PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<咬首六天>その盃を満たすまでは

完了

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オープニング

●苦境の集落
 強者が弱者を蹂躙することを是とする新皇帝の発布により、鉄帝国はまさに群雄割拠と化していた。鉄帝の各所で新皇帝派や暴徒による凶行が発生し、多くの無辜の民が苦境を強いられた。
 山々によって帝都から隔たれた辺境の集落でも、治安悪化の一途をたどる政情に危機感を抱いていた。
 それぞれの家族の家長3人は暖炉の前で顔を突き合わせ、深刻そうに話し込んでいた。3人は、もっぱら集落の今後について不安を吐露する。
「よその集落も襲われたらしい……」
「この前は運よく助けられたが……いずれまた、襲撃されてもおかしくはないな」
 若い父親は意を決したように立ち上がると、集落の皆を、家族を守るための道を提言する。
「もうここでは、家族と安心して暮らすことなんかできない……!」
 若い父親は、皆のためにも移住するべきだと熱弁する。中年の父親は深いため息をつくと、覚悟を決めたようにつぶやいた。
「ここを離れるべき時が、来たのかもしれないな」
 若い父親は、同意を求めるように年老いた里長を見つめる。
 里長は頷くと、ある男の名前を上げた。
「――あの親切な軍人さんを頼ろう」

●親切な軍人さん
 空に浮かぶ島――独立島アーカーシュを拠点とする『軍部非主流派』は、鉄帝の民を難民としてアーカーシュに受け入れる方針を掲げていた。
 アーカーシュに集った鉄帝軍人の中に、【陽気な歌が世界を回す】 ヤツェク・ブルーフラワー (p3p009093)はエッボ・ザサーレの姿を見つけた。
「どうやら仕事はしていたようだな……」
 鉄帝の知己であるエッボに対し、ヤツェクはどこか含みを持たせた言い方をして、皮肉っぽく笑う。
 ヤツェクの反応に対して、エッボはどこか芝居じみたわざとらしいため息をつきながら、
「こんな状況だからな。そこまでのんびりもしていられない。毎夜晩酌する時間もろくに確保できないほどだ……」
 エッボは何やら、難民の申請が増えたことで仕事が増えつつある現状を訴える。そこで更に発生した問題を、誰かに押し付けようと──片付けるために、適した人材を探していたところへ、丁度ヤツェクと鉢合わせた訳である。
「リトルワイバーンが脱走した件については、知っているか?」
 エッボはヤツェクら、イレギュラーズに解決を頼みたい依頼について、早急に切り出した。
 島への往来に非常に有用なリトルワイバーンは、難民や物資を運搬するために重宝されていた。そんな一途に働くワイバーンたちが地上で休んでいたところ、天衝種(アンチ・ヘイヴン)の襲撃に見舞われたのだ。
「天衝種自体は追い払うことができたが、すべてのワイバーンを引き留めることはできなかった……充分な数のワイバーンを確保できていない今の状況では、難民受け入れにも支障が出る。早急に連れ戻すべきだ」
 そう語るエッボは、ワイバーンの捜索場所に大よその見当をつけていた。天衝種に驚いて逃げ出した複数のワイバーンは、パラミダ鉱山付近の森に向かった姿が最後に確認されている。その一帯を捜索すべきだと提言するエッボに対し、ヤツェクは真顔で言った。
「エッボ、一緒に探すつもりなんだろう?」
 一瞬の間を空けて、エッボは聞き返す。
「何のことだ?」
「人手は多い方がいい。仕事熱心なのは実に良いことだ」
 当然のごとくエッボがワイバーン捜索に参加する流れで話を進めようとするヤツェクだったが、エッボはそれを制止する。
「待て。こういうのはお前の方が得意だろう? 俺のようなお荷物では助けにならない」
 努めて穏やかな口調で切り抜けようとするエッボだったが、ヤツェクは最も有効な切り札を掲げてきた。
「その様子じゃ酒を仕入れる暇もないんじゃないか?」
 ヤツェクは、先ほど愚痴を漏らしていたエッボのことを指して言った。
「――いい酒を差し入れしてもらったんだ。お前もどうだ?」
 ヤツェクからのその一言は、エッボにとっては抗い難い誘惑だった。今にも生唾を飲み込みそうな表情のエッボは、ヤツェクの期待に沿う返事をした。
「………………協力しよう」

GMコメント

 地上とアーカーシュ島との流通を支えるリトルワイバーンたちだったが、天衝種の襲撃を受けて脱走してしまう。計7頭のワイバーンたちが、パルミダ鉱山近辺の森の中を彷徨っているものと考えられる。
 避難を希望する難民が増えつつある状況において、ワイバーンを失うことは痛手である。独立島アーカーシュ、軍部非主流派に属する軍人らは、イレギュラーズの働きに期待を寄せていた――。
 すべてのワイバーンを連れ戻そう!

 ※こちらのラリーシナリオは2章構成です、各章の採用人数は、5~10人程度を予定しています。
 プレイング内容はあらゆるケースを想定したもので構いません。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●アーカーシュについて
https://rev1.reversion.jp/page/sabgunnbu

●特殊ドロップ『闘争の誉れ』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争の誉れ』がドロップします。
 闘争の誉れは特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●目的
 計7島のワイバーンの捜索、駐留地に連れ戻す。

●リトルワイバーンたちについて
 逃げ出したワイバーンは計7頭。
 元々調教されていて人慣れしたワイバーンなので、手懐けることは容易である。(発見後、そのまま騎乗することもできる)

●エッボ・ザサーレについて
 ワイバーン捜索のサポートをしてくれます。ワイバーンを誘き寄せるためのエサ(主に鶏肉)など、捜索に必要な物資諸々を提供してくれます。
 エッボは、軍用のライフル銃(通常レンジ3)を所持しています。

●捜索場所について
 時刻は正午過ぎ。
 パラミダ鉱山周辺には、天衝種や山賊と化した元囚人らの姿も確認されている。ワイバーン捜索中に遭遇する恐れもある。
 本格的な冬期の到来により、雪が降り積もり始めているが、地形不利になるほどではない。

●天衝種について
 鉱山周辺では、ラタヴィカ(流れ星のように光の尾を引く、亡霊のような怪物)とジアストレント(巨大な樹に変じた魔物。普段は一切動かず、獲物が来るのを待ち構えている)の存在が報告されている。
 ジアストレントは隠密性能に優れ、静止して大きな樹に擬態している。一旦動き出すと、巨木を駆使した強力な一撃(物近列【飛】)を放つ。また、地上に張った根から栄養を吸い上げているのか、再生能力に優れている。植物と変わらない面もあるので、弱点は推察しやすい。
 ラタヴィカは俊敏性や機動力に優れており、戦場を縦横無尽に飛行し、高威力の体当たり(物超貫【移】【乱れ】)を行う。また、怒りを誘発する強烈な閃光(神中範【怒り】【暗闇】)を放つ。


 個性豊かなイレギュラーズの皆さんの参加をお待ちしています。

  • <咬首六天>その盃を満たすまでは完了
  • GM名夏雨
  • 種別ラリー
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2023年01月13日 20時30分
  • 章数2章
  • 総採用数12人
  • 参加費50RC

第2章

第2章 第1節

 焚き火の炎を見つめていたエッボはつぶやいた。
「そろそろ見つかってもいい頃だが――」
 エッボは立ち上がり、隈なく周囲を見回す。すでに近くの樹の幹には、半数のワイバーンがつながれていた。そのワイバーンが何かの気配を察したように、一斉に頭をあげた。エッボもほぼ同時に、木々の間から覗く複数の人影に気づく。
 反射的にライフル銃を構えたエッボは、その人影に向かって呼びかけた。すると、6人の男たちが幹の影から姿を現し、じりじりと距離を詰めてくる。男たちのいずれも、鉄騎種らしい特徴が窺える。
 エッボの銃を警戒して身構えつつも、鉈を持った男の1人が声を張り上げる。
「その竜をよこしな! 身ぐるみ全部置いてけ!!」
 目の前の獲物に、どの男もぎらついた視線を送る。殺気立つ山賊に囲まれた状況に対し、エッボは冷静に相手をする。
「身ぐるみ全部?? 冗談だろ? 風邪を引いたらどうしてくれるんだ――」
 軽口を叩きながら相手の気を引いたエッボは、即座に上空に向かって引き金を引いた。
 エッボが装填していた閃光弾は、激しい破裂音の直後に上空で眩い光を発した。救援信号を意味する閃光弾は、ワイバーンの捜索を続けていた者、あるいはワイバーンを連れてエッボの居場所を目指していた者らにも広く認識された。

●2章目の成功条件
 山賊6人の撃退(生死問わず)。


第2章 第2節

マルク・シリング(p3p001309)
軍師

「皆、あの光を目指して急いで!」
 撃ち出された閃光弾に気づき、『浮遊島の大使』マルク・シリング(p3p001309)はワイバーンらと共に宙を駆けた。
 保護された2頭のワイバーンはマルクに付き従い、エッボのいる地点を目指す。ワシにも似た甲高い鳴き声を発しながら、その2頭のワイバーンはエッボや山賊らの頭上を旋回する。
 上空から地上の山賊らを威圧する2頭に対し、マルクはもう1頭のワイバーンにまたがった状態で山賊らへ接近した。
 「独立島アーカーシュのマルク・シリングだ!」
 マルクは、山賊らに向けて言い放った。地上までの高度を下げる間にも、マルクは掲げた片手に魔力を集中させる。マルクから放たれた激しく瞬く閃光が視界を遮り、山賊らは神々しい光によって力が抜けていく感覚を味わう。
 山賊らから遮るように、マルクはエッボの前にワイバーンと共に降り立った。
「今のは警告だよ。武器を置いて大人しくするなら、これ以上攻撃はしないし、話も聞こう」
 突如生じた閃光の眩さによって動きを封じられる山賊らに向けて、マルクは声を張り上げる。
「――けれど、それができないというなら……君達の無事は保証できない」

成否

成功


第2章 第3節

ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
祝音・猫乃見・来探(p3p009413)
祈光のシュネー

 天衝種を排除した『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)と『祈光のシュネー』祝音・猫乃見・来探(p3p009413)は、1頭のワイバーンを見つけた直後に閃光弾の光や音に気づいた。
 「エッボさん?!」と口走ったヨゾラは、祝音と顔を見合わせるなり、ワイバーンの背に飛び乗った。祝音も夜空の後に続き、2人を乗せたワイバーンは目標地点へと急行した。
 エッボやマルク、山賊らの姿を見つけ、ヨゾラは降下し始めたワイバーンから飛び降りるようにして着地する。森林を保護するため、身構えた祝音は抜かりなく保護結界を展開する。
 ヨゾラの方へ視線を向けた瞬間、無数の黒い塊が山賊らに向かって飛び出した。揺蕩う穢れを力に変え、それを黒泥へと変化させたヨゾラは一挙に山賊らを襲撃する。
 山賊らが反撃する間もなく、祝音は攻撃を畳みかける。張り詰めた糸のように張り巡らされた魔力――気糸の斬撃が山賊らを襲い、いくつもの切創を刻んでいく。
 ――僕等の、大切な仲間に手を出したんだ。
「……生きて帰れると、思わないで」
 山賊らに対し敵意を露わにする祝音の鋭い眼差しは、普段のおとなしい雰囲気とは異なるものだった。
 これ以上解放された多くの囚人を野放しにしておくことはできない、という思いがヨゾラにはあった。後顧の憂いを絶つためにも、険しい表情を覗かせるヨゾラは覚悟を決めた様子で討滅に臨む。
 山賊の1人──山賊Aは致命傷を避けるため、祝音の攻撃から身を翻し、大きくよろめいた。ヨゾラはその瞬間を狙い、即座に山賊Aとの距離を詰める。
 一瞬の瞬きを放つ流星のごとく、強い光に包まれたヨゾラの拳は凄まじい破壊力を宿す。ヨゾラから魔力を集中させた一打をゼロ距離で放たれ、山賊Aは勢いよく突き飛ばされる。激しく強打された衝撃によって、山賊Aは雪上を転がったまま起き上がることはなかった。
 山賊Aが倒れてもなお、武器を降ろす気配のない山賊らに対し、向き直るヨゾラはつぶやく。
「ワイバーン達に、手出しはさせない」
 ──略奪するような輩の思い通りにはさせないよ!
 ヨゾラに向かっていこうとする山賊たちだったが、ヨゾラを援護する祝音の攻撃を掻い潜れる者はいなかった。降り積もった雪の上を走る衝撃によって雪が飛び散り、視界が白むほどだった。
 連携を強めるヨゾラと祝音は、山賊らへ引導を渡そうと攻勢を強めていく。

成否

成功


第2章 第4節

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)
無限円舞

 一足遅れて合流した『剣の麗姫』アンナ・シャルロット・ミルフィール(p3p001701)と『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)は、山賊と相対するエッボらの状況をすぐに飲み込んだ。
「HAHAHA! ミーに任せておきな」
 意気揚々と現場に乗り込む貴道に続き、アンナも剣を構える。
 ──出遅れたけど、出番がないことがなくて良かったわ。
「元気が有り余っているの。一つお相手願いましょうか」
 アンナは、即座に山賊らの前に踏み込んだ。振り抜かれたアンナの剣は、雪の結晶を帯びて白くきらめく。魔力を帯びたアンナの一太刀は、やすやすと山賊Cを捉え、その刃を喉元に達する寸前で止めた。
「大人しく投降するなら、この場で命までは取らないけれど。どうするの?」
 アンナが慈悲を示した直後、鉈を手にして振りかぶった山賊Dは、猛然と襲いかかる。しかし、瞬時に反応したアンナは山賊Dの鉈を剣で受けとめ、勢いよく弾き返した。予想を上回るアンナの動きに怯んだ山賊Dは、その一瞬の内に斬り捨てられる。
 アンナが山賊Dの相手をする間にも、貴道は他の山賊を引きつける。ナイフや棍棒で貴道に立ち向かう山賊たちだったが、貴道を仕留めるには到底及ばない。連続で攻撃をかわす貴道は、一分の隙もない体さばきを見せつける。
 山賊らの身のこなしを鼻で笑う貴道は、山賊Eの苛立ちをあおった。がむしゃらにナイフを振り回す山賊Eは、貴道の間合いに引き込まれたも同然であった。まっすぐに獲物を捕らえた貴道の拳は、山賊Eの体を激しく突き飛ばす。そのまま昏倒した山賊Eは、山賊Fを巻き込んで雪上に倒れ込んだ。
 筋骨隆々の肉体を武器に立ち回り、圧倒的なパワーを見せつける貴道。残る山賊Fを追い詰めた貴道は、余裕の態度を崩さずに言葉をかける。
「この寒空の下、揃いも揃ってご苦労なことだ。ご褒美くれてやるよ」
 バキバキと指の関節を鳴らす貴道は、その一言で山賊Fを戦慄させた。
「あったまるぜ、天然の血飛沫のシャワーさ? HAHAHA!」
 野放しにすれば、略奪行為を繰り返すに違いないと考え、アンナもすでにもう1人の動きを封じていた。
 進退を決断する間もなく、仲間は
次々と追い詰められ、窮地に立たされた山賊Fは青ざめた様子で立ち竦む。

成否

成功


第2章 第5節

ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)
タナトス・ディーラー

 ──じゃあブランシュは……聖女の奇跡を見せるとしましょう。
 『後光の乙女』ブランシュ=エルフレーム=リアルト(p3p010222)は、憐れな山賊Fに道を示そうと行動に出る。ブランシュは自らの飛行能力を駆使し、その体を静かに浮かび上がらせる。更に聖女らしい声色に変えることで準備を整え、アンナや貴道に向けられていた山賊Fの注意を引きつける。
 美しさと神々しさを兼ね備えた聖女の声に誘導され、山賊Fは上空のブランシュの姿を見上げた。
「彷徨える子らよ。武器を置いて、人々に分け与えなさい。我が名は後光の乙女──」
 運までも味方にしたかのように、そう語るブランシュの頭上では、曇天の雲間から太陽の光が差し込む。まるで後光に包まれるかのような錯覚を起こさせ、ブランシュの姿を見つめる山賊Fは目を細めた。
「従えば我ら革命派の名において、汝らの罪を許さん。そして平和への道を共に歩みましょう」
 降伏の意思を示すように、山賊Fは膝をついてくずおれる。しかし、その不意を突くようにして上空を旋回していたワイバーンが舞い降り、山賊Fへと激突した。
 エッボは、山賊Fの頭を片足で踏み締めるワイバーンの下へ慌てて駆けつける。
 ワイバーンの手綱を引くエッボは、気を失っているだけの山賊Fを確認した後、ブランシュに尋ねた。
「それで、こいつはどうする? 改宗でもさせるか?」

成否

成功


第2章 第6節

 エッボは残された山賊Fを拘束する旨をイレギュラーズに伝えた。
「他の囚人の居場所にも、心当たりがあるかもしれない。協力感謝する」
 手綱を引かれるワイバーンは、しきりに鼻先でエッボを小突き始める。ワイバーンにせがまれるように、エッボはその顔をなでてやりながら言った。
「……少しは羽を伸ばせるくらいに、俺も落ち着けるといいんだが」
 凍るような寒さに文句を言いつつも、ワイバーンを撫でるエッボの眼差しは穏やかなものだった。

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