PandoraPartyProject

シナリオ詳細

おい、息抜きで闇鍋やるってよ!食べられる物を持ってこいよ!(フラグ)

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


「あ~~~~~、どこ行っても戦争、戦争……人生クソかよ……」
「博士、口が悪い、です」
「良いだろ、別に。俺は元の世界じゃ『素行が死ぬほど悪い軍用武器開発博士』で通ってるんだから」
「元の世界の事情は知りません、です」
 鉄帝国のある地域にある無人の山小屋。そこを一時的に借りている(許可は得ていない)クレイン博士と『蒼の記録装置』サフィロス・クレイン(p3n000278)が、ぐだぐだと過ごしている。それはもう、ぐだぐだと過ごしている。
「今、鉄帝国は大変、です。ですから、博士もローレットを毛嫌いせず、協力しましょう、です」
「俺は元の世界に帰りたいの。知ってるだろ、サフィ」
「知ってます、です」
「ぶっちゃけ、俺、この国はどうでも良いのよ」
「博士ならそう言うと思いました、です」
「でも、ここが練達の次に工業化が進んでるんだよ……だから、来たのに……」
 そう。二人は練達に居を構え、クレイン博士がなんとか元の世界に帰れないかと研究をしていた。シレンツィオリゾートがどうとかこうとかしている間に、何かの参考にならないかと、フィールドワークを兼ねて軍事国家である鉄帝国へ遊びに行っていたのだ。その結果、バルナバスが帝位に座し、巻き込まれ、まぁ、なんか比較的過ごしやすそうなアーカーシュに技術提供くらいはするか! という雑な理由で与していたのだ。尚、サフィロスはイレギュラーズではないので、空中庭園は使わず自力移動でどうにかしてきた。とても大変だった。(クレイン博士談)
「なんか、こう、やらかしたい」
「どういったことを、ですか?」
「人命に関わらない程度で、クソみたいなこと。サフィ、何か良い案ない?」
「……でしたら、博士が仰ったことで気になる『記録』が一つあります、です」
「俺が言ったこと?」
「はい、です。それは――」
 サフィロスの答えを聞く。すると、クレイン博士が「あー……」と言いながら少し思案して、にやりと笑った。
「良いな、それ。それにしよう。サフィ、ローレットでこういうのが好きそうな奴集めてきてくれ。息抜きに丁度良いだろ」
「はい、です!」
 元気よく返事をしたサフィロスの背を見送る、クレイン博士。とりあえず、誰が来るかは分からないが、誰かがここに来る。綺麗にしておいて損は無いだろうと、クレイン博士は掃除をし始めた。


 現在進行形で色々となんかある鉄帝国。その、なんやかんやがある国で、一人の少年のような少女のような(実際は無性なのでどちらでもない)サフィロスが、ピリピリと張りつめた雰囲気のローレットの中心でイレギュラーズたちに向けて話し始めた。
「『闇鍋』というのを食べてみたい、です!」
 いや、急にどうした? 動揺が広がる。
 今まで、アーカーシュの遺跡を調査したり、ローレットで(あるイレギュラーズの代理ではあるが)作戦に言及したり、鉄帝国民に対して炊き出しを行っていたりしていたあのサフィロスが。きっと、今回もこう、細々した、なんか露払い的な依頼でもするのかなー、なんて思っていたのに。どうして、闇鍋? 何故、このタイミングで闇鍋?
「正直、色々と忙しい事ばかりだった、です。なので、博士が、『息抜きに丁度良いだろう』って、言っていました、です」
「いや、それは息抜きになるのか?」
 あるイレギュラーズが、ついツッコミを入れる。
 闇鍋――それは、各々好きな食材などを持ち寄り、暗闇の中で調理をし、食べる。それだけだ。だが、その持ち寄った食材に、何故かアレなものが入っていたりソレが入っていたりしており、最終的には胃薬の大切さを知るRPG。そういう、崇高な遊び(?)だ。
「とにかく、です! 僕はずっとやってみたかった、です! 気になっていた、です! 博士がGOサイン出したので、このタイミングで『記録』したい、です!」
 一体何を記録するつもりなのかは分からないが、まぁ、言いたいことは分かった。
 ここで、本来ならば誰かが「止めろ!」と全力で止めていたかもしれない。だが、不幸なことに、ここにはサフィロスを全力で止められる者はいなかった。ここには、闇鍋にノリノリな者、闇鍋を知らない者、闇鍋を知っているが強く言い出せなかった者等々……まぁ、とにかく、止める人はいなかった。
「あ、鍋とか薬とかは僕たちの仮拠点に置いてあります、です! ですから、皆さんは食材を持って、この山小屋まで来てください、です!」
 そう言って、手渡されたのは手書きの地図。どうやら、山小屋までの道が書かれているらしい。
「それでは待っています、です!」
 サフィロスは大きく手を振ると、その場から去って行った。

GMコメント

 初めまして、こんにちは、こんばんは。萩野千鳥です。
 早速ですが簡単に説明致します。

●目的
 闇鍋を楽しむ(?)

●地形
 山小屋です。暗くしています。
 鍋を温めている火で手元は見えます。

●敵
『鍋の具』
 一人一個必ず持ってきてください。一応、食べられる物限定です。
 相談掲示板で書いたこと? 知りませんね…プレイングが全てなんで…
(騙し合いは楽しめる範囲でご自由に)

●NPC
『クレイン博士』
「暇じゃないけど暇だった。何かやらかしたかった」
 一応、イレギュラーズ。魔砲と銃の使い手。大体こいつのせい。
『サフィロス・クレイン』
「『記録』にないので、ずっと気になっていた、です」
 一般人。情報を集めたり引き出したりする。味覚? 秘宝種なので…

●情報精度
 このシナリオの情報精度はAです。
 想定外の事態は絶対に起こりません。

 以上です。どうぞ宜しくお願いします!

  • おい、息抜きで闇鍋やるってよ!食べられる物を持ってこいよ!(フラグ)完了
  • GM名萩野千鳥
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2023年03月09日 21時15分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
古野 萌乃(p3p008297)
名状し難い軟泥状のもの
御子神・天狐(p3p009798)
鉄帝神輿祭り2023最優秀料理人
ニャンタル・ポルタ(p3p010190)
ナチュラルボーン食いしん坊!
玄野 壱和(p3p010806)
ねこ
若宮 芽衣子(p3p010879)
定めし運命の守り手
E・E ・R・ I・E(p3p010900)
からっぽのイリー

リプレイ


 最近はなんかもう色んなところで色んなことがあるが、現在なかなか大変なことになっている鉄帝国。その鉄帝国のある場所に建っている山小屋の前に、八人の勇者――イレギュラーズが立っていた。扉をノックすると、中から聞き覚えのある声で「はーい、です!」と返ってくる。その声のすぐ後にがちゃっと扉が開き、サフィロスが出迎えてくれた。
「あっ、イレギュラーズの皆さん、ですか?」
「うむ! 依頼通り、食材を持ってきたぞ!」
「勿論、皆サン互イノ食材ハ知リマセン……YAMINABEデスカラ。調理ハ、料理人ノ方ニオ任セ致シマス」
「(スゥーーーー)……アレンジすれば、ワンチャン行けると信じたい」
『ナチュラルボーン食いしん坊!』ニャンタル・ポルタ(p3p010190)の言葉に、『からっぽのイリー』E・E ・R・ I・E(p3p010900)も続ける。そんなイリーの「料理人に任せる」という発言に、『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)を空を仰ぐ。そんな彼を隣で励ますのは、『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)だ。
「大丈夫ですよ、ゴリョウさん。ゴリョウさんなら、きっと、大丈夫ですの……!」
「TKRy・Ry……そうそう、大丈夫なのだ!」
「そうダナ。オレは変な食材なんて持ってきてないゼ……ウン。持ってきてないから大丈夫ダ。ちゃんと食べられる物ダ」
「なんだろう……大丈夫だと思えない……」
「まぁまぁ、気にしたら負けなのじゃ!」
 ノリアに便乗するように、二人の背後から『名状し難い軟泥状のもの』古野 萌乃(p3p008297)と『ねこの料理人』玄野 壱和(p3p010806)が追加で励ましの言葉を贈る。しかし、その言葉の端々に何かを感じた『定めし運命の守り手』若宮 芽衣子(p3p010879)がぼそりと呟くと、『鉄帝うどん品評会2022『金賞』受賞』御子神・天狐(p3p009798)がばしばしと芽衣子の背を叩きながらそう言った。
 そんな立ち話をしていると、山小屋からサフィロスへと声がかかる。
「サフィ! イレギュラーズが来たなら、さっさと中に案内しろよ」
「はーい、です! ……すみません、です。こちらへどうぞ、です!」
 サフィロスは八人を山小屋の中へと案内した。十人が集うのに丁度良いくらいの一番大きな部屋に、白衣を来た男が丁度鍋の準備をしていた。彼がサフィロスの言う『クレイン博士』なのだろう。
 窓から入る日のお蔭で、まだ部屋の中は明るい。そんな部屋の真ん中には机と練達製ガスコンロと鍋。その傍には、水差しと薬瓶、人数分の食器もきちんと置かれている。
「ええと……」
「ああ、俺か? 俺はクレイン。呼び捨てでも博士呼びでも好きにしてくれ。
 それはそれとして、こんなクソ忙しい時にわざわざすまないな。だがまぁ、やらかし――んんっ、息抜きに丁度良いかなーって思ってな」
「今、やらかしって……」
「何のことだかさっぱり」
 じーっと芽衣子はクレイン博士を睨むが、彼はシラをきる。そんな様子を見たサフィロスがぽん、と一つ手を叩くと「皆さん、席に着く、です!」と音頭を取った。
「ええっと……お部屋を暗くして、一人ずつ食材を入れて頂く、ですよね? 博士」
「ああ、そうだな」
「あ、あの、……一つ先に、入れたいものが、ありますの。闇鍋を、はじめる前に、一つだけ」
「ん? 何だ?」
「これです」
 そう言って取りだしたのは、黄金海鮮出汁だ。確かに、闇鍋を始める前に出汁を入れておく必要がある。一応用意はされていたが、折角なのでノリアが持ってきていた物を使うことにした。
 ノリアが鍋の中にとぽとぽとぽ……と黄金海鮮出汁を注ぐ。
「この香り……ふむふむ、これはなかなか良い出汁じゃな! 鍋だけじゃなく、うどんにも使えそうじゃ」
「ええ、きっと、おうどんにも、合うとおもいますよ」
 調和のとれた完璧な出汁の香りが部屋の中に広がる。これはなかなか良いスタートなのではないだろうか。鍋といえば、出汁。とても大事。
「出汁は入れたし……食材を入れる順番の希望はあるか?」
「それなら、俺が最後でも良いか?」
「ワシも一番でなくていいが、最後の方が良いの」
 ゴリョウと天狐がそう宣言する。特に異議はないので、天狐とゴリョウが最後に食材を入れることが決まる。
「他は奥から時計回りで良いか」と、適当に座った席の一番奥――天狐を飛ばして時計回りに、ニャンタル、壱和、イリー、芽衣子、萌乃、ゴリョウを飛ばしてノリア、サフィロス、クレイン博士の順で入れることになった。
 サフィロスがコンロを点火すると、クレイン博士が遮光カーテンで窓を覆う。すると、昼間だというのに、山小屋の中は暗くなった。これで、準備は完了した。
「さぁ、闇鍋を始めます、です!」


 暗い部屋の中、コンロに点いた火だけが部屋を灯す。視界は悪い。弱火にしているのにも関わらず、ぷつぷつ、と出汁が泡立つ音がやけに響く。
「さて、一番最初は我か!」
 ニャンタルが声を弾ませながら、荷物から食材を取りだした。しゅるる、と滑る音の後に、カサカサ、と何かが擦れる音がした。何か包装を取っているのだろうか。先程とは異なる、スッと擦れる音がしたかと思うと、ちゃぽん、ちゃぽん、と一つずつ鍋の中に入れていく。暗闇に目が慣れていても、それが何かは判別できなかった。
「入れ終わったぞ!」というニャンタルの声を合図に、壱和が荷物から食材を取りだす。
「最初はこっちを入れるカ」
 クシャクシャッという音に続いて、ぽちゃん、と少し重めの物が入れられた音が響く。「もう一つは~」と、荷物をがさごそと探していると、パカッと何かが開く音がした。そのすぐ後にカチャリ、と食器が擦れる音が続く。ちゃぽん、ちゃぽん、と先程よりも軽めの何かが入れられる。トングのような物の先に、柔らかそうな何かが揺れていた。
「次ハ私デスネ」
 イリーはぱこっと何かを開けると、クシャクシャという先程とは異なる質感の音を鳴らす。そこから取り出した物を、ぽちゃんと入れると、再びクシャクシャという音を鳴らして、ぽちゃん、とゆっくり入れていく。出汁が跳ねないように、気を付けているようだ。
「入れ終わった? それなら……」
 芽衣子はガサガサっと何かから取りだすと、それを、チリチリチリ、という何とも言えない音を響かせながら開ける。そこからパキッと何かを折り、ぽちゃん、ぽちゃん、と鍋に入れた。再びパキッと折ると、そのままそれも鍋の中に入れる。
 この時点で、今まで良い香りだった出汁に変化があることに気づく。変な香りがする、という訳ではないが、なんだか微かに甘い。いや、めっちゃ甘い匂いがする。もしや、アレを入れたのだろうか。いや、これを……と、各々予想しながら、鍋の様子を伺う。しかし、暗くて見えない。混沌がそこに広がっているのだけは分かる。だが、もう止められない。
「TKRy・Ry……!」
 その香りに怪しく嗤う萌乃。その手に持つ食材は、べちょ、べちょり、と何かが蠢いている、ような気がする。甘い香りの中に、独特の匂いが混じる。見えなくて良かった。鍋に入れやすいように既に一口カットされた物をちゃぽん、ちゃぽん、と入れていく。「テケリ・リ……」とソレが鳴いた気がしたのだが、気のせいだろうか……気のせいだと信じたい。
「え、ええと、……頑張りますの!」
 ノリアが最初に入れた出汁の香りはほぼない。このままでは、ゴリョウが哀しむかもしれない。
(農家にして料理人の、ゴリョウさんの、未来の、妻として……わたしには、闇鍋を、ちゃんと、たべられるものにみちびく、責任がありますの!)
 そう決心したノリアは、荷物の中をガサゴソと探る。――ない。
「あ、あれ?」
「どうかしたか?」
「いえ、何でも、ありませんの」
 心配そうにするゴリョウに対し、ノリアは平静を装って返事をする。
 確かにタラの切り身を入れてきたはずだったのだ。しかし、失くした心当たりもある。この山小屋に辿り着く前に、体勢を崩し、荷物をぶちまけてしまったのだ。きっと、その時に詰め忘れたのだろう。
 ――しばらく、ごそごそ、という音がしたかと思うと、ぽちゃん、と何かが入れられた。
「入れ終わりました」とノシアが告げると、「じゃあ、ワシじゃな!」と、天狐は意気揚々に荷物から何かを取りだした。彼女は、自信があったのだ。闇鍋という戦場に勝つ自信が。
 闇鍋――それは、宇宙。闇鍋――それは、真理の探究。あらゆる具材を投入し、その旨味の化学反応を発生させようとする錬金術。様々な具が互いを貪り喰らう、自らが最も強いのだと主張する為に。――つまり、食材の蟲毒壺。
「鍋に適当に入れて、遊び半分で喰らうなど笑止千万!! 己が最強と自負する食材たちを捻じ伏せ、頂点を掴むのじゃ!!」
 そう言って取りだした物を天に掲げる。
「蒼空を見よ! 見えるであろう、我々に優しく微笑みかける神の姿が!」
 天狐の背後に、薄らとスポットライトのような光が差し、まるで長い白髭を蓄えたインド人のような人物が現れる。
『मुझे लगता है कि आपको इस बात पर विचार करना चाहिए कि आप कितना डालते हैं』
「「は???」」
 一同困惑。しかし、そんなことも気にせず、天狐はぼちゃぼちゃっと、鍋に先程まで掲げていた食材を入れる。追加で更に入れる。それらを入れ終わると、更に追加で入れる。一体どれくらい入れるつもりなんだと思っているのと同時にやって来る、スパイシーな香り。「あっ(察し)」状態。これは勝ち確。そんな中、クレイン博士が「やっぱり来たか」と呟いた。多分、笑っている。
「で、最後は……」
「ああ、俺だな」
 わざわざ一番最後を名乗り出たゴリョウが、ぱんっ! と何かを開ける。ザラザラザラ、と鍋の上に何かを投入している。軽いのか、ぺちぺちぺち、と水面に浮いているような音がする。
「それじゃあ、かき混ぜる、です! どうなるか楽しみ、ですね!」
 声だけで分かる。サフィロスは純粋に楽しんでいた。――この先に地獄が待っているとも知らずに。


 ぐるぐると掻き混ぜられた鍋の中。未だに暗いが、流石にもう目は慣れた。少なくとも、鍋の位置はしっかりと把握できている。
「ここはやっぱり、一人ずつ食っていくか?」
 クレイン博士がそう尋ねる。
「ソウデスネ……多分、アレガ入ッテイマスカラ、味ハアマリ変ワリナイカト。デスカラ、皆デ食ベマセンカ?」
「賛成。何か嫌な予感がするシ」
「それは、あなたの具材にも言えることでは……」
 なんだかんだで、とりあえず『一口目は全員一緒に食べる』ということになった。各々、これだ! という、勘で鍋から一掬い。食器に移した中身の中から、一つ、具材を選んだ。
「かー! なんかこう! 胸踊るな!
 ドキドキとワクワクと、ちょっぴりの恐怖がスパイスになって悶えるくらいじゃ!」
 そう言っているニャンタルの器を持つ手は、ガタガタガタ……と震えている。悶えるどころの話ではない。声色からは楽しそうだということは分かるが、本心は闇の中。
「それじゃあ、一緒に食べます、です!」
「「いただきます!」」 
 一斉に一つ目の具材を口に入れる。
 …………。
 ……………………。
 …………………………………………。
「からっ、しょっっっっっっぱ!!! は?? いや、入ってるのは知ってたが、は?? 溶けきってないんだが??」
「……ム、こ、コレハ……中々刺激的ナナナナナアガバババ。出力全 テば ぐヲ増、殖。ナガバばバガ世界はコンニチハ! ア、ガガ、カ゚」
「あらら、イリーさんがバグってしまいました、です」
「サフィ、同じ秘宝種だろ。何とかしてやってくれ。
 っていうか、なんだ、この妙な後味の悪さ。カレールーだけじゃこうはならんだろ」
 クレイン博士が半ギレで感想を告げる。同時に、イリーの眼部ユニットが青くなっている。所謂ブルースクリーンという奴だ。どうやら二人が食べたのは、天狐が入れたカレールーそのものだったらしい。
「ふははは! やはり、ワシのカレールー(業務用一キロ)の勝利じゃな! まぁ、入れ過ぎたのは確かじゃが……後味については知らん!
 しかし、ワシが食べたこの、具にしてはでかいふわふわは何じゃ? 一口では入りきれなかったんじゃが……外はカレー味、中は……これは餡子か? え、この中に饅頭みたいなやつを入れたのか?」
「……ハッ! 再起動、成功シマシタ。
 オヤ? ソチラハ、当機オ気ニ入リノ豊穣土産ノ『モミヂ饅頭』デハアリマセンカ!」
「あ、あ~、我もそのもみぢ饅頭かもしれんな! 妙にスパイシーでしょっぱいのと甘いのが混ざり合って、混ざり切れていないんじゃが!」
「カレールーガ入ルノハ予想外デシタ……甘イモノハ美味イ。ハズナノデスガ」
「いや、依頼主の俺が言うのもなんだが、闇鍋の時点で美味しくできる確率は低いだろ」
「ソンナー」
 もみぢ饅頭でやいのやいのしている間に、ゴリョウは眉間を揉みながらうーーんと唸っていた。
(いや美味いよ? カレーの味にも負けないくらい良い出汁も出て、舌触りも良くて、旨味もあって美味いんだけどさぁ……)
 ゴリョウが食べた食材には心当たりがあった。つるんとしたゼラチン質の何か。それは、今現在隣に座る彼女自身の尻尾だ。ちらりと隣を見る。もうすっかり目が慣れてしまったため、隣に座る彼女が眉を思い切り下げていたのが見えた。味が分かっていないのか、もそもそとドーナツ状の具――車麩を食べ続けている。
「んん……お米が、入っていませんでしたが、うまく、できたでしょうか? ゴリョウさんのお役に、立てなかったなら、もう……おそばに……」
「いや、役に立ってない、なんてことはない! なぁ、これ持ってきたのノリアだろ? これは美味いよ」
 そう言って、ゴリョウはノリアの器に入っていた彼女の尻尾を取りだした。
(何か他の奴に食わせたらいかん気がする! ンなこと気にしなくてもいいのによぉ!)
 どうしてそう思うかなんて、自分が良く分かっている。ノリアの尻尾を探すために、ゴリョウは鍋の中を必死に探し始めた。その隣で、ほんの少しノリアが安堵の表情を浮かべたのは、誰も知らない。
 ゴリョウが鍋の中を探しているのを見ながら、芽衣子はカレーコーティングされた車麩が、しっかりと吸った甘ったるい出汁と気持ち悪くなりそうな何か名状しがたい汁の混合物を口にしていた。
「うっ……無理、これは……甘いのはまぁ、自業自得としても」
「自業自得ぅ? めーちゃんは何を入れたのだ?」
 隣に座っていた萌乃が、何かよく分からない肉を咀嚼しながら尋ねた。
「ああ、大したものじゃない。板チョコだよ」
「お! チョコ仲間じゃな! やっぱり、この時期はこれじゃよな!
 塩辛と迷ったんじゃが、チョコ位なら可愛いもんじゃろ! 我、可愛いしな! HAPPYグラオ・クローネ♥ じゃ♪」
「TKRy……ハッピーとは一体……」
 ニャンタルの言葉に萌乃が哲学みを感じながら、次の食材を口に運ぶ。かなりしょっぱいカレー味の肉は、食べられなくはない。先程は単なる肉だったが、今回はモツ系の肉のようだ。
「しかしこれ、カレーに紛れているが妙に酸味があるというか、なんというか……んん? 食べて大丈夫な肉なのか?」
「肉? なら、オレかもしれないナ。どれダ?」
「これ」
 萌乃が器の中にある具を指す。それを覗き込んだ壱和は、「あぁ、」と納得すると説明し始めた。
「それ脳ミソ。ザクロ肉の。一番高くて旨い部位だゾ。ラッキーだナ」
「……TKRy!? 食べられる物を入れろと……あれほど……!」
「いやいや、食べられる物だからネ。わざわざ、一頭丸々、この闇鍋パの為だけに仕入れたんだゼ」
「うっ……あれほど……こっ、これヤバ……うぷっ……ちょま……ぉ……」
 アイディアロールをクリティカルした萌乃は、席を立ちガチャッと扉を開けてどこかへと走り去って行った。
「いや、人の事言えないと思うんだケド」
 そう言いながら、壱和は自分の器の中を覗き込む。一つ目は自分が持ってきた食材だったのだが、二つ目を食べようとしたところで壱和は違和感に気づいたのだ。
「……食材が食材を食うなんて、聞いてないヨ」
 十中八九、このバイオなフードは萌乃が持ってきたのだろう。この場に持ってきたということは、食べられるのだろう。多分。器の中でうごうごと動いている玉虫色のそれを、壱和は思い切り口の中に放り込んだ。

「「ごちそうさまでした!」」
 もう、半ばやけになった声色で、最後に手を合わせる。しかし、そのほとんどが机に突っ伏した状態だ。死屍累々、とも言う。
「皆さん、面白い食材を持ってきて頂いて、そのお蔭、でしょうか? 不思議な味がして、とても楽しかった、です! これが闇鍋……しっかり『記録』しました、です!」
「あー、まぶしっ! ……はぁ。胃薬は、そこに置いてあるから、勝手に飲んでくれ……」
 満足げなサフィロスが、容赦なく遮光カーテンを開ける。クレイン博士は机の上にある薬瓶を指差しながらそう伝えると、そのままバタリ、と伏せた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

ノリア・ソーリア(p3p000062)[重傷]
半透明の人魚
古野 萌乃(p3p008297)[重傷]
名状し難い軟泥状のもの
玄野 壱和(p3p010806)[重傷]
ねこ
若宮 芽衣子(p3p010879)[重傷]
定めし運命の守り手

あとがき

お疲れ様でした。
サフィロスは闇鍋を楽しめたようです。皆さんは分かりません!()
ご参加頂き、ありがとうございました!

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