シナリオ詳細
イレギュラーズ・白雪姫・ストーリー
オープニング
●イレギュラーズ・白雪姫・ストーリー
白雪姫、という話をご存じだろうか。
美しい白雪姫が王妃に嫉妬され、城を追われた上に毒林檎で謀殺される――けれど小人たちの協力や王子の愛もあって最後はハッピーエンドを迎える、と。かなり大まかに流れを説明するのならばそんな感じの物語である。しかし。
「うわあああイレギュラーズ、助けてください!! 白雪姫を演じる筈だった主役とエキストラ達が全員、牡蠣を喰ってあたりまして――!!」
その白雪姫を演じようとしていた劇団が、ある事情により困り果てていた……いやある事情というか、今しがた申し上げたのが全ての真実。演者たちが全員ダウンしてしまっているのである……!
これではとても開演など出来ない――しかしもう開始三十分前だ、今更キャンセルなど出来ようか――! 観客席ではもう目を輝かせて楽しみにしている子供達もいるというのに――!
「その話、似たようなのを前にも窺った事がある気がするんですが――歴史ってご存じではない?」
「え、そうでしたかね? さぁ、我々、道は振り返らないもので!」
ともあれ依頼であるならばローレットとしては人材を提供するだけだ、と紡ぐのはギルオス・ホリス(p3n000016)である。要は『白雪姫』を演じればいいだけだろう――? それだけならば簡単だ。きっとあらすじぐらいなら多くの者が知って……
「いや待てよ……もしかしてオリジナル展開とか仕込んでませんよね?」
「え、オリジナル予定? そんなの――最後にちょろっと仕込んであるだけですよ! ええ! 最後は白雪姫が城に舞い戻って軍事クーデター起こすアクション物の予定でした。禁じられし死霊術を使わんとする王妃とのラストバトルと大爆発する城塞なんてそりゃもう大盛り上がりする予定の……」
「なんで!!? なんでいきなりアクション要素をぶち込むの!!?
白雪姫そういう物語じゃないよね!!? もうちょっとこう、大人し気の!!」
なんか座長は『だってそっちの方が派手だもん!』とのたまっている。
……まぁ主役たちが倒れた以上、もう後の事はイレギュラーズに任せるそうだ。つまりイレギュラーズ達が独自の物語を展開してもいい――そう。各々が好きにアドリブかけまくる展開でもいいだろう……! とにかく『白雪姫』というお題目で在ればいいのだ!
白雪姫が二人や三人いても良いし。誰かが一人二役しても構わない!
重要なのは――煌めく瞳で覗いてくる、子供達の期待を裏切らない事だけ――!
「と言う訳で頼みましたよイレギュラーズ!
そんなこんなしてる内に準備時間はあと25分ですからね!!」
「なんでそんな直前に牡蠣とか食べるの? 馬鹿じゃないの?」
開演の時は迫っている。
イレギュラーズ! すぐに準備するんだ――
脳裏に思い描く白雪姫を顕現させるんだ。急げ――!
- イレギュラーズ・白雪姫・ストーリー完了
- GM名茶零四
- 種別通常
- 難易度EASY
- 冒険終了日時2023年02月04日 23時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●
子供達が待っている。目を輝かせて待っている――これは必ず成功させなきゃと舞台袖より客席を覗いた『あたたかな欠片』ニル(p3p009185)は想うものだ。白雪姫……ええと。
「確か、りんごの馬車ですよね! 12時までに帰らなくっちゃいけない……そんな話だった気がします! なので妖精馬車を持ってきま……舞台で使うのは本物じゃない?」
「それから白雪姫は白雪姫が毒りんごで謀殺される話でもありますね――はぁ。こういう事にばかり毒が使われるから世間のイメージが良くないんです。誰も彼もが手軽に人を害そうとするから……」
「ふむふむ、つまり白雪姫が毒リンゴで謀殺されて、でも一命をとりとめたら今度は毒リンゴの馬車を貰って、意趣返しにそのままお城に乗り込んでクーデターを起こすお話なんだね! 諦めずに戦い続けていればいつか逆転出来るよっていうお話なのかな?」
皆して思い思いに知っている白雪姫の知識を持ち込まんとしている……! いや『溶けない結晶を連れて』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)の言っている要素は正しいが、しかし総評した『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)の所為により凄いお話となってしまっているぞ……! 焔ぁ!
だけどもう入念に打ち合わせる時間は無い。幕を挙げねばならないのだ。
――故に突っ走る。
開演のベルが鳴り早急に衣装を整え……あ、その前にニルはえいえいっと保護なる結界を張るものだ。結界術をもう一つ重ね合わせればかなりの範囲の保護が叶おうか……何か大騒ぎする様な事態があっても大丈夫なように、と。
さぁそういう訳で、白雪姫の始まり始まり~!
「――鏡よ鏡よ、この世で一番美しく強いのは誰ですか?」
「はい、女王様。それは白雪姫です」
「……今、なんと?」
然らば早速。暗転の中に光が齎され、その中で王妃役として動くのは『母なるもの』夜摩 円満(p3p010922)であったか。鏡役を果たすのはジョシュア――かなり急いで準備したが、ふふ。中々サマになって……
「ならば可愛い子には旅をさせよ……死ぬまでな。
白雪姫を虐殺森林デス・ウィンドに放逐しなさい――乗り越えられてこその姫でしょう」
とか思ってたら、あれ。なんか早速に不穏な感じになってきたぞ……?!
円満王妃はどうも演劇は初めての様子。故に彼女は信じてしまった――
(ふふ『姫の軍事クーデターモノ』とは、なんとも武闘派な御伽噺もあったものですわね。しかし、ええ。頑張って演じますわ……! 縁劇団員の皆様の代わりとして、誠心誠意努めさせて頂きます!)
そう。白雪姫の誤ったイメージを……! 公演を心待ちにしている子供達を失望させる訳にはいかないと、彼女自身は非常に真摯に事態に取り組むつもりなのだが、違うの! 白雪姫ってホントはそういう物語じゃないの! あのね!
「ォォォオオ! 素晴らしいプ・リンゴ決断です女王様!
ソノ役目、このプリンにお任せヲ――!!」
と。説明しようとした正にその時、派手に乱入してきたのが女王の配下たる『プリン・ガーディアン』マッチョ ☆ プリン(p3p008503)である!
牡蠣や唐揚げを食べ過ぎて倒れた演者たちの無念な気持ち……分かる、分かるぞ! オレもよくプリンを食べ過ぎて倒れた事が――まぁ無いが! けれど分かる! 倒れる程に食べたい気持ちは! 故に! そんなプリン同士のピンチとあらば黙っていられず、プリンは此処へと至ったのだ――!
「と言う訳デ今すぐに捨てて来るゾォ――! ォォォ!!」
「あぁ。急ぎ早に兵士が白雪姫を連れ去って……!
女王様、貴女はもう十分な美しさをお持ちです。それではご納得いただけませんか?」
「くどいですよ、鏡。これ以上の問答は不要です」
鏡(ジョシュア)の諫言など王妃(円満)は聞き遂げぬ――
これもまた愛する白雪姫の為。
『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』……とも言うではありませんか。
とにかく、そう。白雪姫が成長しうる旅は――今始まったのです!
●
「うぅ……王妃さま、どうしてなの?
ピリア……じゃない、白雪姫の事、きらいになっちゃったの……?
白雪姫は、王妃さまのこと、だいすきなのに~……」
そしてハイテンションプリンに強制的に運ばれた白雪姫の『欠けない月』ピリア(p3p010939)は泣き真似と共に登場した――おうたを楽しく歌っている白雪姫を演じていたのだが彼女は今や森の中。
うぅぐすぐす。でも白雪姫だって、泣いてばかりじゃありません。
王様やお城が大事な白雪姫は――いつか必ず帰ろうと心に誓います。
おうちには、かえってくるものなのー!
めげません。ぐっ、と堪えて森の中を歩み続けます。そうしていれば……おや?
「姫! このような所でお会いできるとは光栄です……
私は小人が一角、紫乃宮竜胆。御身の守護を務めさせて頂きたく」
どうやら小人役に扮した『特異運命座標』紫乃宮 竜胆(p3p010938)が現れたようですね――意地悪な王妃に城を追われた姫を護る事は己が役目だと……彼女に降りかかる全ての災厄は自らこそが払ってみせる。そう――!
「この薪割りで鍛えた斧捌きで……!」
「白雪姫のこと、まもってくれるの? ほんとのほんとに?
白雪姫に教えてくれる? なにかあっても、だいじょうぶなように、今の内きたえるの!」
「はっ。お任せあれ!」
そして意気投合した小人たちと白雪姫は仲良くなります。
その日から白雪姫の修行は始まりました。姫はやる気満々です。
「……白雪姫。頑張っているのですね、その調子ですよ。
谷に突き落とした手前、堂々と会う訳にはいきませんが……
せめてこのリンゴを差し入れておきましょう」
そうしていれば陰より観察していたのは――なんという事でしょう王妃円満です。
王妃もやはり情が残っていたのでしょう。
しかし仮にも捨てた手前、真正面からは会えません……なので。
「白雪姫よ……根を詰めすぎてはいけませんよ。このリンゴでも食べて喉を潤しなさい」
「わぁ! ありがとうなの! いただきま――うっ!」
「姫! 姫――!!」
王妃は渡します。手作りのリンゴシャーベットを――瞬間、姫は倒れます。
そう、王妃は――尋常じゃない料理音痴だったのです!
慌てて小人の竜胆が駆け寄りますが最早手遅れ。姫は目を覚ましません……
「この紫乃宮竜胆、一生の不覚……! くっ、主……あぁなんたるお姿に……
護るべき主を護れなかった今、私なんぞに価値など……
これは、腹を切って共にお供するのが従者の覚悟というもの――!」
なので竜胆、完全に切腹モードに移行します! 待って!
「むっ。なるほど……つまりギロチンに掛けられるのが文化的正解と――え、ちがう? 台本通りに? すまない、熱くなってしまった(小声)。ああしかし、どうしたものか。姫は、もう――」
「わわ。お姫様が、たおれてるのです!」
と、その時。悲観に暮れる小人の前に現れたのは竜胆の前に現れたのは王子役に扮したニルであった。煌びやかな王子衣装に身を包むニルは、客席より注がれる多くの子供達の視線に、やや緊張気味ながらも動き出す――
王子様。王子様としてすべき行動は……こうです!
「ええと、美しいおひめさま、どうか目覚めてください」
白雪姫の手を取って、優しく口付けしようか――王子様はこうするって教わりました!
然らばなんという事でしょう。白雪姫の瞼が開かれます……愛の力です。
「うぅ、ここは……? あれ、小人さん? 王子様?」
「おぉ。姫が目覚められた……! 奇跡が起こった……!」
「大丈夫なのです? 一体何があったのですか?
……えっ。毒林檎? むむっ。食べ物にいやなことするのは、だめなのです」
実際は陰謀とかじゃなくて飯マズだっただけなのですが、状況証拠的に完全に毒殺です。白雪姫、小人、王子様は毒林檎を届けにきたのが誰なのか犯人を推察せんとします……そう。御伽噺によくあるミステリー展開ですね――しかし。
「――おっとぉ。お邪魔するゼ、やっぱり息はまだあるんだナ」
「誰だ!」
「王妃の依頼なんでネ。アンタには死んで貰うゼ――覚悟ってナ」
そんな彼らの前に現れたのは、狩人たる『ねこの料理人』玄野 壱和(p3p010806)でした――なんたる事でしょう。彼は白雪姫を殺しに来た暗殺者です。
王妃の依頼……より白雪姫に試練を与えよとする命を受けて……
確実に白雪姫の命を取ってこいって言われてきた訳サ。でも――
「……いや、やっぱ辞めとくカ」
「――えっ?」
「姫、先ほどの非礼は詫びル。それよりもアンタ、自分を棄てた王妃に復讐したくねぇカ? アンタがその気なら――協力するゼ。三日後の夜、12時の鐘と共に城の門を開けるから従者と共に攻め入りナ」
刹那。狩人は――白雪姫や王子へと言を紡ぎます。
それはまるで姫を戦いへと誘う様な……
「んー……どくりんごのことは、すごくショックだったから、王妃さまのところにいこうっておもうの! 王子さま! 小人さん! 二人もいっしょにきてほしいの!」
「おお。遂に立たれるのですね、姫。然らばどこにでもお供させて頂きます……!」
「食べ物にいやなことをするのは、だめなのです。めっ、ってしにいきましょう!」
ならばと闘争の意欲が満ち溢れる姫一行。小人も王子も呼応します――!
ああでもどうしましょうか。大人数で移動するには、お城はあまりにも遠い……
「ふふふっ、ボクは通りすがりの魔法使い! どうやら困ってるみたいだね!」
とか考えてたら現れる一人の姿――焔です!
ローブを被った魔法使いの如く振舞う彼女は、手に持った杖を軽く振るって。
「それならこの毒リンゴを戦車……じゃなかった、馬車に変えてあげよう! えいっ! さぁ、これに乗ってお城に行くといいよ! それから、そのクーデターボクも手伝ってあげる! 安心して火を付けるのは得意なんだ――! 慣れてるしね!」
「わぁ、すごい!」
さすがほむらちゃん! 他人にテロるのはもう慣れたモノです! え、違う? 違くないよ?
ともあれこれで準備万端。
姫、小人、王子、狩人、魔法使いは王妃の座す地へと向かいます――
舞台は一気に最終章。
そう、戦いの火蓋切られる血と鉄の軍事クーデター編ですね!
●
「暇ですねぇ。王妃様……紅茶でも入れて差し上げましょうか」
「ふふ。鏡よ鏡――そんな事も出来るのですか?」
「勿論。僕は魔法の鏡の精ですからね」
所変わって城塞上階。ジョシュアと円満は優雅な一室でくつろいでいた――が。
「……? 何か騒がしいですね? 王妃様、今日は何か催しモノでもありましたか――」
「大変ダ――!! 敵の軍勢が雪崩れ込んでくるゾ! 白雪姫のプリン軍勢ダ!!」
その時気付く。なにやら気配がおかしい、と。
然らば衛兵たるプリンが駆け込んできた――戦争が始まったと叫びながら!
そんな馬鹿な、この城塞は難攻不落。そう簡単に落ちる筈が……
「ぐあー! う、裏切者……!」
「おっすおっす城門担当の兵士! まぁ、死んでくれヤ。
安い給料なのに真面目に警備してる方が悪いんだゼ――? へっ呆気もねェ。
そんじゃ行こうか……開けーごマ!」
その原因は狩人壱和の裏切りにありました。
警備を務めていたギルオス上等兵を一刀両断。
門を解放した壱和はそのまま王子ニルらの軍勢を中に引き込みます!
「さぁ大きな声で、みんなで白雪姫を応援しましょう!
声が出せないおともだちも、拍手で応援ですよ! みんなの声が、力になるのです!
しらゆきひめー! がんばえー! さぁ、みなさまもっと大きな声で!」
「わー! 姫、がんばえー! がんばえー!!」
「王妃をたおせー! どくりつせいけんを、じゅりつだー!」
ニルが客席の皆へと声を掛ければ、子供達も大はしゃぎ。まるで革命賛歌を謳う者達のようです! 子供達はどこでそんな過激な言葉を覚えたんでしょう? まぁ喜んでるならなんでもいっか!
「弾薬庫に放火して来たよ! 西の方で大爆発が生じてる……!
さぁ火事に気を取られてる隙に王妃と決着を!
雑兵は僕らに任せて! 運命に決着をつけてくるんだ――!」
「ありがとうなの! 王妃さまのところにいくのー! とつげきなのー!」
「はっ! 今こそ全軍前進ッ! 王妃の首を取れッ――!」
更には焔の破壊工作も行われます。城塞各地に火の手が巡り、燃え盛るのです――!
物語のクライマックス。でもこれだけじゃないよ! と、焔は一端舞台袖へ。
入れ替わる様に姫ピリムは前に進みます!
竜胆が法螺貝を拭き戦いの狼煙を上げれば……王妃との決戦は間近です!
「そうはさせるカ! 王妃には手を出させン!」
「下がれ下郎! 腐った性根を持つ王妃に忠誠を誓うとは……お前も腐っているな!」
「何を言ウ! プリンは腐らない――永遠にプリンはプリンのままダ! 常識ダゾ!!」
が、その時。王妃の直衛大将たるプリンが竜胆と激突しました――
「ぷりんだー! ねぇねぇどうしてプリンは王妃側なのー?」
「ふっふっふ、子供達よ! それはだな……
王妃がオレも知らぬプリン“毒プリン檎”を持ってイルからダッ!!
まだ見ぬプリンを褒賞として貰うタメ――オレは王妃を護るノダ!!」
きっと凄くて美味いに間違いない! 何せ女王のとっておきなのだ!
プリンは夢見ていました。“毒プリン檎”に至高の夢があると信じて――
その為に彼はせっせと働いていたのです! しかし。
「……ん? なに? 毒プリン檎じゃなくて『毒林檎』?
……なるほどプは言わないタイプのプリンだったのか!
……んっ?? もう白雪姫にあげてしまっている? ……ありがとう子供達!」
「あっ。どこへ往く大賞首! 待て……尋常な勝負から逃げるのか! くっ! ええぃ、この武器庫から見つけたえすえふちっくなぴすとるはどう扱うのだろうか? むむむ」
客席からの言葉に、突如プリンはどこかへと踵を返します――その背を追わんとする竜胆でしたが拾ったぴすとるの扱い方が分からず見失ってしまいました。
――混迷する城塞攻防戦。
しかし終わりの時は訪れるのです。
「ぱーん、ぱーんなのです! ぷろじぇくしょんまっぴんぐ、って言うのですよね? こういうの? がんばるのです! みなさまを、必ずたのしませるのです……!」
ニルの軍勢が遂に王妃の部屋まで辿り着きました! 大きなクラッカーや動く幻影らを巧みに用いるニルの演出はすごいものです。子供心センサーにビビッと来ております! おうじさまもがんばえー!
「白雪姫……こんなクーデターを起こすだなんて。
しかも他国の王子を連れて来るとは……外患罪も甚だしい。
ですが家来も加担すると成れば、これは身から出た錆でもあるでしょうか……」
「むー! 白雪姫は、ぷんぷんしてるみんなと一緒に、おうちに帰りたかっただけなのー!」
然らば最早王妃側はほとんどが降伏しています。
白雪姫の政権を歓迎しているのです――ですが鏡の精だけは王妃に付きます!
「四面楚歌ですけど僕くらいは味方でいてあげますよ。長い間鏡を使ってくれたお礼です」
「鏡よ……貴方だけには任せておけません、私も戦闘は苦手ですが頑張り……へぶ!!」
刹那。戦闘の気配を感じ取った円満の人格が入れ替わる――
「……いや、なんでそんな話になってるのです……しかし、やらなくてはいけませんね。ならば、世の霊魂を供にして、姫と戦うとしましょうか……!」
「みんなに、いじわるしちゃ、だめなのですー!」
「あなたの動きはよく見えていますよ、白雪姫」
さすれば困惑するものだが、ノリがいいのかまるでネクロマンサーの如く振舞うではありませんか! 正にラスボス。あちらこちらで聞こえてくる激突音。鏡も応戦し、白雪姫や側近の小人、王子もまた攻め上がる――!
それらはまるで舞う様に。皆の動きに合わせ振舞われる演技は場をかつてない程に盛り上げるか――! 問題はこれって白雪姫なの? っていう声がちょこちょこっと聞こえる気がしますが、まぁ子供達は大熱狂の渦なので問題ないね!
「ウオオオオオ!! 覚悟しろ、女王!!」
その時でした。女王の身に刃が届きます――
それは味方であった筈の……プリンでした!
「な、なにを……!」
「何を!? 身に覚えが無いというノカ!!?」
彼は怒り狂っていました。お前は! 毒林檎を! オレが楽しみにしていた毒林檎を何処のプリンのカラメルともしれぬ娘にやったのだ! 来る日も来る日も、雨の日も嵐の日も、プリンが降った日も毒林檎のため! 真面目に働いたのに!
プッチンする価値すらないカラメルに――お前は、お前はアアアアア!!
「絶対に許せんぞぉおおお!! このプリンが、お前を粛清してヤル!!」
「王妃――! ぐっ!
……残念ですが僕がお供できるのはここまでの様です……さようなら……」
「ああ、鏡よ……!!」
直後。トドメの一撃を鏡が庇いて――その身が砕けんとします。
長年共に在った忠臣の最期……涙ながらには見れません。
鏡の精がまるで泡沫の様に消えんとしている――その最中。
「へへ。今頃王妃は姫達と殺り合ってる最中カ。まぁ、依頼は果たしたんダ。こっちも好きにやらせてもらうゼ……おっ。あっタあっタ。この国に伝わる秘術――『禁断の死霊術』の本、頂ク」
同時。狩人は自らの野望を叶えんとします……なんと、今王妃が使っている死霊術は、かつてこの国を絶望の渦に叩き込んだ封じられし術だったのです……! 狩人はその所在を探っていたのでした。姫に味方したのもこのために……!
「んじゃ逃げるとするカ。あばヨ――嫌な予感もするしナ」
「よいしょ、よいしょ、この辺りでいいよね。準備ヨシッ!」
目的を達した狩人は逃げんとします――が。
その傍で見えた姿は、魔法使い焔のモノでした。
……彼女は何か準備しています。それは『危険!』とか『火気厳禁!』『フリじゃないからな! マジで使うなよマジで!』と書かれた火薬樽でした。元々予定していたならあるだろうと踏んだ魔法使いは早速に点火します……
そう。城塞を全て吹き飛ばす為に――!
「いっくよー! 皆もカウントダウンしてね! 3・2・1!」
直後。大きな大きな爆発音が――全てを包みました。
……魔法使いの火により、城塞は影も形もなくなったのです。
これこそが大戦を集結させたとする裁きの焔。
そして――全てが燃え尽きて降り積もる灰が白い雪のように見えたことから。
「ぷはっ! けほけほ! びっくりしちゃったの!」
かの大戦を生き抜いた姫は――『白雪姫』と呼ばれるようになりました。
めでたしめでたし!
「……ねぇ、これ本当にこんな感じのお話だったの?」
「まぁ子供達も大はしゃぎしてるから、きっと成功で良いだろう……
あ。牡蠣にあたった者達には正⚪︎丸を配るとしようか――アフターケアも大事だ」
ダメだぞ焔ちゃん、疑問に思ったりなんてしたら!
竜胆の言う様に、幕が下りても尚鳴りやまぬ拍手が其処に在るのだから。
白雪姫ってこんな話だったよ――多分ね!
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お待たせしました、ありがとうございました!!
MVPは舞台の保護を気に掛けたり、幻影などの非戦も含めて盛り上げに貢献されたあなたに。
ありがとうございました!
GMコメント
●依頼達成条件
演劇『白雪姫』の完遂!
●シチュエーション
とある施設を借り受け、周辺の子供達などを前に演劇が行われる――予定でしたがなんとキャスト達が唐揚げ食べすぎてダウンするというとんでもない事態が!
皆さんはダウンしたキャストに代わりこの演劇を完遂してもらいます!
ちなみに念のため本劇団が行う予定だった『白雪姫』は以下の様なストーリーです。
1:白雪姫が追い出される
2:白雪姫が毒林檎を食べてしまう
3:白雪姫が目覚める
4:白雪姫が王妃に対して決戦を挑む(以降、軍事クーデター編)
というのが劇団の想定していた流れでした。どうして。
とはいえこの流れに必ずそう必要はありません。主役たちがダウンしてしまっているので、イレギュラーズのアドリブ全開で良いとの事です――白雪姫が二人や三人いても構いませんし、誰が一人二役してもOKです!
とにかく劇を完遂させれば依頼成功です! 頑張ってください!
●小道具とか
元々依頼主が演劇を生業にしているだけあって、必要そうな衣装やら小道具やらは沢山あります。貴族風の衣装であったり、銃(レプリカ)であったり、練達風の近未来的な衣装だったりと……とりあえずなんか探せばお望みのモノが見つかりそうな雰囲気です。
ので、必要そうな小道具はその場で取りそろえる事が出来るでしょう。
●子供達×たくさん
演劇を見に来た子供達です。開演を今か今かと待っています。たのしみー!
●情報精度
このシナリオの情報精度はSHIRAYUKI-HIMEです。
皆さんの演技がこのシナリオの情報を作るのです……! よろしくお願いします!
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