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シナリオ詳細

<蠢く蠍>棘毒デスペラード

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「新生・砂蠍、ねえ」
 もともと細い目をさらに細めて男はつぶやく。
 『砂蠍』キング・スコルピオは、その毒を幻想に齎した。幻想で蠢くアウトロウたちにとってその存在は光輝く星。そんな彼に泡沫の悪党どもが集結するのは自明の理だ。
 瞬く間に拡大した彼ら『新生・砂蠍』は直接的に貴族を襲うのではなく、名もない村から、小さな街から略奪を始めた。貴族がそれに気づき、対応するころにはその辺境の地はすでに焼け野原だ。
 そのスピーディーさに貴族も重い腰を上げることになる。
 彼らがただの悪党であればよかった。しかしそうではなかった。彼らはスコルピオを核として、非ピラミッド型の組織形態を採用し、幹部を定め、その指揮官の采配で動けるようにした『盗賊団の上に盗賊団がある状態』を保っている。
 たとえ一つの盗賊団を壊滅させようと、スコルピオの所在は杳として知れない。さもありなん。そも、彼らはスコルピアの居場所は知らないのだ。
 蠍の子を散らせ、本人の場所は周到に隠し幻想の盗賊をとりこみ、盗賊王の軍隊としていつの間にか成立させている。
「ま、なんとも盗賊王サマは恐ろしい方でさぁ」
 地方領主の館の屋根に、長い東洋の刀を携え腰をかけた男は、館の中で起こっている惨劇をほくそ笑む。
 悲鳴と、怒号と、そして建物が燃え木がはぜる音。
 まるで上等のオーケストラのようだ。
 キングは跡形もなく、容赦もなく、徹底的に蹂躙せよと言った。
 形態が変わろうと、キングは変わらない。愉悦と暴力の王。それがキングスコルピオだ。
「幻想の貴族は、ラサとは違って、愚鈍でやりやすいでさぁ」
 


「というわけで、きんぐすこるぴよのとうぞくがどっかーんって、地方の領主をおそっているのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)は今日も元気だ。羽を揺らしてオーバーアクションで君たちに話しかける。
「このボク、ユリーカの人には言えない特殊なじょうほうもう(どや顔)で砂蠍のやろーが次に襲うと思われる場所が判明したのです。ボク、えらいのです」
 ユリーカが言うには、その領主はお人好しで領地の民からも愛されているらしい。
 砂蠍はまずはその領主を領民の前で縊り殺すことにより、領民たちの抵抗力を削りその地を落とすつもりらしい。
 故に領主を護ってほしいというのが今回の依頼である。
「レオンが言ってました。前のサーカスでは火事場泥棒っていうけち臭いことしていたのに、ここにきて堂々と姿を見せてきたことは何かがあるって。
 あ、ボクもそれレオンが言う前に何かある(どや顔)っておもっていましたです。
 ラサの赤犬もごめんなさいしてきたみたいで、ローレットさいつよが証明されたようなものなのです。むふん。
 とにかく、『くれぐれも油断はするなよ。あの蠍はディルクが討ち漏らしたような野郎だぜ。
 きな臭い予感もするしな、オマエ達も気をつけろ』ってレオンがいっていたのです」
 ユリーカは声色を変えて片手を顎にあて、レオンの真似をして言うが、控えめに言って似ていない。
「で、その結構日はいつなんだ?」
 君たちは尋ねる。
「今日の夕刻なのです!!!!」
 目をきらめかせてどや顔のユリーカから、詳細のかかれたメモをひったくると君たちは現場に向かった。

GMコメント

 お久しぶりで鉄鍋ぬるぬるです。
 たぶんそんな感じの名前だったと思います。

 きんぐすこるぴおの影です。
 皆様が到着するのは盗賊たちが領主の館を襲撃し、飛び込んだ直後あたりと思ってください。

 成功条件は領主とその家族と使用人半数以上の無事です。
 
 ロケーション
 とある地方領主の館です。あなた方がつく頃にはどれだけ急いでも夕刻になっていて、砂蠍はすでに行動を開始しています。
 それなりに大きな館で2階建ての奥の部屋に領主はいます。
 入口ロビーは吹き抜けになっていて大きなシャンデリアがあります。そのロビーを囲むように二階へ階段があります。
 2階の部屋数は6。一番奥の部屋で領主は執務中。領主の妻はその手前の部屋で子供と時間を過ごしています。
 裏口は燃やされていて、館はパニックです。
 
 現在は使用人が15人程度いますが、盗賊たちに殺されています。特になにもしなければ3ターンに2人くらいずつ殺されます。
 1階のホールに5人。夕刻の準備をして、厨房にいるのが5人、ベッドメイクや掃除などをしているメイドが2階に5人程度。
 盗賊たちは蹂躙を命じられているので全員殺すつもりです。見かけたら殺して回る感じです。


 敵さん
 盗賊が15人程度。練度は皆様の平均より高め。
 ロビーから突っ込んでいくのが10人程度。裏口を燃やしているのが5人程度です。
 とにかく破壊と使用人の殺害をしようとしています。
 ロビーから各場所にバラバラに分かれて行動しています。
 彼らは領主の部屋の場所は知っています。
 攻撃手段は斧とか剣とか魔法とか。バランスよく整っています。
 だいたい3人程度でチームを組んで行動しています。連携もします。伊勢海老好きです。

 『屍』ジョンドウ
 東洋の刀を携えた剣豪です。強いです。今回の指揮官です。飄々としたお兄さんです。ラサのやつらまじだいきらい!!!!!!
 やばくなればさくっと撤退することを指示します。
 <Liar Break>痴愚神礼讃バーレスク、狂騒スコルピオに登場してますが気になったら見てください。読まなくても問題ないです。

 彼は今、領主の部屋の直上の屋根の上に座って成り行きをみています。
 撤退を指示するときは窓をけ破って領主を殺してさくっとバイバイしちゃいます。
 
 どこに戦力を割いて、どう采配するかがきもになってくるとおもいます。
 ある程度は切り捨てることも必要かもしれません。
 よろしくおねがいします。

  • <蠢く蠍>棘毒デスペラード完了
  • GM名鉄瓶ぬめぬめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月21日 21時55分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

銀城 黒羽(p3p000505)
ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)
屍の死霊魔術師
ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)
黒武護
アルテミア・フィルティス(p3p001981)
銀青の戦乙女
鬼桜 雪之丞(p3p002312)
白秘夜叉
ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201)
極夜
ノエル(p3p006243)
昏き森の

リプレイ


「まったく! ユリーカ、今日の今日ならもっと早くいいなさい!」
 あとでお仕置きなんだから! と愚痴りながらも、『青き戦士』アルテミア・フィルティス(p3p001981) は走る。
「だな! こんな切羽詰まった状況で! そのお仕置きには俺も付き合う」
 『『幻狼』灰色狼』ジェイク・太刀川(p3p001103)はアルテミアの妙案を肯定し、俺が行くしかねえじゃねえか! と闘志を燃やした。
(人を守るのは苦手だというのに、……急ぎであるなら仕方がない)
 『屍の死霊魔術師』ジーク・N・ナヴラス(p3p000582)も骨の体をカタカタ鳴らしながら走った。途中この領地の民が悲鳴を上げていたのをきいた気がするが、まあそれはそれ。なるようになるだろう。それよりはこちらだ。
(こういう襲撃を見ると、僕が襲われたときのことを思い出してしまう)
 『髭の人』ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619) が恰幅のいい腹を揺らしながら最後尾を走る。
(……だから、助けて見せる。何もできなかったあのころとは違うんだ。僕はイレギュラーだ。きっと。きっとできるはずだから)
(蠍どもが本格的に動き出したってわけか。クソッタレめが。罪のない命を蹂躙しやがって)
 とはいうものの『暇人』銀城 黒羽(p3p000505) はその蠍たちも死んでほしくはなかった。生きて今までの罪を償ってほしい。それが無理だとはわかっている。それでも人のもつ輝きに掛けてみたかったのだ。
「お前らの思い通りにはさせねえ」
 走る彼らの前に黒い煙をあげる屋敷が見えた。彼らはアイコンタクトすると、走る速度を上げる。
 同時に黒羽とジークが各々の感情探査とギフトを巡らせて探査をかける。
 入口から広がっていく殺意の感情と魂の色。
 二人は仲間にその方向を伝え、屋敷の中に飛び込む。黒羽はその瞬間屋根の上にいるジョンドウと目があった気がした。彼の感情に殺意はない。そして愉悦の感情さえも「感知することができなかった」。
 
 玄関からロビーに飛び込めば悲鳴と怒号。
 突然の出火に屋敷内は騒然としている、そこを盗賊に襲撃されたのだ。さもありなん。
 ロビーの階段を上る盗賊が見える。イレギュラースは手分けをして、二階とホールに分かれて行動することにする。
 かわいそうではあるが、厨房の使用人までは手が回らない。非常な選択だ。しかしできることとできないことはどうしても発生する。
 厨房にいる使用人の断末魔の悲鳴が聞こえた。
 ああ、いい戦闘音楽だ。と目を細めた『極夜』ペッカート・D・パッツィーア(p3p005201) は悪魔らしい感覚でその悲鳴を飲み込みながらロビーに落ちてガラクタとなった元は美しかっただろうシャンデリアを飛び越えホールに駆け込んだ。
「にしてもよ。指揮官が高みの見物決め込んでんのか? っか~~、某が出ると刹那に終わるからつまらぬでござるってか! 舐めプかよ! てかこの屋敷用心棒はいねえのかよ! セキュリティ足りませんよォ~~」
「その用心棒が拙たちなのでしょう」
 黒い刀を構えた『朱鬼』鬼桜 雪之丞(p3p002312) はダン、とホールに踏み込むとホールで使用人を端に追い込んで蹂躙しようと舌なめずりする盗賊たちに自らの名前を高らかに叫び、注意を引く。
「なぁるほどなぁるほど。俺たちが用心棒でしたァ!! 用心棒がきましたよ!
 死にたくなけりゃ、その隠れてるヤツ。そっとこっちに逃げてきな。こっちのみずはあまいぜぇ」
 なんとも魅力的な悪魔の誘いをかけるペッカーに、『昏き森の』ノエル(p3p006243) が半眼になりつつもおびえる使用人を救助せんがために向かう。
「私たちはローレットのものです。安心してください。助けに来ました」
 同じくジェイクも攻勢の構えをとりながら機械剣を構え、
「ここは戦場と化した!死にたくなきゃ後ろに下がれ!」
 と、わざと誇張して脅すように使用人に向かって叫ぶ。
 使用人は慌てて転がるように彼らの後ろに逃げ込んだ。
 ギィン!
「これ以上はあなたたちの好きにはさせないわ! 覚悟なさい!」
 アルテミアは低姿勢のまま走り、己が相棒『蒼剣』呼ばれた冒険者の持っていた剣のレプリカでもって、座り込んだ使用人に振り下ろされようとしていた斧に割り込む。
「んだぁ? この女」
 盗賊が鼻白んだ瞬間、下段から切り上げるは絢爛舞刀。妖精がフェアリーリングの上で舞うようなその軌跡は輝くように美しい。
「あの狩人のもとへ」
 短く告げられた言葉の言外にはここにいると舞(たたかい)の邪魔。
「は、はい」
 ギリギリ腰を抜かしかけていた使用人はノエルのもとに走り寄る。
「冒険者さん、妻は、妻は大丈夫ですか? 今厨房で食事の準備を……!」
 厨房。そこは彼らが切り捨てた場所だ。ここにいる盗賊は4人。上の階に上っていったのは3人くらい。だとしたら……厨房には3人くらいの盗賊が飛び込んで行って、誰も助けには向かっていない。
 厨房にいる使用人は蹂躙されているその最中であろう。それが、選択だ。
 ノエルには。ノエルたちには悔しいがすべてを救いきる力はない。そんなことはわかっている。わかっているのだ。せめてここで派手に暴れたらとも思うが無駄なあがきだろう。
 その歯がゆさにノエルは手に持っていた矢を握れば羽根飾りがくしゃりと潰れた。
「ねえ! 大丈夫ですよね? 助けてくれるんですよね!」
 その表情に使用人の男は必至の形相でノエルにつかみかかる。
 その言葉にアルテミアの剣筋に一瞬だけ精細さが欠けた。ホールの入り口の向こうで女の悲鳴が聞こえる。
 蒼騎士の少女は強く歯噛みして耐える。
 頭で理解しているのはアルテミアも同じだ。少女たちは己の未熟さが悔しかった。
「今悲鳴が!! ねえ! 冒険者さん! 冒険者さん」
「厨房を見捨てました。拙どもにはすべてを守ることはできません。
 恨みたければ存分にどうぞ。
 力が及ばないことを罵るのであればお好きに」
 雪の鬼が剣戟の音を奏でながらつぶやく。力が及ばないなど現実問題としてよくある話だ。それを罵ることは誰にだってできる。できるからこそ、使用人は口をつぐんだ。
「ああ、ああ、雪之丞君は冷たいねえ。まるで雪そのものだ!」
 隣では楽しそうに、マリオネットの糸で盗賊の一人をがんじがらめにしているペッカーが囀る。
「でも、そういうのは手が震えないように言うほうがかっこいいぜぇ」
 小さな声でペッカーが指摘する。
「……!」 
 雪之丞は鈍感で義理人情は薄いと自分でも思っている。それでも恋愛小説が好きな彼女はついつい、恋愛小説でみた夫婦、もしくは恋人同士が死に別れてしまうものを思い出してしまったのだ。その感情の揺らぎは雪之丞の心にも少なからず動きを齎した。ゆえに少しだけ、ほんの少しだけ手が震えたのだ。
「おい、火を燃やしてたやつがこっちにくる! あと2分もすれば来るぞ!」
 ジェイクがエネミーサーチで感知して叫ぶ。この12ターンでここにいる4人を倒し切らなくてはならない。そうでなくては、二階にいった彼らと彼らが救助した使用人たちと合流することもかなわない。
 それに厨房を蹂躙しきった盗賊がこちらに移動してくるのも時間の問題だ。
 面倒だと思う。ワイズシュートはホール内では使いにくい。バウンティーフィアで連射しながら少しでも早く撃破せねばと攻撃を続けた。
「さぁてあっちもこっちもてんやわんやだ! 外は火事、お前らみんなこんがり焼けるまで一生踊ってろ! しってるか? 鉄板の上で踊るシンデレラの母親と姉のダンスは最高にファンキーなんだぜ!」
 とまれ、なんとか5人の使用人たちの身柄は保護した。あとは守りながら倒していくだけだ。
 壁を背に。自分の背には使用人たちを保護しながら戦いは続く。

 一方二階に向かった、ムスティスラーフと黒羽とジークウィズ練達上位式メイド。
 式神メイドは大声で『火災発生。迅速に避難してください』と叫んでいる。
 彼らは盗賊の撃破は二の次で使用人の避難を優先する。
 盗賊たちはそれをはいどうぞ、とみているほどお人よしでもない。
 なし崩しではあるが、3人の盗賊は彼ら3人との戦闘を優先したようだ。
 避難警告に部屋の中にいたメイドは外に出るが、廊下で戦闘している以上彼女らが移動することは叶わない。
 夫人と子供が部屋のドアを開け様子を見ようとする。
「ああ、でてこないで……いや、盗賊は僕たちが抑えているから、お父さんの部屋に……」
「だめだよ、だめだ。あの魂は真っ黒さ。何を考えているかわからない。いまも領主の部屋の上にいるよ、だから、気づかれないうちに領主殿を奥方の部屋に飛び込ませたほうがいいよ」
 黒羽は焦れる。このままでは守れるものも守れなくなってしまう。以前感情探査で探れる殺意をもつものは、愉悦を持つものは盗賊たちである。感情の読みを外してしまったことに歯噛みする。恐ろしい相手だ。あいつは、ジョンドウは殺意もなく、愉悦すらなく人を殺せるのだ。
 幸いジークのギフトにはひときわ真っ黒な魂が補足されている。ジークは戦いながらもその気配を察知し続けれなければならない。式神を行使しながら察知つづけながら戦うのはいかんせんオーバーワークだ。戦闘に精細さが欠けるのは否めない。
 式神メイドはけたたましく叫び続ける。ジークはメイドを黙らせ、せめてと屋敷のメイドには領主を部屋から避難させるように告げ、式神メイドには防衛しながら領主を奥方の部屋に移動させることを指示する。
 式神メイドは戦闘はできない。しかし一撃程度であればその矛先を変えることは可能だろう。
 とまれ、彼らは戦闘を続ける。余波が避難するメイドたちに悲鳴をあげさせる。
「あせらなくていいからね」
 優し気な声でムスティスラーフが伝えた言葉は通じていたのだろうか?
 むっち砲を使うか。いやこの場所では有効ではあるが今の状況ではうっかりメイドも巻き込みかねない。彼は告死でもって、一閃する。メンバーの中でも破格の火力を誇るその一撃は盗賊に大きくダメージを与えるが倒すまでには至らない。
 ジークはその機転でもって大きくダメージを与えたその盗賊に追い打ちのアースハンマーをふるうが、クリーンヒットには至らない。
 黒羽は目の前の盗賊の攻撃をシャドウステップでいなしている。もし、彼が攻撃でもってとどめを刺すことができていたのであれば、次のターンには一人がフリーになり避難を手伝うことができただろう。
 しかし黒羽はそれができるような男ではない。彼の信条は「守り」なのだ。それを責めることは誰にもできない。それもまた戦ううえで決して間違っていることではないのだから。
 ゆえに、その盗賊は殺される前にと、非難するためにでてきた領主を狙い遠距離攻撃を放つ。
「旦那様っ!!」
 メイドが一人領主を庇い、そのはかなき命を落とした。領主である彼は賢く、領民たちに愛されていた。それはもちろん一緒に暮らすメイドも例外ではない。式神がいたとは言え、いてもたってもいられなかったのだろう。
 その痛ましさに、ムスティスラーフが唇をかみしめ血を流し、その盗賊にとどめを刺した。
「黒羽君、領主をまもってあげて」
 思うことはある。しかしムスティスラーフはやるべきことを忘れない。守れなかったことは悔しい。だからと言ってここで足を止めればもっと守れなくなってしまう。
 黒羽が二人がマークし足止めをしている盗賊の間を通り抜け、メイドたちを避難させ、ドアを内側から閉た。
「オッケー戦いやすくなったね」
 ジークが骨の口元をゆがめる。
「だね。むっち砲にまきこまれないでね。アレゲロ……」
「大丈夫っ! そっちこそ破滅の黒死斑に巻き込まれないでくれよ。とにかく二階の最終防衛ラインがここだね」
 むっち砲の正体を最後まで言わせないようにジークが早口で捲し上げた。

 ホールでは一進一退の戦闘が繰り広げられていた。人的優位はこちらにはあるが、相手はそれなりに手練れ。連携して攻撃は続けてはいるが、一人ずつの使用人を守りながらでは分が悪い。
 なんとか全員を戦闘不能にしたところで厨房の3人が蹂躙を終え、二人がロビーを抜けホールの入り口に来たのだ。
 これで状況は多少ましにはなったとは言え、火をつけた5人は健在である。あと1分もすれば駆けつけてくるだろう。 彼ら5人は目くばせし、一般人を守りながらロビーに抜けることを決断する。ホールにもそろそろ煙の臭いが漂ってきた。煙で充満するのも時間の問題だ。
 そもそもロビーを開放しなくては二階の者が避難することもかなわない。
 人数はこちらのほうが多い。まずはアルテミアと雪之丞、そしてペッカーが入り口の盗賊に向かい隙を作ろうと駆ける。
「悪魔使いひどすぎー!」
 言いながらもマリオネットの糸でペッカーが動きを封じる。
 ノエルも凍結を付与せんとハイロングピアサーの力をまとわせた矢を放った。
 ジェイクはワイズシュートで足止めを成功させ、ノエルと二人で使用人たちを誘導してロビーに向かわせた。
 ガシャンと鋭いガラスの割れる音が屋敷に響く。
 全員がジョンドウが来たと身構える。
 雪之丞はそのまま玄関から飛び出し、火をつけた5人を待ち構え名乗り口上の準備をする。
 厨房の残る一人が階段を駆け上がっていくのが見える。

「はぁー、またローレットでさぁ。あんたらは俺らの邪魔するのにやっきでさぁ」
 飛び込んだ領主の部屋はもぬけの殻。
 中では剣戟の音。戦闘は続いている。いつのまにか部屋を移動させられたのだろう。探すのは面倒だ。
 とはいえまだ蹂躙は十分とは言えない。
 悠々とジョンドウは領主の部屋のドアをあけ廊下に出る。
 あけ放たれた領主の部屋の割れたガラス窓から煙臭い風が吹き込んだ。
「俺の目の前で軽々しく命を奪ってんじゃねぇよ」
 夫人の部屋から飛び出してくるのは黒羽。
「あー、またあんたですかい。あーーあ、うんざりでさぁ」
 言ってジョンドウは抜刀し踏み込み、盗賊たちの戦闘で傷を負っていたムスティスラーフを一撃で切り伏せる。その剣筋はムスティスラーフも超え、貫通しジークと黒羽にもダメージを与え、背中側にある階段手摺すら破壊する。早すぎた。早すぎて庇うことすらできなかった。
「ムスティスラーフ君!」
 膝をつきながらかろうじてパンドラに願い耐えきった、ジークが焦りつつもアースハンマーで迎撃するが、巨大な土くれの拳は刀で切り裂かれ、大したダメージを与えているようには見えなかった。
「領主はそこでさあ。俺は領主を殺したら、あんたらの願い通り全員連れておさらばするつもりだけどどうするでさぁ?」
「そんなことさせるわけないだろう!」
 黒羽がドアの前に立ちふさがるが満身創痍だ。あと一撃で彼は沈むだろう。
「はぁ、面倒くさいでさあ」
 ジョンドウは構え、黒羽と中にいる領主ごと、貫かんと先ほどの超破壊力の剣技を繰り出さんとする。
「させ、ないよ」
 ジョンドウの足首を太い手が握りつぶさんばかりつかむ。ムスティスラーフだ。パンドラに願い立ちあ上がったのだ。それはこれ以上人を殺させないという執念。
 領主を庇って死んだメイドは美しい瞳をしていた。その行動に後悔などなかった。それが分かったから、そのメイドの瞳に恥じないためにも彼はそうせざるを得なかったのだ。
「はあ。ほんとに。
 ほんとに面倒くさいでさぁ!! このまま続けたところでアンタらそうやってゾンビみたいによみがえってくるんだろうさ。わかったわかった。」
 ジョンドウは刀を引く。そして、ムスティスラーフの背中に突き立てた。
「てめえ!」
 黒羽が逸るが、ジョンドウは手で制する。
「おい、てめーら。ここまでやったら十分だ。領主は生きてるがまあ、この屋敷は建て直しでさぁ、帰るぞ!」
 ジョンドウがよく通る声で叫べば盗賊たちは踵を返してあっという間に撤退する。
「ってわけだ、じーさん。あんたの思い通りだ
……ってきいてないでさぁ。じゃあな、ローレット。だがな、蠍の王は俺みたいに親切でもないし、一筋縄ではいかないでさぁ。精々抵抗することでさぁ」
 言って彼も、領主の部屋にもどり割れた窓から飛び降り姿を消した。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

銀城 黒羽(p3p000505)[重傷]
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)[重傷]
黒武護

あとがき

皆様お疲れさまでした。
なんとか辛勝でございます。生き残ったのは領主親子とメイド4人とホールの使用人の5人ですので半数以上で成功です。
ご参加ありがとうございました。

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