シナリオ詳細
<蠢く蠍>盗賊団を指揮する少年
オープニング
●その少年は強かに
ラサ傭兵商会連合で起きた大討伐。
それから逃げ延びた『砂蠍』のキング・スコルピオが幻想に潜伏しているという噂は、最早噂ではなく公然とした事実となっていた。
雌伏の時を過ごしたキングと一部側近達の動きに最も過敏な反応を示したのは官憲ではなく、幻想のアウトロー勢力……主に盗賊達だ。
細々と悪事を働いていた連中は、『とても敵わない大悪党』の出現に恐怖、或いは歓喜したのである。
武力で、あるいは自主的に次々と頭を垂れた彼等を統合した『新生・砂蠍』は、驚異的なスピードでその勢力を拡大していた。
幻想の貴族達とて、『新生・砂蠍』に自身の領地を荒らされることを是とするはずもない。
彼らは主に大都市圏を中心に防備を固め、『砂煙』の活動に備えていた。
「……だから、こんな辺鄙な場所を襲うんですよ」
前方で多数のごろつきが嬉々として人々が襲うのを、10代中頃の少年が冷めたな視線で眺めると、隣のガタイのよい中年男性……ごろつきの長が豪快に笑う。
「貴族が目をつければ、活動しにくくなるからなぁ。坊ちゃんの指揮は実に助かるぜ」
「……坊ちゃんはやめてもらいましょうか」
この少年、ライナー・ヘットナーのおかげで、ごろつき……ルボル盗賊団は自由に活動できていると言っても過言ではない。
時に、この盗賊団は大都市圏にも出没し、多額の金品を巻き上げている。
業を煮やす貴族の動きを察したライナーが引き際を示してくれるからこそ、ルボル達はやりたい放題活動できるのだ。
ライナーの正体。それは、『砂蠍』の一員。
人々を襲う盗賊達を見ながらも、彼は成り行きをしっかりと注視して引き際を見定めていたのである。
●新生・砂蠍
幻想のローレット。
そこでは、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)がイレギュラーズを集め、頼みごとを行っていた。
「『砂蠍』がこの幻想で、勢力を急速に拡大しているようなのです」
ラサ傭兵商会連合……通称ラサから落ち延びてきた『砂蠍』キング・スコルピオは次々に、幻想の盗賊達を自身の傘下としているらしい。
どうやら、腕利きの傭兵を金で雇っているらしいという話もある。
キングがどこからその莫大の資金を入手したのかなど、不明点も多いが……。
「現在、『砂蠍』は幻想の地方にある村や街を中心に活動しているようなのです」
幻想の貴族、権威主義が常に中央重視なのを逆手に取って、彼らは動いているようだ。実に合理的である。
その『砂蠍』の本拠はわかっていない。捕えた末端の盗賊に尋問しても、まるで情報は得られぬことから、『新生・砂蠍』は中核メンバーに傘下に入った盗賊が率いられている『盗賊団の上に盗賊団がある状態』だと推測されている。
「それで、ボクはその内の1つ、ルボル盗賊団と名乗る盗賊達を皆さんに追い払ってほしいのです」
団長ルボルは大斧使いで、20名ほどの団員はナイフや弓の扱いを得意とし、人々を襲って金品を巻き上げているらしい。
そのルボルに指示を出すのは、15歳程度の少年だという。
「少年、ライナー・ヘットナーは盗賊団の指揮名をしていて、非常に強かな対応で戦況を見定めて、団を退かせるのだそうですよ」
それだけでない。ただ指揮をするだけでなく、実際戦うと掌より大きな念力弾を操り、ルボル顔負けの強さを持つという。
現場となる集落は地方だが、街道に面していてそれなりに人通りの多い場所だ。人員避難も考えつつ、盗賊団の撃退に尽力したい。
「追い払うことが出来れば、『砂蠍』の活動を牽制できるはずなのです」
一通り話を終えたユリーカは、ローレットのギルドマスターであるレオンが「火事場泥棒より堂々と姿を見せてきたって事は、『何か』があるかも」などと話をしていたことを付け加える。
「ただの盗賊団ではないのです。十分に気をつけてほしいのです」
ユリーカは最後にそう話を付け加え、イレギュラーズ達の身を案じて送り出すのだった。
- <蠢く蠍>盗賊団を指揮する少年完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年09月27日 21時40分
- 参加人数8/8人
- 相談5日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●活発化する盗賊達と「砂蠍」
幻想内のとある地方集落。
街道に面したこの場所は人の行き来もそれなりにあり、盗賊などに狙われるターゲットになりやすい。
そして、最近現れるという盗賊は、ローレットのギルドマスターであるレオンですら目をつけている「砂蠍」が一枚噛んでいる状態なのだと言う。
「砂蠍……。この所また活発化してきているようですね」
天義の貴族出身である『特異運命座標』コーデリア・ハーグリーブス(p3p006255)は、この事態に頬を引きつらせる。
「あの蠍が生き残っている事は知っていたが、まだそれだけの数の盗賊が潜んでいたとは……」
銀髪長身の『軋む守り人』楔 アカツキ(p3p001209)も、どれだけの数の盗賊がこの幻想にいるのかと考え、小さく首を振る。
アカツキが考えるように、この国の腐敗を完全に断ち切るにはまだまだ先は長そうだ。
「優秀な指揮官を持つ集団というのは恐ろしい」
その「砂蠍」の一員である少年の存在に、『ShadowRecon』エイヴ・ベル・エレミア(p3p003451)も着目する。
相手はただの盗賊団のはずだが、1人優秀な指揮官がいるだけでごろつきが統制の取れた集団へと早代わりしてしまう。
末端となる盗賊団は「砂蠍」についてほぼ知らず、指揮官となる所属メンバーも情報を吐くことがない。
また、事前情報によれば、敵の数はこちらの倍を超える。その上、戦場となる集落近辺の住人の避難誘導まで意識せねばならない。
状況を整理したエイヴは撃退だけでも手こずるかもしれないと、考えて。
「……一筋縄ではいかなさそうだ」
眠たげな表情のエイヴは、骨が折れる仕事だと嘆息する。
「民の安寧を脅かす不逞の輩、放っておくわけには参りません」
「嘆き悲しむより、少しでも助けられる様に手を尽くすだけだ」
気合を入れるコーデリアに、異世界の日本という場所からやってきた少年、『赤の憧憬』佐山・勇司(p3p001514)は事態の収拾に全力を尽くす所存だと仲間達へと応える。
「そうだな、これも仕事だ」
エイヴもまた、ただ遂行するのみと素っ気無く返す。
「さぁ、蠍狩りと行こうか」
銀糸の髪に白磁の肌を持つ小柄な女性、『死を呼ぶドクター』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)。
今回彼女は最愛の人、灰色の髪に色白の肌を持つ『KnowlEdge』シグ・ローデッド(p3p000483)と共にこの依頼へと参加している。
「……レイチェル。『剣を執る』準備は宜しいかね」
眼鏡を吊り上げたシグが問うと、レイチェルは口角を上げて。
「無論……剣を執る準備は出来てるさ」
その返答を聞き、シグは自らの体を剣に変える。
剣となった彼を武器としてレイチェルは握って。
「往くぞ、シグ」
すでに盗賊が現れたと思われる集落へ、仲間と共に駆けて行くのだった。
●略奪の手を止めろ!
1人、自身の呪骨杖に跨って移動する美咲・マクスウェル(p3p005192)。
彼女は仲間の元にファミリアーのみ残し、上空から地形の把握に努めていた。
「こう、こう……かな?」
ある程度、最短の避難経路を把握した美咲は仲間の下へと降り立ち、その情報を直接伝えに動く。
手早く情報を共有するイレギュラーズ達は、被害が大きくならないうちに集落内へと突入する。
「私達はローレットから来た特異運命座標です!」
すでに混乱していた集落のメインストリートで、コーデリアが声を張り上げる。
「皆様の事は私達が護ります! 安心して、落ち着いて避難してください!」
堂々とした振る舞いで雄弁に語るコーデリアは、強く人々の気を引いて訴えかけようとしていく。
最近、幻想内での活躍が目覚しいイレギュラーズ達の出現とあらば、集落民達も目を輝かせて歓喜する。
「俺達はローレットの人間だ。あんた達の助けに来た!」
逆方向には、勇司が呼びかけを行う。
「だが、俺達だけじゃどうしても手が足りない」
何らかの事件で彼の顔を知る集落民もいたらしく、耳を傾ける者も少なからずいる。
「動ける連中は手を貸してくれ。皆で生きて明日を迎える為に!」
それに応じた若者数人が、老人、子供のフォローに当たってくれていたようだ。
避難誘導へとメインで当たるのはこの2人だが、接敵の前とあってアカツキも逃げ遅れた者に声がけを行う。
レイチェルもシグを携え、自らのギフトである右の魔眼を使う。
「祝福されし魔眼」は、病を目視することができる。
これで、重病で動けぬ者がいないかと見ていたのだが、そちらは勇司の声がけのおかげもあってなんとかなりそうだ。
さらに、レイチェルは超視力も駆使して周囲を見回し、敵の早期発見に努める。
「いたぞ」
彼女の声で、メンバー達は遠くに見えた敵影を確認する。
敵の姿を確認した地点で、美咲は周囲に保護結界を張り巡らして、暴れる盗賊達による被害を軽減しようとしていく。
「へへっ、ありったけ金をよこしな!」
「足りねぇな、もっとあんだろぉ!?」
ルボル盗賊団と名乗るごろつきどもは下卑た笑い声を上げて集落を荒らしていたが、イレギュラーズの出現に顔をしかめていた。
(堂々と姿を見せるというリスクに足る『何か』、か)
幻想の貴族に煙たがられているはずの盗賊達の活動を目にし、エイヴは思う。
「各々略奪を行っていて少数ずつの戦いならば、勝機はある」
アカツキの目には、盗賊団団員達は好き勝手に暴れているようにしか見えない。おそらくは、適当に暴れて来いと言われているのだろう。
そして、敵の後方に、犬系の因子を持つ獣種である『波濤の狼騎』リュグナート・ヴェクサシオン(p3p001218)は盗賊団を率いる団長ルボルと、指揮を取る「砂蠍」の一員である少年、ライナー・ヘットナーの姿を認めて。
「その年で団を率いるとは、大した度胸と先見の明をお持ちだ」
「ローレット……イレギュラーズか」
メンバー達の登場にも、少年はまるで怯む様子は見られない。
海賊時代のリュグナートなら、迷わず勧誘したのだろうが……。
「……今は人を守る盾を気取っていましてね。邪魔させて頂きますよ」
リュグナートは仲間に避難誘導を任せ、自身は盗賊団団員の殲滅から当たり始めるのである。
●交戦、ルボル盗賊団
イレギュラーズと盗賊団がぶつかり始める間も、戦いに巻き込まぬようにと勇司、コーデリアが避難に当たり続ける。
勇司は人助けセンサーを働かせ、近場で助けを呼ぶ声を聞き逃すことなく、そちらへと向かう。
助けの行き届かぬ集落民をしっかりと見つけ、彼は手助けしながら遠方へと連れ出していく。
その間も、盗賊団員は遠距離攻撃の手段も持っていることから、しっかりとカバーに回ることができるよう勇司は警戒を強める。
コーデリアは家々を駆け巡りながらも、万が一盗賊団団員が潜んでいないかと気がけて索敵も合わせて行う。
敵はどうやらメインストリートからは大きく外れてはいないようで、コーデリアはほとんど交戦することなく誘導に当たる事ができていたようだ。
それは、戦場となるメインストリートで他メンバーが盗賊団員達を抑えていたことも大きい。
「有り金置いてけ!」
「おらおら、いてぇ目みたくないだろ?」
団員は鋭いナイフを太陽の光で煌かせ、あるいは後ろからキリキリと弦の音を立てて弓を引く。
当然、牽制するだけでなく、そいつらは躊躇なく刃を振り下ろし、矢を射放ってきていた。
「させないよ」
弓を向ける団員の射線に割り込むように美咲が入り、攻撃を仕掛けようと呪骨杖を相手に差し向けていたようだ。
盗賊団員の横暴を止めるべく、イレギュラーズ達は次々に攻め込む。
レイチェルは複数団員を巻き込めるように位置取り、自身の心の奥底に渦巻く悪意を周囲へと振り撒いていく。
「多数と相対する際は……先ずは混乱を起こすべし、とな」
ハイテレパスで、そう告げる剣の姿を取るシグ。
この姿であっても敵に狙われないわけではないが、そこはレイチェルが攻撃を引き付けてくれている。
そして、彼女の攻撃に合わせ、シグは絶望の歌を歌う。
「んだ、これは……!?」
歌詞に、旋律に込められた呪いは着実にごろつきどもを弱らせ、さらに思考を奪って同士討ちさせる者までいたようだ。
「ん、こいつぁ……」
「ふむ……」
現状、団員達の後方にいる大小2つの人影は動かない。
アカツキはそれを確認しつつ、後衛陣が巻き込まれぬようにと前に立ち、その上で集中の上での全力の一撃を拳に込め、手近な敵から叩き込んでいく。
とはいえ、いくら人々に悪さを働く盗賊とはいえ、アカツキも命まで奪うのは本意ではない。気絶させて戦闘不能へと陥らせることで、団員の数を減らす。
リュグナートもできるだけ弓使いを優先して狙い、一番近い距離にいる団員目掛けて魔剣「波濤の蒼」を振るい、飛ぶ斬撃で相手を切り裂いていった。
攻撃しながら敵の動きを見ていたリュグナートは、はたと思い立つ。
「もしかして、団員に下された指示とは……」
好き勝手暴れている団員達だが、後ろで見張る2人の視界からは出ない範囲に全員がいる。
おそらくは、いつでもこの場から全員で撤退ができるようにと考えての指示なのだろう。
「ヒーラーの不在、数的不利、加えて避難誘導に人数を割かれているこの状況……」
エイヴは敵複数を狙えるよう移動し、50口径のボルトアクション式対物ライフル「AM96」から死の凶弾を発射し、次々に敵を撃ち抜いていく。
そして、集落民を庇うように動いていた美咲も、弓使い目掛けて遠距離術式を放出する。その破壊力によって、団員達も1人また1人と倒れていった。
「邪魔だあっ!」
直接ナイフで切りかかってくる敵を移動しながら躱しつつ、美咲は複数の敵を捉えて無数の魔力弾を浴びせかけ、敵の数を少しでも減らそうとしていたようだ。
交戦の間に、近場からは集落民も金目の物だけ持って離れていた様子。
それもあって、避難に当たっていた2人も戦列に加わって。
「俺はローレット所属のイレギュラーズ、佐山・勇司だ」
勇司は名乗りを上げて盗賊団員の気を強く引き、その上で防御態勢を取って仲間を援護する。
コーデリアも仲間に合わせる形で魔銃「ホーリーオーダー」を構え、挑発めいた狙撃で弓使いを1人ずつ撃ち抜いていたようだ。
団員の半数、弓使いがほぼ倒れたところで、盗賊団の団長ルボルが大斧を担いで動き出す。
「なかなかの力を持ってやがるな」
「そうですね。少し小手調べと行きましょう」
「砂蠍」所属の少年ライナーもまた、不敵な笑みと共に自身の周囲へと念力弾を浮かべ、イレギュラーズ達へと近づいてくるのだった。
●それはまるで引き潮のように
集落を荒らし、人々を恐喝、脅して金品を奪い取ろうとこの集落にやってきたルボル盗賊団。
半数ほどにまで減っていた団員達はナイフを振るい、襲い掛かってくる。
それらを、美咲が手にする杖より無数の魔力弾を放ち、弾幕を形成していく。
イレギュラーズの攻撃を見た団員の一部は護身銃に切り替え、投げぬ射撃に切り替えて距離を取り始めていたようだ。
こうして一行は倍以上いる敵にうまく対処し、丁寧に攻撃を続けて数を減らしていた。
そんな中、メインストリートを駆けて来る団長ルボル。
「うおおおおおっ!!」
大斧を振るい、力で攻めて来る大男をアカツキが抑えに回る。
「無様だな! 頭の出来が悪いばかりに、あんなガキにまで扱き使われるとは!」
「何とでも言え。あの坊ちゃんがいるから好き勝手できるんだからなぁ!」
どうやら、ルボルも少年ライナーに一定の評価はしているらしく、挑発はほとんど効果がない。
だが、相手はアカツキを最初の相手と定めたようで、大きな刃を膂力だけで振り回してみせ、近場のイレギュラーズに……アカツキはもちろん、勇司やリュグナートを含めて重い斬撃を叩き込んでくる。
アカツキは防御しつつも重い一撃に脅威を感じつつ、空中高くへと舞い上がった。
一回転してから急降下した彼は、ルボルの身体へと蹴りを叩き込んで爆発を巻き起こす。
抑えに回る勇司もまた、大斧の一撃を食らっていた。
防御しながらも、他の仲間に向かわぬようしっかりとブロックしていく。
「……佐山・勇司だ」
ルボルを見上げて名乗りつつ、勇司は相手の気を引こうとしていた。
「力無き者を襲うだけの力と能しかない、等とまさか盗人の風上にも置けない事は仰りませんね?」
同じく前線のリュグナートも海賊として活動した過去があるからこそ、相手を煽ろうとする。
「リュグナート・ヴェクサシオンです。以後、お見知りおきを」
「イレギュラーズってやつぁ、色んな奴がいるんだな」
ルボルもにやりと汚らしい笑いを浮かべ、さらにメンバー達へと漲らせた闘気を雷に換え、斧へと充満させていたようだ。
その少し後ろでは「砂蠍」の一員、ライナー・ヘットナーが冷めた顔で見つめている。
冷ややかな視線で戦況見定めた彼が球体の念力弾を飛ばした相手は、後方から盗賊団団員を狙い撃っていたエイヴだ。
銃に攻撃を切り替えた団員へと彼は精密射撃を繰り返していたのだが、近づいてきていたライナーの対処が遅れてしまって。
「さあ、僕の攻撃に耐えられますか?」
ふわふわと彼の周囲を浮かぶ念力弾が急に加速し、一直線にエイヴを狙い撃つ。
そこで、コーデリアが横合いから挑発めいた狙撃を行い、牽制を行う。
この2人が俯瞰した位置から直接攻め込めば、団員達の動きもやや変わる。2人を援護するような形での立ち回りへとシフトしていたようだ。
それだけに、コーデリアに狙いを定め、斬りかかる団員の姿もおり、彼女はその対応を迫られることとなってしまう。
美咲はやや距離を詰めてから魔力の放出で団員の数を減らしていたのだが、やはりライナーが気になる様子。
球体の念力弾を使って攻撃してくるライナーの能力は独自性が強いと感じ、美咲はアナザーアナライズで分析を行う。
「攻防一体に使える技ですね」
その結果によると基本的には神秘属性だが、周囲の石などを含ませることで物理属性を持たせた攻撃も可能のようだ。
「……お前さんに手を出されると厄介なのでな。……停止させてもらおう」
ハイテレパスで相手に語りかける剣の姿をしたシグもまた、ライナーへと「常識圧殺」で食い止めようと動く。
常識圧殺……マッドネスセオリー・ノーマライズプレッシャー。
能力の発現を封じる技ではあるが、ライナーにダメージこそ入ってはいても、依然として彼の周囲に浮かぶ念力弾は滞りなく動き回っている。
「向こうが出ねぇ限り、手を出すつもりはなかったが……」
レイチェルも魔力で生み出す闇の爪痕によって団員の数減らしていたが、指揮する2人が動き出したことで眉を顰める。
(悔しいが……、今はその時じゃない。今回は奴等を撤退させるのが目的だ)
彼女はシグに対応を任せる形を取り、「ハイ・ヒール」使った前衛陣の回復へと忙しなく動いて現状維持に努めようとしていた。
さて、ライナーの抑えに動こうとするメンバーもいたのだが、彼は悠然と戦場を立ち回り、なおもエイヴ目掛けて貫通弾を発射していく。
一発目の傷がかなり致命的だったらしく、エイヴは意識が途絶えかけてしまったが、なんとか運命に頼って意識を留めて再度ライフルを構え直す。
そこで、ライナーは自分達の状況を冷静に見定めて。
「ルボルさん、割に合いませんね。ここは引きませんか?」
「ちっ……、ふがいねぇな」
ルボルは舌打ちし、ほとんどが戦えなくなってきていた自身の部下達を見下ろして。
「坊ちゃんのお達しだ。引くぞ」
明らかに不完全燃焼といったルボルだったが、これ以上はライナーの機嫌を損ねると判断したのか、団員へと後退指示を出す。
すると、倒れていた者も半数が起き上がり、残る倒れた者を引きずるようにしてこの場からいなくなって行く。
その間も、ライナーはじっとこちらに睨みを利かせてくる。
イレギュラーズ達はその間も敵を牽制の態勢こそ維持していたが、深追いすることなく、敵が撤退するのを見つめ返していたのだった。
●撃退はしたものの……
あれほど暴れていたルボル盗賊団達は、まるで嵐が過ぎ去ったかのようにして集落から姿を消してしまう。
遺体になった者もいたはずだが、どうやら生存した団員が遺体も運び去ってしまったらしい。
「抜かりのない連中だな」
エイヴは敵の力を実感しつつも、盗賊団……特にライナーという少年は侮れぬ相手だとその身で実感していた。
メンバー達はその後、集落民と多少交流の後に報告の為にローレットへと戻ることになる。
人々の感謝の言葉を受けながらも、イレギュラーズ達は「砂蠍」メンバーの動きに舌を巻いてしまうのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
砂蠍メンバーと盗賊達の撃退、お疲れ様でした。
集落民からは大いに感謝の言葉も出ており、盗賊団の動きを牽制できたことと思います。
今回は参加していただき、本当にありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様、こんにちは。
GMのなちゅいと申します。
新生・砂蠍のメンバーが指揮する盗賊団の撃退を願います。
●目的
「新生・砂蠍」団の撃退。
討伐までは含みません。
●敵……「新生・砂蠍」メンバー+ルボル盗賊団
○「新生・砂蠍」メンバー……ライナー・ヘットナー
ルボル盗賊団の指揮官。
15歳相当の少年ですが、相当強い力を持っております。
バスケットボール程の大きさをした球体の念力弾を、
自在に操る能力を持っております。
・周回弾(神中特・自分を中心としてレンジ2)
・貫通弾(神遠貫)
・炸裂弾(物中範・出血)
・治癒弾(神中単・治癒)
○団長……ルボル
大柄でガタイのよい40歳前後の大男です。
1mもある刃がついた大斧を担ぎ、攻撃してくる脳筋です。
・爆砕斬(物至単・火炎)
・轟烈断(物近列)
・雷撃波(神遠扇・痺れ)
○団員……20人。
いずれも、柄の悪い20~30代男性。
個々の力は冒険者の皆様と同等かそれ以下。
近距離主体のナイフ持ち12体(護身銃も所持)、
遠距離主体の弓使い8体(護身用サーベルも所持)おります。
●状況
幻想内、とある地方の集落を襲い、金品をゆすり、強奪していくようです。今回は目撃情報を元にその集落へと急行する形です。
団員が暴れるのを、団長ルボルと「新生・砂蠍」メンバーであるライナーが後方で見ております。
通りで戦いとなる可能性が高いので、人員避難と戦いを同時並行させる必要があるでしょう。
●情報確度
A。想定外の事態(オープニングとこの補足情報に記されていない事)は絶対に起きません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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