シナリオ詳細
<蠢く蠍>THE GREAT WALL
オープニング
●燃え盛る炎の中で
木が、家が、空が、燃えている。
幻想北部の秋の夜空の下、一つの農村が一夜にして灰へと変わろうとしている。
草木と肉の燃える匂いの中逃げ遅れた人々の死体の前で、一人の男が奪った宝石を持ちながら呟いた。
「今は収穫時、この街に蓄えられている資産はもっとあるはずだが――」
そう言うと、宝石と、懐から取り出した金貨を数枚をピンと、後ろにいた傭兵どもに弾き飛ばす。半分もみくちゃになりながら、傭兵たちは燃え盛る日の中、宝石や金貨を取り合っていく。
その喧騒に微動だにせず、男は燃え盛る家々を眺め続ける。火花が散り、黒い空へと登っていく。
「どうやらここ一帯住民はあそこへ逃げ込んだようだな……そろそろいいだろう、仕上げのときだ」
男が手を上げれば傭兵どもはぴたっと静まり返り、武器をしまい、そそくさとどこかへと去っていく。誰も居なくなった炎の中で、男の高笑いだけが夜に響いた。
「さあ、『追い込み漁』と行こうじゃないか」
●一難去ってまた一難
「はわわ、大変なのです……10人ぐらい来てくれませんか!?」
『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が大慌てでローレットに駆け込んでイレギュラーズ達を招集し、二言。
「大変なのです! 『砂蠍』が幻想各地で本格的に活動を始めたのです!」
『砂蠍』、ラサから幻想へと落ち延びた盗賊団である彼らはしぶとく活動を続けていたが、突如その規模が急増、幻想各地の盗賊団や傭兵を取り込み、一大勢力『新生・砂蠍』となり、貴族が気を配らない地方を中心に大暴れしているのだ。
問題はそのペースだ。今まで逃げ回っていた『砂蠍』やそれに服従した盗賊や傭兵どもが合わさったとしても余りにも早すぎる。まるで何者かのバックアップを受けていなければありえないほどに。
結果、ローレットは『蠍退治』の対応に追われることとなる。次々入る依頼の数々に、ユリーカもどこか疲れ気味だ。
「今回の依頼主は幻想北部の豪商達なのです。ウォールタウンと言う街の警備を1週間ほどお願いしたいということなのです」
ウォールタウン。
幻想北部に位置し、古来より鉄帝や盗賊より住民を守るための高い壁に覆われている地方都市だ。
太古の昔、とある貴族が民の為にこさえたというその壁は地元の住民から『偉大なる壁』と親しまれ、それがそのまま街の名となったのだという。
貴族達が地方に興味をなくし、自らの住む場所だけを気にかける様になった今となっては、古く、老朽化が進んだその街を守る壁だけが不釣り合いに残っていた、が。藁にもすがる思いとその壁を頼りに、その周囲の人々や商人達がその街へとごっそり疎開しているのだという……たんまりと金貨や宝石を握りしめて。
おまけに、壁があるから良いだろうと街を守る為に貴族より派遣されたのは虫を殺した事も無さそうな新米兵士達だけ……この地方を治める貴族が事の重大さに気付き、エリートを派遣するにも1週間以上待つ事は避けられない。
「イレギュラーズの皆さんには貴族さんの私兵が来るまでその街の唯一の出入り口である門を見張って、『新生・砂蠍』のメンバーや怪しいやつが出てきたら撃退して欲しいとの事です!」
普段なら、その中に秘宝があるとしてもこの壁の街を見て襲う物好きはいないだろう。が、『新生・砂蠍』の連中は今までの例から外れたイレギュラー、狡猾な彼らならウォールタウンが『見掛け倒し』で有ることも把握している可能性がある。何をしでかすかわからない。
「みなさんで頑張って追い払って、その壁が『ハリボテ』でなく『偉大な壁』と思い知らせてほしいのです! よろしくおねがいしますなのです!」
そう言い残すと、情報屋見習いの新人に書類を押し付け、ユリーカは次の依頼へと奔走するのであった。
- <蠢く蠍>THE GREAT WALLLv:5以上完了
- GM名塩魔法使い
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2018年09月30日 22時10分
- 参加人数9/9人
- 相談4日
- 参加費100RC
参加者 : 9 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(9人)
リプレイ
●壁と蠍と
壁の街・ウォールタウン。街を囲む巨大な石の壁がその名の由来となった、幻想北部のアーベントロード領に位置する街である。
その壁の都市の唯一の弱点である城門を護る人員が欲しいという依頼を受諾し、1週間の警備へと向かったイレギュラーズ達を迎え入れたのは、見上げても果てが見えないほどの巨大な壁。壁。壁。
「にしても壁の街って! ホントに『壁』そのものやん! でかっ!」
その壁を初めてみた『格闘黒虎娘』リッキー・ヴォルコア(p3p000729)がそう驚愕したのも無理はない。並の機動力の飛行種ですら受け付けないようにと建設された10メートルは軽く超えるほどの巨大な壁。リッキーはその壁に圧倒されながらも、「まぁいいや、こん中に人入れなきゃいいワケだ。ガンバルゾー!」と気合を入れたのであった。
リッキーの隣で同じく壁を見上げていた『流浪の騎士』クロガネ(p3p004643)もまた、深く頷く。壁に感化されたのか、あるいは『壁になってほしい』という街の人の頼みがクロガネのモチベーションを引き上げたのだろうか。
「私自身、壁と言うし盾と言うものだ。騎士の本領発揮と言うわけだな」と、どこか仕事の熱意に燃えていた。
『ハム男』主人=公(p3p000578)もまた、壁を見上げながら思いに耽る。貴族達が自分達の済む場所だけでなく、地域に気を配り兵を配備しておくほど誠実であったならば。と。
公は自らに言い聞かせるように、二人に「悲劇をもう起こさせないためにも、この城壁を守り通して見せるよ」と声をかけた。
彼らに貸し出されたのは監視を行うための双眼鏡や鐘といった道具と、街の壁の高さ3メートルほどに盛り上がるように設けられた、寝泊まりができる小さな見張り小屋。
その小屋の中より、イレギュラーズ達は怪しいものが壁の街の通気口たる門へと近づかない様、交代で警戒に当たることにした。
「さて、今回は、1週間の間に、この壁を守れるかが鍵ってところだな」
自らの呼び出した小さな烏天狗を飛ばし、偵察に当たらせながら自らも壁の外を見張る『第二十四代目天狗棟梁』鞍馬天狗(p3p006226)がそうつぶやいた。 「まぁ、盗賊共に、この門はくぐらせる訳には行かねぇな」
壁の向こう側には、寂れ気味の平時とうってかわって中に難民がごった返している大混乱の状態となっていた。配属されていた兵は非力な新人の兵士達という事もあり、難民の対応で精一杯で外の警備すらイレギュラーズ達に完全に任せられているという有様であった。
「失敗すれば死者は物的・人的な損害は相当なものになるだろう。一方的に被害を受け、相手は勢いを増す。それだけは避けなければならない」
『異形の匣の』アブステム(p3p006344)もまた、門の外を見張りながら依頼の重要性を噛みしめる。この門を近い内に襲う事が予想されている盗賊団『新生・砂蠍』の構成員達を懸念してのことだ。
『新生・砂蠍』――『砂蠍』が肥大化した結果誕生した、全貌が全くの謎に包まれている新興盗賊団だ。彼らは貴族が意に介し無い地方のウォールタウンの様な都市を狙い、これまでにない規模で活動している。今までの例に反しなければ、彼らはこの街にも現れるはずだ。
そう予測したウォールタウンの人々やイレギュラーズの予想通り、イレギュラーズたちが警備を初めてから数日もしない内にやつらは現れた。それは、月と松明の明かりだけが不気味に明るく輝く深夜であった。
皆が仮眠を取る中、一人開いた魔導書を片手に壁の外を見張る『叡智の捕食者』ドラマ・ゲツク(p3p000172)の視界に15の人影が現れたのだ。人影は皆フードを深く被り、明かりになるものを何も持たずにただ壁の門へと真っ直ぐに突き進んでいく。
「これは……!みなさん、今すぐ起きてください!」
ゲツクが鳴らした鐘を合図に皆が飛び起き、見張り小屋から門の前へと飛び降りる。その姿を見て、フードをかぶった人影達は皆その足を止め、対面する両者。
「おやおや、これは失礼。傭兵の皆さん……夜遅くに失礼します」
『不審者』達の先頭の男がフードを脱げば、若くも眼光の鋭い男性の顔が現れた。それと同時に、後ろのフードの男達がそれぞれの得物を取り出し――脅迫の姿勢を見せる。
「命が惜しくば、この街の中に入れていただけないでしょうか?……すぐに終わりますので」
「断る」
『黒鉄の意志』カノープス(p3p001898)は、その大盾を構え、門を護るべくどっしりと構える。
「悪辣なものだ。逃げ込んだ人々から更に奪おうなどとその様な目論見は叶えさせてはやらん」
カノープスの言葉に食い気味に「当たり前だ!」と乗るように『烈鋼』アーサー・G・オーウェン(p3p004213)が続く。
「此処を突破されちまうと大勢の人が好き勝手奪われちまうんだろ?なら通すわけにはいかねえよなあ!」
ならばとマルツィオが目を閉じて、懐から大小様々な宝石を取り出し、「では、こちらを」と申し出る。傭兵達も得物をちらつかせ、圧を更に強くしていく。
「破滅風情が……俺の心を掻き乱しやがるな」
『破滅を滅ぼす者』R.R.(p3p000021)が卑怯な男に対する苛立ちを抑えるように、攻撃の構えを取る。破滅をもたらす者を滅ぼすR.R.にとって目の前の男達は許せないのだろう。体を纏うその包帯様の呪具の隙間からは紅光が溢れ、今にも燃え尽きてしまいそうなほどであり……魔力を放てば、マルツィオの持っている宝石に命中――宝石が崩れ落ちる。
「俺たちはこの壁に来たる破滅を滅ぼす……アンタは破滅だ」
「それが君達の答えか」
マルツィオが目を見開き、曲刀を抜いた。
●『新生』の力
「『正義』などで動く傭兵など敵にあらず! 行け!」
マルツィオの言葉と、抜刀を皮切りに次々と傭兵が飛び出していく。それぞれ、ナイフを抜き飛びかかる獣種の、練達製であろう銃に弾を込める飛行種の、そして、魔力のオーブをかざす幻想種の男性達。その目に迷いはなく、ただ「門の破壊と護衛の抹殺」の任務を遂行するために一斉に全速力で門へと突っ走る。マルツィオは……ただそれを、眺めているだけであった。
同時に、雪崩れ込む散弾と雷撃の嵐。歴戦のイレギュラーズ達ですら一瞬ひるむほどのその嵐の隙間を通る様に、獣達が駆け、イレギュラーズ達へと飛びかかる。それを食い止めんと、公が飛び出て、門へ向かう者達を食い止める。
「試してみようか? 本当に敵じゃないか!」
遠方で高みの見物をするマルツィオの方へ言い放つ様に叫ぶと、両手盾を展開――自らに飛ぶ攻撃の波にも負けず、食い止めた相手を再び捉えれば、展開したエネルギーフィールドごとぶつけるようにして敵を門より弾き飛ばそうとする。
援護するように、一つの人影が公の後ろへと回り込む。アーサーだ。「公、後ろは任せな!」と公の妨害をものともせずに門へと突っ走る傭兵達へ向かって、空に拳を突き上げながら大きく叫ぶ。
「我が名はアーサー! アーサー・G・オーウェン! 臆病風に吹かれてねえって奴からこっちに来な!」
その言葉が鬱陶しかったのだろう。数人の傭兵どもがふらりと門の方からアーサーの方へと視線を変え、まずはこの男から潰そうとばかりに飛びかかる。
無言で武器を振り上げる男たちへ向かって、アーサーは「さあ、かかってきな!」と更に挑発するように声をかけた。
アーサーの方へと向かう傭兵達とすれ違う様に、別の傭兵達が門を目指して駆けていく。何人かが一直線に並んだその瞬間を、ゲツクは見逃さなかった。
「嵐の王よ、力をお借りします!」
昂ぶる魔力が、ゲツクの持つ2つの魔導書をパラパラとめくりあげていく。その魔力は風となり、嵐となり――凄まじい魔力の塊となって暴れだす。吹き飛ばされてなお、立ち上がり扉を狙う傭兵達を確実に射止めようと鞍馬天狗が矢の一本一本を彼らの急所に確実に当てるように放っていく。
「まぁ、いけ好かない盗賊の諸君、ごきげんよう。この壁の奥は、立入禁止だ」
その矢が脳天に突き刺されば、傭兵は派手に吹っ飛び、動かなくなる。尚も抜けようとするもう一人のナイフ使いは、不幸にも怒りと憎悪に満ち、紅く煮えたぎるR.R.の視界と射程距離に入ってしまう。
「苦しみ、悶え、悲鳴を上げろ! 破滅をもたらさんとする事を後悔しながら惨めに滅び去れ!」
荒々しく、容赦の無い破滅のオーラが次々と放たれ、何発も生き残りに叩きつけられれば、フードごとゆっくりと崩れ落ちた。
確かにイレギュラーズ達は必死に敵を食い止め、門へ近づく悪意を少しでも跳ね返そうと試みる、しかし、相手がそれぞれがマルツィオの指示に大雑把に従うワンマンプレイでありながら実力も数も勝る傭兵集団。多少仲間が力尽きようとも臆すること無く、イレギュラーズ達のもとへと突き進んでいく。
それと同時に、オーブを持つ傭兵達の雷撃がイレギュラーズ達の皮膚を傷つけ、ナイフがその傷口を広げていく。
「なかなか厄介だね、けど」
大盾を構え、ひたすら防御の構えを取るクロガネはそのコンビネーションに苦しめられながらも、決して門を守る事を諦めはしない。血を多少流そうとも例え力尽きようとも歯を食いしばり、依頼を遂行しきるという意地を見せる。その防御の構えに失敗などはあり得ない。
「生憎、盾で殴ったりする趣味も技量もないものでね……!」
クロガネ達の後ろにある門の後ろには、大勢の人々や門を補強する兵士達がイレギュラーズ達を信じて待っているのだ。倒れる訳にはいかない。……が、限界が訪れる。
膝を突き、呼吸を整えるクロガネ、今が好機と飛行種の傭兵が叫びながら、固く閉じた脆い門へと魔力弾を撃ち込んだ。が。間一髪のところで、巨大な鉄の塊に遮られ弾丸が弾かれる。カノープスが大盾を構え、攻撃を弾いたのだ。
「奪うしか脳のない輩が、この鉄壁を抜けるものか」その言葉を語り終えるや否や盗賊の方へ突進。体重を乗せた防御体勢からの強烈な一発を打ち込み、怒涛の勢いを以て傭兵を吹き飛ばした。
「私の強襲作戦で押しきれないだと?」
マルツィオが顔をしかめ、その光景を眺める。彼の編み出した『強襲作戦』は並大抵の防御力であればまたたく間に粉砕し、打ち破れるものであったはず。だが、しっかりと盾を構える2人とこの偉大なる壁の前には到底敵うものではなかったのだ。
そしてそれが彼らにとって命取りとなってしまう。イレギュラーズ達の防御力を見くびりすぎた結果、扉の破壊に想定以上に戦力を割いてしまい、形勢が逆転しかけている今この瞬間まで気が付くことができなかったからだ。
「もう遅い、勢いづいて街を狙ったことを後悔させてやろう」
アブステムが巨大な重火器をその背より生やした幾本もの腕でしっかりと掴み、狙いを定めた一撃をぶっぱなす。
敵の射程外から放たれる奇襲の一発。その一撃を脆に受け悶える傭兵に、トドメと言わんばかりのリッキーの蹴りが入る。
「イッパーツ!」
激しい蹴り上げ、更に一発、吹き飛ばすような蹴り。容赦ないコンボを受け、「ぐええ!?」と叫び倒れる傭兵を横目に、深い溜め息を付く。
気が付けば、イレギュラーズ達と傭兵達の数はほぼ同じになっていた――しかし、彼らも流血と門への度重なる攻撃によって疲労している……残された時間は少ない。
「もう出し惜しみはしません! 一気に畳み掛けましょう!」
一番早く、そう判断したのはケツグであった。魔術書を開きありったけの魔力を重ね合わせ、再び嵐を呼び起こす。
嵐の王は大いに吹き荒れ、弱っていた傭兵達を切り刻み、終焉の一撃を与えていく。
「了解だよ!」
公がそれに続くように、自らの生命力を気力に転換すると、ビーム盾を振り回し近くに居た傭兵へとその一撃を与える。
ふらついた傭兵は、一死報いようと再び武器を構えるもアーサーの慈悲の一撃によって意識を失い、倒れ込む。
全身全霊を尽くし、戦い合うイレギュラーズと傭兵達。だが、イレギュラーズ達よりも数を失った傭兵達にもはや勝利の道は残されていなかった。マルツィオもそう認識していたのだろう。
「……さらばだ」
カノープスが大盾を振るい、門を傷つけようとしていた傭兵の一人の攻撃を食い止めていた、その時。
「ふふ、ははは、ハーッハハハハ! 素晴らしい力だ! こうも私の『強襲』を防ぎ切るとは!」
これまで仲間の大半が倒れようとも静観し続けていた、マルツィオが高笑いと共に剣をふりあげたのだ。直後、毒の霧が戦場全体に及ぶほど広範囲に放たれる。
苦しく咳き込むイレギュラーズ達の中、なんともないように立ちながら、マルツィオは拍手を捧げる。
「私の負けだ、『壁の街』も、その中にある大量の財宝も諦めよう……だが、命だけは惜しい」
独自に耐性を付けていたのだろう。毒の霧の中、ふらふらと立ち上がった生き残りの傭兵達が、イレギュラーズ達に攻撃するでもなく走り出し、再び闇夜へ消えていく。マルツィオもまた「その時にまた会おう」と言い残し、傭兵達に続くように逃げようとイレギュラーズにマルツィオが背を向けた、その瞬間。
「アンタは破滅だ……故に滅ぼす。今は逃げて一時の安息を得るがいい、だがアンタの最期に安寧は無いと知れ」
R.R.が霧の中、執念と憎悪を込め腕を伸ばし、全力の一撃をマルツィオへ向けて撃ち込んだ。魔力はマルツィオの後ろにあった1本の木に命中し……朽ち果てたそれを無表情で眺めるマルツィオにR.R.は言い放った。
その言葉に、振り返り、「ならば再び見えようではないか」と余裕を含めた笑顔を見せると、再び走り出し――それがイレギュラーズ達が捉えた彼の最後の姿であった。
●大いなる壁
街を狙う脅威は去った。イレギュラーズ達はわずかな扉の損害のみで、見事蠍を一匹たりとも中へと入れずに街とその中の人々を守ることが出来たのだ。尽くせる最大限の事は尽くした。撃破こそできなくとも、この撃退は蠍達にとって大きな痛手となる――壁の中から上がる歓声が、彼らにその事を実感させてくれるだろう。
イレギュラーズ達はその大きな歓声と松明明かりの中、深く息を吐き……出血の応急処置とまだ息のある傭兵達の捕縛にいそしむのであった。……暗い、くらい、地平線の方へと逃げていった、その男たちの事を考えながら。
今回は深手を負わせることに成功したが、あの蠍達はこの程度でおとなしくなる連中ではない。捕らえた傭兵達からも情報を得ることはできないだろう。狡猾に逃げ回り、いつかどこかで再び悪事を企てる。
その時は――確実に。
イレギュラーズたちは街を護りきった達成感と、蠍達との次への戦いへの確信じみた闘志を胸に僅かな微笑みをたたえながら自らの背後にそびえ立つ巨大な壁の方へと振り返り、安全を知らせる鐘を鳴らそうと再び石の小屋の中へと向かっていくのであった。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
あとがき
リプレイは以上となります、お忙しい中お疲れ様でした!
イレギュラーズたちの素晴らしい活躍により圧倒的な戦力を以てその壁を破ろうとしたマルツィオは突破を諦め、撤退の選択をいたしました。死ぬのが怖いというよりは、相当引き際が良い奴のようです。
何はともあれこの地域への『新生・砂蠍』の恐怖は少しの間は無いことでしょう。まさしく皆様が『偉大なる壁』と呼ばれるに相応しいと思います。
それでは、またの機会をよろしくお願いいたします。
GMコメント
塩魔法使いです。どうもきな臭い流れになってきました。
短めですので日数にはお気をつけを。
イレギュラーズ達は依頼受諾後の依頼相談期間中、その街の外にある見張り小屋で見張りを続けながら作戦を練っている……という扱いです。敵の数などは襲われた村の生存者などから情報を聞き把握しました。
●依頼条件
・マルツィオ率いる『新生・砂蠍』を撃退させる。
・マルツィオを街に侵入させない。
●失敗条件
・マルツィオに街に侵入される
●戦場
・幻想北部の街『ウォールタウン』の外。雲ひとつ無い夜だが、壁にかけられた松明などがあるため明かりなどは最低限確保されている。
鉄帝国が近くまた盗賊被害が多い地域の為、街全体が高い壁に囲まれている。
『比較的』脆いが「かばう」が可能な門と非常に硬いが「かばう」が不可能な城壁の2つがある。
街を守る警備兵は門を抑えたり補強したりといった作業に当たる為街の外で戦うのは10人のイレギュラーズのみ。
人間のエネミーが15体。ある程度撃破、負傷させれば撤退する。
・『新生・砂蠍』14体 その名の通り巨大化と再編成を遂げた砂蠍の構成員。彼らを不殺、拘束しても大した情報は得られない。
至近5体、中距離4体、超遠距離5体。それぞれの攻撃には【出血】【足止】【痺れ】を伴います。
多額の報酬で雇われた凄腕の傭兵団です。装備は平凡なもののその実力はプレイヤーの平均レベル以上。
何人かはプレイヤーより「門」を優先して攻撃する。「門」が完全に突破不可能と判断した場合時は「城壁」を攻撃する。
・『強襲』のマルツィオ
その名の通り、強襲による速攻戦術を愛するカオスシードの盗賊。
旧砂蠍のメンバーにして『新生・砂蠍』の指揮官の一人。キングスコルピオに忠誠を誓っているため情報を吐き出させるのは不可能に近いです。
今回は指揮と状況判断に専念する為、門から5,60メートルほど離れた場所から指示を出す。
高い機動力、HPと神秘攻撃力を持ち、時折高命中の範囲(味方を除く20メートル以内)毒魔法や高威力の火炎魔法を放つ強敵ですが、ブロックや攻撃をされない限り積極的な攻撃を行いません。
彼を殺害、あるいは拘束する事ができれば『依頼大成功』ですが、例えイレギュラーズ10人がかりでも門を護りながら本気のマルツィオを撃破するのは非常に難しいです。
●戦法(一例)
(1)門を「かばう」で護りつつ盗賊団を撃破する。
防御に自信がある人がいる場合はこちら。ある意味正攻法。
時間を稼いでいる間に盗賊団の数を減らすか、マルツィオのHPを削りましょう。時間が経っても旗色が良くならない場合、マルツィオは撤退を選択します。
(2)門を壊される前に全力でぶちのめす!
特攻に燃える貴方達にはこちら。
門は無防備でも「そこそこ」耐え、最悪門を破壊されていてもマルツィオに侵入さえされる前に撤退まで追い込めば依頼は成功です。(2ターン程移動の猶予があります)
この場合、のんきしてるとあっさり落ちます。速攻でHPAP使い切る精神で行ってください。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●NPC
「……なんか、やばそう?」
新人情報屋こと『いねむりどらごん』カルア・キルシュテン(p3n000040)が皆さんの援護にあたります。門を守るメンバーが居ない場合も彼女がある程度守ってくれます。
出発時点の装備とPCの平均レベルの能力スキル準拠。希望無き場合は判定のみの影の存在です。
プレイングに特に指示がなければ以下の思考ルーチンで行動します。
「かばう人がいない場合は門をかばいにいく、いる場合は『レンジ1以内・物理のスキル』で最も攻撃された盗賊を攻撃」
●アドリブ割合『高』
この依頼はアドリブを含みます。(主に戦闘中の台詞回しや撃退・失敗後の反応等)
アドリブ「そこそこ」「ほぼなし」を望む場合は、プレイングやステータスシートに詳細を記載していただければ幸いです。
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