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シナリオ詳細

<咬首六天>第一次調査:ボーデクトン地下通路

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●ボーデクトン地下
 さて――激しい戦いの末、帝政派は鉄道街、ボーデクトンの奪還に成功してた。
 地上の鉄道網の再利用にはもう少し時間がかかるだろうが、それはそれとして、探索を行わなければならない箇所が、ボーデクトンには存在する。
「地下、じゃな」
 と、バイル・バイオン(p3n000237)は、あなた達イレギュラーズ達へとそう言った。
「地下? 確かに、ボーデクトンのアンダーグラウンドの一部を、我々は拠点としていましたが……」
 軍人風の男がそういう。彼の名はイズルード。ボーデクトン内部に有志と共に潜み、反新皇帝派活動を行っていた部隊だが、今回のボーデクトン奪還に伴い、帝政派へと合流していた男だ。
「詳しくは我々にもわかりません。そもそも、何故ボーデクトンの地下に、あのような広大な地下道が広がっていたのかも」
「ほう、ボーデクトンを縄張りとしていた大尉でも分からんか。仕方あるまい。
 地下通路についての情報は少ない。正直、わしも『それが存在する』という事こそは知れど、そこに何があるのかまでは分からん」
 バイルがそういう。バイルが知らないという事は、おそらくほとんどのものが、地下の実情などは知るまい。バイルが知らない、と言ったという事は、つまり地下とはほぼ未知の空間である、という事だ。
「じゃが、人の手は入っておるようじゃ。帝都にもその資料があった……流石に持ち出せんから、確たる情報は今手元にはないが。
 かつては、地下通路を地下鉄のように運用したという事もあり……つまり、上手く地下を利用できれば、南部やラドバウ、革命派の連中と合流し、話をつけることができるかもしれんし」
「地上を敵と遭遇せずに、帝都迄攻め込める可能性がある、ということか」
 イレギュラーズの一人がそういうのへ、バイルは頷いた。
 つまり、地下を隠密の通路として運用できないか、という事である。ただ、前述したとおりに地価はほぼ未知の空間であり、何が残っているのか、何がないのか、そもそもどのような意図で作られたものなのか、はっきりとわかるところは少ない。
 これは道の遺跡へのダンジョンアタックにも似ている作業である、という事であった。そして、地下道は決して広いとは言えず、大規模な部隊を運用するには向かない……。
「となれば、私たちの出番なのですね?」
 そういうイレギュラーズに、大尉はふむん、と頷いた。
「確かに、ローレット・イレギュラーズなら少数精鋭での探査が可能だ。こういった迷宮調査にもなれているだろうからな……」
「うむ。そこを、皆に任せたいのじゃ」
 バイルがそういうのへ、あなたは力強く頷いた。攻めるにしても守るにしても、地下の探索を行っておいて損はあるまい。しかし、とイズルードが声をあげる。
「地下は危険です。我々のベースキャンプ辺りは何とか維持できていましたが、その先となると、全く未知の場所なのです」
「大尉、敵がいたりするのか?」
 尋ねるイレギュラーズへ、イズルード大尉は頷いた。
「少なくとも、天衝種は確認している。奴らがいるのならば、新皇帝派も何らかのアプローチをかけているとみていいだろう」
「うむ。じゃがそれでも……いや、新皇帝派が何かをしているが故に、地下に手を伸ばすのはなおのこと重要だと思っておる」
 バイルがそういうのへ、イズルードは頷いた。
「ふむ。では、まずはこうしませんか? 我々が拠点に使っている洞窟部があります。そこから移動し、ボーデクトン東部の方へ向かう。
 我々の先行調査で、駅のような場所があることが発覚しています。そこを制圧するのです」
「腕鳴らし、という訳か」
 イレギュラーズの言葉に、イズルード大尉は頷いた。
「それに、各陣営にアプローチするにしても、東部方面のルートと拠点を開拓するのは損にはならないだろう?」
 その通りだ。であれば、これは地下探索の第一歩となるはずだ。
「うむ。では、委細、よろしく頼みたい」
 バイルの言葉に、皆は頷いた。
 かくして、地下探索行が始まろうとしていた――。

GMコメント

 お世話になっております。洗井落雲です。
 我々は鉄道網を手に入れました。
 次は、地下に目を向けてみましょう……。

●成功条件
 東部『地下鉄駅』の制圧

●情報精度
 このシナリオの情報精度はCです。
 情報精度は低めで、不測の事態が起きる可能性があります。

●状況
 これまでの調査により、鉄帝国地下には大規模な地下通路が眠っていることが発覚しました。
 しかし、地下通路の内部は、まさに未知の存在。何があるのかは全く不明で、調査を必要としています。
 そのため、早速ですが、地下調査を行う事となりました。
 皆さんはボーデクトン中央駅から地下に降り立ち、東部『地下鉄駅(のようなもの)』を目指して移動してもらいます。
 道中では、おそらく天衝種による襲撃が予測されます。地上から紛れ込んだのか、新皇帝派閥が放ったのか……詳細は分かりませんが、いずれにせよ、皆さんの障害となることは確かなのです。
 地下鉄道は、基本的には、現実の地下鉄構内のような、コンクリートと破損した線路が続く道となっています。ですが、横道にはそうではない天然の洞窟などもあり、迷路のように入り組んでいることでしょう。
 今回は、ひとまず横道などは確認するだけし、『地下鉄駅』を目指して進んでください。
 イズルード大尉が同行しますので、迷うことはないと思います。
 なお、内部は暗く、明かりなどがあると有利に働くでしょう。

●エネミーデータ
 天衝種の群れ ×???
  おそらく道中、および『地下鉄駅』にて遭遇することになります。
  亡霊のような、人型兵士風の怪物『ヘイトクルー』は、剣術や銃撃による攻撃を行う、取り巻き人間敵のような存在で、最も多く遭遇する雑魚となるでしょう。出血系列のBS付与にご注意ください。
  『プレーグメイデン』はアンデッドのモンスターです。『毒』や『狂気』をまき散らす、皆さんを惑乱してきます。
 そして、中ボス級の天衝種として、『ギルバディア(狂紅熊)』が登場するでしょう。強力な、近接レンジの物理攻撃の一撃は厄介です。近づかれる前に倒すか、上手くヘイトを誘導して被害を抑えましょう。
  上記の天衝種たちが、混成部隊として出現するでしょう。何度か戦う事になりますので、準備は怠らないでください。

●味方NPC
 イズルード大尉
  ボーデクトンでゲリラ活動を行っていた、元鉄帝軍人の大尉です。今は部下と共に帝政派に合流しています。
  そこそこ強力なインファイターとなっています。放っておいても死ぬことはないでしょう。
  彼がいれば、道に迷うことはないです。仮に戦闘不能になっても大丈夫ですが(死なないように撤退するので)、そうなると、探索の難易度が少々あがってしまうかもしれません。


●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

 以上となります。
 それでは、皆さんのご参加とプレイングを、お待ちしております。

  • <咬首六天>第一次調査:ボーデクトン地下通路完了
  • GM名洗井落雲
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年12月29日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)
祝呪反魂
武器商人(p3p001107)
闇之雲
藤野 蛍(p3p003861)
比翼連理・護
桜咲 珠緒(p3p004426)
比翼連理・攻
岩倉・鈴音(p3p006119)
バアルぺオルの魔人
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色
夢野 幸潮(p3p010573)
敗れた幻想の担い手

リプレイ

●いざ、地下へ
 ボーデクトン北部より、地下へ――。
 広大な地下洞窟には、かつてボーデクトンにて新皇帝派に抵抗していた部隊が本拠としていたという痕跡がまだ残っていた。
 武器の入っていたと思わしき木箱。蒸気式発電機と、ボロボロの白熱電球。明確な生活の跡が見えるそこに、イレギュラーズたちは降り立っていた。
「ここだけなら、ただの地下洞窟といった感じだけれど」
 あたりを見回しながら、『闇之雲』武器商人(p3p001107)はそういう。
「いやはや、広いようではあるようだねぇ。それに……なぜだろうね、随分と冷え込むようだ。
 手足の冷えは大丈夫かい、ベルンシュタインの方?」
 そういう武器商人に、ベルンシュタイン――『祝呪反魂』レイチェル=ヨハンナ=ベルンシュタイン(p3p000394)が肩をすくめる。
「あァ、まぁ、な。
 そっちも風邪なんかひかねえようにな? 『随分と寒い』。イズルード大尉、前々からこんなに寒かったのか?」
 尋ねるレイチェルに、同行者であるイズルード大尉――ボーデクトンで反・新皇帝派に対してのゲリラ活動を続けていた――は、不思議そうに首を傾げた。
「いいえ……これほどまで『寒い』と感じることはなかったはずです。
 でなければ、藤野さんがここに降り立つ前におっしゃっていた、民を寒さから守るためのシェルターに利用する、という案にうなづいたりはしませんよ」
 イズルードは、ここを拠点としていた。その彼が『異様に寒い』と感じるということは、何かがあったのではないか、と察することができる。名前の揚げられた、藤野……『比翼連理・護』藤野 蛍(p3p003861)は、むむ、とうなって見せた。
「正直、予想外よ……地下だから少しは寒いとは思ってたけど、これじゃ地上と大して変わらない。むしろ……」
 ぶる、と肩を震わせる。どこから来たのだろう? 冷たい風があたりを駆け抜けていっているように感じられた。『比翼連理・攻』桜咲 珠緒(p3p004426)が、労わる様に、蛍の肩に手をやった。
「大丈夫ですか? 羽織れるものをお貸しするのです」
 桜色のストールを手渡しつつ、珠緒が言う。蛍は微笑んだ。
「ありがと、珠緒さん。ねぇ、皆は大丈夫?」
「んー、私はまぁ、大丈夫」
 そういって笑うのは、『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)だ。
「でも、確かに変だよね。ほんとに寒いなら、大尉が事前に教えてくれるだろうし」
「となると、ここ最近に異変があったのか?」
 ふむん、とうなる『絶海』ジョージ・キングマン(p3p007332)。
「冬に……連動するように?」
「確かに、今年の冬はひどいみたいだけど」
 うなづくのは、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)だ。
「外の厳しさが地下にも波及している、とみるか……それとも、だな」
「新皇帝派も、地下で何かしてるんでしょ?」
 そういうのは、『敗れた幻想の担い手』夢野 幸潮(p3p010573)だ。ふむ、と口元に手をやり、わずかに思考する。
「となると……やっぱり、何か関係がある……と思うのは考えすぎでもないわね」
「何が目的かにしても、新皇帝派が動いてるのは事実なのよね?」
 蛍がうんうん、とうなづいた。
「でしたら、地下に何かがあるのは、きっと間違いないと思うのです。それが、どのようなものをもたらすかはわからないにしても」
 珠緒が言葉を引き継いだ。仲間たちはうなづく。
「ふむ……となると、なおのこと、皆さんの力を借りるのは適切ということになるな……」
 イズルード大尉がうなづくのへ、鈴音が少しばかり楽しげに笑いながら言った。
「鉄帝国の地下には謎の地下道があった!
 われわれ鈴音探検隊は東にあると言う地下駅に向かって前進する!!
 ……って感じだ! 何はともあれ、まずは地下鉄駅に向かわないとね!」
「ヒヒヒ、そうなるねぇ」
 武器商人がうなづく。
「果たして、鬼が出るか蛇が出るか。あるいは狼なんてものが出るかもね?」
「フローズヴィトニル、か。じゃあここは、狼の巣穴か?」
 レイチェルが肩をすくめるのへ、大尉は頭を振った。
「おいおい、あれはおとぎ話だろう? まさか実在なんて……」
「しないとも言い切れまい?」
 ジョージが答える。
「そういった、『伝説の化け物』と、私たちは戦ってきた。一概に『いない』なんて言えないくらいには」
「だとしても、今は、地下鉄を輸送ルートとして使えれば、と思うよ」
 イズマが言う。
「より安全に物資の輸送ができるだろうからね。地下を抑えるメリットは大きい」
「そうねぇ。この先を見ればわかると思うけど」
 幸潮がそういう。ここは例えるなら、大通りから抜けた裏道のよう場所にあたる。大通り、つまり地下道の主流の方へ向かってみれば、なるほど、かなりの広さの道が広がっている。足元は、舗装された跡があることが分かって、保守されていない線路が残っている。補修すればまだ使えるだろうか。もちろんその分の手間は発生するが、一から設置するよりはずっといいだろう。
「見てください。私の『イスカンダル(強襲用装甲ピックアップトラック)』も悠々と走れるこの広さ。
 確かに、ここを輸送ルートにできれば心強いでしょう」
「そのためには、安全確保が重要になるな」
 イズマが言った。ゆっくりと腰をかがめて、ちりや土埃の積もった地面に視線を送る。何か巨大な足跡が見えた。それに、何か、足を引きずるようなものも。人間のものではあるまい。かといって、まっとうな獣のそれでもないことは明白だった。
「天衝種、か。大尉の言ったとおりだ」
 イズマの言葉に、レイチェルがうなづく。
「ちょっと調べてはいおしまい、じゃなさそうだ」
「戦闘もバリバリってわけだねぇ」
 鈴音がそういう。
「道の方は、こちらで確認している」
 イズルード大尉が言った。
「案内はできると思う。ここは少々、入り組んでいるから、迷わないにこしたことはないだろう」
「了解。イズルードさんに無理はさせられないな。戦闘では俺達が頑張るよ」
 イズマの言葉に、イズルード大尉は申し訳なさそうにうなづく。
「……面目ないな。皆さんに頼るのが一番だとはわかっているが」
「適材適所、でしょう?」
 蛍が言った。
「何でもやれれば理想だけれど、そういうわけにはいかないもの。
 ボクたちには、正解のルートはわからない。でも、イズルードさんにならわかる」
「珠緒たちも、頼りにしていますよ」
 珠緒が柔和な笑顔を浮かべた。イズルード大尉がうなづく。
「なら、先に進むとしようか」
 ジョージがそういった。
「イスカンダルを中心に進もう。ライトもつくし、拠点にするには十分だ」
「ライトオーン! ポチっとなっ!」
 幸潮がイスカンダルのライトを照らす。ハイビームのそれが、道行の奥までを照らしていた。線路の続く先には、なるほど、けだものの息遣いのような気配が感じられる。敵はいるのだ。そして、この先は無数の、入り組んだ通路が広がっている……。
「じゃあ、行こうかい?」
 ヒヒヒ、と武器商人が笑った。果たしてゆっくりと、一行は歩を進め始めた。

●地下の道
 ヘイトクルー、ヒト型の怪物であるそれが、鋭く怒りに燃え立つ剣を振り下ろした――炎をまとう斬撃。それを受け止めた(おそらく、受け止めたのであろう。その所作、現実について、厳密に判断することは我々にはできない)武器商人が、ヒヒヒ、と哂って見せた。
「ちょうどよい温さだ。でも、それじゃあ、地下の冬の寒さには耐えられないんじゃないかい――?」
 そうつぶやいた刹那、ばちん、と指が鳴った。レイチェルの放った火焔禁呪が、ヘイトクルーをその憤怒の炎のうちに飲み込む。
「お前のヘイトとやらも、少しばっかり温かったなぁ」
 レイチェルがそういう。その表情、右半身が、ほのかな赤の燐光に輝いていた。一方、相対するは憎悪の怪人ばかりではない。腐り肉の怪物、アンデッド・プレーグメイデンのような存在もまた、イレギュラーズたちに敵対していた。きぃぃぃ、という金切り声が、心のうちの不安と狂乱を掻き立てる。魔のこもる叫びは、その音に毒の色をのせて、イレギュラーズたちの体を蝕んだ。
「ちっ……ここはカラオケボックスじゃないんだがな」
 わずかに顔をしかめつつ、ジョージが毒づいた。狂気には陥らないとはいえ、あのきぃきぃした声が頭の中で反響し、がんがんと痛む。
「カラオケボックスでも、あんな音痴は勘弁だ!」
 イズマが叫び、その夜空の細剣をふるった。プレーグメイデンの首が胴体と泣き別れとなる。その隣、突撃したジョージが、プレーグメイデンの顔面を殴りぬける。ずだん、と強烈な音を立てて地面にたたきつけられたプレーグメイデン。二体のゾンビの体が、じゅわ、と炎に包まれて消えた。
「プレーグメイデンの声を、イズルードさんに届けさせないで!」
 蛍がそう声を上げる。プレーグメイデンによって付与される『狂気』や『毒』。それをイズルード大尉が受けてしまった場合、彼に対してのダメージは計り知れない。イズルード大尉が深い傷を負ってしまった場合、彼は地下から離脱せざるを得ず、そうなれば『道案内役』を失ってしまう。イレギュラーズたちの探索効率が下がることは避けられないのだ。
「イスカンダルの後ろへ。戦闘は珠緒たちにお任せください」
 珠緒がそういうのへ、いささか悔し気に、イズルード大尉はうなづいた。
「すまない……! 役割の問題とは言え……」
「大尉は私たちの命綱だからね。
 イレギュラーズの前衛どもはBS無効な鬼どもよ。安心して火の粉を払うに専念してください」
 鈴音が声を上げる。その手にかざした術書が輝き、聖なる光を周囲に降臨させた。その聖光が、イレギュラーズたちの身の内を蝕むものを打ち消していった。
「効かない人もいるけど、そうでない人もね!」
「そうね! さ、AP(気力)も回復回復!」
 と、幸潮がその手を掲げると、きらきらとしたエフェクトとともに、何か数字のようなものが躍った。よくわからないが、APが数字分回復した、というエフェクトらしい。イレギュラーズたちにその意図することは不明だが、少なくとも力が湧き上がってくることは確かだ。
「さて、ひとまずこんなところ?」
 幸潮の言葉に、仲間たちはうなづいた。遭遇した敵はあらかた片づけた。いまだ道中ではあったが、何度目かの遭遇と、進んだ時間から、大部の距離を進んできたことは確かだ。
「間に、いくつもの『支線』がありましたね」
 珠緒が言う。
「あれらは、どこにつながっているのでしょう。こう、不謹慎かもしれませんが、地下鉄を歩いて探索しているようで、少しわくわくとしてしまいます」
「ふふ、ボクも、それ、わかるなぁ」
 蛍がほほ笑む。
「実際探検だからね。今日は最短距離を進んでるけど、そのうちほかのルートを開拓したいかも」
 鈴音がその言葉にうなづいた。実際、今日は『駅』の確保が主目的だ。ほかの探索は、後日になるだろう。
「レイチェル、地図はどんな感じだ?」
 ジョージが言うのへ、「あァ」と声を上げて、レイチェルが紙片を見せてみせた。
「結構、入り組んでるな。地下鉄に利用した部分もあるし、そうでない天然のものもある。誰かが掘り進めたのかもな」
「探索するならば、そういった横道。輸送ルートに使うなら、地下鉄部分を確保するのがよさそうだねぇ」
 武器商人が言うのへ、仲間たちはうなづいた。
「主要幹線だけでも確保しておきたいな……」
 イズマが言う。
「そうだ。大尉、『駅』まではどれくらいなんだ?」
 レイチェルの言葉に、イズルード大尉はうなづく。
「ああ、もうすぐだ。警戒は怠らないでほしい」
「なるほど、ね。じゃ、イスカンダルも少し控えめにエンジン吹かそうかしら?」
 幸潮がそういう。ぶぶん、とうなりつつ、イスカンダルのアクセルを踏んだ。徐々にそれが動き出すのに合わせて、一行が進む。それからほどなくして、広い空間が目の前に広がっているのが見えた。線路を中心にして、左右に広い空間が広がっていた。
「なるほど。確かに、駅のほーむのようにみえるのです」
 珠緒が言う。その言葉通りに、一見すれば、そこは駅のホームのように見えた。右手の奥にはどこかへ通じるような道があって、左手の方にはガラス窓と扉が見える。部屋があるのだろう。管理部屋だろうか? ホーム自体はなかなか広く、収容するだけなら百数十、といった人数を収容できるかもしれない。
「シェルターにも使えそうだね……寒さをなんとかできれば」
 蛍が言うのへ、イズマがうなづく。
「やっぱり中継地みたいな場所なのか?」
「こっちは……休憩室か?」
 ジョージが、左手のガラス窓から中をのぞく。工具や機材が半ば放棄されたような、作りかけの部屋が見えた。床に転がっているのは、この場所の設計図だろうか……?
「作りかけて放棄されたといった感じだ」
「あちらの階段はどこにつながっているのかな?」
 武器商人が言う。
「奥の方にも道がありそうだが……とにかく広い。後で部隊を送った方がいいだろうねぇ。ただ、その前にここを確保しないといけない」
「あー、これでめでたしめでたしとは言わないですよねぇ」
 幸潮が声を上げる――同時! 轟! 強烈な雄たけびが響いた。ずどん、ズドン、と巨大な足音が響く――ぐあん、と壁を粉砕して現れたのは、巨大なクマのような怪物である!
「ギルバディアか! ここにもいたな!」
 鈴音が叫ぶ。ギルバディア。巨大な熊のような姿をした天衝種だ! 壁の奥から現れたのは、二体のギルバディア。そして追従するように、プレーグメイデン、ヘイトクルーの姿も見える!
「どの敵も道中でも戦ったけど、これほど総出なのは……ここで決戦って感じかな?」
「ちょうどいい。こいつらを片付けて、拠点入手と行くか」
 レイチェルが凄絶に笑う。その半身が、魔力の燐光で赤く輝いた。
「じゃあ、やろうかね、みんな。ギルバディアは我(アタシ)が」
 ぞあ、と武器商人の気配が変転する。何か、恐ろしいものの気配が、ギルバディアを包み込んだ。あれを、倒さねばならぬ――! ごうあ、と二体のギルバディアが吠え、突進! 武器商人がその一撃を『受け止め』た。
「さ、はじめておくれ?」
 ギルバディアの攻撃を抑えながら、武器商人が言う。イズマが駆けた。その細剣を指揮棒を振るように、鮮やかに、鋭く振るって見せる。
「さぁ、こっちだ! お前たちの相手は、俺だ!」
 ひきつけられたヘイトクルーたちが、イズマに襲い掛かる――振り下ろされた炎の刃を、イズマはその細剣で魅せるようにいなしてみせる。
「空間破砕、描写崩壊――崩れて消えろ!」
 幸潮が手にした万年筆を空間に突き刺す――同時、ヘイトクルーたちの『描写が壊れた』。ヒト型のそれは瞬く間に『歪み』『肥大化し』『あるいは収縮し』『目は大きく』『鼻は小さく』『口はミクロに』『体はマクロに』『不明の』それにぐちゃぐちゃと、崩壊! 耐え切れず、ばぢん、と音を立てててヘイトクルーたちが爆散し、消滅する!
「プレーグメイデンを抑える!」
 ジョージが叫び、プレーグメイデンへと殴り掛かった。きぃぃ、と悲鳴を上げようとするその口に、こぶしを叩き込む。そのまま殴りぬけると、プレーグメイデンが壁にたたきつけられた。もう一体のプレーグメイデンが襲い掛かろうとするのへ、ジョージは再びこぶしを握ると、そのままに殴りつける! 顔面が勢いにちぎれて吹き飛ぶ。そのまま、じゅわ、と炎に包まれてプレーグメイデンが消えていった。
「大尉は下がってくれ! こちらは私たちで処理する!」
 ジョージの言葉に、イズルード大尉はうなづいた。ここまでくれば、もうイレギュラーズに任せるのが一番いいだろう。一方、鈴音がパチン、と指を鳴らす。同時に放たれたラサの熱砂が地下に巻き起こり、プレーグメイデンたちを飲み込み、その砂のうちに滅ぼしてしまう。
「よし! あとはギルバディアだけ!」
「任せて! 珠緒さん、ボクが隙を作るわ!」
 蛍が叫ぶ。同時に、きっ、とギルバディアをにらみつけた。ふわり、とその髪が風に舞う。桜吹雪が巻き起こり、ギルバディアをそのうちに包み込む。自失の波に、ギルバディアが落ちる。落ちる――刹那、珠緒がゆるりとその手をかざす。同時に、世界を包み込む紫色の終焉のとばりが、ギルバディアを包み込んだ!
「あなたに、蛍さんの桜吹雪はもったいないですね」
 ギルバディアが情緒を理解するとも思えないが、大きく隙を作ることには成功していた。終焉のとばりは、そのままギルバディアを飲み込み、消滅させる。残り、1。
「地上は取り換えしたばかりでなァ」
 レイチェルが笑う。
「地下もそのまま、すべて戴く」
 レイチェルがその手をかざした。その寸前の空間に魔法陣が描かれ、そこから憤怒の火焔が吹きあがる! 天衝種の怒り、それをすらを上回るであろう、憤怒の焦熱。それがギルバディアを飲み込み、強烈な爆発とともにこの世界から消滅させていた。
「ひとまず制圧、だな」
 レイチェルの言葉に、
「鮮やかなものだ」
 イズルード大尉が感心したように言う。
「すぐに部隊に連絡をつけよう。ここを制圧するための人員を呼ぶ」
 その言葉に、仲間たちはうなづく。
 地下探索の第一歩、その作戦は成功裏に終わった――。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ご参加ありがとうございました。
 皆様の活躍により、『地下鉄駅』の確保に成功。
 さらに地下探索は進むことでしょう。

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