シナリオ詳細
ゴーストブルームと消えた村
オープニング
●化学のもとで、聖なるかな
「あなたは成し遂げられる人物だと聞いています」
開口一番あなたの前に現れたビジネススーツ姿の男は、堅苦しそうな黒縁眼鏡の奥であなたを見つめていた。
ここは練達のレストラン『ラ・ペルラ』。高級フレンチのレストランのVIPルームに通されていた。
並ぶ料理はカルパッチョ仕立てのマスやフォアグラのテリーヌ。黒毛合成牛のステーキやオマール風エビのグリル。デザートにショコラノワールのムースとマンゴーパフェが小さな皿で小刻みにやってくるというコース仕立てである。
料理をひとしきり食べ終え、食後のコーヒーや酒を楽しむゆったりとした時間の中で現れたのが、今回の依頼人……つまりはビジネススーツの男というわけだ。
随分金のかかったことだ。
あなたが依頼人の素性を気にするのも無理からぬことだろう。彼はその様子を察して革のケースから名刺を取り出しあなたへと差し出した。
名刺にはタカシ・ヤマモトという名前と共に、練達でもそれなりに名の知れた製薬会社の企業名。そして肩書きにはなんとCEOとある。
「弊社の薬品の評判はご存じですか? 化学と魔法を融合させた新薬の研究は多くの良い結果を生んでいます。
元々私は医者志望でしてね。しかし医者が助けられるのが患者一人ずつだとすれば、製薬会社が同じ時間で助けられる人数はずっと多い。私は人を助けるため、この会社を立ち上げ成長させたのです」
タカシの瞳には確かな情熱と理念があった。それは彼の立ち居振る舞いからも現れ、背筋に一本の芯が通ったような凛とした歩き方や、低くゆっくりと語る口調がそう確信させる。
「ですが、昨今弊社の薬品の一部が非人道的な方法で製造されている可能性があるという情報を入手しました。もしそれが本当ならば、許しておくことは出来ません。そして同時に、我が社の信頼性もまた傷つけることはできない」
生きていなければ人を救えない。その根源的理念を拡大させたところに、彼の狙いはある。社の信頼性は人を助けるために必要なのだ。
「問題となった製品はこちらです」
アルミのケースをテーブルに置くタカシ。開いて見ると、青い錠剤がひとつ入っていた。
もしあなたに医療知識や薬学の知識があればわかるだろう。
薬品の名は『エレンデイル』。
これがある病気に対する有効な治療薬であり、そして非常に数少ない治療薬であるということが。
「我が社の問題です。内部の人間で調査することも考えましたが……社員たちは元々私の品質管理態度にはよく思っていないようでした。もし調査を強行すれば反感は寄り強いものになるでしょう。
なので外部の組織……つまりあなたに調べて貰う必要があるのです」
前置きはここまででいいでしょう。そうタカシは述べて、端末をテーブルへと置いた。
●エレンデイルと消えた村
といっても、ただ闇雲に調べろというわけではない。
あなたはエレンデイルの生産施設があるというキリアン村を調査することが決まっていた。
というのも、問題発覚の原因が『キリアン村から全ての人間が消え去ってしまった』からなのだ。
「消え去った?」
仲間の一人が当然の疑問として口にした。それはどのように? と。
タカシはネクタイに手をあて、眉間に皺を寄せて話し始める。
「キリアン村は元々、小さな村です。
村人が収穫した花『ゴーストブルーム』を神殿へ奉納することで得られる聖なる力と薬草学を組み合わせ、エレンデイルを作り出していたのです。
しかしある日突然、彼らは姿を消しました。
生活の痕跡はそのまま残っており、例えば食事は途中で残されたまま、場合によってはフライパンがかまどの火にかけられたままという状態の家もありました。
食品の腐敗具合からかなりの日数が経過していることは明らかでしたが、飼育していたゴーストブルームだけは世話をされていたかのように美しく咲いたままだったようです。これ以上の手がかりは掴めていませんが……明らかにこの村の中で異常が起きたのは確かでしょう」
タカシは最後に村の地図や分かる限りの情報を記したチップを手渡し、席を立った。
「原因が解明できたら、私のところへ直接連絡してください。あなたがこのことを明るみに出さないことを期待します……」
- ゴーストブルームと消えた村完了
- GM名黒筆墨汁
- 種別 通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年04月24日 22時15分
- 参加人数6/6人
- 相談0日
- 参加費100RC
参加者 : 6 人
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参加者一覧(6人)
リプレイ
●
『記憶なき竜人』リリアム・エンドリッジ(p3p010924)は食べることが好きだ。
それが美味しいものであれば尚良いし、珍しいものであればもっといい。
タカシ・ヤマモトに奢られた料理はそれはそれは美味であったし、なにより珍しいものばかりだった。出される度に言われるメニューの名前が分からないことだらけで、『小さいお皿によくわかんないけど美味しいものが乗ってる』という実にリリアムらしい感想をコースが進む度に述べたものであった。
「美味しいご飯を食べさせて貰ったし、それにお仕事だしね。頑張って調べようね!
……なにを調べるんだっけ? ごーすと、ぶるーむ?」
リリアムは指を顎の辺りにあて可愛らしく小首をかしげる。
馬車の荷台の中。平たい床に座り込むようにして仲間達と共に揺られている最中のこと。
『あたたかな声』ニル(p3p009185)は『そうですよ』と頷いて依頼書を改めて鞄から取り出した。
練達らしいというべきか、A4サイズのコピー用紙に印刷されホチキス留めされたその書類には、タカシの説明したことが一通り記述されている。
製薬会社の事情。エレンデイル。ゴーストブルーム。薬の作成方法。そして――。
「消えた村の人たち……」
依頼書から顔を上げ、ニルは口に出してみた。
「どこに行ったのでしょう。フライパンを火にかけたまま出ていくなんて、よっぽどのことだと思うのです」
「一種のバイオハザードが起きたと推測しますが……」
状況から誰もが思うことを、『ツクヨミ』善と悪を敷く 天鍵の 女王(p3p000668)はまず口にした。狐めいた仮面のせいで表情は伺い知れないが、何かを熟考しているようには見える。
曲げた指を口元に当てるような仕草がまさにそれだ。
「私としては、エレンデイルの非人道的な製造方法についてもきになります」
因果応報。非道が報いを受けたのであれば、それはある意味順当な結果といえるだろう。
現在の状況を俯瞰して眺めたならば、あるいはその結論だけでも良いのかもしれない。
しかし依頼主であるタカシ・ヤマモトが求めたのは真相の究明であり、つまりは『何が起こったのか』という歴然とした事実である。善悪はそのあとに、観測した者が述べれば良い。
そこまで考えたのだろうか。ツクヨミはふと顔をあげた。
「例の『聖なる力』とやらも果たして本当に『聖なる』力なのか。検証する必要がありそうですね」
「魔術に神聖さを求める場合、それは信仰がからむからね」
『奈落の虹』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)が開いていた本の一部を指でなぞりながら呟いた。
「たとえ信仰する対象が悪魔であっても、それが厳密に『神聖視』されることはありえるんだ。逆に、聖なる存在を第三者が邪悪と見なした場合、邪法として伝わることもある。要は、主観だね」
「詳しそうですね?」
「魔術に関してはね。医学に関しては皆も充分詳しいんじゃないかな」
ウィリアムが回りを見ると、ニルやツクヨミがこくりと頷いた。
エレンデイルについても知っていたし、その詳しい成分についてもあるていどの知識があった。
というより、今回この依頼に選抜されたメンバーの中で医療知識を有していないのはリリアムくらいだ。ここまで偏った人選というのも、(偶然がからんだとはいえ)ローレットでは珍しいだろう。
「そもそも、エレンデイルは重要な薬品だ」
『カーバンクル(元人間)』ライ・ガネット(p3p008854)がその可愛らしいカーバンクルボディで腕組みをする。深刻そうな表情をしているが、もとが可愛らしいせいで緊張感はさほど出ない。
どういうこと? と問いかけるリリアムにライは話を続けた。こういった『知らない人間』が調査に加わることはとても重要だ。第三者的な視点を持てるし、他者に説明することで纏まるというメリットもある。
「氷結病と言ってな。体内で結晶化した氷が凍傷や呼吸困難を引き起こす病気がある。
エレンデイルは体内の水分量を魔力的に調節する効果があって、その間に魔術によって体内の氷を溶解させられるんだ。逆にこれがないと、患者を治療の過程で『溺れさせる』リスクを生んでしまう」
「それは聞いたことがあるよ。闇医者が無理に治療させいようとして死亡事故を起こしたって事件だね」
『結切』古木・文(p3p001262)が読んでいた本から顔をあげた。
「それ以降、エレンデイルは表でも裏でも重要な薬品として扱われていたし、あの製薬会社も潤ったんじゃないかな」
「言い方……」
ライは一言呟いてから、けれど文が言わんとしていることに気がついた。
「あ、それで非人道的な方法で製造してるってことか? 簡単に製造できないから、他社がマネできないと」
「可能性はあるよね。そもそも非人道的であるかどうかの確証もとれていないわけだけど……」
依頼主のタカシ・ヤマモトが述べるには、村人消失事件こそがその理由であるというが、これ自体が全く別の事件であるという可能性だって捨てきれない。
「まあ、あの製薬会社だけが製造できているという時点でかなり怪しいよね。魔法と科学の融合とはいっても、結局は薬学。全く同じとまでは行かなくても似たものを作り出せるはずなんだ。そうならないってことは、普通では選択できない手段がとられたと見るべきなんだよ」
文のどこか暗い口ぶりは、彼自身が暗い世界に身を置いていたことによる歪んだ倫理観からか。それとも、そういった人間を見慣れたが故の価値観なのか。
ニルは本能的に目を伏せ、逆にウィリアムは眉をあげた。
「いずれにせよ、調べる必要があるね」
●
馬車が村へと到着すると、御者はその場に残ることを嫌がった。村人が忽然と姿を消した村になど長居したくはないということらしい。
仕方なく帰りの時間に迎えにこさせることにし、六人は村へと残されることになった。
「まずはチーム分けをしようか」
ウィリアムは馬車の中での会話を思い出しながら、仲間達の顔ぶれをそれぞれ確認した。
「ニルとリリアム。二人は村の回りを散策してかわったことが起きないか確かめてほしい。この事件に外的要因が関わっているなら、自ずとそれに行き当たるはずだ。そうでなくても、変わったものがあれば見つけて持ってきて欲しい。
僕らの誰かはそれを知ってるはずだからね」
幸いにも知識面では優秀なメンバーが揃っている。未知のモノであってもある程度は対抗できるだろう。
「それで文とライはゴーストブルームを調べてほしい。村人達の家も多少は調べたほうがいいかな。けどそこは……」
「ええ、私達が担当しましょう」
ツクヨミが『私とあなたで』とウィリアムを指し示した。
「そうだね。僕とツクヨミは村人の家と神殿を調べよう。霊魂や精霊、動物への聞き込みができると思うしね」
「了解。何か分かったら知らせるよ」
文は手を振り、早速ゴーストブルームがある畑へと歩き出した。
大斧の背が相手の鉤爪を受け止める。
リリアムは大きな尾を振り、その反動でしなやかに身体を振ると強引に相手を振り回し放り投げた。
斧の背についたフックによって腕をひっかけられた相手はスイングによってやはり振り回され、スリングショットのごとく樹幹へと叩きつけられる。
それは深い青色をした、トカゲの上半身めいた外観をしていた。
鋭い鉤爪と牙をもち、空中1~2m程度を浮遊するそれはまるで空間を切り裂くようにして現れた。
「そっちは大丈夫ですか!?」
「うん、やれそう。幽霊みたいな見た目してるのに、物理攻撃は効くしね」
リリアムは身体の周りを踊らせるように大斧をぐるぐると回すようにすると、両腕でしっかりと握り構えた。
ニルはこくりと頷くと、バックステップで敵のかぎ爪攻撃をかわしリリアムと背をあわせるように立った。
そして追撃が繰り出されようとしたその一瞬、翳した杖の先端がキラリと星のように輝き始める。
それが危険なものだと察したのだろう。敵は飛び退こうとするがもう遅い。ニルは溢れた力を直接叩きつけるようにして放出した。
通称ニルルーンブラスター。ニルの溢れんばかりの魔力を直接叩きつけるこの攻撃をマトモに受けられる敵はそうそうない。相手は消し飛び、そして残った敵も空間に潜るようにして消えていった。
「ふう、本当に遭遇しましたね。一体何だったんでしょう」
「さあ。でも何か落としたよ」
リリアムが敵を叩きつけた木の側へと歩み寄ると、地面から青白い結晶のようなものを拾いあげた。
「生育状態がよすぎる」
ニルたちが村のまわりで戦闘を行っていたその一方、文とライはゴーストブルームの調査を行っていた。
文が呟いた通り、ゴーストブルームは青白い花をみずみずしく咲かせている。
枯れた花はひとつも見えず、畑が荒れた様子もない。
「この村から人が消えて随分立つはずなのに、自然にここまで自生できるものなのかな……そうとは思えないけど」
「だな。人工的に育成しなければダメになるような花だろう。でなきゃここまで希少性が出ない」
ライは村からスコップをひとつ持ち出すと、畑にざくりと突き刺した。
その意図する所を、文は察する。
彼の知識と照らし合わせてみても、これだけ自然に花が育つのは『環境が適合している』かまたは『手入れをしている第三者がいる』のどちらかだ。
第三者の痕跡は得られなかったので、つまりは前者なのだが、その辺の畑に適合するような花なら薬に希少性はでない。ということは、無理矢理適合する状態が作られたとみるべきだ。
二人は畑の一部を掘り返してみた所……その理由を掘り当てた。
「これは……」
文が地面から青白い結晶を取り出した。
小さな結晶が砂利のように集合し、ゴーストブルームの下に埋められていたのである。
「肥料、とするにはちょっと魔術的すぎるかな。この鉱物から出る成分がゴーストブルームの生育に必要ってことだよね」
「順当に考えれば、な。実際怪しい気配を感じる」
ライは早速道具を取り出して結晶の成分を調べ始めたが、エレンデイルに似ているが少しだけ違う。魔術的要素に欠けており、このままでは薬効を示さないとわかった。
「エレンデイルの元、って所だな。ゴーストブルームはこいつから必要な成分だけを吸い上げるための濾過装置の役割を果たしていたんだろう。ってことはだ」
「うん。最後のピースは、やっぱり『神殿』だね」
文たちの読み通りというべきだろうか。
ウィリアムとツクヨミは特殊な方法で『聞き込み』を行った結果、やはり神殿へと狙いを定めていた。
「まず、動物が異常なほどいませんでした。これはこの村に動物を遠ざけるような外敵が存在することを示しています。実際、村から外れたエリアで見つけた動物にインタビューを行ったところこの村から皆が離れようとしていることがわかっています」
ツクヨミはそう説明すると、次に霊魂について触れた。
「霊魂疎通を行いましたが、異常に古い世代の霊魂としかコンタクトがとれませんでした。
世代というのが気になります。エレンデイルの製作がいつから始まったのかは定かではありませんでしたが、霊魂に聞き取りをした所『若者が何かの製作に着手した』という情報を掴みました。おそらくは、それが原因でしょう」
「ツクヨミの言うとおりだね。この村の人々の霊魂はエレンデイル製作の影響で何かに捕らわれている。で、僕の調査結果なんだけど……」
ウィリアムは神殿を前にして足を止めていた。
「低位精霊たちしか遭遇できなかったから詳しいことは聞けなかったけど、神殿の方向には邪悪なものがあるというイメージで一致していたね。
村の外に出るのも危険だっていうイメージもあった。
リリアムやニルが遭遇したのは、彼らの言う『危険』そのものじゃないかな。おそらくは邪霊の類いだと思うんだけど。
ほら、見て。何か感じる?」
ウィリアムが指し示す神殿の扉からは、邪悪な気配が漏れ出ているのがうっすらとだかツクヨミには分かった。そのことを告げるとウィリアムは『やはりね』と頷く。
「ツクヨミの読み通り、かな。エレンデイルを製作するために利用していたのは、『神聖なもの』じゃなかった。そして村人が消えた原因は、儀式の失敗……って所かな」
●
「ニルたちが見つけたこの結晶……」
「それが畑の下から出てきたんだよね?」
ニルとリリアムが結晶を翳すと、文とライはこくりと頷いた。
「そうだね。おそらくリリアムさんたちが倒したのはこの村に住む邪霊だ。邪霊を傷つけることで落とす結晶が、ゴーストブルームの養分になっていたんだ。というより……」
「ああ、ゴーストブルームという花はそもそも自然にはない人工的な花なんだ。既存の花に結晶を吸わせることで魔術的に完成する、な」
『完成』という言葉に重きを置いてウィリアムとツクヨミを見ると、二人もまた頷いて見せた。
「ゴーストブルームの生育、そしてエレンデイルの製作を始めてからこの村に霊魂が残らなくなった。精霊も寄りつかず、村の外と邪霊と神殿を同等に邪悪なものとして畏れている。この答えから導き出されるのは……」
「神殿にすまう『聖なるもの』は邪霊の集合体である、ということですね」
六人は一斉に神殿を見やった。
そして誰かともなく歩き出し、扉にてをかける。
扉を開いてみれば、そこには巨大な邪霊が浮かんでいた。
宙に浮かぶトカゲの上半身めいた邪霊は鉤爪を振りかざし襲いかかってくる。
「よほど『多く』を喰らったのでしょう。外に出してはいけませんね」
ツクヨミは即座に反撃にうつった。ライフルを構え、発砲を開始。
文もまた空中にさらりと流麗な文字を描くと魔術を発動させ邪霊へと放つ。
直撃を受けた邪霊は怒りの咆哮をあげながら邪悪な波動を放ってきた。
ツクヨミと文が波動を受けて全身のあちこちからぶしゅんと出血し始める――が、ウィリアムとライの対応は早かった。
即座に治癒の魔術を唱え、二人の傷を修復する。
「戦いを長引かせるのは得策じゃないな」
「同感だね。ニル、リリアム。頼めるかな?」
「任せてください!」
「頭使わないなら得意分野!」
ニルとリリアムは二人の治癒サポートを受けながら突進。
近づかせまいと邪霊が再び波動を放つが、ダメージ覚悟で突っ込む二人を止めることなどできない。ましてウィリアムたちの治癒が効いているうちは。
そしてニルのニルルーンブラスターとリリアムの大斧による大上段からの斬撃が、同時に邪霊を破壊したのだった。
●
悲鳴のような声をあげて消えていく邪霊。
と同時に、神殿の部屋の周囲にかけられていた霧のような幻影が晴れ、倒れた村人たちが姿を見せる。皆の身体には植物の根が張り、上からはゴーストブルームが生えていた。
花に近づき、ウィリアムが呟く。
「この邪霊は、人々の霊魂を変化させたものなんだ。神聖なる儀式というのはつまり……生贄、だね」
「良い薬だったんだがな、作成方法がこれじゃあ……」
ライが首を振り、ニルがうつむく。
「村の人たちは、どうなるのでしょうか」
「少なくとも命に別状はありません。これにこりて、事業転換をするでしょう」
ツクヨミが彼らの様子を確認し、同じく医学的に彼らを確認していた文がほっとした様子で立ち上がる。
「僕は特に、この人達を断罪しようって考えはないよ。明るみに出なければ、この傷が村の秘密として結束を高めることになる。きっと、やっていけるよ」
「そっか。なら、一件落着?」
リリアムの笑顔に、ライがフッと笑って返した。
「だな。とりあえず、このことは依頼主に報告しよう。自分達の蒔いた種なんだ、しっかりケアもしてくれるさ」
コース料理を振る舞うくらいに余裕があるんだろうしな、とニルは皮肉っぽく言ったのだった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
後日談。
村の人々は体調こそ落としたものの皆命に別状はなく、依頼主のポケットマネーによる経済的なケアもあって再生を始めている。
今後はエレンデイルの製薬から手を引き、比較的安全で人道的な製薬業へとシフトするようだ。
イレギュラーズたちが邪霊を倒し基盤を壊したことで、彼らを負のループから解放することができたのだろう。
GMコメント
※こちらはライトシナリオです。短いプレイングと選択肢のみで進むアドリブいっぱいのライトな冒険をお楽しみください。
あなたはキリアン村で起きた異変の調査を依頼されました。
あなたは村を調査し手がかりを探し、そしてある危険な存在と接触することになるでしょう。
このシナリオでは出発時(予約完了時、または参加時)に活性化している非戦スキルや戦闘スキル、そしてギフトが活用されます。
●ひとくちプレイング
この依頼への感想や意気込みをお聞かせください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。
調査スタイル
あなたは村を調査します。聞き込みをしてもいいし、物的証拠を集めてもいい。あえて闇雲に歩き回ってあちこち調べるというのも悪くないでしょう。
【1】特殊な聞き込みをする
動物、精霊、霊魂、あるいは植物や無機物への疎通能力を使って特殊な聞き込みを行います。
人間は消え去っているので、それ以外にしか聞くことが出来ないのです。
【2】物的証拠を集める
あなたは持っている知識や技術を使って調査を進めます。
今回は薬や植物に関する知識をはじめ、魔法や信仰、異常なものへの知識や感覚が役に立つでしょう。
【3】あえて闇雲に調べてみる
調査とは足で稼ぐもの。村中をあちこち調べ回るとふとした拍子によい手がかりがみつかるかもしれません。
やる価値は充分にあるでしょう。
戦闘スタイル
このシナリオでは危険な存在と遭遇し、戦闘に発展します。
ここではあなたのバトルスタイルを選択してください。
【1】アタッカー
率先して攻撃スキルをどかどかと撃ち込みます。
威力やBSなど形は様々ですが、あなたは頼れるチームのアタッカーとなるでしょう。
【2】ヒーラー
仲間は戦えば戦うほど傷付くもの。そんな仲間を治癒するのがあなたの役目です。
手持ちの治癒スキルを駆使して戦闘中の仲間を治療したり、時にはカウンターヒールでスタイリッシュにダメージを打ち消します。
【3】ディフェンダー
別名タンク。優れた防御ステータスを用いて敵の攻撃を引き受けます。かばったり引きつけたりは場合によりますが、あなたがいることで仲間のダメージ量は大きく減ることでしょう。
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