シナリオ詳細
<クリスタル・ヴァイス>冷えた空気を割って
オープニング
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新皇帝バルナバスが即位してしばらく。
鉄帝は6つの派閥に分かれ、それぞれの思惑に沿って立ち回る。
先帝ヴェルスの治世に戻さんとする帝政派。
南部戦線の英雄ザーバ将軍率いるザーバ派(南部戦線方面軍)。
我関せずと政治不干渉を貫くラド・バウ独立区。
ギア・バシリカを中心に民の救済を願う革命派。
ノーザンキングスに抗する戦力を持つポラリス・ユニオン(北辰連合)。
空浮かぶアーカーシュに拠点を持つ、独立島アーカーシュ。
ただでさえ厳しい環境にある鉄帝に訪れる冬の季節。
加えて、『フローズヴィニトル』と呼ばれる大寒波が国土を襲う。
各派閥は物資の流通手段を確保すべく、不凍港の確保や地下道施設攻略を進める。
「帝政派は、ルベン地下の調査を進めています」
そこは、鉄帝の首都スチールグラード。
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は帝政派に属するメンバーに再確認しつつ、話を進める。
地下を上手く使うことができれば、新皇帝派の影響力が強い地上を避けた補給ルートとなる……のだが、話はそう簡単にいかないようだ。
やはりというべきか、新皇帝派が動いている。
その狙いは補給ルート確保の阻害かと見られており、それも間違いなくあるのだろうが、それだけでないとアクアベルは言う。
「彼等の目的は、フローズヴィニトルと見られます」
その名は現状、大寒波の名称として使われているが、元々は伝説の狼を指す。
それが地下道の奥底に眠っていると睨み、新皇帝派は部隊を送り込んでいるのだという。
あちらこちらで暗躍するヴェルクルスという中佐もまた、同じく動きを見せている。
部隊を送り込んでいるのはもちろんこと、自らも地下道へと潜り込んでいるのだとか。
「地下道は僅かに冷気を感じるとのこと。ヴェルクルス中佐も冷気を操ることで知られます」
フローズヴィトニルを発見できればよし、そうでなくとも地下道に現れる冬の精霊や冬狼を従えようとしているのかもしれない。
中佐の所在は不明だが、彼の部隊は表立って活動しており、帝政派としても指をくわえて見ているわけにはいかない。
「新皇帝派の動きを牽制し、彼等の思惑を阻止していただきますよう願います」
アクアベルは深々とメンバー達に頭を下げ、説明を締めくくったのだった。
●
鉄道施設ルベンの地下。
残された施設跡を探りながら進むイレギュラーズ一行は、新皇帝派がフローズヴィトニルを探しているという情報を元に、冷気を感じる方向へと向かう。
地中方向へと歩を進める形となるメンバー達。
徐々に外気とは違う明らかに寒々しい空気を感じさせる中、一行は後方から近づいてくる集団を感知する。
狭い場所は戦略幅を狭めると考えたメンバー達は丁度線路が交わる比較的広い箇所へといた為、敵を迎え撃つ形に。
「……やはりいたか。帝政派の連中だな?」
一隊を率いていたのは、以前もイレギュラーズが対したというマイヤという軍人。彼女は自小隊や囚人を率いて難民キャンプを襲ったという。
新皇帝派の為、自国の民をも襲うことを厭わぬ将校。彼女は本心から現皇帝バルナバルを、そして上司であるヴェルクルスに畏敬の念を抱いているようだ。
そんな大尉へとメンバーらは思い思いの言葉を投げかけるが、彼女の信念は揺らがない。
「大義は国を統べる我らにある。ゆくぞ」
すぐにぶつかり始める新皇帝派と帝政派。
…………。
…………。
そこに、冷えた空気に紛れて、ふらりと3体の冬の精霊が現れる。
…………。
精霊達は有無を言わさず、軍人、イレギュラーズ関係なく、冷気を浴びせかけ、氷の刃で斬りかかってきた。
交戦しながら、イレギュラーズはこれらの精霊がフローズヴィトニルに関係するモノらであると確信しながらも、軍人と合わせて応戦するのである。
- <クリスタル・ヴァイス>冷えた空気を割って完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年02月04日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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鉄道施設ルベン地下。
イレギュラーズはこの調査を進める新皇帝派の捜索へと出ていたが、程なくその姿を確認することになる。
「……やはりいたか。帝政派の連中だな?」
丁度、地面に設置されていた線路が交差する広い空間にて、真っ先に問いかけてきたのは、軍人一隊を率いていたマイヤ大尉。
以前は難民キャンプを襲撃していたことがあったが、その時はイレギュラーズによって撃退されている。
「マイヤ大尉、マイヤ大尉じゃないか」
呼びかけに応じたイレギュラーズの中に、その依頼にも参加していた『陰性』回言 世界(p3p007315)の姿があった。
「いや元気そうで何よりだ。……少し瘦せたか? ちゃんと休んでる? ご飯もしっかり3食食べないとダメだぞ?」
軽薄そうに笑う世界に、マイヤは鬱陶しそうに細剣を振り払ってみせて。
「馴れ馴れしい。貴様らのせいで難民襲撃の任を遂行できなかった件。忘れてはおらぬぞ」
「そう言うなよ。俺とお前の仲じゃあないか。……まあ正直、何処で会って何があったかよく覚えてないが」
「貴様……!!」
同時にいくつもの金属音が聞こえてくる。
激昂するマイヤ大尉に合わせ、彼女の部下達が一斉に武器を構えたのだ。
「おっと怒るな、嘘だ嘘」
両手を上げる世界。その時、マイヤ大尉の熱気を抑えるかのようにこの場の空気が一段と冷え始める。
…………。
…………。
ふわり、ふわりと空中に浮かぶのは、3体の冬の精霊。
それらはこの場の全員を外敵と判断したようで、冷気を発して立ち去るよう警告しているのだろう。
イレギュラーズとしては、新皇帝派の軍人らが立ち去れば問題ないのだが、相手の目的がこの奥にあるかもしれないフローズヴィトニルとなれば、大人しく立ち去るはずもない。
「そういえば、ヴェルクルスも冷気使いだったな」
マイヤ大尉らの上司であるヴェルクルス中佐の情報を、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)が思い出す
同時に、イズマは彼等がフローズヴィトニルに手を出せば、大変なことになりそうだと察していた。
「三つどもえ、ひとつの勢力が他ふたつをやっつけるのは難しくても……」
『灰雪に舞う翼』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)は仲間内で事前の作戦を確認しあって。
「今回はちょっと意地悪な作戦でいくね!」
「全てを相手にする必要などないだろう。挟み撃ちにしてやればいいだけのこと」
『緋夜の魔竜』シャールカーニ・レーカ(p3p010392)が相手に聞こえぬよう小声で独り言ちると、『あいの為に』ライ・リューゲ・マンソンジュ(p3p008702)も同意を示して。
「数で負けている以上、この三つ巴を利用しない手は無いでしょう」
「何をぶつぶつと……ともあれ、大義は我らにある。通してもらう」
イレギュラーズの言葉を遮るように告げたマイヤ大尉の一言に、イズマが僅かに顔を顰めて。
「……民を虐げ、国を滅ぼすような統治に大義なんか無いよ。ここは俺達に譲ってもらおうか」
イズマはすでに皆が臨戦態勢に入っていることを確認して。
「いくぞ!」
反応速度を高めていたイズマに合わせ、息を合わせたメンバー達が一斉に動き始める。
軍人達は此方が素早く動き出したことで作戦を見定めようと静観するが、イレギュラーズはこれ幸いと布陣を整えていく。
「まずはフォーメーションを整えるよ」
アクセル、『スケルトンの』ファニー(p3p010255)は後続として現れた冬の精霊らを新皇帝派軍人達の向こうに位置するよう移動していった。
「第三勢力は有効活用しねぇと勿体ないからな」
「負わなくても良い面倒は押し付けてしまうに限ります」
ファニーに同意する『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)。
「こ、これは……」
瞬く間に、新皇帝派は敵対勢力から挟み撃ちにされるという構図となる。
イレギュラーズが布陣を整える中、冬の精霊は目の前の軍人が立ち去らぬことで、排除すべき敵だと認識したようだ。
それらは早速、氷のブレスを軍人達へと吹き付けてくる。
「ぐううう……!」
「精霊ばかりに気をとられるな。帝政派が来るぞ!」
マイヤが発する号令によって、軍人達は挟まれた敵にそれぞれ対処する羽目になり、戦力の分散を余儀なくされることに。
「ぶはははッ、さぁ来な軍人ども! その豆鉄砲じゃ物足りねぇが相手してやらぁ!」
豪快に笑う『黒豚系オーク』ゴリョウ・クートン(p3p002081)。
冬の精霊が見境ないことはゴリョウも重々承知しているが、別の見方をすれば優先度もなく、それらが眼前の敵を攻撃する可能性は高いと彼は考えていた。
結果は……、見た通りである。
作戦に肝となる部分が成功しかけているのを、ライは注視して。
(まあ……そういうちまちました作戦はあまり得意ではないのですが……)
敬虔で優しいシスターであるよう吹聴し、実際に振舞うライだが、それは彼女のギフトによるもの。
その外見を活かしつつ、ライはこの後の戦いを優位に運ぶべく、本性を覆い隠す。
「あ、俺ってば、見ての通りヒョロヒョロの支援役だから攻撃するときは手加減してくれると嬉しいな」
「貴様……!」
マイヤ大尉の注意が世界へと向く中、半数の軍人が彼女を援護しようとするのをイズマが制して。
「逃げられると思うなよ。俺達に叩きのめされるか精霊に凍らされるか、好きな方を選べ」
「「うおおおっ!!」」
対する軍人らはこの場を突破する為か、全力で抵抗すべく攻撃を繰り出し始めたのだった。
●
イレギュラーズと冬の精霊に挟まれたヴェルクルス部隊。
現状、小隊を率いるマイヤ大尉が世界に気をとられる間、部下達は前衛、後衛、遊撃を半々に分け、それぞれの勢力と対していた。
無論、イレギュラーズも、冬の精霊もそんな軍人達の布陣、状況などお構いなしに攻めていく。
「頭を垂れて地に伏せろ。おまえたちは星空を見上げることすら叶わない」
自己強化するファニーは止まらぬ進撃によって、凶運の四番星を輝かせる。
「ヴェルクルス部隊は15人の部下と上司が1人だったか」
軍人小隊の数もあって多少布陣が広がってはいるが、ファニーは味方や冬の精霊を範囲に入れぬよう、かつ多くの軍人を捉える。
冷静にかつ慎重に術式を発動させていたファニーは軍人数人の技を封じていく。
前線には、目の前で立ちはだかる前線、遊撃の敵を抑えるレーカがいる。
抑え役と自認する彼女は亡霊の慟哭を響かせ、敵陣に呪いを振りまく。
隣にはゴリョウの姿もあるが、魔力障壁を展開していた彼は攻性防禦守護獣術の一つを展開する。
合わせて、ゴリョウは敢えて軍人達の隙間を縫うように冬の精霊達を睨みつけてヘイトを買う。
「すると、どうなるか」
再度、ゴリョウは冬の精霊は軍人、イレギュラーズ関係なく氷の吐息を浴びせかけてくることを確認した。
ただ、イレギュラーズ達にとっては軍人達が壁となる。
それらの吐息はほとんどが軍人達へと浴びせかけられることになる。
しかも、半数が背を向けたその壁には不意打ちとなる。
「悪ぃが、数が足りてねぇ分は狡賢さで補わねぇとな。まぁ、偏に策に嵌るオメェさんらが悪いんだが」
ゴリョウの言葉に頷くオリーブは手にしたクロスボウを連射させ、敵陣に次々と矢を撃ち込む。
前方から吹き付けられる冷たい息吹によって凍り付く軍人達は動くことができずに身を竦め、飛んでくる矢を避けられずにその身に突き刺さる矢を増やしてしまう。
「まともに戦わせないまま殲滅できれば」
このまま戦局を優勢に運ぶことができれば重畳と、オリーブも更なる矢を番えていく。
「奴らの思い通りにさせるな。その場から退け!」
交戦の最中、マイヤ大尉は冷静さを取り戻しながらも小隊員の態勢を整えようとするが、ライが隠した本性を僅かにさらして。
「こういう正義を擽るやり方、軍人の様な人種には効くんですよ」
軍人達がこの位置関係を崩そうとすることを予め予期していたライだ。
煽るライを倒すべきと意識を植え付けられた軍人どもは剣やナイフを使って切りかかってくるが、悠然と構える彼女は甘んじてその攻撃を受け止めていた。
直接、敵を抑えつけるメンバー達の後ろから、アクセルが遊撃役として攻め入る。
布陣から抜け出ようとする軍人には、アクセルがフォトン・シュリケンが飛ばすことで冬の精霊の手前へと押し戻さんとする。
とはいえ、すでに仲間達が強く足止めしており、加えて冬の精霊の巻き起こす凍てつく風もあって軍人達は身動きすらとれぬものもいる。
そんな相手にアクセルは神気を瞬かせ、さらに絶望の海を歌った呪いの歌を聞かせていく。
これだけの攻撃に、さすがの鉄帝軍人も耐えられるはずもなく、倒れ始めるものも出始めていた。
「これでは、中佐に申し訳が……」
すでに一度、作戦を失敗させているマイヤ大尉だ。
これでは降格すら可能性が出てくると、彼女は必死になってこの事態の打開をはかろうとする。
目下、倒すべきは目の前の世界と、マイヤは細剣を連続して突き出して世界の体を穴だらけにしようとするが。
「情けない事に本気出されたら一溜まりも無いモヤシなんだ、いやマジで」
笑みを浮かべる彼は飄々とした態度で両手を上げ、一層マイヤを煽る。
「マイヤ大尉もできればこんなイケメンと少しでも長く話してたいと思うでしょ?」
「黙れ!」
「ちょっと武器を下ろしてティータイムにでも……別に思わないですかさいですか」
怒りに身を震わせるマイヤは急所を狙って細剣を突き出してくるが、創造した武器を展開していた世界はその度に相手へと反撃も行う。
「マイヤ大尉、だったか?」
そこに、敵陣へと自らの魔力を展開することで相手の戦意を削いでいたイズマがマイヤへと呼び掛ける。
「俺はヴェルクルスの部隊を潰して回ってるんだが……次はお前だな?」
「貴様か、中佐の評価を下げる愚か者は……!」
激昂しながらも、戦局を見定めようと一呼吸置くマイヤ大尉は武器を持ち替え、散弾を浴びせかけようとしてくる。
多少の弾丸を浴びようとも、イズマは怯むことなく魔空間を展開して。
「出世か昇進か知らないが、その道はここで断つ!」
その空間に呑み込まれかけた大尉だが、歪む空間に貫かれながらも強引に抜け出した。
「負けられぬ……。中佐の為にも……!」
荒々しく息づきながらもマイヤ大尉は交戦の構えを崩さず、なおも散弾を放ってきたのだった。
●
イレギュラーズの策にハマり、ヴェルクルス部隊は壊滅しかけていた。
だが、そこは強さを求める鉄帝軍人。簡単に敗北を受け入れるはずもない。
「我々を……舐めるな!」
マイヤ大尉の号令が小隊員の態勢を整え、闘志を燃え上がらせた。
すぐに冬の精霊達の凍える息吹が鎮火させるのは必至だったが、その一瞬だけはその場から抜け出そうと力を爆発させて。
囲いとなる両者へと強打を撃ち込み、刃を一つでも多く刻み込もうとする。
それを浴びたレーカは体力を削られ、相手する軍人の夢想を具現化することで一気に倒してしまうが、傍の遊撃役の凶刃を受け、彼女もまた倒れてしまう。
ライもまた思わぬ猛攻によって全身に傷を負うが、彼女はすんでのところで後方へと退く。
全身が赤く染めた彼女だが、ロザリオを握り、あいの為にと祈りを捧げる。
「父と、子と、聖霊の、御名によって。……amen」
ライのロザリオは外見を見せかけた銃。その弾丸は確実に狙った相手の胸部を穿ち、神の御許へと送り届ける。
「はあああっ!!」
マイヤ大尉もバズーカ砲でこの布陣に風穴を穿とうとしていたが、もろに砲弾を浴びた世界が調和の力を賦活のそれへと転じて傷を塞ぐ。
だが、軍人達の猛攻もこの一時だけ。
アクセルは世界の様子を気掛けながらも、傷つく前衛陣へと大天使の祝福を齎して態勢を立て直す。
そして、続けざまにアクセルはフォトン・シュリケンを投げつけ、こちらへと近づいてきていた軍人を精霊の方へと押し戻す。
ファニーもこの一時で加速して攻めてきていた遊撃部隊に一人ずつ白い指先を向けた。
流星の軌跡をなぞるように、死線をなぞるように、ファニーは軍人を倒していく。
ゴリョウが魔力障壁と合わせて壁を維持する。
減ってきていた軍人達の合間からゴリョウは冬の精霊を睨み、壁……軍人達へと攻撃を誘発する。
…………。
冬の精霊達のスタンスは変わらず、全面にいる敵と見定めた相手を等しく凍り付かせ、その体を切り裂こうとしてくる。
イレギュラーズの手によらずとも倒れる軍人も多く、これにはマイヤ大尉に苦い顔をせざるを得ない。
「こんなはずでは……」
再び細剣を手にした大尉は刃を突き出して果敢に応戦するが、その切っ先は明らかに鈍ってきていた。
「もし逃げるなら俺の名前だけでも覚えて帰るんだな。逃がす気は無いが」
包囲網が狭まる中、イズマはケイオスタイドを軍人、精霊へと浴びせかけ、その運命を漆黒へと塗り替えていく。
「諦めんぞ。最後まで戦い抜いてみせる!」
ここまでくれば、敗戦確実と悟るマイヤ大尉だが、すぐに屈することなく、部下が全て倒れてもなお抵抗を続ける。
「個人の強さは認めますが、指揮官の技量は劣っている様ですね」
技量があれば、どうにかなる状況であったはずと指摘するオリーブは、マイヤを牽制すべくクロスボウから矢を射放つ。
動きを止めた瞬間、攻め切った方が早いと感じた世界が神秘の力を高めた幻影武器をその腹へと打ち込む。
「大人しくティータイムに応じていればよかったのにね」
「……無念」
悔しさを滲ませ、マイヤ大尉は線路上に崩れ落ちたのだった。
●
終始優勢なまま、新皇帝派の軍人達を倒したイレギュラーズ。
…………。
…………。
残る冬の精霊達はそのままメンバー達も敵と視認し、こちらへと氷の刃を浴びせかけようとしてくる。
「ぶはははッ!」
かなり傷を受けていたはずだが、ゴリョウはそれらの攻撃を笑って防いでみせた。
ただ、精霊達は軍人達からかなり攻撃を受けており、1体はすでに力がほとんど残っていないのか、存在が希薄になっていた。
「出来るなら、ここの守護者になってほしいけど」
ただ、精霊達に攻撃を仕掛けたのは事実。相手はすでにイレギュラーズを敵と認識してしまっている。
「戦う意思があるなら、迎え撃つだけだ」
すぐにファニーは交戦の意志を固め、白い指先を伸ばして冬の精霊の体を射抜く。
ファニーの一撃は物理攻撃ではあったが、精霊にも効果はあるらしいとイレギュラーズは目視で確かめる。
「戦闘を続けるなら……」
アクセルはやむなくディスペアー・ブルーを歌い聞かせることで、弱った精霊1体を消し去ってしまう。
「戦いを長引かせていい相手ではありません」
下手に相手取ると、こちらの被害が広がるばかりだと感じたオリーブは両手剣で畳みかける。
気力が付きかけていたオリーブだったが、目の前の精霊が消えてしまったことで安堵の息を漏らす。
そのオリーブの白い吐息が空中に残る間にも、イズマが苛烈に最後の冬の精霊を追い込む。
仲間達の攻撃の合間に、彼は静寂の魔術で精霊に氷を操らせぬよう力を封じ、魔空間へと押し込んで仕留めてみせた。
氷点下にまで冷え込んだ地下空間は、人の体力を瞬く間に削っていく。
新皇帝派軍人の中には、すでに息をしていない者もいたようだ。
ただ、力こそ全てという考えを持つ者も多かったのか、小隊員の半数余りが歯を食いしばって意識を保っていた。
メンバーは手分けして倒れた軍人を含めて捕縛し、その持ち物を回収する。
地図や装備などあらゆる物品をチェックすることで、イズマはヴェルクルスやフローズヴィトニルの追跡に活かす心づもりだ。
オリーブはマイヤ大尉の意識があることを確認し、問いかけてみる。
「ヴェルクルスはどこにいるのですか」
「…………」
マイヤ大尉が口を割らぬのはオリーブも想定通り。
「別に吐かなくても構いません。少々こちらの面倒が増えるだけですから。ただ……」
この場の軍人達は強者こそ至高という想いを抱き、それ故に新皇帝派についていたはずだとオリーブは確かめて。
「その想いが嘘でないのなら、吐くべきだと思いますよ」
――貴方達は、間違いなく敗れたのですから。
「ああ、我々の負けだ」
その一言を耳にしたマイヤ大尉は初めて脱力し、降伏を受け入れたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPはマイヤ大尉に指揮官としての判断をさせず、抑え、トドメの一撃も与えた貴方へ。
今回はご参加、ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
<クリスタル・ヴァイス>のシナリオをお届けします。
先日の鉄道施設攻略戦で発見された地下道に潜むモノとは……。
●状況
戦場となるのは、鉄道施設攻略戦で発見された鉄帝地下道です。
フローズヴィトニルの確保が目的とみられる新皇帝派は次々に戦力を送り込んでおります。
ヴェルクルス中佐も同様に動きを見せていますが、部隊に彼の姿はありません。
この場は中佐の送り出した部隊の撃退を願います。
●敵
◎ヴェルクルス部隊
○マイヤ大尉
ヴェルクルス中佐直轄の女性将校。実力は確かですが、先日の戦いでは後れを取り、焦りも見られます。
戦場の指揮をとりながら前方へと散弾やレーザー砲を放ち、近接戦になれば細剣を使った連撃、光を舞わせた乱舞を繰り出します。
○新皇帝派軍人×15体
ヴェルクルス配下。全て鉄騎種。強者こそ至高と信じる新皇帝派です。
前線6名、後衛5体、遊撃4体。
前線に男女少尉がおり、部下と共に剣と散弾銃を使います。
後衛はレーザー砲、バズーカ砲も使用。近距離戦となった場合は格闘術を使うようです。
遊撃4名は散開して小回りの利くナイフや格闘術を中心に使います。
○ヴェルクルス
右目と左腕が機械となった元鉄騎種、憤怒の魔種。新皇帝派。
片手斧と冷気、雷の術式を得意としています。
部隊を直属の部下に預け、自身は単独行動をとっているようですが、所在は不明です。
◎冬の精霊×3体
ゆらゆらと揺れる氷や雪を思わせる精霊です。
非常に強い力を持ち、氷のブレスやつぶてを浴びせかけてくる他、氷の刃を生成しての切りかかり、投擲も行います。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
それでは、よろしくお願いいたします。
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