PandoraPartyProject

シナリオ詳細

ミステリーサークルを作ろう。或いは、大地に描け不思議な模様…。

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●観光資源捏造計画
「ミステリーサークルに、興味って無いかな?」
 海図を1枚、手に持ってエントマ・ヴィーヴィー(p3n000255)はそう言った。
 それがすべての始まりだ。

 海洋。
 とある無人島。
 港街から船で1時間から2時間ほど、沖へと進んだ位置にある小さな島だ。
 山や川らしきものは見当たらない。
 あるのは泉と、ひたすらに広がる草原ばかり。
 暖かな風の吹く草原。その真ん中に、1匹のパンダが立っていた。
「さて……目的地はここで合っているな」
 パンダの名前は、P・P・D・ドロップ。
 旅の武闘家である。
 僅かな食糧と着替え、そして地面を耕すための鋤が1本だけ。
 無人島を訪れるにしてはあまりにも荷物が少なすぎる。
「えぇっと、何だったか……この草原に何か模様を描くんだったかな」
 泉の傍に荷物を置いて、ドロップは草原を睥睨した。
 無人島だ。
 島としては、小さいと言える。
 草原……といったものの、広さはせいぜいが400メートルトラックより少しだけ大きい程度だろうか。
「大変そうだが、まぁトレーニングになると思えば悪くない。おまけに報酬も出るのなら、文句を言うのもお門違いというものだ」
 胸の前で腕を組んで、ドロップな何度も頷いた。
 旅の途中で路銀が尽きて困っていたのが数日ほど前。その後、エントマに逢い無人島での仕事を斡旋されたのである。
 仕事の内容か簡単だ。
 草を刈り、地面を掘って、石を並べて、大地に大きな幾何学模様を描くのである。
 なんでも、それは“ミステリーサークル”と呼ばれているらしい。
 ドロップに詳しい話は分からないが、エントマの話では草原に幾何学模様を描くことで“観光資源”とやらになるという。
「まったく、地面に模様を描いて何で金になるのやら……世の中、よく分からないものだなぁ」
 なんて。
 草原をぐるりと見まわして、ドロップは唸り声を零した。
 地面に幾何学模様を描くとして。
 ミステリーサークルを描くとして。
 何から手を付ければいいのか、ドロップには微塵も見当が付かないのであった。

GMコメント

●ミッション
ミステリーサークルを完成させる

●NPC
・P・P・D・ドロップ(獣種)×1
パンダ・パニッシュ・デス・ドロップ。
もちろん偽名。
一見すると2足歩行のパンダであるが、性別はどうやら女性のようだ。
アルバイトとして、ミステリーサークルの制作に参加しているが本業は武闘家のようである。
生真面目な性格をしているし、黙々と作業をこなすのも苦手ではない。
ただし、ミステリーサークルの制作経験は無いため、誰かの指示が無ければ作業を進められない。


●フィールド
海洋、とある無人島。
島の広さは400メートルトラックと同程度。
中央に泉がある以外は草原しかない。

●用語
・ミステリーサークル
大地に描かれた円形(サークル形)の模様。
草を薙ぐ、地面を掘る、焼く、石を並べるなど方法は何でもいい。
空から見た時に、幾何学模様が描かれていれば問題は無い。
エントマの話では、ミステリーサークルを作ると観光資源になって儲かるらしい。


動機
当シナリオにおけるキャラクターの動機や意気込みを、以下のうち近いものからお選び下さい。

【1】エントマに呼び止められた
エントマから依頼を受けて無人島を訪れました。真面目に仕事で来ています。

【2】漂着した
あなたは無人島に漂着しました。旅行中に遭難したのです。他の参加者やドロップが何をしようとしているのかを理解していません。サバイバルはじまったな、と思っています。

【3】月刊“ヌー”に導かれた
オカルト雑誌、月刊“ヌー”を読んで無人島を訪れました。何でも無人島周辺は怪現象の多発している海域のようです。観光気分です。


無人島での行動
無人島での過ごし方です。ミステリーサークルが完成するころに、迎えが来ます。

【1】ミステリーサークルを作る
ドロップや他参加者と協力しながら、ミステリーサークルの完成を目指します。もしかしたら、自分がミステリーサークルを作っていることさえ理解していない可能性もあります。

【2】食事や休憩所の管理を担う
泉付近を拠点に食事の準備や焚き火の管理を担当します。場合によっては、近海に魚や貝を取りに行くこともあります。

【3】交信・交流を試みる
なにかと交信できる気がしています。何らかの手段を用いて、なにかとの交信を試みます。べんとらー、べんとらー。

  • ミステリーサークルを作ろう。或いは、大地に描け不思議な模様…。完了
  • GM名病み月
  • 種別 通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年04月11日 22時05分
  • 参加人数6/6人
  • 相談0日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
赤羽・大地(p3p004151)
彼岸と此岸の魔術師
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
繋げた優しさ
シャーラッシュ=ホー(p3p009832)
納骨堂の神
クウハ(p3p010695)
あいいろのおもい

リプレイ

●孤島のミステリーサークル
 海洋。
 嵐の過ぎた、翌日のことだ。
 近くの港から、沖に船で1、2時間ほど離れた孤島に数人分の人影があった。
「あれは……皆さん、何をしていますの?」
 草原と泉だけがある小さな島だ。
 遠目に島を見やりつつ『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は首を傾げた。島に見える人影の中には、見知った顔が幾つもある。
「そう言えば、昨日の嵐で消息を絶った船があると港で耳にしましたの。もしかして……」
 島にいるのは、遭難者たちなのではないか。
 乗っていた船が嵐で沈み、無人島に流れ着いたのではないか。
 そう思えば、なるほどと納得できるところが幾つもあった。例えば、パンダや『彼岸の魔術師』赤羽・大地(p3p004151)は草を足で踏みつけて、地面に何かを描いている風ではないか。
 遭難者たちが、地面に何を描くかなんて決まっている。
 SOS。
 その3文字を地面に描いて、空を舞う誰かに助けを求めようとしているのであろう。
「困りましたの。1人か2人なら無理矢理引っ張って港に帰還することもできますが……あの人数となると」
 ノリア1人では、全員を1度に港へ運ぶことは出来ない。
 さらに言うなら、遭難者たちの体力が2~3時間を超える海の旅に耐えきれるという保証もない。
 だが、ここは無人島だ。
 泉があるので、水はどうとでもなろうだろう。
 だが、食糧や怪我をしていた場合の薬や包帯などは手に入れることが困難だ。
 もしも重傷者がいた場合はどうだ。
 例えば、『納骨堂の神』シャーラッシュ=ホー(p3p009832)などは泉の傍で空をじぃっと見つめたまま動かない。空高くにいる何かと交信しているのでも無いのなら、もしかして怪我や病気で動けなくなっているのではないか。
 そんな不安が、ノリアの胸中で首をもたげる。
 事態は一刻を争うかもしれない。
 そう思ってからの、ノリアの判断と行動は早かった。
「近くの海底に、隠れ里があったと記憶していますの。そこに助けを要請すれば、或いは……」
 半透明の尾をくねらせて、ノリアは海の中へと潜る。
 目指すか海底400メートル。
 蛸の海種たちの住まう、光刺さぬ深海の隠れ里である。

 孤島中央。
 泉の傍で空を眺めて、『悪戯幽霊』クウハ(p3p010695)は顎に手を触れ溜め息を零す。
「人工的なものならミステリーでも何でもねェな。観光客騙して金稼いでんのか?」
 クウハがエントマに声をかけられたのは、今からおよそ5時間ほど前だった。割のいい仕事があるので手を貸せと、そんな風に声をかけられ船に乗り込んだまではいい。
 それから海を暫く進んで、クウハは仲間たちと共に孤島に置き去りにされたのだ。
「世界各地で見つかっているミステリー・サークルのほとんどは、人の手による悪戯であるとされています」
 足音もなく、気配もなく。
 クウハの背後で、抑揚にかける声が聞こえた。
 思わず肩を跳ね上げて、クウハは慌てて背後を見やる。そこにいたのは、薄い笑みを浮かべた男性。ホーである。若いようにも、ある程度、年齢を重ねたようにも見える。
「この本にはそのように書かれています。ですが、不思議なことに人工的に造られたミステリー・サークルの周囲でさえも、不可思議な現象……例えば、牛などの家畜が内臓を抜かれて殺されていたり、空から差した眩い光に人が吸い上げられたりといったことが起きるそうですよ」
 ホーの動きはきびきびとしており、規則的だ。
 人の体の構造を逸脱した動きなどでは決してない。
 だが、人間の動きはそうじゃない。
 人間の動きには、もっと“人間らしい抑揚”があるものだ。
「オマエ、気配もなく後ろに立つなよ。ってか、なんだその本?」
「? 月刊“ヌー”ですが、それが何か? なかなか興味深く、私も愛読させていただいております」
「へぇ……信用できるのか?」
「どうでしょうね。ですが、今月号の特集記事……4月1日に顕現した、黒き竜のような、冥界の悪鬼のような、3つ目とも無貌とも表現される怪物の話など、興味深いと思いませんか?」
「知らねぇけど。それより、食糧は手に入ったのかよ?」
 ホーの顔と月刊“ヌー”とを交互に見やって、クウハは問うた。ホーとクウハ、それから今は席を外している『星巡る旅の始まり』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)の役割は、拠点の管理と食糧の準備となっている。
「えぇ、もちろん。ほら、こんなにたくさんの“うに”を見つけました」
 そう言ってホーが差し出したのは、ボロ布に包まれた大量の“うに”だった。
 棘だらけの外殻、その中には光沢のある茶色い実。
 ホーはそれを“うに”と呼んだが、どうやらそれは “栗”である。少なくともクウハの目にはそう見えた。
「……うに?」
「海にいましたからね。これは“うに”ですよ」
 月刊“ヌー”にもそう書いてある。
 森の木に生っているのが“栗”で、海にいるのが“うに”なのだ、と。
「いや、それ……くr」
「“うに”ですよ」
「お、おう。もう“うに”でいいや」

 月刊“ヌー”は、ラサで発行されている一部界隈で有名なオカルト雑誌である。
 ホーがそうであったように、ジョシュアと大地も月刊“ヌー”に導かれ、青い海の孤島に足を運んだくちだ。
「怪現象とか本当にあるんですかね? ミステリーサークルは人工的ですし……」
 孤島の端から海を見下ろし、ジョシュアはそう呟いた。
 ちらと背後を振り返れば、草原で何か作業を……ミステリーサークルの制作をしている大地や『幻蒼海龍』十夜 縁(p3p000099)、P・P・D・ドロップの姿があった。
「しかし、妙な話です。ミステリーサークルは人工的な偽物……だというのに、月刊“ヌー”にはこの島のことが載っていました」
 そっと海へ手を差し入れる。
 ジョシュアが掴み上げたのは、大振りな“牡蠣”だ。
「島の上空で正体不明の飛行物体が目撃されたとか……さて、真偽のほどはいかがなものなのでしょうね」
 傍に置いたバケツの中へ、牡蠣を放り込みながらジョシュアはふむと首を傾げる。
 先ほどから獲れる貝は牡蠣ばかり。
 どうにも生態系に偏りがあるようだ。

 地面をパンダが転がっていた。
「あー、もう5メートル直進だ。それから下草を刈ってくれ」
 パンダ……P・P・D・ドロップに指示を出しつつ、縁は草原を見渡した。
 中央に泉があるほかには、ただ草原だけが広がる何もない島だ。
 こんなところにミステリーサークルを作って、一体何の意味があるのか。そんな疑問が胸に湧いたが、きっとエントマには何か考えがあるのだろう。
 その考えが、碌なものである保証はないにせよ……。
「……つーか、なぁ。正体がわかってるモンはミステリーサークルにならねぇんじゃねぇか?」
「あー……縁? 成り行きで手伝っていたが、ミステリーサークルってなんのことだ?」
 そう問うたのは大地である。
「あん? あぁ、そうか。大地は月刊“ヌー”を読んで来たくちか」
 合点がいった、という風に縁は懐へ手を入れた。
 取り出したのは、エントマから預かっていた依頼書だ。
「大地に円(サークル)を描くんだとよ。何でも、観光資源になるとからしいが……胡散臭い話だよな」
 ほら、と依頼書を手渡した。
 しばらくそれに目を通し、大地はひとつ大きく頷く。
「はァ、なるほド。『大地』に何か陣を描きゃあいいんだナ?」
 そう言って大地は、右手を鞄に突っ込むとガラス製のインク瓶を取り出した。
 かと思えば、即座に左手でインク瓶を持つ右の手を抑え込む。
「いやまて【大地に描け】って俺にボディペイントするって意味じゃないだろ!」
「あァ? なんでだヨ? 大地に陣を描きゃ、縁の仕事も終わるんだロ?」
「大地って俺か? そんなわけないだろ!」
 右手と左手が交互に、慌ただしく動く。
 それをぼんやり眺めながら、縁はポツリと呟いた。
「……1人で何やってんだよ?」
 なんとなく事情は知っているものの。
 今の大地は、限りなく不審なのである。

●べんとらー、べんとらー
 泉の傍には、焚き火を囲む男が3人。
「……」
 ジョシュアの頬には冷や汗が伝う。
 男が3人と言ったものの、1人は幽霊で、もう1人はどうにも得体の知れない“何か”だ。そうなると、どうにも自分の存在がひどく場違いなものに思えて仕方が無かった。
「で、何を作るって?」
 クウハは問うた。
 焚き火にかけられている鍋と、オリーブオイルにトマトが幾つか。
 それと、ホーとジョシュアが獲って来た大量の牡蠣と“うに”がある。
「アクアパッツァでも……と、思いましたが、牡蠣と栗? しか具材が無いとなると」
「“うに”ですよ?」
「……いや」
「“うに”です。月刊“ヌー”にもそのように書いてありますが」
「はい。では“うに”で……牡蠣と“うに”しか無いとなると少し、難しいかもしれません」
 せめて魚があれば話は変わって来るのだが、と。
 頭を悩ますジョシュアの後ろで足音がした。振り返ると、そこにいたのは大きなパンダだ。
「P・P・D・ドロップ先生、このような場所で出会うとは奇遇ですね」
 冷たい水をコップに注いで、ホーはそれをパンダ……もとい、ドロップへと手渡した。
 ドロップは冷えた水をひと息に飲み干すと、にこりとホーへ微笑みかける。
「おぉ、いつぞやの」
「その節は大変お世話になりました」
 どうやらホーとドロップは顔見知りのようである。
「グール截拳道の研鑽は積んでいるか? グール截拳道の完成は1日にして成らず。研鑽を怠るんじゃないぞ」
「えぇ、もちろん。先生の教えを胸に、日夜、功夫を重ねてまいります」
 ははは、と和やかに会話を交わすホーとドロップ。その様子を、胡乱な眼差しで眺めながら、クウハは眉間に皺を寄せた。
「……グール截拳道って何だ?」
「ご存知ないのですか? グール截拳道。それは、鉄帝国のアクション俳優にして武闘家であるアンデッド、ブルー・Ⅲがゼシュテル拳法を基盤に、海洋式ボクシング、ラサ奴隷格闘術、豊穣空手、山ン本部屋相撲の技術を取り入れて考案した格闘術です」
「これ以上、胡散臭い用語を増やすんじゃねェよ」
 ミステリーサークルの代わりに、ホーを島に置いておけばいいんじゃないか。
 そんなことを思ったが、クウハはそれを言葉にしない。

「さて、魚がいるよな?」
 火の番をホーに任せて、クウハとジョシュアは海岸線へとやって来た。
 どこまでも広がる青い海。
 空には雲が流れている。
「えぇ、アウトドア料理の練習がてら……と思いまして。えぇと、クウハ様はお料理の方は?」
「様ってのはむず痒いなァ……ま、いいや。料理ならだいたい何でも作れるぜ」
 ただなぁ、と。
 海面に顔を近づけて、クウハは唸る。
「魚がいねェ。なんだ、これ?」
「そうなんですよね。この島、少し様子がおかしい……あ、あれを!」
 ジョシュアが何かを見つけたらしい。
 沖を指さす、その方向で海面がぱしゃりと波打った。
 盛大に水飛沫をあげて、飛び出したのは半透明の尾を持つ人魚だ。
「……人魚も魚か」
「人魚の肉となると、どうにも奇妙な伝説がつきものですが?」
「なに、火を通せばだいたいのものは美味くなるんだ」
 クウハとジョシュアへ向かって手を振る白い人魚。それを観察しながら、2人はひそひそと言葉を交わす。
 人魚がノリアだと知るのは、これから数分ほど後のことである。

 同時刻。
 西の空に夕日が沈むころになって、ついにミステリーサークルは完成した。
 正直、空から観測したわけではないので、完成度には若干の不安は残る。縁と大地が草原を見渡した限りでは、とりあえず草原いっぱいに幾何学模様の円(サークル)が描かれているように思える。
「それで、何をするんダ?」
 月刊“ヌー”のページを捲り、大地は尋ねた。
 開いたページには、異星人との交信の仕方や降霊術の手順が詳しく記載されている。
「依頼はミステリーサークルを完成させるところまでなんだが……とりあえず、何か呼んでみるか?」
「呼べるのか? 流石は縁だな。海洋で名が知れているからか? 期待してもいいのか?」
 月刊“ヌー”によれば、無人島周辺では不可思議な飛行物体が目撃された事例が過去にあるらしい。ともすれば、何か面白いものが見られるのではないか。そんな期待からか、大地の瞳は輝いていた。
「海洋名声の高さって言われてもなぁ……とりあえず円の中心に酒でも置いてみるか」
「なるほど。供物だな。それで、次は?」
「……さぁてねぇ。俺が知るかよ。だがまぁ、来るんなら旨い酒を積んだUFOあたりなら大歓迎なんだがねぇ」
 そう呟いて、縁は沈む夕日の方へ目を向けた。
 と、次の瞬間だ。
 ざばり、と海が波打つと水飛沫をあげ、巨大な何かが浮かび上がって来たではないか。

●UFOの襲来
「なんだ、ありゃ……?」
 海を割って現れた巨大な何かを茫然と見上げ、縁はやっとのことで言葉を吐き出した。
「なにって……UFOじゃないのか? 平たいし、飛んでるぞ」
「いや、飛んじゃいるが……」
 岩のようにゴツゴツとした、平たい飛行物体だ。
 全長は10メートルほどもあるだろうか。
 岩の中心部分が割れる。
 その中には、蛸に似た人影が見える。
 海種……だろうか。
「助けに来ましたのー!」
 飛行物体の上にはノリアが乗っている。
 手を大きく振りながら、縁と大地に微笑みかけた。
「ノリアか! おい、そりゃ何だ?」
 縁が叫ぶ。
「見ての通り牡蠣ですの!」
 ノリアが答えた。
 二枚貝だ。
「か、牡蠣? 牡蠣って言ったゾ? いや、たしかに牡蠣だけどサ!」
 大地も困惑が隠せない。
 牡蠣。
 ウグイスガイ目イタボガキ科とベッコウガキ科に属する二枚貝の総称である。
「つまり“unidentified flying oyster”ってことカ?」
 UFOは実在したのだ。

 時刻はしばらく巻き戻る。
 光も届かぬ海の底、ノリアは蛸の海種たちと邂逅していた。
「近くの島で遭難して困っている人たちがいますの。救助のために、手を貸してもらいたいですの」
 そう言って、ノリアはそっと手を差し出した。
 人差し指を突き付けるように。
 そっと、蛸の海種の1人が触手を1本持ち上げる。
 触手の先端と、ノリアの人差し指が触れ合った。
「人類、go home?」
「ですの」
 交わした言葉は短いものだ。
 けれど、たったこれだけでノリアと海種たちの意思は通じ合ったのである。
 かくして、海種たちの導きにより“unidentified flying oyster”は数年ぶりに浮上することになるのであった。

 太陽はすっかり水平線に沈んでいる。
「つまり、遭難していたわけではないですの? わたしったら早とちりでしたの!」
 アクアパッツァを頬張りながらノリアは言った。
 不足していた魚は、ノリアと蛸の海種たちが獲って来たので事足りている。
「あァ。まァ、観光や仕事で来てんだよ。ってか、共食いじゃねェの?」
 アクアパッツァを食むノリアへと、クウハは問う。
 なお、遭難していたわけではないということで、UFOと海種たちは既に深海へ帰還している。
「……共食いではないですの。魚は魚を食べますし、食べなければ生き残れないですの」
 弱肉強食の掟である。
 かくして、無人島での仕事が終わる。
 暗い海の果てには、松明の明かりが見えていた。
 きっと、エントマの遣わした帰りの船だ。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

お疲れ様です。
ミステリーサークルは無事に完成しました。
きっと、エントマの手により立派な観光資源となることでしょう。

この度はご参加いただき、ありがとうございました。
縁があれば、また別の依頼でお会いしましょう。

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