PandoraPartyProject

シナリオ詳細

赤翼邪神崇拝ダンジョン

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●禁じられた崇拝

 ――『赤翼教団』

 古代文明より発見された翼もつ偶像は、そんな名前の者たちによって崇拝されていた。
 傲慢なる超越者。翼もつ邪神。世界の破滅をもたらす救世主(メシア)。
 像は黒く乾いた何かに覆われており、それが乙女の血であったことが発掘された教典より判明した。
 彼ら赤翼教団は世界の破滅を求め、邪神を崇拝し、毎夜儀式に明け暮れたという。
 浚った乙女を刃の籠に入れて吊るし、像が常に真っ赤に染まるようにしたという。
 この像と地下教会はネメシスの北で発見され、当然の如く硬く封印された……かに思われていた。
「この世界におわします赤翼の君。我らの願いを聞き届けたまえ」
 鮮血に浸した法衣を纏った数人の男女が、喪われたはずの邪神像を台座へ置いた。
 切り刻まれる乙女の血が天井より降り注ぎ、像を真っ赤に染め上げてゆく。
 ここは封印されたはずの古代遺跡、地下赤翼教会。
「この世界を滅ぼし、我らをしもべにお加えください」
 祈る男女に、像から真っ赤な何かが伸びた。
 赤い手のような、血で固まったそれは、法衣を貫いて男女の胸を貫いていく。
 かくしてその場にいる全てのものから心臓を取り出すと、血で固まったような何者かが、その姿を顕わした。

●ブラッドゾーン
「赤翼教会地下遺跡の探索と攻略が依頼されてるみたいだ。
 といっても、百パーセントは求められてない。
 あの場所で何が起こったのか知りたい、ってだけさ。
 ただ……ロクなことじゃないのは確かだよね」
 『黒猫の』ショウ(p3n000005)が持ってきたのは天義からの依頼書だった。
 依頼人の名義は異端審問官スナーフ。主に外部とのネゴシエーションを担当する人間で、天義の者がいたずらに他国を侵害したり罪のはっきりしていない者をつるし上げたりするのを防ぐ活動をしている者だ。目的は天義に住む善良な人々を守るためであるが、結果きわめて理性的な外交が成り立っている。ローレットへの依頼もその一つだ。
「ここがどういう場所か分からないうちから過激な行動に出るのは危険だからね。
 第三者として素のまま対応できるローレットが適任ってわけさ。
 とはいえ丸投げも無責任だって言うんで、ちょっとだけ探索は成されてるみたいだよ。その情報も提供してもらった」

 赤翼教会地下遺跡。
 様々な方法で封印が成されていたはずだが、邪教徒によって封印が解かれてしまった。
 内部は異常なモンスターが闊歩し、特殊な罠がいくつも仕掛けられ、隠し扉や暗号文といったものも警戒すべきだという。
「モンスターには共通点があってね、血液に由来するモンスターばかりが存在しているそうだ」
 例えばブラッドスライム。腐った血が魔力をもったというモンスターで、人の血を汚すという。
 他にもブラッドボーン。本隊は犬の生首で、呪われた血液を手足のように使って襲いかかるという。
「こういったモンスターがあちこちにいる。
 戦闘は避けられないだろうし、探索には充分に注意してくれ。
 何か分かったら、その内容を記憶もしくは記録して持ち帰ること。無理をして命を落としたり内部に取り残されたりしないように……ということだ。天義の人にしては随分優しいことを言うね?
 ま、そういうわけだ。あとは頼んだよ。無理しないようね」

GMコメント

【依頼概要】
 『赤翼教会地下遺跡』の探索。
 何かしらの情報を獲得して帰ればよいとされていますが、どこまでの成果をだしたいかによってかかるリスクが変わります。

 なので、一度参加者同士で話し合って『どの程度を着地点とするか』を決めておいてください。
 ざっくり言うと
レベル1:内部の雰囲気が分かったら即帰る
レベル2:内部で行なわれていたことをある程度知ったら帰る
レベル惨:何らかの証拠を掴み、陰謀があるなら暴く
レベル死:徹底的に攻略しラスボス的なものがいるなら殺す
 ……です。勿論レベル死は難易度が跳ね上がります。何の成果も得られず敗退する進撃のなんかみたいになる恐れすらあるので、実質的なマックスは『惨』にしてください。

【モンスター】
 ダンジョン内にはモンスターがうろついています。
 『あそこにいるなー』と分かるやつもあれば、突如現われ即戦闘になるパターンや、不意打ちを仕掛けてくる奴もいます。
 敵を察知する能力があると便利です。
 尚、殆どの壁はなぜか透視や物質透過スキルが通じません。なにかしらの保護がなされているようです。
(この場合敵意を直接もたれていない場合が多いのでエネミースキャンは使えないかもしれません)

 モンスターの種類は様々ですが、継続ダメージ系バッドステータスを与える者やHP吸収、AP減少を仕掛ける敵が多いようです。

【トラップ】
 ダンジョン内部にはいくつもトラップが仕掛けられています。
 落とし穴や槍みたいなシンプルなやつはむしろありません。わけわかんなくてえげつないやつです。
 罠対処があればベスト。
 なくてもデフォルトで罠を探す判定が行なわれるので、代わりになるスキルやアイテムを駆使してみてください。
 すごく得意なひとを先頭に歩かせるのもアリですが、その場合急な戦闘に突入したら即狙われるポジションになるなあと思いつつ配置してください。

【仕掛けや暗号】
 ダンジョンには隠し扉や暗号といったものがあちこちにありそうです。
 それらの解読はなされていないので、(非戦スキルやギフト等々で)知識ロールに得意そうな人はトライしてみてください。
 ハイレベルな成果を目指さないのであればこれらを無視して進んでもある程度の成果はだせるはずなので、『もっといい結果出したい!』という時に挑むポイントになります。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 赤翼邪神崇拝ダンジョン完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月14日 23時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アミ―リア(p3p001474)
「冒険者」
Selah(p3p002648)
記憶の欠片
ルチアーノ・グレコ(p3p004260)
Calm Bringer
侵略者 ミドゥス(p3p004489)
宇宙の果てから
アマリリス(p3p004731)
倖せ者の花束
エリーナ(p3p005250)
フェアリィフレンド
アオイ=アークライト(p3p005658)
機工技師
ピット(p3p006439)
砂塵の中の狙撃手

リプレイ

●赤翼教会地下
 宗教国家ネメシスからの依頼をうけ、ローレットのイレギュラーズたちはある遺跡を訪れていた。
 『赤翼教団』という邪教徒たちが崇拝のために用いていたというこの場所で、なにか恐ろしいことがおこったというのだ。
 イレギュラーズたちに依頼された内容は調査。
 ごく単純に雰囲気だけを察して帰るのでもよし、おきた事実を知って帰るもよし、その事実の証拠となるものを獲得して帰るもよしである。
 イレギュラーズたちはその三段階目。事実の証拠を掴んで帰ろうと、話し合って決めたのだった。
「さーて、トイレ行った? 忘れ物確認した? お菓子持った? 覚悟できた? それじゃ、行こっかー」
 明るいトーンでそう言って、地下への階段を下る『「冒険者」』アミ―リア(p3p001474)。
「異端の教団ですか。天義のものとしてはこういったものがはびこっているのは辛い思いです。赤羽に、血と聞くとなんだかヴァンパイアを連想させますね。彼らは噛むことで仲間を増やすというものもありますし…油断せず参りましょう」
 同じく階段を下る『銀凛の騎士』アマリリス(p3p004731)。
 その様子を後ろから眺めていた『宇宙の果てから』侵略者 ミドゥス(p3p004489)は奇妙にギザついた歯をみせて笑った。
「宇宙より暗い場所あんま得意じゃないねんなー俺。あぶななったら撤収するで」

 階段を下る音は不思議なほど反響した。
 暗視の指輪をつけて先を見る『妖精使い』エリーナ(p3p005250)が、止まるように手を振った。
 何か明かりを。
 エリーナにそう言われ、『■■■■■』Selah(p3p002648)は暗闇に手を翳した。
 不思議な光があたりを照らす。
「一筋縄ではいかなそうですね。個人的な感覚ですが、悪しき気配をひしひしと感じます」
 開口一番そう述べたSelahに、仲間たちは頷くしかなかった。
 足下に広がるのは血だまりと死体。
 死体に明かりを近づけてみると、どれも胸を何かにえぐり取られているように見えた。恐らくは心臓を抜かれているのだろう。
「……ここで一体何があったのでしょうか」
 部屋を照らしてみると、そこは円形の部屋だった。
 中央に何かの台座があり特に何も置かれていない。
「妄信的な宗教は怖いね。ネメシスもヤバそうな国だけど、スナーフさんの様な人がいるのが救いだよ。力になれる様頑張る、っじゃなくて……借りを返すべく全力を尽くさなくちゃ」
 そんな風にいいながら、『Peace Maker』ルチアーノ・グレコ(p3p004260)は台座を調べていた。
「ここに何か置いてあったみたいだね。この惨状はそれが原因かな? 物取りって感じでもないし……」
 あちこちに血液が飛び散り部屋が半分以上赤く染まっていたが、台座の中央には不自然に血に濡れていない場所があった。そこをなぞって、ルチアーノは呟く。
 何か考え込むようにする『機工技師』アオイ=アークライト(p3p005658)。
 工具類をいつでも取り出せるようにポーチを開き、周囲の気配を探る。
「嫌な予感がする。いけるところまでは行ってみたいが、なにより無事に帰ってくることを優先したいな」
「同感。この時点で殆ど仕事は終わってるようなもんだしな。あとはどれだけキッチリやれるかだ」
 『小さな雷光』ピット(p3p006439)はサイバーゴーグルを装着し、先行するために歩き出す。
 が、その足がぴたりと止まった。
「上だ!」
 一斉に上を見る。
 びっしりと血に濡れた天井が、ぬるりとうごいた。
 天井が動いているのではない。
 血液そのものが、生物のように動いたのだ。
 そしてそれらの狙いは間違いないなく、イレギュラーズたちであった。

●異形の魔物
 天井から無数の血液が落ちてくる。
 それが意志をもった血液であることに気づいたピットは、すぐさま天井を射撃した。
 機関銃による牽制射撃。自分の真上に落ちてこないようにと後ろ向きに走りながらだ。
 アオイは自らに予め病気の抵抗力を高める薬剤をうちこみ、魔力バーナーに変形させた工具で生きた血液を炙っていく。
「気をつけろよ。どんなヤバいもんもってるか分からない」
「異端なる神は、必ず仕留めます」
 アマリリスもノーギルティによる攻撃を相手に話しかけながらしかけていく。
「貴方たちは何者ですか、誰かを傷つける異端の神の徒ならば許しません」
 攻撃は生きた血液を切り裂いて、一部を戦闘不能にしたようだ。一方で血液の攻撃に晒され、肉体が奇妙に浸食されてゆく。
 そうしている間にあちこちから生きた血液がしたたり落ち、周囲を取り囲んでいった。
 血液は壁のように持ち上がり、逃げ道を塞ぐように取り囲む。
「ネリー、お願い!」
 その時、あちこちから氷の結晶が降り注いだ。
 エリーナの呼び出した妖精が周囲をひとまわりして魔術を振らせたのだ。
 生きた血液立ちの動きが弱まる。その隙を突くように、エリーナは鋭く切り込んでいった。
 妖精によって鍛えられたという剣が生きた血液を切り裂く。
 血液など斬って倒せるのかとはじめこそ思ったが、どうやら核となる部位が存在するらしい。その部分を破壊することで、ただの血液へと変わっていくのだ。
 対抗するように身体のあちこちを槍のように変えた血液が襲いかかる。
 アミ―リアはブロックパージで対抗。
 自分たちを襲う血の槍をへし折って、逆に核となる部分を破壊しにかかる。
 アミ―リアの攻撃によって血液は吹き飛び、むき出しになった核を容易に破壊できたのだ。
「地下遺跡に血液を媒体としたモンスターとは。……此処で何が行われていたか、大体の見当は付きましたが」
 Selahは自らの周囲に対抗魔術を展開。襲いかかる血液たちを順次迎撃しながら、傷ついた味方の回復に専念した。
 血の槍に貫かれたミドゥスの腕に治癒魔法を施すSelah。ミドゥスの傷は徐々にふさがっていき、出血も収まっていく。
 そうしている間にもさらなる攻撃を仕掛けてこようとする血液たちに、ミドゥスはマジックガントレットによるパンチを叩き込んだ。
「力は温存しといたほうがええ。大物おるかもわからんしな!」
「賛成。だけどここは切り抜けないとね!」
 ルチアーノはマスケット銃に分散魔法をかけると、無数に分裂した幻影のマスケット銃で一斉に射撃をしかけた。
 まとめて吹き飛んでいく血液。
 それぞれ壁に叩き付けられ、核を破壊されたことでただの血液へとなりはてた。
「ふう、まるで遊園地のお化け屋敷だね。あ、実際お化け屋敷なのか」
 空薬莢を排出し、肩をすくめるルチアーノ。
 Selahは再び周囲の気配を探るように見回し、これ以上の襲撃がないことを察するとため息をついた。
「あれを見てください」
 頭上を光で照らすSelah。
 みなが改めて見上げると、大きな鳥籠のようなものが見えた。天井を生きた血液がびっしり埋めていたせいで存在に気づかなかったらしい。
 近くのハンドルらしきものを操作してみると、籠が下りてくる。
 しかしその中身を確かめて、アオイやアマリリスは流石に顔をしかめた。
「原型が殆ど残ってねーが、こいつは人間の死体だぞ」
 口元に手を当て、目を細めるエリーナ。
「先程のモンスターにやられたのでしょうか」
「原型をとどめてない理由がそうだろうが、死んだ理由はこれだな」
 鳥籠の構造を見せるアオイ。
 よく見れば、内側に無数のトゲのようなものがついていて、入った人間が常に深く刺されるようにできていた。
 これが天井に吊られていたということは、ここから大量の血がふりそそいでいたということだろう。
「うげえ、マジモンの邪教やんか」
 ミドゥスが顔を引く。
「どうする? この場所のことを報告して、鳥籠を持ち帰れば一応の義理は果たせると思うけど」
 ルチアーノが振り返ってそう言うと、アミ―リアは小さく首を振った。
 そして、部屋の奥にある壁を指さした。
 彼女が言うには、この辺りに奇妙な文字が書かれているということらしい。
 血でべっとり汚れた部分を丁寧にぬぐって、書かれている文字を探ってみる。
「まったくー、こういうのは私の専門じゃないんだけどなー。こんな事ならあの変態ショタロリコンフィギュアフェチメガネにもう少し教わっておけばよかったかなー」
 などと独り言をいいながらも、文字のようなものの正体を突き止めた。
「わかったよ。これは多分、扉だね」

 アミ―リアの話を要約すると、さきほど生きた血液たちと戦った『儀式の部屋(仮)』の奥にはさらなるフロアが続いているという。
 特定の手段を使って扉を開いたアミ―リアに続く形で中へ入っていくと、そこに広がっていたのは恐ろしく入り組んだ通路だった。
 念のためマッピングをしながら進んでいくアマリリスたち。
 先頭を歩くのはピットだ。
「おっし、この時の為に勉強したんだぜー? 任せとけ!」
 勉強したという罠に関する知識を総動員して、あちこちに細かく仕掛けられていたダメージトラップを解除していく。
 このあたりに仕掛けられていたのは『生命を察知して切りつける魔法の刃』などの高度なトラップで、ピットの知識がなければ発見はともかく解除は難しかっただろう。
 更に言えば、ピットをはじめとする何人かは暗視装置などを持っていたので通路が暗くても安全に進むことが出来た。
「それにしても、通路ばっかりだな。扉とか全然ないぞ」
 ピットの言うことももっともで、途中に現われる犬の首のモンスターや血みどろの骨などと戦うばかりで、発見らしい発見が今のところない。アマリリスはそのたびに率先して戦っていたが、そろそろスタミナもつきてくる頃合いだった。
 アオイのメディカルケアが無ければかなり危なかっただろう。
「どうする。一旦引き上げるか?」
「しかし証拠を持って帰る計画でしたし」
 そんな風に話している間、ふとアオイは何かに気がついた。
「ちょっと地図見せろ」
 ひったくって地図を凝視する。
 地図を返して、アオイは近くの壁をおもむろに蹴り始めた。
「え、ちょ、なに!? キレた? 俺なんかあかんことした!?」
 慌てて止めようとするミドゥス……その腕を、ルチアーノが掴んだ。
「待って。何かある」
「なんですか?」
 覗き込んでみるエリーナ。ルチアーノは一緒になって壁を殴りつけながら呼びかけた。
「ファミリア―の使役状態を解いて。ここから先はやばいかもしれない。使役動物が殺されるかも」
 使役動物が殺されるのは気持ちよいことではない。五感が共有されている動物が死ぬめにあうので、文字通り痛い思いをするだろう。
「でもって、手伝って。多分この先に何かある」

 壁をしばらく延々と殴り続け、イレギュラーズたちは見知らぬ場所へと出た。
 あちこちに枯れ木がたちならぶ、恐ろしく広大な空間である。
「おさらいするね?」
 ルチアーノはアマリリスの持っていた地図を借りて、指でその表記をなぞっていく。
「僕らはさっきから、同じ所をぐるぐる回ってた。大体八角形みたいな形の通路をだ」
 地図がぴったり八角形を描いていたのが分かる。
 はじめは螺旋階段のように下へ下へとゆっくり移動していたのかもと思っていたし、実際に地面は下向きに傾いていた。
 これをずっと続ければなにかしらの地下空間に出そうな気はしたが……。
「壁に一度壊したあとがあった。同じ建材でぴったり埋めたみたいだが……」
 アオイの言葉通り、ルチアーノは建材の古さの違いに気がついたのだ。
「で、たどり着いたのがここっちゅうわけか? なんやここ?」
 ミドゥスは首を傾げて周囲を見回した。
 見回して、ぎょっとした。
 さっき通ってきた場所を振り返ると、ただの四角い鳥居のようなものがあるだけだったのだ。
 にゅっと首を突っ込んでみると、間違いなく先程までの通路。
 試しに鳥居の裏側に回ってみると、そこには赤黒い壁だけがあった。
 要するに、鳥居の内側にぺったりと壁で埋めたものがたっていて、その表面とさきほどの通路がつながっていたのだ。
「もう少し周囲を探索して――」
 と、そこまで言ったエリーナは、ハッとして身体ごと振り返った。
 何かが近づいてくる気配がしたからだ。
 いや、気配どころではない。Selahとアミ―リアも身構え、『それ』を目撃した。
 巨大な真っ赤な人影だった。
 こちらに近づく真っ赤な人影は、アマリリスの停止要求を無視して突撃し、先頭に飛び出したアマリリスを派手に蹴り飛ばした。
 鳥居の一部を破壊し、吹き飛んでいく。
 と同時に、通路とつながっていた穴のようなものが僅かに小さくなったのをミドゥスは見た。
「やっべえ!」
 ミドゥスは拳を握りしめ、代わりに先頭へと立つ。ピットたちを庇うためだ。
「急いで逃げるんや。このままやと帰れんくなるで!」
「帰れなくって……ここただの地下だろ? 生き埋めにでもなるのか?」
 重火器を乱射しながら少しずつ下がるピット。
 ミドゥスは小さく首を振った。
「今見えたんや。この空間。さっきの遺跡とはまったくの別モンや。空を見てみい!」
 言われるまま上を見ると、そこに天井なんてものはなかった。
 赤黒い空と、真っ赤な雲。ここが遺跡の地下などではないことがハッキリとわかった。
 ミドゥスはそれに加えてずっと遠くまでを見通したが、どこまでいっても知っている場所がないことに恐怖を覚えた。かつて異世界宇宙の隅々までを見通した彼にとって、未知の場所に取り残される恐怖は計り知れない。
「せやから早く戻れ! 通路を伝って外に出るんや!」
「そうしたい所ですが……」
 Selahは通路に戻って退路を照らしたが、その様子を見てアミ―リアがぎょっとした。
 生きた血液や犬の生首など、グロテスクなモンスターが大量に発生し、通路を塞いでいるではないか。
 死にものぐるいで戻るしかない。
 アミ―リアはエーテルを個体化したという剣を構え、モンスターの群れへと突撃を仕掛けた。
 Selahもまたアマリリスに回復を施し抱えるようにして一緒に退却する。
「逃げるぞ。生きて帰れなきゃいくら情報を集めたって意味ねーからな」
 ミドゥスをしんがりにして走り出すアオイたち。
 アオイは魔力バーナーに変形させた工具でモンスターを破壊し僅かにでも開いたスペースにエリーナがルーン・Hの魔術を放り込んでいく。
 爆発したように広がる魔力がモンスターたちを蹴散らし、その間をピットやルチアーノが銃撃を乱発しながら突っ切っていく。
 多少のモンスターは無視し、無理矢理に彼らはモンスターの群れを突破した。
 途中で倒れる者。それを抱える者。死にものぐるいで走る者。
 気づけば出口は近く最後尾集団だったSelahは儀式の部屋へと転がり出て、急いで扉を閉鎖した。
 足下に広がる血液が気にならないほどの疲労。
 ミドゥスはゆっくりと頭をあげ、懐から一本の枝のようなものを取り出した。
 まるで血液を固めて作ったような木の枝である。
「とりあえず、こいつを持って行って報告や。ひっどい目に遭ったけど……収穫はあったで」

 ローレットのイレギュラーズたちが証拠を持ち帰ったことで、遺跡内部にあるゲートの存在を教会が知ることとなった。
 遺跡は硬く封鎖され、多くの見張りをつけて再び開かれることのないようにするという。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 探索終了
 お疲れ様でした

PAGETOPPAGEBOTTOM