シナリオ詳細
「やったか!!?」「ああ、これだけやれば幾ら奴でも!」
オープニング
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「――やったか!?」
「ああ間違いない。これだけの攻撃を喰らえば幾ら奴と言えど……!」
亜竜集落フリアノン。その近辺にて亜竜種達がワイバーンを相手に戦いを挑んでいた。
ワイバーンが集落に向かってきていたのである。このまま放置すれば集落に被害が出ないとも限らぬ、と……近くに到達する前にワイバーンを追い払うべく彼らは出撃した。土煙が挙がる程の全力の一撃を叩き込み、そこまではよかった――のだが。
雄たけびが聞こえる。まだ亜竜が生きている証だ!
「ば、馬鹿な! あれだけの総攻撃だというのに、生きているだと!?」
「ええいもう一回、もう一回だ! 今度こそやるぞ――!!」
異常に丈夫な亜竜だなぁ……! そんな事を思いながら幾度も攻撃を重ね。
しかし倒せない。なんで? どうして?
何度やっても何度やっても土煙の中から立ち上がってくるのだ――!
「今度こそやったか――!!?」
また誰ぞが叫ぶ。が、その途端に蘇ってくる亜竜の姿。
そんな事が何度も続いていれば亜竜種達の体力も段々と減るものである。
刃を振るう力が鈍る。魔力を紡ぐ速度が落ちる。
ダメだ――どうすれば倒せるんだ。この――
ヤッタカ・フラッグ・ワイバーンを。
「くそ。倒す方法が分からない……援軍だ! 援軍を要請するんだ!」
「ああ――イレギュラーズに助力を求めよう!」
●
「と言う訳で皆さんには亜竜を倒すお力添えを頂きたいのです……!」
「そんな、不死身じゃあるまいしそんな亜竜いる訳が……」
「しかし確かなのです――何度倒したと思ってもその度に復活してくるんですよ!」
そしてフリアノン内部では緊急でイレギュラーズに依頼が舞い込んでいた。
厄介なワイバーンがいるのだと。いや不死身の存在なんていないだろ……
半信半疑の儘、現地に出向いたイレギュラーズ達――
しかし実際にいた。何度倒れても再び立ち上がるワイバーンが……!
「くそ、コイツで――どうだあああ!!」
前線で戦う亜竜種の一人が強烈な一撃をワイバーンに叩き込む。
巨大なハンマーで直上より脳天を一撃。
凄まじい勢いが挙がれば、土煙が大量に舞ってワイバーンの姿が見えなくなり――
「はぁ。はぁ。よし、今度こそやっ……」
『グルァアアア――!!』
だが。それでもワイバーンは蘇りて襲い掛かって来た。
尻尾の振るいで薙ぎ払われる亜竜種。ああ、なんたることだ!
「くそ。せめて倒せる方法が分かればいいのですが……!」
「いや、あの。もしかしてさっきからフラグを立ててるのが……」
「フラグ? 旗? なんのことですか、旗なんて立ててませんよ?」
「いやそうじゃなくて……」
然らばイレギュラーズの中には勘付いた者もいたかもしれない、が。
しかし戦場に近付けば――なんらか妙な感覚が脳裏に過るものだ。
何か口走りたくなる。『やったか!?』と言った類の言葉を……
(もしかすると――これが亜竜の能力――!?)
なんか攻撃するといつもよりやたら派手になって、土煙が挙がったりするのも。
もしかすればこの亜竜特有の能力なのでは――?
……いずれにせよワイバーンを打ち倒すのが今回の依頼だ。
なんらかの条件がトリガーになって復活するというのなら、その条件を満たさないように戦い続ければいいだけの話……! そうだ。意志の強さこそが今回は重要になりそうだ……! 見えているワイバーンはいつの間にやら増えて三体だが。この程度ならすぐにでも――
「おおイレギュラーズの援軍か! これで百人力だ、連中なんて一掃してやろうぜ!」
「もう怖いものなんざねぇ! 俺達の勝利は確実だな!!」
……刹那。戦っていた亜竜種達が、なんかフラグを立てやがった。
そうしたら亜竜達の力が、なんか微かに増した気がする――
ええい。誰ぞが余計な事を口走る前に――倒す必要がありそうだぞこれは!
- 「やったか!!?」「ああ、これだけやれば幾ら奴でも!」完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年04月30日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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「ワイバーンとはラドンの罪域で戦ったばかりだけれど……こんな妙な感覚、あっちでも無かったわよ。どういう事……? なんでこんなに復活してくるの……?」
「呪術か? それとも独特な別の呪いか?
何か面妖な事になってるじゃねぇか――こいつぁちっと厄介かもな」
戦場に辿り着いた『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)の目に映るのは謎の復活を遂げるワイバーン――一体全体どういう原理なのかと。『竜驤劍鬼』幻夢桜・獅門(p3p009000)も己が心中に過る『やったか!?』の呪いを感じ取りながら言を紡ぐものだ。
今も何故か口走りたくなってしまう。えぇいこの呪いに蝕まれてしまう前になんとかしなくては――! と言う訳で早速に攻勢開始。先行して戦っていた亜竜種らと入れ替わる形で獅門は跳躍し、一撃一閃。
ルチアも皆の援護となる雷撃を放ちてワイバーンの意識を逸らさんとすれば。
「私にいい考えがある!」
あ、ダメだこれと誰ぞの思考に嫌な予感が過ったものの『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)の瞳に迷いはない。スライディング一直線。あまりの素早さに亜竜もドン引きである、が。
「そう身構えず。私は交渉に来ただけです……そう。貴方達にとっても実に得のあるお話を、ですよ。えっ? 八百長? とんでもない! まずはこちらをお納めください。ええ、ほんのお近づきの印ですので――!」
『グルァァァ!?』
トールは意に介さず山吹色のお菓子……じゃなくて闇憑き餅を振舞わんとするものである。亜竜にそれは無謀だよトール! だーけどトールは諦めない。亜竜が尻尾で薙ぎ払って来ようとしても説得続行!
「そうその『グルァアア!』みたいな咆哮だけで良いと思ってるんですか? つまらないですよね? 我々としても喋る相手の方が盛り上がりますし、最高に盛り上がる戦いになれば最強無敵の不死身ドラゴンとして未来永劫伝説として語り継がれること間違いなし!! えっ。自分達はドラゴンじゃなくてワイバーンだって? 黙らっしゃい!! その負け竜根性こそが貴方達の罪であると知る時ですよ! んぎゃー! 炎のブレスが!!」
「やぁれやれ……全く。こういう変な魔物、混沌だと時々見かけるんですよねぇ……
コイツは妙にしぶとすぎるというか、なんか別の要素を感じますが……」
トールが吹っ飛ばされたー! のを見据えるのは『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)だ。これくらいしぶとくないとドラゴンの餌になるんですかねえ。まぁ真面目に考えたら負けな気がする。ともあれ連中をぶちのめすのが依頼ならばなんとかせねば。
奴らの噛みつきを躱しつつ返しの一撃をぶち込んでおこうか。
どういう復活を辿るにせよ体力を減らしておかねば始まらぬのだから、と。その時。
「ふ……待たせたな! \とう!/」
声が轟いた。跳躍し、スーパーヒーロー着地を試みる――アレはなんだ!?
野生のたぬきか!? ぽんぽこか!? 飼いたぬか!?
いや『陰陽式』仙狸厄狩 汰磨羈(p3p002831)だ! なんだ間違ってなかった。
「おいなんか変な天の声が聞こえたぞ!!
――まぁとにかくだ! 見れば見る程にモブ面をしたワイバーンどもめ……ヒーローに開幕数秒で薙ぎ払われる様なオーラを纏う貴様らなんぞに本気を使うまでもない! 塵に成るがいい!」
\破ァ――ッ!!/ 汰磨羈の一撃がワイバーン達へと降り注ぐ!
直後に生じるはとても生物が生きてはいられぬ様な大爆発……あれ。こんな土煙が生じる程の攻撃だったっけ? まぁいいや!
「――やったか!?」
「ふっ。心配するな亜竜種達よ……所詮は雑魚ワイバーン。
連中がこの攻撃に耐えられる訳が――」
『――グルァア』
なん……だと……?
土煙の果て。そこに闘志に満ちるワイバーンの瞳がある――!
馬鹿な。あの一撃を受けて生きているだと!? 奴は不死身か!!?
「不死身――? 全く、みんなどこまでも大袈裟なんですから。
こんな馬鹿な話があるわけないでしょう?
どんな存在だって死ぬときは死ぬのよ。ええ、噂話と魚には尾鰭が付き物ってね!」
「ヤッタカ・フラッグですか~……なかなかアブナイ亜竜でございますね?
しかし美しくない。散る時は儚く散ってもらうのが宜しいでしょう――
潔く美しく。何度も生にしがみ付くことなく死んでほしいですよ」
が。告げるのは『猛き者の意志』ゼファー(p3p007625)に『竜は視た』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)だ。今までどんな強敵だって本当に不死身だった者なんていないのだ。だからぶちのめす! ――の、前に。
「そこの問題児四人……もとい、負傷してる四人組は後ろに下がっておきなさい!
テンション上がるのは結構。だけど沈黙は金って言葉もあるわよ。
分かるでしょ? どうせ疲れ切ってるなら大人しくしてなさい!」
「ああ分かった……イレギュラーズ、君たちに任せよう……!
安心してくれ絶対に足を引っ張る様な事はしない! 約束する!」
とりあえずゼファーは亜竜種四人組を統率し余計な事を喋らせまいと……思ってるのだがなんかもう早速不安である。大丈夫かコイツら?
「ダメだよ! いや分かる、分かるよ? やったか?! って言いたくなる気持ちはわかるよ! でもね『ダメ』なんだよ! あのワイバーンは――そういうのを力にしちゃうタイプなんだから!」
故に『正義の味方』皿倉 咲良(p3p009816)も説得にまずは掛かろうか。ある意味こっちの方が強敵であるのだから。ね? アタシたちイレギュラーズだもん、そりゃあ頼もしすぎて勝ったも同然と『思いたい』よね! でも。
「それがワイバーン達の力になっちゃうんだよ! だから口を閉じててね? いいね?」
「ああ分かった! 俺達は何も言わなければいいんだな? 絶対に!」
「うんうんそうだよ! だから、頑張ってその口、閉じよっか★
ね★ 言ってる意味分かるよね★」
「ああ――おっと! ワイバーンが倒れたぞ、やったか!!?」
「ちょっと……ちょっ……カメラ止めろ」
その口を閉じろっつってんだよ。
わー! 咲良さんの顔がとても放映出来ない表情にー! ひー!!
何はともあれ敵も味方もなんとかせねば!
フラグだらけの討伐劇――はーじまるよ!
●
――やったか!?
その言葉が響く度に復活する亜竜達。マジでなんだコイツらは!
「こんな感じで生き返ってくるから絶対息の根止めたこと確認してね?
いい? 絶対だよ? ぜーたい見逃さないでね!!」
「HAHA! そう念押ししなくても大丈夫――それぐらい余裕だ!」
「そんな調子のいい事言っておきながら、確認する前にまたそう言う事言うううう!! あのさぁっ?! ちゃんと確認しろって言ったよねぇっ?! この、ネタの天丼はマジでギャグセンがアレだからやめろって言ってんでしょーがー!! 耳ついてんの!!?」
「そもそも四人組の方々をどうにか防ぐのが先かもしれませんね……」
後方。キレ気味の咲良に物理的説得をされている亜竜種四人組がいるが――しかし一応味方であれば息の根を止める訳にはいかないとヴィルメイズは別の手も模索するものだ。そう、もしも『やったか!?』が聞こえて効果が生じているというのなら……
――私、この戦いが終わったら地元の幼馴染と結婚するんです!
――帰ったら一杯やりましょう! 良い店、この前見つけたんですよ!
――先に行ってください! なぁに、すぐ追い付いつきますよ!
別の『声』で上書きしてしまえばいいのではないだろうかと。
繰り出される数々の大声。クソデカにして美声はまるで魂に作用するが如く。
誰ぞの声を打ち消さんとするばかりだ――が。
「そんな馬鹿な。聞こえていない筈なのに、復活する……?」
ヴィルメイズは見た。ヤッタカが復活する光景を。
そう、違ったのだ。『やったか!?』は発言ではなく――最早『概念』だ。
言霊と言える。ヤッタカ・フラッグはその言霊を自らの身に宿す事が出来る種なのだ。故に聞こえたか、聞こえなかったかは関係ない。その場で世界に対し発されたと言う事が重要なのである……多分!
「クソ。となるとやっぱりまずはあっちを黙らせるのが先か……何が悲しくて味方と争わなきゃいけねーんだ……許さねぇ、ヤッタカ・フラッグ! とりあえず布を咬ませろ縛れ縛れ! 永遠に終わらねーぞマジでこれ!!」
「すいませーん、ちょっとコイツラ、私達の『期待』みたいなの吸って回復してるみたいなんで、ちょっと安心できるまで離れてもらえませんか……? ほら早く……いいからとっととあっち行きなさいよ! 蹴っ飛ばしてあげましょうか!?」
「ぎゃー! な、なにをするんだイレギュラーズ! 我々が何をしたと!」
「だから喋るなよ? おい喋るなって言ってんだろ!」
「余計な事しかしてないってさっきから言ってるでしょーが!!」
なので獅門やリカは、何故かいつまでたっても喋ろうとする四人組を抑えにかかるものだ。静かにしろ――術中に嵌ってしまった者を救うには、時に大胆な手も必要なのだから。
猿轡をして簀巻きにせんとする。抵抗するならばリカが魔眼の力をも用いようか。
「フリアノンを護るために戦う姿勢は気高いものだけれど……いくら何でも、余計な事を言いすぎよ? 分かるでしょ? ここでは言葉がそのまま力になる事があるんだよ。だからちょっと静かにしててね」
「んー! ん~!」
「抵抗するんじゃないわよ、ほら。後で縄は解いてあげるから。
良い子にしてたらお菓子をあげるからね――良いわね?」
更にルチアとゼファーも拘束に取り掛かろうか。一度や二度程度で済むのなら、ルチアは黙って流すつもりだったが……流石に目に余る。なので纏めて静かにしてもらうとしよう。大丈夫、ちょっとぶっ倒れてもらうだけだから――力を奪う光一つ。
更にゼファーは彼らの意識を自らに寄せんとする。
美しい肢体が彼らの目に宿れば注意を一時でも誘惑し逸らそうか――と、おっと!
『ギュイ――!!』
「ワイバーン……! この、面倒ね本当に!」
「皆、落ち着いていこう! このワイバーン、やっぱりそんなに強くはないみたい!
冷静にいつも通り……そして余計な事を言わなければすぐ倒せる筈だよ――!
と言う訳で、ていや――!」
瞬間。ゼファーの下へと蘇ったワイバーンが襲い掛かって来た!
おのれと、返しの一撃を一閃。これだけの一撃、受ければ無事ではいられないはずよ――! ってダメですゼファーさん、それもフラグ~! だから咲良も反撃の一手を紡ぎつつ一体一体着実に息の根を止めんとするものだ。
連中に負の要素を齎しつつ足を淀ませていく。
ついでに敵の解析を進めて仲間に情報を共有していこうか――あっ。
(期待値高めの事言ったらダメだよね……! 絶対に、うん、絶対に!!
だってそんな事言ったら今度は強化されていきそうだし……!)
思わず口を噤む咲良。危ない。フラグは一切口に出さないように――
と思考していれ、ば。
「はぁ、はぁ。おのれ、我が一撃を此処まで耐えきるとは……!
なるほど、聞いていたよりも多少はやるようだな。
だがはたして本気を出した私に勝てるかな――?」
『ギィィィ!!』
「喰らえッ! \はぁ――ッ!/\チェストォー!!/\イヤーッ!!/」
汰磨羈の追撃が襲い掛かる――! 壮絶にフラグを立てながら――!!
自らの全霊。太極の一端を引き摺り出し刀身を超速の儘に打ち付けようか。
然らば正に神速。超越の一撃はワイバーン共を薙ぎ掃いて……
「ふっ……やはり凡ワイバーン。本気を出した私の敵では無かったな……
せめて来世では私の様な素晴らしいキャットとして生まれ変わるがいい……」
「フッ……やっぱり大した事は無かったわね……ハッ、しまった!!」
太陽を背にして振り返るたぬぽんが何か言ってる。
――が。『コレ』もまた所謂ヤッタカの能力対象であったのだろうか。
完全にキメ台詞とキメ顔してた汰磨羈とゼファーの背後では蘇る気配が――!
「……なん、だと……!? 馬鹿な。何故だ、何故死なん!?」
「どう考えても今余計な一言を言ったからな気が」
「おのれ……! 流石にこう何度も復活されると、やや疲労が溜まってきますね……!
とは言え所詮雑魚は雑魚。こんな与太全開亜竜に傷なんて負いませんよ、ぐあ――!」
「あぁ、ヴィルメイズが自爆を!」
さすれば再び暴れ出すワイバーン。リカが武器に大いなる魔力を纏わせ一閃するが、油断していた――というかなんかわざとフラグ建てた気もする――ヴィルメイズが吹っ飛ばされる。馬鹿な! こんな与太依頼で重傷なんてそんな事が……!!
はぁ、はぁ。しかし真面目に段々疲労の方が勝ってくるものである。
超長期戦になってしまえばどうなる事か――
「そうですよそうそう、でもまだです! もっと全力で我々イレギュラーズを負かすつもりで戦ってください。もっと言うとカッコイイ台詞をどうか叫んでください。大丈夫、貴方達ならきっと喋る事だって普通に出来ますから!」
刹那。只管に初志貫徹、彼らにあらゆる技能を用いて交渉を仕掛けているトールがいた!
――貴様らのデータは既に収集済みだ。勝率は0%……
――こんなひよっ子どもが相手かよ! 負ける気がしないぜ!
「とか。そんな感じの事言えると最高です!」
『ギィ?』
「あ。それから追い詰められたら私を人質に取ってください。『こいつがどうなってもいいのか!』とか、卑怯と言われても『この戦い我々の勝利だ!』と高らかに宣言すると高得点ですよ!! さぁ早く! ハリーハリー!」
『ギィィィ!!?』
トール、なんど亜竜らに薙ぎ払われようと諦めない。
そう。この戦い――『やったか』以外にもきっと積み重ねたフラグの数が勝敗に寄与すると推理しているから! ならば相手に負けフラグを積ませればいいのだ――でぇじょうぶだ、こんな能力を宿す亜竜ならば不可能は無い! だから早くフラグ立てて! なんか亜竜の側はもうトールの事がやや恐ろしくなってるぐらい引いているが。
――しかしトールの願いが通じたのだろうか? 連中の動きがやや鈍くなったように感じる。
隙だ。ヤッタカ・フラッグに隙が出来ている!
「……! 今よ、この機会を逃してはダメ。はい、皆こっち注目~!」
であればと間髪入れずに行動したのはゼファーだ。
――シャツのボタンを四つ外す。超速の指の動きが彼女の肌を晒そうか。
何をしているかって? お約束を挟ませないための儀式よ儀式!!
彼女に注目が集まり――そして!
「目と口だったらなぁ……目の方が速ぇんだよ! いい加減ぶっ倒れなッ!!
はい成仏成仏。今度こそ確定成仏!!
まったくお前ら何回立つんだよ!! 起き上がり小法師か!!!」
「認めよう、貴様らがただの凡ワイバーンではない事を!
だからこそ――喰らうがいい! 最大最強必滅のこの奥義を!!」
獅門と汰磨羈が動いた。各々、全霊たる一撃を紡がんとする――
獅門は『やったか!?』と言いそうになる己が口を堪えつつ斬撃の三閃を。
そして汰磨羈は必殺の\ねこラッシュ!/を!
アタタタター!((꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆
これぞ汰磨羈のたぬパンチ。失敬、猫パンチ。さすれば追い詰めていく! 復活能力さえ発動しなければ獅門の歯牙にもたぬきの尻尾にも掛けぬのだ。特に獅門は土煙の果てにいようとも逃がさぬと優れた観察眼と共に追い詰め。
更にリカやルチア達も大攻勢。トドメとばかりに仕掛ければ!
『ギィィィ――!!』
「――終わりましたね。今度こそ、絶対に……あっ。ワイバーン達が落ちていきます。この高さなら生きてはないでしょう……でも死体の確認はしておいた方が良いですかね?」
「やれやれ、どっと疲れたわね。ええ、マジで」
「フッ勝ったな。お風呂入ってきます。絶対に覗かないでくださいね」
そうして更にリカやゼファーもワイバーンらにトドメの追撃を仕掛けつつ、連中が崖の下に落ちていくのを確認する……そうすればトールは勝利を確信しうるものだ。
「ふ……流石の不死身なワイバーンでも、この奥義をまともに受けて生きてはいまい……」
「おっ、息止まってそ? もう死んだよね? これはいけたんじゃ……」
「騒いでた人たちも静かになったし、これは流石に勝ったわよね? じゃあ帰り――あっ」
さすれば勝利の空気に感化されたか、うっかり。
様式美を繰り返す汰磨羈に咲良、そしてルチアはフラグを立ててしまうものである。
……なんか崖下からワイバーンの声が聞こえた気がする。ああもう――!
「これだけの攻撃を受ければ!! 幾ら奴でも!! 終わりですね――!!」
オイ馬鹿止めろ! 誰か開き直って言いたい事叫んでるヴィルメイズを止めろ――!
……しかしワイバーン達は戻ってこないものだ。どこかに引っかかってでもいるのだろうか? それとも気のせいだったか? リカが念のため暫く監視してみたが――大丈夫であった。
もう出てこないと信じて帰還しようか。
あれだけの傷を与えたのだ――間違いなくヤッタカ・フラッグは倒せている筈だから。
『――ギィィィ!』
……うん! 倒せているはずだから!
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ!!
今度こそ連中も倒れたことでしょう。幾らフラグを力にしても、限界はあるのです……!
と言う訳で今度こそ――やったな!!
GMコメント
●依頼達成条件
亜竜『ヤッタカ・フラッグ』の撃退!
●フィールド
亜竜集落フリアノンの近くです。
周囲は岩肌で、障害物などは少ないように見られます。
戦いに支障はないでしょう。
●敵戦力
●亜竜『ヤッタカ・フラッグ』×3体
ワイバーンの一種です。
炎のブレスを吐いたりしますが、まぁ大体の攻撃方法や体格は一般的なワイバーンと左程変わりません。むしろ単純な戦闘能力はあんまり強くないです。奴の最たる特徴は別の点……
そう――奴と戦っている最中に『やったか!?』とか『これだけの攻撃を受ければ幾ら奴でも!』とかの単語を口走ると、すぐに復活するのです! 謎原理ですがHP0で戦闘不能な筈なのに復活するようです。HP全快で復活する訳ではなさそうですが。
じゃあ言わなければいいじゃん! と思うでしょう――?
しかし不思議な事になんか口走ってしまいそうになるのです。『やったか!?』の類を!
そうするとなんか都合良く攻撃の影響で挙がっている土煙の中から飛び出してきます。
これを防ぐには――意思を強く保つのです。
うっかり口にしたらいけませんよ?
いいですね。絶対に口にしてはいけませんよ! フラグを!
ちなみに、全個体の撃破をちゃんと。『ちゃんと』確認した後であればフラグを口にしても復活しない様です。
●味方戦力
●亜竜種×4人
フリアノンに住んでいる腕自慢の亜竜種達です。
ワイバーンが来ると聞いて集落を護るために出向いた……のは良かったのですが、何度も蘇るワイバーンを相手に体力がすり減ってしまいました。くそ。どうやれば倒せるんだ奴らは! ワイバーンを追い詰めると『やったか!?』とか『流石だなイレギュラーズ、これで勝利だ!』とか言ってくれます。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。やったか!?
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