PandoraPartyProject

シナリオ詳細

再現性東京202X:白いチョコレートは筋肉に乗せて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●そのマッスルはチョコを差し出す
 春を目前とするものの、まだ朝と晩は冷え込みも続く。
 練達内にある再現性東京もまた、例に漏れず。
 そして、今宵、事件は始まった。

「お嬢さん」
 夜道を歩くOLは、正面から呼び止められて足を止めた。
 前方から歩いてくるのは一人の成人男性。その体躯は逞しく、半袖の白Tシャツがはちきれんばかり。寒くないのか、と思ったが、体内温度が高い人は半袖でも平気な事があると昔聞いたような事を思い出して、気にしない事にした。
 顔のつくりも悪くはなく、照れたような笑顔を見せ、何やらモジモジとした様子。
「夜分にすみません。その……前々からお見かけしていました魅力的な貴女に、チョコをお渡しいたく……」
 ややイケメンの部類に入る男性が照れた様子で好意を仄めかしてくるというのは、その気がない女性としても少しは心揺れるというものだ。
 彼の照れた様子に釣られて、女性の頬もほんのりと朱に染まる。
「あら、そんな……。でも、嬉しいです……」
「では、その、受け取っていただけますか……?」
「私でよろしければ……」
 女性の返答に、男性の顔がパッと輝いた。
「ありがとうございます! では、受け取ってください!」
 そう言って差し出された右肘。……肘?
 よく見れば、肘に白い物が見える。これは一体?
「私の筋肉チョコを舐めていただければ!!」
「いやあああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!  変態よぉぉぉぉぉぉ!!!!」
 好意から一転。
 青ざめた顔の女性の叫びが、夜空にこだました。

●マッスルネットワーク外の犯行だそうです
 ここはカフェ『ローレット』。今日も迷える子羊が依頼を出しにやってくる。
「という訳で、是非とも件のマッスルを締め上げていただきたい」 
 カフェのテーブル席にて腰掛けているのは、馴染みの情報屋の男と、『性別に偽りなし』暁月・ほむら(p3n000145)だ。
 向かいの席にはマッスル男性が二人。彼らは真剣な顔で情報屋とほむらを見つめていた。
 情報屋の男は依頼内容を反芻する。
「最近この地区内で、マッスル男性が肘や肩などにホワイトチョコを塗って女性に舐めて受け取るよう強要している事案が複数発生。だけど、君達マッスル同盟の誰もがその犯行を行なっていない。そう説明したにもかかわらず誤解が広がっていて大変迷惑している。なので、件の犯人をローレットの方で締め上げてほしい。
 で、合ってる?」
「相違なく」
 頷くマッスル男性達。
「一応確認するけど、君達の仲間で無い事は確かなんだね?」
「はい。確かに自分達の中には女性にモテたいとか女性と仲良くなりたいと思っている者が居るのは事実です。
 だが、そのような事をしてまで女性に近づこうという紳士ではない行動をとる事はありません!」
「確信はあるんだ?」
「マッスルネットワークは強固ですから。紳士的な行ないから逸脱していればすぐに共有されます」
「こわ……」
 最後の呟きはほむらのだ。
 いや、マッスルネットワークって何だよ。
 一番ツッコミたかった所をあえて喉の奥に押し込んだ彼の精神の強靭さを褒め称えてやりたい。
 マッスル男性二人が揃って頭を下げる。
「どうか、お願いいたします!!」

 ばーーーーん!!

「話は聞かせてもらったよ!」
 ドアを開けて飛び込んできたのは『腐れ縁』
ムスティスラーフ・バイルシュタイン(p3p001619)。
 きちんとした身なりで飛び込んできた事に一先ず安心はしたものの、安心出来ない要素が飛び込んできた事に頭を抱える。
「僕達に任せて! 君達の力になるよ!!」
「なんとありがたい!!」
「勝手に引き受けられてるぅ?!」
「でも引き受けるしかなくない?」
「それはそうだけど!!」
 情報屋の言葉にほむらも肯定するが、不安は拭えない。
 ほむらの脳裏に、去年のグラクロシーズンにおけるムスティスラーフがやった事が浮かぶ。
 依頼の受注が確定してしまった事に頭を抱えるほむらの目の前で、ムスティスラーフはマッスル男性達と手を取り合って頷いている。
「報酬は君達との熱い一夜とベーゼでいいよ!」
「お断りいたす!!」
 懸命な判断である。
「「その前に勝手に報酬決めるな!!!!」」
 ど正論。

●そんなわけで迷惑マッスル懲らしめましょう
 ムスティフラーフの声かけや依頼内容を聞いた者達はほむらの案内のもと、夜の公園に来ていた。
「何人かの目撃者からの証言を元に検証すると、大体この公園辺りで起きてるみたいなんだよね。それも決まって夜に。
 あと、暗闇から突然現れたとかいう証言も多いから、多分夜妖だと思う」
「夜だけに夜妖って事かな?」
「そんなギャグみたいな理由で出てくるとは思えないけど……。
 それで、犯人と思われるマッチョを懲らしめてほしいという依頼だけど、女性じゃないと現れないそうなので、男性は女装してね」
「服の指定は?」
「特になし。目撃者の女性が当時着てた服を聞いてみたけど、バラバラだったから、今回は服装は気にしなくていいかも。女性に見えるように頑張って」
「やったぁ! 任せて!」
 ムスティフラーフが嬉々としており、一抹の不安を感じずにはいられない。
「あぁ、そうそう。目撃した女性から容姿を聞いたんだけど、特徴が違う回答が多かったから、おそらく三体か四体いるっぽいよ」
「一体持ち帰れないかな?」
「持ち帰らないで! 消滅させて!」
 なんか今回ツッコミばかりだな。
 始まる前から気力が削げるのを感じるほむらだった。

GMコメント

先日シリアス書いたと思ったらコレですよ!
去年はホワイトデーシナリオができなかったので、一年越しに出せました。よろしくお願いします!
OPの通り、今回はコメディシナリオとなります。
皆、迷惑かけるマッチョな変態夜妖を成敗しようぜ!
あ、ほむらはお嬢様風な格好で今回臨んでおります。

●勝利条件
 マッチョ夜妖を全て殲滅

●敵情報
 マッチョ夜妖×四体
 「女性にモテたい」「チョコを渡してお近づきになりたい」「マッスルになりたい」の欲望が集まって生まれたもの……らしい。
 結果として筋肉にチョコを載せて女性に近付くというズレた感覚になった夜妖である。
 力はさほど強くは無いが、筋肉パワーに振り切ってる為、近くに重量がある物を持って攻撃したり、素手で攻撃する事がある。
 なお、ハグするとベアハッグされる為、注意されたし。
 特殊な能力は無いが、その代わり体力がかなり多く、また、タフになっている。

●再現性東京(アデプト・トーキョー)とは
 練達には、再現性東京(アデプト・トーキョー)と呼ばれる地区がある。
 主に地球、日本地域出身の旅人や、彼らに興味を抱く者たちが作り上げた、練達内に存在する、日本の都市、『東京』を模した特殊地区。
 その内部は複数のエリアに分けられ、例えば古き良き昭和をモチーフとする『1970街』、高度成長とバブルの象徴たる『1980街』、次なる時代への道を模索し続ける『2000街』などが存在している。イレギュラーズは練達首脳からの要請で再現性東京内で起きるトラブル解決を請け負う事になった。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

  • 再現性東京202X:白いチョコレートは筋肉に乗せて完了
  • GM名ふみの
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月25日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ウェール=ナイトボート(p3p000561)
永炎勇狼
花榮・しきみ(p3p008719)
お姉様の鮫
鈴鳴 詩音(p3p008729)
白鬼村の娘
セス・サーム(p3p010326)
星読み
多次元世界 観測端末(p3p010858)
観測中
瀬能・詩織(p3p010861)
死澱
幽火(p3p010931)
君の為の舞台
高橋 龍(p3p010970)
名誉マッチョ・ネットワーク

リプレイ

●男の求める物と、女の求める物は違うから
 夜の公園での灯りは街灯と月のみだった。頭上では星が瞬き、時折雲も見える。
 公園に集められたイレギュラーズの内二人が天を仰ぐ。星を見る為にではなく、己の姿に軽く困った様子で、だ。
 二人居る内の一人、獣頭人身の男性――――『永炎勇狼』ウェール=ナイトボート(p3p000561)は、袖までゆったりとした大きめサイズの白いトップスに、左右にひだ飾りをつけた水色のティアードスカートを着込み、首元を隠すようにストールをゆるく巻いていた。
 もう一人は筋骨隆々、というのが似合う程の体躯を持つ高橋 龍(p3p010970)。彼はもはやパツパツになってしまっているブラウスに、フレアスカートを着て、頭にはお嬢様のような鍔の広い帽子を被っている。二メートルある巨躯に、背中にドラゴンのような機械翼と、スカートの裾から見える機械的なドラゴン風尻尾を備えている姿は、なんというか……威圧感が凄い。
 二人の男が履いている靴が踵の低い靴であったのは、戦闘時に俊敏に動きやすくする為だ。当初、靴の先を尖らせたタイプも考えたが、男の足ではキツいという結論に至った為、このようになった。
 女装をしているのは彼だけでは無い。
 幽火(p3p010931)も女装をしている男性陣の一人だ。道化師の衣装を着込んでいるが、ズボンの替わりにスカートを穿き、腰布を巻く事で少しボーイッシュな女の子に見えるよう工夫されている。
 今回の依頼人から請け負った身として同行している、『性別に偽りなし』暁月・ほむら(p3n000145)もまた、お嬢様風に見えるようにコーディネートしていた。ブラウスにプリーツスカート、カーディガンも羽織り、フラットシューズも履くという徹底ぶりだ。
「本当にこれで来るのか?!」
 龍――本人的にはドラゴンと呼ばれたい――が、疑惑の言葉を誰にともなく小声で投げかける。彼の性格なら「どいひー!」と叫びたくなるだろうに、現在の所抑えてくれている。
 『恋(故意)のお呪い』瀬能・詩織(p3p010861)は、頬に手を当てて首を傾げる。
「お化粧もいたしましたから、女性に見えるとは思いますが……」
「練達で調達したコスメもあるから少しはそれっぽくなったはずです」
 『星読み』セス・サーム(p3p010326)は用意周到にもコスメまで用意しての参戦だ。なるほど、かなり女性的な顔立ちに近づいている。
 セスの格好は白い立ち襟フリルブラウスに黒いマーメイドスカート。ハーフアップにした紺色の髪を黒いリボンで彩り、足元は黒いレースアップブーツで覆う。
 緩くウェーブ状にした腰までの髪を纏める事をせず、かといって乱れも無い。ブラウスの上に星空のようなスパンコールをちりばめたワンピースが風に揺れ、踵が八センチ程のショートブーツが見える。青い目をした愛らしい少女も、にこりと笑う。
 少女――――正確には『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)がギフトにより変身した姿だ。どこからどう見ても女性だが、実際は男性だというから驚きだ。十代の美少女に見える姿は愛らしく、すれ違う男を振り向かせるだろう。元の姿は、おそらく十人中九人が腰を抜かす訳だが。
「それで、これからどうやって探しますか?」
 笑顔のまま投げかけられた疑問の言葉に、ほむらが「そうだねぇ……」と顎に手をやる。
 遠慮がちに『白鬼村の娘』鈴鳴 詩音(p3p008729)が手を挙げて、意見を促す。
「二人一組で……行動、とか?」
「無難なところではそれだろうな」
「賛成かな。だって、特徴の違うのがいたから最低でも三、四体はいるかもって事ならそれくらいの少人数で分かれて行動するのがいいかもね」
 ウェールと幽火の賛成意見に反対する者は居ないようだ。
 『お姉様の鮫』花榮・しきみ(p3p008719)が、「あら」と声を上げる。
「どうやらその必要は無いみたいですよ。ほら、あちらの方に」
 武具を構え、殺気を放ちながら彼女が見つめるその先にある暗がり。
 四体のマッチョが統一された動きでリズミカルに踊り、半袖の白Tシャツから覗く筋肉をぴくぴくさせながら現われた。なんだよその踊り。流行りのインド映画か? なんで肘の上から下までにホワイトチョコかけてんだよ。
 そんな彼らが、ほぼ同時に口を揃えてイレギュラーズに問いかけた。
「「「「そこのお嬢さん達、筋肉チョコはいかがですか?」」」」
「全力で拒否いたします!」
「要りません」
「汚らわしい……」
「……うわぁ……」
 女性陣からの全力拒否に、「まぁ、そうだよな」と納得する中で、ウェールがもう一度天を仰いだ。
 龍がそれに気づき、問う。
「どうした?」
「いや。……こんな姿の我々でも『お嬢さん』に見えるのなら良かった、と」
 安心できる所が違う気がするんだよなぁ。
 そんなわけでもどんなわけでもないけれど、まぁ遭遇した以上は……殺るしか……ないよね?

●その口を赤と白で満たし、闇へと消えていけ
「抱きつかれると不味いんだよね?」
 幽火は真っ先にマッチョ達から距離を取り、自らの周囲にゴミ箱やら、カラーコーンやらを喚び出して投げつける。後々残ってしまっても公園の備品だからで誤魔化しのきく器物をぶん投げてくる(しかもサイズが大きい)姿はなかなかに脅威である。本当に神秘かこの行為?
「誰かに想いを伝えたい気持ちだけは情状酌量の余地があります。手段が最低だと思いますけど」
「チョコレートは好き……ですけど、渡されるにしても直接舐め取るのは……」
 シキミもまた、マッチョ達が迫るより早く霧氷を生み出しその動きを縛り付け、優位のうちに立ち回ろうとする。全身に深々と霜跡が刻まれ、白くなりつつあるマッチョ達だがそれでも足を前に出す根性は見ていてえげつない。詩音はマッチョ達のアプローチにちょっと……いやかなり理解できない様子だが、しかし積極的に前に出て、その旨をアピールするかのようにしゃなりしゃなりと歩み進む。全身から醸し出される魅力は確かにマッチョ達を引き寄せるに値する。どうやら彼女は自ら彼等にハグされにいき、隙を作ろうという腹積もりらしい。
 らしいのだが。彼女が想定していた以上にベアハッグの破壊力は大きかった。
「…………っ!!」
「えっ、え……息、」
 ベキベキベキミシィッ、と肉の締め上げる音と骨の軋む音が響く。マッチョは鍛えることに夢中でいたわる力加減が出来ていない。非モテなので!
「おいおい! いくら非モテ野郎だからと言ってこんな変態行為に勤しむなんて。救えねぇ変態野郎共だな、おい!」
「えっチョkアッッッッッッッッッヅッッッッッッッ!!!!」
 流石にまずい、と遅ればせながら龍がマッチョたちを引き寄せようとするが、ハグしたのと別のマッチョが詩音にボウルから肘、肘から口元へとホワイトチョコレートを見舞った。テンパリング直後のチョコレートは熱い。直に注がれた彼女の被害は語るまでもない。
「聞けよ、おい!」
「「君もチョコをたべないか?」」
「いらねえよ!?」
 無視されたと感じ苛立ちを露わにした龍めがけ、のこる二人のマッチョが迫る。しかし龍は炎を吹き上げ、動きの鈍い彼等を牽制する。霧氷に業火がぶつかれば溶けるのでは、と感じた賢明な諸氏は残念ながら間違いだ。むしろ悪化する。神秘なので。
「そこで足止めしてく……ださい! お……私が一気に蹴散らす、から!」
「詩音さんは此方で治療するのでご安心を」
 ウェールは素の口調が出そうになりながらもギリギリ女の子口調を維持しつつ、纏めてマッチョへ打撃を与えていく。観測端末は喫緊の危険は詩音のみと判断、彼女へと治癒を集中させた。火傷とか、生理的嫌悪とか、回復できない物はあるかもしれないが仕方ないね。
「いけませんよ、女性をそんなに乱暴に扱っては……」
 と、それまで状況を見守っていたセスがゆっくりとマッチョへと歩み寄っていく。主に詩音にチョコを垂らしている不届き者へ。こういう時、仲間を巻き添えにしないウェールの戦闘技能の優秀さを思い知る。
「君も筋肉チョコを所望するのかい?」
「あなたのような素敵な殿方の誘いなら、引く手数多……その逞しい腕に惚れ込んでしまうでしょう」
 チョコマッチョはセスの巧みな言葉にすっかりメロメロ(死後)になり、早く食べて欲しいとすら思ってしまう。
 これ見よがしに肘を突き出し、早く食べてくれといわんばかりの目には暗い期待が見え隠れする。周囲も流石にその状況にヒき気味で手が止まった(治癒してる観測端末を除いて)。
「では、いただきま――」
「ア゛ッッッッ!?!??」
 妖艶な口元を見せつけてホワイトチョコを頬張ったかと思ったセスは、数歩引き下がり口から赤黒いものを吐き出した。マッチョの肘を見れば、再生術の応用で哀れに崩れた筋繊維が見え隠れする。この絵面だけでPG-12である。
「一時の夢は見られましたか? それでは終焉へ御案内致しましょう」
「うわ、怖ぁ……」
「では、混乱している皆様に『お呪い』を差し上げましょう」
 この状況にすっかり腰がひけてしまってナイフを持つ手が震えるほむらをよそに、詩織は妖しく笑いながら前にでる。突き出した手から吐き出された呪いは、動揺のあまり動きを止めてしまったマッチョ達に殊更しっかりと効いた。その上で重ねて放たれたスケフィントンの娘の効果がどれほどなのか、なんて。イレギュラーズであれば直視するのも憚られるレベルの効果を発揮しているのは間違いない。
「そもそも、です。女性にモテたいのかもしれませんが不特定多数だというのが頂けません。真面目に考えてみてその様な甘っちょろい考えでどの様にして好かれますか」
「モテたいならまず変態行為を止めなさい! 仲が深まればOKでも初対面で筋肉オンザチョコは生理的、衛生面的にアウトです! 脳筋になる前に紳士の精神を学んでください!」
 しきみとウェールも猛攻を加えつつお説教を始めるものだから、精神的・肉体的な痛みたるや相当なものであることは想像に難くない。
「くっ、このままでは」
「テメェの相手は俺だぜ、この変態野郎!」
 その場からケツ捲って逃げ出そうとした哀れなマッチョはしかし、足元が凍っているがゆえに踏み出しが遅れた。すかさず間合いに入った龍との殴り合いになれば、弱っている体でどれほど耐えられるものか。
 遠い間合いから飛んできた幽火の屑篭(鉄メッシュ円筒形)に、次々と喚び出された空き瓶が向かっていく。当然、一度マッチョの頭部でトラップしてからの投入だ。ナイスコントロール! そのままマッチョは〇ね!
「お相手への迷惑を鑑みずにするからこうやって殴られる! 私はお姉様の許可の上、配偶者を名乗っているのですからね、貴方方よりヤバい女なのですから!」
「果たしてそれは自慢に値する行為なのでしょうか……」
 しきみのなんかもうとんでもないアピールに、観測端末は思わず口を挟んでしまっていた。いいのか、それ……?

●夜妖は夜に返し、チョコは闇に溶ける
 全ての夜妖が消滅したのを確認し、念の為見回ってきたほむらが「もう居なさそうだよ」と告げると、イレギュラーズの男性陣がぐったりとした様子で溜息を零した。
「やっと終わったか……」
「ひどい……変態でしたね……」
 ウェールと幽火の心底疲れたといった声が大半のメンバーの気持ちを代弁してくれていた。
 しきみもどうにか気力で立っている。「あんな変態をお姉様に近づけさせなくて良かったです……」などと目が据わっている状態でぶつぶつ呟いていたが、ツッコむ気になれるような者はこの中には居ない。
 全身白濁まみれ(※ホワイトチョコレート)になってしまった詩音は当初の熱さ、そして冷え固まったことで呼吸困難に陥ったためびくびくと悶えている。仲間達も助けてやりたいのはやまやまながら、どこから処理すればいいやら……という顔だ。ぬるま湯に漬ければなんとかなりそう。
 ギフトによる擬態を解かないままで、観測端末だけは疲れを知らぬように首を傾げる。
「夜妖というのは不可思議ですね。あのような者も夜妖だとは、また一つ情報が増えました」
「多分その情報は、世界で一番不必要なものだと思うので、忘れた方がいいと思います」
「そうですか? しかし、当端末としては覚えておかねばならないので記録します。ただし、今回に関する再生について、優先度は低に設定されます」
「それがいいかと」
 観測端末とセスがやり取りを交わす横で、詩織は夜妖が先程まで居た場所に向かって手を合わせていた。
「えっ、今の夜妖になにか祈るようなところ、あったかな……?」
「いえ……あの方々も夜妖に生まれたくて、生まれてきたわけでは無いのでしょうから。少々の憐れみが」
「そ、そっかぁ……優しいんだね……?」
 ほむらは詩織の所作に首を傾げつつ問うと、返ってきたのは慈悲に満ち満ちた言葉。さしものほむらもその返答は想定外だったらしく、たじろぎつつも首肯する。夜妖は人々の思念から生まれしものだから、生まれなければ一番幸せだった……その考えは間違っていないのだ。
「これで終わったな! あとはマッスル依頼人に連絡して……」
 龍はそこで言葉を切ると、華麗にポージングをキメる。ビシィッ! とかそういう効果音が聞こえてきそうな決まり具合だ。大胸筋ブレイブハートかい!
「(ン)マッスル同盟に加入を打診してくればいいんだな!」
「止めないけど本当にそれでいいの?」
 ほむらは龍の決心を止めるつもりはなかったので、報告に彼を連れて行くことに異論はなかった。なかったのだが、彼までマッスルネットワークに巻き込まれたら果たしてこの先また変な依頼が舞い込んできやしないだろうか?
 まともな感性を残している数名はちょっと心配になってしまった。

成否

成功

MVP

セス・サーム(p3p010326)
星読み

状態異常

鈴鳴 詩音(p3p008729)[重傷]
白鬼村の娘

あとがき

 改めてプレイングを拝読いたしまして、なんていうか美への追求っていうのは男女ともにあるのだなあと。
 一部の方には諸々確認やらした結果として称号がついていますが、まず間違いなくシリアス向きではないのでご注意下さい。

PAGETOPPAGEBOTTOM