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シナリオ詳細

<クリスタル・ヴァイス>モンスタートレインで混戦中

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 現在の鉄帝は混迷していた。
 先帝ヴェルスの敗北と新皇帝バルナバスの誕生により六派閥が競い合い、各地の要所を奪い合う。
 まさしく弱肉強食戦国跋扈といった様相を見せていたが、そこに新たな脅威が襲い掛かっていた。
 それは『鉄帝の冬』。
 伝説の狼『フローズヴィニトル』になぞらえた大寒波が鉄帝を覆っていた。
 寒波による凍死者が出るほどの極寒は、物資を食い潰させギリギリの生活に陥る所も少なくない。
 むろん、それは争い合う六派閥全てが同じ。
 困窮する中、一刻も早い事態の安定を求め、今まで以上に各派閥は動き出す。
 クリスタル・ヴァイス(水晶の白)。
 純白の雪が鉄帝を包み全てを凍らせようとする時期に、更なる動乱の予感が広がる。
 それは、鉄帝の地下に広がる大規模地下道も例外ではなかった。

◆  ◆  ◆

 闇の中で光が弾ける。
 それは銃火であり魔法の輝き。
 戦の焔が、至る所で弾けていた。
「ギギル! 右手のヤツは頼む!」
「任せろ!」
 戦友の頼みに、鉄帝の軍人であるギギルは部下を率いて敵に突っ込む。
「全員突貫! 横っ腹から食らいつけ!」
 応じる声が上がり、若い軍人達が猪突猛進に突撃。
 敵は、新時代英雄隊。
 ゴロツキも多い新時代英雄隊だが、今この場にいる者は練度が高い。
 お互い激しくぶつかり合い、無傷はひとりとしていなかったが――
「回復するからそのまま進んで!」
「守りの加護も掛けます!」
 後方支援の差で、鉄帝の軍人が押し切った。

「ふぅ……どうにかなったな」
 新時代英雄隊を全員戦闘不能にし、捕縛したギギルは協力者に礼を言う。
「助かったぜ。やっぱ後方支援がいてくれるとありがてぇな」
「いいわよ、気にしないで」
「長い目で見れば、こちらの利益にも繋がりますから」
 返したのは幻想の商人であるリリスとヴァン。
 鉄帝の街や村と商売している2人だが、手に入れたコネクションを守るためにギギル達の戦いに手を貸していた。
「それにしても、結構向こうは本気で動いてるわね」
 捕縛した新時代英雄隊に視線を向けたあと、リリスは言った。
「質の高い兵士を投入してるみたいだけど、それだけフローズヴィニトルってのは得難いモノってことなのかしらね?」
「さぁな」
 肩を竦めるようにギギルは返す。
 いま2人が話しているのは、鉄帝地下道に封じられているという伝説上の狼のことだ。
 銀の森に属するエリス・マスカレイド曰く、地下の奥深くに封じられているとのこと。
 その封印を解くため、新皇帝派組織アラクランを率いる総帥フギンが配下の者を地下道に派遣しているのが、今の状況というわけだ。
 それを知った鉄帝の各派閥は、それぞれ対処に動いている。
 その一環で、軍人であるギギルも参戦し、コネが無くなっては困るリリス達も協力していた。
「正直、フローズヴィニトルってのがどんなのか知らねぇし、そもそも上が地下道調べさせてる一番の目的は帝都に進撃するルートを探るこったからな。あっちもこっちもどうにかしろって言われても手が足りねえ」
 愚痴めいたことを言うギギルに、ヴァンが返す。
「それはつまりアレですか、帝都に進撃するルートを探ることが目先の目的だけど、敵が何か秘密兵器めいた物を使おうとしてるからそっちもどうにかしろと」
「そういうこったわな。んなこと言われても人手が足らねぇ。だからお前さんらにも手を貸して貰ったんだが――」
「まだ足りないってことよね?」
「ああ。というわけで、追加の人員どうにかなんねぇか?」
 拝み倒すギギルに、リリスは応える。
「分かったわ。ローレットに依頼して、地下道探索の人手を借りるわ」

 ということで、ローレットに依頼が出されることになった。
 内容は、鉄帝地下道の探索。
 現在、鉄帝地下道では、フローズヴィニトルの封印を解くことを目的に動いている新皇帝派の者も数多く、出会えば戦闘は必須とのこと。
 さらに、様々な魔物も跋扈しているので、遭遇すれば戦闘になるだろう。
 とはいえ鉄帝の軍人と組んで進むので、早々混沌とした状態にはならない――はずではあるが、とある犯罪者達が鉄帝地下道でいらんことをしていた。

「おいなんか数が増えて来たぞ!」
 多数の魔物に追われながら、三十代の男が叫ぶように言った。
「こいつらどうすんだよ!」
「さて、どうしようかね?」
 応えを返す紳士然とした男は、仲間と一緒に魔物に追い駆けられながら走り続ける。
「戦うのは、面倒だね」
「じゃどうすんだよ!」
「誰かに押し付けよう」
「誰にだよ!」
「とりあえず、次に出会った誰かにプレゼントしよう」
「行き当たりばったりじゃねぇか!」

 そんな感じに、モンスタートレインして来る一団も出没するようです。
 出会えば混戦になるのは確実ですので、その時は戦って下さい。

GMコメント

●目的
鉄帝地下探索の邪魔になる敵を排除する。

●流れ
今回は、以下のような流れで進みます。

1 鉄帝の軍人達と一緒に探索開始。
暗所になる場所までは地図が作成されており、特に問題なく進みます。
2 暗所のルートを進む
明かりが消えているルートです。
同行する軍人達が明かりの用意はしており、暗闇の中で戦うということはありません。
ただし、遠くまで見通せるほどの光源はしていません。
進んでいくと、新皇帝派の敵との戦闘になります。
3 暗所での戦闘
新皇帝派の敵との戦闘中、モンスタートレインしてきた連中が乱入。
魔物を押し付けて逃げます。
新皇帝派の敵×魔物×PCの混戦になります。
倒し切ったら依頼終了です。

●戦場
鉄帝地下道の暗所。複数が戦闘するのに支障のない広さがあります。
暗所のため、明かりを用意している味方から離れると暗い場所での戦闘になります。

●味方
指示を出せば従ってくれます。
帝政派軍人×10
帝都進撃の探索と、フローズヴィニトルが封じられていそうな場所の探索を上から命じられています。
戦闘補助のための明かりを持っています。
強さは、そこそこ。攻撃と回復手段をバランスよく持っています。

ギギル隊
実戦経験も豊富な攻撃特化の小隊。構成員は10人です。
強いですが、回復手段は無いです。

リリス&ヴァン
幻想の商人。縁のあるギギルに協力している。
回復と支援特化。
一時的に、PCの周囲を明るくするなどもしてくれます。

●敵
新皇帝派×30
小隊×3、の集まりの敵です。ゴロツキでは無い軍人なのでそれなりの強さがあります。

魔物×??
グルゥイグダロス
巨大な狼のような姿の怪物です。俊敏にして獰猛。その爪や牙をマトモに受ければ『出血』します。
ギルバディア
大型のクマ型の魔物。凄まじい突進能力があり、敵を吹き飛ばす様な一撃を宿している事もある模様。
ヘァズ・フィラン
鴉のような見た目の魔物。空を飛行し、弱者と思わしき者を集団で嬲ります。反応、機動力、EXAに優れ、牙には毒もある模様です。
上記の3種類が、群れでやってきます。
御参加いただいた皆さまのレベル帯などを見て、総数は調整します。
魔物以外を攻撃しますので、誘導の仕方によっては、新皇帝派の敵にも襲い掛かるかもしれません。

モンスタートレインしてきた奴ら
鉄帝地下道の一部を刳り貫いて秘密基地作ったり秘密の通路を勝手に作ってる奴ら。
基本、魔物を押し付けたら逃げようとします。
フローズヴィニトルに興味を持ち、封印場所を調べたり、魔物を解体したりしてたら魔物に襲われたので逃げてました。
こいつらは倒さなくても目的は達成できます。攻撃するのは可能です。でも逃げます。

●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。

●情報精度
このシナリオの情報精度はCです。
情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • <クリスタル・ヴァイス>モンスタートレインで混戦中完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年02月03日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

武器商人(p3p001107)
闇之雲
ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク
寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
シャールカーニ・レーカ(p3p010392)
緋夜の魔竜

リプレイ

「ぶはははッ、軍人さんらも大変だねぇ! まぁしっかり手伝わせてもらうぜ!」
 現地で改めて依頼内容を聞いた『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)は、人好きの良い笑みを浮かべ軍人達を安心させるように言った。
 これに軍人達も返す。
「頼りにしてるぜ!」
「ああ、頼りにしてくれ!」
 軍人達と息を合わせるように会話を重ねるゴリョウのように、他のイレギュラーズも言葉を交わす。
「友軍が多くて頼もしいよ」
 笑顔で言ったのは、『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)。
「俺は史之だよ、よろしくね」
 親しげに呼び掛ける史之に、軍人達も笑顔で返す。
「こちらこそ、よろしく頼む」
「うん。それじゃお役目のために、俺たちは報酬のために、お互いがんばろうか」
 軍人達と言葉を交わしたあと、依頼人にも声を掛ける。
「リリスさん、ヴァンさん、支援をよろしくね」
「もちろん」
「任せて下さい」
 何度か共に戦ったこともあるので、2人とも慣れた様子で返す。そんな2人を信用するように――
「後ろは任せたよ」
 親しげに言ったあと、史之は自分の配置に向かう。
 軍人達も慣れた様子で準備を完了させていき、それを見ていた『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は安堵するように思う。
(今回は友軍が頼もしいな)
 実際、探索に参加する軍人達の質は高い。
 それを活かすためにも、助っ人である自分達の役割は重要だ。
(探索頑張ろう)
 気合を入れるイズマ。
 皆が同じように意気込む中、『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)が軍人達に声を掛けられる。
「よろしくな!」
「はい、よろしくお願いします」
 丁寧に返す祝音に、軍人達は笑顔で返す。
 信頼するように声を掛けてくれる軍人達に、祝音は思う。
(鉄帝の軍人さん達や小隊の人達や商人さん達と一緒。嬉しいな……)
 そう思うと同時に、義務感めいた想いを抱く。
(彼等に危険な事がおこるのはいやだから、僕が頑張って守る、その為に……敵が来たら、戦うよ)
 護るために戦う意志を強くする。
 祝音のように、皆は意志を高めつつ準備を終わらせると、出発。
「まずは帝都目指してサクサク行こう」
 景気付けるような史之の呼び掛けに応えるように、皆は歩き出す。
 当然、異変をすぐに察知できるようスキルを駆使し進んでいく。
 幸い通路の幅があるので、ある程度隊列を組めば纏まって進むことが出来る。
 既知のルートを問題なく進み、やがて明かりの途切れた場所に辿り着いた。
「ここから先はマッピングもされて無い未到達地です、気をつけて進みましょう」
 依頼人のヴァンが、リリスと共にマッピングをしながら皆に言った。
 それに皆は応え、暗所へと足を踏み入れた。
 視界は不良だが、軍人達が発光により周囲を照らしてくれるので、進むだけなら不安は無い。
 さらに、ゴリョウや祝音、それにイズマも発光で光源を作ってくれているのでサクサク進んでいく。
 明かりを確保した上で、一塊になって進む。
 しかし何人かのイレギュラーズは、不測の事態をいち早く察知するため、あえて明かりの届く範囲を出て、先行して進んでいた。
「こんなことでもなかったらゼシュテルの地下を探検することなんて無かったと思うとフクザツだねぇ」
 残念そうに言いながら進むのは、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)。
(本当ならもっと気軽に地下探索したかったね! 宝物とか探したりさ!)
 暗視で周囲を確認しながら進む。
 彼と同じように、暗視で周囲を確認しながら進むのは、『闇之雲』武器商人(p3p001107)。
(今の所、一本道みたいだねぇ)
 周囲の状況を確認しながらマッピングをしている。その上で――
(広くて、複数の通路に繋がってる場所があるといいんだが。ベースキャンプを作るには、ちょうど良い)
 抜け目なく、先のことも考え周囲を見通していた。
 そうした暗視で周囲を確認しながら進む者よりも、さらに前に出て進んでいるのは『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)。
(今の所、敵の気配はありませんね)
 ギフトにより、暗所であろうと明瞭に周囲を確認できるオリーブは、仲間の光源が完全に届かない距離でも問題ない。
 オリーブは暗所であるこの場所では、ある種の鬼札になり得る状態だった。
 そうした状況で進んでいくと、遠くに明かりが見えた。
(新皇帝派、ですね)
 仲間の光源から離れているからこそ、敵に気付かれることなく状況を把握したオリーブは後方に下がり報告する。
「敵です。新皇帝派と思われます。三小隊に分かれて近付いてきます」
 状況を伝えると、光源から離れ壁際に移動し前に出る。
 これで敵には気付かれず距離を詰めることが出来るだろう。
 オリーブが不意を突くため前に出る間に、暗視が出来るイグナートと武器商人は少し後方でついていき、同じように壁際で待機。
 その間に、光源を維持しながら軍人達も含めたイレギュラーズ達は距離を詰める。
 囮として敵を引き付けながら前に進む。
 すでに敵もこちらに気付いているのか、武器を構える音がかすかに聞こえてくる中、距離が縮まっていき――敵が一斉掃射してきた。
 響き渡る無数の銃声。
 だが距離がある上に暗所のため、命中率は低い。
 まともに当たることは無いし、守りを固めれば脅威ではない。
 恐らくこれは威嚇射撃。
 イレギュラーズ達を近付けず、態勢を整えて一斉に突っ込んで来るつもりなのだろう。
 だが、イレギュラーズの方が一手上回る。
(気付かれて無いですね。これなら――)
 オリーブは壁際の暗所を進み、気付かれないギリギリの距離まで近づくと、クロスボウで連続掃射。
「がぁっ!」
「狙撃!? どこからだ!」
 派手な音のしないクロスボウで撃たれたこともあり、敵は暗所に潜むオリーブを見つけられない、その隙に――
(エゴロヴィチの旦那、左手の奴らは任せたよ)
(任せて!)
 ハイテレパスでイグナートに突撃の合図をした武器商人が、右手壁際の暗所から突進。
 オリーブの掃射で気を取られていた敵は、武器商人の不意打ちに対応できない。
「こっちだよ、ヒヒヒ」
 ぬるりと間合いを侵し、魂の奥底をざわつかせるような呼び声を響かせる。
 それを耳にした敵は、恐慌をきたしたように顔をひきつらせデタラメに銃を撃ち、あるいは魔術を放つ。だが――
「一手遅いねぇ、ヒヒヒ」
 その時には既に、武器商人は距離を取り誘導するように動いている。
 敵の右翼が崩れる。
 そこにイグナートが追撃。
 ジェットパックで浮き上がったあと、壁を蹴り敵の間合いに一気に飛び込む。
 反応しきれない敵の只中で、戦いの鼓動を限界まで高め響かせた。
 途端、敵の視線はイグナートに集中する。
 当然のように襲い掛かろうとするが、イグナートの動きの方が速い。
 全身の力を溜め、一気に解放。
 大気を打ち鳴らすほどの突進で、纏めて敵を吹っ飛ばすと、囲まれないよう素早く動きながら攻撃を重ねていった。
 敵の隊列が崩れる。
 しかし敵リーダーの檄が崩壊を食い止めた。
「落ち着け! 訓練を忘れるな! 目先の敵より陣形回復を優先しろ!」
 鋭い声で敵の乱れた動きが収まる。
 しかし動きは鈍い。
 その隙を逃さず、本隊のイレギュラーズ達が一斉に突撃する。
「今だ! 突撃!」
 反応に優れたイズマが素早く状況を判断し、軍人達に指示を出す。
「ギギル隊と小隊は敵右翼部隊を挟撃撃破! 残りを俺達で抑える!」
 指示を出し、仲間と共に突撃。
 その直前、リリスとヴァンが加護を掛ける。
「加速と防護の加護を掛けたわ!」
「移動と回避、それと防御を大幅に上げています!」
 支援を受け、一気に距離を詰める。
 イズマはあえて敵の只中に踏み込むと、魔力を込めた優美なメロディを響かせた。
 それを耳にした敵は、惚けたように動きが鈍る。すると――
「呪歌だ! 回復させろ!」
 敵リーダーが仲間に指示。
 即座に対応しようとするが――
「させるか!」
 イズマは魔空間を作り出し、敵の支援役を飲み込み圧搾した。
 敵の勢いが鈍る。
 そこにイレギュラーズ達が続々と追撃を掛けた。
「相手をして貰うよ!」
 イズマの死角から襲い掛かろうとした敵を、史之が斬り捨てる。
 それを見た敵は数の暴力で圧殺しようとするが、史之は驟雨の如く無数の斬撃を振い、それによって生じた衝撃波で纏めて斬り裂いた。
 史之の斬撃の冴えに、敵は一端態勢を整えるように後退。
 その隙に史之は、ギギル隊に指示を飛ばす。
「ギギル隊、軍人さん、挟撃するから退路塞いで」
「おう!」
「任せろ!」
 史之は敵の死角に跳び込み斬撃を繰り出す。
 背後を取られた敵は一端引こうとするが、ギギル隊を含めた軍人が立ちはだかり動きを封じる。
 明らかに不利な状況の敵は――
「こっちに人数回してくれ!」
 助けを呼ぶが、ゴリョウが分厚い壁となって立ち塞がった。
「ここは通さねぇぞ!」
 力強く声を響かせ、鋭い眼光で敵を真正面から迎え撃つ。
 その勇猛果敢さに、敵は避けて通るという選択が消え失せる。
 複数の敵が一斉に襲い掛かるが、大岩を思わせる頑強さでゴリョウは耐え抜き――
「どりゃあ!」
 近付いて来た敵を、巨大な牙を持つ猪の頭部のような闘気を放ちカチ上げる。
 吹っ飛ばされた敵は息も出来ないのか、しばらく床で昏倒していた。
 ゴリョウの分厚い守りを突破できず、敵は分断される。
 それを嫌った敵の幾らかが側面から後ろに回ろうとするが、猫を思わせるしなやかな動きで間合いを侵していた祝音が攻撃して防ぐ。
(みんなを守るんだ)
 決意を形にするように、気で作り上げた斬糸を操る。
「がぁっ!」
 刻まれた敵から悲鳴が上がる。
 周囲一帯を囲むように展開した気糸の斬撃は、敵の足や腕を切り裂き動きを鈍らせていった。
 イレギュラーズ達の猛攻を受けて敵は混乱する。
 それを立て直すべく、敵リーダーが声を張り上げた。
「陣形再編! 防御役が前に! 立て直す時間を稼げ!」
 練度が高いのか、指示に従い敵は陣形を再構築しようとする。
 それをさせじと、『緋夜の魔竜』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)が前線に跳び込み呪歌を響かせる。
 鬼が哭くような、亡者の慟哭が敵を侵す。
 堪えるように敵は顔をしかめレーカを睨みつけるが、臆することなくレーカは真正面から視線を返し、高らかに名乗りを上げる。
「シャールカーニを討つ気概がある者は来るがいい! 私は幾らでも相手となろう!」
 詩人の故郷で『竜』を意味する言葉を誓いのように口にする。
(この名を真にするために、戦い抜こう)
 自ら定めた在り様を証明する様に、レーカは勇猛果敢に戦っていく。
 時に大きく傷を受けることになったが退くことなく、敵戦力の一部を引き付けるようにして相手取っていった。
 イレギュラーズ達は役割分担し、敵を効果的に攻撃していく。
 傷を受けることもあったが、リリス達が回復に専念することで大事には至らず、ギギル隊を筆頭に軍人達も猛攻していることもあり戦いは有利に進む。
 敵の練度は高く強かったが、このままいけば勝てる、そう確信した時だった。
「みんな気をつけて! 何かがこっちに来る!」
 戦いながら索敵もしていた史之が警戒の声を上げる。
 それは無数の何かが駆けて来る騒音。
 警戒する中、モンスターに追い駆けられた数人が現れた。
「なっ……手配師!」
 見知った悪党の顔にイズマが声を上げる。
「何故こんな事になってる! 一体何をした!? 逃げる前に教えろ!!」
「モリアーティに言ってくれ!」
 割と必死な声を上げる手配師。
「なんか知らんが魔物解体してたら血の匂いで魔物が集まってきやがった!」
「何か利用できないかと解剖してただけなんだが。それはそれとしてプレゼントするよ」
 のんびりとした声で紳士然とした男は言いながら、引き連れていたモンスターを押し付けてくる。これに祝音は――
「……って、乱入者が魔物達を押し付けて……あいつらも敵だ!」
 皆が魔物に傷つけられないよう、斬糸を展開し壁にする。
(モンスタートレインしてきた奴らも足止めしたいけど――って逃げ足速い!)
 実際、手配師達は逃げ足が速かった。
 壁際に走ると跳躍。そのまま壁を足場に駆けていき逃げて行った。
(あいつらっ――)
 逃げる手配師達に、ゴリョウは舌打ちしそうになったが平常心で抑え目の前の敵に集中する。
 勇猛果敢に戦うイズマの動きに合わせ、位置取りを調整。
 それは新皇帝派を挟んで向かいに魔物の群れを置く位置。
 ルーンシールドを付与し準備を整えると、新皇帝派に向け火焔盾『炎蕪焚』の黒いスチームを放った。
 それは新皇帝派を掠めるように過ぎ去り――
「当たるかそんなもん!」
 新皇帝派の敵は嘲るように言いながらゴリョウを攻撃する。すると――
「俺を殴ってていいのかい? 背中がガラ空きだぜ?」
 策に嵌めたゴリョウは、視線を新皇帝派の背後に向ける。
 慌てて視線を向ける新皇帝派。
 そこには、スチームが当たり怒り狂った魔物が突進してくるのが見えた。
「ぎゃあ!」
 新皇帝派の叫び声が上がる。
 一方イレギュラーズは、魔物も利用して戦いを有利に進めていた。
(潰し合いさせた方が効率が良いな)
 史之は、飛行を利用し新皇帝派をすり抜けるようにして移動し、魔物達の群れに跳び込むと乱撃。
 魔物を血祭りに上げながら素早く動き、新皇帝派の近くまで魔物を誘導。
「テメェ連れて来る――ぎゃあっ!」
 見境ない魔物に襲い掛かられる新皇帝派。
 その上で、味方に魔物が向かわないよう攻撃しながら立ち回る。
 激しく動き、それだけに傷を受けることもあったが――
「回復するね」
「ありがとう」
 回復役として立ち回る祝音が癒してくれた。
 魔物に襲い掛かられ、混戦状態になる新皇帝派。
 その状況をさらに加速させるように、武器商人は立ち回る。
(赤竜の方、魔物を新皇帝派にぶつけるから、手伝ってくれるかい?)
(分かった、援護しよう)
 ハイテレパスでレーカと意思疎通した武器商人は、混戦で混乱する新皇帝派の一団に跳び込む。
「貴様っ――」
「派手にいこうじゃないか、ヒヒヒ」
 距離を詰め、至近距離で破滅へと引きずり込む呼び声を響かせる。
 呻き声を上げ顔を引きつらせる新皇帝派。
 精神を侵食され判断力が低下した彼らは、武器商人を殺そうと襲い掛かる。
「持ち場を離れるな!」
 敵リーダー格が叫ぶように呼び掛けるが、怒りに支配された彼らは無視して武器商人に襲い掛かる。
 それを回避し、魔物の群れに向かう武器商人。
 当然、魔物が襲い掛かって来るが、それをレーカが迎撃。
「ここは通さん!」
 魔物の前に立ちはだかると、精神に浸食。
 滅亡へと導く夢想を喚起させ、魔物自身に自らの肉体を破壊させた。
 レーカの援護もあり、魔物の群れに新皇帝派を誘導した武器商人は、そのまま突撃。
 魔物と新皇帝派を潰し合う状況へと導いた。
 新皇帝派と魔物が戦い合う混戦状態に陥った所で、イグナートが全力突進して跳び込む。
 大気を打ち鳴らすほどの加速音をさせ、混戦状態の戦場に突撃。
 凄まじい勢いに、まとめて吹っ飛ばされる魔物と新皇帝派。
「イイ状況だ!」
 間髪入れず連続して、大気打ち鳴らす超速突撃を繰り返す。
「こんな状況でもなかったら簡単に使えるワザでもないんだけれどね! 今回はハデに行くよ!」
 次々ぶっ飛ばされる新皇帝派と魔物。
 阿鼻叫喚の混戦状態だが、その中でもオリーブは冷静に立ち回る。
(魔物の大半は新皇帝派に向かっているが、何体かは例外もいる。友軍に向かう前に撃ち落とそう)
 鴉型の魔物、ヘァズ・フィランが群れで固まって攻撃態勢に入ったのを確認したオリーブは、一掃する勢いでクロスボウで連続掃射。
 矢を受け墜落した所で距離を詰めると、乱撃を食らわせバラバラにする勢いで倒していった。
 魔物を次々撃破すると、魔物は新皇帝派だけでなくイレギュラーズ達にも襲い掛かる。しかし――
「何体いようが戦線は崩させない!」
 軍人達を指揮しながら、イズマが魔物の群れを押し留める。
「一匹残らず狩ってここを切り抜けるぞ!!」
 イズマの檄に、軍人達から力強い応えが返る。
 その勢いを崩すことなく戦い抜き、イレギュラーズ達は魔物の全てを壊滅。
 新皇帝派は魔物の攻撃を受けたこともありボロボロになっていたので、それほど苦労せず生き残りを倒し捕縛することが出来た。

 戦い終わり、捕縛した新皇帝派もいるので一端帰還することにする。
 当然、ここまでのマッピングを再確認し完全な物にした上で戻ることにした。
 帰還を終え、労いを受けながら疲れた体を休める。
「友軍の皆も、本当にありがとう……!」
 祝音は軍人達に礼を言いながら――
(それにしても……敵を押し付けてくる敵はもう勘弁してほしい……)
 心底思う。それは皆も同じで、それだけに――
(あいつら、逃げられると思うなよ……!)
「トレインしてきた奴らを手配できるようにしとこう」
 ゴリョウの提案に皆は賛同し、似顔絵込みの手配書を作って貰うことになった。
 かくして、新皇帝派を排除しつつマッピングを成功させたイレギュラーズであった。

成否

成功

MVP

ゴリョウ・クートン(p3p002081)
黒豚系オーク

状態異常

シャールカーニ・レーカ(p3p010392)[重傷]
緋夜の魔竜

あとがき

お疲れ様でした!
皆さまのお蔭で、同行した軍人達にも死傷者を出さずに、無事地下道のマッピングが進みました。
複数の鉄帝勢力に地図とした物を渡すことで、今まで以上に地下道での活動が楽になっています。
捕縛した新皇帝派の兵士は鉄帝軍人に引き渡され、情報を得るため尋問がされるようです。
また、今回モンスタートレインをした一味に関しては手配書が回ることになりました。
ただ、巧く隠れているのか足取りがつかめない状況です。

それでは、最後に重ねまして。
皆さま、お疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

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