんな彼等にミルヴィが。
「……アンタ達だけは、絶対に許さないわ。彼等の悲痛な叫び等、貴方達に取っては心地よい囀りなのでしょうね? 彼等の苦しみ、救いを求める声に耳を傾ける事も無い……ならば、彼等の苦しみを、この剣舞に乗せて喰らわせてあげるわ!」
 辛辣な言葉と共に、剣の嵐で身を切り刻む。
 更にルーキスも、その身を砕きし強撃一閃。
 二人の渾身の一撃は、吸血鬼の不意を突いて……大ダメージ。
 耐えきれずに足を地につき、荒れた息。
『はぁ……く……ま、まだまだだっ!』
 どうにか気合いで再び立ち上がる吸血鬼。
 勿論、もう片割れの吸血鬼が居る故に、ということもあるだろう。
 とは言えかなりのダメージを喰らっている状況で、この戦況をひっくり返すのは難しいのは間違い無い。
 ……しかし諦める事は出来ない。
 そして。
「……沼に沈め、吸血鬼」
 短く、端的に言い放つマッダラー。
 そして彼の手より放たれた夢想は吸血鬼らを包み込み……一匹を死へと招く。
 更に流れる様に最後に残る一体の四方を取り囲むと共に……各々の強撃を容赦無く叩きつけ、彼も又死へと至った。

●烙堕
「何とか第一陣……といった所か……」
「そうですね。まだ吸血鬼達の声もします。私達もかなりの疲弊具合ではありますが……でも、何はともあれ正念場です。ここで退く訳には行きません!」
「ああ……ここは敵の本拠地だ。何があるかもわからないからな」
 シフォリィの言葉にマッダラーは頷く。
 一先ずの敵陣を仕留めたイレギュラーズ……だが、まだ王宮内では吸血鬼の指示の声と、烙印強化兵達の叫びが響きわたり続ける。
 勿論、この場で立ち止まっていれば……ここに追撃の軍勢が来るのは、先ず間違い無いだろう。
「……取りあえず、回復だ。見張りは俺に任せておけ。なぁに、休めるときに休むのも戦いだ。疲労は活躍の裏返し、恥じる事ではない」
 とマッダラーが立ちて、その背後でイレギュラーズ達は回復に努める。
 ……勿論、全て回復し切るまで時間があればいいのだが、程なくイレギュラーズ達の耳に、次なる敵の影が近づく。
「む……次の輩共が来た様じゃのう?」
「ええ……」
 ニャンタルの言葉にシフォリィは頷き、立ち上がりその方角に構える。
 すると……綺羅びやかな輝きの中に、更なる吸血鬼と烙印強化兵達の影が出現。
「本当……ここは敵の本拠地という事を、分からされますね……」
「ああ……」
 望乃に頷きつつ、マッダラーは次なる吸血鬼と烙印強化兵を睨み据える。
 そして、烙印を受けし者達に向けて。
「お前達が行き方を間違えたなどと言うつもりはない。俺も泥人形だからな……だが、だからこそ、人の輝きを投げ捨てたお前達を放っておく訳にはいかないんだ。月は太陽には成れない。輝きを奪う在り方を選んだのなら、奪われる覚悟も持って居るのだろう?」
 そんな泥人形の言葉に吸血鬼は嘲笑うかのような笑みを浮かべる。
『ふん……地上で足掻くお前達を我々が支配してやろうというのに、何が不満だ? ま、最早引き返せぬ。お前達を殺し、月の力を見せつける時……覚悟して貰おう』
「……」
 吸血鬼に肩を竦めるマッダラー、そしてシフォリィが。
「私達は、絶対に負けません。負けられません……! さぁ、女王リリスティーネへの道を、開けて貰いますよ」
 剣を構え、強い眼差しで言い放つ。
『面白い……ならば、戦おうではないか。互いに退けぬ身……膝を突くのはどちらか、分からせてやろう』
 そう吸血鬼も笑い……幾度の戦に身を投じ、イレギュラーズ達は王宮深部へと少しずつ近づいていくのである。

成否

成功

MVP

マッダラー=マッド=マッダラー(p3p008376)
涙を知る泥人形

状態異常

なし

あとがき

月の王宮討伐依頼に参加いただき、ありがとうございました。
敵軍勢多数ではありましたが、何とか奥地へと至る事が出来た様です。
あともう一息……皆様のお力が必要です、宜しくお願いします!

PAGETOPPAGEBOTTOM