シナリオ詳細
よく来たな……君には節分の鬼になってもらう。トラ柄ビキニを着た節分の鬼にね……。
オープニング
●節分の日
節分。
その由来やらなんやらをここで語ることはない。崩れないバベルの下に、誰もが浮かべるであろう共通のイメージ。つまり豆をまいて無病息災やらを願う。そういうお祭りであることだけがわかればそれでよい。
そんなわけで、節分である。ここ、カムイグラのとある地域でも、似たようなお祭りごとはあって、おそらくバグ召喚された旅人(ウォーカー)あたりから広まったのだろう。それがいわゆる節分と全く同じでなくても、豆をまいて無病息災を祈る。そんなことは共通していた。
そんな地域の、とある小さな町。ここにはローレットの出張所があって、普段は付近の獣やら魔物やらを狩ってほしいとか、そういう依頼が掲げられていた。そこに訪れたのはルーキス・ファウン (p3p008870)で、ルーキスは付近の村での仕事を終えて、次の仕事でもないかと出張所を覗きに来たわけである。
「おや」
と、ルーキスが声を上げる。そこには珍妙不可思議な物体があった。物体というか、井があった。あったというか、居た。井は、井である。つまり井(p3n000292)であった。
「おや、ルーキスさん!」
ぎゅるるん、と井が回った。こういう時はテンションが上がったりしたときである。
「ご無沙汰しております。その、まぁ、いろいろと」
いろいろと、と口ごもった。井と絡むと大体ろくなことがない気がする。まぁ、井も悪い人ではない。変な人なだけであって。
「ええ! いつもお世話になっております――あ、娘さん、こちらの卓にお茶一つ」
と、茶屋(ローレット出張所)の娘に声をかけつつ、井はルーキスに同じ卓への着席を促した。ルーキスが座ると、すぐに日本茶を主焦るような緑茶が出てくる。
「こちらにはお仕事で?」
「ええ。ついでに、次の仕事も探そうかと」
そういって、窓から外を眺めてみれば、豆を外に放り投げて遊ぶ子供たちが見えた。
「そうか。節分ですね」
と、ルーキスが言う。
「節分といえば豆まきですね。そうだ、どうでしょう? 無病息災を祈願して、井さんも豆まきしませんか?」
それは、ほんの些細な世間話というか。話のタネのようなものであった。ルーキスに他意はないだろう。たぶん。が、相手は井であった。
「えっ!?!?!?!?!?! 僕と豆まきを!?!?!?!?!?!?」
「え、あ、はい」
「豆まきといえば、鬼が必要ですよね!!!!!! つまり鬼っ娘ですよね!!!!!」
「えっと」
「鬼っ娘といえばトラ柄のビキニですよね!!!!!!!!! トラ柄の!!!!!! ビキニですよね!!!!!」
「いや」
「ええっ!? それに、トラ柄のビキニの鬼っ娘に豆をぶつけてもらえるんですか!?!?!?!?!?!?!
やります!!!!!! いまから依頼出してきますので、ルーキスさんイレギュラーズの皆さんに声をかけておいてくださいお願いしますよ!!!!!!!!!」
「あの」
「善は急げだ、ひゃっほおおいい!!!」
ぎゅるるん、と回転して、井が出張所のカウンターへと飛んでいく。
「どうしてこんなことに」
ルーキスが呆然と声を上げた。
そのうえで、気づく。
「あ、これ、俺が生贄(みんな)を呼んでこないといけないやつだ」
と。
そして、節分当日――!
ルーキスをはじめとする、あなたたちローレット・イレギュラーズたちは、トラ柄のビキニを着ながら、とある森に招かれていた!
「というわけで、この森の中を探索しつつ、僕に豆を当てたやつが優勝です」
「何を言ってるんだ」
トラ柄ビキニのイレギュラーズが言った。
「何を……?」
「わかりません」
トラ柄ビキニのイレギュラーズが言った。
「何も……わかりません……」
「ですが、井さんを何とかしないと話が終わりません。これも依頼ですから」
トラ柄ビキニのルーキスが言った。まぁ、そういうことである!
そんなわけだから、皆は井を見つけたりおびき出したりして、何とかして豆をぶつけまくってHPをゼロにするのです!!
あとは流れでよろしくお願いします!!!!
- よく来たな……君には節分の鬼になってもらう。トラ柄ビキニを着た節分の鬼にね……。完了
- GM名洗井落雲
- 種別リクエスト
- 難易度-
- 冒険終了日時2023年02月22日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談8日
- 参加費150RC
参加者 : 8 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(8人)
リプレイ
●節分の悲劇
「だまされたーーーーっ!!!」
トラ柄ビキニの『夜守の魔女』セレナ・夜月(p3p010688)が、森の真ん中で叫んだ。トラ柄ビキニ、と雑に描写するのも申し訳ない。厳密にいえば、チューブ型のトップスに、下はビキニパンツだ。それを、ビキニが隠れるくらいの丈のパーカーで隠している。見えそうで見えない。それがいい。想像してみてほしい。セレナさんの
「想像させないで!!」
顔を真っ赤にして頭を抱える。頭も心もわーってなるよ。どうしようもない。
さて、なんでセレナがこんな目にあっているかといえば、井のせいである(説明終了)。トラ柄ビキニで、井に豆をぶつけなければならなくなったのだ!
「一体どうしてこんな事になったんだ……俺の知ってる豆まきじゃないんですけど、何これ?」
ぼんやりとそういうのは、トラ柄ビキニの『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)である。被害者のような面をしているが、加害者の一味である。なんだかんだこのメンツに仕事の依頼を持ちかけたのもルーキスだった。オープニングを見てもらえればわかるが、井はルーキスにメンツを集めてもらうようお願いしているのでそういうことである。そもそもこれリクシナだからね。もうこいつ悪の一味じゃん。一緒に成敗しよう(提案)。
「わかりません」
『深緑魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)が遠い目をしながら言った。わからない。何もかも。リディアもシンプルなトラ柄ビキニだった。シンプルなトラ柄ビキニにってなんだろうな。わからない。リディアちゃんがおーってして。
「がおー」
訳も分からずがおーするリディアちゃんはかわいい。それはさておき、豆まきとはいったい何なのか、という哲学的命題が発生しそうな気持にはなる。
「どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。
豆まき。わかりません。
トラ柄のビキニ。わかりません。
このシナリオ。わかりません。
井。わかりません」
何もわからなかった。でも世の中案外そういうものなのかもしれない。わからない。だが、生きていかなければならないのだ。
「哲学じゃなぁ!」
『特異運命座標』金熊 両儀(p3p009992)が豪快に笑った。ちなみにトラ柄ビキニである。
「はっはっはっ、トンチキな仕事じゃが儂の初仕事じゃ。
銭ば稼ぐ為には仕事ば選んじょる暇は無いからのう。
この金熊 両儀。この仕事ば相仕った!」
えっ、これが初仕事なの? という視線をみんなは送った。それからすぐに、「かわいそうに」という視線に変わった。これは一生消えないデジタルタトゥなのだ。
「なんじゃ? その視線は。
あれか、如月じゃっちゅうのにびきに? ちゅう恰好は寒くないかちゅうことか!
儂は大丈夫じゃ! 寒うなどはない!
はっはっは! むしろ筋肉でなんかみちみちいっちょるが……まぁ、些事じゃな!!」
「そのみちみち言ってるの、井さんは好きだと思います」
ルーキスが死んだ魚みたいな目で言った。好きだよ。
「ほうか! なら、井を摑まえるにはちょうどええぇな!」
はっはっは、と笑う両儀。つよい。
「くそーっ、あれくらい強気だったらなぁ!」
そういうのは『朝日が昇る』赤羽 旭日(p3p008879)である。といっても、普段の旭日とはいで立ちが違っていた。トラ柄ビキニなのはもちろんだが、ロングウィッグで背中あたりのごつさをうまく隠し、トラ柄の手袋とロングブーツで、手足のごつさを隠す。ついでに翼を使って、首周りのごつさを隠せば、そう、これで貧乳女子っぽい感じの出来上がりである。ちょっと恥ずかしげに内またでポーズを取れば完璧だ。ああ、いい。すごくいい。
「くそっ!!! とんでもない邪念を感じる!!!」
あちこちから感じる、井の邪悪な視線を感じながら、旭日が言う。でも実際すごくいいよ……イラスト、作ってみない……?
「絶対やらないからな!?」
頭を抱える旭日。かわいい。
「節分、ですよね? 虎柄はわかります。鬼が生じるのは鬼門、すなわち丑寅の方角ですから。
しかしながら何故ビキニなのでしょうか……。
うう、こんな格好、夫さんの前ならともかく、見知らぬ人に見られるなんて! は、恥ずかしいよう……泣きそう。
あ、みんなビキニだ、良かった」
ここまで一息で言って、
「いえ、よくないです!!!!」
わぁ、と顔を覆うのは『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)である。睦月ちゃんはどうしてこの依頼に来たの? こういう依頼は初めて? トラ柄ビキニ着てどう思った?
「その変なインタビューやめてください!!」
なぜか頭の中に直接響く井からのインタビューをかき消すように叫ぶ睦月。
「そうですね、そうですとも。この井という方が諸悪の根源なのですね!
よろしい、とっととしばき倒して……あれあれ、僕としたことがはしたない言葉遣い。
こほん。懇切丁寧におわかりいただきまして、ご退場いただきましょう」
にっこりと笑った後、ルーキスに向き直って、
「ルーキスさんにもお話が」
「ひっ」
ルーキスが悲鳴を上げる。
「私、この間も竜宮でひどい目にあったばかりなのだけれど……」
遠い目をする『雪花の燐光』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)であるが、ノアさんは自主参加なのでギルティです。
「自主参加(それ)はさておき」
さておかれた。
「この間の恨みもあるの。井の性癖を満足させるだけとはいえ、反撃ができるというのはめったにないチャンスだわ。
というわけで、ここで存分に、豆をぶつけて日ごろのうっ憤を晴らそうと思うのよね」
いいと思う。鬱憤も晴らせて、井も喜んでめでたしめでたしだ。
「めでたしめでたしでいいのかしらそれ……」
セレナがうんざりしたような顔をした。こちらがめでたしめでたしなのはともかく、井がめでたしめでたしなのはどうなのだろう。なんかこう、気持ち的に嫌である。
「それにしても……大丈夫? ユーフォニー」
セレナがそういうのは、『誰かと手をつなぐための温度』ユーフォニー(p3p010323)に対してである。ユーフォニーはトラ柄ビキニであった。寒くないように、ふわもこのパーカーと、ロングニーソ。かわいい。森の奥にたたずむそれは、まるで妖精のようでもあった――いや、これは願望が入っていた。森にたたずむトラ柄ビキニの少女は、井の願望の少女であって神秘的な妖精ではない。
さておき、ユーフォニーはにっこりと笑って、うなづいた。
「はい。大丈夫ですよ」
「でも」
セレナが視線を逸らすように言った。
「トラ柄ビキニよ?」
「はい、トラ柄ビキニです」
ユーフォニーが、ふふ、と笑った。
「映画撮影と同じですよ」
「それは」
旭日が声を上げた。
「そうか……?」
「そうですよ」
ふふ、とユーフォニーが笑う。
覚悟が決まっている。
もうこうなっては誰も何も言えなかった。
ちょっと怖かったのである。
あ、怒ってる。
そう、察する感じ。
その怒りは間違いなく、井とか、洗井落雲に向けられたアレである。
「ふふふ。頑張りましょうね、皆さん。ふふふ」
ユーフォニーが笑ったので、皆おびえながらこくこくとうなづいた――。
●豆まき
そんなわけで、豆まきが始まったのである――。
「それで、どうしましょう?」
と、リディアが小首をかしげた。
「先ほどからシュッシュと何かが飛び交っている気配があります。たぶんあれ、こちらのトラ柄ビキニに興味津々で、近からず遠からずの距離で反復横跳びしているのだと思います。井さんが」
リディアの言葉はその通りである。なるべく近くで見たいが、皆が早く仕事を終わらせてビキニから着替えてしまうのは避けたい、そんな葛藤――。
「なので……長引かせようとはすると思います。そうなると、おびき寄せたり、罠をはったりして、早く捕まえてしまうのがいいのではないでしょうか?」
「おう! それは確かにそう思うな!」
両儀がそういって、
「例えば、こうじゃ。儂は大声が出せて、そん声の反響で位置が把握できる。えこーろけーしょん、ちゅうたか? 名前はようわからんが、つまりそういうことじゃ」
「なるほど。両儀さんが位置を割り出されば、俺が追い立てられる」
旭日くんちゃんが言った。
「ちゃんじゃねぇよ!!」
吠えた。こほん、と咳払い。
「俺はつまり、猟犬だ。あの井……訳が分からん奴だが、まぁ、生き物なら追い立てられる」
「大丈夫ですか?」
ルーキスが首を傾げた。
「あれ……一応知的生物ですよ?」
「なんというか……その、性癖、ってやつに関しては獣みたいなものだろう、あれ」
「確かにそうですね」
睦月がうなづいた。
「こんな依頼を出すくらいですから、頭のいい獣みたいなものでしょう」
「褒めてるんだか貶してるんだか」
セレナが眉をしかめる。
「でも、実際そんなところよね……ユーフォニー、どうかしら?」
「大丈夫ですよ」
ふふ、とユーフォニーが笑った。
「そういう設定の映画なのでしょう?」
「えっと、その、えっと」
セレナが言いよどんだ。怖い。
「じゃあ、まずは両儀さんに位置を割り出してもらう感じで」
ノアが言った。
「どうかしら? ルーキスさんは、罠を仕掛けてくれていたのよね?」
「ええ。まぁ。とりあえず、井さんの動きはまるで全く理解できないので、ひとまず近くに」
「おう。じゃあ、儂が見つけるきに、旭日が追い込め。
あとは流れで」
「ええ、あとは流れで。この手の依頼で一番便利な言葉ですよね、あとは流れで」
ルーキスが笑った。
そういうことになった。
さて、井である。井はぐるんぐるん回転しながら、イレギュラーズたちのことを見つめていた。皆素敵なトラビキニだった。最高かよ。早く豆をぶつけてほしい。
でも、すぐにはぶつかってやらないのである。物事には段取りってものが必要だ。すぐにぶつけられて気持ちよくなるやつは二流。いや、三流以下だ。一流はぶつけられるまでの過程も楽しむ。豆まきとは、コミュニケーションなのだ。鬼と、豆まき役との。それは愛の語らいにも似ている。いや、恋の駆け引きか。恋は成就することを目指すが、その過程も楽しめぬ奴は粋ではない――なんだこの文章、クソ気持ち悪いな……そう考えた刹那。
「――――!」
雄たけびが、響いた。文字に起こすなら、轟。いや、豪か。それが両儀の雄たけびだと気づいた刹那、『位置を割り出された』と理解した――! 同時、影が走る! 猟犬だ!
「旭日くんちゃん!!!!!!」
井が叫ぶ! 回転しながら飛び出した。
「ちゃんじゃねえょ!!」
旭日が叫んだ。そのあととんでもないことも叫んだ。
「お前だけが虎柄ビキニの女の子に豆を当てられたいわけ無いだろ!! 俺も混ぜろよ!!」
ブラフである! だが井は単純なのでのっかった!!!
「いいですよ!!!! ちなみに、あなたはどんなトラ柄ビキニの女の子が好きですか!?!?!?!」
「紫髪赤目ロリ巨乳虎柄ビキニ!!!!」
叫んだ!!! 本心である!!
「よし来た! 君は友達だ!!」
井がぎゅるん、と回転して、旭日の横に並走した。
「で、どこでぶつけられるの?」
「いい場所がある! こっちだ!」
もう覚悟した男の顔で、旭日が井を誘導する――その先には、リディアがいる!
「リディアさん!」
現れた井に、リディアは意を決する表情をし、そして! 胸元にぱらぱらと豆を落とした!!
「やだ~、ビキニの隙間に豆を溢してしまいました~」
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!」
井が回転する! ぎょん、とすさまじいスピードでリディアに迫り――リディアは「ふぇぇ」と鳴きそうな声を上げて、地面にぺたりと座り込む。えっち。井の回転が早まる――いや、これは罠だ! リディアは井が胸元を覗き込むとした刹那、思いっきり振りかぶって豆を投げた!
「あたれーーっ!」
渾身の一撃! だが、井はまるでぞうきんを絞る様に体を回転させた! 散弾状の豆の中を、引き絞った体で回避!
「ふふ、リディアさん、とても素敵ですが、もうちょっと楽しませてもらいますよ!」
井がいい感じのイケボで言いながら、方向転換する!
「大丈夫か!?」
旭日が叫ぶのへ、リディアがうなづいた。『予定通り』だ。ここまでは。そのまま井が進むと、その先には睦月の姿が!
「何あの物体! ほんとに井じゃん!」
思わず叫ぶ睦月! 温度感知には強烈に熱を持った井みたいな物体が感知されている! 怖い!!!
「こっち来た! やめて! 僕は自慢じゃないけどボインでもバインでもないですよ! うう、本当に自慢にならない!」
「それがいいんですよ!!! ね! 旭日さん!!!」
「同意を求めるな!!」
並走する旭日が叫ぶ! 井がぎゅるんと回転した! 迫る! 睦月へ――だが、井も態勢は崩している。システム的に言うと回避にマイナス補正が乗ってる。これならば――!
「あてられる!」
睦月が、豆を投げた! だが、井はここで奇跡的な回避を見せる! ぎゅぅおうん、と体をひねり、昔の静画のように上体を逸らして回避! その豆が全部旭日にぶつかった!
「あ、うらやましい!」
「じゃあよけるなよ!」
井の言葉に、旭日が叫ぶ。そのまま、ざざぁ、と滑りながら進む井! イレギュラーズたちの作戦は順調ではある。つまり、敵を回避しずらい状況に追い込んで、罠にはめて落とし、とどめを刺すのである! 続いての攻撃は、セレナだ!
「ほ、ほら、見たいんでしょ!?」
と、胸元を覆うパーカーのジッパーを下ろして見せる。セレナももはや覚悟完了(やけっぱち)である。死ぬほど恥ずかしいが、以前のバニーよりましかもしれなくもない。そう思えば、まだ何とか羞恥が押さえられる気がしないでもない。
「見たいです!!」
井が回転しながら飛び込んでくる――! そこを、叩きつけて、踏みつける!
「今!」
セレナが足を振り下ろした! 井が、踏みつけられる! 決まった――いや、まだだ! 井はなんかにゅるん、ってなって、セレナのかかとから逃げおおせて見せたではないか!
「き、気持ち悪い!!」
セレナがドン引きする!
「甘いですねセレナさん! いただきましたよ! いろいろと!」
満足げに叫ぶ井――だが、その視線(?)がある一方にくぎ付けになる。
そこにいたのは、ルーキスだった。
抱き枕ポーズをしている。
抱き枕でよくあるエッチなポーズをしている。
もうあれ実質抱き枕じゃん。
「さぁ、こい!!!」
ルーキスが叫んだ!
「いきます!!!!」
井が叫んだ!
飛び込む。井が。その胸元へ。
ずだん、と。
音を立てて、何かが落ちてきた。
檻である。
檻が、井を囲んでいた。
罠であった。
「あ」
井が声を上げた。
さすがに回避マイナス補正が凄かったのだ。
「いまよ!」
ノアが叫んだ。
「竜宮での仕返しをさせてもらうわ!!!」
空から、白い何かが落ちてきた。
ばちゃり、べちゃり、と、井に張り付く。
湯葉である。
「湯葉じゃん!!!!!!!」
「あと豆乳もよ!!!」
「豆乳もじゃん!!!!」
アツアツの湯葉と豆乳である!!! あまりの熱さに、井が回転した!
「ちょ、豆! 豆をぶつけて! 熱い、熱ッッ!! 新しい癖に目覚めるッッ」
もだえる井に、
「何この人無敵なの……?」
ノアもドン引きする。
「もう、やめましょう、皆さん」
そう、声が上がった。
ユーフォニーだった。
森の中にたたずむ淑女。あるいは妖精。
そんな柔らかな笑みを浮かべている、彼女だった。
仲間たちが目を逸らした。(怖かったので)(明らかに怒っているので)
気づいていないのは井だけである。
「ユーフォニーさん……!」
井がよろよろとよろけながら、檻から脱出した。ユーフォニーが、優しく座って、膝の上に井を導く。
「特別スタイルが良いわけでも、満足してもらえるかもわかりません。
こんな私でも見てくれますか……?」
少しだけうるんだ目で、上目遣いで(重要)、ユーフォニーがそういう。でも、すぐに、意地わるく微笑んで。
「なんて。やっぱりまだ、だーめ」
そんな風に、君は笑う。
「ユーフォニーさん、僕は信じてました……あなたは女神だと……!」
ずりずりと井が、ユーフォニーのひざ元にやってくる。ユーフォニーはふふ、と笑って、豆を一粒とった。
「つん……つん……。
ここはほっぺた? それとも……?
優しくぶつけてみちゃいました」
いたずらっぽく、笑った。ぶつけられた。豆を。優しく。こういうのもいいね。すごくいい。井が七色に点灯した。
「ユーフォニーさん……!」
「これでお仕事はおしまいですよね」
にっこりと笑った。そのまま、ユーフォニーは、井のちょうど真ん中の穴の部分に、長い棒を差し込んだ。
そのまま立ち上がって、ぐるんと回転した。回転である。ハンマー投げ選手の様に。回る。回る。十分に遠心力が乗ったあたりで、放した。跳んだ。そのままカメラにぶつかって、ディスプレイの画面をぶち破って、洗井落雲の顔面に井が突き刺さった。
「シェームさん、届いてますか?
諸悪の根源にめってしました。
世界のためにきっと絶対頑張りますから!」
そういって、ユーフォニーは、この日本当に、心からの笑顔を浮かべた。
豆まき終わり。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
重傷者二名
井 洗井落雲
GMコメント
お世話になっております。洗井落雲です。
これはリクエストシナリオなので僕は悪くありません。
●成功条件
トラ柄ビキニを着て井に豆をぶつける
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
●状況
節分だからなぁ、トラ柄ビキニの女の子に豆をぶつけられてぇなぁ。
そんな井の願いが叶う時が来てしまった。
思いついたテンションのまま、ローレットに依頼を出してしまった井!
そしてルーキス・ファウンさんともども、だまされて連れてこられたイレギュラーズたち!
皆さんは、ありとあらゆる手段を講じて、井に豆をぶつけないといけないのです!
依頼放棄はハイ・ルール違反。依頼失敗は悪名付与。もはや逃れることはできないのです!
というわけで、森の中で井を見つけましょう。
井はぎゅおんぎゅおん回転して飛び回っています。たぶん飛行ペナルティとかは効きません。なので、ただ見つけて豆を投げるだけでは、あてるのも困難でしょう。
そこで、皆さんは一計を案じる必要があります。スキルやプレイングを活用し、スナイパーのごとく森を動くもよし。ここで性癖を爆発させて井をおびき寄せるもよし! 性癖で! つるもよし!
つって!!!! ほしい!!!!
まぁ、なんにしても皆さんはトラ柄ビキニです。そこのところをお忘れなく。
作戦結構エリアは森。少々深い森なので、視界などはよくないです。探索系のスキルなどを持ち込むと便利かもしれません……が、そんなものより性癖をつらつら書いてくれた方が僕はうれしいです。
●標的
井
井です。ぎゅるんぎゅるん回転しているので、回避力とか機動力とかが凄いことになっている気がします。
まぁ、全力で皆で豆をぶつければ、勝手に気持ちよくなって満足すると思います。満足させたら、あとは煮るなり焼くなりお好きにしてください。
以上となります。
それでは、あとはよろしくお願いします。
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