シナリオ詳細
<咬首六天>地中で蠢動する『憤怒』
オープニング
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新皇帝バルナバスが即位後、鉄帝は6つの派閥に分かたれる。
南部戦線の英雄ザーバ将軍率いるザーバ派(南部戦線方面軍)。
我関せずと政治不干渉を貫くラド・バウ独立区。
ギア・バシリカを中心に民の救済を願う革命派。
ノーザンキングスに抗する戦力を持つポラリス・ユニオン(北辰連合)。
空浮かぶアーカーシュに拠点を持つ、独立島アーカーシュ。
様々な思惑が駆け巡るこの国において、現在注目されているのは不凍港と地下鉄の存在だ。
鉄帝において、冬のあまりにも過酷な季節。
その到来に当たって食料、物資の補給路を確保することは死活問題にすらなりうる。
各勢力はそれを凍結港、もしくは地下鉄に求めたのだ。
革命派は帝都スチールグラードから見て東側に位置する『鉄道施設ルベン』を抑えることに成功した。
持ち前の技術力を生かし、革命派は施設内で発見された歯車兵なる古代文明の兵器を行使するまでになっている。
イレギュラーズの投票により、歯車兵の約3割をモンスター駆除に、もう約3割を探索に、残りを難民キャンプの防衛に当てているとのこと。
「すごいです。現状、用途は限られるそうで、革命派の皆さんで応用できる方法を考えているそうですね」
『穏やかな心』アクアベル・カルローネ(p3n000045)は古代の技術を流用するのではなく、今の技術で応用できる手段を考えていることに感嘆していた。
ただ、この施設を新皇帝派も斥候を繰り返すことでその所在をつかみ、あわよくば占拠して利用しようとしているのは間違いない。
「新皇帝派にこれ以上、力を与えてはなりません」
派閥に属する軍人が少数の部下を斥候に向かわせているという情報もある。
こちらとしても更なる調査を進めたいところだが、新皇帝派が奪還に来ると言うならば阻止せねばならない。
「今回、鉄帝の将校が天衝種を引き連れ、少数で斥候を行うとの情報が入りました」
アクアベルも未来視で可能な限りその状況を確認したそうだ。
軍人は3名。いずれも鉄騎種であり、腕章から中尉1名、少尉2名とわかっている。
少尉2名が前に出て攻める一方で、指揮を執る中尉は後方から火力のある銃砲を使うようだ。
「天衝種はラースドールが厄介な相手です。ヘイトクルーは機銃型で中尉の少し前から銃撃を仕掛けてくるようです」
前者は少尉と、後者は中尉と近い位置で攻めてくるはずだ。
中尉が定期的に前線の士気を高め、態勢を立て直す。
真っ先に注意を切り崩したいところだが、戦場は狭い地下通路でとなる為、幅も高さも満足にとることができない。
いかにして、敵部隊を切り崩すかが勝利の鍵となるだろう。
「調査を行いたい状況だとは思いますが、何とぞ力をお貸しください」
深々と頭を下げ、アクアベルは説明を終えたのだった。
●
帝都東に位置する『鉄道施設ルベン』の調査は、歯車兵と呼ばれる施設の遺物が進めてくれていた。
鉄帝の情勢もあって、活動するイレギュラーズの多くがこの国の為にと汗水たらして作業し、あるいは戦っている。メンバー達とて避ける手間は有限であり、できることは限られる。
それだけに、こうした自動人形が得られたことは革命派にとって大きい。
ザッザッザッ……。
少数で斥候を行っていた新皇帝派の軍人部隊。
「なんだ、これは」
男性中尉が単騎で活動する歯車兵を発見する。
自律して活動を行う機械人形……これが得られるなら、無駄に部下を疲弊させずに済むし、兵糧の問題も軽減されるかもしれない。
「天衝種より使い勝手がいいなら、是非とも上に提言すべきだが……」
「中尉、こちらに近づいてくる集団が」
女性少尉の声を聴いて我に返った中尉が耳を澄ます。
奥から近づいてくるのは、間違いなくイレギュラーズ。
手配書に載っている者も多く。倒して武勲を挙げられれば、ヴェルクルス中佐を通して昇進も……。
そこまで考えを巡らせた中尉はにやりと笑って。
「迎え撃つ。前線は任せるぞ」
「「ハッ」」
軍人達は布陣をとり、前方からやってくる革命派を迎え撃つのである。
- <咬首六天>地中で蠢動する『憤怒』完了
- GM名なちゅい
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年12月29日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談6日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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『鉄道施設ルベン』。
鉄帝内で放置されている地下鉄を思わせる遺跡を訪れたイレギュラーズは、構内をあちらこちら見回して。
「随分と広大な地下施設が眠っていたものだねぇ」
この発見が革命派にとってありがたいものであるのは間違いないと『闇之雲』武器商人(p3p001107)は断言する一方で、当然新皇帝派も目をつけているわけだと考察する。
「此処が何処に繋がっているのか……」
『復讐の炎』ウルフィン ウルフ ロック(p3p009191)はこの施設に興味が尽きぬようだが、今は目の前の問題を片づけていくことが重要だ。
「今回の仕事は地下道を調査しに来る新皇帝派を倒す事だ」
そこで、『侠骨の拳』亘理 義弘(p3p000398)が改めて仕事内容を確認すると……。
「グロース死すべし!! ……って、あれ? 今回は妖怪性悪陰険ロリ婆グロース案件じゃなかった!」
「青空のコ……」
そんなケアレスミスを暴露する青空の精霊種、『嵐を呼ぶ魔法(砲)戦士』マリオン・エイム(p3p010866)さんに、武器商人が呆れていた。
なお、ギフトによって男女切り替え可能なマリオンだが、今回は距離戦闘メインとあって女性モードで参戦している。
「物資を行き渡らせて冬を越え、人々の連携を繋げて新皇帝派を退けるには……地上の鉄道と港だけでは足りない」
先頭で発光しつつ前方の視界を確保する『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)は、前方の古いレールの上を照らしながら仲間達へと呼び掛ける。
隣には同じく発光する『ドラネコ配達便の恩返し』ユーフォニー(p3p010323)が歩く。
彼女は天井付近へとドラネコの使い魔リーちゃんを飛ばし、五感共有しつつ索敵もこなす。
「地下鉄も俺達で押さえるぞ。……それに、あの魔種を次こそ倒すためにもその暗躍は追わねばならない」
イズマもエコーロケーションを使うことで索敵しつつ力強く告げる。
魔種となったヴェルクルス中佐は新皇帝の為にと様々な策を講じており、あちらこちらでその名を耳にする。
中佐はこのルバンにも斥候隊を派遣しており、情報だけでなく、歯車兵など使える物まで持ち帰ろうとするはずだ。
「難民を守る為にも使われている歯車兵を奪われるのは避けたいところだ」
義弘は振り返り、後方からついてくる歯車兵10体を注視する。それらは主に『竜剣』シラス(p3p004421)が指示を与えていた。
「あっ……」
「いるな」
そこで、ユーフォニーやイズマが前方に待ち構える一隊を発見する。
「狭い場所での戦いになるが、うっかり壁や柱にぶつけちまわないように気を付けねぇとな」
身構える義弘は仲間達にも注意を促す。
「止まれ。……革命派。加えてローレットイレギュラーズだな」
こちらに静止を促したのは、新皇帝派の男性中尉。
無論、イレギュラーズは止まらず、その一隊に接敵していく。
「何を思って新皇帝派についたんでしょうか。この国はこんな状況なのに……」
「大人しく諦めてくれれば、と思うのですが……。魔種の言葉に従うのですね」
「……止まれ、次は撃つぞ」
ユーフォニー、『未来への葬送』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)の呟きが聞こえたのか、中尉は警告無視と判断して部下達に戦闘態勢をとらせ、威嚇してくる。
「知らないならまだしも、知っているうえで……」
上の意向を理解した上でなお忠実に職務を全うしようとする新皇帝派の軍人達を前に、マリエッタは頭を振って。
「銃を向けるのならば……私は、これ以上多くの悲しみを生み出させたくはないのだから、戦います。確実に、冷静に」
一隊との交戦を決意し、マリエッタは両腕を伸ばして刻まれた聖印を光らせる。
「ここは譲ってもらうぞ」
「そうはさせん。あの機械兵を含めて我々が占拠させてもらう」
イズマもまた力強く告げれば、中尉も一歩も退かぬ気概を見せる。
「ギアバシリカあっての歯車兵だ、テメーらには扱えねえぞ。それよりも逃がさねえからな?」
「ほう、歯車兵というのか」
シラスの言葉に、中尉はにやりと笑って返す。
(出来れば、将校3名のうち1人は捕虜にしたい)
(ウルフロックの旦那の言うとおりだな)
武器商人のハイテレパスによって、ロックが仲間内にだけ告げた。
さすがに、相手が本当に歯車兵を知らないということはないだろうが……。
ロックが言うように、相手側が現状でどれだけの情報を掴んでいるのか把握しておけば、この後の作戦に活かせるかもしれない。
「調査の邪魔をされるのも困るし、お引き取り願うとしようか。ヒヒヒヒヒ!」
ともあれ、目の前の部隊を撃退せねば、満足な調査もままならない。
武器商人の一言を皮切りとして、地下通路での戦いが始まるのである。
●
施設内とあって、戦場となる通路は狭い。
この状況で対する新皇帝派軍人は鉄壁のラースドールを前に出し、すぐ後ろに少尉2名が剣と散弾銃で。中尉がヘイトクルーと共に射撃を行う布陣。
事前に得ていた敵情報を元に、イレギュラーズも策を練っていて。
(イズマが敵の背後に回り込み、退路を断つ作戦を取る)
現状、イズマは成り行きを見守っている状況だが、ハイテレパスで自分達の作戦を再確認した義弘は正面から敵と対する。
ただ、初撃は彼等が行うわけではない。
予め、誘いの魔力を全身から充満させていたユーフォニーは仲間達から大きく先んじて前に出ており、すでに戦闘態勢に入っていた。
(巻き込まれないように気を付けねぇとな)
義弘のハイテレパスによる呼びかけを受け、メンバーは一時ユーフォニーから距離をとっていく。
(皆さんを支えませんと)
回復役として戦線を支えようと動くマリエッタも、天より降る光輪によってユーフォニーの命中精度を高める。
マリエッタの支援を受け、高速詠唱するユーフォニーは多くの敵を捉える。特に、後方の中尉は確実に捕捉して。
「……それは、世界。私だけの世界」
最大限に集中した彼女は万能遠距離攻撃係長『今井さん』と持ちうる力全てをその音に込める。
「今井さんと私の最大威力……聞いてください」
高まる魔力がユーフォニーを中心に広がり、軍人や天衝種を包み込む。
それだけでは終わらず、ユーフォニーは続けざまに音の波を展開して。
「この機は逃しません」
「「……!」」
「「ぐあああっ!!」」
続けざまに放たれた威力ある音色に、敵陣が大きく仰け反る。
それと同時に、他メンバー達が一気に動き出す。
(革命派が苦労して注いだ技術力の賜物だ。ここは活躍して貰うぜ)
シラスは歯車兵を含め、仲間達が宙を舞えるよう術式を展開する。
(仕掛ける)
ギフトによって、「化ケ之皮」が剥がれたロックは本来の獣の姿となっていて。
(狭い場所での戦闘で敵の背後に回る……というのは行動範囲的に困難を極めるだろう)
愚直であっても正面から接敵することにしたロックは敵先頭に立ちはだかるラースドールを優先討伐対象とし、爆発的なスピードで相手に迫る。
状況的に一番槍とはならなかったが、ユーフォニーの一撃で崩れかけた敵陣にロックは最高の破壊力を籠めた骸槍を突き入れる。
義弘はユーフォニーの次なる攻撃に気を払うが、ロックが接敵したことで自身も続くことに。
少し間隔を開けて攻撃モーションをとった義弘はもう1体のラースドール目掛けて肉弾戦を挑み、殺人術を叩き込んでいく。
ラースドール達は態勢を立て直せず受けていたが、すぐ後ろの男女少尉は態勢を整え直して剣撃を仕掛けてくる。
さらに、ヘイトクルーも機銃を発射してくるが、狙うは浮遊していたシラス。
ただ、彼の手前にいた歯車兵2体がその銃弾を受け止めてくれる。
(さすがに纏めて貫通攻撃で狙われてはかなわないからな)
どうやら、中尉はレーザー砲を所持しており、こちらを纏めて狙い撃つ事を想定していたはずだ。
その目論見を潰しつつ、シラスは射角を活かして無数の見えない糸を展開し、中尉を狙う。
「最初の標的は中尉さん!」
マリオンは飛行せずに可変式カースド魔術杖をステッキモードにする。
前線メンバーもまだ接敵している人数も少なく、その隙間を縫うようにマリオンは魔砲を発射すると、張り巡らされる糸が軍人や天衝種を切り裂く中、敵陣を襲う。
態勢を整え直したラースドールが拳を振り上げてきたところで、武器商人が前に出て破滅の呼び声を発する。
長い前髪で瞳を隠す武器商人は口元を釣り上げて。
「はいはい、陣形なんて悠長なことを考えないで。我(アタシ)を殺しにおいで?」
前線の敵は言葉に誘われるように、攻撃を繰り出す。
それを受けながらも、武器商人は自身へと注意が向いていない敵をしっかりと見定め、再度呼び声を発する準備を進めていた。
仲間達が攻撃するのを一通り見終えたイズマも飛行する。
事前に用意していた瞬間加速装置を使い、イズマは5体の歯車兵と共に敵の頭上を通り抜けた。
「なに!?」
「前線だけで戦うと思うなよ、挟み撃ちにしてやる!!」
後方へと回り込み、着地したイズマ。
これで、イレギュラーズは狭い地下通路で新皇帝派軍人を挟み込み、退路を断つ形となる。
「こいつらを生かして帰せば、ここの位置がばれるんだろ? なら、逃がしてやるわけにはいかねぇよな?」
義弘は仲間を巻き込まぬよう注意し、目の前のラースドールへと雷撃を纏わせた拳を叩き込む。
装甲の厚さを感じた彼は掌打へと切り替え、送り込んだ気によって内部から破壊するよう切り替えていた。
「ああ、捕まえて中佐の情報を得たい」
シラスも中尉を中心に攻撃を重ね、堕天の輝きを敵のみに浴びせかけて呪いを与える。
低空飛行ではあるが、命中が下がる分は技術で補い、狙いを定めて。
「…………!」
効率的に中尉を攻めたいところだが、ヘイトクルーが庇ってくるのが邪魔だと判断したシラスは、衝撃を起こしてそいつを吹っ飛ばす。
「良い攻撃だ、竜剣の旦那」
さて、最前線では、防御態勢を固める武器商人がラースドールや中尉の猛攻を一身に受け止め、敢えて傷を負うことで攻撃準備を着々と整える。
マリエッタはそんな仲間達の状況を見つつ、癒しをもたらす。
「普段の私がどう伝わっているのかはわかりませんが、ある程度の柔軟性はあるのですよ?」
とりわけ、頭上のシラスが攻撃されるのにマリエッタは着目し、まずは号令を発した。
さらに、マリエッタは広範囲に聖体頌歌を響かせ、多くのメンバーを癒すよう立ち回る。
この間も、逆側からはイズマが歯車兵と共に攻めていて。
「武勲も情報も持ち帰らせないからな」
名乗りを上げるイズマは前線にいた注意を強引に後方側へと引きつけ、歯車兵による銃撃の合間に細剣で冷たい一撃を見舞って強く怒りを誘う。
「貴様、許さんぞ……!」
支援を忘れ、中尉はイズマ目掛けてレーザー砲を発射する。
その中尉を前線から纏めて、ユーフォニーが連続魔で撃ち抜く。
(イズマさんや他の人達を撃たないように……)
貫通力の高い術とあって射線が重要になるが、ユーフォニーは仲間を巻き込まぬようにしっかりと中尉を含む敵だけを捕捉していた。
同じくマリオンもまた術で敵を討ち抜いていたが、彼女は指揮別できるチェインライトニングを行使する。
「びっくりしたらごめんね!」
そう呼びかけるも、もちろん仲間に影響はなく、新皇帝派のみを射抜く。
前線が足りてなければ前にと思ったマリオンだが、自身の一撃でラースドールが倒れたこともあり、その必要はないと判断したようだ。
前線からの攻撃はその後も続く。
少尉2名が顔を顰めて剣撃、銃撃と繰り返す手前で、ラースドールの巨体がぐらりと揺らぐ。
最速、最高の破壊力を籠めた最速の斬撃を見舞っていたロック。
その身同様獣性、凶暴性を開放した彼は傷を負って力を高める。
痛みこそが我の力と謂わんばかりに。
蛇腹鞭の連撃を浴びたラースドールは、身体を維持できなくなり、ガラガラと音を立てて崩れ去る。
壁役を失い、背後をとられた中尉が冷静さを欠いたことで、イレギュラーズは一気に攻勢を強めて。
大柄な敵が沈み、ユーフォニーは余裕をもって仲間達が立ち回ることで開けた射線を縫うように、魔術を展開し、手前の女性少尉を撃ち抜いた後方のヘイトクルーを倒してしまう。
続けざまに放たれるマリオンの雷撃。
それによって感電したヘイトクルーを、シラスと共に後方へと飛んだ歯車兵が波状攻撃を浴びせかけて切り裂き、消し去ってしまった。
そのシラスは変わらず中尉を中心とし、堕天の輝きを煌めかせる。
耐えようと踏ん張る女性少尉だったが、重圧を伴う光に耐えきれず倒れていく。
「そろそろか」
残る敵が少なくなったこともあり、イズマが前方側の歯車兵を下げさせる。
「貰うぞ!」
好機と男性少尉が散弾銃を連射してくるが、頭上に気をとられたそいつへと義弘が迫って。
「確実に仕留める。堅気の皆さんを守る為にも、な」
ラースドールには通じづらかった雷撃の拳も、鉄騎種であれば十分。
ここまで気丈に戦っていた男性少尉もまた同僚の後を追うように地に伏していく。
少し前方では、武器商人が中尉と残るヘイトクルーを抑える。
全身に負う傷を力に変え、武器商人は集中して渾身の魔力で創造した魔剣で中尉の体を一閃した。
歯を食いしばる中尉もバズーカ砲を直接武器商人へと叩き込む。
傷の深まる武器商人はギリギリのところで堪えるが、かなり厳しい状態。
(冷静に………確実に支えて戦う)
すかさず、マリエッタが仲間を支えようと頭上に光輪を降らせる。
「それが……より悲しみを減らすことになるはずですから」
武器商人が持ち直したことで、マリエッタは安堵の息を漏らしていた。
その間に、マリオンが魔弾を発射し、ヘイトクルーの体を穿ってその体を消し去ってしまう。
残るは中尉ただ1人。挟み込まれたそいつは、武器商人の一撃で追い込まれ、肩で息をしてしまっている。
動きを鈍らせた中尉目掛け、「響奏撃・弩」で攻撃を繰り返していたイズマがここぞと高い防御力を打撃へと転じて。
「地下通路はお前達には渡さない!」
「う……あぁ……」
激しい一打がクリーンヒットし、中尉は白目を剥いて崩れ落ちていく。
「さあ、中尉さんは倒したよ、降伏するなら今だよ!」
マリオンがそう敵陣へと呼び掛けるのだが。
対していた新皇帝派の一隊は全て倒れており、彼女の声は地下通路にこだまするのみだった。
●
新皇帝派を撃退し、イレギュラーズはまだ動くことのできる歯車兵達に捕らえた軍人らの捕縛、戦闘場所の瓦礫撤去など事後処理を任せて。
「一応、調査してみよう!」
意気揚々と叫ぶマリオン。
この施設の実態を調べるのはもちろんだが、新皇帝派が偵察用天衝種を派遣させていたり、別動隊が歯車兵を持ちだしたりすれば大変なことになるとマリオンは語る。
「何か調べていたものはないかな!」
陽気に問いかけるマリオンは、どんな些細な事でも教えて欲しいと続ける。
淡々と作業する歯車兵の中には掘削に動く個体もある。マリオンも今歩いている場所からさらに地下へと注目していた。
ユーフォニーは引き続き発光して光源を確保しつつ、あちらこちらに設置された設備や施設の構造について調べ始める。
イズマもまた光を放ち、耳を澄ませて作業に当たる。彼はファミリアーも使い、マッピングセットを使って逐一設備の場所などをチェックしていく。
「使えそうな物が眠っている感じはするねえ」
武器商人もまた見取り図を通して変わった物が見えないかとじっくり見まわしていた。
そうして、限られた時間での調査を進める間に、女性少尉が目覚める。
「もしかしたら、生きる為の選択や軍人の律として、本音を殺して従ってるだけだったりするかも!」
そう思ったマリオンが問いかけるのだが……。
「くっ、殺せ!」
どうやら、本心から新皇帝派についていたようで、少尉はこちらの説得に応じる様子はない。
「聞きたいことがある。楽にはさせんぞ」
睨みつけてくる少尉へ、人間種の姿をとったロックが尋問する。
小隊含め、新皇帝派の調べていたモノの確認を行うが、口を噤んだまま。
「あと……、鉄帝周辺地域で【赤ずきん】の姿を見た者はいないか」
少尉はほとんど応えず、睨むか視線を逸らすばかり。
元々、碌な情報は手に入らないだろうと踏んでいたロックだが、やはりかと嘆息していた。
しばらく、探索を続けるイレギュラーズ一行だが、依頼完了報告もあって撤収することに。
「回収できる歯車兵は回収してしまうか」
調査を続ける歯車兵を見て、義弘がそう提案する。
残念ながら、有用な機材を確保することはできなかったが、一行は動きを止めた数体を回収し、引き上げたのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
リプレイ、公開です。
MVPは敵陣を飛び越え、中尉を撃破した貴方へ。
今回はご参加ありがとうございました。
GMコメント
イレギュラーズの皆様こんにちは。GMのなちゅいです。
鉄帝はなおも混乱の最中。様々な思惑が入り乱れる中、新たな流れが……。
●目的
調査中に遭遇した新皇帝派の撃退
●状況
鉄道都市ボーデクトンの地下に大規模な地下鉄(地下道)が発見され、新皇帝派も少数部隊による斥候を進めています。
帝政派としても地下鉄の調査を進めつつ、これらの活動を阻害せねばなりません。
遭遇した新皇帝派の撃退を願います。
戦場は幅4~5m、高さ10m程度と狭い中での戦いです。
希望があれば、歯車兵(全長は一般成人男性ほど)を5~10体参戦させることが可能ですが、動きづらくなったり、敵に接収されたりする可能性が発生します。
戦闘だと近距離の格闘、中距離の銃撃が可能です。また、事後処理をお任せできますので、戦闘外で控えさせておくのもよいでしょう。
事後は若干ですが、調査も可能です。
さほど時間がとれぬ為、成果に期待はできませんが、出来る限りのことを行うと何かあるかもしれません。
●敵
○新皇帝派軍人将校×3名
男性中尉1名と少尉男女各1名。憤怒の魔種ヴェルクルス中佐直属の部下です。
抜きんでた力をもっており、戦いにおいても実力を発揮してイレギュラーズを排除しようとしてきます。
少尉2名が剣と散弾銃を使って前線からの攻め、中尉が後方からレーザー砲、バズーカ砲を使い分けつつ、部下や天衝種の支援回復も行うようです。
○天衝種×5体
・ラースドール×2体
古代遺跡から出土したパワードスーツに怒りが宿り、動き出した怪物です。
非常にタフな機体で、ハンマーのような長い腕による高威力の打撃と合わせ、機銃掃射を行います。
・ヘイトクルー(機銃型)×3体
周囲に満ちる激しい怒りが、陽炎のようにゆらめく人型をとった怪物です。
機銃のような幻影による怒り任せの射撃や掃射で物理中~遠距離攻撃してきます。
○ヴェルクルス中佐
元鉄騎種男性、30代。新皇帝派に属し、自らも憤怒の魔種となり果てています。
今回対する部隊に斥候を指示した張本人です。
●特殊ドロップ『闘争信望』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran
●情報精度
このシナリオの情報精度はAです。
想定外の事態は絶対に起こりません。
それでは、よろしくお願いいたします。
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