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シナリオ詳細

<蠢く蠍>不死身の大盗賊ブリキット

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●魂を喰うナイフ
 あるところに『呪いのナイフ』があった。
 ブリキットという大盗賊をその部下たちが殺し、奪い取った魂から錬成したというそのナイフは、奪われれば持ち主が死んでしまうという恐ろしい呪いがかかっていた。
 そのナイフは盗賊団、コレクターの貴族、ブリキットの息子とその仲間、その後あちこちに持ち主を転々とさせ、そのたびに持ち主たちは死の運命をたどっていった。ナイフによるものかそうでないかに関わらずに。
 かくしてこの日、ジューヴェル好奇博物館に展示されていたブリキットナイフが……ついにある男の手に渡った。
 死んだとされた男。
 魂を奪われたといわれた男。
 『不死身の』ブリキットの手に。
「待たせたな、俺のベイビーたち」
 整形によって顔を変えていたのか、それでも以前にひけをとらずハンサムな顔立ちをした男ブリキット。
 彼はショーケースを破壊すると、中に並んだナイフを端から順に撫でていった。
 ナイフが輝き、呪いにとらわれた無数の魂が浮き上がる。
 それに伴ってナイフは粉々に砕け……一本の刀の柄へと集まっていった。
「さあ、俺と一緒に暴れようぜ」
 黒く美しい刀身へとかわったナイフ。そして周囲を飛ぶ無数の魂。
 真の姿を取り戻したその刀の名は『妖刀魂喰(ようとう・たまぐらい)』と呼ばれた。
 試しにと刀を振れば亡者の魂が弾丸のように放たれ、壁際で手を上げていた博物館の管理人へと直撃した。首をまるごと消し飛ばすほどの威力で、である。

●目には目を、闇には闇を
 ある幻想の闇酒場では日夜いかがわしい仕事が交わされる。盗み強請り詐欺に誘拐、そして殺し。
 しかし昨今ばかりは日の当たる仕事が舞い込んでくるらしい。
「それもこれも砂蠍のせいさね」
 扇情的なドレスを纏ったバーの女店主サラマンドは細長いキセルをふかしながら語った。

「『不死身のブリキット』って知ってるかい。
 まあずっと昔に死んだと思われてた大盗賊さ。
 なんでそんな話をって?
 奴が実は生きていて、砂蠍の一団に加わったってニュースが、今朝方舞い込んできたのさ」
 裏の情報屋たちによれば、ブリキットは砂蠍(キングスコルピオン)の一団に加わる条件として自らの部下たちや息子やそれにまつわるあらゆる人々の魂をベットしたという。
 わざと部下たちに反乱を起こさせ自分が死んだようにみせかけ、呪いのナイフで無数の魂を回収。妖刀におさめて自らのものとしたのだ。
「ブリキットは無数の盗賊たちを引き連れてここいらのスラム街を実質的に制圧しちまったのさ。
 ここは貴族がお荷物扱いしてる所でね。助けなんてきやしない。よしんば来たとしても隠れ家抜け道なんでもござれ。貴族なんかが手に負える案件じゃないのさ。
 そこでだ……」
 サラマンドは妖艶に笑ってキセルを突きだしてきた。
「この町の裏道をひとつ紹介してやるから、あんたらでブリキットたちを追い払っちゃくれないかね。
 ひとつだけとはいえ、隣の貴族に教えるのはちと惜しいもんでね」

GMコメント

 こちらは全体シナリオ<蠢く蠍>のひとつ。
 不死身の大盗賊ブリキットとその部下たちを幻想スラム街から追い払う依頼でございます。

 以降、細かい補足となります。

【背景】
 ラサ傭兵商会連合の大討伐から逃げ延びた砂蠍盗賊団は幻想に潜伏していました。
 彼らは幻想のアウトロー勢力を次々味方につけて規模を拡大し、いまやただの盗賊とは呼べないほど巨大な軍隊と化しています。
 いわばヤクザ社会。一次団体である砂蠍の下に無数の盗賊二次団体が連なっています。
 しかも彼らは結構しっかりした装備を整えており、その資金源は不明です。
 彼らの恐ろしさは元々アンダーグラウンドの住人であっただけに貴族たちの目を逃れるすべにたけること。つまりは貴族が叩きつぶそうとしてもサッとどこかに隠れてしまうという神出鬼没さでした。
 そのうえ幻想貴族が中央(王)に集中した政治体制をとることを逆手に取り小さな村やスラム街といった貴族パワーの弱い場所からじわじわ制圧していっています。
 今回はそんな背景のなかで起こった不死身の大盗賊ブリキットによる事件です。

【事件概要】
 幻想スラム街の協力を得て、スラム街を制圧した真ブリキット盗賊団を追い払うことが依頼内容であり、成功条件となります。
 ※妖刀の力もあってブリキットを今回限りで殺すのはほぼ不可能です。完璧に殺そうとすると依頼難易度が一~二段階くらい上がるので、あくまで追い払うだけにとどめましょう。

 ブリキットがアジトとしている建物は無数の兵隊に守られています。
 その数実に30。
 バレずに近づくのは不可能なので、隠し通路を使った『裏からの正面突破』を仕掛けることになります。
 ここで盗賊たちを数多く倒し、できれば中くらいの強さをもつ盗賊も何人か仕留めることができれば依頼成功条件はクリア。
 兵力を失いすぎたとしてブリキット盗賊団は退去するでしょう。

【プレイングガイド】
 このシナリオはアジトに突入する前半と、中くらいの盗賊たちが発生しはじめる後半に分かれると予想されます。

 前半は敵の強さは低いながらも数がとにかく多く、狭い通路をがんがん進むため副行動が常に『移動』になるなどの制約をうけます。
 そして敵の数の都合上とにかく囲まれます。
 どうあっても遠距離攻撃しかできないという方は戦闘の位置取りに気をつけ、近接攻撃ができる方は得意分野を活かしてください。範囲攻撃を使用する場合は念のため味方を巻き込む覚悟もしておきましょう。

 後半は中くらいの盗賊(ネームド)。そこそこ名のある盗賊や用心棒など、ブリキット盗賊団でも戦力のある連中がちらほら現われます。
 というか、そういう連中の居る場所まで食い込んで戦います。
 戦いへの持ち込みかたや、『ここは任せて先に行け』的なチームの分断など、工夫の仕方によってはこの一作戦で複数のネームドを倒せるかもしれません。

 どうしてもという場合はブチキットに挑戦してみてもOKです。
 この場合、ブリキットに多少怪我を負わせた段階でネームド1~2人を倒したのと同じくらいの戦功点が得られると思ってください。

 尚、依頼成功後の撤退は(プレイングリソースが足らなくなると思うので)なんかうまくできるものとします。

【エネミーデータ】
 全体的なエネミーデータは『不明』です。
 なんつっても数が多く誰が誰という判別があまりつきません。
 なので、自分の得意分野を押しつける戦い方をするか、どんな敵にでも対応できる戦い方をするかのどちらかで攻めましょう。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • <蠢く蠍>不死身の大盗賊ブリキット完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月30日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

テテス・V・ユグドルティン(p3p000275)
樹妖精の錬金術士
アラン・アークライト(p3p000365)
太陽の勇者
ミスティカ(p3p001111)
赫き深淵の魔女
ミア・レイフィールド(p3p001321)
しまっちゃう猫ちゃん
猫島・リオ(p3p002200)
猫島流忍術皆伝者(自称)
ティスル ティル(p3p006151)
銀すずめ
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹
テヴィン=”スミス”=ヴァルケス(p3p006611)
鍛冶屋

リプレイ

●ブリキットナイフの伝説
 ナイフコレクターにとって有名な伝説、呪いのブリキットナイフ。
 その元凶であり母体とも言うべき存在ブリキットが生きていた。それも砂蠍の一団に加わるという最悪な形で。
 彼の軍勢に占拠されたスラム街を奪還すべく依頼され、裏の仲介屋サラマンドに要塞への裏道を教わったイレギュラーズ。
 『樹妖精の錬金術士』テテス・V・ユグドルティン(p3p000275)はその狭い通路を進みながら呟いた。
「盗賊団の討伐か。たまにはこういうシンプルな依頼もいい物だ。相手が悪党なら遠慮なくやってもいいだろう?」
「さてさてこのような戦場に迷い込んでしまったボクちゃん様ではありますがお仕事として受けてしまったからには全うする所存」
 そのあとに続く『猫島流忍術皆伝者(自称)』猫島・リオ(p3p002200)。
 『鍛冶屋』テヴィン=”スミス”=ヴァルケス(p3p006611)もそのあとに続いて、ちらりと後ろを振り返った。
「喚ばれたばっかでな、本来の獲物じゃねぇんだが……こいつらを叩きのめすにゃ丁度良いだろうよ」

 『赫き深淵の魔女』ミスティカ(p3p001111)たちは要塞の裏にあたる、いわゆる『いざというときの逃げ道』を逆に使って侵入を果たしていた。
「持ち主を転々として、死へと導くなんて、何だかどこかで聞いたお話ね。そんな曰く付きの術具に惹き寄せられるのも、運命なのかもしれないわ」
 魂の封印という言葉にどうも近しいものを感じるのだろうか。ミスティカは『不死身のブリキット』に少なからず興味を抱いていた。
 『特異運命座標』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)が応えるように言う。
「魂喰らいの妖刀か。ずいぶん物騒なものを持ってるじゃないか。殺せば殺すほど厄介になる怪物……放っておくのは危険だね。それにしても……そんな男の手下になって怖くないのかな」
「恐怖政治なんじゃない? 盗賊ってみんなそうなの?」
「さあ……」
 『からくり剣術』ティスル ティル(p3p006151)は翼を畳んで狭い通路を抜けると、要塞内部をゆっくりと進む。
 どうやら倉庫の一角らしく、見張りはなかった。
(……なははー。不死身の大盗賊ねえ。……本人も武器もヤバそうなんだけど? ……ううん、きっと大丈夫。気持ちで負けてちゃダメね)
 ティスルの不安を察したのか、『太陽の勇者様』アラン・アークライト(p3p000365)がそっと前へ出る。
「しかし、スラム街を制する程の盗賊集団が居るたァな。遠慮なく勇者の力でぶっ潰させて貰いますかァ!」
「ん、大盗賊様の所へカチコミと行きますか!」
「にゃ」
 『しまっちゃう猫ちゃん』ミア・レイフィールド(p3p001321)がこっくりと頷いた。
「ラサを荒らしてる。それだけで、やる理由は充分、にゃ。駆逐、なの!」

●突入
 よもや倉庫の内側から襲撃があると思っていない盗賊たちは、見回りの仕事をさぼって倉庫前にたむろしていた。
 何気ない会話。突如開く倉庫の扉。
 重火器を構えたミアと剣を抜いたアランが、そこには立っていた。
 真っ先に放たれるミアの弾幕。
「先は長いから、節約しないとにゃけど……撃ちまくりは気持ちいい、の」
「そつはいいが、俺には当てるなよ?」
「ミアの腕を信じるの」
 アランが弾幕に倒される盗賊たちを踏み越えて突撃、拳に集中させたエネルギーを盗賊の一人にぶつけ、波紋状の爆発を起こした。
 たちまち吹き飛ぶ盗賊たち。
 無事な盗賊が侵入者の出現を知らせ、あちこちから別の盗賊たちが集まってくる。
 流石いざというときの逃げ道だけあってあちらこちらから集まってくる。だがたどるべき道順は既に教わっている。
「止まってる暇はねえ、行くぞ!」
「せっかくの機会だ。新しく作った薬品やマジックアイテムの実験台となってもらうとしよう」
 テテスが新しく作ったという道具を使って無数の見えない糸を放った。
 アランに襲いかかろうとした盗賊に糸がからみつき、たちまちに切り裂いてしまう。
「単騎で駆けるにはいささか危険度MAXな場所ではありましてここはひとつ忍道を進みつつ天誅下すしか?」
「オイ大怪盗だか何だか知らねぇがよ、御前等のやってるこたぁ、所詮強盗なんだよ!」
 戦闘にリオとテヴィンが加わり、盗賊たちに攻撃を加えていく。
 手応えから察するに、大半の盗賊たちは元々戦闘に優れた連中ではないようだ。
 スリだとか詐欺だとか、戦闘とはまた別のジャンルの人間たちなのだろう。もしくは集団で取り囲んで脅し取る種類のものだ。だが軍勢という規模になった時、それはイナゴの群れ同様恐ろしい驚異と化す。
 無数の弾幕や攻撃に晒されるも、たえず突き進むテテスたち。
「死にたくなければ道を開けなさい。それが嫌なら、死体の上を歩いても構わないけれど」
 ミスティカは黒い光やその爆発を用いて盗賊たちを蹴散らすと、ずんずんと切り開いていく。
 陣形は前中後衛で固めた卵形。回復を含めた防衛に難があるためか、とにかく攻撃的に敵の数を減らす作戦に出たようだ。
 それでも後衛チームが背後からの攻撃に晒されることが増え始める。数に物を言わせて囲まれる状況になってきたのだ。
「やっぱ数は多いけど。まあ、なんとかなる! ――ピジョン!」
 ティスルは剣の柄についた操作盤を撫でると、ホルダーから白いプラモデルを発進させた。
 翼をもったシャープなデザイン。ピジョンはロングレンジライフルからビームを放つと、右から左へ盗賊たちを薙ぎ払った。
「おっけ、その調子で打ちまくれ!」
 攻撃に伴って自らの敵を切りつけるティスル。
「邪魔をするなら仕方ない。立ち塞がるものは全部まとめて薙ぎ払うまで。命が惜しければ逃げる事をおすすめするよ」
 ウィリアムは前に出て盗賊の剣を盾で受けると、空中に水滴で魔術文字を書き込んだ。
「狙いが雑になるのが困りものだけど、狭いおかげで助かるよ」
 魔術が発動し、水の弾丸が大量にはじけて盗賊たちを吹き飛ばす。
「オラァ!! 死にてぇ奴だけ掛かってこいやァ!!」
「ああ、もう! まだこんなにいるの!?」
 直近の敵を多く払えないのはつらいが、アランやティスルと協力して攻撃を引き受けていった。
 それこそまさにイナゴの大群。
 最初こそ一方的な攻撃ができていたが、盗賊たちがあつまり30という数になるとそう簡単に打ち払えなくなってくるものだ。
 更に言うなら、途中から隊列の指示を出す人間が現われはじめ負傷した味方を下げて別の味方にフォローさせるといった統率のとれた動きをしはじめる。
 指揮しているのは女性のようだ。ブリキットの側近だろうか。
「奴を残すと厄介だ。潰すぞ」
 銃弾がいくつも命中した身体を引きずり、アランは剣を握り込んだ。
 刀身がまばゆい炎に包まれてゆく。
 彼の接近を察知した盗賊たちが間に割り込もうと展開するが……。
「こいつらの相手はテテスに任せるといい、そちらは任せた」
 テテスは新しい薬品だという瓶を放り投げると、盗賊たちに浴びせかける。
「ここを通りたければテテスを倒していくがいい、お前たちに倒せるものならな」
 割り込みをかけ、盗賊たちの壁をこじ開けるテテス。
 たちまちにテテスは取り囲まれていくが、その間を抜けるようにしてアランとテヴィンが指揮官らしき女盗賊へと接近をはたした。
「オイオイ、良い女が勿体ねぇな。悪事に手ェ染める勇気が在るんなら、真っ当な道歩いてみろよ」
「歩けないからこんなことやってんのかね。ま、話はあとだ! 行くぜテヴィン!」
 アランとテヴィンが女盗賊へと襲いかかる。そこへちゃっかり紛れ込んだリオもまた、女盗賊へ横から襲いかかっていった。
 一方でミスティカとミアが怪しい気配に振り返る。
「あれは……」
「ブリキット、なの?」
 妖刀をぶら下げ、ゆらりゆらりと歩く男。
 盗賊というより風来坊といった雰囲気で、黒いナイフのかけらが集合してできたらしい彼の刀からは無数の魂が苦しみの声をあげていた。
「よーう、子猫ちゃんたち。どうもスラム街の連中じゃあなさそうだな? 貴族の私兵ってわけでもない。すると誰だ? 俺の古い部下連中を殺したやつらかな?」
「さあ、どうでしょうね」
(彼に……いえ、興味があるのは呪いのナイフの方。かつて私もそういう存在だったから……)
 ミスティカは手を翳し、ブリキットへ魔法を放つ。
「これ、結構高い、の。代金はあの世にツケとく、にゃ。バイバイ、なの!」
 ミアも間の壁になっている盗賊たちを薙ぎ払うべく爆弾を投げつけていく。
 盗賊たちは爆風に次々と吹き飛ばされるが、その爆風をブリキットは単身で抜けてきた。
 咄嗟に魔法の障壁をはるミスティカ。
「俺とやろうってのかい。いいぜ」
 障壁が砕かれ、ミスティカとミアはまとめて吹き飛ばされた。
「二人とも……!」
 助けに入ろうと走るティスル。
 しかしその間を遮るように盗賊たちが立ち塞がった。
 剣を抜く盗賊たち。
 同じく剣を構え、ピジョンを頭上に飛び上がらせるティスル。
「……まだ出てくるのか。これだけやられても逃げないとは根性があるね」
 ウィリアムもそこへ加わり、魔法の構えを取り始める。
 イレギュラーズたちは三つに分かれ、それぞれの戦闘が始まろうとしていた。

●真ブリキット盗賊団
 今回イレギュラーズたちが突入した要塞。つまり真ブリキット盗賊団が占領中心地とした建物は、もともとこのスラム街を仕切っていた頭目のすみかだった。
 貴族による検挙から逃れる抜け道をいくつも作っていたことから分かるとおり慎重な男で、しかしそれでもブリキット盗賊団による襲撃に耐えきれず命を落としたと言う話だ。
 そんなアジトの部屋のひとつへと転がり込んだリオとテヴィンは、追撃に飛び込んできた女盗賊のダブルダガーをそれぞれの武器やその辺の鉄パイプで受け止めた。
「自己紹介しておこうか? アタシはトタニア。ブリキット盗賊団で若いのを束ねてる」
「ごしょーかいどーも!」
 力と力の押し合い。しかし頭数で勝っている分優位はとれるはず……と、思ったその時。横合いから魔法による光線が放たれた。
「っ!?」
 とっさに飛び退くが、かわしきれずにダメージを受ける二人。
 振り向くと、ソファに腰掛けていた革鎧の男が立ち上がった。手には魔法銃が握られている。
「手こずってるようだな。手伝ってやろうか?」
「エナム、手出しするつもりかい」
「してやってもいいけど……その余裕はなさそうだぞ」
 エナムと呼ばれた男はソファから飛び退き、地面を転がった。
 次の瞬間背後の壁が爆発によって粉砕された。
 穴の空いた壁をまたぎ、室内へと入ってくる男。
 別名太陽の勇者、アランである。
 彼は拳に炎をあげ、ぎらりと笑った。
「よく分かってんじゃねえか。ええ?」

 一方で、テテスとティスルたちは数多くの盗賊たちに囲まれていた。
「ピジョン、切り開くよ!」
 ライフルをビームランスモードに切り替えたピジョンと共に突っ込むティスル。
 立ち塞がろうとする盗賊にタックルをしかけ、そのまま無理矢理に通路を突き進む。
 既に特別な技を放つエネルギーは残っていないのだ。であれば、もはや突撃しかない。
 一方でエネルギー(在庫)豊富なテテスは巧みなマリオネットダンスで盗賊を縛り上げ、次々と切り裂いていく。
 頭数は多くとも実力差はテテスたちのほうがずっと上。回復が弱い分集中攻撃を仕掛けられればかなりキツいが、テテスはその中でも例外の部類にあった。
「くくく、町の平和を乱す盗賊の退治と行こうではないか」
 次々とマジックアイテムを繰り出すテテス。
 一方でウィリアムもまた、ちょくちょく魔力を充填してはエーテルガトリングを乱射していく。
「そろそろこっちもキツくなってきたね。さて、本当にどうしようかな……」
「どうしようかだって? 君たちに選択肢なんてあるのかな?」
 両手から鉄爪をはやした男が余裕そうに歩いてくる。
「やあ、僕はプラスト。そっちはあと数十秒の命かもだけど、よろしくね?」
「おっと、これはまずいかも」
 ウィリアムは咄嗟に盾を相手に向けて放り投げ、魔法を展開。
 水の弾幕が作られ、相手に向かって放たれる。
 ネームドを倒しきる余裕はない。ここはなんとかしのぎながら、少しでもブリキット盗賊団の頭数を減らすことに集中しなければならなかった。

「ミスティもやる、の。負けない……にゃ!」
 重火器による乱射をしかけるミア。
 しかし空中に浮き上がる無数の魂がそれを喰らうかのように防ぎ、ブリキットに弾が殆ど届かない。
 かろうじて抜けた弾も、ブリキットは刀で弾くようにして受け流していた。
 ブリキットはなかなかの強敵だ。それに、部下がのきなみやられるまで椅子に座って待っていてくれるタイプのリーダーではないらしい。彼の攻撃をしのぎつつ他のネームドやその下の盗賊たちを優先して減らしていく選択肢も勿論あったが……。
「粘るね子猫ちゃん」
「ミアは子猫じゃない、の!」
 銃を一旦手放し、相手に向かって突撃。爆弾最後の一個を鞄から取り出すと、ブリキットめがけて投擲した。
「まだそんなもん持ってたのか……!」
 刀と魂の壁でガードを試みるブリキット。
 その背後に回り、ミスティカはとっておきのキルザライトを叩き込んだ。
 ブリキットを深い闇が包み、肉体をむしばんでいく。
「呪いによって力を得た者は、必ず己に報いが返る。それだけは忘れないことね」
 直撃……はした筈だが、ブリキットはそれだけでは倒れなかった。
 彼をとりまく魂が、たびたび彼の代わりに苦しみを流し込まれているように見える。
 ミアや他の者たちには聞こえなかったが、ミスティカには魂たちが苦痛を訴えたり助けを求めたりしているのがわかった。絶え間ない死者の叫び。それが妖刀の力になっているのだろう。
 ブリキットの回転斬りが周囲の盗賊もろとも吹き飛ばしていく。
「おっといけねえ。部下まで斬っちまった」
「そんなことでいいのか? アンタの部下、随分減ったぜ」
 あちこちから血を流したアランが、力尽きたトタニアを放り投げるようにして現われた。
 満身創痍。しかし根性だけで歩き、気合いだけで剣を構える。
「呪いだか何だか知らねぇけど、勇者である俺にそれが通用するかなァ!?」
「いい度胸だ。テメェの魂もいただいて……と思ったが」
 ブリキットは妖刀を鞘に収めた。
「このまんまじゃ面白くねえ。お前らは殺さずに帰らせてやるよ。こっちもえらいダメージを受けたみたいだしな」
「ンだと、逃がすわけが……」
 よろめくアランを、ウィリアムががしりと抱えた。
「その提案、乗らせてもらうよ。こっちも『命がけで道連れに』なんてごめんだからね」

 こうしてイレギュラーズたちはアジトを脱出した。
 部下の多くを失い戦力の補充を必要としたブリキットも要塞を引き上げ、スラム街から去ったという。
 大けがこそおったが、悪くない戦果であった。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ブリキット盗賊団の幹部を一人倒し、その下の部下たちを沢山倒したことでブリキット盗賊団は占領を続けるだけの戦力を失いスラム街から撤退していきました。
 彼らとはまた、戦うことがあるでしょう。

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