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シナリオ詳細

<ラドンの罪域>毒に濡れて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 覇竜領域には現在、一体の冠位魔種が滞在していることが明らかになっている。『冠位暴食』ベルゼー、亜竜集落フリアノンの相談役として知られていた男は、覇竜を愛していたからこそジャバーウォックと六竜を率いて傷ついた練達を襲い、『冠位怠惰』カロンに便乗して深緑へと侵攻した。すべては覇竜に手を出さぬ為の方策だったのだ。だが、その目論見も崩れた。次は覇竜に手を出すだろう、というのは亜竜集落の里長代行達の共通認識である。
 現在、彼は覇竜の奥地、『ピュニシオンの森』へと退避しているという。
 そして、そこには竜種達が人の文明を模倣した里が存在している、という。その地の名は『ヘスペリデス』。
 凶悪な魔物と亜竜が闊歩するピュニシオンの森を抜け、イレギュラーズ達が到達したのは『ラドンの罪域』と呼ばれる場所。あたり一面が黒い靄や霧に覆われ、風が吹き荒れ濁っている……そしてその向こうに、影が見える。
 周囲の黒い空気をより濃くしたような、瘴気とすらいえる毒気を纏った影が。


 練達での竜種の襲撃、より詳しく言えば『探究の塔』において亜竜を撃退した者達であれば、その姿を見た者もいるだろう。1年以上も前の話ゆえに、うっすら覚えている程度かもしれないが……それでも、その禍々しい存在感は数打ちの亜竜とは大きく異なる実力であろうことは明らかだ。
 かたや、紫がかった黒い体を揺すって現れた毒亜竜――『クレピタス』と呼ばれるワイバーン亜種。
 イレギュラーズの決死の足止めにより大きく傷つき、撤退を余儀なくされた存在だ。
 もう片方、3体ほどの個体は燃えるような赤い鱗を持ち、口から火炎をちらちらとのぞかせる。『ボルカノン』と呼称された個体は、かの戦いで半数ほどまで減らされている。
 もう一種、別個体も居たが……覇竜探索の折、イレギュラーズが撃破したことが確認されている。
 現れた『異物』の存在にか、はたまたイレギュラーズという存在への恨みゆえか、亜竜達は競うように咆哮をあげ、イレギュラーズへと襲いかかる。
 雪辱を晴らすために、異物を排除するために、そして我はここにあると、より強大な存在に誇示するかのように。
 眼前の敵に意識を向けたイレギュラーズの中には、使い魔を操ろうとした者もいるだろう。だが、この妖しい靄のなかでそれらはどれほど生きられようか。亜竜の起こす暴風に巻き込まれ、命を落とすかもしれない。
 靄による視界不良、それによる肉体的な不利、かつて練達の者たちの力を借りてやっと撤退させた敵……不安要素が少ないとはいうまい。
 だがイレギュラーズは、1年もの間を無為に過ごした訳では無い。冠位亜種を新たに2体退けた経験を、今こそ叩きつける時だ。

GMコメント

 「あの決戦で出したワイバーンの処理どこまでしたっけ……」「アクアリスはラリーで死んでる……」みたいに目を皿にして自分のシナリオを漁っていました。出すなら今しかねえ。

●成功条件
・『ワイバーン・クレピタス』撃破or撤退
・『ワイバーン・ボルカノン』討伐

●ワイバーン(ボルカノン・クレピタス共通)
 今回登場する敵は『<Jabberwock>phreatic explosion』と同一個体ですが、やや性能に変化が生まれています(相対的に弱くなったといってもよい)。
 『飛行戦闘にデメリットを被らない』『飛行中は命中・回避に上方修正』『【飛】を伴う翼による暴風攻撃』『常に10m程度の飛行』はそのまま保有しています。

●ワイバーン・クレピタス
 前述のシナリオのボス格だった亜竜。ステータス的にはEXA・防技が高め。他数値もHARDなりの高さです。
・竜鱗(偽):ターン終了時、ダメージ総量に応じHP回復。
・竜血(偽+):ターン終了時のBS付与数に応じて、次ターンのステータスが上昇
・ブレス(放射型):物中扇、【毒系列】×2【呪殺】
・ブレス(毒弾):物超域、【毒系列】×2【万能】【ブレイク】
・ブレス(収束型):物超貫、【万能】【必殺】【溜1】

●ワイバーン・ボルカノン×3
 クレピタスほどではないが、亜竜としても高めの性能を持つ。だが個体数は半減している。
・竜鱗(偽-):個々のBSに対し確率で【緩和1~2】発動。
・竜血(偽):ターン終了時の被付与BS数3個以上で能力向上
・ブレス(炎弾):神中域、【火炎系列】×2
・ブレス(熱線):物遠単、【火炎系列】×2【防無】

●戦場
 ラドンの罪域内。常に靄がかかっており視界不良(命中に影響)、おまけに毎ターンAPが微減していきます。使い魔とかは状況把握に使えますが、この効果で長続きしません。
 また、視界不良は俯瞰視点などにも及ぶため、「物理的に視ることで成立する」視覚拡張スキル(広域俯瞰など)は通常ほどの効果が期待できないためご留意ください。
 戦闘が激化した場合、竜種に目をつけられたりする可能性もあります(今回は襲ってきませんが)。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <ラドンの罪域>毒に濡れてLv:40以上完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度HARD
  • 冒険終了日時2023年04月24日 22時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)
波濤の盾
志屍 志(p3p000416)
密偵頭兼誓願伝達業
イリス・アトラクトス(p3p000883)
光鱗の姫
新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの
茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)
音呂木の蛇巫女
ルチア・アフラニア・水月(p3p006865)
鏡花の癒し
ムサシ・セルブライト(p3p010126)
宇宙の保安官
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで

リプレイ


「こいつら、以前練達を襲った連中なのか?」
「……思い出した。あの時たっぷりとブレスをお見舞いされた相手だったわね。まあ、どんな相手が現れても進むしか無いけど」
 『よをつむぐもの』新道 風牙(p3p005012)はピュニシオンの森の先、『ラドンの罪域』に現れたワイバーン達を蹴散らすことに乗り気ではなかった。相手の領域を侵犯するという罪悪感があった為だ。だが、『光鱗の姫』イリス・アトラクトス(p3p000883)はその亜竜の姿を知っている。クレピタス、と呼ばれた毒持つ亜竜の猛攻を、撤退直前まで抑え込んだ過去がある。今の今まで直接対峙した記憶を闇に放り込んでいたが、いざその唸り声を聞けば話は別だ。進むために、過去の自分ごと超えねばならぬ障害だ。
「恨み言を連ねるつもりはありませんが、あの日壊れた練達の街並みに思うところはあります」
「……別に貴方に直接の恨みがある訳ではないけれど、ジャバウォックには酷い目に遭わされたからね」
 『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)と『高貴な責務』ルチア・アフラニア(p3p006865)は、直接的に上空を舞う亜竜と対峙したわけではない。ないが、そもそもの原因であるジャバーウォックと竜種達の襲撃を経験し、乗り越えている。あの時破壊されたドーム、崩れた建物、その他諸々の悲劇の痕跡は忘れられよう筈もない。倒す理由は、いくらでもある。
「ぶはははっ! ムサシどんムサシどん! ワイバーンってやっぱおいしいのかな! どっかの緑の伯爵とか……なんかそんなこと言った思い出があるような、ないような……」
「ここを勝っ……え? 秋奈さんはあれを食べるつもりでありますか?! 伯爵……幻想に持ち帰って? 献上を?」
「私ちゃん達だけで食べるぜ! 腹壊されても責任持てん!」
 堂々たる口上を以て己を奮い立たせようとした『宇宙の保安官』ムサシ・セルブライト(p3p010126)は、しかし唐突な『音呂木の巫女見習い』茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)の問いかけで脳内に数多の疑問符が舞う。彼は詳細を知るところではないだろうが、かつて彼のバルツァーレク伯の要求によりワイバーンの卵を持ち帰るという依頼をうけた過去が、ローレットにはある。何れにせよ無謀に違いないが、今回の目的は打倒である。
「それにしてもこの領域内って視界が悪いですね……亜竜も飛び回っておりますしなんかすっごい怒ってますし……」
「俺達の方が邪魔者だから仕方ない。だが、進行の邪魔をするのであれば排除するしかないな」
「そ……そうであります! 自分達はお前達に勝って、先に進んで見せるでありますっ!」
 『愛し人が為』水天宮 妙見子(p3p010644)は上空を見て、心からげんなりした気分を覚える。淀んだ空を使い魔は認識できない。俯瞰視を扱う者であっても、ここまでの空模様では役に立つことはなかろう。それがラドンの罪域に於ける否定、なのだろうか?
 『波濤の盾』エイヴァン=フルブス=グラキオール(p3p000072)からすれば、否、イレギュラーズとしては「邪魔なら排除する」しかないのだが、仲間達の戦意や練達の惨状を思い返せば、言葉で言うほど『仕方ない』で済ませるつもりはないはずだ。少々毒気を抜かれていたムサシも、その言葉に触発され戦闘用スーツを身に纏い、ゼストスクランブラーに跨った。
 敵がなんであれ、因縁がどうあれ。毒と炎を纏った亜竜は間違いなく排除されるべき運命にあるのだ。


「よう、誰かと思えば勇んで人間をいじめにきたら、逆にやり返されて逃げ帰った竜の面汚し君たちじゃねえか! どうした、リベンジに来たか?」
 風牙は地上から見上げる格好で、クレピタス目掛け挑発を仕掛ける。取るに足らない存在であるはずの人間の、理解できない言語……しかし明確に嘲りの波長が混じったそれは、クレピタスに確かな敵意を抱かせる。
「盛り上げていこー! せーのっ、か弱い乙女ーっ!」
 他方、秋奈は背負った機械翼で軽く飛び上がると、拳を突き上げ周囲を盛り上げるよう声を張る。その一見理解不能な動きが、ボルカノン達を惹きつけるのだから『技術』というものは分からない。
 クレピタスの爪が地上を掠め、ボルカノンの炎があたりを舐める。が、その何れもを真正面から受け止めた影があった。
「手荒い歓迎ね……でも、これぐらいなら耐えきれるわ」
 爪を盾でいなし、炎を涼しげに受け流す。イリスの眼光は、何者にも侵されぬ強い意志が見え隠れした。同時に、亜竜達の肉体に気持ち程度の傷が生まれる。
「ま、間に合いましたね! ヨシ!」
「妙見子さん、流石であります! 亜竜達も驚いているでありますよ!」
 そう、妙見子の施した付与術式により、ワイバーン達は攻撃の一部を弾き返されたのだ。そうでなくとも、手抜きなしの攻撃を涼し気に受け止められれば思うところだってあろう。
「いくら霧が濃くても、音や匂いは誤魔化せん。なら、有利不利の点ではイーブンってことだ」
「機械でも無い限り……仮に機械であっても、あなた達には熱がある。なら、捕捉するのは難しくない筈です」
 ボルカノンの一体の直ぐ側から、人間の声が響いた。
 次の瞬間、ボルカノンは燃え上がる血潮を吹き出し、速度の乗った一撃に身を揺する。致命傷と呼ぶにはささやかだが、かの亜竜相手にはかなり『削った』方だといえる。
 己の五感を頼りに狙いを定めたエイヴァンと、範囲ではなく対象狙いへと視覚を拡張させた瑠璃による一撃は、何れもが過たずボルカノンへと叩き込まれた。秋奈の挑発(?)によって地面に引っ張られた……つまり彼等は、地上からでも攻撃が届く。
「自分にも敵が見えるであります……喰らえ、スペリオン――エッジ――ッ、キィィィィック!!」
 畢竟、ムサシの至近距離からの蹴りですらも、ボルカノンの腹部を抉るに足る射程であるということ。
 すかさず反撃が飛んでくるが、感情を揺さぶられたボルカノンが秋奈以外に狙いを向けられる筈がない。そしてそれは、イリスに防がれることが大前提……となる。
「不調を被っても私が治療するわ。遠慮なく戦って」
「十分な支援と治療はしますから、思いっきり叩きつけてくださいねー!」
 イリス自身も己の治癒はできようが、すべてを一手でこなすことは不可能だ。だからこそのルチアであり、逆転の手を見出す為の妙見子でもある。襲いかかる猛攻を受け、仲間を頼り、手が足りぬなら攻勢に出る。
 多くをこなす必要はない。
 ただ、自分に与えられた責務をこなせばいい。ただそれだけ。
「お前の治癒力も、身軽さも奪ってやる……この『竜殺し』でな」
 クレピタスと対峙した風牙の一撃は、たしかにその身を穿った。威力ではなく、不調と言う名の楔で。
 感情を乱され、治癒力を奪われ、あまつさえ鱗の護りすらも……この羽虫は奪おうというのか。
 ワイバーン達はいまだ余裕を隠さない。上位の生物としての矜持があるからだ。
 イレギュラーズは油断せず、さりとて敗北のビジョンを見ない。仲間と並び立った瞬間、信頼のもとに背中を預けているが故に。
 両者のスタンスの違いは、翻って生物としてのあり方の違いだ。この違いが、どちらが正しいかは……結果のみが伝える話だといえた。


 クレピタスは、目の前の状況が理解できないでいた。
 羽虫程度の敵として認識していた人間が、今まさに己の首に手をかけつつある……という事実。
 過去に襲撃を行った先での抵抗はといえば、人間が甲虫の顎に挟まれた程度であったろうに、何時の間に。
「ねーねー見て見てコレ! 破片七晶石!」
 そんな戸惑いをよそに、秋奈はクリスタラードの鱗を高々と掲げ、亜竜達にアピールする。その美しさ、そしてそれが彼女の手にある事実は、満身創痍の亜竜達を猛らせるに十分な……もののはずだが、風牙やムサシの奮戦が却って彼等の目を曇らせた。
「ってオラーッ! ワレどこに目ェ向けとんじゃーい!」
「ギィィィィァァァァッ!!」
 念押しする秋奈を煩わしく思ったのか。喉の奥から吐き出された絶叫とともに、一点集中の毒ブレスが襲い掛かる。難なく躱したと確信するや否や、炎弾が背中からたたきつけられる。骨が軋み肉が焼ける匂いがはじけ、さしもの秋奈も痛覚を認識した。
「しまった……つい芸人魂に火がついてしまった……たみこちゃ癒して……」
「大丈夫ですか秋奈さん! 何時の間にそんなところにまで!」
「あーあーこんなに焼け焦げて……!」
 イリスは顔をしわくちゃにして助けを求める秋奈の姿に驚愕を禁じ得ない。庇っていたはずの相手が何故か狙われに行っていた事実、そして弱っていても連携する程度の知性が残っていたというその事実に。妙見子は少々呆れつつも十二分の治療を施し、その背を押した。
「……まだ、炎を撒き散らすだけの力が残っていましたか」
「!?」
 ボルカノンは、背から聞こえる声に耳を疑った。激しい風切り音のなかでも、はっきりと得物を構える無機質な音が響く。空飛ぶ奇怪な獣に乗った者を認識していたが、背を取られるなど想定外だった。声の主、瑠璃は仲間を傷つけた怒りでも、勝利を確信した快哉でもなく、淡々と背に狙いを定めた忍者刀を振り下ろす。衝撃、次いで浮遊感を覚えた直後、彼女は探索艇と共に飛び退る。視界の隅に、哀れに横たわる亜竜が見えた。
「いいんだぜ。今なら……見逃してやるよ」
「――? ……!!?」
 戦況が傾き、ボルカノンが壊滅状態に陥ったのを理解したクレピタスに対し、風牙は憐れむように言葉を投げた。
 ……哀れみを受けた。
 この淀んだ空を飛びまわり、我が世とはここにあらんと吠えた亜竜である己が、羽虫に。
 人語を解さぬ身でも、その「鳴き声」のトーンは理解できた……だから、苛立った。
 生きる為なら逃げるべきだ。だが、亜竜が誇りを捨てて意地を捨てて、果たして罪域で生きる権利はありや、と聞かれれば疑問符が浮かぶ。
 この目の前の、生意気な顔をした個体を押し潰さねば気が済まぬ。今度は思い切り、飢えから押し潰してやろうか。クレピタスは、翼を打った。
「これ以上自由に……飛ばせないッ!」
「もう少しその血を流していけよ。図体でかいんだからまだ溜め込んでるんだろ?」
 だが、左右からその巨躯に迫り、襲い掛かる影があった。
 片や、裂帛の気合いと共に自らを地面に押し込むムサシの斬撃。
 片や、じっとりとした空気のごとく纏わりつき、肉を剥ぎ血を奪いにくるエイヴァンの斧砲による一閃。地上すれすれで体制を持ち直したクレピタスであるが、既に己の庭は、罪域の空は……あんなにも遠い。
「ぶはははっ! 空で好きにさせてやらねーのさ!」
「竜種と戦っている仲間だっているのに、強力だからって亜竜相手に尻尾巻く気なんてないのよ」
 地上に下ろされてなおブレスを吐くべく構えたその前に、イリスが堂々と立ちはだかる。
 空を希求した視界を遮るように、秋奈がスラスターに残った推進剤をふかして飛翔する。
 肉体はまだ動く、状況は最悪ではない。だが、果たして無事に生きていられるのか?
 亜竜にあるまじき『弱音』が小さい脳裏をよぎった事実は、亜竜をして激しい羞恥と怒りをかきたてた。
「撤退するなら、させてでも先に進みたいものですが……」
「でも、向かってくるなら遠慮はいらないであります! 無為に過ごしてきた訳では無いと、示してみせるっ……!」
 瑠璃からすれば、クレピタスの生死が成功を差配しない以上は深追いする気はない。が、逃げないのなら倒すしかなく。ムサシはもとより、一年の積み重ねで以て相手を打倒する気でいる。
「この霧のなかで魔力が削られるのは厄介だけど、まだ耐えられますよ!」
「治療するだけの魔力は残ってる……ブレスが飛んできても、受け止めてあげる!」
「……だってよ、クレピタス。『逃げるか』?」
 妙見子とルチアは、癒やし手として十分な魔力と浅からぬ経験を積んできた。失敗もあったろう、救いが届かぬ局面も見た筈だ。それで腐らず折れず曲がらず進んできたのは、彼女らの強みだと言えた。
 だから、そんな仲間になら背を預けられる。風牙の声に籠もった自信は、己ではなく仲間に向けて。クレピタスへ叩きつけた挑戦状は、全員を鼓舞するためのもの。
 クレピタスが吠える。
 死への恐怖よりも、屈辱と怒りが上回る――もう、イレギュラーズが逃げる場はない。完全決着のみが、この局面に求められている。

 空を舞う「それ」は、先程狩った大蛇を咀嚼すると、地面に倒れ伏した飛竜もどきの姿をみた。人が如き羽虫には、未だ負けぬと思っていたのになかなかどうして面白いものを見た、と口元を歪める。
 だが、「それ」は興味を持っただけだ。手を下す、或いは近づこうなどとは思わない。今は、まだ。

成否

成功

MVP

新道 風牙(p3p005012)
よをつむぐもの

状態異常

茶屋ヶ坂 戦神 秋奈(p3p006862)[重傷]
音呂木の蛇巫女

あとがき

 これにて1年ちょっと越しの雪辱……いやあの時勝ってるし……反攻? が、成功した形となります。
 結果として消耗はちょっとしていますが、以前は20人ちょっといて追い返して成功、程度の敵勢力です。
 一年の積み重ねを鑑みれば快哉を叫んでいい程度の勝利だった、と思います。

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