PandoraPartyProject

シナリオ詳細

誘いの森のアリス

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●あの子が呼んでいる
 幻想と鉄帝の間には、紛争地帯をさけながら進むことのできるルートというものがいくつか存在している。
 だがそのうちの一つ『ストレリチアルート』が数年前から通行不能になったという。
 情報を受けたパサジール・ルメスのキャラバンが調べを進めてみると、ある都市伝説に行き当たったのだった。

「ああ、モンテカルロの海風よ……」
 瓶に入ったオレンジ色の酒をあおる白髭の老人。
 黒いソフトハットに黒いビジネススーツ。その上にはミンクのロングコートというどうにも辛気くさい男だが、彼から漂うのはむしろ火薬の香りであった。
 男の名は『レーツェルマン』。パサジール・ルメスに所属する武器商人である。
「武器を売ると、なぜだか責任を負われる。人が死ぬのは銃のせいだとされる。だがこうは思わんかね。引き金を引いたのは自分だろうに……と」
 酒をもういちどあおり、レーツェルマンは顔の左端だけで笑った。
「今回の話もそうさ。ワシぁ職業柄随分な外道を見てきたが、まあとびっきりな逸話だよ」

 レーツェルマンが語ったのは、ある少女と銃のお話だった。
 少女は母の言いつけで、離れ家に住む祖母へと届け物をしていた。
 ワインとリンゴとパンをいくつか。バスケットにそれぞれ詰めて、森を行く。
 平和な森は小さなリスや可愛らしい小鳥や、時に綺麗な色の蝶がいた。
 だがその日だけ、ふと花をつむことを思いついた少女は道を外れ、森へと入ったのだ。
 森の奥は暗く、奇妙な空気が漂っていた。
 不思議な雰囲気にはしゃぐようにさまよっているうち、少女はあるたき火を見つけた。
 たき火のそばには一人の男。
 興味本位で声をかけたその少女は。
 ――それきり、世に姿を見せることはなかった。

「男は幻想の地を追われた犯罪者でね。森に隠れて暮らしていたそうだ」
 その場に居合わせるイレギュラーズたちの顔ぶれを見て、レーツェルマンは渋い顔で酒を飲み干した。
「まあ、なんだ……男の犯罪というのは、少女がらみでね。その後男はどうなったと思う」
 進んでいた馬車が、ぴたりと止まった。
 グルルといううなり声が、暗い森から聞こえてくる。
 森はまるで道を消し去ろうとするかのように闇が濃く、その内側には何かが待ち受けていた。
 ゆっくりと武器を構え、立ち入ればわかるだろう。
 赤いずきんを被った。
 白いスカートを纏った。
 闇色の人狼の姿が。
 周囲からわき上がる無数のアンデッドたち。
 そのほとんどが少女のものだと、かろうじてわかった。
 うち一つだけ違う、大人の男のアンデッド。
 レーツェルマンは殻の酒瓶を投げ捨てた。
「ああなったのさ」

GMコメント

 今回はパサジール・ルメスのキャラバンがひとつ『レーツェルマン一行』の護衛および商路開通業務の依頼を請け負いました。
 皆さんは『誘いの森』と呼ばれるエリアに侵入し、道を塞いでいるモンスターおよびアンデッドの群れを駆除します。

●モンスター『人狼アリス』
 パワー(攻撃・CT)、スピード(命中・回避、EXA)、機動力に優れたモンスターです。
 二足歩行をし、狼に似た外見をしています。身の丈はおよそ2メートルほどあり、太い腕や牙などで攻撃します。
 ※ここでいうのは『名も知らぬ少女』の代名詞としてのアリスです。ルイス・キャロルは関係ありません。

●アンデッドの群れ
 森に発生している無数のアンデッドです。
 近接攻撃を主とし、かなり考え成しに群がってきます。
 比較的対処しやすく、
 戦いづらさがあるとしたら団子状に群がるので無移動貫通攻撃のラインに沢山入らなそうってことくらいです。

【かき分けのススメ】
 戦闘を有利に進めるにはとにかくアンデッドが邪魔です。
 人狼アリスは機動力でがんがん振り回すため、そのたびに組み付いたりブロックをかけたりしてくるアンデッドが邪魔になり一方的にやられるおそれがあります。
 そのため序盤はアンデッドを倒すことに集中しましょう。
 (このとき人狼アリスの抑え要員をつけておくとダメージコントロールが楽になります。ただしその場合は戦力差が激しいので必ず2~3人で交代するようにしてください)
 半数以上を減らせたら改めて人狼アリスに対応してください。ここからは抑えとか関係なしにぶん回してくるので、総力戦かつ短期決戦を狙うのをお勧めします。なぜかというと相手は回避性能こそあれど防御技術やHPはずば抜けて豊富ってわけじゃないのでダメージ覚悟のごり押しが有効なのです。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 誘いの森のアリス完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月13日 21時20分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

鏡・胡蝶(p3p000010)
夢幻泡影
ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)
ノベルギャザラー
シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)
悪食の魔女
石動 グヴァラ 凱(p3p001051)
ボルカノ=マルゴット(p3p001688)
ぽやぽや竜人
セレネ(p3p002267)
Blue Moon
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)
ココロの大好きな人

リプレイ

●誘いの森のアリス
 現状をふりかえろう。
 幻想と鉄帝の間でたびたび行なわれる闘争は勢力の南下をはかる鉄帝とそれをのらりくらりとかわす幻想の戦いによってあちこちが塗りつぶされているが、互いの利益やその他諸々が共通する時いくつかの抜け道を作ることがある。
 パサジール・ルメスのキャラバンがひとつ『レーツェルマン一行』はその抜け道のひとつであり、抜け道を知る者のひとりである。
 彼らの持っている抜け道『ストレリチアルート』は昨今発生した都市伝説的怪物の出現により封鎖。今回はその封鎖されたルートの開通と、それに伴う怪物の退治がローレットに依頼されていた。
 あちこちが暗闇に呑まれたような森。
 低くなる人狼と、数えきれぬほどのアンデッド。
 それらにじりじりと囲まれていながら、『夢幻泡影』鏡・胡蝶(p3p000010)は余裕をもって身構えた。
「随分可愛らしい名前で呼ばれている狼さんね。赤い頭巾を被ってスカートを揺らす愛らしい姿のまま眠らせて差し上げましょうか」
 一方で『悪食の魔女』シズカ・ポルミーシャ・スヴェトリャカ(p3p000996)は迫るアンデッドたちを追い払うべく構える。
「都市伝説というと、総じて不気味なものが多いですが、ただ今回のこれは……不気味というか、やるせないというか……」
 同じく重火器を構えて隊列を組む『ぽやぽや竜人』ボルカノ=マルゴット(p3p001688)。
「うーん……お話、我輩にはよくわかんなかったのである。男が死んだ? というのくらいしか。それより、すごく強そうな人狼……こわい……! こわいけど! お仕事頑張る!」
 ナイフを両手でパスするようにして構える『ノベルギャザラー』ジョゼ・マルドゥ(p3p000624)。
「アンデッドの親玉が人狼ってだけ分かれば充分。ホラー小説もビックリのリアルだ。これ以上現実で悪さが出来ねーように、お話の世界に戻してやるよ」
 その一方で『blue Moon』セレネ(p3p002267)は十字架を握りしめていた。
「死してもなお彷徨っているのなら、早く楽にしてあげたいです。生きてるときがあったのだから、変わり果てた姿、きっと見たくないのです……」
「アンデットは、自分達をどう思っているのかしら。今に満足して、敵意を持って私達に攻撃しているのかしら?」
 『お節介焼き』華蓮・ナーサリー・瑞稀(p3p004864)は手を翳し、いつでも攻撃ができるように構えている。
「完全に無意識なのかしら? それはそれでいい。自分達の体に悲しみ、助けを求めているのかしら? それなら、何をしてあげられるかしら」
 一度言葉にしてみて、それでも変わらないのだと頷いた。
「分かってる、今は結局倒すしか無いのだわ」

「言葉巧みに騙して連れ去り獲物を狩ってこそ人狼だ。単純に数で押し潰すのなら、それは獣の狩りだろうに。何れにせよ私の仕事は君達の排除さ。銀の弾丸にはなり得ないかもしれないが。悪戯に被害を増やす輩は大人しく狩られて欲しいな?」
 『蒼ノ翼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は宝晶箋エフェメラという特別な栞を魔導書に挟んで見せた。
 静かに、そしてどこか厳かに最前列へ立つ石動 グヴァラ 凱(p3p001051)。
「関係など、無い。嘗ては悲劇があったやも、知れぬが、全ては過ぎ去った。此処に其の、名残があると言うならば。砕いて徹す……」
 両手の拳を打ち合わせる。
「それだけ、だ」
 無数のアンデッドが、人狼アリスが、彼らへと襲いかかった。

●交わされぬもの、消えるもの
 凱が両手の拳を打ち合わせた時、あちこちから別のアンデッドが生まれてたちあがった。
 襲いかかってくるあれこれとは異なる、もっと古い死体のなれはて。もしかしたらかつての国家間戦争によって生まれた死体。
 それらが少女のアンデッドたちと組み合うようにしてぶつかり合う。
「死者には眠り、を、安らかな、眠り、を。そう、あるべきだ」
 アンデッドたちの盾を抜けて飛びかかってくる少女のアンデッドに、凱は機械鎧を召着。異常なほどバランスのとれた姿勢で構えると、殴りかかってくるアンデッドを逆に拳で粉砕した。
 そのままアンデッドの群れへ突撃し、両腕を振り回すような豪快な動きでアンデッドを次々と破壊していく。
 死体の劣化によって腕や足の接続が弱くなっているのか、破壊されたアンデッドはよく腕や首といった部位の端っこを吹き飛ばした。
 自分の足下に飛んできた腕が、まだ何かを探すように指を動かしているのをみてボルカノは重火器の引き金をひいた。
「本当はアンデッドもやーであるが! こんなにいっぱいだと怖いとかそういう話じゃないのであるー!!」
 右へ左へやたらに重火器を乱射し、時折SADボマーを投げ込んでいく。
 アンデッドの攻撃射程が大体至近距離であるためにうまいこと(仲間をさけて)SADボマーの攻撃範囲を確保できないのが難点だったが、使えないってほどでもないようだ。
 そんな爆発の隙間を縫うように走る胡蝶。
 狙うは、男性のアンデッドである。
 話を聞く限りはこの都市伝説の元凶。本当に悪かった人間。
 組み付こうとする少女のアンデッドを手刀で壊してうちはらうと、胡蝶は目的のアンデッドを見つけた。
「いつか誰かがやるだろうけれど。今は私がやっておくわ」
 うなり声をあげて組み付こうとする男のアンデッド。
 胡蝶の経験上、ろくなことをしていなさそうな顔だった。その顔面にハイキックを浴びせ、頭部ごと粉砕。
 倒れた所を強かに踏みつけ、あばらをめちゃくちゃにへし折った。
 ふと、風が動く。
 何かが近づく。
 高速で走る狼のような気配に振り向けば、それは人狼アリスであった。
 爪を振りかざし大きな口を開く。
 それを遮ったのは華蓮の魔力撃であった。
 注意をひくように放たれた攻撃は、本当にわずかながら華蓮への注意をひくに至った。
 華蓮を先に攻撃するか、最初から攻撃対象としていた胡蝶を選ぶか。たった一瞬にも満たない逡巡に……ジョゼが鋭くナイフを差し込んだ。
「まずはオイラに付き合ってもらうぜ! ぶっちゃけオイラ好みじゃねーけどな!」
 組み付きにかかるジョゼ。それを振り払うのは人狼アリスにとって容易なことだったのだろう。ジョゼのあたまを掴み、恐ろしい力で振り回し、そして投げ飛ばす。
「ぐわっ!?」
 空中を複雑に回転し、樹幹に激突するジョゼ。
 それでも人狼アリスをフリーにせぬため、セレネが思い切りタックルを仕掛けに言った。
「皆さんの邪魔はさせませんよ! しっかりお相手させて頂きます!」
 わずかによろめいた人狼アリスだが、それも一瞬たらず。爪がセレネに突き刺さり、酷く切り裂いていく。
 それを一旦耐えきったかと思いきや、首を掴んで高く吊り上げられた。
 セレネは苦しみに耐えるように歯を食いしばり、仲間に『今のうちに』というサインを送った。
 そして、確かに見たのだ。
 赤いずきんの下。
 狼のように歪んだ口や耳の中で僅かにのこった少女の右目が、悲しげに涙をたたえているのを。
 ジョゼや華蓮が、再び組み付いていく。

「さあさあ森に蔓延るアンデットの大掃除」
 ルーキスはショーでも始めるように両腕を広げて見せて、色鮮やかな魔術結晶をあちこちに浮かべた。
 踊るように腕を振れば、結晶が次々にアンデッドたちへと発射され朽ちかけた肉体を破壊していく。
 弾幕を抜けて飛びかかるアンデッド。
 その手が届くかいなかというタイミングで、激しい熱線がアンデッドの肉体を貫いた。
 見れば、シズカが美しいサーベルを突き出す姿勢をとっていた。
「せめてひと息に! ……フレイム・ボルト!」
 振り返り、別のアンデッドへ向けて剣を振り込む。魔術の乗った剣技が遠いアンデッドを切り裂いては破壊する。
 それを乗り越えて飛び込んできたアンデッド、シズカは剣で素早く切り裂いた。
 魔術の光が軌跡を描き、ルーキスはさらなる魔術を描き出す。
 ルーキスの呼び出した悪魔のような影が、開いた本から飛び出した。

●あの子は泣いていた
 歯を食いしばる華蓮。
 本来なら当たるはずのなかった魔力の衝撃が、約2パーセントの運命的隙間を抜けて人狼アリスへ直撃する。
 吹き飛んだ人狼アリスは地面を転がり、むくりと起き上がった。
 周囲はこれまでにないほどに静まり、そして暗い。
 あちこちに転がっているのは死体だけで、そのどれもが動きを止めていた。
 ただ森には闇があり、闇の中に人狼アリスが立っていた。
 息を吸い込むように上向いて、華蓮と視線を交わす。
 人狼アリスの目から、真っ赤な涙があふれるように零れだした。
「    !」
 何かを言ったように聞こえたが、それを聞き取るよりも早く人狼アリスは駆け抜けた。
 食い止めようとしたジョゼやセレネや、間に入ろうとしたシズカもまとめて吹き飛ばし、森を駆ける闇となる。
 闇そのものを飲み込むように、人狼アリスが膨らみ、そして迫った。
「噛まれたり引っかかれたらいやであるがー……! 逃げてられないのである!」
 ボルカノは足を止めて人狼アリスめがけて重火器を撃ちまくった。
 数発の直撃。一方で、前衛のマークをすり抜けた人狼アリスの爪がボルカノの腹にめり込んだ。
 いや、爪をたてることが目的ではない。腹を殴ることが目的だったのだろう。
 ボルカノは吹き飛び、縦向きに転がりながら樹幹を二つほど破壊した。
 飛び退くように距離を取るルーキス。
 呼び出した悪魔のような存在をけしかける。
「よろしくね、相手はその人狼だ」
 けしかけた存在が人狼アリスに襲いかかる。
 急所こそ外したものの、無防備な肉体を派手に切り裂いた。
 一方で、呼び出された存在を掴み、無理矢理に引きちぎってかき消してしまう。
「何がどうして人狼になったか知らないけどね。他人の命を狙う以上、いつかしっぺ返しがくるのがこの世界だ。それがたまたまキミの番だったってだけだよ」
 今言っておくほうがいいだろう。そんな風に考えて、ルーキスは囁いた。
 人狼アリスは血を流し、血の涙をも流し、悲鳴のように吠えながら飛びかかる。
 間に割り込んだのはセレネたちだ。
「耐えるのは終わりです!もういいでしょう、いい加減、倒されて下さい……!」
 防御の魔法をそのままナイフに乗せて切りつける。
 ナイフは深々と人狼アリスの腹を切ったが、同時に人狼アリスの拳がセレネに直撃した。
 吹き飛ぶセレネをキャッチして、シズカが土の上を転がる。
「これ以上、悲しみを増やさないためにも!」
 足に魔法をかけ、人狼アリスまでの距離を一瞬で詰めた。
 サーベルが人狼アリスの腕を切り裂いていく。
 千切れた腕が回転しながら飛んでいく。
 振り回したもう一方の腕がシズカにぶつかり、派手に飛ばされた。
 木の枝を何本もへしおって、どさりと土の上に落ちる。
 その横を駆け抜けたのは凱であった。
「我が身、我が心、既に準備は整っている」
 拳に力を集め、全力のパンチを叩き込む。
 対する人狼アリスもまた、拳でそれに応じた。
 真正面から激突した衝撃が、互いの肉体を破壊していく。
 凱はひどく破壊されその場で大きくよろめいたが、それは人狼アリスとて同じことだった。
 大きくよろめき、数歩下がる。
「散々大暴れしてくれたなぁ、お礼にとっておきをくれてやるぜ!」
 ジョゼはアドレス帳を一枚宙に放つと、ロアンそっくりのダミーを作り出した。
 スコップを振りかざして突撃する疑似ロアン。
 打撃が人狼アリスを派手に襲い、それでも倒れることを拒んだところへ、胡蝶が素早く距離をつめた。
 ぼろぼろの腕を翳す人狼アリス。
 それをすり抜けて、胡蝶の手刀が胸を貫いた。
「罪人の末路ならまぁいい気味くらいなんだけど、罪なき人の末路にしては悲しすぎるじゃない?」
 崩れ落ちる人狼アリスを、胡蝶はあえて抱きとめた。
 そこには、額を銃かなにかで打ち抜かれた少女の死体だけが、寂しそうにあった。

●都市伝説のおわりとはじまり
 あるところに男がいた。
 男の趣味は収集だった。
 年若い少女の死した瞬間の顔と、その死体の収集だった。
「苦しまずに眠れたかしら」
「さあ、ね……少なくとも、もう終わったことだ」

 あるところに少女がいた。
 少女の趣味は収集だった。
 男の欲望と、その対価の収集だった。
「やな相手だったな。釣られた子供をぱくりってか?」
「やっぱりよくわからなかったのである」

 男はコレクションを増やし、少女はコレクションを増やした。
 二人の業は呪いとなり、新たなコレクションを求める怪物へと溶け合った。
 華蓮や凱たちが、黙って死体を埋めている。
 彼女たちの文化にとって埋葬が正しい弔い方なのかはわからないが、野ざらしにしておくよりはずっといいと考えたのだろう。
 シズカやセレネたちが、祈るように目を閉じる。
「いつか、この都市伝説も、御伽噺として語られるようになるのでしょうか」
「次、生まれてくる時には幸せになれますように」

 語られた噂話が真実であるか。
 それは今のところ、誰にも分からぬことである。
 この場所に無数の少女とひとりの男の死体があったことだけが事実であり、それが怪物となりはてたことが事実であり、その怪物がもういないことが事実である。
 だからこの話は、都市伝説として語られた。
 武器商人レーツェルマンによって、北へ南へ語られる。
 やがてこの森は、『誘いの森』と呼ばれた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――good end!

PAGETOPPAGEBOTTOM