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シナリオ詳細

<カマルへの道程>王国に通じる陣

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ラサの市場に流通する紅血晶。
 地下より発掘されたというこの美しい宝石は非常に人気がある。
 鮮やかなルビーを思わせたかと思えば、宵闇の気配もある。一度それを手にすれば虜になってしまうのだという。
 ただ、現状、この宝石を手に入れることは難しく、幻想貴族も人気があるという。
 需要が高まる中、ラサの市場では紅血晶は密かに流通し続けている。

 紅血晶の流通と合わせ、ネフェルストを襲撃してきた吸血鬼や晶竜(キレスアッライル)の群れ。
 被害こそ最小限に食い止めることができたが、ラサにとっては非常に痛い状況となってしまっている。
「『赤犬』ディルクさんが行方不明になってしまっています」
 そこは、ラサのとある酒場。
 『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)が神妙な面持ちで語るのも無理はない。
 国内に不安要素を抱える中で、決定権を有する者が一人欠けてしまっているのだから。
 ディルクは『女王』と呼ばれた娘と姿を消したという。
 ネフェリストを襲撃してきた吸血鬼が『月の女王』『紅の女王』と口にしていたという情報もあるが、果たして……。
「ともあれ、今は吸血鬼に晶竜の対処をしなければなりません」
 『凶』ハウザーらがその痕跡をたどって行きついた遺跡『古宮カーマルーマ』。
 嘗ては『夜の祭祀』と呼ばれた死と再生を司る儀式が行なわれていたとされる場所だ。
 内部は実際に『夜の祭祀』が行なわれた形跡と、幾つかの転移陣が存在しているという報告がある。
 この先には、世にも不可思議な『月の王国』が広がっているのだとか。
 これらを一つずつ抑え、敵の本拠地と思われる遺跡内部を攻略したい。
「ですが、転移陣からは障害となる敵が出現するようです」
 現れる吸血鬼はイレギュラーズを仲間へと引き抜くため、烙印をその身に刻もうとする。
 烙印を身に宿せば、徐々にその肉体は吸血鬼へと転じていく。
 内より強い吸血衝動が起こり、流れ出す血は花へ。涙は結晶へと転ずるのだという。
 完全なる吸血鬼となれば、月の王国の住民になれるというが……。
「このまま、吸血鬼らの横暴を許せば、ラサ王国すらも飲み込まれるやもしれません」
 その前に、遺跡を攻略し、女王なる存在の元へ。
 アクアベルはいち早い攻略をイレギュラーズへと望むのである。


 攻略といっても、『古宮カーマルーマ』と呼ばれる遺跡は非常に広く、どれだけの敵が潜んでいるかもわからぬ状況。
 しかも、下手をすれば、相手は無尽蔵に晶獣、晶竜、吸血鬼……等、手勢を増やすことができる。
 攻略はできるだけ早期に行うことが望ましいのは確かだ。
 遺跡内へと突入したイレギュラーズ一行は、すぐに地下へと降りる。
 砂に塗れた石床を進むメンバー達は程なく、広い個室となった場所に転移陣を発見する。
 その陣へと逃れようとしていたのは吸血鬼を含む一隊だった。
 吸血鬼の傍には、ラサの街中で拉致したと思われる幻想種3人の姿が。
「おっと、このタイミングでイレギュラーズに出会うとはね」
 吸血鬼はクラッドと名乗り、後方に従えた狼のような晶獣サン・ルブトー2体と偽命体6体を差し向けてくる。
「時間を稼げ。今は素材を連れていくことが先決だ」
 イレギュラーズとしては無論それを見過ごすわけにはいかない。
 幻想種達を救出する為、そして、吸血鬼達を倒して転移陣を確保する為、メンバー達は戦闘態勢をとるのである。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 <カマルへの道程>のシナリオをお届けします。
 転移陣の奪取を願います。
 どうやら、すでに拉致されていた幻想種の姿も……。

●概要
 舞台は古宮カーマルーマ。
 半分、砂に埋もれたその古代遺跡の地下へと向かいます。
 今回抑える転移陣は砂と遺跡の遺跡の壁に包まれた一室に存在します。
 幻想種を連れ去ろうとしていた吸血鬼の一隊と遭遇しますので、この掃討、合わせて幻想種の保護を願います。

●敵:吸血鬼一隊
○吸血鬼(ヴァンピーア):クラッド
 月の王国に棲まう『偉大なる純血種(オルドヌング)』により『烙印』を得た者達の総称。
 流れる血は花弁に、涙は結晶になるといいます。
 下記の晶獣、偽命体を率い、自らも振り払った両腕から真空波を放ち、鋭い爪を刃のごとく振るい、強靭な腕を槍のごとく突き出してきます。
 また、強い吸血衝動を有し、噛みついてくることもあります。

〇晶獣(キレスファルゥ):サン・ルブトー×2体
 ラサに多く生息する砂狼が晶獣に変貌した存在です。
 群れをなすことが多いですが、吸血鬼に飼いならされた個体のようです。
 血のようなクリスタルに侵食されたオオカミは、皆正気を失っており、非常に素早く、手数を使って牙や爪による攻撃を仕掛けてきます。

○偽命体(ムーンチャイルド)×6体
 アルベドやキトリニタスなどを思わせる非常に短命な人造生命体。耳など、幻想種を思わせる特徴も……。
 吸血鬼化して個体が3体。鋭い爪と牙で直接襲い掛かってきます。
 他3体は吸血鬼に覚醒しておらず、弓を操って攻撃してきます。

●NPC
○幻想種×3名
 ここまで連れ去られてきた幻想種達。いずれも成人済み。男性1名、女性2名。いずれも戦闘能力は持っていません。
 深緑の件で家に戻れなくなり、一時的にラサに退避してせいかつしていたところを月の王国の手勢に狙われたようです。

●特殊判定『烙印』
 当シナリオでは肉体に影響を及ぼす状態異常『烙印』が付与される場合があります。
 予めご了承の上、参加するようにお願いいたします。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <カマルへの道程>王国に通じる陣完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月26日 22時10分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)
白銀の戦乙女
ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽
零・K・メルヴィル(p3p000277)
つばさ
ロウラン・アトゥイ・イコロ(p3p009153)
ニル(p3p009185)
願い紡ぎ
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
月夜の魔法使い
猪市 きゐこ(p3p010262)
炎熱百計
トール=アシェンプテル(p3p010816)
つれないシンデレラ

リプレイ


 イレギュラーズ一行が向かうのは、古宮カーマルーネ。
 メンバー達はその内部へと突入し、しばし探索すると、地面に描かれた転移陣を発見する。
 ロウラン・アトゥイ・イコロ(p3p009153)はそれを少し眺めて。
「……高度な魔術ですし敷いたというよりはたまたま見つかったのを整備した感じでしょうか」
「転移陣も気になるわね♪ 解析したくて血が騒ぐって奴だわ♪」
 一応、吸血鬼の身の上だと主張する『炎熱百計』猪市 きゐこ(p3p010262)はオンドヌングの能力、烙印といったものにも興味を示し、好奇心は止められなさそうだ。
「色々気になる所だが……、残念ながら幻想種の奴らを連れて帰させるわけには行かねぇよな」
 仲間と共に探索する『恋揺れる天華』零・K・メルヴィル(p3p000277)はとある一隊を発見した。
 若い男性を思わせる吸血鬼が従える砂狼を思わせる晶獣2体と、人造生命体である偽命体6体が、震えている成人幻想種3名を引き連れている。
「……吸血鬼と幻想種の裏が取れましたね」
 幻想種と思しき特徴を備える偽命体の傷ましい姿に、ロウランは目を伏せてしまう。
「……初めましてだな。俺の名は零、零・K・メルヴィル……」
 そこに、零は戦闘形態……ごついバイクと化した屋台を割り込ませてから名乗る。
「おっと、このタイミングでイレギュラーズに出会うとはね」
 敵は丁度、転移陣を使おうとしていたところだったらしく、軽い口調の吸血鬼が牙を見せながら微笑む。
「僕はクラッド。少し待ってもらえるかな?」
「……お急ぎの所悪いが……、そのまま見逃すつもりはない」
 自ら名乗った吸血鬼が取り込み中だとアピールしても、零は構わず動きを止めようとする。
 これには、敵も煩わしさを感じたらしく。
「時間を稼げ。今は素材を連れていくことが先決だ」
 配下に転移陣へと幻想種を載せることを優先させようとするクラッドだが、メンバー達が次々と詰め寄る。
「素材と口走りましたね! なにか知ってるのでしょう」
「素材……? このひとたちのこと? つれていってどうするんですか?」
 すかさず声を上げたロウランに続き、『あたたかな声』ニル(p3p009185)が抱いた疑問をそのまま敵へとぶつける。
「月の王国へと連れていくのさ。素材を求める人がいるんだ」
「それはいったいなんなのですか? ニルはわからないのです」
「深緑に戻れないでいる幻想種を狙うとは卑怯ですね」
 首を小さく横に振るニルの横から、幻想種ばかりが狙われる理由について気にかけていた『慟哭中和』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)がクラッドを詰問する。
 ただ、クラッドも問いかけには全て答える必要はないとばかりににやけて返すのみ。
 あまり期待はしていなかったジョシュアだ。やはりかと首を振っていた。
「あまりいいことではありませんが、まだ連れ去られる前だったのは不幸中の幸いですね」
 現地点で遭遇できたのは僥倖と、『白銀の戦乙女』シフォリィ・シリア・アルテロンド(p3p000174)は判断する。
「ニルがわかるのは幻想種のひとたちを、わたせないってこと。ここで止めなくちゃいけないってことです」
 ……かなしいのはいやだから。
 決意を漲らせ、ニルは保護結界をこの部屋へと展開する。
「深緑封鎖が解けて交易が再開して、やっと波が戻ってきたって時に好き勝手やってくれる」
 『天穿つ』ラダ・ジグリ(p3p000271)も、ザントマンや奴隷市など、ラサに残る悪感情に辟易していたところに今回の事態と憤りを隠さない。
「報いを受けてもらうぞ」
 今チームで唯一、烙印を受けてしまっているラダだ。
 碌な目に合っていないらしく、相当吸血鬼等に腹を立てているのだ。
 ジョシュアも知り合いが烙印を刻まれているらしく、彼らを治す為の手段を得る為にも、王国へと足掛かりが欲しいところ。
「是が非でも、転移陣を奪取致しましょう」
「これ以上ラサの混乱、『烙印』の被害を増やさない為にも転移陣は我々が抑えます!」
 『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)も力強く宣戦布告し、輝剣を抜く。
「もう少しだというのに、面倒だね……!」 
「悪いですけど、貴方たちの思い通りになるとは思わないでくださいね!」
 多少、苛立ちを見せるクラッドに対し、シフォリィは毅然とした態度で仲間と共に吸血鬼一隊の討伐、並びに幻想種の保護へと当たるのである。


 戦場となる部屋には以前、様々なモノが置かれていたのだろうか。
 今は砂に浸食され、中央の転移陣以外には見るものもない場所だ。
 吸血鬼一隊も空間を生かして立ち回ろうとしてくるのがメンバー達にも見て取れた。
(晶獣達が厄介ですね。ただ……)
 事前情報からシフォリィはそう感じてはいたが、烙印を使う以外は火力に振った攻撃なのはありがたいとも感じて。
 火力が怖い相手なら、力を削ぐまでのこと。
 凍てつくような暗い波動を纏ったシフォリィは手数を活かして敵陣へと地上で巻き起こるような熱砂の嵐を浴びせかける。
「とにかく、数を減らすことに注力できます」
 怯む相手を、シフォリィは確実に倒していくのみだ。
 他メンバー達もまたそれぞれの役割につく。
 思考の一部を自動演算化して戦闘能力を高めていたジョシュアは、感覚を研ぎ澄まして戦況を注視する。
 敵に転移陣を起動させる様子は見られない。
 最初は足止めして逃がすつもりだったようだが、イレギュラーズを相手にしながらでは難しいと判断したのだろう。
(手早く数を減らして、幻想種を保護しませんと)
 保護に当たって障害になる可能性が高そうなのは、弓を持つ偽命体3体。
 ただ、他の敵が前に出たこともあり、空間に溶け込んだジョシュアは一旦素早い晶獣の側面より凶刃を浴びせかけていく。
「ムーンチャイルド……! 誰かのエゴで戦い争う為に生み出された命など、あってはならないと言うのに!」
 同じタイミング、盾役となるトールが内より出でし炎を大きく燃え上がらせ、前に出る晶獣や偽命体を引き付けようとする。
 アオオオオオオオォォ!!
 狂ったように嘶く晶獣サン・ルブトーは涎を垂らして牙や爪を振るってくる。
 そして、こちらの偽命体3体は弓持ちと違い、吸血鬼としての特徴を有していた。
 グガアアアアアッ!!
 前に出てきたそれらはクラッドと同じく鋭い爪と牙をこちらのメンバーへと突き立てようとしてくるが、物理攻撃主体でクラッドほどその力を使いこなせず、勢いのままに突っ込んでくるような印象を受ける。
 敵の出方を察したトールはルーンシールドを展開しつつ、じりじりと移動しながら後方に位置取る弓持ちや囚われの幻想種から引き離す。
「慈悲は無用だ。すべて砕く」
 幻想種を連れて行かせるわけにはいかぬと、戦いに備えて調子を高めていたラダも大型ライフルを連射させる。
 ただの狙撃と思うなかれ、ラダのそれは砂漠の砂嵐を思わせる製圧力があり、敵を満足に進撃させない。
(人造生命というわりには幻想種に近いその見た目。彼らの血か何かを使っているのだろうか?)
 弾幕を展開しながら、ラダもまた偽命体の存在について思う。
 確信とまでは至らずとも、ラダもまた何かしらの因果関係があるのだろうと察していたようだ。
「知りたいかい? ふふふ……」
 あれこれと考えるメンバーの様子に、クラッドは不敵に笑う。
 ただ、その笑いも長くは続かない。
「付き合って貰うぜ、クラッド……!」
 吸血鬼の気を強く引く零は刀剣を投影し、一層トーンを上げて。
「何より、愛する彼女と同じ幻想種を連れ去らせるわけには行かねぇからなぁッ!!」
「なっ……!?」
 さながらレールガンの如く放たれた一射に、クラッドも驚きを隠せない。
 零の勢いに呑まれ、雷撃に穿たれた吸血鬼は傷口より何かの花びらを舞わせる。それは、桃と桜を合わせたようにも思えた。
(幻想種のみなさま、あんなに怖がって)
 ぎゅっと杖を握りしめて戦況を見ていたニルは幻想種達の位置を確認しつつ、敵の数を減らすべく詠唱する。
 混沌に漂う根源の力。ニルはそれを泥と化して敵へと浴びせかけ、動きを鈍らせる。
 戦場が徐々にばらける中で、ニルは初撃だけはクラッドもしっかり巻き込んでいたようだ。
 ロウランもまた配下を纏めて倒すよう動くが、前提としてクラッド確保も視野に入れていた。
「偽命体のキメラ感もそうですが、攫った幻想種をどこに、どうしたのか教えていただけますか?」
「生憎、今忙しくてね」
 神気閃光を発するロウランはクラッドへと問いかけるが、相手はイレギュラーズのせいで忙しいと言わんばかり。
「素材と言ったからにはご飯というわけでもないと見ました」
 それでもロウランは言葉を投げかけながら、さらに敵陣に光を瞬かせる。
 メンバーが次々攻撃を仕掛ける中、きゐこも仲間を巻き込まぬよう、純粋なる火力の高い一撃を叩き込む。
 鵺鳴く空の白夜墜し。
 魔力で発生させた雷を圧縮させて超巨大な光球とし、頭上から吸血鬼一隊へと叩き込み、圧殺しようとする。
 お気に入りの一撃が抜群に効果あれば、きゐこも気をよくして次なる魔術をそらんじる。
 そうして、徐々に幻想種の近くにいた敵が減ったことで、ジョシュアが一気に弓持ちの偽命体へと迫る。
 ジョシュアは双刀で切りかかり、弓を射る暇を与えず告死の一撃を繰り出していった。


 吸血鬼の力はまだ底知れぬ部分もあるが、そこは幾多の勢力と戦い、勝利を収めてきたローレットイレギュラーズ。
 鋭い爪にも耐え、牙を突き立てられても、前線のトールは盾役を全うしようと立ちはだかり続ける。
 傷は決して浅くないが、ニルが慈愛の息吹を吹き付けてトールを支える。
「まもるためには、立ち続けなくちゃですもの」
 トールやニルが前線を保つ間に、連続攻撃を繰り出すシフォリィが桜花を思わせる無数の炎片を舞わせつつ熱砂の嵐に巻き込んだ偽命体を倒したのを皮切りに、メンバー達は敵の数を減らしていく。
 集中してラダがファニングショットを叩き込んで牙を剥いていた偽命体を仕留め、ロウランが発する閃光がまた1体偽命体の活動を止めてしまう。
 きゐこも思った以上に動きの相手と見て、長い詠唱の後に頭上で刹那展開する日食。太陽が姿を消すと同時に、偽命体が急に意識を失い、ぱたりと伏していく。
 そこで、徐にシフォリィがクラッドに向け夜葬儀鳳花を浴びせかけてから、魔を封滅する破邪の結界で包む。
 そのまま動き出すシフォリィらが目的を果たしやすいように、零は攻撃を続けながらもクラッドへと呼びかける。
「博士がやってるんだっけか、反転を直すっての」
「何の話だい?」
 余裕ぶって返すクラッドだが、語気がやや荒い。
 配下が倒されていること。力を得たのに抗うイレギュラーズを御せずにいることに苛立っていたのだろう。
「なんで吸血鬼にする必要がいるのか、お前は知ってんのか?」
「それは、王国民を増やす為だろう」
 こんなにも素晴らしい力だと主張するクラッドだが、零は構うことなく投影した刀剣で飛び掛かろうとしてきた晶獣、そして弓を構えた偽命体を纏めて貫き、無力化していた。
 また、敵が減ったこともあり、トールもクラッドを抑えに向かっていて。
「ヴァンピーア、"烙印"を押された者の行く末ですか……! しかし、哀れみはあれど慈悲はありません!」
 幻想種や後衛陣には近づけさせぬと、トールはしっかりとクラッドをブロック。
 ギリギリとクラッドが歯を鳴らす間、きゐこの支援を受けて一層感覚を研ぎ澄ますジョシュアの合図で、シフォリィ、ラダが幻想種3名の救出に当たる。
 一旦、待機してから一気に前に出るラダに合わせ、ジョシュアも前に出る。
 残る晶獣、偽命体を飛び越えたラダは怯える幻想種に近づき、落ち着かせる。
(暴れる心配もなく運べるって点だけは不幸中の幸いだったな)
 ただ、イレギュラーズの活躍は彼らにとっても知るところ。駆けつけてくれた地点で、少なからず助けてくれることは期待していたことだろう。
 そちらへと矢じりを向ける偽命体をニルは見逃さない。
「幻想種のみなさまを、これ以上つれてなんか、いかせないのです!」
 四象の力を顕現させたニルが最後の偽命体を倒す傍で、ジョシュアが保護した幻想種を連れて後方へと下がっていく。
 アオオオオオ!!
 逃さず追おうとした晶獣だが、クラッドを抑えるトールがそちらへと対城技をその体深くへと打ち込み、完全に動きを止めた。
 クラッドも機を逃さず。瞳から鋭く光を発し、素早くトールへと食らいつく。
「これで多少は溜飲が下がりそうだよ」
 ニルが零距離から極撃を叩き込んで離れさせるが、もう遅い。
 トールの体に刻まれる烙印。徐々に自分と同類になるとそいつは笑う余裕さえ見せ始める。
「血を好むならば競い合ってみますか! ……行け、猟犬!」
 相手が吸血鬼らしさを見せるならばと、ロウランが詠唱して編んだ猟犬をけしかけると、執拗にクラッドの体に食らいつく。
 きゐこも思った以上にこちらの攻撃に対処するクラッドに効果的な一撃を与えるべく破式魔砲を撃ち込んでいた。
「血の味ってどんなものか気になるけれどね!」
「なら、同胞になるといいよ……!」
「あなたのような吸血鬼に飲ませる物なんて毒だけです」
 再び牙をむく敵に、幻想種を守るジョシュアが拒絶し、毒粉を飛ばして動きを制しようとする。
 さらにシフォリィが再度破邪の結界で包み込めば、クラッドの表情が変わる。
 じたばたともがく相手をトールが押さえつけ、反撃の痛恨打を撃ち込めば、クラッドが大きく目を見開いて吐血する。
 その血はすぐに花弁へと変わるが、地面まで舞い散る間にゼロとラダが仕掛けて。
「それを見過ごせるほど俺は甘かねぇぜ、クラッドォォッ!」
 オラクルで相手の動きを察した零は展開した残像と合わせ、手数で切りかかって傷を増やす。
「チッ」
 これではまずいと感じたクラッドはラダを迎え撃って噛みつくが、彼女は意にも介さない。
「――ああ、別に咬まれても構わんよ。とうに烙印はついているからな」
 代金替わりに、ラダは確殺自負の殺人剣……三光梅舟を浴びせれば、クラッドの目から光が消える。
「ガ……ァァ……」
 倒れたクラッドへとラダが近づいて。
「さて、お前はここで死ぬことを選ぶか?」
 彼女は敵の出方を見ようと問いかけるのだが、クラッドはラダの攻撃によって気を失っていたらしい。
 メンバー達もこの場は相手が目覚めるのを待つことにしたのだった。


 吸血鬼一隊を掃討し、イレギュラーズ一行は事後処理を始める。
「検証の時間だわ!」
 きゐこはここぞと目を光らせ、気を失ったクラッドから情報を引き出すべく、一喝し、眼光を煌めかすが、相手は目を覚まさない。
「目覚めたら徹底的に拷問するわね♪」
 試したいことは山積み。相手の腹を探りながら言葉巧みに情報が引き出せればときゐこはその時が楽しみな様子。
 生き生きとした顔でそう語る彼女は本気だ。
「まあ、今じゃないと調べられないこともあるわ!」
 転移陣を動かすことは難しく、今この場で調査する必要がある。
 きゐこは持前の知識と合わせ、しっかりと見定めて分析しつつその仕組みを解析しようとする。
 ジョシュアが周囲に隠し部屋や罠といったものの存在がないことを確認する間、きゐこは少しずつ解析を進めてその転移先を突き止める。
「……発動したわ!」
 仕組みを完全に把握とまではいかなかったものの、触れていたきゐこは転移陣から放たれた光に包まれて空間を飛び越える。
 メンバー達も後を追うと、転移した先は広大な砂漠が広がっていた。
 そして、その先に見える大きな宮殿こそ、月の王国に違いないだろう。
 
 メンバー達は転移陣の調査と並行して、幻想種達の状態を確認する。
「もう大丈夫です」
 ジョシュアは吸血鬼らに脅されていた幻想種達を落ち着かせる。
 自身よりも年上の人々だが、何せ素材と称され、同胞と思しき人が人造生命体とされていることを知れば、無理もないだろう。
「偽命体……、埋葬してあげたり、できないでしょうか?」
 ニルはこの場で倒れた人造生命体らを手厚く葬りたいと主張し、仲間達に協力を仰ぐ。
 屋内で一つずつ、名前もわからぬ墓標を築いていくメンバー達。
 ふと、晶獣の死骸が目に入ったロウランが思う。
「色々とおかしい部分はある。晶獣が居て偽命体が必要か?」
 長く準備していたのならば、幻想種から晶獣を生み出すことはできるはずではと考える。
 だが、それでも偽命体をわざわざ同行させている理由とは。
「まさかとは思いますが、紅血晶が効かないか、晶獣は変化後長く保たない……?」
 ロウランの推察は彼女の意見でしかない。
 それを裏付けるべく、意識を失ったままのクラッドから情報を引き出したいと、一行はそいつを縛り付けて古宮カーマルーネから引き上げることにしたのだった。

成否

成功

MVP

ラダ・ジグリ(p3p000271)
灼けつく太陽

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPはクラッドを倒した貴女へ。
 今回はご参加、ありがとうございました!

※トール=アシェンプテル(p3p010816)さんは『烙印』状態となりました。(ステータスシートの反映には別途行われます)
※特殊判定『烙印』
 時間経過によって何らかの状態変化に移行する事が見込まれるキャラクター状態です。
 現時点で判明しているのは、
 ・傷口から溢れる血は花弁に変化している
 ・涙は水晶に変化する
 ・吸血衝動を有する
 ・身体のどこかに薔薇などの花の烙印が浮かび上がる。
 またこの状態は徐々に顕現または強くなる事が推測されています。

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