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シナリオ詳細

<クリスタル・ヴァイス>絶望の縦深陣

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●理人の懇願
 ギルド・ローレットの銀の森支部。『真昼のランタン』羽田羅 勘蔵(p3n000126)からの呼び出しを受けた朔(p3p009861)は、ここを訪れていた。
(一体、何の用なんだ? 多分、依頼の話なんだろうが……)
 用件について訝しみながらも、勘蔵を待つ朔。もっとも、情報屋が呼び出すのだから、依頼についての話であろうと言うのは容易に予測が付く。
「お待たせしました」
 そこに、勘蔵が車椅子を押しながら現れた。車椅子に乗っているのは、召喚前からの朔の知己である足代 理人だ。
「直接お話しして頂いても良かったのですが、一応依頼に関わる話ですので、私が間に立たせてもらいました」
 やはりか、と朔が思う間に、勘蔵は理人に用件を話すように促した。
「実は、革命派で地下道の探索を行うことになったんです」
 革命派は、新皇帝派による難民キャンプ襲撃を退けた。それによりルベンの地下の調査が可能になり、かつて地下鉄が走っていた地下道の探索に乗り出したのだ。
「ですが、今の僕の身体では参加することが出来ません」
 先の難民キャンプ襲撃の際、理人は呼び声に当てられて狂戦士化し、単身で魔種率いる襲撃者達に挑んだ。しかし、瀕死の重傷に陥り、危うく朔らイレギュラーズに救出されたと言う顛末がある。
 命には別状こそないが、死に瀕するほどの傷を負ったことで、理人の体力や身体機能はガタガタになっていた。難民キャンプ襲撃の際に共に戦えたのは、本来利かない無理を利かせたに過ぎない。その後、理人は長い療養に入り、見舞いに来た朔とたくさんの会話を交わした。
 それだけに、口惜しそうな表情をする理人の感情を、朔は痛いほど理解出来る。元の世界では車椅子がなければ移動できない理人だったが、混沌に来て革命派の手術により義足を得て、自由に動けるようになった。その恩義と、元々の理想主義から革命派に――ともすれば危ういぐらいに――傾倒するようになった事情を、朔は識っている。
「だから――僕の代わりに、地下道探索の護衛に参加してくれませんか?」
「それは勿論構わない……けど、そこに如何してあんたが?」
 本来なら、仲間達を護るために自分で戦いたかったであろう。だが、そうは行かない。そこで、革命派からローレットに出されている探索の護衛依頼に代わりに加わって欲しいというわけだ。縋るような表情の理人の懇願に、朔は頷いて快諾を示した。が、そこで勘蔵が間に立っていることに、朔は首を傾げる。
「依頼人が、理人さんではないからですね」
 地下道探索の護衛依頼は、革命派から出ている。理人が依頼主であれば直接理人が話をすればよいが、そうでない以上は情報屋の自分が関わっておいた方がいいだろうと言う、勘蔵の判断だ。
 ともかく、話は決まった。理人は朔の手を、両手で包み込むようにしてさらに懇願する。
「どうか――どうか、革命派のみんなをよろしくお願いします」
「ああ、安心して任せておけ」
 朔は、理人の瞳を真っ直ぐに見つけて、空いている片手で理人の肩を励ますように叩きながら答えた。

●強化型フルアーマー・オートンリブスの脅威
 地下道の後方から、何かが近寄ってくる足音が聞こえる。何の音だろうかと訝しがった革命派メンバーの一人が、ネズミのファミリアを走らせて足音の元を探らせた。
「ひっ……!」
 足音の元を確認した革命派メンバーは、腰を抜かしてその場にへたり込む。恐怖に震える革命派メンバーを宥めて落ち着かせたところ、地下道いっぱいの大きさの、様々な武装で身を固めた巨大カブトムシが、列を為して迫っているというのだ。
 その報を聞いた革命派のメンバー達も、恐怖と絶望に包まれて悲壮な表情をする。だが。
「あんた達は、俺達が護ってみせる――理人と、そう約束したからな」
 動じることなく、朔が告げる。その言葉に、革命派メンバー達は安堵の表情を浮かべた。

 やや遅れて、イレギュラーズや革命派メンバー達の集団が巨大カブトムシの先にいると言う情報が、後方で指揮を執っている男に伝わった。男は、鉄帝軍人にしては変わった鎧に身を包んでいる。以前、難民キャンプの襲撃を試みて朔や理人と戦った魔種、リアオ・グアンだ。
「ほう……では、互いにお手並み拝見、だな」
 互いに、と言ったのは、待ち受ける集団の実力ももちろんであるが、地下道を進む巨大カブトムシ――強化型フルアーマー・オートンリブスの実力も未知数であるためだ。
 強化型フルアーマー・オートンリブスを送り込んで地下道を制圧していくと言う上司の作戦に、リアオ自身は首を捻っている。だが、先の戦いで難民キャンプ襲撃に失敗している以上、リアオは異を唱えられる立場にはなかった。
(それに、こ奴らに叩きのめされるようであれば、それまでと言うことだ)
 さすがに口には出すことなく、リアオは内心で独り言ちた。武人肌のリアオとしては、天衝種もその強化も、如何にも虫が好かない。だが、それ故に強化型フルアーマー・オートンリブスらが使い潰されても、リアオの気にするところではない。そもそも、強化型フルアーマー・オートンリブスの巨体が邪魔で救援に赴くことは出来ないのだ。
 幸い、命じられているのは「強化型フルアーマー・オートンリブスによる地下道の制圧」だ。強化型フルアーマー・オートンリブスが地下道の制圧に成功すればそれで良し。よしんば強化型フルアーマー・オートンリブスが阻まれたとしても、そうなれば命令が達成不能になったとして撤退するまでだった。

GMコメント

 こんにちは、緑城雄山です。
 今回は、<クリスタル・ヴァイス>のうちの1本をお送りします。
 地下道の探索に入った革命派の後方から、強化型フルアーマー・オートンリブスが文字通り列をなして迫ってきました。
 革命派メンバー達を守りつつ、強化型フルアーマー・オートンリブスを撃破して下さい。
 ちなみに、タイトルの「絶望の」は革命派メンバー基準ですので、イレギュラーズ基準なら(シチュエーションは厄介ですが)それほどでもないかとは思います……ないですよね?

【概略】
●成功条件
 強化型フルアーマー・オートンリブスの全滅

●失敗条件
 革命派メンバーの半数以上の死亡

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●ロケーション
 鉄帝地下道内部。幅はそれなりに広いのですが、散開しての戦闘は困難でありそれなりに密集しての戦いを強いられることになります。そのため、この戦闘では複数回回避による回避ペナルティーが倍となります。
 また、天井があるため少し浮く程度なら別として飛行は不可能です。
 その他、環境によって戦闘に影響する要素は無いものとします。

●初期配置
 強化型フルアーマー・オートンリブスは、それぞれ距離を取って一列に並んでいます(と言うか、並ぶしかありません)。
 戦闘前に配置を決定し組み直す時間は、あるものとします。 

【敵】
●強化型フルアーマー・オートンリブス ✕10
 巨大カブトムシのような天衝種を、各種装備で強化した個体が、さらに強化されたものです。
 巨体故に地下道内では横に並列することは不可能で、10体がそれぞれ距離を取って一列に並んでいます。1体が撃破されるまで、次の強化型フルアーマー・オートンリブスはイレギュラーズ達の攻撃が届かない距離にいる上、参戦してくることはありません。
 フルアーマー化時点で鈍くなった動き(回避、反応)はさらに鈍重となり、特に回避はスペースの関係上大幅なペナルティーを受けています。一方、元々高い防御技術はさらに高くなった上、対神秘攻撃力場が付きました。
 加えて、狂化催眠によってEXAが上昇し、【怒り】を受け付けなくなっています。
 また、基本的には遠距離から広範囲に砲火を浴びせてくる戦い方をしますが、いざとなったら使ってくる羽の裏のバーニア一斉噴射による、増加したスピードと重量による突進は脅威でしょう。

・攻撃能力など(今回の戦闘で使えそうに無いものは省略しています)
 角 物近単 【弱点】
 ビームホーン 神近単 【弱点】【出血】【流血】
  角にビームを纏わせて、神秘攻撃の槍として攻撃します。
 突進(域) 物超域 【万能】【移】【弱点】【飛】【体勢不利】
  速度と重量を以て、邪魔なものを弾き飛ばすタイプの突進です。
 背部ビームカノン 神遠単 【邪道】【弱点】
 頭部バルカン 物近扇 【スプラッシュ】【邪道】
 側部ミサイルポッド 物遠域 【識別】【多重影】【変幻】【邪道】【鬼道】【火炎】【業炎】【炎獄】
 対神秘攻撃力場
  至近以外の距離からによる神秘攻撃を、無効化する力場が展開されています。
 【怒り】無効
 自動ブロック
  強化型フルアーマー・オートンリブスの巨体は地下道をほとんど塞いでしまうため、強化型フルアーマー・オートンリブスの至近距離に入った者は自動的にブロックされ、後退以外の移動が不可能となります。
  この能力は、パッシブで発動しています。
 マーク・ブロック不可
 自爆
  死亡時、自爆します……と言うよりも、させられます(次の個体の邪魔にならないようにするための死体処理です。最後の個体だけは、撤退の時間稼ぎにするために自爆させずにそのまま残します)。
  
●グロース師団兵 ✕30
 戦闘要員と言うよりも、強化型フルアーマー・オートンリブスの誘導要員です。強化型フルアーマー・オートンリブス1体につき、3人がその後方に控えています。
 アイテムを使って戦場に保護結界を展開したり(地下道の崩落はリアオらにとっても困ります)、強化型フルアーマー・オートンリブスが死亡した際に自爆させて死体を処理するのが役目です。
 そのため、担当の強化型フルアーマー・オートンリブスが死亡したら、戦わずに後方へ下がろうとします。
 強化型フルアーマー・オートンリブスの自動ブロックにより、担当の強化型フルアーマー・オートンリブスを倒すまで彼らに攻撃を行うことは出来ません(つまり、自爆の阻止は不可能です)。
 
●リアオ・グアン ✕1
 強化型フルアーマー・オートンリブスやグロース師団兵を統率する憤怒の魔種です。
 今回は強化型フルアーマー・オートンリブスの最後尾にいて指揮を執っていることに加え、強化型フルアーマー・オートンリブスが全滅した時点で撤退するため、戦うことはありませんし出来ません。

【味方】
●革命派メンバー ✕20
 地下道探索を行う革命派のメンバー達です。今回の友軍と言うよりは護衛対象。
 護衛はイレギュラーズ達に任せているため、探索重視でメンバーは選出されています。
 そのため、相手が強化型フルアーマー・オートンリブスと言うこともあってほぼ戦力にはなりません。

●足代 理人
 朔さんの関係者です。体調が万全なら戦闘寄りのメンバーとして地下道探索に加わったかと思われますが、『<革命の聖女像>鮮血の狂戦士』で受けた傷により無理が利かないため(HP的には問題ないのですが、瀕死の重傷に陥った事により損ねた体力や身体機能が未だ回復しきっていない状態です)、朔さんに自分の代わりに地下道探索の護衛依頼に参加して欲しいと朔さんに頼み込んできました。
 当然、戦場にはいません。


●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <クリスタル・ヴァイス>絶望の縦深陣完了
  • GM名緑城雄山
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月04日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞
エッダ・フロールリジ(p3p006270)
フロイライン・ファウスト
ルネ=エクス=アグニス(p3p008385)
書の静寂
オニキス・ハート(p3p008639)
八十八式重火砲型機動魔法少女
ルブラット・メルクライン(p3p009557)
61分目の針
朔(p3p009861)
旅人と魔種の三重奏
リスェン・マチダ(p3p010493)
救済の視座

リプレイ

●強化型フルアーマー・オートンリブス襲来
 様々な武装で身を固めた巨大カブトムシ――強化型フルアーマー・オートンリブスが列を為して迫っていると言う報に、鉄帝地下道に探索に出ている革命派メンバー達は恐怖し、怯えた。だが、護衛についているイレギュラーズ達が涼しい顔をしているのを見て、平静を取り戻していった。
「縦深陣か……寧ろ、俺達には好都合」
 『荒くれ共の統率者』ジェイク・夜乃(p3p001103)は不敵な笑みを浮かべながら独り言ちた。
 強化型フルアーマー・オートンリブスは、列を為していると言うよりも、地下道のスペースの関係上列を為してくることしか出来ない。それはつまり、数で押す襲撃は出来ないため一度の戦闘においては八対十にはならず、必ず八対一になることを意味していた。その分十連戦にはなるが、個々の戦闘ではイレギュラーズの方が数では有利と言えた。
「地の利は我にありってな……さっさとぶっ倒して調査に乗りだそう」
「そうだな。ここで良い報告を持ち帰れば……きっと、皆もアミナ君もより心強い希望を見出してくれる筈なのだ。
 無粋な者たちに邪魔される訳にはいかないな」
 ジェイクの言に、ペストマスクを着けた『革命の医師』ルブラット・メルクライン(p3p009557)が頷きながら応じる。アミナをはじめとする革命派の皆のためにも、この程度の障害に屈するわけにはいかなかった。
(重武装の大型天衝種――地下道に多数投入されたりしたら、こっちの探索にかなり影響が出そう)
 『八十八式重火砲型機動魔法少女』オニキス・ハート(p3p008639)は、そう懸念を抱いた。だが、スペースの関係で一度に複数襲ってこないのが、まだ救いと言える。ここで叩いて、少しでも数を減らしておきたいところであった。
「下がってろよ、こういうのは俺たちに任せとけ」
 そう言って革命派メンバーに後方に下がるよう促しているのは、朔(p3p009861)だ。朔は、混沌に召喚される前からの知己である足代 理人の要請によって、理人の代理として革命派メンバーらの護衛に参加していた。理人の頼みであれば、そしてその頼みが誰かのためであるのなら、朔としては断ることは出来なかった。
 もっとも、朔は大口を革命派メンバーに叩いてみせたが、実際のところ朔の戦闘経験はそう多くはない。それに加えて、武器も変えたばかりだ。
(前のめりになりすぎず、慎重にいこう)
 そう、朔は気を引き締めた。

 やがて、最初の強化型フルアーマー・オートンリブスがイレギュラーズ達の前に姿を見せた。
「大きなカブトムシだね。大きな体と強力な火力で逃げ場なく通路を制圧する――実に合理的で無駄がないね」
 『書の静寂』ルネ=エクス=アグニス(p3p008385)は、強化型フルアーマー・オートンリブスをそう分析した。だが、見たところ理性もありそうにないし、何よりこの狭い地下道内でこの巨体は如何にも小回りが利きそうにない。となれば、付け入る隙は十分ありそうにルネには思われた。
「こんな場所でよくあの巨体を動かす気になったわね……」
 一方、『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)は新皇帝派の発想に呆れ気味だった。だが、革命派メンバーに「イレギュラーズが護衛についているから安全だ」と安心させる意味では丁度いい相手ではあった。
(今まで後ろの方で戦いに参加することが多かったので、中衛というのは新鮮です。そして恐いです。
 ――だってあのカブトムシさん、ツノとかミサイルとか、見るからに暴力的ですよ?)
 様々な武装を身に纏った強化型フルアーマー・オートンリブスの姿に、『救済の視座』リスェン・マチダ(p3p010493)は恐怖を覚えていた。これは、普段は後衛を務めているのに今回は敵に近い中衛に出てきたこともあった。
 だが、リスェンには負傷した味方を、そして革命派メンバー達を回復して支えると言う役割がある。怖いからと、それを放棄することはリスェンには出来なかった。誰一人として、死なせたくはないのだから。
「掘って進め、進んで掘れ――単純だな」
 『フロイライン・ファウスト』エッダ・フロールリジ(p3p006270)は、事も無げにそう言ってのけた。要は、目の前の強化型フルアーマー・オートンリブスを撃破して進み、進んだ先で次の強化型フルアーマー・オートンリブスに遭遇したら撃破していけばいいだけの話なのだ。
「――では、前進するとしよう」
 既に隊列を整えた仲間達に、エッダはそう声をかけた。

●動きさえ封じてしまえば
「悪いが、ここは通行止めだぜ」
 ジェイクはそう強化型フルアーマー・オートンリブスに告げると同時に、大型拳銃『狼牙』で銃撃する。銃弾は強化型フルアーマー・オートンリブスの外骨格を貫通し、その体内へと食い込んだ。すると、強化型フルアーマー・オートンリブスの身体がガクガクと震えてその動きが止まる。ジェイクの銃弾が、強化型フルアーマー・オートンリブスの身体を一時的に麻痺させたのだ。
「――恐ろしい未来は考えずに、ただキャンプに戻った時に皆が喜ぶ姿だけを想像していたまえ。今はそれで十分だ」
 後方にいる革命派メンバーにそう声をかけながら、ルブラットは漆黒の大顎を顕現させた。大顎は、身動きの取れない強化型フルアーマー・オートンリブスへと襲い掛かると、その身体に牙を突き立てる。ガブリ、と噛みついた牙が、強化型フルアーマー・オートンリブスの外骨格を貫通してその下の身へと突き刺さった。
「いくら防御が硬くても、身動きが不自由ならいくらでもやりようはあるのよね──さあ、私と踊りましょう?」
 強化型フルアーマー・オートンリブスは、言わば行列を作って自分の番を待っている状態だ。ならば、さっさと目の前の個体を捌いて次の「お客様をお出迎え」すればいい。
 仲間達の前に出たアンナは強化型フルアーマー・オートンリブスを誘うように、ひらり、くるりと魔性の舞を舞った。身動きのままならない強化型フルアーマー・オートンリブスは、ぐぐ、と無理矢理に頭をアンナの方へ向けようとする。だがそれは、続くイレギュラーズ達に頭部と胸部の外骨格の隙間を大きく曝け出すことになった。
「――下らんおもちゃだ。やはり新皇帝派の戦い方はつまらん。覇気がない。自負もない。
 ただ勝ち馬の尻に乗っているだけだ。そういう奴らは、せっかく勝っているのに負けたくないからと及び腰になる。
 覚悟が違うのだ。私ではない――戦えもしないのに、このような場で何事か為さんとする彼らのことだ。貴様らなど、彼らに足下でも及ぶまいよ」
 興醒めだと言わんばかりに淡々と、エッダは独語する。同時に、曝け出された外骨格の隙間目掛けて、渾身の力を込めたストレートを叩き付けた。ぱっと見ればエッダはただ全力を殴りつけたように見えるのだが、その拳には力をパワーとする鉄帝式高等魔術が付与されている。
 エッダの拳を受けた強化型フルアーマー・オートンリブスの巨体が、グラリ、と大きく揺れた。
(バリアが厄介……至近距離から仕掛けるしかないな。狭所、しかも近距離での戦闘――不慣れだけど、そうも言ってられない)
 強化型フルアーマー・オートンリブスの身体には、遠距離からの神秘攻撃を無効化する力場が展開されている。つまり、普段オニキスが得意とする遠距離からの大口径魔力砲『マジカルアハトアハト』での砲撃は無力化されてしまうのだ。
 追加装甲を付けてきてよかったと思いながら、オニキスは強化型フルアーマー・オートンリブスに接近し、マジカルアハトアハトのクアドラプルバーストシーケンスをスタートさせる。マジカルアハトアハトの砲身が四基となり、それぞれにジェネレーターを接続し、魔力回路を全基同調。
「マジカル☆アハトアハト・クアドラプルバースト―――発射(フォイア)!」
 砲身四基の砲口が、全て外骨格の隙間に狙いを付ける。そして、超高圧で圧縮された魔力が、四基のマジカルアハトアハトの砲口から放たれた。零距離で放たれた魔力弾は、その周辺の外骨格を破壊しながら、強化型フルアーマー・オートンリブスの身体を深く穿つ。
 如何にその生命力が強靱とは言え、これまでのイレギュラーズ達の攻撃に加えて四発の魔力弾を受けた強化型フルアーマー・オートンリブスが弱ってきているのは誰の目にも明らかだった。
(大分ダメージが入ったみたいだな……畳みかけるか)
 ならばと、朔は白銀の狙撃銃を構えて、狙いを強化型フルアーマー・オートンリブスの頭部に定める。
(それにしたって、随分色々搭載してるんだな? こんな状況でもなければじっくり見てみたかったな)
 巨大なプラモのようで倒すのがややもったいないように感じつつも、朔は狙撃銃の引金を静かに引いた。放たれた銃弾が、外骨格など存在しないかのように貫通し、強化型フルアーマー・オートンリブスの頭部に突き刺さる。
(ここは、攻めるべきところですね)
 味方に負傷者はなく、強化型フルアーマー・オートンリブスは動けない。となれば、リスェンは攻勢に出るべきと判断した。至高と光輝の魔術をリスェンが発動させると、光り輝く純白の鎖が強化型フルアーマー・オートンリブスを絡め取っていく。強化型フルアーマー・オートンリブスはその拘束から逃れようとするが、ダメージを負った身体で暴れ回るのは無益どころか、死期を早めるものでしかなかった。
(これで、斃れてくれるかな……?)
 リスェンと同様、ルネもまた攻勢に出る。花びらのように小さい、無数の炎が身動きの取れない強化型フルアーマー・オートンリブスの周囲を舞った。桜吹雪のように舞う炎は、強化型フルアーマー・オートンリブスへと集中し、その全身を灼いていく。焦げ臭い匂いが一帯に立ちこめる頃には、強化型フルアーマー・オートンリブスは力尽き、力を喪った脚が折れてズン! とその巨体が地に落ちた。
 同時に、強化型フルアーマー・オートンリブスの後方にいたグロース師団兵達が逃げながら、手にしているリモコンのスイッチを押した。すると、強化型フルアーマー・オートンリブスの身体中からカッ! と閃光が迸り、一瞬遅れて爆発する。爆風が、イレギュラーズ達を巻き込んだ。
(……敵でしたけど、一生懸命戦ったのに……こんな最期って、ひどいです。ああ、こんなバラバラに……。
  どうか魂だけでも、安らかに眠ってください)
 木っ端微塵になった強化型フルアーマー・オートンリブスの残骸を目の当たりにしたリスェンは、呆然とした表情をしていた。遺体を爆破されると言うあまりにも哀しい最後に、思わず冥福を祈らずにはいられない。
「――いやはや。邪魔にならない様に自爆とは、相手側の作戦立案者は余程合理的な性格のようだね」
 一方、ルネは静かにつぶやいた。だが、その声は硬い。
「無事か!? ……なら良い。」
 エッダは、後方に退避している革命派メンバー達が無事かどうかを確認し、爆風が彼らに及んでいないのを確認すると胸を撫で下ろした。現在鉄帝は六つの派閥に分かれており、エッダは革命派とは異なる派閥にある。だが、派閥を違えていようとも、新皇帝バルナバスの支配に抗う者は同志であった。
 それに、革命派にはエッダの大事な友人がいる。彼らにもし何かあったら、その友を悲しませていたことだろう。

●縦深陣は破られた
 強化型フルアーマー・オートンリブスの爆発によって受けた傷を、ルネとリスェンが手分けして癒やしていく。だが、完全に傷を癒やしきる前に、イレギュラーズ達は次の強化型フルアーマー・オートンリブスとの戦闘を強いられた。
 もっとも、強化型フルアーマー・オートンリブス自体は戦ってみれば手強い敵とは言えなかった。これは、狭い地下道内で強化型フルアーマー・オートンリブスが飛べないことに加えて、ジェイクの銃撃によってその動きを封じられたことが大きかった。如何に強力な武装を纏っていようとも、それを撃つことが出来なければただの的だ。
 堅固な外骨格と増加装甲も、アンナが、そして時折エッダも加わって無力化していった。そこにオニキス、朔、ルブラット、ルネ、リスェンの攻撃が集中していくのだ。これでは強靱な生命力を持つ強化型フルアーマー・オートンリブスと言えども、長く生き存えることは出来なかった。
 ただ、グロース師団兵達による強化型フルアーマー・オートンリブスの爆破処理には、イレギュラーズ達は次第に傷つけられていった。次の強化型フルアーマー・オートンリブスとの戦闘の合間にルネとリスェンが癒やしを施していたが、癒やしきれないうちに次の強化型フルアーマー・オートンリブスとの戦闘を強いられ、爆破処理によってさらなる傷を負わされるのを繰り返されてしまう。これにより、守りに長けたアンナとエッダ以外は、深手を負ってしまった。
 それでも誰一人として倒れることがなかったのは、ルネとリスェンの献身的な癒やしがあればこそだったろう。

 十度目の戦闘で、イレギュラーズ達は最後の強化型フルアーマー・オートンリブスを斃した。これも爆破処理されるのかとイレギュラーズ達は構えたが、最後の強化型フルアーマー・オートンリブスは爆破されることなく捨て置かれた。
「この自爆させなかったのは、僕達が追って来れない様に障害物とするためか……本当に、無駄がないね」
 その理由を察したルネは、苦々しそうな表情でつぶやいた。
 ともあれ、イレギュラーズ達は強化型フルアーマー・オートンリブスの襲来をしのぎきった。
「やれやれ……護衛も途中だというのに、疲れたわね」
「厄介な敵に出会ってしまったが、ここであれだけの戦力が投入された以上、この近くには強敵はいない……と、考えたいものだな」
 ふぅ、と溜息をついて疲れを口にするアンナに、ルブラットは自身の推測を口にした。そうあって欲しいとはアンナも思うが、ここで気を抜くことは出来ない。
「さぁ、行こう。我々の肩には使命がのしかかっている……」
 ルブラットの言葉に、イレギュラーズと革命派メンバー達は地下道のさらに奥へと踏み入っていった。
 その後は、ルブラットの推測どおり敵が出てくることはなかった。好奇心から加わったジェイクを交えた革命派メンバー達の調査とその護衛は、無事に終わる。
(これで、あいつに顔向けできるな)
 自身の代理として護衛依頼を頼んできた時の理人を思い出しつつ、朔は代理を無事に務められたことに、ほっと胸を撫で下ろした。それと同時に、次は回復した理人と肩を並べて戦うのも面白そうだ、とも思うのだった。

成否

成功

MVP

ジェイク・夜乃(p3p001103)
『幻狼』灰色狼

状態異常

ジェイク・夜乃(p3p001103)[重傷]
『幻狼』灰色狼
ルネ=エクス=アグニス(p3p008385)[重傷]
書の静寂
オニキス・ハート(p3p008639)[重傷]
八十八式重火砲型機動魔法少女
ルブラット・メルクライン(p3p009557)[重傷]
61分目の針
朔(p3p009861)[重傷]
旅人と魔種の三重奏
リスェン・マチダ(p3p010493)[重傷]
救済の視座

あとがき

 シナリオへのご参加、ありがとうございました。強化型フルアーマー・オートンリブスは皆さんの活躍によって全滅し、革命派メンバーは無事に調査を終えることが出来ました。
 MVPは選出に迷いましたが、高反応からの高封殺+麻痺で強化型フルアーマー・オートンリブスの動きを封じたことで、味方の被害軽減に大きく貢献したとしてジェイクさんにお贈りします。

 それでは、お疲れ様でした!

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