PandoraPartyProject

シナリオ詳細

大きな羊

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ビューティーちゃん
 1頭の牝ヒツジであるビューティーちゃんは、ある日突然巨大化してしまった。それはもうヒツジ小屋よりも大きく、風車のついた塔よりも高く。
 おかげでビューティーちゃん本人も、ビューティーちゃんの飼い主も、ビューティーちゃんの仲間のヒツジたちも、牧羊犬たちも途方に暮れていた。

 犯人は明白であり、すでに名乗り出てもいる。それはこの地域に住まう妖精たちであった。このあたりの妖精たちは人の近くに暮らし、よく人々にいたずらをしかけては、それを楽しんでいた。ごく些細な、「相手をちょっと驚かせる」くらいの、他愛もないいたずらを。それが今回どこをどう間違ったのかやりすぎてしまい、ビューティーちゃんは巨大化してしまった。
 そして犯人たちである妖精たちも、途方に暮れていた。

●羊飼いと妖精
「元に戻すにはこういった、いくつかの材料を集める必要があるようなのですが……」
 今回の依頼主である、ビューティーちゃんの飼い主の家。
 集まったイレギュラーズたちを前に、飼い主の青年――アダムは説明する。彼の前に置かれたテーブルには木の実や小石が並び、そのそばには10数匹もの妖精たちが、気落ちした様子で座っていた。
「材料さえあれば、あとはこの子たちでなんとかするのでしょう。いつもそうですから。ただビューティーがあそこまで大きくなってしまったからなのか、材料もたくさん必要なようで。
 このあたりは妖精を食べる魔物もいますし、どうかこの子たちを手伝っていただけないでしょうか」

 妖精は言葉を介さない。しかしごく身近に暮らしてきたためか、人々と妖精たちは、それなりに意思の疎通ができるようだ。
 アダムは妖精たちにひとつひとつ聞きながら、妖精たちは身振り手振りしながら、集める材料を確認していく。
 それによると、必要な材料は3つのようだ。

 まず1つ目に、「緑色の木の実」。これは森の中の、とても高い木の上のほうにのみ、ついているらしい。そしてそのあたりには毒の霧を吐くタカがいて、妖精を狙ってくるのだとか。
 続いて2つ目は、「青色の苔」。これは森の中の泉の底に生えているらしい。またこの泉には怒ると爆発するカエルが、群れで暮らしているという。
 そして3つ目は「赤い小石」。近くの洞窟で採れるようだ。ここには一抱えほどの大きなカニがいて、妖精に限らず洞窟へ入ってきた者を襲うらしい。

「それぞれたくさんないとダメ、なようなのですが。具体的にどれくらいあればいいのかは、私にはよく…… とりあえず背負いかごと、洞窟用のランタンを用意しますので。すみませんが、あとはこの子たちに聞いてみてください」
 アダムはぺこりと頭を下げ、荷物の支度に取りかかった。

GMコメント

 こんにちは、キャッサバです。ヒツジって普通どれくらいの大きさだっけ? と思って調べたら、びっくりしてしまいました。生まれてちょっとの牛さんくらいしかないのですね。300~400kgはあるのかと思ってました……

●目的
 妖精たちと協力して材料を集め、ビューティーちゃんを元に戻す手伝いをしてあげてください。

●ビューティーちゃん
 妖精たちにいたずらされ、巨大化してしまったヒツジ。もともと大きめのヒツジだったため、この名前になりました。
 今は小屋にも入れず、草の上に伏せてしょんぼりしています。体高10メートルほど。

●妖精たち
 それぞれ緑色、青色、赤色の翅を持っています。みんなそっくりの外見をしていて、見分けるのは難しそうです。
 発語はできず、文字の読み書きもできません。しかし人の言葉はそこそこ理解でき、普段からジェスチャーや絵でコミュニケーションを取っています。
 ビューティーちゃんには本当に悪いことをしたと思っており、こちらもしょんぼりしています。

●その他のヒツジとか犬とか
 ビューティーちゃんはもともと大きかったので、他のヒツジから一目置かれ、リーダー的な存在でした。なので現在ヒツジたちはビューティーちゃんの周りをうろうろして、めぇめぇ鳴いて困っています。
 2匹の牧羊犬は賢くて職務に忠実な子たちですが、そのせいかビューティーちゃんを小屋に戻すことさえできない現状に、自信をなくして落ち込んでいます。

●森、泉、洞窟
 それぞれの場所で、それぞれの材料を集めることになります。魔物がいる以外、とくに注意すべき点はありません。どれをどれくらい集めたらいいのかは、妖精がその場で教えてくれます。
 洞窟は暗いですがそこそこ広く、屈んで歩く必要はありません。

●タカ、カエル、カニ
 タカは2羽。毒の霧を吐いて妖精を狙ってきます。しかし敵わないと見れば、逃げていきます。捕食のために命はかけないようです。
 カエルは1匹がソフトボールの球くらいの大きさですが、とてもたくさんいて、縄張りである泉に侵入者が現れるとどんどん出てきます。自爆してでも縄張りを守ろうとするあたり、アリやハチのような真社会性のカエルなのでしょう。
 カニは2~3匹。岩に擬態していて、こっそり近づいてハサミで襲ってきます。それ以外の特殊な攻撃手段は持っていません。たぶんおいしいです。

●材料が集まったら
 妖精たちが踊ったり魔力を注いだりして、加工していきます。手伝いを申し出ると、実や小石をすり潰したり、藻を煮詰める作業を頼まれます。
 作業完了までの間、遊んでいても問題ありません。

●ビューティーちゃんを元に戻す
 材料の加工が終わると、妖精たちから「みんなでビューティーに抱きついて、『小さくな~れ』と繰り返し念じて」とジェスチャー等々で頼まれます。なんとかして読み取って、手伝ってあげてください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 大きな羊完了
  • GM名キャッサバ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年04月08日 22時15分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

清水 洸汰(p3p000845)
理想のにーちゃん
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
エステット=ロン=リリエンナ(p3p008270)
高邁のツバサ
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
トール=アシェンプテル(p3p010816)
つれないシンデレラ
多次元世界 観測端末(p3p010858)
観測中
マリオン・エイム(p3p010866)
晴夜の魔法(砲)戦士
高橋 龍(p3p010970)
名誉マッチョ・ネットワーク

リプレイ

「ここまで大きくなれるのデスネ。わらわの何体分?」
『高邁のツバサ』エステット=ロン=リリエンナ(p3p008270)は巨大化したビューティーちゃんの周囲を飛び回った後、改めて間近からビューティーちゃんを見上げた。地上から見ると、ますます大きい。ビューティーちゃんは座ったまま、首を垂れてエステットを見つめ返した。鼻息がすごい。
「コノ世界ハ、本当ニ観測シ甲斐がアリマス」
 ぬめぬめ、うにょうにょ。『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)もまた、興味を持ってビューティーちゃんを見つめる。大変珍しい外見を持つ観測端末だが、ビューティーちゃんをはじめ、ヒツジたちにはすんなりと受け入れられていた。むしろヒツジたちは、こちらも興味深そうな様子で観測端末を取り囲み、フスフスとしきりににおいを嗅いで確かめている。触手をちょっと味見したい、というふうにさえ見える。
 一方で牧羊犬の「ペロ」と「メル」は猛烈な勢いで吠え、そして逃げていった。

『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は材料集めに出発する前に、妖精たちを呼び寄せて準備を行っていた。
 ごく小さな紙片をいくつも作って、イズマはそこに簡単な絵や記号を書き込んでいく。
「これが『はい』、こっちが『いいえ』で……どうかな、覚えられそう?」
 それは妖精たちが携帯できるサイズの、意思表示カードであった。意思疎通の助けになればと思い、イズマは妖精たちの反応を確かめながら、様々な種類のカードを作っていった。青色の妖精がカードを抱え、そのなかから「○」と書かれたカードを選んでぱたぱたと振ってみせた。他の妖精たちも真似をする。
「振り回されると何のカードか分からないから、見せるときはこんなふうに……そう、良いよ。上手だ」
 使い方の手本を示し、イズマは頷いてみせる。妖精たちは物珍しそうにカードを出したり引っ込めたりしながら回したりしながら、彼の周りを飛び回る。
(少しは元気が出ただろうか……?)
 先ほどまで、落ち込んだ様子を見せていた妖精たち。1匹の妖精がハートマークを描いたカードを作り、イズマに差し出した。

「近づいてきてから爆発しますので、遠ざけておくことができれば、あるいは……うーん」
『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は泉にいるらしいカエルについて、アダムにくわしく尋ねていた。アダムもあまり多くを知っているわけではなさそうだが、トールとともに考えていた。
 目的はあくまで材料集め。そこに暮らす生き物は、極力傷つけずに済ませたい。カエルを爆発させない方法を、トールは調べようとしていた。

 一方『剣閃飛鳥』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)は青色の妖精と、牧羊犬のペロとメルに声をかけた。彼らにも活躍してもらい、自信を取り戻してもらいたい。ミルヴィはそう考え、作戦を練った。
 ミルヴィの気持ちを感じ取ったのか、ペロたちは彼女の顔を見つめて座り、指示を求めるように短く吠えた。ふわりと揺れた尾に、やる気が表れている。
「それじゃあ、少しだけ待っててね! 行ってきます!」
 やがて『双影の魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)がビューティーちゃんやヒツジたちに向けて、晴れやかに手を振って。一同は出発していった。落ち込むビューティーちゃんもヒツジたちも、みんなが青空のような明るさを取り戻せるように。

●採集
 洞窟に到着した『元気の盾』清水 洸汰(p3p000845)は皆の先頭に立って、あえて無造作に歩みを進めた。カニが襲ってきた際、自らが囮となるように。
「カニ~……じゃなかった、小石、どこだろうな?」
 おいしいらしい、カニのことを考えつつ。でも材料集めのこともちゃんと思い出しつつ。洸汰はずんずん進む。
 そんな洸汰のすぐ後ろにぴったりとついて、『深緑魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)も歩いていく。一匹だけついてきてもらった赤色の妖精を、リディアは肩に乗せていた。これなら何かあっても、しっかり守ることができるだろう。
(通り過ぎてから襲ってくることもあるのかな……?)
 最後尾ではマリオンが、皆の頭上と背後を警戒していた。空の見えない、暗く湿った洞窟の中。3人の足音が反響する。

 一方、泉。
 ミルヴィは連れてきた牧羊犬たちに泉の周囲を確認してもらった後、「待て」をして自らは泉に潜っていった。気配を消し、音の反響を捉えてカエルの居場所を探る。
 彼女と並び、竜宮イルカに乗ったイズマも水の中へ入った。案内役の妖精が、さっそく青い苔を指し示す。イズマは岩から苔をはがし、ミルヴィはエステットとトールを呼んできてくれるよう、妖精に頼んだ。
 そうして4人で手早く採集作業を進めていくうち、じりじりとだが、確実に周囲を包囲していく気配があった。まだ、攻撃してくる様子はない。しかしそれも時間の問題だった。
 やがてミルヴィの操る無数の刃が、カエルを迎え撃つ。イズマは妖精をかばい、保護結界を展開する。

 そして、森。
 観測端末は『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)、高橋 龍(p3p010970)とともに木に登り、目的の木の実を集めていた。木の下には亥勢海老が待機し、荷を待っている。
「コノ実ヲ、ドノ様ニ使用スルノデショウ。興味深イデス」
 大きな瞳で、取った木の実と、触手の一本に腰かけている妖精を見比べて。観測端末は実のついた枝に触手を伸ばし、ぐいと引き寄せた。

 *

 マリオンが警戒した通り、カニはまず3人の背後から現れた。マリオンはカニの初手をかわし……つつ、ちょっとだけよろけた。
 本日のマリオンは、皆の援護のために女性モードを取っていた。男性モードや無性モードとは重心が少し異なるため、やや動きづらかったのである。しかしマリオンはすぐに体勢を立て直し、魔砲を放った。
「コータさん、気をつけて!」
 リディアが2匹目のカニを見つけ、注意を促す。そして襲われた洸汰は、元気よくカニにハイタッチ! カニに表情はないが、「へ?」とでも言いたげに動きが止まった。その隙に、リディアが神聖の光を放った。カニが泡を吹いて倒れる。
「まだ出てくるかも、気をつけて〜!」
 洸汰は楽しそうにランタンを揺らし。リディアとマリオンはロープでカニをぐるぐる巻きにした。
 さらに現れたカニに向けて、洸汰の自己紹介が炸裂する。

 エステットの拳銃が魔弾を噴く。と同時にトールの放出した光のカーテンが辺りを覆い、いざ襲いかかろうとしていたカエルたちは大混乱に陥る。
 そして飛び出してきた1匹のカエルを、トールは高く高く、水の外まで蹴り上げた。ノーギルティ。ぴよーんと泉から放り出されたカエルは「グゲゲ……」と言い残し、爆発する前に気絶してしまったようだ。トールの乱撃が続き、エステットは撃鉄を上げる。

 近づいてくるカエルの爆発が仲間たちにおよぶ、その手前。ミルヴィの眼差しがあえてカエルたちの怒りを煽り、暴発を誘った。続く剣と嵐の幻影により、カエルたちは仲間たちを巻き込むことなく爆発していく。泉の外、音に驚いたメルが忙しなく吠え、イレギュラーズたちを案じていた。
 そしてカエルたちの襲撃が治まると、皆で改めて苔の採集作業に取りかかった。ミルヴィは一度泉から出て、牧羊犬たちに無事を知らせた。トールは蹴り飛ばしたカエル(まだ気絶している)をそっと拾い上げ、泉へ戻してやった。
 イズマは妖精たちに必要な苔の量を尋ねながら、依然油断なく周囲を警戒していた。カエルはまだまだ潜んでいたが、これ以上の手出しをするつもりはないようだ。
 やむを得なかったとはいえ、倒してしまったカエルたち。何かに使えたらと思い、ミルヴィはそれらも回収しておくことにした。

 襲ってきた2羽のタカを、観測端末は衝撃波で追い返す。妖精たちは観測端末の触手の陰に隠れ、毒の霧から身を守っていた。観測端末は再度衝撃波を放つとともに、触手を振ってタカを威嚇する。
 やがてタカが去った後、観測端末は仲間たちの傷と毒を癒した。

●加工
「ふええ」
「Fuee……」
 洸汰たちは無事に大きなカニ3匹……と赤色の小石を回収し、帰ってきた。パカパカーを編成するパカおとメカパカおがいななく。
 マリオンは小石を妖精たちに引き渡すと、カニを1匹(もはや1杯)背負っていそいそと駆けていった。おいしい調理方法を、周辺住民に聞き込むつもりのようだ。
「……トール? どうしたの、大丈夫?」
「ひゃい!? 大丈夫ですお気になさらずっ!?」
 そうして人家へ向かおうとしたマリオンだが、泉から帰ってきたトールを見つけ、首を傾げた。何故か胸元を隠してもじもじしていたトールは、慌てた様子で背を向けた。
(服が濡れて透ける…! 早く着替えなきゃ…!)
 ……女装がバレないように。トールは必死であった。

 アダムの家に戻ったイズマは、材料の加工を始めた妖精たちを手伝っていた。
 カードを作ってコミュニケーションを取り、泉ではしっかりと庇った甲斐もあり。イズマは妖精たちとの意思疎通がかなり上達していた。
「このくらい……でしょうか?」
 そんなイズマに通訳をしてもらいつつ、リディアは小石をすり潰していた。かなり脆いとはいえ、妖精たちにとってこれは結構な重労働だろう。なにより一刻も早くビューティーちゃんを助けるため、リディアは熱心に手伝った。

 ミルヴィは鋭い直感を駆使して、妖精たちの指示を聞き取っていた。鍋の中で煮詰まった苔が、青い液体に変わっていく。ハッカのような匂いが室内に漂う。
 エステットの潰した木の実からは、梨のような甘い匂いが立ち上っていた。間違いがないよう、エステットは慎重に作業していた。
 観測端末はそうして材料が加工されていく様子をじっと眺めながら、妖精たちの魔力を回復させていた。感触が気に入ったのか、数匹の妖精が触手の間に潜り込んでいる。
「すり潰す作業なら任せてください! 力仕事は男の役目ですからね! …あっ、女ですけどそれなりの力はあったりなかったりするので~…あはは」
 そしてせっかく着替えて戻ってきたトールは、やる気のあまり自爆しかけていた。

 一方、野外では、洸汰がビューティーちゃんに寄り添っていた。
「こんなに大きくなっちゃって、お前もビックリしたよなー。でも、もう大丈夫だぜー。ビューティーちゃんの為に今皆、頑張ってるからさ」
 ビューティーちゃんの巨体、そのふわふわの毛に埋まりながら、洸汰は語りかける。少し甘いような、こもったような、生きている生き物の心地よいかおりと、人より高い体温。ビューティーちゃんの呼吸に合わせて上限する、少し脂っ気を含んだ毛並み。
「大丈夫、オレが側にいるから。また、皆といつもどおりに遊べるようになるよ」
 洸汰は少しだけ、眠たくなってきた。

●小さくなぁれ
 何十もの妖精たちが空を飛ぶ。加工された材料はひとつに合わさり、白く輝く粉となって完成した。
 ミルヴィは妖精たちの言葉を読み解き、ビューティーちゃんに抱きついた。その上から、妖精たちが少しずつ粉を振りかけていく。
(も、もふもふです……!)
 リディアも抱きつき、その毛並みのやわらかさに感動していた。今はビューティーちゃんを元に戻すため、きちんと念じなくては。とはいえ、ちょっとくらい堪能しても罰は当たらないだろう。リディアはぎゅっと、よりしっかりと抱きついた。
 観測端末は美少女に変身し、牧羊犬たちをさらに驚かせた。そしてビューティーちゃんに抱きつき、そのふわふわの暖かな羊毛にちょっとだけうつらうつら……

(小さくなぁれ~)
 マリオンは、大きな白い雲のようなビューティーちゃんに、そっと念じ。
「ちいさくな~れ、ちいさくな~れ、もふもふきゅん」
 リディアは毛並みに顔を埋めながら、呟くように。
「小さくな〜れ!」
 イズマは念が強くなるよう、声を出して。
「小さくな~れ♡可愛くな~れ♡きゅんきゅんっ♡めぇ~っ♡」
 そして手でハートマークを作るため、ビューティーちゃんの背中へよじ上っていたトールが鳴いたとき。ビューティーの身体は、少しずつ縮んでいった。
 やがて首を振ったビューティーちゃんに、トールがぽいーんと弾き飛ばされると。ビューティーちゃんは本来の大きさに戻っていた。

「やったな! ビューティーちゃん!」
 洸汰が嬉しそうに笑って、改めてビューティーちゃんを抱きしめた。ビューティーちゃんは洸汰に頭を擦りつけながら、「メェ~」と穏やかに鳴いた。

 *

 リディアとマリオンが調理したカニを、皆で食す。ビューティーちゃんが元に戻ったお祝いも兼ねて、周辺住民も呼んで賑やかに。
 甲羅ごと蒸し焼きにしたカニを割ると、いかにも旨みたっぷりという香りが、湯気とともに広がった。続いてグラタンやスープ、さらにコロッケが供された。
 リディアは料理を皆に取り分け、エステットがさっそく蒸し焼きのカニを頬張った。洸汰はビューティーちゃんの世話をしていたアダムのもとへ、皿ごと持っていった。

 皆が笑い、食事を楽しむ。そこにイズマの演奏が華を添え、場の雰囲気をさらに盛り上げた。軽快なメロディーに住民たちは拍手を送り、ダンスが始まった。
 マリオンはペロを思い切りなでて、労をねぎらった。ペロはわふわふと嬉しげに鳴いて、マリオンの顔をなめた。すっかりご機嫌のようだ。
「お勤め、ご苦労様です。きちんと仕事をこなす貴方達は、偉いですね」
 観測端末は、メルをなでる。本来の姿では吠えられてしまった観測端末だが、美少女の姿なら……ちょっぴり警戒されるだけで済むようだ。メルはおとなしくなでられつつ、尻尾を巻いてぷるぷるしている。
「皆のおかげで無事解決だね!」
 ミルヴィは妖精たちとハイタッチして、にこりと笑った。

「妖精さんも、カニって食べるのかしら……?」
 やがて一通り給仕を終えたリディアが、妖精たちと遊んでいたミルヴィのもとへとやってきた。
 もし食べるのなら、この子たちにもお裾分けを、と思うのだけど。妖精たちの顔には、口らしきものがどこにも見当たらない。白目のないつぶらな瞳が、こちらをじっと見返すのみである。
「そういえばこれも、どうしようか……」
 そしてミルヴィが示したのは、泉で倒したカエルたち。すでに綺麗に捌かれ、鶏肉にしか見えない。
「!?」
「!!!?」
 妖精たちがさっといっせいにカエル肉に近づいた、と思った直後。妖精たちの頭ががばりと大きく裂け、頭髪が触手となって肉を掴むと、頭部の裂け目へ引きずり込んでいった。次いで頭が閉じ、咀嚼するようにぐねぐねと揺れる。ごくりという嚥下音と、ぐふっというげっぷらしき音が鳴る。
 同様にリディアが持ってきたカニの身もまた、妖精たちの頭部に飲み込まれて消えた。

 そうしておいしいごはんをもらった妖精たちは、嬉しそうに飛び回っていった……

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

バッカルコーン!!
……ご参加ありがとうございます。

執筆にあたり、友達の羊飼いに「ヒツジって吸うとどんな感じ? 恍惚??」と尋ねたところ、「はぁ?」と言われてしまいました。
ヒツジ、吸わないそうです。もったいない。

次回もよろしくお願いいたします。お疲れ様でした。

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