PandoraPartyProject

シナリオ詳細

手折るもの
手折るもの

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 都市よりやや北に連なる山稜は、訪れた者を魅了してしまう程の美しい銀世界へと変貌していた。
 そびえ立つ木々には薄く雪が積もり、きらきらと光を反射して輝いて見える。
 落葉の時期を経て丸裸になった森林を染め上げる白は美しく、きめ細やかな軽い雪は少しの風で優雅に舞う。
 朝はやわらかなこがね色。登りゆく太陽の光を余すことなくすくい上げ、一日の始まりを大いに祝う。
 昼はさわやかな空の色。視界を遮るものの少ない山稜から見上げる空は、遥か先まで透き通って見えるだろう。
 夜は輝く金の色。たもとにあるは月明かりのみ。ここには彩を消し去る邪魔はない。
 どの時間に訪れたとしても、息を呑むような景色と出会えることは約束されている場所だった。
 気紛れな尾根が白く染まる時期は来訪も増え、普段にない賑わいを見せる。
 これ幸いと観光業に手を出した地元の住民たちは、年々増え続ける観光客を相手に商いを為し成功させていった。

 ――の、だが。

 空を裂くように、遠く遠く、いななきが響き渡った。
 鋭い一本の角を頭に携え、力強く地面を蹴るその姿は、さる神話に綴られた存在と酷似していた。
 銀世界を一頭の白き馬が駆けていく。
 無心に、ひたすら真っ直ぐに、何かを求め――目指す先には、人々の住む街があった。


「やあ。少し、時間はあるかな」
 常通りの黒いパーカーに身を包み声をかけたのは見慣れた人物だ。
『黒猫』と言えば早いだろうか――ショウ・ブラックキャット(p3n000005)その人だ。
 ローレットに所属する腕利き情報屋のショウがゆるい笑みを浮かべて立っていた。
「よくある討伐依頼がきていてね。是非頼みたいのだけれど」
 そう言って差し出したのは一枚の資料。どうやら依頼人は几帳面な人物らしく、依頼書をそのまま資料として使えるようにしていたらしい。
 見れば、一面にでかでかと写真が載っている。
 白き体躯の一角獣。ふんわりとしたタテガミに、細身でありながらもしっかりとした肉付の馬。
 大きさはそこらの馬よりも一回り以上大きく、どんな大男でも見上げることになりそうな程だ。
「この写真には2頭いるけれど、今回確認されたのは1頭だけ。そいつを倒してくれればオッケーだ」
 寄り添う2頭のうち、1頭だけに黒い丸がついている。どうやら昔から生息していたようで、地元民からは『ハルジオン』と『デイジー』の名で親しまれていたようだ。
 依頼書によると、今回の対象は『ハルジオン』となる。
 また、資料には出没が確認された地点を中心とした地図が添付されており、迷うようなことはないという。
 近くには開けた場所が数か所あり、そこで戦うと良いだろうと付け足した。
「予測される行動進路はこの通り。逸れることもないだろうね」
 ショウはテーブルに資料を置くと、立ったままペンを取り出し真っ直ぐなラインを地図上に引いた。
 確認された地点と、街とを繋ぐ、一本の直線。
 到着時点では確実に待ち伏せする事ができ、街へ辿り着く前に迎え撃てば被害は抑えられるだろう。
 大方の説明を終えたショウはテーブルの上に資料を置いたままひらりと手を翻す。
「観光事業を発展させるためには、危険を全て取り除かないといけない。元は穏やかな子たちだったと聞くけれど……さて」
 どのような事情があるにせよ、すべきことは変わらない。
「まあ、ひとつ宜しく頼むよ」

GMコメント

 はじめまして、祈雨(キウ)と申します。
 この度はご参加ありがとうございます。
 皆さまの世界に少しでも彩を添えるべく、力添え出来ればと思っております。
 純戦となっております。下記にシナリオの補足をまとめますので、ご確認ください。

●依頼達成条件
 白き一角獣『ハルジオン』の撃破

●情報確度
 A
 想定外の事態は絶対に起こりえません。

●敵情報
『ハルジオン』
 力強く大地を踏締め駆ける一角獣です。地を駆ける四足獣で、飛行はしません。
 EXA値が高く、複数回行動する可能性が大いにあります。
 攻撃手段として強靭な脚力を活かしたキックや一角による頭突き、いななきと共に広範囲に雷を落とす魔法攻撃が確認されています。
 また、その場で足踏みをする予備動作の後、何もせずに受けると瀕死級のダメージを負わせる突進を対象1名にしかけてきます。
 増援はありません。

●場所
 山のふもとから街にかけてのどこかで接触となります。
 基本的には木々生い茂る中での接敵となりますので、戦闘場所については移動も含めご検討ください。
 オープニングの通り開けた場所はいくつかありますし、あえて森の中で戦うという選択肢もあります。

  • 手折るもの完了
  • GM名日下部あやめ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年02月26日 21時25分
  • 参加人数 8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

リリル・ラーライル(p3p000452)
暴走お嬢様
恋歌 鼎(p3p000741)
尋常一様
アルクス・ラドゥーガ(p3p001063)
彷徨う翼
ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)
希望の聖星
ジョー・バーンズ(p3p001499)
シーヴァ・ケララ(p3p001557)
混紡
Pandora Puppet Paradox(p3p002323)
兎人形
アーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)
シティー・メイド

リプレイ


 落葉は包み隠すことなくその丘陵を曝け出していた。然して、そろそろと芽吹いた草木を掻き分け乍ら進むのは靭やかな体躯を持つ一角獣であった。足並みは畏れを抱くことなく、優雅に――尊大と言っても構わないかもしれない――目的意識を感じさせるかのようだ。
 彼をハルジオンと初めに呼んだのは誰であっただろう。そして、彼と共に寄り添い歩む雌の獣をデイジーと呼んだのは。
 なだらかな丘陵を歩むその獣の姿を思い浮かべては 『彷徨う翼』アルクス・ラドゥーガ(p3p001063)は世界より与えられし病に苛まれるように息を飲む。
「ハルジオンは大人しかったのに何で暴れだしたんだ?」
 憧憬は彼を蝕む鎖が如く。口にすれば、温和であった獣が街を只管に目指す姿が脳裏にちらついた。救済者は誰かのための寄る辺になるしかないのだから。じゃらり、と音立てた鎖の音を聞きながら『暴走お嬢様』リリル・ラーライル(p3p000452)は幼さを感じさせたかんばせを歪める。
「守るべき対象の街の方にも何か事情がありそうなのですわ。……何か、何かあったのでしょうか」
「わたくしには到底その理由は判りませんが――社会のゴミ(おそうじのたいしょう)になるとは思えぬ存在……」
 古くより街の人々に親しまれ、名をも与えられた獣の事を思い浮かべてはアーデルトラウト・ローゼンクランツ(p3p004331)は首を傾げる。『廃棄処分(ごみ)』として処理すべき存在とは到底呼べぬハルジオン。彼が、彼女と共に在らぬ理由と、街に向かう事に何かしらの共通点があるのかと推測するように言葉にしながら。
「ボクはハルジオンが望む結末でこの依頼を達成したいにぃ!」
 ぴょこりと跳ね上がった『兎人形』Pandora Puppet Paradox(p3p002323)は縫い付けられた口が弧を描いていることを確認するように短い手でぺたりと触る。赤く丸い目は遠く、緩やかに歩む獣の姿を捕らえた。
「獣というのは古くから知恵ある者に狩られる存在に過ぎない。それが生活を豊かにするのだから。
 ……もっとも原始的な経済活動だといえるだろう。仮に、ハルジオンが街に向かう理由が『デイジーが捕らえられている』からだとしても人々を悪と見做す事はできない」
 ジョー・バーンズ(p3p001499)は商人としての己の考えを口にする。人々が生活を豊かにするためには必要な基盤は揺ぎ無く其処に存在してしかるべきだ。事前に街への調査をと計画してはいたが、此度は獣の進行の都合もあり、ハルジオンの相手が最優先とされることだろう――つまり、「我々は『撃破』するという依頼を遂行する以外にはないというわけだね」
『尋常一様』恋歌 鼎(p3p000741)は己が寛容なる罪を口にするように僅かに笑みを含めた。月色の瞳を細め、『削除済み』たる世界の贈り物を確かめる様に手袋に包まれた指先を組み合わせる。
 囀る小鳥の声を聴き、緩く見上げた『星を追う者』ウィリアム・M・アステリズム(p3p001243)は愛用の杖を握りしめ深く息を吐き出した。
「……ま、依頼は討伐、だ。馬どもの事情なんて知らないし、少なくとも俺は知るつもりもねーし。推測はできるけど……っと」
 芽吹く木々は冬と春の境を感じさせて。誰ぞが言ったではないか――雪が解ければどうなるの、と。
 ああ、春はもう直ぐなのだろうか、それとも、春はまだ遠いのか。『混紡』シーヴァ・ケララ(p3p001557)は緩やかに口にする。
「春が来るのかもしれないわ。若芽は簡単に手折られてしまうけれど。
 求めるものは違えど人も獣も欲する儘に生きている。白雪さえも隠せない、美しい景色だわ」


 嘶きは遠く。されど、その存在を確固たるものとして感じさせるように蹄の音を轟かせて。
 その一角獣を目の当たりにしたシーヴァは目を伏せる。虚ろなる空気に触れて、視線を交わさぬようにと周囲を見回して。
 曇り空を映しこんだかのような髪は晴天に恵まれる生家とはどこか離れているかのようで、シーヴァの指先は長い髪をくるりと手繰る。
「ハルジオンちゃん」
 名を呼んで。ゆっくりと歩を止めたハルジオンが冒険者たちをその両眼にしっかりと捉えた。その視線を受け止めてリリルは小さく息を飲む。
「……戦いたくは、ありませんわね。いえ、戦う他にはないのですけれど」
 心優しき少女は温和であった獣のことを思い不安げに眉根を寄せた。海色の髪を冬風が煽る。愛情深い彼女の前で後ろ足で地面を蹴ったハルジオンがぐん、と肉薄する。
「やはり、そうはいってられないのですね」
 たん、と後方に下がったリリルの前に滑り込んだPandoraはハルジオンを受け止める。「にぃ」とその声が響き仲間に負担がかからぬように小さな兎は跳ね上がった。
「っ」
「ぴーちゃん、大丈夫かしら? ……さあ、彼は何を言いたいのかしらね」
 Pandoraを気遣う様に声をかけたシーヴァはゆるゆるとハルジオンを見据える。言葉を掛けようとも獣は臨戦態勢の儘、冒険者を見据えている。成程、何らかの『気遣い』を見せられるような相手ではない事はその佇まいからも想像された。
(遠くに逃がすことはできるだろうか……願わくば、二度と人と関わらぬような遠い場所に)
 鼎は獣への対処が『狩る』事であれど、それが『ハルジオンの死亡』とはイコールではない事を事前に確認していた。ハルジオンが暴れた原因の特定が叶うのであればその獣を救う事が出来るのだとも想定していて。
 厚い回復を与え、狙うはハルジオンの無力化。イレギュラー的対処になるかもしれないとウィリアムは想定していた。勿論だ、依頼主の依頼を遂行することがギルトとしても絶対条件の一つになる。
 魔力を以て攻撃を行い続けるジョーの傍らでウィリアムはどうしたものかと息を飲んだ。
 一方で――苦悩するヒーローは眉根を寄せる。救いたいと誰かが求めるならば、世界は彼に『救済』の声を届けんとするのだから。
「……倒していいのか?」
 アルクスの問い掛けにリリルは、鼎はその両眼に獣を映す事を躊躇うように瞼を落とした。
「社会のゴミと呼ぶにふさわしくない存在であれば、『倒す』選択もある事でしょう」
 アーデルトラウトはそう呟き銃口を定める。銀の弾丸は何をも逃さぬように敵を見据え――しかと、獣の足を撃ち抜いた。
 肉薄するハルジオンに身構える様にリリルが息を飲む。後方より魔術を以て制するべきだとウィリアムは星の煌めき封じた杖で地面をとん、と叩いた。
(1体といえども気は抜けないわね……。真直ぐな思いはとても強い力を宿すのだから)
 接敵しするシーヴァはその両眼に白き獣の姿を映しこむ。唸りを上げたその馬は力強く後ろ脚で蹴り飛ばしぐん、と冒険者へと角先で触れた。
 ハルジオンを出来うる限り街から離す様にと開けた場所へと誘い込むジョーはちらりと仲間達へと合図する。
 小さく頷くアルクスは『ヒーロー』になるためにはハルジオンと戦う事も致し方なしと拳を固めた。
「こっちだ、ハルジオン!」
 鮮やかな羽を揺らし誘うように手招きしたアルクスへとハルジオンその身を向ける。
 その声に誘われるようにハルジオンは飛び込んだ。スカートを持ち上げ、後退したアーデルトラウトは後方より息を潜める。銀の弾丸は何をも射止めるべく狙いすましゆっくりと目を伏せた。
(お掃除対象に慈悲は与えるべきではありませんね――)
 ざり、と砂を蹴り、冬風を受けてアーデルトラウトは身を反転させる。デイジーの姿を探す様に周囲を見回したアーデルトラウトに続き、ジョーは交渉術を活かせる場の為にハルジオンの姿をその両目に映していた。
 ハルジオンの一撃は重苦しく、その悲痛を語るかのようだ。
 獣が何かに悩むのであればその心を軽くしてやりたいと冒険者たちは皆、考えていた。然して、街へ向かいデイジーが死亡していたならば――? その対処はどうすべきかは各々の中で別々だろう。
「二頭並んだ姿は、それはそれは美しいのでしょうね」
 白い息を吐いたシーヴァの灰の髪先に獣の一撃が飛び込んだ。くん、とその身を捻ったシーヴァとちらりと目を合わせ、ジョーの癒しは仲間たちを鼓舞し続ける。
 指先飾るクリティカルリングの重みを感じながらアルクスはその身を転じさせる。
 ハルジオンの角先を掠めた拳にびびりと痛みが走る。わずかに表情を歪めた彼の傍らで杖で地面を叩いたウィリアムが静かに息を吐く。
(――獣の気持ちをわかってやれるほど、俺は優しくはねーからな)
 馬の嘶きを聞きながらウィリアムは後退する。魔術式は星を探求するよりも易い。
 魔術の徒たる青年は赤い髪を揺らし、その全容を見極めんと目を凝らす。獣は語らぬ、何故ならばジョーが言っていたではないか。『知恵ある者』は『そうでないもの』を淘汰することで反映してきたのだと!
 目的が為ならば手段を択ばぬのが人間という生物だ。ハルジオンがデイジーを思って行動しているのだとしても。
「何を悪と定義するかだが、私には悪意の芽だとは感じる事はできないな」
 皮肉を告げる様に唇を僅かに尖らせて前線へと向けて告げたジョーは緩やかに肩を竦めた。
 事の顛末は想像するに易い。その獣は見るからに『狩られる側』の存在であるように思えた。彼女が、彼の傍から離れたから――彼らを『ハルジオン』と。『デイジー』と呼ぶ人々が徐々に減っていったことが問題であったのかもしれないとジョーは告げる。
『繁栄』は何時だって、何かの犠牲の上に成り立っているのだから。
 獣は後ろ足で尚も勢いをつけた。ぐん、と迫りくるそれがシーヴァの身を貫かんと屈められる。
 は、と息を飲むシーヴァの前へと飛び込んでPandoraはいやだいやだと首を振る様にデイジーを受け止めた。
「……ボクは欲張りだから。────仲間が傷つくところを見たくないに!!」
 Pandoraはぴょいんと跳ね上がる。ハルジオンの一撃が深く肚の底まで響くかのようで「にぃ」と明るいぬいぐるみは声を漏らした。
「Pandora君……」
 鼎の言葉に反応し、Pandoraは顔を上げる。
 救いたい――その言葉にPandoraは首を振る。世界からの贈り物は小さなぬいぐるみに『救済』を与えた事だろう。
 だが、その救済を与えようとも獣の心を救う事が出来るのかは彼らには想像つかない。
 だからこそ、ヒーローは問い掛けるのだ。
 アルクスはその獣の嘶きから悲痛なる叫びを感じ取り眉を顰めた。
「救えるのだろうか――」
「――救いたい……救いたいに!」
 その者に手を伸ばせと言うように。Pandoraを支援するように鼎は立ち回り続ける。
 地面を踏み締めた靴裏がきゅ、と音を立てた。柔らかな土を踏み締めて、鼎がその身を反転させる。
 ぐん、と飛び込むハルジオンの鋭い一撃が喉元に迫り来るその一瞬を感じ取りジョーは支援の声を贈る。
「成程ね……どうやら『お話には応じない姿勢』のようだね。
 けれど、物語は此処で終わりにはしたくはない」
 呟かれた鼎の声にウィリアムは小さく頷いた。依頼主は確かに獣を狩れとオーダーを下したのだろう。
「どちらにせよ……わたくしは迷いませんわ」
 リリルは息を飲む。海色の髪が揺れる。愛情を湛えた瞳は切なげにハルジオンを映しこんだ。
 美しい景色を両眼に見据えて陽光に愛されし色の指先で武器を手繰ったシーヴァは目を細める。
「貪欲な生物に声は届かないものね」
 その場所に声は、消えた――


「俺が行ったことは正義だったのか……?」
 助けて欲しいと願う誰かの声がある。その声音に誘われるようにアルクスはただ、手を伸ばしたのだ。
 倒れた獣の隣に寄り添うように立ってPandoraは不気味だと称される表情を変えぬまま静かに息を飲む。
「デイジーは、どうなったんだろうにぃ」
「何にせよ、街へ……見に行きましょうか」
 静かに目を伏せたアーデルトラウトはエプロンドレスの裾が地面を擦らぬようにゆっくりと持ち上げる。
 美しい場所であった。獣の嘶きも響かぬような――そんな、壮大な場所であった。真白の雪をも忘れ去るかのような春と冬の合間の時節。花が綻びを待つそれを見上げてウィリアムは青の瞳を細めた。
「繁栄の影で。なんて言うけどさ。それを救おうと思えるほど、俺は偉くねーからな」
 ぼそりと呟いたウィリアムの言葉にジョーは目を伏せる。その街は繁栄し、獣たちと共に共存する場所ではなくなったのだろう。
「理由は」
 それを問う相手はいない。街へ向かおうかと歩を向けるリルルの背を追い掛けてシーヴァは小さく息をついた。
「聞きに行きましょうね。デイジーちゃんがどうなったか……。
 これは、『お話(このしごと)』には関係がないことだけれど。そうね、ただの、興味よ」
 かつり、と石畳に靴鳴らして鼎は緩やかに振り仰ぐ。あのなだらかな丘陵はもうすぐ春が来るだろうか。
 なだらかな丘陵は息を飲む様な美しい世界だった。誰もがその場所を褒め讃えた事だろう。
 温もりなく、ひっそりと存在する一つのいのちを見下ろす様にPandoraは「にぃ」と小さく声を漏らす。木々の芽吹きを見上げてはジョーは「交渉の時間だ」と此度の問題の起点となった部分を探す様に息を潜めた。
「どうしてかしら? 美しいものはいつだって陰ってしまうものだから――」
 シーヴァの指先は冬の寒さに耐える様に揺れる草木に触れる。ひっそりと、寄り添う獣たちに何があったのかを彼らは知らない。
 唯、獣が街に向かっていた。それを『冒険者たちが対処をした』という事実が其処には存在するだけだ。
「依頼の顛末?」
 唇は弧を描く。月色の瞳は柔和に歪む。只、少女は少女らしからぬ表情をそのかんばせに浮かべながら。
「どちらにせよ、見える結果は何も変わらないよ? オーダーは『撃破』だ。そうだろう?」
 ――その場所は、見るもの全ての呼吸さえ奪うような美しい場所だった。嗚呼、そこに、寄り添う獣の姿が一つ、消えただけで。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 代筆を担当させていただきました菖蒲です。
 この度は、シナリオにご参加いただきありがとうございました。
 また、ご縁がありましたらどうぞ、よろしくお願いいたします。

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