PandoraPartyProject

シナリオ詳細

恐怖と嫌悪を輝きに変えて

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●これに触れというのか
「ごめんなさいもう無理です勘弁してください~~~~っ!!」
「待ってもうちょっと! もうちょっとだけだからーー!」
「むーーりーーーー!!」
 音高く扉を開けて出て行こうとする女性。それに追いすがる男性。しかし女性はそれを力いっぱい引きはがし、走り去っていった。

 時は少し戻る。
 小皿の上に腹部を固定された、「それ」。6本の足を「カサカサ」とばたつかせ、長い触角を震わせ、時折脂ぎった翅を広げて威嚇してくる。悪魔、黒い弾丸、ジー、あるいは「あのお方」……? 直接名を呼ぶことさえ憚られるこの存在を、ここでは「ゴッカちゃん」呼ぶことにしよう。
 さて。小皿に腹部を固定された、ゴッカちゃんらしき生き物を、一人の女性が見つめていた。その顔色は蝋のように白く、生気がない。息さえか細く、目には涙を溜めて、女性はこわばる指先をゴッカちゃんに近づけていく。あまりのおぞましさに、女性の歯がガチガチと鳴った。
 ついに女性の指がゴッカちゃんの背に触れる。すると触れた部分が発光し、次第にゴッカちゃん全体が眩い光に包まれていく。
「おお、すごいぞ! 君の嫌悪感は本物だ!」
 思わず固く目をつぶった女性の耳に、男性の感嘆する声が届く。おそるおそる目を開けると、そこにゴッカちゃんの姿は跡形もなく。代わりに、虹色の輝きをまとった小さな石が、小皿に乗っていたのである。

「うーん。でもちょっと小さいかな? あと輝きもイマイチ……。ふむ、次はもう少し指で背全体をなでるように、大きく触れてもらえるかな?」
 男性は小石をつまみ上げて、そんなことを言っている。つまんだ小石をこちらの手のひらに乗せようしてきたのを、女性は悲鳴とともに後ずさって回避した。小石の見た目は綺麗かも知れないけれど、元はあのゴッカちゃん。絶対に触りたくない!
「? では次を頼むよ」
 そんな女性の心を全く察しもせず、男性は促してくる。
 ……やがて女性の精神は限界を迎え、冒頭のやり取りである。

●求む嫌虫家
「ええと……この中で虫がとくに苦手って人、いる?」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)はどこか申し訳なさそうに、イレギュラーズに声をかけた。何のことかと顔を見合わせ、それから数人がためらいがちに名乗り出た。ショウは彼らを憐れむように見て、
「つらいだろうけど、今回は君たちにしか頼めない依頼だよ」
 そう言って説明を始めた。

 ある日のこと。依頼人の男性――イワンは、自らの暮らす小屋に、ゴッカちゃんが発生しているのを見つける。そこでいつも通り(いつも発生してるの?)駆除しようとしたところ、違和感を覚えたそうだ。
 元来好奇心の強い性格だというイワンは、違和感のあるゴッカちゃんを捕まえて、調べてみた。するとそれはただのゴッカちゃんではなく、亜竜であるらしかった。
 そこでさらに調べてみたところ、そのゴッカちゃんについて以下のことが分かったという。

1.普通のゴッカちゃん以上の害はない
2.見た目は普通のゴッカちゃんそのままだけど、よく見ると背中に細かい鱗がある
3.ゴッカちゃんに対して「恐怖心」や「嫌悪感」が強い者が触れると、死んで綺麗な石に変化する。その際の接触が大きいほど、綺麗で大きな石になる。
4.恐怖心も嫌悪感もない者が触れた場合は、とくに何も起こらない。おまけに硬くてしぶとくて、なかなか駆除できない。

「今までの話からなんとなく分かるだろうけど、イワンはゴッカちゃんが平気な人みたいだよ。だから駆除できなくて困っているのは本当みたい。頼んだ人にも、逃げられちゃったらしくて」
 しかし、ショウはため息を吐いて。
「でもついでに、なるべく綺麗で大きな石をたくさん集めたいって希望もあるみたいだよ」
 とはいえあんまり無理はしないでね、と彼は付け加えた。

GMコメント

 こんにちは。実は虫全般大好きなキャッサバです。よろしくお願いします。

●目的
 ゴッカちゃんにタッチ、なでなでして、綺麗な石変えましょう。求む、虫嫌いな人!

●ゴッカちゃん
 黒光りする悪魔、黒い弾丸、など数々の異名を持つ、いわゆる「G」。よく見ると背中に鱗がある以外は、まんまアレです。今回のゴッカちゃんは茶色くて小さいほうではなく、黒くて大きいタイプです。
 あらかじめイワンが捕まえて、とりもち的な物で一匹ずつ小皿に固定してあります。ただし腹部しか固定されていないため、足や触角、翅は動かせます。
 200匹ほど捕獲されており、イワンは「小屋中をくまなく探し、一匹残らず捕まえた」と主張していますが……

●ゴッカちゃんストーン(?)
 ゴッカちゃんは、ゴッカちゃんが苦手な人に触られると、石になってしまいます。この石はゴッカちゃんの姿そのままというわけでなく、丸くてつるりとした見た目です。オパール的な輝きがあり、元を知らない人が見たら「綺麗だなあ。素敵だなあ」と思うことでしょう。
 ゴッカちゃんとの接触面積に応じて、最大ピンポン玉くらいの大きさになります。そして大きい物ほど綺麗です。
 しかしちょっとのことで割れるので、宝石としてはいまいち。というか、元がゴッカちゃんという時点で……

●触れ合いも大事、休憩も大事
 いかにゴッカちゃんが嫌いか、接触によってどんなリアクション、症状が出てしまうのか。くわしく書いていただけると、大変おいしいです。
 しかし頑張りすぎは身体に毒です。こまめに休憩を取るのも、交替で作業にあたるのも良いでしょう。ぜひご自愛ください。

●フィールド
 イワンの住む小屋が、主な舞台となります。雑然としていて、いかにもゴッカちゃん好みの住まいといった様子です。小屋の外には井戸や草地があります。外の空気を吸いたくなった方は、せびご活用ください。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • 恐怖と嫌悪を輝きに変えて完了
  • GM名キャッサバ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月18日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
城火 綾花(p3p007140)
Joker
佐藤・非正規雇用(p3p009377)
異世界転生非正規雇用
ノア=サス=ネクリム(p3p009625)
春色の砲撃
ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)
開幕を告げる星
ユーフォニー(p3p010323)
竜域の娘
ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)
指切りげんまん
水天宮 妙見子(p3p010644)
ともに最期まで
トール=アシェンプテル(p3p010816)
男の矜持

リプレイ

●近づきたくない
「は? 依頼を出した人は正気なんですか? 1匹見つけたら30匹いると聞いたことないんですか?……」
 心底あきれたように鼻で嗤いながら、しかし『雨宿りの雨宮利香』リカ・サキュバス(p3p001254)の表情は明らかに強ばっていた。
 元来怖いものはなかったというリカだが、以前別の依頼でトラウマを植え付けられたらしく、ゴッカちゃんだけはダメなのだという。つまりイレギュラーズでなければ、平穏無事に暮らせたはずだったのだろう。因果なものである。
「イヤ! 絶対イヤ!! 触りたくない!!! 私バイクで走ってた時にすごく大きい虫に激突して以来本当に虫がダメなんですって!!」
 そしてリカの傍らでは、『雪花の燐光』ノア=サス=ネクリム(p3p009625)がすでに絶叫していた。
「そもそもなんですか、小屋の中少なくとも200匹いたとか、そんなの依頼主の生活態度が透けて見える情報でまず嫌悪感が胸を満たしてて、ギフトで胸も膨らんでてキツいのに!! それに! 触れと!!!! 依頼主の趣味のために一体何人が犠牲になったんですか!!」
 メタル・カオス・ワイバーンの後ろに隠れ、ノアは自らの肩を抱きしめながら震えていた。

(どうして 陸の かたがたは そんなにも この虫のことを いやがるのでしょう……?)
 一方『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)は、そんな2人を不思議そうに眺めていた。澄んだ水色の瞳を瞬かせ、皿の上で足をバタつかせているゴッカちゃんをじっと見下ろす。陸上には他に怖ろしい生き物がいくらでもいるというのに、この小さな虫の何がいけないのだろう。
(わたしも 海に いたころはおおきな ロブスターのそばを とおるたび あのはさみで しっぽを 切られてしまわないかと おそろしかったですけれど……)
 ゴッカちゃんと、そのゴッカちゃんを怖れる人たちを繰り返し見比べるにつれて。ノリアの目には、ゴッカちゃんがロブスターと重なって見え始めた。背筋のぞわりとするような恐怖心が、ノリアの心にも立ち上ってきていた。

(おかしいのよ、何なのよコレ! 何をどうすればソレを触りまくる依頼が出せるワケ? 渾身の悲鳴とか必死な姿とかに愉悦したくて、みたいな感じじゃないわよね!
 このプレイングも見ているんでしょうGM! 何とか言いなさいよ!)
『Joker』城火 綾花(p3p007140)は第四の壁を睨みつけながら、心の中で抗議していた。
 ……愉悦しようだなんてとんでもない! 僕は君みたいな可愛いPC(の苦しむ姿)が大好きなだけだよ!
「ま、まぁ見てなさい。こんな小さな虫なんて恐るるに足らずよ」
 などと言いながら、綾花は何故かコイントスを始める。表が出れば触らない、裏が出れば思い切って触るというルールを決めて…… あれれ? それってもしかして、怖れてるってことじゃあないですかねえ??
 しかし無情にも、コインは裏を示す。はっとして壁を振り返る綾花。やだなー、僕は何もしてないよ☆

「これも覇竜のため、覇竜のためなら、頑張ります、よ……」
 巨大化していないだけマシなはず、と自らに言い聞かせ、『ためらいには勇気を』ユーフォニー(p3p010323)はゴッカちゃんを遠巻きに見ていた。そしてゴッカちゃんがウゴウゴしている皿が差し出され、近づいてくるとともに、ユーフォニーは遠ざかっていく。まるで反発する磁石のようだ。
 そうしてユーフォニーは、小屋からはじき出されていった。

「フン……ビクビクしやがって、腰抜けどもめ……。ここは一つ、俺が手本を見せてやろう」
 小屋からさよならしていくユーフォニーを見送って、『孤独の王』佐藤・非正規雇用(p3p009377)はにやりと笑ってみせた。……小屋に入りさえせずに。言葉と表情だけなら余裕そうだが、足元をもじもじさせている。早く来て手本を見せろと言われそうである。

『竜は視た』ヴィルメイズ・サズ・ブロート(p3p010531)はこの場でただ一人、ゴッカちゃんが平気タイプの人物であった。普段からゴッカちゃんを釣り餌として使っているらしいヴィルメイズ。彼が触れても、宝石に変化することはないだろう。その事実をヴィルメイズは残念に思っていた。すでに変化していたゴッカちゃんストーンを光にかざしながら、ヴィルメイズは独りごちる。
「……これを売れば、妙見子様の神社の修繕費になりそうですね。この間不注意で障子を破いてしまいましたし――」
「!? お前だったのか! おい! 弁償しなさいヴィルメイズ・サズ・ブロート!!」
 しかしそれを耳敏く聞き取った『北辰より来たる母神』水天宮 妙見子(p3p010644)によって、ヴィルメイズはシバき倒された。「許しください~~!」と言いながら逃げていくヴィルメイズと、それを追う妙見子。ゴッカちゃんそっちのけで、仲のいい2人であった。

(嫌でして…! 触りたくないのですよ…! どうして、こんなことになったのですよ!?)
 そして『開幕を告げる星』ルシア・アイリス・アップルトン(p3p009869)は小屋に近づきすらせずに、ぷるぷる震えていた。アレが200匹もいる室内に入るなんてあり得ない。ルシアには決して許容できることではなかった。

●触りたくない
「フン…対戦よろしくお願いします」
『女装バレは死活問題』トール=アシェンプテル(p3p010816)は白い手袋…… とは名ばかりの手人形を装着し、ゴッカちゃんに話しかけた。手人形を揺らし、誰かの声真似をしながら。
 誰かというか、手人形の見た目からして明らかであった。
「トールくん! それ俺があげたやつじゃねーか!!」
 ふわふわの手人形と瓜二つの非正規雇用が、トールに抗議する。まさかそれでゴッカちゃんに触るというのか。ビジュアル的には非正規雇用が、巨大なゴッカちゃんに抱きつくことになるではないか。というか、人からもらった物で何をするつもりか。
「くっ、そっちがその気なら、俺はワッショイトール人形を……!!」
 非正規雇用も対抗して、ワッショイトール人形を取り出す。可愛らしいその人形をゴッカちゃんに近づけて…… しかし非正規雇用にはできなかった。

 というか、素手で触らないと意味がないのである。にも関わらず、綾花も手袋をしたままゴッカちゃんをなでていた。平常心をエキスパートで強化しているが、綾花は平常になりきれていなかった。
「は、早く石になりなさいよぉ……」
 若干涙目になりつつ、ゴッカちゃんをなでなでし続ける綾花。だからね綾花さん、手袋してちゃダメなんだぜ?

 そもそもこの屋内にゴッカちゃんが、最低200匹いるこの現状は一体何なのか。ノアは吐き気をこらえながら考えていた。
 通常のゴッカちゃんなら共食いでもして数を減らすはずではないのか。亜竜だけに特殊なのか。それともその数を養えるくらい、この小屋は汚いのか……
 嫌な想像に、ノアの背筋が震える。依頼人め。許すまじ。
「とにかく、私はその生き物にも! 依頼主にも近づきたくありません!!…って、あら……?」
 しかしノアの手にはいつの間にか、きらめく小石が握られていた。手の中のそれを確かめ、ノアは――

「そこのオス臭い匂いぷんぷんしてる女! あんたビビってないでとっとと触んなさいよ!」
「ひゃいっ?! オスです! あっ違いますオス臭い女です!?」
 一方リカは後方から、皆にゴッカちゃんを押しつけようとしていた。
 怒鳴られ、いじめられるトール。ちょっと傷つきつつ、トールはついにゴッカちゃんへ手を伸ばす。できる限りゴッカちゃんから距離を取り、目一杯顔を背けながら。
 そして、リカさんは触らないんですかと、ちらりと視線を送りつつ。
「わ、私は指示役だから、こうして皆を監督して――」
 言いつつ、無理があることを自覚するリカ。こちらも意を決して、ゴッカちゃんへのタッチを試みる。……常夜ノ楽園から這い出てきた、黒い腕を使って。
 しかしリカの心情を反映してか、常夜の腕すらもゴッカちゃんを避けていた。

「佐藤様、よろしくお願いします♪」
「ま、任せてください妙見子さん!! このくらい楽勝で仕留めてみせます!」
 妖艶に微笑む妙見子と、格好をつけたい非正規雇用。こちらでもゴッカちゃんの押し付け合いが発生していた。というか非正規雇用が、一方的に押しつけられていた。
 さあどうぞ、と妙見子は小皿を非正規雇用に差し出す。長くしなやかな指で小皿を持つその所作はあくまで優美だが、絶対に1ミリもゴッカちゃんには触れまいと、妙見子は頑張っていた。
「う、うおおおおおおおおお!!」
 そして謎の雄叫びを発しつつ、非正規雇用はゴッカちゃんに触れる。非正規雇用の手からほとばしる光がゴッカちゃんを包み、宝石へと変化させていく! ように見えた。雄叫びのせいで。

 ノリアは凶行に奔ろうとしていた。
 その透き通った美しい尻尾を震わせて、ゴッカちゃんを惹きつけようというのである。
 ノリアの尻尾が震えるのと連動して、机の上に並んでいたゴッカちゃんが、固定されている皿ごと床に落ちる。そしてゴッカちゃんたちはそのまま、ノリアのほうへと無理矢理這い寄ろうとする。皿のせいでうまく動けず、あらぬ方向へ行ったりその場で回転などしながら。
「やめなさいノリアちゃん! 正気の沙汰じゃないわ!」
 そのおぞましい光景に、リカは悲鳴を上げた。

 トールは1匹触って踏ん切りがついたのか、やや落ち着きを取り戻していた。
 これはあくまで依頼。ガソリンプリンを食べ、強靱な精神力でゴッカちゃんに触れる。ちょっとゴッカちゃん、皿ごと動き始めたけど。パッション・コールに支えられたトールは、あんまり気にしない。

 冒頭より小屋からさよならしていたユーフォニーは、聞こえてくる皆の悲鳴や叫び声を、それぞれの色で見ていた。各人の多様な色が合わさって、今日も世界は美しい万華鏡のよう…… などと、決して現実逃避しているわけではない。これから、これから本気を出すつもりである。
 休憩大事。心構えも大事。ユーフォニーは何度目かの深呼吸をし、小屋へにじり寄った。

 妙見子はリカから羊羹女と罵られ、泣きそうになりながらゴッカちゃんへ手を伸ばした。ゴッカちゃんのテカテカボディーは、見れば見るほどキモチワルイ。
 怖気の立つあまり、妙見子はほとんど無意識で聖躰を降臨させてしまった。これでは触れない。しかししかし、実に触りたくないのである……

(ううっ…まだ中に人がいるから、出てからでして…)
 ルシアは小屋の惨状を見つめながら、一人考えていた。ピンク色の瞳に、固い決意を秘めて。

●恐怖と嫌悪を輝きに変えて
「い゛や゛あ゛ぁ゛あ゛あ゛!!」
 ノアは手の中の石が何であるかを理解した瞬間、絶叫して小屋を走り去った。ゴッカちゃんストーンを遥か彼方へと投げ捨てると、とにかく手を洗う。しかしよく洗えば洗うほど、触った感触が思い出されるのだった。

(ためらいには勇気をためらいには勇気をためらいには勇気をためらいには)
 ユーフォニーは心の中で繰り返す。そして硬く目を瞑り、いざゴッカちゃんへタッチ。目を瞑ったせいで若干位置が掴めず、探すうち不意に触ることになってしまったけれど。
 ……。
 というか、目を瞑っているせいで、ゴッカちゃんが石になったのかどうか分からない。もう、目を開けても大丈夫だろうか? しかし手の中には、依然足をバタつかせるゴッカちゃんの感触が、しっかりと残っているような気がする……
 ここはいったん手を放して、一歩下がってから手を開けてはどうだろう。ユーフォニーはちょっとだけ冷静になった。
「!!!?」
 しかしそうして一歩下がったユーフォニーは、何故か至近距離でゴッカちゃんと遭遇することとなった。
 再び小屋からさよならしていくユーフォニー。触れたゴッカちゃんはきちんと石になっていたが、そんなことどうだっていい。もうやめたい。

 綾花もゴッカちゃんに触り、心が折れそうになっていた。
 ゴッカちゃんストーンはたしかに綺麗。しかし全く惹かれないし、もう一度触りたくもない。
 ハンカチで手を拭いて、綾花は次のゴッカちゃんへ取りかかる。ゴッカちゃんはまだまだいる。終わる気がしない。おうちに帰りたい……

 妙見子の手の中で、石に変わるゴッカちゃん。しかしその瞬間、ゴッカちゃんの足が1本、妙見子の手からこぼれ落ちた。何故か石化を免れ、床に散った足。ゴッカちゃんの足は結構太い。毛なんか生えていたりして…… 妙見子はそっと目を逸らし、手に残った石だけを納めた。

「これだけ数をこなすと、段々慣れてきたな……」
「さすが佐藤様。素晴らしいです」
 ちょっとだけ余裕を取り戻した非正規雇用と、彼を褒めそやすヴィルメイズ。非正規雇用はだいぶ息が上がっていたが、それはあくまで雄叫びを上げ続けたせいである。大丈夫。
 ヴィルメイズは終始、皆のサポートに回っていた。ノアの手にいつの間にかゴッカちゃんが握られていたのも、ユーフォニーが至近距離でゴッカちゃんと遭遇したのも彼の仕業…… ではないはずだ。たぶん。
「では佐藤様、次はこちらのゴッカちゃんをどうぞ」
「……しょ~がないなぁ! ほ~ら、今度は頬擦りしちゃうもんね!!」
 期待しております、との言葉とともにヴィルメイズが差し出したゴッカちゃんは、かつてないほど大きかった。そのことにほんの少しだけ戸惑ってしまった非正規雇用だが、期待には応えなければ。大胆にも、ゴッカちゃんに頬擦りしてみせることにした。

「……?」
 すりすりすり。しかしいくら頬擦りしても、ゴッカちゃんに変化はない。そういえばこのゴッカちゃん、皿に固定されていない。
「実はそのゴッカちゃん、先ほど私がそこの暗がりで捕獲したものなのですよ」
 得意げに微笑むヴィルメイズ。決して嫌がらせなどではない。ヴィルメイズは皆を手伝うためにゴッカちゃんを捕まえたのであって、わざわざ亜竜ではないゴッカちゃんを探し出したわけでは
「きゃああああああああああああっ!!」
 ないはずなのだが、非正規雇用には関係がなかった。非正規雇用は悲鳴を上げて、小屋の外へと走り去っていった。

 そのとき、リカは3メートルの棒でゴッカちゃんをつついていた。当然ながら、ゴッカちゃんに変化はない。そこへ非正規雇用の悲鳴が上がる。
「うわっ、ちょ、待っ」
 何事かと顔を上げた次の瞬間、非正規雇用はリカの背にどんとぶつかって、そして走り去っていった。
「~~~っ!!!」
 よろめき、リカはそのまま、ゴッカちゃんの群れへとダイブする格好となった。触れたゴッカちゃんが、次々宝石に変わっていく。
 そして涙をこらえながら、宝石の山から身を起こすリカ。しかしその頭上へ、トールが手を滑らせたゴッカちゃんたちが降り注ごうとしていた。

 ノリアの凶行は続いていた。おいしそうな尻尾に誘われ、ゴッカちゃんがノリアに群がっていく。皿ごと這っていくゴッカちゃんも怖いし、部屋に潜んでいたゴッカちゃんが出てくるのも怖い。他の者は皆、ノリアから全力で目を背けていた。
 多くのゴッカちゃんはノリアに触れて石になったが、たまにならないやつもいる。そのことについて、もう誰も何も考えたくなかった。

 *

 そうしてなんとか全てのゴッカちゃん石に変え、皆で小屋から出てきたとき。
 非正規雇用は膝から崩れ落ち、しくしくと泣き始めてしまった。どうしてこんな依頼を引き受けてしまったのか。悲しい。あまりにも悲しい。
 しかしそんな非正規雇用のもとへ近づいてくる人物がいた。トールである。非正規雇用はトールの姿を認めると、はっとしたように立ち上がった。
「……俺のを見てくれ。こいつをどう思う?」
 目尻を濡らし、鼻をずびずび言わせつつ。非正規雇用はゴッカちゃんストーンを見せて微笑んだ。
「すごく…大きいです…」
 一方のトールは非正規雇用のゴッカちゃんストーンを見て、顔を赤らめた。何なんだろうこの人たち。

 そしてそのとき、それは起こった。突如として強大な魔力が解き放たれ、小屋を中心として辺り一帯を吹き飛ばした。強すぎる力と閃光によって皆の視界が白く染まり、一切の音も消失したかのようであった。
 しかし一瞬の静寂は轟音と地響きによって破られ、視界は土煙に塗りつぶされた。
(もう、いいのです)
 それはルシアによる渾身の一撃であった。それはゴッカちゃんの魔窟、むしろゴッカちゃんの製造工場といっても過言ではない小屋を跡形もなく消し去り、消毒する一撃。二度と同じ悲劇を生まないための、最終解決策。
(全部全部壊して今日のことは無かったことにするのですよ。何に替えてでも、アレは世界から消さなきゃならないのでして――)
 そしてルシアは殲滅する。この力を以て!

 しかしルシアには、ひとつの誤算があった。小屋とともに世界から消滅するはずだったゴッカちゃんストーンはこのとき、確認もかねて外へ持ち出されていたのである。全力を出し切り、精根尽き果てたルシアにはもやはどうすることもできず。
 そうしてイレギュラーズたちは見事ゴッカちゃんを退治し、ストーンを集め、さらには二度とゴッカちゃんが発生しない(はずの)おニューでクリーンな小屋を再建し、依頼主を喜ばせたのであった……

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

なんということでしょう……

あ。皆様ご参加いただき、誠にありがとうございます。次回もまた、ぜひとも(ぜひとも!)よろしくお願いいたします。
お疲れ様でした。

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