PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<被象の正義>無響の時

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<被象の正義>無響の時
 不意に訪れた一夜により、日常がぶち壊しにさせられてしまった天義の巨大都市『テセラ・ニバス』。
 侵略された街は、畏怖を込めて『異言都市(リンバス・シティ)』と呼ばれてしまい、その中に棲んでいた人々の生死も不明な状態が続く。
 しかし……イレギュラーズ達の救出作戦の進捗により、街を構成する街区はは少しずつではあるが解放されつつある。
 だが、まだまだ手の入っていない街区もあり、一つ一つ解放していくしかない。
 異言を唱える『ゼノグロシアン』と、漆黒の黒き獣『ワールドイーター』が居る故に、イレギュラーズ達程の手練れでなければ解放も難しい。
 ……そして、そんな異言都市の一区画『ボール街区』では、まるで時間が止まったかの如く『静寂』が広がる。
 ゼノグロシアンも、ワールドイーターも傍若無人に暴れ回っているというのに、音は殆ど聞こず、悲鳴もない。
 まるでその空間だけ『音』を喪失したような……そんな気さえする『異常空間』が、この街区では『日常』として罷り通っていた。


「あ……あの、皆さん……すいません……ちょっと、お時間頂けないでしょうか……?」
 天義首都にて、往来する人々の中からイレギュラーズの君達を呼び止め、深く頭を下げて声を掛ける『深緑の声』ルリア=ルナミス(p3n000174)。
 そんな彼女の声に気付き立ち止まれば、ありがとうございます、と何度も頭を下げる彼女。
「えっと……もう皆様も知ってるかとは思いますが……『テセラ・ニバス』の街を襲った『異言都市』の解放作戦に、協力して頂きたいのです……」
「『テセラ・ニバス』の街が一夜の内に変わり果ててしまったのは、既に皆様も知っての通りなのですが……今回皆様に向かって頂きたいのは、かつて『ボール街区』と呼ばれていた所になります……」
「この街区は、昔は閑静な住宅街でした……極々普通の生活を過ごしていた方々ばかりの場所です。ですが……一夜にしてこの街は、『ゼノグロシアン』と『ワールドイーター』が跋扈する街へと化してしまったのです」
「更に不思議な事なのは……事前に偵察しにいった方々によると、この街区では、音が殆ど響かないとの事なのです。まるで遮音されているかの如く……数メートルの距離でも殆ど聞き取れない位に静寂に包まれているとの事なのです」
「ゼノグロシアンとワールドイーター達は暴れ回り、呻いているのに、その声がかなり近づかないと聞こえないという……不思議な空間です。そんな異常な状況を、どうにか止めてきて頂きたい……と思うのです」
「この異常な状況……姿を見せぬ、正体不明な者達が糸を引いて居るという話も漏れ伝わってきております。可能ならば、その尻尾だけでも掴んできて頂ければ……と思います。宜しくお願いします……」
 と、ルリアは深く頭を下げた。

GMコメント

 皆様、こんにちわ。緋月 燕(あけつき・つばめ)と申します。
 テセラ・ニバス浸食事件……今回は『音が聞こえない』街区という事の様です。

 ●成功条件
  『テセラ・ニバス』の『ボール街区』が今回の舞台です。
  ここで『ゼノグロシアン』と『ワールドイーター』を退治し、街に音を取り戻す事が目的となります。
  尚、裏で糸を引く『誰か』の正体の切っ掛けをつかみ取れる事が出来れば上々ですが、成功条件ではありません。

 ●情報精度
  このシナリオの情報精度はBです。
  依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 ●周りの状況
   ゼノグロシアンとワールドイーターが暴れてはいるものの、その破壊音は聞こえずに建物が壊されていくという奇妙な光景が広がっています。
   これらの破壊音は近接(R2範囲)まで近づかなければ、何故か聞こえません。
   それ故に、隣接のレンジには声は通りますが、そこから先には急激に音が遮断される空間故に声は聞こえない、もしくはかなり聞き取りづらい位に小さくなります。
   相互のコミュニケーションがそれによって阻害されるケースが予想されるので、声だけに限らないコミュニケーションを互いに出来るようにする様御願いします。
   尚、ゼノグロシアンを殺さずに倒す事で、ゼノグロシアンを一般人として救出可能です。

 ●討伐目標
 ・闇の狂気に侵略され正気を失った『異言を話すもの(ゼノグロシアン)』達
   一夜にして変化した街で、突然の狂気に発狂してしまった一般人達の果てです。
   狂気状態においては呻き、叫び、目に付いたのを殺すしか出来ません。近接して説得しようにも話を聞いてくれるかは分かりません。
   攻撃特化型なので、打たれ弱い代わりに一発が強力な輩です。

 ・漆黒の狂牛が如き姿の『ワールドイーター』達
   姿は羊に近いのですが、『これが羊……?』と思えるくらいに大きな図体をした羊状の『ワールドイーター』です。
   イメージ的にはバッファローが近いかもしれません。
   その巻角でもって突進攻撃したり、掬い上げたりして攻撃を行います。
   動きは鈍いものの、攻撃力・体力が高いという特徴があります。
   また、鳴き声の届く範囲(つまりはR2範囲)に眠りを誘う鳴き声を上げる様です。

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <被象の正義>無響の時完了
  • GM名緋月燕
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年04月12日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
武器商人(p3p001107)
闇之雲
彼者誰(p3p004449)
決別せし過去
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女
イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)
生来必殺
ファニー(p3p010255)

リプレイ

●異なる音の葉
 天義の巨大都市『テセラ・ニバス』。
 今では異言都市(リンバス・シティ)と周りからは呼ばれ、そこに昔から棲まう人々の生死は不明の部分も多い。
 そんな異言都市の一区画『ボール街区』へと赴こうとするイレギュラーズ……隣接する区画まで辿り着いたところで耳を澄ますが、全くその街区の方からは、音が漏れ聞こえてこない状態。
「……音の届かない区画、か……」
 肩を竦める『闇之雲』武器商人(p3p001107)。
 彼の言う通り、この区画では何の音すらも聞こえず、静寂にしか包まれていない現象が起きている。
 無論、周りの区画で他の仲間達が戦う音やら、逃げ惑う悲鳴、そして……ワールドイーターとゼノグロシアン達の咆哮は漏れ聞こえているというのに、この区画は丸で音を失ったかの様に、全く聞こえてこない。
「音が聞こえない、ね。まぁ今迄も、砂に埋もれたり、水に埋もれたりと、色んな現象が起きては居るが……それらに統一性がねえな。いったい何が目的なのか、イマイチ掴みきれねぇな……」
「そうだな……ったく、またワールドイーターかよ。これまた珍妙な能力を持っている様じゃねぇか。何せ、今度は音を消しちまうときたか」
「ああ、全くだ。ワールドイーターってのは、音まで食べてしまうのか? こいつらはワールドイーターじゃなくて、サウンドイーターだな。まったく奇怪で迷惑な奴らだ」
 『Luca』ファニー(p3p010255)と『荒くれ共の統率者』ジェイク・夜乃(p3p001103)に『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は憤りを露わにする。
 本来の音は空気を伝い聞こえてくる物。
 ただ聞いた話によれば、この区画だけ真空……と言うわけでもなく、普通に呼吸も出来るとの事。
 となれば、自然現象では説明が付かない状況な訳で。
「そうね……近くに行かないと音が聞こえないなんて不思議ね……」
 きょとんと小首を傾げる『リチェと一緒』キルシェ=キルシュ(p3p009805)に、そうですね、と柔和に頷く『決別せし過去』彼者誰(p3p004449)。
「言葉のみならず音まで喰われてしまう、という訳ですか……いやはや頑丈な。それにしても、一つの区画だけでなく、複数区画、更にはこの街だけに収まらず、周りの街まで同時多発的に事件が起きている訳ですね……挑発か、招き寄せか……はたまた、どちらでもないか……果たしてどちらでしょうね?」
 その言葉には、今迄の街区で姿こそ見つけられていない『者』の存在が滲む。
 少なくともワールドイーターやゼノグロシアン達を影より率い、この『リンバス・シティ』の作戦を企てて居るのは間違い無いだろう。
 しかし、その真意を問いただそうとも雲を掴むかの様にはぐらかし、答えない。
 それに……このような強力な敵を次々と生み出すのだから、その実力もかなりの物なのはまず間違い無い。
「奴らが何を考えて居ようとも関係無い。だが、ことごとく趣味の悪いものだな」
 冷たい怜悧な言葉の刃を零す『含牙戴角』イルマ・クリムヒルト・リヒテンベルガー(p3p010125)。
 それに『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)も。
「全くだ。しかしワールドイーターはともかく、元街の市民であるゼノグロシアン達は何故にこう言う動きになっているのだろうな? 今迄会話を試みたが殆ど効果は無かった……言葉が通じない故にどういう状態かは分からないが、存在の書き換えとかでゼノグロシアンになっているのかね? 元々の性格がサーチ&デストロイな一般人など、ほぼ居ないだろうしな」
 確かにウェールの言う通り、総じてゼノグロシアンとなった者達は狂暴化し、人を傷付けようとしている。
 ゼノグロシアンになって、隠れたり、逃げ惑ったりする様な物は今の所見かけた事も無い。
「そうねぇ……どうしてかは凄く気になるわね。でも、まずは羊さんみたいなワールドイーターさん達を倒さなきゃ! 助かる人も助からなくなっちゃう!」
 ぐぐっ、と拳を握りしめて振り上げるキルシェ。
 その仕草にふふっ、と笑みを浮かべるのはジェイクと武器商人。
「そうだな。音を消すなら消すで、それでやりようがあるってものさ。何せ俺たちゃプロだからな!」
「まぁ……こういう『ギミック』を張り付けたのは『遂行者』なのは間違い無いだろうねぇ……クククッ。しっかりと締め上げて情報を吐かせてやるとしようか」
 そして、ウェールも。
「そうだな。ゼノグロシアン達に恨みはないが、無辜の民を助けるために必要だ。だから、此処で終わらせる。誰かの人生と時間を奪って生きてるんだ。救出の為にも死なせないか終わらせる。洗脳で自分の意思がねじ曲げられた事がある身としては、存在が許せないんでな……!」
 並々ならぬ気合いと共に、頬を叩き気合いを入れる。
 そして、彼者誰が。
「一歩足を踏み入れた所から、声が聞こえない可能性は高いでしょう……ここで意識を合わせておきましょうか」
 と言うと、モカとファニーが。
「そうだね。敵発見、保護対象者発見、致命者発見……この三つはハンドサインで。さすがに身振り手振りまで封じられて居る訳じゃないだろうから、方向は指指しで行こうか」
「了解。後は足踏み回数で距離でも示すとしよう。後は……ファミリアー達の監視を上手く活用してくれ。情報はハンドサイン……もし通じればテレパスも活用するとしようぜ」
「ああ、了解」
 と言うと共に、ジェイク、ウェールは各々ファミリアーを召喚し、『ボール街区』の上空へと飛ばして監視。
 ……音無く暴れ回るワールドイーターの姿を確認し、その場所へのルートをすぐに弾き出して。
「良し……んじゃ行くぜ」
 と、ジェイクが皆を促すと共に、街区の扉を潜るのであった。

●静寂の時
 静けさに包まれている、『ボール街区』。
 遠くの方では砂煙が立ち、建物が崩れ墜ちている様な異様な光景の中なのだが……一切、その様な類いの音が聞こえない街中。
 その音が聞こえない異様な空間というのに、何だか常に耳を塞がれているかの様な……そんな感じを覚えてしまう。
「ファミリアー達は……良し、と。取りあえず至近距離には声は通じる様だな?」
「ああ」
 ジェイクの言葉に頷くウェール。
 しかし、ほんの少し離れた所に居るモカは首を振り、声が聞こえないことを身振りで示す。
「普通なら全然声が通じる距離なのに、ここまで音が遮音されているとは……本当に不思議な空間だな」
 肩を竦め、空を見上げるモカ。
 と……そんな事をしている所へ有無を言わさずに突撃為てくるのは、苦悶の声を上げるゼノグロシアンの群れ。
 勿論彼等の声すらも、近くにまで寄ってこないと聞こえない訳で……突然の襲来に、流石に驚き目を見開く。
「っ……心臓に悪いなぁオイ!」
 咄嗟にファニーは、迎撃の星屑を降り注がせる。
 流星に撃たれし者達は、至近距離のみに届く悲鳴を上げて地面に臥していくが……その声は、やはり中衛、後衛の仲間達にすら届かない。
 そして声が届かぬのを気にする事無く、次から次へとゼノグロシアン達が街角の様々な所から不意に姿を表し、襲撃してくる。
「左からも右からも……小賢しいねぇ」
「ええ、大丈夫ですか?」
「大丈夫大丈夫。さぁ、始めよう」
 彼者誰と武器商人は互いにハイテレパスを通じて意識を躱す。
 他の仲間達もテレパスが使える者はテレパスを通じ、そして無い者はハンドサインや足踏みの回数で意思を互いに通じる様に工夫しながら、一襲目のゼノグロシアン達へと対峙していく。
 一方のゼノグロシアン達はというと、イレギュラーズ達の姿を視認するとすぐさま攻撃に移るがのみで、仲間達と連携を取るような事も無い。
 勿論元々は一般人であり、戦闘能力も殆ど無い様な輩達ではあるが……今こうして襲撃の力を目の当たりにすると、駆け出しのイレギュラーズだったら互角に戦える程度の力量は間違い無く持って居るだろう。
 だが、今この場に居るイレギュラーズ達は歴戦を潜り抜けてきた故に、ゼノグロシアン一人、二人程度ならばさほど苦戦する事も無くに対峙していく事が出来る。
 ……そして、ゼノグロシアン達を十数人倒した頃合いで……更なる追撃。
『ググゥウウウウアアア……!』
 突如響きわたる、心底まで冷え切りそうな獣の咆哮。
 その咆哮と共に、戦場に猪突猛進の如く突撃してきたのは、漆黒の身の『羊』の様な『牛』。
「牛さん……じゃなくて、羊さん……??」
「まぁワールドイーターだからな……牛か羊かは曖昧なもんさ。少なくとも俺達を血祭りに上げようとしている、ってのは間違い無いだろうがな」
 とジェイクに武器商人は。
『そうだねぇ……まぁ、正体不明、真偽不明。取りあえず我等に仇を為そうとしているのは間違い無いだろうさ。そしてその後ろで糸を引くヤツも、ねぇ……?』
 ニヤリと笑みを浮かべながら、周りを見渡す武器商人。
 それに応じるよう、彼者誰も手分けし周りを見渡してみるのだが……不穏な人影の様なものは見つからない。
 ただ、姿は見せなくとも……『アイツ』が状況を観察しているのは、まず間違い無いだろう。
 ……とは言えその調査をする暇もない……ワールドイーターは興奮状態にあり、周囲に居る者を全てその雄々しき角突き上げ飛ばそうと暴れ回る。
 その攻撃を後方回避しながらイルマが。
「此間の黒い鳥に続いて、今度はあの牛か。良かろう、角を叩き落として剥製にしてやる」
 刺々しい聞こえない言葉による戦線布告。
 特に言葉を介することはない様で……ワールドイーターは突進し、掬い上げるような攻撃……更には雄々しい姿とは正反対の優しい鳴き声で、眠気を誘う。
 ……そんな敵の動静に、ジェイク、武器商人、ウェールの三人が確りと対峙。
 一方、次から次に現れてくるゼノグロシアン達には、彼者誰、モカ、イルマ、ファニーが相対。
 そして仲間達の間に立ち、全員を回復出来る位置にはキルシェ。
「みなさん、ルシェが絶対に守るわ! だから、攻撃がんばって!」
 並々ならぬ気概を込めた決意。
 勿論ゼノグロシアンやワールドイーター達には、その言葉等理解出来ない有象無象のノイズでしかないだろう。
 だが、キルシェは。
「ルシェは守り、癒すものだから。例えどんな状況になっても誰も倒れさせない。みんなで生きて帰るために、みんなの背中はルシェが支えて見せるのよ!!」
 と自分への鼓舞と共に……これを見ているであろう『何か』に対しての宣言。
 それに彼者誰は小さく笑みを浮かべて。
「ありがとうございます。ならば……この背中にある命は守りましょう。貴方達との戦いは、数はこなしてきましたからね。もう痛くも痒くもありませんよ」
 笑みを浮かべると共に、彼者誰は抵抗力を破壊力へと変えて攻勢に出る。
 それに合わせる様にして、更にモカは無駄かもと思いつつも。
「貴方達は、何故その様な姿になったの? 私達が、正気を取り戻させてあげるわ!」
 と口上を述べてターゲットを自分に集中させた所へ、不殺の攻撃を繰り出す事で、死ではなく不殺を与え、彼等が正気を取り戻す事を期待して攻撃。
 同じくイルマも、ファニーも不殺を帯びた攻撃により、極力彼等を『殺す』事無く無力化出来るように立ち回る。
 勿論簡単に不殺に出来るような状況ではないのは理解しており難しければ死を与えることも厭わない。
 ……そう、ゼノグロシアン達を退治していく一方で、ジェイク、武器商人、ウェールの三人は全力全開でワールドイーター達を攻撃し、一匹ずつ確実に仕留める様に動く。
 流石に一周や二周で倒れる程柔ではないし、その間に仕向けられる攻撃はかなり高威力。
 ……だが、しっかりとキルシェが仲間達を回復する事により憂いを排除する事で、三人は声に頼らず、攻撃だけに集中。
 一匹ずつ、確実に仕留めれば、ワールドイーターは無尽蔵に生み出されることは無い様で……数を減らす。
 数匹居たワールドイーター達に対峙しつつ、ゼノグロシアン達を転がし……十数分。
 ゼノグロシアンの増加は落ち着き、残るはワールドイーターのみとなれば、イレギュラーズの体勢も、ワールドイーターを軸にシフト。
「さっきは剥製にしてやると言ったがアレはナシだ。代わりにビーフステーキにしてやろう」
 そんなイルマの断じる覇気と共に放たれた一閃は、容赦無くワールドイーターを押し潰し……全てを闇の中に押し戻していくのであった。

●闇迫
『……終わったか」
 息を吐き、武器を降ろすイルマ。
 幾重にも襲い掛かってきたワールドイーターとゼノグロシアンの群れ。
 その時……至近距離でギリギリ聞こえていた声は、突如として少し離れた所にまで聞こえるようになる。
「あれ……イルマさんの声が聞こえる……? ちょっと離れているのに、何故かしら?」
 とキルシェが小首を傾げていると、それにファニーは軽く頭を撫でると共に。
「……おい! どうせ見てるんだろう『遂行者』! そろそろ姿を表したらどうだ!!」
 苛立ちを孕んだ大声で、周囲に叫ぶファニー。
 そんなファニーの言葉に、何か返答がある……ことは無い。
 だが、その間にもジェイクとウェールの二人のファミリアー達が、上空から『ボール街区』をぐるり周回し、どんな小さな影でも見逃さないように見回りを行う。
 ……そして、ファニーが幾度となく叫ぶのと並行するように、イルマも。
「前回は……そうだな。僅かながら『黒い影』があったな。恐らく、今日もいるのだろう……隠れていても無駄だ。大人しく姿を表せ!」
 と、一際強ばった声で威嚇する。
 ……だが目立った反応は無い……ただ声は遮音される事無く、響きわたる。
 そしてそれから暫し、何度も何度も声を荒げていると……。
『あぁ、全く煩いネェ……折角静かな街を楽しんでたのにサァ?』
 響きわたる、どこか小馬鹿にしたような、癪に障る声。
 ただその声は、今迄よりもハッキリと聞こえてきており……脳内に直接語りかけている訳では無い。
「……!」
 すぐにその声のした方向……傍らの建物の屋上の方を見上げると、そこには……ふわっとしたローブに身を包んだ、小柄な者影が。
「お前が『致命者』か?」
 と、イルマが言葉を濁すこと無く問いただすと、その者影は。
『おお、『ボク』の事を知ってるって訳かぁ……ふーん。ちょっとやりすぎちゃったかなぁ?』
 戯けた仕草は、どこか戯曲役者の様。
 そんな彼、か彼女か分からないが、『致命者』に。
「街を砂に埋もれさせたり、ゼノグロシアンを生み出した、という訳ですか」
『そーそー。まぁ全部が全部って訳じゃないけどねぇ? まぁ……愉しかったよぉ。でも、まぁだ捕まる訳にはいかないのさぁー』
 そう言うと共に、その手を掲げる。
 すると、その手から漆黒の闇が拡がり……己が身を覆い尽くす。
「まてっ!」
 とモカが叫び、飛び跳ね近づこうとするが……抵抗出来ない程の強力な風がその漆黒から吹きすさび、其の身を跳ね飛ばす。
 そして消え行く身と共に、薄れていく声。
『まー、これからも『夢哭のアインハイン』楽しませて貰えると嬉しいかなぁー? じゃぁーねぇー』
 との言葉を残し……完全にその姿は消失。
 勿論、ジェイクとウェールのファミリアーと、キルシェは精霊達に呼びかけて探すのだが……その行方を追うことは出来ず終いであった。

成否

成功

MVP

キルシェ=キルシュ(p3p009805)
光の聖女

状態異常

なし

あとがき

ご参加ありがとうございました!
とうとう【致命者】『夢哭のアインハイン』が出て来ましたね。
彼(なのか彼女なのかは分かりませんが)が、どういう狙いをもってるのでしょうかね……?

PAGETOPPAGEBOTTOM