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シナリオ詳細

<咬首六天>黄金に目は眩みて

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 ――『金』とは分かりやすく人間の欲望を刺激するものだ。
 ソレが在れば大概の事は叶える事が出来る。
 広大な土地を自らのモノとする事も。
 高性能な武具を入手する事も。
 食料を買い求める事も。
 出来るのだ。数多に変換しうる人間社会の生み出した、偉大なるモノ――

 故にこそ金は人の目を眩ませる。

 ……鉄帝南部サンドラス地方。
 山間部に位置する此処には一つの廃工場があった。元々は軍事用の兵器を製造していた民間の工場であったそうだが、資金繰りが厳しくなり工場は閉鎖。以来、工場は放置され誰も寄り付かない地となったのである――
 そこに、新皇帝派の賊が訪れ拠点としていると南部戦線に通報があった。
 工場から近隣の村などを襲っているのだという……
 故にこそイレギュラーズ達に撃退の依頼が舞い込んだ――のだが。

「くそ、何処に行きやがった!」
「探せ! これだけの数で囲んでんだ……そう簡単には逃げられやしねぇよ!」

 しかし。訪れたイレギュラーズ達に待っていたのは盛大な待ち伏せであった。
 銃撃や魔術の雨あられ。内部にまで引き込んでからの一斉射撃――
 そう。これは全て『罠』だったのだ。
 通報自体が新皇帝派によるモノであったか――? その目的はイレギュラーズ達の首に掛かっている『賞金』である。新皇帝派により鉄帝の名声高き者に程、莫大な懸賞金が掛かっているのだ……
 実際に支払われる保証はない。新皇帝は政治になど興味がないのだから。
 しかし先述の通り、金は人の目を眩ませるものである。
 もしかしたら? もしも手に入れる事が出来たら?
 ……それだけで人は人を狩れるのだ。
「全く。あっちでもこっちでも殺気だってまぁ……」
 が。イレギュラーズである貴方達も無警戒に工場へと近付いた訳ではない。
 なんとなし嫌な予感がしていた者もいただろう。
 故にこそ敵の奇襲があっても即座に撃を躱して身を隠す事に成功した――幸いと言うべきか、この工場はあちこちに小さな倉庫やら施設部屋が点在している。その中には放棄された廃品や大きな鉄箱もあり、身を隠すには事欠かない場所だ。
 ひとまずどう動いたものか、と思考を巡らせる。
 今、敵はイレギュラーズ達の位置を完全に見失っている様だ。とはいえ数は多い――隠れ潜んだままやり過ごせる訳ではないだろう。いずれは発見されてしまうのであれば、此方から攻撃を仕掛けるべきか?
 その時には敵を全滅させる勢いで戦うか、それとも一点突破し脱出を目指すか。
 廃工場から脱出さえ出来れば、後は道なりに進んでいけば南部戦線と合流出来るだろう。つまり敵も待ち伏せが完全に失敗したと判断し諦める筈だ――戦闘は極力避け、脱出を目指すのも一手ではある。
 ――と、その時。
「……んっ? 何か……来るな?」
 イレギュラーズの一人が気付いた。廃工場の外から、何か別の気配を感じると。
 人ではない。もっと獣に近いような気質……
 それは天衝種。
 廃工場での騒ぎに勘付いて襲来しつつある魔物達だ。
 ……奴らにとってみれば廃工場の中にいる人間は全て敵に見える事だろう。
 もしかすれば賞金稼ぎ達と勝手に相打ってくれるかもしれない。
 勿論。イレギュラーズの姿が見えれば、イレギュラーズにも襲い掛かってくるだろうが。
「さて。どうしたものかな」
 刹那。風が吹けば、一枚の紙が――貴方の手元へと舞い降りた。
 それは賞金首のポスター。
 ――DEAD or ALIVE の文字と共に貴方の顔が刻まれた一枚であった。

GMコメント

●依頼達成条件
 1:敵戦力の全撃退
 2:廃工場からの脱出

 上記、どちらかを達成してください。

●フィールド・シチュエーション
 鉄帝南部サンドラス地方に存在する廃工場です。
 此処に新皇帝派の賊が潜んでいると連絡があったのですが……どうやらソレは罠であった様です。大量の敵に待ち伏せられていました――しかし貴方達は嫌な予感がしていたのか、奇襲を回避する事に成功。現在廃工場の中で身を潜めています。

 廃工場はそれなりに広い施設です。小さな倉庫が各所に点在し、倉庫内には廃品や鉄箱などが大量に放置されていて、隠れる場所には事欠かない事でしょう。

 現在、後述する賞金稼ぎ達はやっきになって貴方達を探している様です。
 暫くすると天衝種達も乱入してくる事でしょう――
 数は多いですが、賞金稼ぎと天衝種は遭遇すると戦闘を始めます。協力する事はありません。やり様はありそうです……

●敵戦力
・賞金稼ぎ×20人
 勅令により解放された囚人、新皇帝に賛同する賊などが中心の者達です。
 賞金に目がくらんだ者達が襲い掛かってきます。
 戦闘能力や装備(近接型か、遠距離型か)はまちまち。個人としてはそれなりに強い者もいれば、少数のチームで動いて連携を重視する者もいます。ですが全体としては統制が取れている訳ではありません。
 イレギュラーズを狩る、という目的の下に集まっただけの集団と言えるでしょう。
 一部には『捜索』や『ファミリアー』などの非戦を持っている者もいるかもしれません。ご注意を。

・天衝種×20体
 廃工場での騒ぎに勘付いて施設へと集まって来た魔物達です。
 地を駆ける『狼型』や空を飛ぶ『鳥型』の個体が集まってきています。
 ――ですが、ここに訪れた天衝種は人間であれば無差別に襲うようです。
 つまりイレギュラーズも賞金稼ぎも関係ありません。
 目についた者へと攻撃してきます。

 上手く誘導などが出来れば、賞金稼ぎ達と鉢合わせる事も可能でしょう。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

  • <咬首六天>黄金に目は眩みて完了
  • GM名茶零四
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月31日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談6日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ノリア・ソーリア(p3p000062)
半透明の人魚
志屍 志(p3p000416)
天下無双のくノ一
ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手
アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)
Le Chasseur.
観音打 至東(p3p008495)
ラムダ・アイリス(p3p008609)
血風旋華
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標

リプレイ


 やれやれ――最近なんとも『騙して悪いが』と言った依頼が多いものだと『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)は廃工場の中で身を潜めながら思うものだ。
「有名なのも考え物ですねぇまったく。2,120,000GOLDですか……
 人の目を変える程度の額、というのもなんとも不思議なものですが」
「フフフ、人の目を惹く美少女すぎるのも考え物ですネ……!
 だからといってやめられませんけど!」
 同時。『刹那一願』観音打 至東(p3p008495)も気配を殺しながら外の様子を窺う――相手の捜査網はまだこちらを特定できていない様だ。ならば今の内になんとか手を打っておくべきですかね、と……もののついでに自らの笑顔が刻み込まれているポスターを記念に持ち帰らんとしながら思考を巡らす。
 目標は脱出。わざわざ数の多い敵を全部相手取ってやる必要などない――
「やれやれ、フェイクの依頼情報で誘い込んでくるとか賞金稼ぎ達もやってくれるよねぇ……ま、成程成程追加のゲストもいるみたいだし、彼らの想定よりももっと『派手』に遊んであげるとしようかぁ」
「まあイレギュラーズの首に賞金がかかれば当然こういう局面もあり得るわな……!」
 故に『咎人狩り』ラムダ・アイリス(p3p008609)は先の瑠璃らと同様に己が気配を極限まで殺しつつ周囲を優れた五感と共に探るものだ。敵意を感知する術も張り巡らせて……更には『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)も抜刀の準備を整える。
 脱出前提とは言え戦闘を一切行わずに――というのは無理だろう。
 特に己は隠密に特化している訳でもなければ……
 発見時に即応出来るように集中を研ぎ澄ます。
 然らば『Le Chasseur.』アッシュ・ウィンター・チャイルド(p3p007834)の放ったファミリアーの使い魔が周囲を索敵するものだ。工場の天井付近まで舞い上がらせた鳥は数多の敵影を上から見下ろす様に。
 いやアッシュだけでなく瑠璃もファミリアーのフクロウを天井の梁に捕まらせているか。
 さすれば各所の情報を俯瞰する様に窺えるモノであり――
「お金の為……唯々、シンプルな理由であり動機ではあるでしょう。実に、実に分かりやすくはありますが……しかし。此の災禍にある此の国で、一体誰が其の価値を保証すると云うのか……黄金に目が眩んだとはこの事ですか」
 同時。アッシュが零したのは吐息か、憐憫か。誰も保証せぬ金塊に何の価値があるのか。手を伸ばせば手に入る『保証』を、どこかの誰かがしてくれると――?
 目、耳、嗅覚。数多の感覚をもってして付近を探る。
 幸いと言うべきか敵は一丸となっている訳ではないのだ。
 統率が取れていない相手ならば必ず隙があると……そして。
「おぉ……!? なんだ今の音は!」
 工場の一角に甲高い音が響き渡る。それは『いにしえと今の紡ぎ手』アリア・テリア(p3p007129)の策と一撃だ――ここは鉄帝の廃工場であればこそ、鉄と歯車だらけの地。故に打てば響く様な代物があちらこちらにあろうと。
(さて、狙い通りの騒音は出せたね……! 後は上手くやるだけだよ……!)
 で、あれば彼女の思案通りに敵が動くものだ。
 連中は罠に『嵌めてやった』と思っている側でもあるが故の油断か。
 音に釣られる虫の如く一部が出でて――同時。アリアが顕現せしめるは幻影である。
「いたぞ、奴らだ――!」
(よし! 後は走って、あっちの方に……!)
 だが只の幻影ではない。動きも見せ得る幻である。
 然らばそれは走りを見せて――わざと賞金稼ぎ達の前に姿を現す。
 彼らを引き付け、そして天衝種達が向かってきている方角へと至るのだ。
 アッシュなどの索敵もあらば新たなる敵の気配がする方角は分かる。
 ――その間に移動しよう。
 少しでも敵を少なくし、そしてどうしても敵の気配が避けられないならば。

「成程、奴等はホール・ケーキの上で踊るブラック・サンタか」

 もう一つ。陰より出でた存在があった。
 それは『同一奇譚』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)の揺蕩う影。
 ――愉快な連中のサーカスに巻き込まれた。袋小路の鼠めいた感覚だ。
 しかし予想していた通りの展開で在る事に変わりなく。
 想像の外殻に亀裂は走らず、未だ健全なる美に在る。
 ならば。
「馴鹿の如くに翻弄するのも悦ばしい」
「つまり 彼らを 引き付けるということですの……!
 うう! だまされた おかえしを してあげるですの!」
 『半透明の人魚』ノリア・ソーリア(p3p000062)もまた動くものだ。
 防に優れる二人が身を晒し往くのである。特にノリアは『騙された』感覚に些か怒り心頭だ――とは言っても、これしきの逆境。海にいた頃と比べれば生ぬるいものであり……彼女の理性が失われる程ではない。弱肉強食の世界を生き残ってきたのだから!
「な、なんだアレは……いやイレギュラーズか?! おい、囲め囲め!」
「さて、奴等の眼球も流石に伽藍洞ではないか――
 しかし瞳に捉えたが故の不運、不幸が舞い散る世界もあるというモノだ」
 オラボナの口端が吊り上がる。歪な程に。そして誘う様に。
 ――なぜか。彼を狙わなければいけない様な錯覚に陥る。
 ソレがオラボナの力の一端か。しかし頭で理解する寸前にはノリアも至るものだ。
「弱肉強食 なんのその ですの……! のりきって みせますの!」
 大海の抱擁に身を委ねるが如き彼女の身は敵の攻勢を弾き返し。
 その身を敵前へと晒すものだ。
 まるで。戦いに向いているように見えない調子乗りが出てきたように見えるだろうか。
 ――容易には狩れない、人魚の真髄が其処にあるというのに。


「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。
 ――悔しかったらここまで追いついてみろ。その愚鈍な足で出来るならな」
「く、くそ! 待ちやがれ……オイ、イレギュラーズはあそこに居るぞ!!」
 エーレンの一撃が放たれる。跳躍する彼の身はどこまでも軽いかの如く。
 抜き打つ一閃を放てば――しかし彼はそのまますかさず物陰へと身を潜めようか。無論、敵も追って来るものだが、障害物が多々に存在しているのであれば彼の身軽さが物を言う。罵倒が聞こえようとなんのその――むしろもう一周してまた切り込んでやろうか。
「ねこです。ねこの気持ちになるのですよ。ねこはよくサイレントニャーしますからね。ええ。気付いたらソファーの下に隠れてたり、いつの間にかあっちやこっちに行ってたり」
「一人で行動してる奴なんかがいたら狙い目だねぇ――サクッと始末しちゃおうか」
 次いで至東にラムダも往く。家で飼ってる猫の行動を参考に気配を幾度も立ちながら敵の捜査網を掻い潜るのだ――どの道守りにはあまり自信がないですからネ。抜刀必殺、即撃速殺。迂闊なりし敵の姿が捉えられれば早速に強襲させてもらおうか。
 ま。命だけは助けて差し上げる。だって、囮になってもらうんですからネ。
 ラムダも気配を引き続き殺しながら、単独行動している向こう見ずな賞金稼ぎを背後より。口を押えて喉でも掻っ切って始末してやろうか……まぁ、流石にそうそう何度も楽には出来ないだろう、が。
「一人でも減ってればそれだけ楽が出来るからねぇ……さて」
 と。その時だ、ラムダは新たなる気配を感じた。
 ――戦場に舞い込む新たなる殺意は天衝種の大群。
 先程アリアが幻影をもって誘い込んだ方角で激しい戦闘音も聞こえてくれ、ば。

 ――寄って集って騒がしい貴様等!
 ――木偶すらも仕留められないと? 嗚呼木偶の坊は其方だったか!
 ――Nyahahahahahaha!!!

 同時。オラボナの声が響き渡るモノだ。
 相も変わらず晒し続ける身は目立つものであり、攻撃が舞い込もう――
 しかしオラボナの身は砕けぬ。まるで日常であるかのように振舞う姿……
 ……さすればその内に到来するは騒がしくなりつつあった『天衝種』だ。
「うわ! おいおい魔物共がきやがったぞ!」
「落ち着けェ! 狙いはイレギュラーズだろうが! 狩ってさっさと逃げるぞ!」
「だけどアイツ死なねーぞ!!?」
 コレが狙い。そう、天衝種と賞金稼ぎ達を鉢合わせる事が――
 オラボナは身をあえて晒す事によって鳥型の個体すら引き寄せていた。
 では後に生じるは混戦混乱。我が身を文字通りに餌にし……しかしノリアより齎された海の加護があれば、オラボナに撃を叩きこむたびに敵へと弾き返される反射の様な痛みが走るモノ――
「待ちやがれ、この――!」
「まて と言われて まつ者は おりませんの!」
 そして当のノリアの方も敵を引き寄せていた。
 ただし彼女は些か異なる行動であり、壁を透過しうる術、いや親和性をもってして攪乱も混ぜていたろうか。障害物の多さを利用し、多くの賞金稼ぎが迫れば……袋小路を利用して自らだけが壁を抜けてやる。さすれば壁を叩く怒号が聞こえて狙い通り。
 これこそが彼女の本領。だが、逃げるのだけが目的ではない。
「そして 天衝種が きたみたいですの……? それなら よていどおり ですの。
 さぁ鳥さんたち! こっちですの! のれそれも あるですの!」
 そもそもこれは時間稼ぎだったのだから、と。
 天衝種という乱入者共を利用するべく続けざまには彼らの下へ。
 晒すしっぽ。それはつるんとしており豊満なゼラチン質を感じさせようか。特級天然海塩でおいしさもアップすればノリアの食べられる態勢は万全だ――! いや本当に食べられたい訳ではないけれど!
 とにかく。食欲があらば単純思考の魔物達の目を惹くのでは、と。
『ギ、キィ――!』
「うぉぉ! こいつら、どっから来やがった!」
 そうして彼女は再びに壁をすり抜け――先程攪乱し、袋小路へと誘い込んでいた賞金稼ぎ達の下へと誘ってやる。さすれば始まる戦闘音……自らだけが壁の向こうに消えれば、相打つしかなかろうと考えたのである――
「『オイ、アッチ側でイレギュラーズを見つけたぞ。回り込んで攻めるぞ!』」
「聞いたか! 向こうで懸賞金共を見かけたそうだ! 俺達も急がねえと皆持ってんぞ!
 遅れたら知らねぇからな! 山分けなんざしてやらねーぞ!!」
「お、ぉおい待て待て! 俺も行くぞ!」
 次いで聞こえてきた声がある。それは賞金稼ぎ達の――会話に聞こえる、虚偽の声だ。
 声を変質させた瑠璃が囃し立て、アリアに至っては声色を偽ながら更に広範囲にも響き渡らせようか――聴覚からも相手を騙していく。流言飛語の類は、相手側の連携が取れていれば通じなかったかもしれないが……しかし寄せ集めの賞金稼ぎ達には『効く』モノである。
 誘導するだけして己らは途中で離脱。
 混乱した中で賞金稼ぎ達が天衝種などと鉢合わせれば――
「『騙して悪いが』としたのは其方が先ですからね。報いを受けてもらいましょうか」
「罠に嵌めるなら、追い込まれた敵がどうして来るかも含めて考えておかないと片手落ちだよ! 反撃を全く想定してなかったのかな? 罠を仕掛けるだけで満足するなんて――アマチュアだね!」
 瑠璃はその背より一斉に撃を放つモノである。
 放たれる掃射の一撃が数多を穿とうか――あぁ余裕があれば天衝種共を怒らせ、引っ張ってくるという手もある。なんにせよ愚かな行為をした賞金稼ぎ共には厄介な存在を擦り付けてやるとしよう!
 アリアも一気に敵へと近付き魔力一閃。大騒ぎする前に強大無比なる一撃によって昏倒させんとすれば。
「ふむ。あちらこちらで戦闘が生じていますね……狙い通りです。
 天衝種の乱入も含め、我々の悪運も中々のモノですね」
 斯様な状況をファミリアー越しに確認しうるのはアッシュだ。
 引き続き敵の位置が掴めれば即座に味方へと共有する――統率の取れていない集団であればこそ付け入る隙は幾らでもあるものだ、と。功を焦って各所で大胆にすぎる行動を敵が繰り返していれば、段々と包囲には分かりやすい穴が生じ始めるモノ。
「一方的に狩る側になったという慢心がこの事態を生じたのですよ。
 ――奢った狩人ほど、狩りやすい獲物はいません。
 さぁ。今度は其方が獲物となって頂きましょうか」
 そうして敵が戦闘を行っている背後を容易く取る事が出来れば、全員纏めて狙い穿とうか。血には血の報いを。災禍顕現の魔法陣が無数の光の礫を顕現せしめ――到来する。直後に響く悲鳴の数が被害の大きさをも示しているか。
「ぐあああ! ど、どこだ! どこに連中は……!」
「馬鹿前も見ろ! 魔物が迫って――うわあああ!」
 さすれば更に混乱の影響も広がっていくモノだ。
 イレギュラーズ達ばかりではなく、襲い来るは魔物も同様なのであれば。
 最早ここは狩り場ではない。
 いやむしろ狩られているのはいつの間にか己らになっていると――
 気付いた時には、もう遅かったのだが。


「今こそ 脱出ですの……! さすがに ぜんぶを相手にすると たいへんですの!」
「舞台も佳境たりえれば袖へ下がる。幕降りうる機は逃しては再び袋小路の鼠に至ろうか」
 最前線で状況をかき乱すのに大きな役目を担っていたノリアにオラボナは状況の変化にも勘付くものだ――派手に敵と戯れていた訳である、が。当初の目的を忘れている訳ではない。
 敵の総数は多いのだ。延々と戦い続ければイレギュラーズも疲弊していこう……
 ノリアやオラボナにしろ不死身ではない。数多の撃が加えられれば傷も増える。尤も。ノリアの加護により、その度に敵にもある程度跳ね返っている訳であるが……ともかく脱出の道筋があらば即座に転進せんと心には定めていた。故に。
「よし、行くぞ――薄くなった箇所を切り拓き、脱出する!」
「天衝種は鳥もいますからね。上空からの強襲にはお気を付けを」
 エーレンやアッシュが動き始める。エーレンはオラボナ達に引き付けられていた賞金稼ぎ達を背後より強襲、一閃し二人の退路も確保しておこうか――アッシュも闇夜を切り裂くが如き銀色の一閃を戦場に瞬かせ、疲弊していた賞金稼ぎを地へと転がす。
 さすれば後は全力で移動だ。卓越した速度をもってして、全力で往く。
 途中で遭遇せし天衝種や賞金稼ぎがいようと――関係ない。
「押し通る。死にたい奴だけ掛かってこい!」
 加減せぬエーレンの抜刀。此処にいるのは誰も彼もが悪党ばかり。生活のためにやむにやまれず狙うとかでない分、対処に良心が咎めないのが不幸中の幸いといった所か――全霊の一撃をもってして切り伏せんとすれば。
『ギギギ、ィ――ッ!』
「もう煩い声ですねぇ。脱出のお時間なんですよ? しつこいなら――容赦しませんからネ」
 それでも獲物を逃がすまいと天衝種が迫りくる。
 だからこそ至東は連中の爪や牙を付けつつも――本気へと至ろうか!
 有機物無機物問わずに刹那の一撃が降り注ぐ。
 ――私の村正が切り開くのですヨ!
「まったく賞金稼ぎ達には参ったものだね。
 そもそも新皇帝派を信用するとかいう事自体があまりにも馬鹿だと思うのだけど」
 そうして見えた。工場の外殻だ――
 ここまで来れば脱出まであと一歩だとラムダは邪魔立てせんとする敵の影を薙ぎ払う様に一撃を紡ぐものである。放たれる魔力はまるで魔神が放つが如く。これ以上イレギュラーズに関わるのは割に合わないとまで思わせてやろうか。
「ま、だからこそこっちとしては助かる訳だけどね。
 さぁ、騒ぎが大きくなる前にとっとと逃げるよ!
 後は将軍に事態を伝えて制圧をお願いしておこう!」
「死体は残っているとありがたいですね――ま、尤も。真新しい情報はきっとないでしょうが……」
 更に続けてアリアも疲弊していた敵へと糸を紡ぎて払い、瑠璃は超速の儘に捻じ伏せようか――天衝種は容赦なく処理し、賞金稼ぎはどちらでも。死体になったのであれば後で己がギフトで情報を集めんとするだけだ。
 ……『こんな事が普通に起きる』状況が、価値ある情報といえばそうですけれども。
 今後もこう言った事が見込まれるのだろうか。
 黄金に目が眩んだ者達が――己らを襲う様な状況が。
「どうせ来るのなら、今度も切り伏せやすい連中だと良いんだがな」
 エーレンが吐息を一つ零すものだ。重体の味方がいないか、視線を巡らせながら。
 ……まぁ何が来ようとも敵は全て排除するだけ、だ。
 工場の外へとイレギュラーズ達が到達する。後はそのまま走り抜けるのみ。内部からは未だ天衝種と争っている賞金稼ぎ達の声も聞こえようか――だがそんな状況でイレギュラーズ達を追えるはずもない。
 まずは南部戦線の拠点へと帰還しよう。
 あぁ。悪辣なる欲望の手からは――逃れえたのだから。

成否

成功

MVP

アリア・テリア(p3p007129)
いにしえと今の紡ぎ手

状態異常

観音打 至東(p3p008495)[重傷]

あとがき

 お疲れさまでしたイレギュラーズ。
 新皇帝派の策謀を跳ねのける事が出来ました――お金とは怖いものです……
 ありがとうございました!

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