シナリオ詳細
おーにのめんたまぶっつぶせー
オープニング
●Yeah
俺はレペゼン高天KYO
これはEndless Permanent GO
恨み積もって復讐 それが俺のStyle
食らいついてけ 喉笛めがけ
どうしようもねえ祭りは ぶっ壊すDance with Hard Luck アッパーなテンションでSomebody say HO...
●豊穣、高天京にて
「天打ち地打ち四方打ち、鬼の目ん玉ぶっつぶせ!」
表通りで、きゃいきゃいとゼノポルタの子どもたちが鬼役へ向かって福豆を投げつける。仮装したヤオヨロズが、これはかなわんとばかりに逃げ回る。なにせ顔を狙ってくるものだから、面をつけているとはいえ、けっこうハードなのだ。
「はあ、今年も盛況だでな、田吾作どん」
「んだんだ、子どもたちも元気でええこった。あとで恵方巻きを食わせてやらんとなあ」
などと楽しく鬼役たちが声を交わす。
今日は高天京にあるこの町あげての節分だ。ヤオヨロズたちが想像上の産物であるところの「鬼」の姿に扮し、それめがけて豆をぶつけることで、立春をすがすがしく迎えるための重要な儀式だ。娯楽が少ない豊穣の生活では、大事なお祭りでもある。
「ん、ありゃあなんだべ?」
ふってわいた疑問に、鬼役たちはそちらへ顔を向けた。
なんか、すごい、光ってる。後光がさしている。ゲーミングカラーの鬼のおでましだ。しかも肩にラジカセをかつぎ、グラサンをしている。あまりのゴキゲンさに、周りの鬼役はあぜんとした。
「ちゃちな祭りはGet away! 節分しゃらくせえSATSUGAI! SATSUGAI!」
なにを言っているのかわからねーが、敵意を向けられているのはわかった。人々は急いで子どもたちを抱えあげ、逃走を開始した。
●依頼
「……高天京で、節分をしようとしたら、本当に鬼がでてしまったから、退治して」
言っている本人、【魔法使いの弟子】リリコ (p3n000096)も納得していない様子だった。大きなリボンが不服げにふわふわ揺れている。
「……鬼は古来より、言い伝えられえている不幸を運ぶ妖怪の一種。見た目はゼノポルタに似ていて、特定しづらい……というのが本来なのだけれど、今回の鬼はちょっと違うみたい」
どんなふうに? あなたが聞くと、リリコはしばしとまどったうえで「……ゲーミングカラーなの」とつぶやいた。
「……鬼の色には意味がある。赤鬼は欲望の現れ、退治することで悪心が取り除かれる。青鬼は憎悪の現れ、退治することで福が訪れる。緑の鬼は不摂生の現れ、退治することで健康に恵まれる。黒い鬼は疑念の現れ、退治することで心の迷妄から救われる。白い鬼は我執の現れ、退治することで精神を清らかに保つことができる」
『ふしぎな“隣人”たちの本』を開きながら、リリコはそう説明した。
「……それらすべての色を内包したゲーミング鬼は、悪徳そのもの。節分をしようとすると、どこからともなくこのゲーミング鬼が現れて邪魔をしていく。このままでは立春を迎えられないし、罪のないゼノポルタへ悪評が立ちかねない。豊穣はまだゼノポルタ差別が残っている。せっかく融和しつつあるヤオヨロズとゼノポルタの関係を悪化させる訳にはいかない」
リリコは一息置いた。
「……ゲーミング鬼はおそろしく回避が高く、そのうえ武器が効かない。対抗手段はただひとつ、炒った大豆、あるいは落花生をぶつけること」
そういう意味では、恐ろしい相手かもしれないわと、リリコは言い添えた。
「……終わったら、町の人達がねぎらいを兼ねて宴会の準備をしてくれている。恵方巻きを食べるもよし、ぜんざいに舌鼓をうつもよし、なにか料理をするもよし……でも、なにはともあれ、ゲーミング鬼を倒さないことには始まらない」
気をつけてね、と、リリコはあなたへかすかに微笑みかけた。
- おーにのめんたまぶっつぶせー完了
- GM名赤白みどり
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年02月15日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●
「さっきからなんだ! 文法はむちゃくちゃ、韻も踏んでない! 音楽的美意識が全く感じられない!」
イズマは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の鬼を除かなければならぬと決意した。イズマには音痴がわからぬ。イズマは、ええとこの出である。各地で比類なき戦績を積み、海洋を領地に暮して来た。けれども音楽に対しては、人一倍に敏感であった。
「手本を見せてやる、行くぞ!」
イズマはスピーカー「フォルテッシモ・メタル」からアップテンポな重低音を流しだすとリズムに乗って歌いだした。イズマくらいの声量と滑舌があれば、マイクなど不要なのだ。
なぜこんなことになったのかというと。
●
「ゲーミング鬼ィ~~~? とんだ不審者が居たものだな!!」
『やさしき愛妻家』黒影 鬼灯(p3p007949)は空を仰いで嘆いた。腕の中には今日もちんまり可愛いお人形、章姫が居る。周囲の物言いたげな視線を察し、鬼灯はあっちへ行けとばかりに手を振った。
「……なんだその目は? 俺は不審者ではない。なんなら身元を明かそうか? あの『暦』の頭領で、奥さん大好きな無害な忍のお兄さんだぞ。ついでに言うとロリコンでもない。愛しているのも心動かされるのも章殿だけだ」
豊穣で名の通ったあの『暦』の頭領って時点で危険な香りがしなくもないし、幼女にしか見えないロリロリお人形をだっこしているのだから街の人からビミョーな目で見られるのも致し方ない。
なにか考えているのか、章姫は愁眉を寄せている。
「鬼は外というから鬼さんが悪さをするのかしら? 鬼さんをおうちへ入れてあげたら、悪さやめないかしら」
「はい、今日も章殿の心の清らかさと優しさプライスレス! すばらしきかな人生!」
致し方ないが、本人的にはどうでもいいことのようだ。
「でもうちは孤児院の子らと鬼より怖い神主さんこと神無月がいるからな、鬼としては外に居たほうが安全だと思うぞ、章殿」
その頃、神無月は偶然顔を合わせたベネラーにガンつけしていたという。
『金剛不壊の華』型破 命(p3p009483)が頭をくしゃくしゃとかきまわした。今日も何をすべきかはきちんと心得ている。さすがはサヨナキドリ豊穣支部長を勤めてのける器だ。
「鬼人種じゃない鬼が暴れまわって悪さをする、か。たしかにそりゃ放ってはおけねえや。単純にみんなも迷惑してるし、ぶっとばすとしようぜ」
「ええ、豊穣まで足を伸ばしてみればどなた様もお困りの御様子。依頼達成後の振る舞いに期待してがんばりましょうか」
豊穣と言えば独特の風味で知られる豊穣酒。『蛟』尹 瑠藍(p3p010402)は、それをたいそう気に入っていた。不安げな街の人を見回し、元気づけるように微笑む。
「ふふ、冗談よ。力ある者が民を助けるのは当然のことだもの」
心強いセリフに、街の人はほっとしたようだ。
『ママうさメイド』夜摩 円満(p3p010922)は愛らしい顔立ちへ怒りをあらわにしている。今日は焔魔ちゃんはおやすみらしい。
「私! 珍しく怒っております! 皆さんの豆まきの邪魔をし、鬼人種への風評被害をもたらし、何よりもゲーミング色に輝く悪徳の妖怪など断固許せません! 悪徳の塊で無辜の人々に危害を加える悪しき存在は……ええ、退治してしまいましょう!」
円満の全身を光が彩った。
「さあ、鬼退治です!」
「「あ」」
みんなの目が釘付けになった。変身バンクで虎柄ビキニ姿になった円満の、張りのあるふくふくおっぱいがポロリしかけたので。
「阻止」
『闇之雲』武器商人(p3p001107)は性別不明という利点を最大限利用して、スマートかつ手早く、ほどけかけたビキニの紐を結んであげた。ポロリはギリセーフだった。
「その格好は鬼役をかってでるつもりかい? 気合十分でよきかなよきかな」
「うむ、引き寄せるための豆まきが必要と言うなら、鬼役もまた入用であろう! 任せい任せい! みごと吾へ豆を当てたものは、ごほうびに頭なでなでギューしてやろうぞ! さあ、かかってくるがよい!」
『鳴動する幼大山』弥多々良 つづら(p3p010846)が先陣を切る。
「私も負けていられません! あ、ちょっと着替えを失礼させていただきまして……」
『雪の花嫁』佐倉・望乃(p3p010720)も虎柄ビキニ姿になった。清楚な雰囲気に反して充実したふとももがまぶしい。
「大丈夫ですよ。『お姉ちゃん』に、どーんとお任せ下さい!」
にっこり笑う望乃は愛らしくも頼もしかった。
「ゲーミングで鬼でラッパー……??? 開始前時点で情報が渋滞してるんだが」
『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は渋面を作り、眉間を抑える。たぶん標的を想像しているのだろう、が、すぐに放棄した。
「それはそれとして……音楽で喧嘩を売られるなら買わない訳にはいかないよな!?」
「俺も鬼役やるかあ~」
命はのびをして、首をこきりとまわした。
「へへ、昔は行事なんてもんを感じてる余裕もなかったから、旦那に拾われてからはこういうのちゃんとやれるのが楽しいんだよなぁ」
うきうきしている命の隣で、望乃が福豆を用意している。落花生はすばらしい。落としてもあとで拾って食べられる。最初に思いついた人へなにかの賞をあげたいくらいだ。
「こ、こうですかね、おーにのめんたまぶっつぶせー」
「普通におっかないよな、その歌」
へっぴり腰の望乃へ命はのんびり返した。
「あ、街の皆さんは、避難してくださいね。ここはこれから戦場になります」
望乃の真摯なお願いに、街の人たちはぞろぞろと去っていく。よかったと胸をなでおろした彼女は、さあ来いと豆まき役を挑発した。それ以上に鬼役を楽しんでいるのはつづらだ。幻を呼び出してバックダンサーをさせている。楽しげなステップを見ていると、BGMなどなくとも心が上向いていった。
「えーと、鬼はー外、福はー内……で、いいのかしら? あら?」
瑠藍は目を疑った、ゲーミングに光り輝く虎柄アロハが、筋斗雲にのってまっすぐにこちらへ向かってきたからだ。
「Ole!summer!to JOY!(俺様登場!)」
「……豊穣では自然発生した生命体さえも韻を踏んだ言葉遊びを嗜むのね」
「いや、違うと思うぞ」
瑠藍の一言に、命が思わず真顔になった。筋斗雲から飛び降りるなり、ゲーミング鬼はラジカセを爆音で鳴らしながら、手を高く掲げた。
「Cry now!(くらいな!)GAMING FLASH!」
「うっ、まぶしい! 話には聞いていたけれど本当に目の痛くなる敵だこと!」
すっと鬼の射程距離から離れていく瑠藍。そのまま角を曲がり、姿を消す。
「なんともまァ、派手な色合いだねぇ。ヒトリで悪徳全部担おうというのだから横着というか強欲というか。色合いはともかく、そのギラギラした思想は嫌いじゃあないよ。ヒヒ」
笑いながら武器商人は近くの味方をかばおうと……。
「GAMING FLAAASH!」
かばおうと……。
「GAMING FLAAAAAAAAAAAAASH!」
かば……主行動だったことに気づき、早々に切り替えて鬼へ近づいた。
「Tubu Let's law!(潰れろ!)」
ラジカセで殴打された武器商人は、清潔なハンカチで鼻血を拭うと平然と笑ってみせた。いっそ壮絶なまでの笑みは煌々たる銀月のよう。
「ひっかかったね。攻撃へ手をさいたということは、あの厄介なフラッシュが来ないということだ」
「Now that tec!?(なんだって!?)」
ソリッドシナジーとオルフェウス・ギャンビットの二重奏。頭上にまがまがしい天使の輪を頂いた武器商人が、これでもかと落花生を叩き込んだ。ソウルストライクの乗った落花生が鬼の体へぶつかると同時に、じゅうと音が立ち鬼の肌が焼ける。
「Oops! You're real got now?(やりやがったな?)」
このへんでイズマがキレた。かくして冒頭へ戻る。
◆◆◆終了◆◆◆
◆◆◆再開◆◆◆
「手本を見せてやる、行くぞ!」
イズマがフロウを利かせたリリックでライムしだした。何を言ってるのかわからんかもしれんが、とにかくパンチラインがすごい。
「俺が相手だ Noizy鬼さん?
音楽あるなら立ち向かうリズム前線 ライム戦線
豆雨あられで守り抜く節分
下がる気はNo 受けて立とう!」
韻を踏みながらも、さりげなくソリッドシナジーとバロールを自分へ付与。
「俺達ローレット豊穣勢よ
パンドラ携え虹色塗り替える8打なり」
そしてこの場において、福豆の響奏撃こそがアンセムだ。
「祭りはHappy 営み 楽しみ
種を超え出揃え 手を取る伝統
さぁ年数え豆食み恵方向け
そう全ては春迎え暮らすため!」
イズマはいま輝きに輝いていた。それはなにも夜葬儀鳳花の炎舞のせいだけはなかろう。避けることの難しい三連打が、鬼へ吸い込まれていく。
「Smile見下す愉快な愚者には消えてもらおうAs soon as」
滂沱のごとき魔空間から福豆の雨を降らせ、鬼へと。副行動である。なにごとも苛烈ながらも一連の動きはさりげなく、よどみがないのが、音楽の紳士らしいイズマに似合っていた。
「逃げるなゲーミング 蜂の巣そのEyes
許すなジャミング 不幸はGood bye
刻むは8ビート 悪鬼はノックアウト!」
どかーん! なぜか魔空間が爆発し、イズマはビシッとフィニッシュポーズを決めた。
「先攻はゆずってやった。今度は俺たちの番だ! 刻め、ライム! 投げろよ福豆!」
「MCイズマ、貴殿の勇姿は忘れない。さぁ、空繰舞台の幕を上げようか。反撃開始だ」
鬼灯が落花生をとりだした。みるみるうちにそれが魔糸で覆われていく。その隙に鬼は投げキスを飛ばそうとした、したが……。
「章殿、目を閉じてお歌でも歌っていてくれ、よし、その調子だ。だあああああ貴様、章殿へなんたる不埒! 許さん許さん絶許! 貴様のラジカセぶんどって顔面の原型なくなるまで殴打してくれようか!」
鬼灯の気迫に鬼のほうがビビって投げキスをキャンセルした。絶好のチャンス。それを逃がす鬼灯ではない。
「高回避? 当ててしまっても問題はないのだろう?」
なにかのフラグみたいなセリフだが、なんのフラグにもならなかったどころか、弾丸代わりに撃たれた落花生が鬼の急所を貫く。転げ回って苦しむ鬼。
「母上の名を冠した技が外れるわけがないからな」
さらに鬼灯は動く。大地から福豆が上昇し、槍のように鬼を刺した。鮮血があふれでる。
「副行動が攻撃ではないと何時から錯覚していた……?」
鬼は苦し紛れに円満へラジカセを振り下ろす。
「ゲーミング鬼さん……貴方が悪徳の塊というのなら、私はそれから皆さんを守る壁となって、立ち塞がりましょう!」
苦痛に愛らしい顔立ちを歪めるも、円満はがんとして進路をゆずらない。自らへ向かって降りてきた聖なるかなも応援している。というか、応援団だ、この聖なるかな。
「私の後ろには仲間がいる、さらに後ろには無辜の民がいる。ぜったいに、通さない。誰にも、指一本触れさせません!」
円満の決意を後押しするかのように、つづらが神子となって皆を支援する。一切を浄化せし反動で、細い血の糸が口の端から垂れた。けれどもつづらはそれを拳で拭いてにやりと笑った。
「隙ありい!」
「What's!?」
福豆を握り込んだ拳が鬼を襲う。奇襲を受けてたたらを踏んだ鬼は、魔砲ならぬ豆砲の格好の餌食だった。
「ふははははは! ただのヒーラーと思ったがおぬしの過ちよ! 弥多々良つづら、ここに在り!」
口答えをしようとした鬼の背面が焼ける。瑠藍のフォロウ・ザ・ホロウこと福豆が当たったのだ。
「後ろはがら空きみたいね」
いつのまにか背後をとっていた瑠藍が妖しく微笑む。
「俺をわすれてもらっちゃ困る。しかしゲーミングかー、どういう理屈で光ってるんだ?」
商品化できるか? 無理かー。なんてつぶやきつつも、命は攻撃の手を休めない。一手目は致死毒を含んだ福豆。ついで逃がさじの殺人剣のごとく、福豆が軌跡を描く。攻撃を放つ時の命の瞳は真剣そのものだ。
「三千年の輝きよ、ここにいたれ。同胞を癒やしたまえ、清めたまえ」
天使のごとく歌いながら、望乃は最後の福豆を召喚したワンちゃんへくわえさせた。
「いきなさい、ブラックドッグ、クロちゃん! あなたでとどめです!」
猛犬が鬼へ体当りした。
「アデュー……」
鬼が成仏しかけたその刹那。
「アハッ♪、美味しそうな悪魂……いただきまーす」
『誰か』が、鬼の魂を食らった。
●
割烹着を着た円満が恵方巻きを作っている。具だくさんで美味しそうだ。
「リリコさんも楽しんでくださいね」
「……お招き、とっても、ありがとう」
箒へ腰掛けて飛んできたリリコは、皆へペコリと頭を下げた。
「よいよい、子どもが遠慮をするな。宴は人が多いほど良いと相場が決まっておる。さあ勝利の舞を披露しようか!」
戻ってきた街の人たちを手招き、つづらは特に子どもたちと共にわらべうたを歌い、共に踊った。子どもは体を動かすのが大好きだ。みんなつづらの華麗な踊りを真似しようと、不器用なりに懸命に手足を動かしている。おなかをすかせた子どもたちのために、つづらは炒った豆を配った。
「うむうむ、歳の数だけ豆を食べるがよい。余っても安心せい。吾の故郷では数え百を越えた旅人も数人おってな、そういう者の為に刻み豆を加えた肉団子のレシピなどもある。教えてやる故、親御達と一緒に作ると良いぞ!」
後ろの方で、つづらのダンスのためにBGMを流していたイズマ、少しばかり疲れた顔だ。
「ラップなんて慣れない事をすると疲れるな……」
渾身のリリックだったね。
「でもまぁ何とかなったし、結果良ければすべてよしだよな。おっ、恵方巻、できたのか? 配膳を手伝おうか?」
今年の恵方は南南東。
イズマを始めとするメンツがうみゅーって感じで目を細めながら太巻きをもぐもぐする。もちろんリリコも。
「ふー、長くて大変だったわ。うふふ、楽しみにしていた地酒ので・ば・ん」
瑠藍は飲める仲間へ、焼酎「呉越」をついであげた。敵対している間柄でも、この酒を前にすると一時休戦するというめでたい酒だ。当然自分もぐびり。この時期はお湯割りがいい。香りもよく、喉越しもまろやかになる。なにより体が温まる。
「そのオアシスの雫というのも美味そうだ。よかったら一献たのむ」
「もちろんよお」
のんべえ同士気が合うのか、瑠藍は鬼灯とさしつさされつ。
「ちょっぴり妬けちゃうのだわ」
「何を言う、俺は常に章殿一筋だ。ほらほら章殿、豆菓子があるぞ。この街で名の通った菓子屋からの献上品だ」
「わーい、うれしいのだわ」
ころっと機嫌を直した章姫。
「リリコ殿もこちらにおいで。甘酒でもいかがか。……その格好、似合っているな」
「あら、新しい着物なの。いい品ね。可愛らしいわ。汚れないように食べないとね」
「……ふたりとも、とっても、ありがとう。うれしい」
リリコは機嫌がいいのかその場でくるりと回ってみせた。魔術礼装が風をはらんで広がる。さながら緑の草原。
「今度俺にも何か仕立てさせてくれ。孤児院の子やシスターの分ももちろんな。帰ったらうちで改めて豆まきをせねばな。きっと楽しいぞ」
「そしたら鬼さんもうちで、福さんもうちなのだわ!」
ほんわりした笑顔の章姫。豆菓子をポリポリやりながら、鬼灯の腕の中でにこにこしている。やはり夫婦的には定位置がしっくりくる。
「リリコリリコ、我(アタシ)のかわいいお気に入り。ぜんざい作ったよ、食べてくれる?」
「……願ってもないわ。私の銀の月」
「しかし、この年で情報屋か。そのうえ旦那の弟子だろう? 頑張ってて偉いなぁおまえさん」
命がわしわしとぜんざいを食べるリリコの頭を撫でる。リリコは命をにくからず思っているようだ。ほんのりと笑みを浮かべている。最近は感情が出るようになってきたなと、武器商人は弟子の成長を喜んだ。
「リリコさん、ぜんざい美味しいですよ! なんと覇竜のレシピなんです、食べない手はありませんよ!」
望乃は場酔い気味。無理もない、右を見ても左を見ても、笑顔。美味しい料理と甘酒のいい香り。テンションも自然と上がろうというものだ。武器商人は切れ長の瞳できれいな弧を作り、リリコへ優しい視線を送った。
「新しい魔術礼装もよく似合っているし、贈った本もしっかりと活用している。いいコだ」
「……ふふ、これからも、よろしくね、私のお師匠様」
「今度邪気払いの魔術を黒影の旦那の住処で教えてあげるよ」
「……期待してるわ」
リリコの頭に腕を乗せ、命は武器商人へ声をかける。
「旦那、己れ用に肉料理とかないか?」
「大豆は畑の肉だよぉ」
「……さてはわかって言ってるな、旦那」
しぶしぶ炒り豆へ手を出す巨漢の姿に、街の人が笑みを誘われる。
望乃があたりを見回した。
「笑う門には福来る、と言いますし。こうして皆で美味しいものを頂いて、豆撒きを楽しんで、たくさん笑えば、きっとすぐに福が来ちゃいますね」
外界はいまだ寒波強く、一寸先は吹雪。滅びの未来は着実に近づいている。それでも今だけはこう言おう。望乃は明るい光を瞳へ灯した。
「春、遠からじ、ですね!」
やわらかな風が彼女の髪を撫でていった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
おつかれさまでしたー!
ちなみに親友が発した元ネタは「一定確率でレアカラーの鬼が出ると楽しいよね」でした。なぜゲーミングでラッパーになったのかは私もよくわかりません。
親友のアイデアにはいつも助けられています。もち、皆さんのAAにも。感謝。
MVPはゲーミング鬼の死角を見つけたのんべえなあなたに。
お付き合いいただきありがとうございました。
またのご利用をお待ちしております。
GMコメント
みどりです。ちょっと遅くなったけれど、節分です。アイデアをいっただきい☆しました。ありがとう、親友。
そしてそして、リリコのニュー全身図、ちょっと早めにお披露目です。かっわいい!
やること
1)ゲーミング鬼をおびきだして倒す
2)打ち上げをやる
●エネミー
ゲーミング鬼 1体
神々しいまでに光り輝く悪徳の妖怪です。豆まきをしていると、どこからともなく現れて邪魔をしようとしてきます。回避が鬼のように高く、EXAに優れています。
A ゲーミングフラッシュ 50%の確率でレンジ2以内の敵対者の主行動をキャンセル
A ラジカセ殴打 物至単 HPへ大ダメージ 滂沱
A 投げキス 神遠単 APへ大ダメージ ブレイク
P ゴキゲンマインド 怒り無効
P ゲーミングボディ 福豆以外の攻撃を無効化する なお、福豆へスキルを乗せることはできる。
●戦場
高天京の一角、大通りです。
四方を和風建築に囲まれていますが、戦うのに充分な広さを有しています。ペナルティはありません。
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
Tweet