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シナリオ詳細

死体博士の憂鬱

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●死体は踊る
 ずるり。ずるり。ずるり。
 何かを引きずるような音が、夜の森にこだました。
 幻想は、アーベントロート領の一角。周囲に村落などはない僻地の僻地。
 本来ならば野生動物のテリトリーであるこの場所を、無数の人影が蠢ている。
 その人影はずるり、ずるりと足を引きずり、無目的に、バラバラに、辺りをうろついていた。
 うう。うう。ああ。
 人影が呻いた。月明りに照らされたその顔は、半ば以上に腐り落ちている。みれば、周囲の人影も、大なり小なり――大きいものは骨だけになっているが――その肉は腐敗し、崩れ落ちている。
 間違いない。アンデッドの群れである。
 しかし、本来ならば人も立ち入らぬ、つまり人の死体など存在しないはずのこの場所で、何故これほどのアンデッドが徘徊しているのだろうか?
 と、がさり、と森の草を踏みつける音が聞こえた。
 その方向には、徘徊するアンデッド達を見つめる、初老の男の姿があった。
 男の肩が震えた。怯えている様子ではない。
「し……」
 男が声をあげた。
「しまったあああああああああ!!!!」
 叫びは夜の闇を切り裂いて、辺りに響き渡った。

●死体の盆踊り
「えー、お仕事です!」
 と、言う『小さな守銭奴』ファーリナ(p3n000013)の横には、温和そうな雰囲気を纏った初老の男性が立っている。
「今回のお仕事は、こちらの『死体博士』さんからの依頼になるわけですが」
 死体博士、という言葉に、ぎょっとしたイレギュラーズも居たかもしれない。『死体博士』は苦笑しつつ、
「こう見えても医者の端くれだよ」
 死体博士は、いわゆる法医学者であるという。旅人(ウォーカー)である彼は練達へとたどり着き、そこで現在も、医学研究を続けているとか。
「この世界は魔法や奇跡のような物が日常に存在する、私のいた世界からは考えられない様な場所だ。だが、それでも、科学的な研究をおろそかにしていいというわけではないと思うのだよ」
「そこで、博士が現在研究を続けているのが……」
 ファーリナは些か言いよどんだ様子である。
「うむ、死体の腐敗過程の研究だ」
 と、博士は言い切った。
 人は死ねば骸となる。それを放置していれば腐敗し、分解され、土にかえる。しかし、その様子は一律とは言えない。様々な要因により、その腐敗の度合いは様々だ。
 博士はそれを観察・記録する事で、実際に事件や事故により発生した遺体が、どのような状況で死に至ったのかを調査するための資料とする。
 まったくもって、科学的な研究なのである。
「いやいや、気分的に受け入れられない、という事には慣れているよ。練達でもそのような意見はあったし……天義に研究施設の設置を陳情に行った際などは、危うく殺されかけたからね」
 はっはっは、と笑う博士。
「そりゃそーですよ……」
 思わずぼやくファーリナである。
「えーと、ここからが本題です。っていうか、まぁ、大体察しのついた人もいるかと思いますけど、一応」
 ファーリナの言によれば、博士の研究施設は、幻想はアーベントロート領にも存在するのだという。
 博士が研究施設設置の陳情に訪れた際、彼の暗殺令嬢は、その内容を聞いて二つ返事で設置を許可したらしいが、彼女が学術的な研究内容に興味を示すとは思えない。恐らく死体の提供という実利的な面と、トラブルが起きたらイレギュラーズが動いて面白いからという趣味的な面から設置を許可したのだろう。
 さて、幻想の死体研究施設、これを通称『モルグ』と呼んでいるらしいが、そのモルグの研究施設に、ある日アンデッドが大量発生したのだという。そりゃそうだろう。施設となっている森には、新鮮な物からそうでないものまで、山ほどの死体が補充されているのである。
「アンデッド対策に毎日見回りはしていたのだが、今回はあまりにも大量すぎてな。職員では手に負えん、と」
「そこで皆さんの出番なわけです!」
 と、ファーリナが言った。
「アンデッドの数は全体で20。いわゆるゾンビとスケルトンの群れですが、その内訳は不明です! その、腐敗の状況がそれぞれなので。それと」
 と、ファーリナは露骨に眉をひそめた。
「めっちゃくちゃ臭いです」
「まぁ、腐敗臭があるわけだな」
 事も無げに、博士は言った。
「慣れなければ強烈だろうな……まぁ、慣れれば近くで食事もとれるが。対策はとっておいた方がいいと思うよ」
 笑いつつ、博士。ファーリナは些かげんなりした様子であったが、
「えーと、まぁ、そういうわけです! しっかり働いて稼ぎましょう!」
 と、イレギュラーズ達へ告げるのであった。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 森林にはびこるアンデッドの群れを討伐しましょう。

●成功条件
 モルグを徘徊するアンデッドを全て撃退する

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

●状況
 モルグは幻想のとある森林地帯の一部を、そのまま施設として利用しています。周囲は柵で覆われているため、中のアンデッドたちが外へ出る事はありません。
 周囲をかこっている柵以外に手を加えられた部分はなく、内部は一般的な森林そのものです。
 アンデッド達は森林を徘徊していますので、全て発見し、撃退する必要があります。
 また、森林には強烈な腐敗臭が漂っており、対策をとらなければ凄く気分が悪くなります。その結果、一定時間ごとにゴリゴリAPが減っていきます。何らかの対策をとることができれば、減少量を緩和することができるでしょう。
 (※現実的に考えれば全てのアンデッドから腐敗臭がして当然ですが、この措置は今回のシナリオのみに適用されるルールとしてご了承いただければと思います)

 作戦の決行タイミングは、昼と夜、どちらか一つを選んでください。どちらにもメリットがあり、デメリットがあります。

 昼:日中であるため視界が良く、アンデッド達の動きも鈍くなるため、索敵しやすく、戦いやすくなります。ただし、太陽熱に照らされたため、腐敗臭は普段より強烈な物になります。

 夜:夜間であるため、光源を用意しなければ視界が悪く、アンデッド達の動きも活発になるため、索敵しづらく、戦い辛くなります。ただし、辺りが冷えているため、腐敗臭が普段よりも抑えられています。

●エネミーデータ
 アンデッド ×20
  いわゆるゾンビと、スケルトンの混成です。
  明確な内訳は不明ですが、スケルトンの方が数は少ないです。
  基本的に戦闘能力は同等ですが、使用スキルが若干違います。

  ゾンビは至近距離の物理単体攻撃『かみつき』と、近距離の物理単体攻撃『引っ掻き』を行います。
  『かみつき』の方が威力が高く、どちらの攻撃にも『毒』を付与する効果があります。

  スケルトンは中距離の物理単体攻撃『骨投げ』を行います。
  威力はさほど高くはありません。

 以上となります。
 それでは、皆様のご参加お待ちしております。

  • 死体博士の憂鬱完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年10月12日 21時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
ダルタニア(p3p001301)
魔導神官戦士
ダーク=アイ(p3p001358)
おおめだま
七鳥・天十里(p3p001668)
ノースポール(p3p004381)
差し伸べる翼
エゼル(p3p005168)
Semibarbaro
イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)
水葬の誘い手
ビス・カプ(p3p006194)
感嘆の

リプレイ

●ようこそ、モルグへ
 モルグ。とある世界において『死体安置所』を意味する言葉であるが、今回に限って言えば、それは死体研究所の通称を指す。
 『死体博士』の研究には死体が欠かせず、安置かはさておき死体は実際に置かれているのだから、その呼び名はある意味適切ではあるのかもしれない。
 さて、そんなモルグへとやってきたイレギュラーズ達であったが、入り口に到達した瞬間、とにもかくにも、まず思わず顔をしかめた。あたりに漂う、強烈な臭気の為である。
「ハハ、覚悟はしていたつもりだケド……これは、凄いネ」
 『水葬の誘い手』イーフォ・ローデヴェイク(p3p006165)は、たまらず渇いた笑い声をあげた。
 あたりを漂うのは、死体が発する強烈な腐敗臭である。死体の腐敗過程を研究するための施設であるのだから、そう言った匂いがする事は当然で、イレギュラーズ達も対策と心構えはしてきたつもりではあったが、それでも、キツイものがある。
 また、イレギュラーズ達は索敵と戦闘を重視し、日中での作戦遂行を選んでいる。太陽も雲に隠れていればいいものの、今日という日に限って雲一つない晴天である。元気な太陽光に照らされ、温められた死体や地面からは、通常よりも強い匂いが発せられているだろう。
「もとの世界で死臭なんて慣れたつもりだったけれど……腐った死体がこうも集まるとなると……ちょっと辛いね」
 『Semibarbaro』エゼル(p3p005168)が言う。エゼルがどういった経験をしてきたのか、それはエゼル自身にしかわからぬことではあるが、様々な条件下で腐敗した死体が一堂に会する状態には、恐らくお目にかかった事はあるまい。
「うう、入り口でこれだけの臭い……すでに帰りたいですよぉ」
 半泣きになりながら、『白金のひとつ星』ノースポール(p3p004381)がぼやいた。そう、イレギュラーズ達は、まだ討伐対象のアンデッドと遭遇すらしていないのである。すでに強烈なにおいが漂っていたが、これもまだ序の口と言う事なのだろう。帰りたい、というノースポールの気持ちも仕方がない。
「まったくぅ、変わった趣味の博士も居たものだよ……」
 げんなりした様子で、『感嘆の』ビス・カプ(p3p006194)がぼやくのへ、
「死体の研究を行う意義は分かるよ」
 『尋常一様』恋歌 鼎(p3p000741)は微笑を浮かべつつ、言った。しかし、こほん、と咳払いを一つすると、
「まぁ、この臭いに適応できるか……と言われると別問題だけれどね」
「臭いが出ないようにやってもらいたいよ……」
 鼎の言葉に、ビスが肩を落とした。
「生身の体を持つ者にとっては辛いであろうな。吾輩は呼吸は不要故、気にならないが……」
 と、『おおめだま』ダーク=アイ(p3p001358)。
「他人事のようで申し訳ないが、ぼやいていても始まるまい。そろそろ行動を起こそうではないか」
 ダーク=アイがそういうのへ、イレギュラーズ達は頷いた。
「そうだね、動かなきゃ始まらないよ」
 七鳥・天十里(p3p001668)が言って、よし、と小さく気合を入れる。
「なるべく早く終わらせようっ」
 天十里の言葉に、イレギュラーズ達は同意した。
 さて、イレギュラーズ達は、モルグへの突入前に、まず大まかではあるが風向きを確認した。これは、なるべく風上から風下に向かって、内部を探索するためである。どうして風上に立たねばならないか――は、言うまでもないだろう。
 何とか風上側からモルグへと突入したイレギュラーズ達ではあったが、辺りを漂う臭いは、それでもイレギュラーズ達へとまとわりついてきた。内部に入れば、入り口のそれより更に強烈な臭いが嗅覚へとアタックを仕掛けてくる。
「確かにこれは、長居はしたくないね……」
 エゼルが言う。その口元は、マスクで覆われており、マスクの内部には、香草・薬草の類が縫い付けられていた。香草や薬草の香りなどで、ある程度臭気の中和を狙っているわけである。完全に遮断できているわけではないが、随分と楽になっているはずだ。恐らく何の対策もなしにここを歩いていたら、あっという間に体調を崩していただろう。
「死体に忌避感を抱かなくなってしまっては、それはそれで危険だからね。これは健康的な反応という事で、我慢するしかない、かな」
 鼎が苦笑を浮かべつつ、答える。
「水葬者のはしくれだケド、いやはや、これには慣れないネ」
 イーフォもまた、苦笑いを浮かべる。
「むっ……いたいた、見つけたっ」
 天十里が声をあげる。ハイセンス能力による超視力・超聴覚が、目標のアンデッドをとらえたようである。ハイセンス能力には超嗅覚も含まれるが、今はろくに機能していないだろう。
「ふむ。情報通り、動きは緩慢であるようだな」
 ダーク=アイが言った。どうも今回、ここに発生したアンデッドは、日中では動きが鈍るようである。
「うう、うさぎ、ぞんび、きらい……っていうか、近づいたら臭いが酷くなってない……?」
 ビスがぼやいた。まぁ、臭いの元は紛れもなくアンデッドであるのだから、仕方あるまい。
「とにかく、早くやっつけましょう……!」
 ノースポールの言葉に応じるように、イレギュラーズは各々武器を構える。
「皆様、くれぐれも油断めされぬよう」
 『魔導神官戦士』ダルタニア(p3p001301)がイレギュラーズ達に声をかけ――。
 イレギュラーズ達の、アンデッド退治が幕をあげた。

●襲撃・臭撃
 アンデッド達はそれぞれバラバラで、かつ連携も取れていないようである。広大な敷地にそこそこの数がいるため、索敵には多少の時間こそかかれど、戦闘に関していえば、イレギュラーズ達は順調にアンデッド達を倒していったと言えるだろう。
「うえええん! 流石に辛いですよぉ!!」
 ノースポールが悲鳴に近い声をあげる。ゾンビを引き付けるのがノースポールの役目だ。とても辛いだろう。臭いが。
 ノースポールへと、ゾンビがのたのたと近寄ってくる――同時に、熱を帯びた腐敗臭がむわり、と漂い、ガーゼによる栓でふさいだはずの鼻孔を容赦なく攻撃する。因みに、ノースポールはマスクも着用しているため、少々みっともない、鼻栓の様子は他人には見られない。不幸中の幸いであった。
 そんなゾンビへ、青い衝撃波が着弾する。衝撃にゾンビが吹っ飛ばされ、ついでに腐った肉片もはじけ飛び、ノースポールの服にへばりつく。
「――――~~~~~~~~~っ!!!!!」
 涙目で、声にならない悲鳴をあげるノースポール。
「あ……すまない……」
 心底申し訳なさそうに、鼎が目を伏せた。
「ノースポールさん、手当を」
 エゼルがノースポールを、幸運の霊的因子で包み込む。
「えっと、臭いは…………取れないんだけれど……」
 少々申し訳なさそうに言うエゼルへ、ノースポールが諦めの表情で頷く。
「……っていっ!」
 一方、『菫青光』より光の帯を発生させた天十里が、その帯をしならせ、スケルトンへと肉薄する。光の帯による、鞭のような鋭い打撃はスケルトンの背骨を破壊。スケルトンはお辞儀をするように折れ曲がった。
 そのスケルトンを、虚無のオーラが包み込む。一瞬の後に、スケルトンはそれぞれのパーツにバラバラに分解し、地に落ちた。
「スケルトン相手なら、臭いもマシだよネ」
 トドメの一撃を放ったイーフォが言う。
「腐ってる部分がないからね……もー、歩くグロテスクとかやだよー」
 地に倒れたゾンビの様子を窺いつつ、ビス。どうやら、付近のアンデッドは片付いたようだ。
「ふむ、これで何体目であったかな」
 ダーク=アイの言葉に、
「ええと、確か……丁度10体だったかな」
 ファミリアーによって小鳥を呼び出し、空へと放った鼎が答える。
「うう……まだ……半分……!」
 ノースポールが落胆するのへ、
「いやいや、もう半分、って考えるヨウ。このペースで行ければ、すぐに終わるヨ」
 と、イーフォ。
「ところで――この死体の後処理って、どうするんだっけ?」
 ビスが声をあげる。
「特に指示は出されていなかったよ。一応、私のギフトでアンデッド化は防止できているハズだから、もう動き出すことはないと思うけれど……」
 エゼルが答える。
「うーん……できればちゃんと、埋葬なりしてあげたいけど……」
 と、ビス。博士の言によれば、ここにある遺体は基本的に、生前、自身の遺体を提供する事に賛同した人物の物であるという。
「死したその身を次ゆく人間に使われる、名誉ある亡者たちである。できれば敬意をはらいたい所ではあるな」
 と、ダーク=アイ。
「しかし、あの博士の事だヨ。『死体がアンデッド化した上で再び死亡したケースのデータをとってみたい」とか言って、研究しそうではあるヨネ」
 イーフォの言葉に、イレギュラーズ達は少し笑って――しかし、その笑い声は直ぐに収まった。
「あり得ますね」
 ノースポールが真顔で言った。
「……否定できないね」
 鼎も真顔である。
 突如訪れた妙な雰囲気――。
「とりあえず――」
 その空気を破ったのは、ビスである。
「エゼルさんにギフトは使ってもらって、僕達で祈りを捧げつつ、遺体の処遇に関しては保留で」
 ビスの提案に、異議の声は上がらなかった。
 さて、イレギュラーズ達のアンデッド狩りは後半戦に突入した。
 前半こそ順調なペースで討伐できては居たものの、流石にここに来て、疲労の色が見え始めた。悪臭も少しずつ体を蝕み始め、少しづつ気力も減少していく。
 1体、また1体とアンデッドを見つけ、倒していは行くものの、相応にイレギュラーズ達の被害も増していく。
 倒れそうになりながらも、しかし果敢にイレギュラーズ達は戦い続け、やがてはついに、最後のアンデッドと遭遇。戦闘へと突入したのであった。
 最後のアンデッドは、二体のゾンビである。どちらも腐敗の進行度は深く、相変わらずとんでもない悪臭を放ってはいた。が、これで最後となれば気にならない――と言えばやっぱり嘘になるが、気分的には少しマシである。
「さぁ、これで最後だ。皆、頑張ろう」
 鼎がそう言って、仲間の奮起を促した。続いて放つ衝術が、ゾンビの肉体に叩きつけられる。
 体勢を崩したゾンビへ、ノースポールの『メアレート』が火を吹いた。銃弾がゾンビの頭を撃ち抜く。同時に、その頭が爆発するように爆ぜ、辺りに腐肉を散乱させた。
「ふ……ふふ……ここまでくれば、もう臭いなんて気になりません……」
 飛び散る腐肉をみやり、ノースポールがかすれたような声で呟く。終わりが見えたことで気力がわいたのか、或いは疲れ切り、やけっぱちになっているのか。
「大丈夫? 回復するよ」
 言って、エゼルが霊的因子による回復を試みる。一方、イーフォは魔力弾を発射。もう一体のゾンビへと打撃を与えた。
「こっちも息切れ気味だケド……キミを倒すくらいの余力は、まだまだあるんだよネ」
「次の生では、きちんとした職が見つかりますよーにっ」
 言いつつ、ビスの投げつけた毒の薬瓶がゾンビにヒット。中身がぶちまけられ、ゾンビの体を汚染する。痛みか、苦しみか、悶えるゾンビへ、
「職務に戻り給え」
 ダーク=アイの放つ術式が直撃し、ゾンビを吹き飛ばした。倒れたゾンビはしばし蠢いていたが、やがてその動きを止め、死体へと戻ったのである。

●終止符・臭止符
「よかった……終わったぁ……」
 ノースポールが安堵の声をあげる。
 イレギュラーズ達は何とか、全てのアンデッドの無力化に成功した。モルグはいつもの静けさを取り戻したのである。
 ……とは言え、臭いの方は、依然変わりなく、辺りに充満している。
「『いつか来る審判の日まで、平穏の裡に眠れ』って、ね。……今日は疲れたし、帰って、お風呂にゆっくり入ろう。……この臭い、取れるのかなあ」
 祈りの言葉を唱えつつ、エゼルが小首をかしげた。
「早めにお風呂に入って、しっかり洗わないといけないね」
 微笑を浮かべつつ、鼎。
「服の臭い消しも念入りにしないといけないヨネ。……最悪、処分カナ」
 と、イーフォ。ふと視線を動かすと、思案気な表情の天十里が目に映った。
「どうかしたカナ?」
 イーフォの言葉に、天十里は頭を振ると、
「あ、えーっと……やっぱり、死体をこのままにしておくのも、なんだかな、って」
 天十里の言葉に、イーフォはふむ、と唸ると、
「腐肉を好む微生物や動物なんかもいるシ、風葬という考え方もあるヨ。墓標をたてるくらいならイイだろうケド……やる?」
「やるにしても、とりあえずモルグからは出たいね」
 イーフォの言葉に、ビスが声をあげた。
「死者への弔いも重要だが、まずは生きている者から、であるな。皆も限界であろう」
 ダーク=アイ。事実、イレギュラーズ達の被害は、決して小さくはない。エゼルのギフトにより、再度のアンデッド化はひとまず発生しないとしても、出来れば早く、安全の確保された場所で、体を休めた方がいいだろう。
「そうだね。ひとまず、ここを離れてから考えよう」
 鼎が頷き、
「まぁ、僕もクレリックだから、祈りの言葉位はあげておくよ」
 と、ビス。
「うえぇん……もうこんな依頼、嫌です~……早く戻りましょう~」
 ノースポールの言葉を合図に、イレギュラーズ達は一路、帰途へとついたのであった。

 動くモノのいなくなったモルグは、静かに、自然の営みを再開する。
 生きる事、死ぬこと。腐っていくこと、消えて行くこと。
 すべては摂理、あるがままに。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 討伐されたアンデッドに関しては、案の定、観察対象になったようです。
 転んでもただは起きないのが、学者なのかもしれません。

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