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シナリオ詳細

<被象の正義>影が引きつれし両目

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――仔羊よ、偽の預言者よ。我らは真なる遂行者である。
 ――主が定めし歴史を歪めた悪魔達に天罰を。我らは歴史を修復し、主の意志を遂行する者だ。

 天義に下った新たな神託。
 現状、箝口令が敷かれ、騎士団がこの神託の意図の解明に動く。
 しかし、時を同じくして動き出す者達。
 それは以前、殉教者の森で散発していた影を思わせる者達であった。


 『殉教者の森』に姿を見せた『ベアトリーチェ・ラ・レーテ』の暗黒の海と汚泥の兵達。致命者と呼ばれた人々。
 それらの目的は、歴史の修復なのだという。
「正しき都……ね」
 『海賊淑女』オリヴィア・ミラン(p3n000011)は遠目にその都市を見て、一言呟いてから同行していたイレギュラーズへと振り返る。
 天義の巨大都市テセラ・ニバス。
 今や、それらはワールドイーターの巣窟と化し、すでにこの世のものではなくなってしまっている。
 建物や街路はもちろんのこと、住民すらも狂化し、異言のみを話す『異言を話すもの(ゼノグロシアン)』と化してしまっている。
「いや、その住民すらワールドイーターが生み出した可能性すらあるね」
 これのどこが正しき歴史なのか。
 皆、様々な想いを口にするが、一通りそれらを聞き終えたオリヴィアが説明を再開する。
「アンタ達に頼みたいのは、街区の切除と奪還さ」
 外側の区画の中で、比較的浸食の浅い部分から切り崩すべきと判断したオリヴィア。
 そこはまだ元の形がかなり残されているが、ワールドイーターが少しずつ建物などを食らっているようなのだ。
 至るところに穴が開く異様な街並みの中、徘徊しているのは影の天使達。そして、巨大な瞳だ。
 まずは、これらを討伐して浸食を食い止めたい。
「現場に黒白の鎧を纏う2人の姿も確認されているね」
 オリヴィアもまだ情報が不足している点もあるそうで、接触できるなら情報を引き出してほしいと要望する。
 とはいえ、新手が出てこないとも限らない。簡単な問いかけをした後はその場から撤収したい。
「できる限り情報は欲しいが、無理は禁物さ」
 よろしく頼んだよというオリヴィアの言葉を背に、メンバー達は浸食された都市へと赴く。


 テセラ・ニバスはもはや人が住める土地ではない。
 あちらこちらを徘徊する終焉獣。影と化した合われた住民。
 中央方向の町並みはさながらダンジョンと化した場所もあったし、密林や砂漠と化したところさえもある。
 今回、都市の浸食から切り崩しに当たる区画は元々の町並みを残してはいたが、あちらこちらの建物の壁や地面など直径1~1.5m程度の穴が穿たれていた。
 間違いなくこの区画を食らおうとしていたのは、巨大な2つの瞳。
 そいつらはじっと見つめた物の存在を少しずつ取り込み、最終的には存在ごと食らってしまうようだ。
 また、周囲にいた影の天使らはそれらを警護するように周囲を飛び回る。不審者を発見すれば、すかさず翼を羽ばたかせて迫り、手にする槍を突き出してくることだろう。
 ともあれ、これ以上、都市の浸食を進めさせるわけにはいかない。
 イレギュラーズはそれらを討伐すべく攻撃を仕掛けていく。
 始まるイレギュラーズと影の天使&終焉獣の戦い。
 それを物陰から鎧を纏う2つの人影が見つめていたのだった。

GMコメント

 イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
 天義の巨大都市テセラ・ニバスを侵食して現れた『異言都市(リンバス・シティ)』の切り崩しを願います。

●目的
 全ての影の天使、および終焉獣の全滅。

●状況
 『異言都市(リンバス・シティ)』切除戦です。
 巨大都市『テセラ・ニバス』は現状、ワールドイーターに浸食され、異様な景色が続く都市となっています。
 区画ごとに景色が異なり、状況も様々。
 今回の区画では街並みのあちらこちらに直径1~1,5m程度の丸い穴が穿たれています。これは、下記の絶望の瞳によるもののようです。

●敵×6体(+2体)
○影の天使×4体
 身長3m程もある人型に、大きな翼が生えた姿をした影でできた存在です。飛翔しながら、祈りを捧げる姿が特徴的です。
 大きな槍を所持し、急降下しての突き、接近しての連続突きを行い、全身から闇の波動を発することもあります。

○終焉獣(ラグナヴァイス)×2体
 R.O.Oではワールドイーターと呼ばれたモンスター。
・絶望の瞳×2体
 全長2mほど。薄紫の皮に包まれた大きな瞳です。浮遊して移動しています。
 怪光線を発射する他、睨みによって相手を足止めする力を持ってきます。
 以前、出現した個体と違って石化病は使いませんが、見つめた相手の体力気力を吸い取ることができ、最終的には存在そのものを食らいつくすようです。
 絶望の瞳は『<ダブルフォルト・エンバーミング>その使徒、終焉を運びて』を参照。見なくてもシナリオには影響ありません。

〇遂行者:黒鉄の女騎士×1体
○致命者:白銀の少年騎士×1体
 この事件を陰から注視している者達。
 いずれも天義の聖騎士を思わせる鎧を着用。
 遂行者はフルフェイスを装着し、素顔は確認できません。それでも、全身鎧の外側からでも並々ならぬ威圧感があります。
 致命者はアドラステイアの聖銃士を思わせる姿をしています。
 事後に接触は可能ですが、すぐに姿を消してしまうため交戦できません。簡単な問いかけなどは可能です。 

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

 それでは、よろしくお願いいたします。

  • <被象の正義>影が引きつれし両目完了
  • GM名なちゅい
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年03月16日 22時06分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
シャーラッシュ=ホー(p3p009832)
納骨堂の神
リドニア・アルフェーネ(p3p010574)
たったひとつの純愛
多次元世界 観測端末(p3p010858)
観測中
マリオン・エイム(p3p010866)
晴夜の魔法(砲)戦士

リプレイ


 巨大都市テセラ・ニバス。
 『異言都市(リンバス・シティ)』と化した異様な街の様子に、イレギュラーズの表情が凍り付く。
「なんてことだ。街ひとつがまるまる敵の手中に落ちるなんて」
「リンバス・シティ……、なんと禍々しいのでしょうか」
 『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)が唖然とする横で、『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)は街全体から漂う空気に思わず顔を引きつらせてしまう。
「チラッと見たけど、都市が浸食された風景なかなかにすごいことになっているね……」
 普段からマイペースな『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)だが、歪に変化した街の有様に少なからず思うことがあったようだ。
「あーやだやだ。これが真実だなんて天義の人々が知ったらまた戦争騒ぎですわよ」
 今はまだ調査段階だと『『蒼熾の魔導書』後継者』リドニア・アルフェーネ(p3p010574)は把握しているが、現地点の情報ですら天義の人々は大事にしそうだと確信する。
 街の状況はさながら、R.O.O.での再現だと『鳥籠の画家』ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)だと感じていたが、あちらと違って現実の混沌では簡単に死ぬわけにはいかない。
「……上等じゃねぇか、やってやる!」
 それを理解した上で、ベルナルドはこの危険なミッションに臨む。
 
 街へと踏み込んだイレギュラーズ一行は、比較的浅い部分の区画を歩く。
 元の街並みこそ残っていたが、壁、地面などあちらこちらに円形の穴が穿たれており、少しずつ浸食は進んでいる。
「危険ハアリマセン」
 その穴を、観測端末が超視力で観察し、穴自体は通ることすら可能だと伝える。文字通り、存在を食べる能力らしい。
「此処は比較的ましな部類? でもまぁ、時間の問題か……」
 ただ、こんなのが混沌中にどんどん広がられてもゾッとしない。
 だからこそ、ラムダはサクッとお仕事をと考え、近づいてきた敵小隊と対する。
 …………。
 …………。
 ゆらりと無言で現れる真っ黒な集団。
 手には槍を、背には翼を有する巨躯の人型、影の天使が4体。
 そして、薄紫の皮に包まれた巨大な目の貌をした終焉獣、絶望の瞳2体だ。
「終焉獣……勘弁して欲しいですわね」
 対する敵に、辟易とするリドニアがこう続ける。
 ――これじゃ、真実じゃなくて終末じゃないか、と。
 その間にも、終焉獣は街のあちらこちらを見つめ、その存在を少しずつ食らい、新たな穴を穿つ。
「見つめたものの存在を喰らう、ですか。終焉獣とやらは随分と器用な真似をするのですね」
 その生態……能力というべきか、『納骨堂の神』シャーラッシュ=ホー(p3p009832)はしっかりと分析する。
「……あくまで念の為に聞くけれど、あの目玉って端末の同族とか親戚とかだったりしないよね?」
「敵性体ノ終焉獣二体ニ、当端末トノ外観上ノ類似性ハ確認サレマス。」
 そこで、『双影の魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)が問うと、『観測中』多次元世界 観測端末(p3p010858)が絶望の瞳に容姿が似ているのを認めながらもこう返す。
「デスガ外観ハ収斂進化ヤ、機能面ニヨル駆体作成上ノ類似的結果デアルト推測シマス」
 詰まるところ、似ているのは外見だけで、全く無関係な存在だと観測端末は断定する。
「具体的ニハ、マズ瞼ノ開閉方向ガチガイマス。次ニ当端末ハ眼球部ト反対側ニ……」
「乱戦になったら、うっかり間違えない様に注意だね!」
 長くなる観測端末の話をマリオンが遮る傍ら、ホーは感嘆の声を上げて。
「面白いですね。では、私のことも食べてみますか?」
 すると、終焉獣は街を食べるのを止め、こちらを振り返る。
「いえ、軽い冗談ですのであまり真に受けないでくださいね。それに、私は食べられるより食べる方が好きですので」
「神託の成就、邪魔、排除……」
 ホーが軽く手を振ると、敵も排除すべき存在と強く認識し、戦闘態勢をとる。
「災あれ、魔よ。おまえたちのような者は存在していいはずがない」
 存在を食らう終焉獣。そして、それを是とする影の天使に宣戦布告すると、史之が同意して。
「たしかにこれは許されざる事態だね、カンちゃん手早く行こう」
「いくよ、しーちゃん、この街を救おうよ。今このときだけでも」
 仲間と共に、史之、睦月は影の一隊へと立ち向かっていく。


 バサバサと翼を羽ばたかせる影の天使。
 リドニアはそれらを見上げながらも、飛んでいる相手は落としにくいと考え、地面近くを浮遊する終焉獣……絶望の瞳から捕捉する。
 後続の仲間の攻撃を意識しながら、リドニアは瞬時に高めた赤い闘気を叩き込んでいく。
「…………」
(見つめてくると厄介な事になるらしいですからね)
 こちらを睨みつけてこようとする終焉獣の視線から外れる為、リドニアは動き回りながら交戦する。
 その間に、低空飛行するベルナルドが鏡の幻影を絶望の瞳の前に出現させて。
「見る者はまた見られる責任を負うもんだ」
「…………!」
 敵が怯んだところでベルナルドは空から奇襲し、周囲に鮮やかな色彩を展開する。
 混ぜ合わせたような七彩の誘色は瞳だけでなく、宙を舞う影の天使も纏めて巻き込む。
「色の無い天使も目ん玉も、刮目して見ろ……これが天義の芸術だ!」
 ベルナルドの力によって、それは痛みを伴う色となっていたのだ。
 頭上で色を振り払おうとする影の天使をラムダが先に掃討しようと仕掛ける。
「無尽にして無辺……遍く世界を包め灼滅の極光 対軍殲滅術式『無尽無辺無限光』」
 すでに、自身の限界以上の力を引き出していたラムダは詠唱し、形作った10の光球を爆縮圧壊させる。
 次の瞬間巻き起こる光が影を灼く。その一部は終焉獣の体も焦がしていたようだ。
「寒櫻院・史之。まあ、覚える必要はないよ」
 相手を煽る彼は、終焉獣、影の天使を問わず引き付ける。
 ゆらゆらと近づいていく影の天使が槍を素早く突き出し、睨みつけてくる絶望の瞳が動きを止めようとしてくる。
 だが、史之も茨の鎧を纏い、敵の攻撃に合わせて茨で反撃するのを忘れない。
 また、現状を打破すべき一撃を見舞った史之は仲間を巻き込まぬことを確認し、秘技「秋霖」によって衝撃波を敵のみに浴びせかけていく。
 そんな彼へと集まる敵を排除すべく、睦月も火力支援を欠かさない。
「呪われよ、災いの申し子よ。汝らの存在を、僕は許さない!」
 祝福の囁きによって自ら活力を得た睦月は敵陣へと紫の帳を下ろし、敵陣に不吉と終わりを伝えんとする。
 続けざまに仕掛けたのはリトルワイバーンを駆るマリオンだ。
「青空の精霊種、双影の魔法(砲)戦士マリオンさん!」
 自己紹介するマリオンは性別変化可能だが、今回は女性モード。彼女は後方からの範囲攻撃をメインに立ち回る。
 仲間の攻撃から切れ目がないよう纏まる敵にうねる雷撃を放つ。
 戦いが始まってさほど経っていない。
 それもあって、仲間の被害が軽度と判断した観測端末もまた初手は攻撃に出ており、魔弾を撃ち出すことで援護射撃する。
(地面の穴……)
 浮遊する仲間も多いが、地上で立ち回るホーは足元に注意を払いつつも、敵を満足に戦わせぬよう悪意で形作った弾丸を発していった。
 それだけではなく、たまたま自身の近くに来た敵も含めて捕らえ、魔性の呼び声を発する。
 声につられて現れた亡霊による慟哭を聞かせ、ホーは敵陣へと呪いを振りまいていく。
「…………」
「…………!」
 不調をきたす影の一隊だが、それでもなおイレギュラーズを滅するべく、不気味に全身を脈動させて迫りくるのである。


 不気味な影の集団に対し、イレギュラーズは
「ただの穴で他に危険はなさそうなら、落ちない様にだけ注意しなきゃだね!」
 リトルワイバーンに乗っていたことで、その危険は回避していたマリオンだが、空飛ぶ影の天使に墜とされる可能性は否めない。
 ともあれ、それらを逆に撃ち落とすべく、マリオンは収束性を高めた魔砲を叩き込む。
 それだけで終わらず、マリオンは迫りくる手前の一体に黒い顎を突き立てると、その天使は地面にできた穴の中へと墜ちていった。
 影の天使も空中を旋回し、闇の波動を発して攻め立ててくるが、メンバー達は踏みとどまり、影の霧散に尽力する。
「ボクを相手に距離を取るのは愚策だよ?」
 高機動のラムダは影の天使を翻弄し、嘲笑するほどの余裕も見せる。
 相手は決して気の抜けぬ相手のはずだが、それでもラムダは敵の素早くとってみせて。
「まぁ、距離を取らなくてもボクには関係ないけどね?」
 同じ空を飛ぶマリオンやベルナルドの攻撃に続くのを意識し、ラムダは魔導機刃で影の全身を切り刻む。
 歴史、は……!
 そう言い残し、そいつは空中で爆ぜた。
 同じ時、地上ではホーが地面すれすれを飛んでいた影の動きを止めていて。
 敵は丁度穴の真上を飛んでいる。
 ホーは穴を回り込み、至近にまで攻め入ってから影の天使の夢想を現実にまで浸食させて。
 修正、果たせず……。
 祈りを捧げる影の天使は内から呑まれるようにその姿を消していく。
 最後の1体はベルナルドが相手にしていた。
 彼は序盤から広範囲に絵筆を振るって色を叩き込み、敵の弱体化をはかっていた。
 実際、すでに倒れた3体も瞬く間に体力を削ぎ落としていたのはベルナルドによるところが少なくない。
 敵が少しずつ減ってきたことで、彼は識別可能な雷撃へと攻撃手段をスイッチし、終焉の帳を敵陣に下ろす。
 任務の遂行をと思考する影の天使だが、自らの破滅を感じてかこちらも槍を持ったまま両手を合わせる。
 闇の波動を警戒したベルナルドはその態勢の敵を呪鎖で強く縛り付け、体全体を締め付けて葬送してみせた。
「後は……」
 ベルナルドは地上近くを浮遊する絶望の瞳をターゲッティングする。
 ここまで、史之、リドニアが主だって絶望の瞳を抑えていた。
 敵の視線からメンバーが逃れたことで、新たに穿たれた穴。
 それにマリオンも興味を示し、じっくりと観察する。
 存在が奪われて空虚になった穴。このまま、今ある物全てが食われてしまいかねない。
 存在を奪わんと睨みつける終焉獣は、効率よく体力気力を吸い取る為に瞳から怪光線も放ってくる。
 抑えるメンバー達の傷は想像以上に重く、マリオンはすぐさま全身の力は全身の力を回復魔力に変え、終焉獣の攻撃にさらされる仲間へと振りまく。
 観測端末も初手こそ援護射撃を行ったが、その後は恐怖を打ち払い、大天使の祝福をもたらすなど回復役に徹していた。
 こちらを見つめてくる鎧2人組に気を払うが、回復は抜かりなく行う。
 それでも、リドニアへの負担は軽くない。
「それにしてもデカい目ん玉ですわね~~」
 赤い闘気での攻撃の危機があまりよくないのではと踏んだ彼女は姿を消し、凶手を突き出してその眼球を潰そうとする。
 …………!!
 ただ、敵もその瞬間を逃さず、怪光線を放つ。
 怪光線がリドニアの腰を貫通した直後、絶望の瞳は追撃とばかりに彼女を睨みつけて体力を奪おうとする。
 だが、その前に、ギフトによって人型となった観測端末が躍り出て、リドニアを庇う。
「ソノ結末ガドウアレ、当端末ハ在ルガママヲ観測スルノミデアル」
 自らの被害をいとわず、戦いの行く末を見守ろうとする観測端末。
「蒼熾の魔導書、起動」
 リドニアも黙ってはいない。
 影の天使を殲滅した仲間達がこちらの戦いに加わってくれたことで、一気に戦況は好転して。
 先ほどのお返しとばかりに眼光鋭く、リドニアが睨みつける。
 刹那ビビったと思った彼女はヴォードリエ・ワインをその目に浴びせかけ、続けて空高く蹴り上げてみせた。
「生涯最後のワインの味は……味覚あるのかしら?」
 そんな疑問をリドニアが抱く間に、絶望の瞳は空中でその体を瓦解させていく。
 それと同時に、地上に穿たれた穴の半分が少しずつ修復を始め、塞がっていく。
 となれば、残る穴はもう1体によるものだろう。
 絶望の瞳に攻め入るベルナルドは間近から色を使った神秘の一撃を撃ち込む。
 その瞳の輝きは明らかに鈍ってきていたが、仕留められなかったと知った彼は反撃を警戒して敵の死角へと回ることを優先する。
 残る敵が1体となり、イレギュラーズが代わる代わる攻撃を加えていくが、終焉獣はしぶとくメンバー達を睨みつけて力を奪い取る。
「今です。一気に行きましょう」
 気力を解き放ち、睦月が仲間達に力を与えると、銘々が攻撃準備を整えて。
「タイミング合わせて……いくよ」
 ラムダの呼びかけもあり、ホーやマリオンが仕掛ける後ろから、史之が追撃して。
 ここまで回復に付き従ってくれた睦月の存在を感じながら、彼は敵を注視する。
 すでに終焉を刻む斬撃を浴びせており、相手も虫の息のはず。
 そう確信した史之は終焉獣のみを捉え、乱撃を叩き込む。
 …………!!
 どす黒い血をまき散らす終焉獣は萎み、穴へ転げ落ちる。
 その穴も程なく何事もなかったかのように元に戻っていったのだった。


 影の一隊を倒したイレギュラーズだが、警戒を続けたまま。
「さて、クリーニング代はどなたに請求すればよろしいですか?」
 ホーが呼びかけたのは、この戦い様子を物陰から窺っていた鎧を纏う2人組だ。
 …………。
 …………。
 それぞれ黒と白銀の鎧を纏う2人は親子にも見えそうだが……。
「お初にお目にかかります。その格好から天義の聖騎士殿とお見受けしましたが」
 持前の交渉術も活かし、ホーは何故この場所にいるのかと尋ねる。
「都市の浸食を確かめようとしたところ、あなた達に遭遇しただけですよ」
 黒い鎧から発せられた声は女性のそれだ。
 その女性に、マリオンは挨拶を交わして。
「どうして、見てるだけで手をださなかったのかな?」
「あの影の力を見たかったからです」
 その様子から、外部者の可能性をマリオンは察知する。
「――アドラステイアの生き残り、かしら?」 
「ええ」
「子供をこんな危険なことに巻き込む……なるほど」
 鎧の中身が異形である可能性も考えていたベルナルドは天義で生まれ育った画家だと名乗ってから、遂行者に問いかける。
「致命者は死者ってパターンもあるようだが、そこの聖騎士君は生きてるのか?」
「どうでしょうね」
 くすりと笑う遂行者が白銀の鎧を着た少年へと視線をやると。
「ジョエル……神罰……神託を成就する……」
「…………」
 影の天使と似たような少年ジョエルの呟きを、リドニアは無言で受け止める。
 どのような結果であれ、その口から出たものが真実というなら。
「これが神罰と言うなら、それは天義に喧嘩売ったって事ですわね」
 その様子に、遂行者が微笑して。
「ソレは終焉獣なんかが生み出した哀れな人形よ」
 そこまで聞いていた睦月は主に黒鎧の女性へと疑問をぶつける。
「あなたがたが黒幕ですか? 何故こんな真似を? この町になにか恨みでもあるのですか?」
 憎き敵ではあるが、今だけは礼儀をつくして、睦月は接する。
「お生憎ですが、私は力を貸しているだけ」
 睦月の隣で史之は殺気を放ち、敵を牽制し続ける。
 何せ、魔種のごとく不倶戴天の敵となることを、彼は疑いもしないからだ。
「それ以上カンちゃんに近づいてみろ、その首、叩き切ってやる」
「心しておきますわ」
 黒鎧の女性は慇懃無礼な態度を崩さない。
「歴史の修復だか何だか知らないけど、それが君たちの言う主が定めし歴史、主の意志だとしてもボク達が阻止するし、抗いきってみせるさ……なんてね?」
 ラムダもそんな女性に負けぬよう煽ってみせて。
「で、君はどこのどなた様で?」
 致命者は名乗ったし、素性も明かされているが、黒い鎧の女性はアドラステイアの生き残りとしか明かしていない。
「そうですね。以前はティーチャーと名乗っていた、とだけ」
 刹那、放つ殺気。
 黒鎧の遂行者は致命者を連れて一行から背を向けて。
「それでは、近いうちにまた会いましょう」
 全身鎧の中から、何とも言いえぬ魔力を放ちながら、そいつはその場から去っていく。
「無理な深追いは禁物ですね」
 黒鎧の女性の正体を完全には暴けなかったが、ホーは多少なりとも情報が得られ、目的は達成したと認識する。
 下手に追えば、更なる敵に囲まれてしまう恐れがある。
「しっぽをつかむことには成功した。忘れるもんか」
「いつか倒そうね。僕も力及ばずながら頑張るよ」
 史之も睦月も、無念さを滲ませつつそう言葉を交わし合うのだった。

成否

成功

MVP

ベルナルド=ヴァレンティーノ(p3p002941)
アネモネの花束

状態異常

なし

あとがき

 リプレイ、公開です。
 MVPは纏めて敵の体力を削ったことによる貢献度、踏み込んだ敵への問いかけなどを考慮して付与させていただきました。
 今回はご参加、ありがとうございました!

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