シナリオ詳細
極上のチョコを求めて
オープニング
●JKと道化師、材料調達に挑む
そこはとある森の奥深く、風が静かに吹き抜ける。
そこにザッ、ザッと、明らかに何らかの意図を持って、草を踏み分ける二人分の足音があった。どうやら何かを探してあちらこちらへと歩みを進めていたようだが、その足音は『あるモノ』を見つけた所で、一度止まった。
「いたよダイヤっち、あっちあっち」
そこには声を潜めて、何やら同行者に声をかける少女がいた。
その装いはいわゆるセーラー服で、森というよりは再現性東京あたりに居るのが似合いそうな姿ではある。そんな彼女が、一体なぜこの緑の中にいるのか?
ちょいちょいと片手で同行者を呼び、余ったもう片方の手で彼女が指差すその先には、背中に何かを背負った、馬のような、首の短いキリンのような、そんな生き物が草を食んでいた。
「オ、ひょっとしてアレが『カカオカピ』って生き物ナノカ?」
彼女に呼ばれてやってきたのは、これまた森というよりは幻想の広場、もっと言うならサーカスなんかが似合いそうな、道化師とでも言うべき格好の『彼』だ。白く塗られた化粧の下には、見目麗しい顔が窺える。
「多分ね。本で読んだのとバッチシピッタンコでしょ。見てあの背中」
彼女の言う通り、カカオカピなる生き物の背中には、ラグビーボール状というべきか、楕円形というべきか。とにかく殻に包まれた木の実のようなものが、複数個ぶら下がっていた。
──それはとある書に曰く、とある地方での『チョコレート』作りには欠かせない、極上のカカオだという。
「つまり『アレ』さえゲットしちゃエバ」
「そ! 備えあれば嬉しいなってワケ!」
互いに目を合わせ、頷きあう。
さあ、今こそ、互いの目的を達成するために。力を、一つに……!
●JKと道化師、ローレットに泣きつく
所変わって、ローレットの一角。
「てな訳だからサ」
「ダイヤっちと羽切ちゃんを助けると思って助けて〜!」
めちゃくちゃ服を草と泥まみれにしたJKと道化師が、イレギュラーズに頭を下げて居た。
まあここに立ち寄るイレギュラーズは大抵何らかの仕事を得るためにローレットに来る訳であるし、この二人から所謂『依頼』をされることは何ら不思議なことではないだろうが、それにしたって、貴方達の中には幾つかの疑問を持つ者だって居るだろう。
【Q1、どうしてそんなことになってんの?】
「だって……カカオカピめちゃ早だったし」
「ソ。転んだヒビキにぶつかってオレも転んじゃって、バタバタしてる間に逃しちゃったんダヨネ」
しかし響は物騒なチェーンソーを軽々と持っているし、ダイヤがナイフをもて遊ぶ手付きはとても小慣れている。『戦い』と言うならば、多少はどうにかなりそうだが……?
【Q2、失敗した原因は?】
「ぶっちゃけ森ナメてた。サーセン」
「オレもネ、ヒトの首をガッならともかくネ。獣の狩りなんてしたこと無かったシ」
おっと物騒。これ以上はツッコまないでおこう。
【Q3、どうしてカカオの実が欲しいの?】
「そりゃ、大事なヒトにグラオ・クローネのチョコを作りたいからに決まってるダロ?」
「そーだよ! それに今のうちにいっぱい材料ゲットしとけば、練習中に爆発してもリトライできんじゃん!」
響は何個のカカオを破裂させる気なのだろう。
【Q4、我々がそれを手伝うメリットは?】
「アー、勿論オマエ等がゲットしたカカオは、オマエ等で持って帰って良いゾ。オレも作れるだけあれば良いし」
「あ、でもいくらこれで『極上のチョコが作れる』って言っても、どんな味か分かんないとアガんないよね。えっと、カカオカピのカカオでチョコ作ってるショコラティエのお店?がこの辺にあるらしいから、後で羽切ちゃんが奢ったげる!」
それなら、話としても悪くはない……のか?
いずれにせよ、彼女等を助ける事に同意したのなら、カカオ狩りに挑むことになるだろう。
いざ、行かん、雪辱の森へ!
●一方その頃
「……くしゅっ!」
「何だ風邪カ?」
どこかの図書館で司書がくしゃみをしてたなんて事は、だーれも知らない。
- 極上のチョコを求めて完了
- NM名ななななな
- 種別カジュアル
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2023年01月17日 22時05分
- 参加人数6/6人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 6 人
冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。
参加者一覧(6人)
リプレイ
「ところであの二人ハ?」
「お前が居眠りしてる間に出てったよ。本も一冊借りてった」
「それで何する気ダ? 大丈夫なのカ?」
「んん……」
司書、めちゃくちゃ不安になる。
●アタックする前に、まずは相手のことを知るべし
「ヘエ、モチノもムツキも嫁ナノ? 旦那サンは幸せ者ダナ」
「そりゃあしーちゃんと僕だもの」
「はわわ……こちらからも甘い気配が……」
「アオたん酔った?」
「この顔色がデフォデスヨ。……アオたん?」
談笑する一行を載せたユイユの馬車が森の手前に止まる。そこから程なくして、何かを設置するには充分な森の広場へと行き着いた。ここからは自らの足でカカオカピを求めるべきだろう。さて。
「それジャア行クゾ!」
「総員突撃ぃ!」
「待て待て待て」
今にも駆け出しそうになる響とダイヤを諌める。
「どったの?」「何ダヨ」
「いやいや、今度はおいら達がいるとはいえ、下手したらさっきの二の舞だぜ?」
「ひたすら追い掛けるのは大変ですし、カカオカピさんも傷つけたくないですからね。罠を作って、そこに追い込むのはどうでしょう?」
「超正論ティーじゃん」
「ナルホド?」
フーガと望乃の説得に、JKと道化師納得する。
「響様、罠を作るにあたって、カカオカピの生態をもう少し知りたいのですが」
「それってボク達もみていい?」
「もち! でも『みっひー』から借りたのだから落とさないでね!」
ジョシュア、ユイユに言われて『幻想生物図鑑』と書かれた本を渡す響。その背面には『480 い 自由図書館』とタグが貼られている。一同は早速カカオカピの項を開いた。
その記述の一行に、アオゾラが目を止めた。
「『カカオカピは好物を見つけると近くの草をすり潰したモノを撒き、仲間に好物がある位置を知らせる。仲間はその匂いを嗅ぎつけ集まってくる』……デスカ?」
「好物は木の枝、葉。栄養補給に果実類やキノコ類……ともありますね。下草はあまり食べないようです」
睦月の呟きを聞いていたユイユが、うーんとうなりながら周囲を見回す。下草は好まないと言うなら、今自分の足元に揺れるタンポポも彼らはきっと選ばないだろう。
「ねえ、これだったらカカオカピ達も食べてくれるかな?」
彼は今し方見つけたばかりの、人間の目線と同じ程度の高さに揺れるベリーの枝を指す。葉も柔らかく、ゆきのように真っ白な実も艷やかだ。
「これは……スノーベリーですね。冬の森では貴重な栄養源です」
地の恵みに愛された竜の娘の口から、サラサラと知識が湧いてくる。その言葉を受けて、ユイユは改めて遠くの方を見てみた。
「ん、言われてみれば……ずっとあっちの方でも、カカオカピがこれ食べてるみたい!」
「マジ!? やったね、もちち、ゆんゆ!」
「じゃあ餌はこれで良さそうだな。この辺りで穴を掘ろう」
「僕にお任せあれ」
ズドンと睦月の魔術が土を刳り、ここにいる8人が収まるくらいの穴が空いた。
「もう一発やれば、尖った石も全て砂の如く砕けるかと」
「それが済んだら、干し草を入れましょう。クッションになるものが欲しいですし」
「おけまるジョッシュー! フーフー、アタシにもスコップ貸して!」
「そうだな、手伝ってくれ響」
「ボクは餌集めてくるね!」
「オレも手伝ウヨ」
「ワタシは、危険なものがないか確認してキマス」
「では、私も一緒に!」
こうして、8人の手で罠の準備が着々と進んでいく。
作戦開始まで、もう少し。
●相手の好みを知ったなら、その心を掴み我が物にするべし
「これで良し、っと」
「ご飯もたくさん持ってきたよ!」
「では、仕上げにこれを」
落とし穴には干し草を敷き詰め、シートを張った穴の上に土を最後の一掬い。そこにこんもりと落ち葉、更にスノーベリーの枝を乗せ、周囲に何かの草をすり鉢で潰したものを撒きマーキングを。これで罠の準備は整った。
「では、ワタシも配置に付きマスネ」
「僕達も見つけ次第誘導してきます。そちらはお願いしますね」
念の為落とし穴近くで待ち構えるアオゾラを残し、一同は森の中を歩く。さて、準備は上々、後は件のカカオカピを見つけなければ。
「しかし、彼らは居なくなってやしないかな。作業中は一匹もこちらに来なかったけれど」
「おいら達が喋ってたから、ちょっと距離を取ったのかもな。でも大丈夫。そう遠くには行ってないぜ。きっとあっちだ」
睦月の懸念にフーガが笑って応える。彼は直感のみでそう言っているのではない。遠くに微かに聞こえる蹄の音が、彼の耳には届いているのだ。
「ええ、この子達も『見た』みたいです」
そしてフーガが聞き取ったモノを望乃が肯定する。証人はこの森に映える草花に、情報提供の礼に差し出したきのみを咥えてテテテと駆けていったヤマネコ。真を立てるには充分だ。
その言葉通り、程なくして誰よりも先にこの中で誰よりもいい目を持つユイユが森の合間にそれらを見つけた。
「あっ、アレだよね、カカオカピ!」
食事を求め森を歩く姿は、図鑑の絵図や、事前の説明ともしっかり一致する。後は彼らを落とし穴の方に呼び込むだけだ。
「では、手始めに」
睦月がごくごく小規模に、頭上をカサっと鳴らす程度に魔弾を撃つ。
『ん?』
『なになに?』
カカオカピの何匹かが集まりそちらを見るが、特に何も起こらない。小動物が動いたと思ったのか、驚き逃げるものは居ない。
そこを見計らって、フーガが奏でるドラドの声が響く。これに望乃の歌声が加わった。
これは一体何だろう?
どこかで誰かが、追い立てるでもなく、撃つでもなく、聞いたことのない音を出している?
興味からか、カカオカピの数は更に先程よりも多くなってきた。
その中の一匹が、はたと森の小径に立つ睦月と目を合わせた。
「こっちだよ」
彼女の柔らかな語りかけにつられて、何匹かがそちらへと歩いていく。
『あっご飯だやったー!』
『あっちからも匂いがするよ』
ジョシュアが置いて回った撒き餌のベリーを時折食べながら、カカオカピの一団は着実に落とし穴の方へ近づいていく。
「厶、あちらは問題無いようデスね……」
賑やかな音色に混じって聞こえるコツコツとした蹄の音を、アオゾラは茂みからひょこっと頭を出して確かめた。
彼女と目があったユイユも、腕で大きな丸を作る。順調に行っている、というサインだろう。
そして、とうとうカカオカピの一団が、落とし穴のある地点までやってくる。やがて、積まれたベリーの山にありつこうと、何かの草を潰した汁で描かれたラインを踏み越えていく。そして。
『うわー』『きゃー』
どわわわわ、と穴に何匹ものカカオカピが吸い込まれていった。
「オオ、作戦成功ダナ!」
「やったね皆!」
『なにこれー?』『ご飯は?』『どこ?』
穴に落ちたカカオカピ達に駆け寄り、様子を確かめる。どうやら緩衝材は無事に機能したらしく、怪我をした個体もいないようだ。
「驚かせてしまい、大変申し訳ありまセン。そのカカオを分けて欲しいデス」
アオゾラがジー、っと魔眼とセットでおねだり。その言葉に、カカオカピ達は一鳴きした後、ブルブルブルと身体を震わせ始めた。
「エーット、コイツ等なんて言ッテルんだ?」
「背中のカカオ、分けてくれるみたいですよ!」
「けど、その代わりに僕達にご飯をねだっているようですね。この状況でも食意地が張っているというか、なんというか」
ダイヤの疑問の答えを、望乃、睦月が訳す。その言葉通り、穴の中にはカカオカピの背負っていたカカオがコロコロと貯まっていく。
カカオカピ達に詫びを入れつつ、全員で一匹一匹救出。餌として確保していた残りのベリーを差し出した。
「ねーねー、むつきん。この子達、美味しそうにスノーベリー食べてるけど、これ人にはどうなのかな?」
「試されますか、響さん?」
その後響がとてつもなく口キュッとしたのはさておいて。
食事を済ませたカカオカピ達と別れて、今日の収穫をザックと馬車に詰めたなら。これの味を、確かめに行かなくては。行きと同様、ユイユが手綱を引いて。
「皆乗ったよね? それじゃー、出発ー?」
『しんこーう!!』
●好きなものをともに楽しむ時間を持つべし
響の案内で辿り着いた店の名は『ショコラ・アムール』。聞けばこの店のショコラティエと店長も夫婦なのだという。さて、噂の極上カカオを用いたチョコの味だが。
「ん、町中で買うのとは……香りが違いますね」
「うんうん! ビターな感じはあるけど、ただ苦いだけじゃないっていうか……」
「確かトリュフなら、初心者にもおすすめできる、と言ってましたね」
「そうだね、これならたくさん作って、うちのところの子にも配れるかも」
睦月とユイユはショコラティエのおすすめ、最も素材の味がわかるというシンプルなトリュフを口で転がして風味を楽しんでいる。
「チョコレートケーキ……美味デス……」
もっもっもっ、と口を動かすアオゾラは、更に大きな一口をフォークで切り取った。
「あむっ。……美味しいモノは決まって高カロリーと聞きマシタが……今日は無礼講、なのデス……」
「カカオカピのカカオは、どのように下ごしらえするのですか?」
ジョシュアの疑問にも、店主がにこやかに答えている。来店者サービスだというレシピブックも添えられたなら、これで迷うことはないだろう。
「ありがとうございます。また分からないことがあれば、お尋ねしてもよろしいでしょうか?」
彼の前向きに学ぼうとする姿勢に、店主も快く了承を返す。そんなジョシュアの手には、甘くて温かいホットチョコレートが。フーガと望乃の手元にも、同じものがあるのだが。
「ビターも試してみたが……これは……」
「大丈夫ですか、フーガ?」
自分も味見を、と思った一口のあと、妻は夫の渋い顔の意味を、その舌で知ることになった。
「やっぱり甘いほうがいいな、おいら」
「ですね。でも」
……貴方と一緒なら、どんな一杯も格別だ、という言葉は、後に取っておくべきだろうか?
何はともあれ、良い材料が手に入った。コツも聞いた。レシピも教わった。後は何が必要かなんて、今更言うことでもないだろう。
「そういえば、ダイヤさんは?」
「響様も居ませんが」
「あっ、あっち。丁度ショコラティエさんにチョコ作り体験させてもらってるみたいだよ」
「でも……遠目で見ててもちょっと危うくねぇか? 特に響」
「あっ……手元でカカオが……」
「爆発……シマシタネ……」
「イヒャヒャヒャ!!」
「もーダイヤっち笑い過ぎだってば〜!!」
……まあ、今からさらなる練習が必要な者も居るようだが。
願わくば、誰かを思う皆全てに、素晴らしさグラオ・クローネが訪れますように。
成否
成功
MVP
なし
状態異常
なし
NMコメント
グラクロの予定を考え中の皆様、如何お過ごしでしょうか。
なななななです。
以下詳細になります。
●目的
『カカオカピを捕獲・もしくは狩猟して、チョコの材料を確保すること』です。
何らかの罠でカカオカピを誘導し、捕獲し、その背中の木の実を取る。
または、カカオカピを攻撃し、落とした木の実を拾っていく……等の手段が考えられるでしょう。
目的を達成したあとは、幻想某所のショコラティエが作るチョコを響が御馳走してくれるようです。
ホットチョコ、チョコレートブラウニー等もあるようなので、好きなスタイルで召し上がってください。
●エネミー(?)情報
『カカオカピ』
小さなキリンのような、馬のような容姿をした偶蹄類の生き物です。
背中にカカオの身を背負っていますが、攻撃を受けるとポロポロと落としながら逃げて行きます。
その逃げ足は非常に素早いようですが、仮に上手に捕まえたなら、大した力も要らずに木の実を取ることができるそうです。
彼等の持つカカオは、とある筋では『最上のチョコレートを作る極上のカカオ』と言われているとか居ないとか。
●NPC
JK『羽切 響』
現代日本出身の日本人(旅人)です。JKらしい行動力の塊!と言えるメンタルの持ち主であり、今回ダイヤをカカオ狩りに誘ったのも彼女からでした。
しかしうまく行かなくて『ぴえん通り越してぱおん』状態なので、とりあえず手伝ってあげてください。
道化師『ダイヤモンド・セブン』
幻想在住の見目麗しい道化師(性別不詳)です。性別云々は聞いても『オマエが思う方でイイヨ』『ドッチだと思う?』等と言って明確に答えてくれません。普段は大道芸で生計を立てているそうです。
人手が必要そうな作戦であれば、どうぞ彼女らにもお声掛けください。
以上になります。
それでは、どうぞよろしくお願い致します。
Tweet