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シナリオ詳細

<被象の正義>煙たがるほど愛じゃない

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●愛なんかじゃない
 聖なるかな
 聖なるかな

 自分は神聖な礼拝堂にもくもくとたかれる煙
 読み上げる聖句を一言一句覚えてる
 その清らかな声が
 清らかな唇が
 塵一つ落ちていない礼拝堂で
 閉じた扉の内側で
 おねがいだ
 ずっと俺を閉じ込めて

●煙のゆくさき
 それは一見にして、昨今散発するリンバス・シティ化現象の一環に見えた。そしてそれは側面的に事実であり、多くのイレギュラーズや天義関係者たちも同様の対応を尾籠そうとしている。
 だがここに、例外があった。
「俺は『スモーキー』、ゼノグラシアの裏を探ってる」
 そう改めて自己紹介をした男は精霊種だった。
 冬越 弾正(p3p007105)とアーマデル・アル・アマル(p3p008599)から不名誉なあだ名をつけられそうになりがちな彼は、煙草を指に挟んだままそこに集まるイレギュラーズたちを見やる。
「確か……『リンバス・シティ』だったな。カフサスの村がそいつに呑まれたってことで間違いねえな?」
「ああ、住民はみなゼノグラシア(異言)を話し、影の天使が闊歩してる。
 街に入るにゃ相当苦労するだろう」
 だな? と弾正が隣のアーマデルに視線を向けると、アーマデルは偵察情報をマップに広げた。
「スモーキー、お前がこの村へ入っていく僧侶の一団を見たっていうのはこの辺りだよな」
 マップ南側。そこにピンをたてると、村で入手した地図には礼拝堂がちょうど近い所に配置されている。
「……ああ。連中もゼノグラシアを話してた。おそらくは『遂行者』とその一団だろう」
 暗いトーンで呟くスモーキーに、弾正たちは一度だけ顔を見合わせる。

 遂行者とは、『預言書』に従って動く自称神のしもべたちの総称である。
 彼らはローレット(もといイレギュラーズ)によって切り拓かれた歴史が偽りのものであると主張し、冠位魔種ベアトリーチェに支配された筈の『本来の天義』を作り出そうとしているようだ。
 そんな彼らが今天義のあちこちに作り出しているのが『リンバス・シティ』。
 異言を話す住民たちの異質な街で、核となる聖遺物を呑み込んだワールドイーターを倒す事で元に戻すことができる。
 これまで何件もの依頼がローレットに舞い込み、その実績もあるようだ。

「天義からも依頼されてるしな、この街をリンバスシティ化から解放して元に戻す仕事がある。スモーキー、お前は合同で動くってことでいいのか?」
 アーマデルからの問いかけに、スモーキーは少し濁った様子で肯定する。
「ああ、ちっと気になることがあるんでな。それと……」
 スモーキーは咥えていた煙草を灰皿においた。
「もしハート型の錫杖をもってる女を見つけたら、殺さないでおいてくれ」
 理由は言わなかった。けれどその言葉には、落ちる灰のような寂しさがあった。

GMコメント

●オーダー
 リンバス・シティ化したカフサスの村を奪還、解放すべく突入します。
 シナリオ前半は様々な形状の『影の天使』との戦いになるでしょう。
 狼型や人型、足が十二本ある蜘蛛や空飛ぶ巨大な眼球など様々ですが、戦闘力はそれほどではないのでぐいぐい進めるでしょう。
 ただし、ワールドイーターが村のどこにいるのかがわかっていないので手分けして攻略を進めることになるでしょう。
 主にチームを三つに分け、北側、南東、南西をそれぞれ探索するのがお勧めだそうです。

●ワールドイーター
 首のない巨人の姿をした怪物です。
 手には大きな燭台を持っており、それを主な武器として使用します。
 怪力が特徴で、壁などは簡単に破壊してしまうでしょう。
 肉体も頑強なため、戦うにはBSで防御を下げたり単純に高い威力で撃ち抜くといった方法が求められます。

●味方NPC
・スモーキー
 流れの探偵をやっている精霊種です。
 吐き出す煙で相手を拘束する技を使えるほか、結構器用に立ち回れるようです。
 彼を探索チームに加えることでメンバーを3:3:3にできるので協力することをお勧めします。

●???
・女僧侶
 ハート型の錫杖をもった謎の女僧侶です
 異言を話していたとも言われ、話しの流れから遂行者である可能性があります。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <被象の正義>煙たがるほど愛じゃない完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年04月07日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)
華蓮の大好きな人
亘理 義弘(p3p000398)
侠骨の拳
志屍 志(p3p000416)
遺言代行業
冬越 弾正(p3p007105)
終音
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
アーマデル・アル・アマル(p3p008599)
灰想繰切
ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)
微笑みに悪を忍ばせ
マリオン・エイム(p3p010866)
晴夜の魔法(砲)戦士

リプレイ

●魂が知っていた
「スモーキーさんは、探偵なのですよね?」
 『嘶く矜持』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)は問いかけつつも、脳裏にかの『探偵』が浮かんでいた。天義で探偵と聞くとどうしても思い浮かんでしまうもので、もっと言えばスモーキーが常時手にしている煙草もそのイメージを近づけていた。
 探偵って皆こういうスタイルなんだろうか、などと思ってしまうくらいには。
 スモーキーは『ああ』と応えつつ、グラスにはいった水をちびちびやっている。突入前の休憩として酒場にやってきた彼らだが、どうやら金がなくて酒を注文できなかったらしい。依頼主の責任として依頼料は確保してあるというので安心だが、なんだか不憫になるようなエピソードである。
「探偵のお仕事というと……何かな? マリオンさん実はよく知らないんだよね」
 『双影の魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)が隣の『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)にちらりと視線を向ける。
「小説に書いてあるように、密室殺人を暴いたりとかかな」
「迷子の猫や犬を探すのが殆どだな」
「夢がないねえ」
「夢は金にならないもんだ」
 逆に金で夢は買えたりする。義弘はその不可逆性を説こうとしていたらしいが、マリオンにはピンとこないらしい。
 『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は逆にそのあたりがわかったらしく、グラスに口をつけながらほんのり微笑んでいる。
 ならばと言った様子でココロが身を乗り出す。
「天義という国はどこへ向かうべきだと思いますか?」
「知らねえ」
「知っ!?」
 ばっさり切って捨てたスモーキーにココロが面食らっていると、スモーキーは煙草の灰を灰皿に落としつつ続けた。
「未来を見るってのは過去を見るのと同じだぜ。てことは、未来に理想を見るのも、過去に理想を突きつけるのと一緒のことだ。過去は変わらねえし、つまりは未来も変わらねえ」
「そ、そんなものでしょうか……」
 流石に極論過ぎると思うココロだが、『微笑みに悪を忍ばせ』ウィルド=アルス=アーヴィン(p3p009380)は意図する所を察したらしい。
「手元へやってきた未来――つまりは『今』を見よということですか。哲学的ですね。つまり今我々が見るべきは、リンバス・シティの異変、と?」
「そゆこと」
「では、『ハート錫杖の女性』もその今が関係あるのでしょうか」
 『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)の鋭い問いかけに、スモーキーは唇を歪めて黙った。ついでに煙草をくわえ込んでしまったので、どうやら喋りたくないことらしい。
「いや、言わずともわかる。どんな女性かは知らないが、そうと決めたら一直線に思いを伝えるべきだ」
「まて、誤解がありそうだ」
 『残秋』冬越 弾正(p3p007105)が話を進めようとしたところで、スモーキーが手をかざして止めた。
「そんなんじゃねえ、勘違いしてもらっちゃ困るぜ」
「なら、スモーキー殿とどんな関係があるんだ」
「まあ良いだろう。喋らせなければならない理由は、今のところない」
 『灰想繰切』アーマデル・アル・アマル(p3p008599)が身を乗り出して詰めようとした弾正を片手で制した。
「少なくともそれがオーダーだということなら、覚えておこう」
 アーマデルはそんな風に言ったが、先ほどのココロとのやりとりがまだ頭に残っていた。
 『未来に理想を見るのも、過去に理想を突きつけるのと一緒のことだ』。
 もしかしたらお前も、その過去とやらに理想を押しつけているんじゃあないのか。スモーキー殿?

●煙に巻くのはスジじゃない
「――ッ」
 指輪の嵌まった拳が空を穿ち、それは顔のない天使の『顔面』へと突き刺さる。
 ひねりの加わったパンチは相手の体勢を優に崩して足を地面からはなし、そしてきりもみ回転を加え吹き飛ばす。
 それはウィルドの願った強さの一端であり、一形態だ。
 脆くなった壁を破壊し、絨緞の上を転がる『影の天使』。
 手にしていた錫杖を地につけ立ち上がろうとするその一瞬を許さず、ウィルドはサイド距離を詰めた。
「反撃の時間は与えません」
 鋼板の仕込まれた革靴によるキックは影の天使を再び吹き飛ばし、そして影の天使は泥のように溶けて消えた。
 リンバス・シティと化したカフサスの村を探索するのは容易ではないが、ウィルドたちにとってはそう難しいことではない。
 難しさがあるとすれば……。
「■■■■■■■!」
「■■、■■■■■■!」
 手に手に武器になりそうなものを握り集まってくるカフサスの住民達だ。
 彼らは皆ゼノグラシアを話し、まるでこちらを異形の怪物でも見るかのようににらみ付け、そして勇敢にも襲いかかってくる。
「ふむ……注意を引くのは難しくありませんが、殺さないように倒すのは一苦労ですね」
 ウィルドがあえて前に出ると、鉄パイプが叩き込まれる。
 が、それがウィルドにぶつかることはなかった。
「オラァ!」
 直前に義弘がパイプをキャッチし、相手を強引に殴り飛ばしたのだ。
 握る向きもなにもなかろう。相手がつい手放したパイプをそのまま構え、義弘は追撃を放つ。
 後方から迫る男が農具の鎌を振りかざすと、振り向きざまにパイプを投げ放ち相手に命中させた。
 ウグッと呻いた相手は気を失ってその場に転がる。
 残る村人達が一斉に襲いかかろうとする――が、空から飛来する無数の銀の矢が彼らの足や腕に突き刺さり悲鳴をあげさせた。
「アッシュ?」
「安心してください。殺しません」
 少々強引にはなりますが、とアッシュは弓をしならせるように振り、後方から迫る屈強な女を殴り倒した。
「それにしても……目的の対象はまだ見つかりませんね」
 アッシュは召喚した蒼い小鳥を飛ばして観察しているが、巨人のようなワールドイーターもハート型の錫杖を持った女も見当たらない。どこかの室内に籠もっているのか……。
「ともあれ、事情をお聞かせ願いたいものです。何も知らない儘、ではお手伝いするにも……」
「ここにいるって事は、この状況を作ったんだろう? 捕まえて話がしたい、って雰囲気でもなさそうだが」
 義弘は小さく唸り、再び歩き出した。

 こちらは村の北側。空を飛ぶ鴉が旋回飛行を行い、それを狙った翼ある怪物が鴉を一撃のもとに斬り殺した。
「おや」
 接続が立たれ死のショックが伝わったことで、瑠璃はやれやれという風に肩をすくめる。
「教会のような建物を見つけましたが、迎撃されてしまいましたね」
「迎撃?」
 マリオンが小首をかしげる。
「じゃあ、ワイバーンで空を飛んで戦ったほうがいいかな!?」
「孤立は避けたいので、それは優先順位の低い手段にしたいですね。それより……」
 瑠璃が視線を向けると、屋根の上からぴょんと飛び降りてきたココロが彼女たちの目の目に着地した。
「はい。迎撃されたということは何かあるということ。その教会に向かいましょう」
 方角を相談し合っていたところで、ココロがピクリと顔を上げ、そして振り返る。
「敵に気付かれました。――散って!」
 切羽詰まった言い方に三人が素早く散開すると、それまでいた地面に銃弾のようなものが撃ち込まれた。
 チラリとマリオンが見れば、それは尖った角のような物体だ。
「狙撃……!」
 指笛によってワイバーンを呼び寄せ、飛んできたそれに飛び乗ると地面からさほど離れない位置を飛行させる。
「邪魔するなら、倒すまでだね!」
 『マリオンさんアイテム』を握り、狙いを付ける。
「青空の精霊種、双影の魔法(砲)戦士マリオンさん! 行くよ!」
 相手は人型をした影の天使だ。腕がライフルのように変形し、こちらに再び狙いを付けている。
 マリオンは堂々と『撃ち合い』に応えた。相手の銃弾が放たれると同時に、こちらも魔術砲撃を放つ。
 迫ったライフル弾の如き角が命中――する直前。飛び込んできたココロが展開した貝殻型の魔術障壁が弾を受け止めた。
「ッ!」
 受けきれないタメージを回転によって逃がしながら一瞬だけ中を舞うココロ。が自らにかけた治癒の炎が燃え上がり傷口を瞬間再生。ズダンと両足で力強く着地した。
「今です!」
 ココロの叫びはマリオンに向けたもの……では、ない。
 既に砲撃は放たれた。ならば誰かと言えば。
「――」
 いつの間にか影の天使の背後に出現していた瑠璃が握り込んだペンをその首元に突き立てる。
 防御をしようと構えていた影の天使がびくんとのけぞり、そこへマリオンの砲撃が直撃した。

「そろそろ、話してもいい頃なんじゃあないか?」
 弾正は影の天使を斬り倒し、振り返る。
 アーマデルは蛇銃剣アルファルドのリロードをしつつ、スモーキーのほうを見た。
「スモーキー殿。俺たちの関係は依頼人とその依頼を受けたギルド員に過ぎない。だが、その程度の関係にも誠意は必要では……いや」
 アーマデルは自分が意地悪な言い方をしていることに、どうやら途中で気付いたようだ。ハアと息をついて弾正へ助けを求めるような視線を送る。
「おいおい。交渉事を俺に押しつけるつもりか?」
「ミュージシャンだろう。想いを伝えるのは得意では?」
「雑な纏めかたを……!」
 が、それもまた意地悪な言い方だ。アーマデルが自分に甘えてくれていると直感したようで(というか、そういう目をしていたので)弾正は肩をすくめた。
 一方のスモーキーは煙草をくわえ、どこか苦々しい表情をしている。
(ま、あとで仲間にも伝えればいいか。ここは話しやすい環境を作っておくことにしよう)
 弾正は咳払いをひとつすると、誰もいないベンチにとすんと座り込んだ。
「なあスモーキー殿。俺は恋のキューピッドには自信があるんだ。好きな女性がいるなら手伝うぜ。まずはムードを作って共感を高めてだな――」
「そういうんじゃねえって」
 スモーキーが焦れたように声を上げると、弾正は『どうぞ』と言うように手をかざす。
 喋らされたなと悟ったスモーキーが唸り、そして観念したように肩を落とす。
「分かった、言うよ。あだ名の時と言いずるいやつだぜ」
 煙草をくわえ、スモーキーは語り始めた。
 『愛じゃない物語』を。

●愛してるなんて言えやしない
「どうやら……俺たちが『担当』らしいな」
 義弘はにらみ付けるようにその巨体を見上げた。
 首のない巨人のごとき姿は大きな燭台を持ち、資料に書かれていた通りの異様だ。
「ワールドイーター……!」
 義弘が振り込まれた燭台のスイングを横っ飛びに交わすと、ウィルドが入れ替わるようにワールドイーターへと迫る。
(誘引効果が発動しない? いや、抵抗されたか。このまま続けるか、それとも攻撃や代行防御にシフトするか……)
 ワールドイーターの注意を引くように走り、ウィルドは相手を睨み構える。
 撃ち込まれたキックを防御姿勢のみで受けると、吹き飛び建物の壁を崩壊させながら転がった。
 ごろごろと転がりつつも、しかしまだやられてはいない。
 ウィルドは持ち前の頑強さでダメージを吸収し、地面を殴るようにして無理矢理に立ち上がる。
「明らかに注意は引けています。続けていけば必ず……」
「なら誘引を続けてください。あのパワーです。くらったらタダではすまないでしょう」
 アッシュが崩れた建物の間を走りながらワールドイーターを見上げた。
 あちこちに矢を放ち、そこから伸びた銀の糸がワールドイーターの巨体を徐々に縛っていく。
 無理矢理に糸を引きちぎって逃れようとするのを、アッシュは銀色の剣で足を突き刺すことで止めた。
 まるで縫い付けるように地面に突き立った剣。ワールドイーターが痛みに苦しむように叫ぶ。
 義弘は建物の上へとよじ登ると、ワールドイーターの無き頭部めがけてダイブした。
「これで終わりだ――!」
 振り抜いた拳がワールドイーターへと直撃し、その巨体を破壊していく。
 連鎖しておきた破壊は、その核となっていた聖遺物までもを粉砕する。

 聖遺物が破壊されたことでリンバス・シティの影響が解けていった。
「どうやら、こちらの勝利のようですね」
 眼鏡の奥で目を細める瑠璃。指先でくるりと回したシャープペンシルの先端がキラリと光った。
 対するは、ハート型の錫杖を握った女性。
 名も能力も不明ながら、しかし瑠璃、ココロ、マリオンが力を合わせても倒せないほど強い。
「確かに……私達の負けのようです。失敗です。残念です」
 目を閉じ、涙をこらえるかのような表情をする女性。錫杖をしゃらんと鳴らした次の瞬間には、瑠璃の真後ろに彼女は立っていた。
 気配を感じられなかったわけではない、それだけ早く相手が動いたのだ。
 瑠璃が素早く反撃に転じる一方で、飛びかかるココロが瑠璃との間に割り込む。
 魔術の砲撃が至近距離で放たれ、魔術障壁を展開したココロはその威力に瞠目した。
 パキンと貝殻型の障壁にヒビがはいり、ココロは瑠璃と共に吹き飛ばされる。
「殺さないでおいて欲しいって事だけど……トドメはマリオンさんが刺さなきゃいけないパターンかな!」
「『殺さない』だなんて、実力差を前に傲慢です。間違いです。失策です」
「そこまでとは思わないよ!」
 マリオンの放つ魔術砲撃と、女性の放つ魔術砲撃が正面から激突。
 爆発したような衝撃が走り、マリオンは自らの顔をかばうように腕を翳した。
 が、そこまでだ。
 爆発がはれた瞬間には女性の姿はなくなっていた。
「逃がしました……か」
 失敗を『ただの失敗』と受け止められる冷徹さ。瑠璃は相手に強い手強さを感じていた。
「まだ、次がありそうですね」

「スモーキー殿、敵を纏められるか!」
「ああ――!」
 スモーキーの噴き出した煙が影の天使たちを巻き、固まる。そこへ弾正とアーマデルは飛びかかり、交差する二人の剣でばっさりと切り捨てる。
 泥のように溶けて消えた影の天使を見届けると、空を覆っていた帳のようなものが消えていくのを見た。
 弾正は手をかざし、そこへ止まった蒼い小鳥を見て仲間の成功を悟った。
「どうやら、アッシュたちのチームがやってくれたらしいな」
「あの人は?」
「ああ……」
 アーマデルが空を見上げると、鴉が8の字を描いて飛んでいるのが見える。
「逃げられた……といった所か」
「そう、か……」
 がくりと肩を落とす。スモーキーは疲れ果てたように壁にもたれかかった。
「話の続き、いいか」

 教会に炊かれた香の煙があった。
 聖なる祈りに晒され続けた煙にはいつしか精霊が寄り添い、歌われる聖歌と共に教会の天井を渦巻いていた。
「それが、いつかの俺さ。あのひと――『クローム』さんは、本当にいい歌をうたうんだ」
「それが、ハート型の錫杖を持った女性、ってやつか」
 精霊種となった後も断片的ながら記憶を残していたスモーキーにとって、クロームという女性は身近な存在だった。
 家族のようでもあり、愛しい人のようでもあり、しかしどちらでもない他人のようでもあり。なにより、自分のルーツであったのだ。
「ゼノグラシアが天義に蔓延りだした時からだ。あの人は連中と行動するようになった。『あるべき世界を取り戻す』つってな……けど、そのために街を地獄みてーに変えちまうなんておかしいだろう」
「スモーキー。俺たちにその事情を話さなかったのは――」
 アーマデルが察した通りだ。スモーキーは苦笑した。
「ああ、信じたくなかったのさ。あの人がこんなことをしでかしたなんでな。けど、ハッキリするんだろうぜ、あんたらの記録を見れば……クソッ!」
 壁を殴りつけ、スモーキーは歯を食いしばる。
「あるべき世界ってなんなんだよ。なんでこんなマネしちまえるんだ。
 俺は、あの人に……教会でただ歌ってた時のあの人に、戻って貰いてえだけなんだ」

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――未来に理想を見るのも、過去に理想を突きつけるのと一緒のことだ

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