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シナリオ詳細

<昏き紅血晶>その輝きの果て

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●紅血晶の輝き
 ラサの夢の都ネフェルストには悪人には少しばかり有名な悪徳娼館がある。
 女神の前足。そう名付けられた娼館であり、少しばかり奥まった場所にある娼館でもある。
 今日も、そんな店から2人組の悪人が出てくる。
「じゃあ、確かにそいつは売ったぜ」
「はい、確かに。また入荷するようなら持ち込んでくれよ」
「ははっ、手に入りゃあな!」
 カラカラと笑いながら金袋を持って悪人2人は去っていくが……どうせ酒代に消えるのだろう。
 そんな事を考え、娼館主である男は煙管の煙を吐く。
 ちなみにこの煙管の中身は煙草ではない。似たような挙動を見せるハッカの一種だ。
 娼館主は煙草があまり好きではないのだ。
「さて、と」
「……旦那。どうですかね」
 真っ赤な宝石をジロジロと見ていた娼館主の男に、護衛の男がそう声をかける。
 しばらく鑑定していた娼館主はやがて溜息をつくと、宝石を床に放り投げる。
「ニセモンだな。ただのルビーだ。本物を見たことがないからどうしようもねえが……吸血鬼(ヴァンピーア)とか呼ばれる連中の尻尾も掴めんしなあ」
「詐欺師っすか」
「たくさん出とるらしいぞお? 誰も彼もが欲しがるからな。イーモン、貴様も手を出すんじゃないぞ」
「うす」
 分かっていない顔の護衛……イーモンに娼館主はあからさまな溜息をつく。
「冗談で言っとるんじゃないんだぞ。妙な噂のあるもんには、たいていロクでもないオチがあるもんだ」
「……うす」
「しかし、そうなるとどうするかな。いや、確か……うむ。よし、あの話に便乗させてもらうとするか。丁度ツテもある」

●行方不明の従業員
「行方不明?」
「うむ」
 『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)にギルギットはそう頷いた。
 このギルギットという男、見事な悪人面だ。10人に聞いて10人が悪人だと言うだろうこの男、やはりラサでも有数の悪徳商人……ではなく、それを装っている善人だ。
 ギルギットの運営する娼館「女神の前足」は夢の都ネフェルストにある娼館だ。
 悪徳娼館と名高いその娼館だが、実は悪徳でも何でもないのだという。
 むしろ悪徳娼館というていで売られてくる子を買い取って助けたり、犯罪者一歩手前の連中を上手くコントロールしたりしているのだ。
 ラサは……特に夢の都ネフェルストはその性質上、悪徳商人がキノコより良く生える。
 そういった連中が生えてくる土壌を作らない為に用意された「悪徳娼館風の娼館」が女神の前足なのだ。
 無論、働く場所は娼館だけではない。穀物商や食堂、酒場、普通の宿屋までギルギットの仕事は多岐に渡る。
 その中には依然モカが手伝った食堂「女神の尻尾」も存在する。
 この女神の尻尾、美人の従業員だらけなせいもあってか人気店であり、贈り物を貰う従業員も多くいる。
 それらは彼女たちの副収入として大いに懐を潤していたのだが、つい最近。行方不明になった従業員が出た。
「名前はエルマ。まあ、真面目だと聞いていた」
 エルマはある日、いわゆるガチ恋勢のお客から、とても美しい宝石を貰ったのだという。
 熟れた紅玉かと思いきや柘榴のような美しさに、宵闇のような光をも湛えた美しい宝石。
 余りの美しさに魅了される者が多く居る、『魔性の宝石』や『魔石』と揶揄されることも多い代物。
 その名を、紅血晶。
 流通量が絞られているのか手に入れるのも難しく、躍起になって商人達は取り合っているようなものだ。
 噂では、吸血鬼(ヴァンピーア)と呼ばれる者たちが流通に関わっているらしい。
 まさか本当に血を吸うわけではないだろうが、そんな怪しげな連中絡みの物……ということだ。
「此方でも調べてみたが、どうにもラチがあかん。エルマが消えてからもう数日……何処にいるかは分からんが、寮に残された物には紅血晶はなかったと聞く」
 つまり、トラブルに巻き込まれている可能性も高いだろうと、そうモカは判断する。
 しかし……ファレン・アル・パレスト(p3n000188)からの協力要請の内容を考えるに、この事件は恐らくは。
「……『噂』については?」
「聞いてはいる。もしそうなら、『任せる』とも」
 その噂は真実だと確認されている。
 人は化け物に転じ、竜にまでも転じたとされた。其れ等は全て血色の化け物へと変貌してみせたという。
 エルマが消えてから数日。はたして、今は。

GMコメント

ラサの町の何処かにいる女性「エルマ」の足跡を追いましょう。
シナリオ開始時点ではまだエルマは化け物にはなっていないようです。
真実は、どうやらエルマが紅血晶を得たことを知った何処かの悪人が手荒な方法で奪おうとして紅血晶に魅入られているエルマが逃げている……ということのようです。
悪人は追っ手を放っていますが、タイミングによっては悪人がエルマから紅血晶を奪ってしまうでしょう。
あるいは悪人に紅血晶を奪わせ、エルマの「人としての安全」を確保するのも手でしょう。この方法の場合、エルマを無事に帰してあげる確率が非常に高まります。

●エルマ
紅血晶を貰った女性。それを見られていたため、悪人に狙われ追っ手もかけられた。
ギルギットを頼ろうとは思えなかったようです。悪人面だから。
現金や幾つかの値打ちものも持ち出しているようなので、お金には困っていなさそうです。

●エルマのいるかもしれないポイント(ネフェルスト)
・怪しい宿屋
客を選ばないタイプの宿屋です。あらゆる全ては金次第。
・怪しい酒場
客を選ばないタイプの酒場です。全方位怪しいので、多少挙動が怪しい程度では目立ちません。
・路地裏
チンピラがいっぱい。お金次第で隠れ家も提供します。
・マーケット
顔を隠した新人が混ざっていても誰も気にしません。だっていつものことだし。

●敵一覧(状況により変化)
・エルマ×1(敵対した時)
逃走中の保護対象。紅血晶に完全に魅入られており、渡せと言っても素直には渡さないです。
シミターを武器に持っており、かなり身軽です。

・晶獣(キレスファルゥ)エルマ×1(変異してしまった場合)
エルマが紅血晶を持ち続け、変異してしまった姿。
徐々に変化していきます。最初は腕や脚などが異形に転じて行くようです。変化した箇所は元に戻りません。
(部位だけの場合は早い段階で紅血晶を手放せばそれだけで変化が止まります)
どうしようもないほどに紅血晶に魅入られているため手放すことが出来ません。
踊るような変幻的な動きで相手の防御を無効化する斬撃を放ちます。

・悪人×8
エルマを追う悪人たち。どうにかエルマを探し出し紅血晶を奪おうとしています。
ついでにエルマも売り飛ばしてやろうと思っています。
全員シミターを持っていますが、砂漠の砂嵐を呼び出し攻撃する「ラサの砂嵐」という技も使用するようです。

・晶獣(キレスファルゥ)悪人×1(エルマから紅血晶を奪った場合)
エルマから悪人が紅血晶を奪い、変異してしまった姿。どういう理由か変化が早かったようです。
徐々に変化していきます。最初は腕や脚などが異形に転じて行くようです。変化した箇所は元に戻りません。
(部位だけの場合は早い段階で紅血晶を手放せばそれだけで変化が止まります)
どうしようもないほどに紅血晶に魅入られているため手放すことが出来ません。
周囲全体にラサの砂竜巻を巻き起こし攻撃する「ラサの砂塔」を使用するようです。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

  • <昏き紅血晶>その輝きの果て完了
  • GM名天野ハザマ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月06日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)
血吸い蜥蜴
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
モカ・ビアンキーニ(p3p007999)
Pantera Nera
アルトゥライネル(p3p008166)
バロメット・砂漠の妖精
胡桃・ツァンフオ(p3p008299)
ファイアフォックス
チェレンチィ(p3p008318)
暗殺流儀
メイ・カヴァッツァ(p3p010703)
ひだまりのまもりびと

リプレイ

●エルマを探し出せ
「ヒトを怪物にしちゃう宝石……きれいな宝石はいいものだけど、いらないおまけ効果がくっついてるのと、また裏で変な陰謀が動いてそうで嫌だねー……」
 『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)の言葉は、全員が気にしていることではあるだっろう。
 紅血晶。熟れた紅玉かと思いきや柘榴のような美しさに、宵闇のような光をも湛えた美しい宝石であり余りの美しさに魅了される者が多く居る、『魔性の宝石』や『魔石』と揶揄されることも多い代物だ。
 とにかく、アクセルたちは最優先をエルマの晶獣化を防ぐことに設定していた。
 だからこそ派手に動いてでも最速でエルマを確保するのを目的にしていっる。
「もしこっちの動きが悪人に伝わって、エルマを先に見つけられても紅血晶を取られるから結果オーライ。売り飛ばすならケガさせられたりはしないだろうしね」
 そう、悪人ですら利用する。それはエルマの晶獣化を防ぐ目的を果たすためには最適解であるだろう。
 だからこそ最初に「女神の尻尾」でエルマの外見とか特徴とか、行動範囲を教えてもらっていたが……少なくとも行動範囲に関しては、此方を撒こうとしているエルマの動きの参考にはならなそうだ。
 しかし、それを分かっているからこそチームを分散しているし、アクセルは情報共有の手段としてマーケット班に小鳥のファミリアーを渡していた。「オイラ達宿屋班が情報のハブになれたらいいな」とはアクセルの言葉だが……そうした連携が大事になる局面ということだ。
「久しぶりのお仕事ですし少々緊張しますね」
 変異した化け物の血の味に非常に興味がありますが今回は趣味は抜きにして真面目に行きましょうか、などとちょっと物騒なことを言うのはアクセルと同じ宿屋班の『血吸い蜥蜴』クリム・T・マスクヴェール(p3p001831)だ。
 そう、アクセルとクリムがいるのはエルマが潜伏している……かもしれない怪しい宿屋だ。
 こういった宿屋は複数あるが、いわゆる金さえ払えば客の素性は一切問わないタイプの場所だ。
 逆に言えば、こういうところはお金次第。というわけで、アクセルは携行品から小判と真珠、つまり金貨と宝石を出して賄賂にして聞きこみをしていた。
「チップは弾むんで宿泊客について教えてくれ。こういう外見の人物が泊っていないだろうか? 名前はエルマというらしいが偽名を使って泊っているかもしれない」
「教えてほしいな。泊ってるか……あるいはお金をたくさん出してでも秘密で泊まりたがったりしてなかったとか」
 クリムとアクセルがそう聞けば、店主の女は「どうだろうねぇ」と笑う。
「見たことはあるかもしれないが……少なくとも『今』はいないね」
「……そっか、ありがとう」
 アクセルは頷き、クリムと視線を交わし合う。
 今のは「泊まっていたが今はいない」という意味だ。最低限の義理と金次第の部分を両立した答えなのだろう。
 どちらかといえばアウトな気もするが、そこは文字通り金次第ということだろうか。
 アクセルは広域俯瞰で上からの視点を得て周囲にエルマらしき人影がいないかを確認してみてもいたが、仲間からの合図があればいつでも合流できるようにと、そうも考えていた。
 そして『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)と『Pantera Nera』モカ・ビアンキーニ(p3p007999)は、怪しげな酒場を巡っていた。
「へぇ紅血晶? 人を獣に変える魔石、またきな臭い逸品が出てきたね。どういうルートかは読めないけど私の知り合いが聞いたらどんな顔をするやら。さて、とりあえずは貰っちゃった子の捜索といこうか!」
「まったく……遠出をすると、たまに厄介事を頼まれるな……まぁ、我が店の将来のお客様候補は大切にしないとね」
 何処も怪しげで薄暗い場所ばかりだが「だからこそ」ということもある。
 ルーキスはロゥ・フェイを交渉事の手助け要員として連れてきていたが……酔っぱらいだったり、裏事情のある相手の交渉なら。
実際にラサで諜報員をやってるロウ以外に適任は居ないからね。人から情報を引き出す手練手管はお手の物でしょう、とはそのルーキスの言葉だ。
「キミの手腕を見込んで。手伝ってもらえると助かるよ。ラサが厄介なことになるのは知り合いの狐が激怒しそうだし?」
 ルーキスの言葉にロゥは肩をすくめることで答えとしたが、こうしてついてきてくれているという結果が大切だ。
「こんな容姿・服装で赤い宝石を持った女性を探している。誰か見かけた人はいないか?」
 モカが早速そんな聞き込みをするが、酒場は情報収集には事欠かない場所でもあるとルーキスも考え、ロゥと組んでモカと手分けし情報収集をしていく。
 モカの提案により、信用できそうな情報を聞かせてくれた人には酒を奢るという懐柔策もしている。
 そうやって「金払いの良い人間」になってこそ、聞ける情報もある。
「見たことはあるぜ。やけにコソコソしてたが……今此処にはいねえな」
「マスター、あの人に良い酒を1杯出してやってくれ」
 モカはその男に酒を奢り、今の情報は確度が高いだろうと考える。
 ルーキスのワタリガラスのソラスも酒場近くの上空にいるが、何の反応もないからだ。
「そう簡単に見つかるとは思ってないさ」
 ルーキスもそう呟くが……それでも、情報は集まってきている。確実に包囲網は狭まっているのだ。
「ああ……そういえば同じように探している連中もいたな」
「その話、聞かせてもらえるかい?」
 モカたちだけではなく、エルマを追う悪人たちもまた、同様に。

●その輝きの果て
「……本当に、とんでもない物が流通したものだな」
「そんなものが流通しているとは、よもやよもやなの。石ころに人生を狂わされるのもかわいそうだし、悪い人に狙われているのなら尚更何とかしないとなのよ」
「ラサで勝手な真似は許さない。ましてや人を惑わし化け物にする宝石など以ての外だ」
 『努々隙無く』アルトゥライネル(p3p008166)と『ファイアフォックス』胡桃・ツァンフオ(p3p008299)は路地裏班として動いていた。
「女神の前足には縁もある。無事に帰してやれるよう尽くそう」
「そうね。その為にも、まずは情報収集なの」
 異形琴瑟もあるし、聞き込みをメインにする感じかしら~、と言いながら胡桃はアルトゥラネイルと共に路地裏を歩く。
 どうにも治安の悪い場所で、この場所にはチンピラしかいないといった印象すらある。
 路地裏……とはいうが、独自の治安を形成しているような、そんな場所に見える。
「エルマさんの目撃情報の他に、彼女を追っているであろう人達の情報も得られると良いかしら」
 もちろん、彼女自身が自分を探っていることを知って逃げる可能性はあるので、周辺には注意しつつなの……と胡桃はハイセンスを駆使しながら周囲に視線を向ける。
 此処は隠れる場所も多い……デスワードル札束も持ってきてはいるが、ばらまきは価値を下げてしまう。
 手段としては優先度低くして、それでも必要そうなら使おうと……胡桃はそう考えていた。
 ならばどうするか? 答えは簡単で、アルトゥライネルが前に出てチンピラ共に舐められないよう冷静かつ強気で交渉をすることだった。
「単刀直入に。最近、この辺りに新しく来た女性について聞きたい」
 此処にいるならば、何らかの交渉をしている可能性は高い。
「隠れ家を提供した者がいれば…そうだな、彼女が払ったより積もう。案内を頼む」
 だからこそ、賄賂も効果的に使うつもりだった。
「それと……俺達のように女性を探す者は来たか?」
「知ってるなら、多めに払う用意はあるの」
 胡桃もデスワードル札束をチラつかせるが、返ってきた言葉はクツクツと笑いながらのものだった。
「知ってるさ。ただ、今は此処には居ないな。どうにも追ってる連中がいるみたいだからな」
 アクセルの狙い通り、派手に動くことで悪人どももエルマを追う速度を上げたようだ。
 そして……『暗殺流儀』チェレンチィ(p3p008318)と『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)はマーケットへと来ていた。
 此処は裏の人間の来にくい場所だが、今回派手に動いたことでエルマが此方に潜伏場所を変えることは、当然想定されていた。
「女神の前足、何かとご縁がありますねぇ。ギルギットさんはとても良い人なんですが……如何せんあの悪人面ですから、エルマさんが頼れなかったのもまあ、分かるとして……早く見つけ出して無理やりにでも紅血晶を引き離しませんとね」
 『暗殺流儀』チェレンチィ(p3p008318)に『ひだまりのまもりびと』メイ(p3p010703)は頷きつつも、多少物珍しそうに周囲を見回す。
「砂漠の国って、空気が乾いている気がするです……初めて足を踏み入れる土地ってわくわくするですが、人探しを頑張らねばですね」
「ええ、色々と情報は聞いてきましたが……」
 エルマの関心がありそうなもの、逃げる時に無意識に何を頼りにするか。それに繋がりそうな情報は幾らあっても良い。
 だからこそ外見情報を頼りにしたり、エルマが行きそうな店があれば出向いてみたりとしてみたのだが、どうもエルマを追っているらしき悪人たちの姿はあってもエルマの姿はなく、人助けセンサーにも引っかからない。
「これは……想像よりも状況は悪そうですね」
 完全に紅血晶に魅入られている。「助け」を求めているわけではなく、紅血晶を基準に動いているのだろうとチェレンチィには察せられた。
「こういう外見の女のひとをみませんでしたか。最近アクセサリとか換金したがってた女のひとをみませんでしたか」
 メイの聞き込みに、それらしき人物の情報は集まるが、中々本人にはヒットしない。
「赤い宝石、みたことないですか」
 しかし……その問いに、ついに手ごたえがあった。
「そういや今日商売始めた奴が、随分と懐の赤い宝石を気にしてたな。たぶんありゃあ……」
 男の視線の先。顔をヴェールで隠した女が立ち上がり逃げ出す。今見えた顔は……!
「エルマさん、ですか? おねーさんを悪い人から守るために来たですよ」
「近寄らないで! 渡さないわよ!」
 近寄ればすられるとでも思っているのだろうか。まあ、此処はそういう街だ。
 油断すればすられるし、チェレンチィも隙があればすってみようとは思っていた。
 生粋のラサ人であろうエルマは当然それを理解しているのだろう、わき目もふらずに逃げていく。
 だからこそチェレンチィとメイは迷わずに星夜ボンバーを鳴らす。
「な、なんだあ!?」
「誰だクラッカーなんか鳴らしたの!」
「あ、見つけたぞあの女!」
 驚きの声の中に、エルマを見つけた悪人の声が混ざり、追いかけっこが始まる。
 そして……こうなった時の為にモカの提案により「悪人がエルマから紅血晶を奪おうとしたなら、悪人がエルマに危害を加えようとしない限り静観し、ただし、エルマの変異が始まった場合は強硬手段に出る」と定めていた。
 いわゆる説得が通じない場合のプランBというものだが……エルマが紅血晶を悪人たちに奪われたその瞬間、チェレンチィは自慢の機動力で追いつきエルマと悪人たちの間に滑り込む。
「へっ、これさえあればよ……お、おお?」
 紅血晶を持っていた男の腕が、異形のそれに変じていく。
「な、なんだお前そりゃ!」
「一体何が……」
 慌てる仲間たちを見ながら、悪人の男は「俺の紅血晶……邪魔だな、こいつら」と呟く。
「おい、それは……!」
 追いついたアルトゥライネルが叫ぶ間に、晶獣へと変化しつつある悪人の男は大きなラサの砂竜巻を巻き起こす。
 その威力に他の悪人たちが倒れるが……晶獣となった男は気にする様子もない。
「石の噂を知らないのか。その腕を見ろ! ファレン・アル・パレストも危険視している。魅入られたアンタも、このままでは獣に堕ちるぞ」
「知ったことかあ! これは、これは俺のだあ!」
 アルトゥライネルにそう返し、男は腕を振り回す。
「全員逃げろ! 此処は戦場になるぞ!」
 モカが周囲の人々にそう叫び、悲鳴が溢れる中で……しかし、モカたちは冷静だった。
 今ならまだ、簡単に止められると分かっていたからだ。
「末端からならまだ救いはある方かなー? 悪いけど力技だ。いい義肢は探してあげるよ!」
 ルーキスが禍剣エダークスを叩きつければ、その凄まじい一撃の前にまだほぼ人間であった男は紅血晶を取り落とし、変異した腕を消し飛ばされながら倒れる。
「エルマさん、大丈夫?」
 目の前で男が変異した衝撃に腰でも抜けたのか、アクセルは倒れたエルマを抱き起す。
「私の、石は……」
「今の自分の精神状態が分かっているのかしら? 単純に、そなたは今呪われていたの。ギルギットさんも心配しているのよ」
 石を手放しようやく聞く耳をもつようになったのか、胡桃の言葉にエルマは「ギルギット……」と呟く。
「何にせよ無事でよかったのです」
 メイもエルマの状態を見ながら、問題は無いだろうと判断する。
 近くには先程の一撃の衝撃でか、砕けた紅血晶が転がっていたが……それを直接触れないように回収していく。
「石はこれ、燃やしてしまっていいやつなのかしら。わたし達が持っていても悪影響があるならば、粉にもならぬ程に焼却してしまうのが良いと思うのだけれども」
「さて、どうでしょうね」
 胡桃にクリムもそう首を傾げ悩むが……結果としてモカの持ってきた大きな袋に入れられた欠片は、持ち帰られることになった。
「最悪の選択はせずにすんだが……出所まできっちり調査して潰さなければ、な。それが、俺の義務だ」
 アルトゥライネルはそう呟きながら、すでに喧騒を取り戻し始めているラサの町を見つめる。
 まだ何処かに、この悪しき宝石が飛び交っている。それはきっと……放置していいモノでは、ないだろうから。

成否

成功

MVP

ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼

状態異常

なし

あとがき

皆さんの調査・作戦が完璧だったのでエルマ無傷ENDです。
ご参加ありがとうございました!

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