PandoraPartyProject

シナリオ詳細

続々・事故物件に泊まろう。或いは、七不思議と夜の学校…。

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●放課後の怪談
「あー、ジョシュア君。ジョーシューアー君?」
 練達。
 再現性東京のとある通りで、ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)は呼び止められた。
 ジョシュアを呼び止めたのは、煙草を咥えた長身女性だ。
 名を夜鳴夜子という霊媒師であり、以前とある依頼を受けた折、ジョシュアとは顔見知りである。夜子は紫煙を燻らせながら、ジョシュアの肩に手を回す。
 にぃ、と犬歯を剥き出しにした狂暴な笑みだ。
「あ、夜……子さん? えっと、何でしょう?」
「いやぁ、暇そうだなーって思ってさ。暇なら、お姉さんに付き合わない?」
「いえ、暇ってことも」
 無いのだが、聞いてはもらえなかった。
 引き摺られるようにして、ジョシュアは夜子に引き摺られていく。

 夜。
 太陽は沈み、辺りがすっかり闇に包まれたころである。
 ジョシュアが呼び出されたのは、深夜の小学校だった。
 時期は奇しくも大型連休の初日。
 固く閉ざされた正門を乗り越え、ジョシュアと夜子は真夜中の学校へ足を踏みいれた。無論、不法侵入である。
「学校の七不思議って知ってるか? どこの学校にもある、いわゆる怪談ってやつだ」
「はぁ……聞いたことはありますけど」
「ご多分に漏れずこの学校にもあるんだよ。一人でに鳴る音楽室のピアノ。理科室の動く人体模型。異次元に通じる教室。喫煙所の幽霊。屋上の笑うサラリーマン。徘徊する狐面の女……問題なのは、その3つ目だ」
 3本の指を立てて夜子は言った。
「あの6つしかないんですか?」
「6つしかねぇよ。7つ目は準備中なんだと」
 そう言うものだ。
 七不思議が必ず7つとも限らないし、四天王が4人とも限らない。
「先日、ここに通う女子生徒が1人、行方不明になった。友人たちと肝試しのために学校へ乗り込み、まるで霞のように消えちまったって話だ」
 行方不明になった生徒が、校内のどこで姿を消したかは分からない。
 だが、一緒に肝試しに行った友人たちは、七不思議の3番目……異次元に通じる教室に、迷い込んだのだと騒ぎ立てているそうだ。
「ま、嘘か本当かは分からないけどね。ただ、怪しい気配がしているのは本当だ。そこで、アンタらの出番ってわけだ」
「はぁ。つまり、学校を探索して、行方不明の生徒を探せばいいんですね?」
「そういうこと。得意だろ、そう言うの? 好きだろ、人助け」
 よろしく頼むよ。
 そう言って夜子は、校舎の玄関付近を指さす。
 そこには人影が幾つか……どうやら夜子は、行方不明の女子生徒捜索のために他にも数名のイレギュラーズを呼んでいたらしい。

GMコメント

●ミッション
夜の学校を探索し、行方不明の女子生徒を発見する

●事故物件情報
再現性東京のとある小学校。
先日、1人の女子生徒が校舎内で行方不明になった。
4階建て。学校にありそうな設備はだいたいある。

●七不思議
1・一人でに鳴る音楽室のピアノ
2・理科室の動く人体模型
3・異次元に通じる教室
4・喫煙所の幽霊
5・屋上の笑うサラリーマン
6・徘徊する狐面の女
7・準備中


動機
 当シナリオにおけるキャラクターの動機や意気込みを、以下のうち近いものからお選び下さい。

【1】夜子に呼び出された
ローレット経由、または偶然会った夜子の依頼を受けて、事故物件を訪れました。事件解決に乗り気です。

【2】異様な気配を感じた
夜妖でしょうか? それとも別の何かでしょうか? 異様な気配を感じ、夜の学校を訪れました。

【3】一夜の宿を求めて
ホテルやネカフェが満員でした。大型連休ではよくあることです。一夜の宿を求め、夜の学校を訪れました。


事故物件に泊まろう
夜の学校での過ごし方です。何らかのトラブルに巻き込まれることが予想されます。

【1】行方不明の女子生徒を探す
夜の校舎内を探索し、行方不明になった女子生徒を探します。

【2】七不思議の謎を解き明かす
そこに不思議があったから……謎は解き明かされなければいけません。主に七不思議に関わる場所を捜索します。

【3】7番目の不思議を目指す
七不思議の7番目が空いています。あなたは7番目の不思議となるべく、他参加者を脅かします。

  • 続々・事故物件に泊まろう。或いは、七不思議と夜の学校…。完了
  • GM名病み月
  • 種別 通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年05月05日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談0日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
城火 綾花(p3p007140)
Joker
ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)
無銘クズ
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
温もりと約束
シャーラッシュ=ホー(p3p009832)
納骨堂の神
クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい

リプレイ

●さぁて、今週の事故物件は…?
 燻る紫煙が、校舎の壁を舐めるように立ち昇る。
 細く、薄く。
 紫煙のたなびく先には白い月がある。
『いい夜だよね。こんな夜は煙草が美味い』
 闇夜に男の声が零れた。
 声の方へ視線を向けて『悪戯幽霊』クウハ(p3p010695)は紫煙を吐いた。
 闇の中から滲むように現れた、スーツ姿の男性の顔に見覚えがあったからである。
「あァ、こういう日は月でも見ながら一服しなきゃ嘘ってもんだ」
 そう言ってクウハは、胸ポケットからジッポライターを取り出す。手首のスナップで蓋を開けると、灯した火を男の方へ差し向ける。
「先日ぶりだな。息災だったかァ?」
 男は咥えた煙草に火を受けると、肺いっぱいに煙を吸い込む。
 一時、美味そうに目を細めて、男は「はて?」と首を傾げた。
『先日ぶり?』
「あン? ほら、会っただろ? オフィスビルの喫煙所でよ」
 先日、とあるオフィスビルに足を運んだ折のこと。クウハはそこの喫煙所で、1人の地縛霊と出逢った。今、クウハの隣で紫煙を燻らせている男は、喫煙所の地縛霊ではないのか。
 何しろ、顔も背丈も同じなのである。
『あぁ、それは兄だね。オフィスビルにいるのは兄だ。元気だったかい? お互い、地縛霊だから、会いに行くことも出来なくてさ』
「……兄弟そろって喫煙所に縛られてンのかよ」
『正確には三兄弟だけどね。弟もいるんだ。弟はそこら辺の喫煙所を彷徨い歩いているはずだから、もし会ったらよろしくいっておいてくれるかい? 昨今の禁煙ブームのせいで、肩身が狭い思いをしているはずだから』
 そう言って彼は、煙草の先の灰を落とした。
 暫く、沈黙が続く。
 やがて、煙草を吸い終えたクウハは吸殻を捨てて、ついでに“猫のぬいぐるみ”を置く。
「まぁ、会ったらよろしく言っとくよ。弟さんの名前は?」
『健斗だよ。屋仁蔵 健斗。ちなみに僕は雪太で、兄は若葉って言うんだ』
「名が体を表し過ぎじゃねェ?」
 
 夜の校舎は、ひどく暗い。
 当然だ。
 世間はまさに大型連休。年中を通して子供たちの元気な声が響き渡っている学び舎も、この時ばかりは静まり返る。
 そんな静寂の中、廊下に響く微かな足音。
「うーんここ、何かあるわね……ギャンブラーの勘ってヤツかしら」 
『Joker』城火 綾花(p3p007140)だ。校舎の窓や扉の類には鍵がかかっているはずなのだが、彼女はどこからか忍び込んだらしい。
 なんのために?
 決まっている。一夜の宿を求めてだ。
 大型連休ということもあり、市井のホテルやネットカフェはどこも満室。綾花とて女性であるため、まさか公園などで夜を明かすわけにもいかず、仕方なしに夜の校舎へこっそりお邪魔したのである。
 だが、いざ忍び込んでみれば、これがなかなか尋常ではない。校舎のいたるところから、怪しい気配がしているからだ。
 加えて、綾花の足音を追うかのようにして、どこからかピアノの音色も聴こえはじめた。
「野宿も嫌だし仕方ない、行くしかないわね……」
 一瞬、足を止めた綾花だが、暗い廊下の真ん中で立ち止まっているわけにもいかない。意を決して、彼女は視線を階段へ向けた。
 ピアノの音色は、2階の音楽室からだろう。安心して夜を過ごすには、不可思議な気配や事象の原因を突き止め、排除すればいい。
 そう思い、綾花は2階へ向かおうとしたが……。
「っ!?」
 階段の踊り場に、人の影を見た。
 長身痩躯の人影だ。
 月を背にしたその人影は、じぃと綾花の方を見ている。
 きっと……見ているのだろう。
 その頭部は、ヘルメットに覆われており表情までは分からない。
「そちらの方、どこの何者でありますか?」
 少しくぐもった声で、人影は問う。
 一瞬、ヘルメットのバイザー部分に青い光が瞬いた。
 (°Д°)
 どうやら、驚いているようだ。
 この夜、校舎の階段で、綾花と『夜善の協力者』ジョーイ・ガ・ジョイ(p3p008783)は運命的な出会いを果たしたのである。

 校舎の2階。
 図書室に、『彼岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)が立っている。
 本棚の書籍を人通り眺めると、そのうち1冊を手に取った。
「結果的に7の7乗不思議になっても不思議じゃないよな」
 大地はそう呟いて、本のページに目を通す。
 本のタイトルは『厳選! 学校の七不思議18選!』。
 古今東西の学校に伝わる七不思議の中でも、とくに有名なものを18集めて掲載しているらしい。
 そう、七不思議は7つではない。
 七不思議が7つだなんて法律は無いのだ。
「大地、好奇心は猫を殺ス、っていうゼ? まあお前いっぺん死んでるし良いヤ」
 大地の口から零れたのは、自分自身へ向けた誰か“別人”の言葉だ。
 その言葉を耳にして、大地は眉間にしわを寄せる。
「それはちょっと酷くないか?」
「いつものことだロ。この程度で死ぬんなら、とっくの昔に死んでるヨ」
 なんて。
 大地は1人で“語り合い”ながら、図書室を後にしたのであった。

 夜の校舎の玄関である。
 『温かな季節』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)と夜鳴夜子は、校舎の見取り図に目を向けて、何事かを話し合っている。
「さて、そんでジョシュア君。まずはどっから周るよ?」
 さも気安い様子で夜子は問うた。
 ジョシュアは少し思案した後、音楽室を指さした。
「ここ、でしょうか」
「ほぉ? 何で?」
「何でって……ほら」
 先ほどから、夜の校舎にピアノの音が鳴っている。
 七不思議の1つ目、「一人でに鳴る音楽室のピアノ」に間違いは無いだろう。もちろん、それが誰かの悪戯でないのなら、ではあるが。
「でも、屋上の笑い声に呼ばれているような? 気も? するんですが?」
 うぅん、と腕を組んで首を傾げて見せた。
 それからジョシュアは、玄関を潜って校舎の外へ。
 視線を屋上へと向ける。
「何かいるんですけど……知っている人なようにも? 見える? 気が?」
「……なぁんか、歯切れが悪ぃな」
 そう言いながらも、夜子はジョシュアにならって屋上へ目を向けた。
 数十メートルほど先。
 夜空を背にした人影が見える。
「2人いねぇ?」
「2人、いますよねぇ」
 七不思議の5つ目、「屋上の笑うサラリーマン」が2人いた。

「ははははははは」
 屋上の端から地上を見下ろし『納骨堂の神』シャーラッシュ=ホー(p3p009832)は笑っていた。
「はははははは」
 ホーの隣には、どこにでもいそうなサラリーマンの姿がある。
 彼もまた、ホーと同じく地上を見下ろし笑っていた。屋上を見上げるジョシュアと夜子のことを笑っているのである。
「はははははは」
「はははははははは」
「「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」」
 シンクロニシティ。
 ホーと、サラリーマンの2人は、一言も言葉を交わしていない。
 だが、不思議の2人の心は通じ合っていた。
 笑いながら、2人は屋上を出ていく。
 笑いながら、2人は夜の校舎へ繰り出したのだった。
「……そうはならんだろ」
「なってんだよなァ」
 なんて。
 そんなホーとサラリーマンの2人を見ながら、大地とクウハはそう呟いた。

●七不思議とかなんぼあってもいいですからね
 夜の校舎を、綾花とジョーイは肩を並べて歩いている。
 階段での運命的な邂逅から10分。
 一夜の宿を求めて校舎へ忍び込んだ2人は、意気投合し、噂に名高い七不思議とやらの調査に乗り出していた。
 何しろ、この校舎には連休最終日まで泊まらせてもらうつもりだ。
 もしも夜妖などの怪異が潜んでいれば、安らかに眠ることさえ出来ない。それは由々しき事態である。
「それで、まずはどこから探しますかな?」
 ジョーイが問うた。
 バイザーに「(・∀・)??」の顔文字が映る。
「どこから探すかって予定はないのよね」
 音楽室のピアノも、いつの間にやら鳴りやんでいる。
 念のため、つい今しがた音楽室を覗いたが、そこには“何も”いなかった。
 せいぜいが、猫のぬいぐるみが置かれていたぐらいだろうか。
「ふぅむ? となると、次は理科室か喫煙所か……七不思議の定番と言えば、理科室でありますが」
 バイザーの表示が切り替わる。
 (._ .@)
 ジョーイは思案しているようだ。
「ま、鬼が出るか蛇が出るか、なるようになるわよ」
 現在、2人は1階の廊下を進んでいた。寝床となる保健室の下見をするためだ。
「勘で言うなら2階か3階……教室が“当たり”っぽいわよね」
「では、そちらに向かうのが良いですぞ。直感は存外、馬鹿にならないものでありますからな」
「行方不明の女学生はどこかの教室で姿を消したとか。なるほど、たしかに教室が一番怪しいですね」
 そうと決まれば、モタモタしているのは時間の無駄だ。
 夜は長いが、永久ではない。
 朝が来る前に、事件を解決してしまいたかった。
 かくして、3人は再び階段へ。
「待って……1人多くない?」
 綾花が問うた。
 足を止めた2人は、後ろを振り向く。
「お……っ!?」
  Σ(๑ °꒳° ๑)
 ジョーイが思わず、びくりと肩を跳ね上げる。
 ぬるり、と。
 まるで闇の内から這い出すようにして、薄ら笑いを浮かべた男が現れたからだ。
 まるで、どこかで見た顔だ。
 雑踏の中か、昼飯時の定食屋か、それとも満員電車の中か。
 どこにでもいそうな顔をした、いかにも“平均、平凡”を追求したような顔が闇の中より出でたのである。
「だ、誰かと思ったら……たしか、ホーさん?」
「心臓に悪いですぞ」
 胸を抑えて綾花とジョーイは、上半身を仰け反らせる。なお、ジョーイに心臓があるかどうかは不明であった。
「ははは。捜索の合間に皆様を驚かせる少しの余裕と悪戯心は持っておきたいものですね」
 そう言ってホーは歩き始めた。向かう先は、2階の教室である。
 2人を驚かせたのは、ホーなりのジョークであったらしい。
「私も同行します。まいりましょう」
「え、えぇ、そうね。誰かが困っているのよね?」
「でしたら、助けてあげるべきですぞ」
「はははははははははははははははははははは」
 かくして“4人”は、七不思議の3番目「異次元に通じる教室」へと向かう。

 同時刻、理科室。
 縄で縛られた人体模型と骨格標本を前にして、ジョシュアと夜子は目を丸くしていた。
 七不思議の2番目「理科室の動く人体模型」の様子を見に来たのだが、これでは動きたくとも動けないだろう。
「これは、一体何事でしょう?」
 ジョシュアがそっと縄へ触れた。
 結び目は硬い。少し暴れた程度では、きっと解けないだろう。
「さぁ? なんだろうな、これ」
 夜子の声は乾いている。
 顔を見合わせたジョシュアと夜子は、人体模型のすぐ前方……人体模型と向かい合うように置かれた、猫のぬいぐるみへ視線を向ける。
 見ようによっては、縄で拘束された人体模型を、ぬいぐるみが観察している風にも見えた。
「もしかして、そういう趣味の人体模型なんでしょうか?」
「あー……まぁ、春だしな」
「春になると、そういう人が増えるって言いますもんね」
 七不思議の考えることは分からない。
 とにかく、ここは“外れ”のようだ。人体模型のお楽しみを邪魔してもいけない。
 そう判断したジョシュアと夜子は、急いで理科室を後にした。
 2人が廊下へ足を踏みだした、その時だ。
『ぁぁぁぁあああああ!?』
 夜の校舎に、誰かの悲鳴が木霊した。

 時刻は少し巻き戻る。
 3階。廊下の端の教室前だ。
「なぁ……七不思議ってのは一体なんなんだろうな? ほとんど実害も無いし、わざわざ7つに限定する理由も分からない」
 例えば、音楽室と理科室では何の怪奇現象にも遭遇しなかった。
 ここまで校舎を歩いた結果、大地が見たのは七不思議の5つ目、「屋上の笑うサラリーマン」ぐらいのものだ。なぜかホーも一緒にいたが。
「さァ? お手軽かつ安全に、ビビリてェって連中が多いンじゃねェか?」
 そう言ってクウハが、教室の扉に手をかける。
 喫煙所の霊とは逢ったが、音楽室の理科室、廊下では何の怪異にも合わなかったので少々、拍子抜けしているのだろう。
 その横顔は、少しだけ退屈そうにも見えている。
「クウハ。君、退屈なんだロ?」
 大地は問う。
 クウハは何も答えないまま、教室のドアをスライドさせた。
 きっと、ここも外れだろう。
 退屈そうに、ドアを開け……。
「あン?」
 果たしてそこには、どこまでも続く暗闇ばかりが広がっていた。
「……」
 パタン、と。
 クウハは無言でドアを閉める。
「いヤ、明らかに様子がおかしかっただロ」
「分かってんよ。分かってんだが……何か、嫌な気配がしなかったか? 俺様が怖気を感じるなんて、尋常じゃねェぞ?」
「だったらなおさら、確かめなきゃ駄目だろ。見ちゃった以上、放置はできないぞ」
「……まァ、そうなんだが」
 と、いうわけで。
 意を決し、クウハは再びドアを開いた。
 瞬間、ずるり、と。
 教室の中から、闇が溢れ出しクウハと大地に絡みつく。
 或いは、2人を飲み込むと言った方が正しいだろうか。
「は……ぁぁぁぁあああああ!?」
 思わず、クウハは大声をあげた。
 闇の中に、ぐったりとした少女の顔を見たからだ。

●あれもシリーズ多いですからね
 教室に喰われるかと思った。
 後にクウハは、この時の出来事を上記のように語ったという。

 3階の廊下は闇に飲まれて真っ暗だった。
 窓の外から差し込む光も、今はすっかり失せている。
 悲鳴を聞きつけ、3階へ駆けあがって来たのは6人。
 ジョシュアと夜子、綾花、ジョーイ、ホー、そして笑うサラリーマンだ。
「な、何事ですか、これ!?」
 迫りくる闇から逃げながら、ジョシュアは問うた。
 だが、誰も答えを返さない。
 闇から逃げるのに精いっぱいで、答えを返す余裕が無いのだ。加えて言うなら、目の前で起きている現象の正体が判然としないのもある。
「おィ! 誰かそこにいンのか!?」
「おや? この声はクウハ殿ではないですか?」
 ひょい、と闇を跳び越えながらホーが呟く。
 闇の中から聞こえた声に、覚えがあったからである。
 次いで、闇の中から大地の声が響いた。
「クウハが女の子を見つけた! こっちで保護してるが、どうにか助け出せないか?」
 その声が、きっかけだっただろう。
 逃げるばかりだった6人は、ほぼ同時に足を止めて迫りくる闇へ向かい合う。
 そこに誰か、助けを求める者がいるのだ。
 であれば、助けなければ嘘だ。

 まずはホーが、闇の中へ手を入れた。
 その手を、大地が握りしめる。
「クウハも一緒ダ! 引いてくレ!」
「はぁ。と言われても……重いですね。1人では無理です」
「だったら2人でやればいいじゃない!」
「2人でも足りなければ3人で、ですぞ! 幸い、人数は揃っておりますからな!」
「はははははは」
 ホーの手を、綾花とジョーイ、そして付いて来ていたサラリーマンの霊が掴んだ。
 ホーを含めて、これで4人。
「出てきたらすぐに受け止める! 引いてくれ!」
 夜子が叫んだ。
 その隣では、万が一の事態に備えジョシュアの撃鉄を上げた。

「せーの!」
 綾花の音頭に従って、4人が大地を引き上げた。
 ずるり、と泥の底から引き上げられるような重たい感覚がして、まずは大地が。次いで、少女を抱えたクウハが闇から抜け出した。
 大地の肩で、筋繊維の軋む音。
 大地とクウハの身体が床を転がっていく。拍子に投げ出された少女を、夜子が慌てて抱き留めた。意識を失っているが、命に別状は無さそうだ。
 それから……。
 投げ出されたクウハたちを追うようにして、闇の中より影のような人影が姿を現した。
 輪郭さえもはっきりとしない。
 影か闇かを、人の形に塗り固めたかのような歪で、不可思議な存在だ。
 おそらく、それこそが七不思議の3番目「異次元に通じる教室」の正体なのだろう。
 けれど、しかし……。
「3番目は今日で欠番ですね」
 1つ。
 銃声が鳴り響き、ジョシュアの放った弾丸が、人影の眉間に風穴を穿つ。
 それで、終わり。
 声にならない悲鳴をあげて、人影は崩れるように姿を消した。

 かくして、長い夜が明ける。
 校舎に泊まる綾花とジョーイの2人を残し、救助された少女を含めた“7人”は朝日と共に校舎を後にするのであった。
 この夜、2つの七不思議が消えた。
 そして、新たな不思議が1つ。
 その事実を知る者は少ない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。
行方不明の女子生徒は、無事に救助されました。

また、準備中だった七不思議の七番目に、以下が追加されました。
7・徘徊するサラリーマン

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