PandoraPartyProject

シナリオ詳細

連携の重要さ

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●不信
「きゃあ!!」
 ダンジョンの浅層にて、毒性を持ったスライムに若い女性の冒険者一人が腕をやられた。
 パーティーのリーダーらしき戦士が、ためらいもなく腕に目掛けて一閃し、吸着していたスライムが爆ぜた。
 その斬撃が若い冒険者の腕に及ぶ事はなかったようだが、スライムの持った毒のせいで既に患部は変色し、このまま放置しておけば危険だという事が医者でなくとも分かる。
 リーダーの戦士は面倒な物を抱え込んだ様な顔色をあからさまに浮かべながら、冷酷に告げる。
「さぁ、次へ行くぞ」
 これに仲間達のいくらかが顔色を青く、または怒りで赤く染めた。このまま進めば彼女が運が良ければ腕が腐り落ち、運が悪くければ苦痛の上で死んで行くのは明らかだからだ。
「ふざけないで下さい! 今は回復出来るヤツが居ないし、おまけも薬も無い。一旦戻りましょうよ!!」
 少年といっても差し支えない風体の冒険者が、リーダーに詰め寄った。
 リーダーの戦士は、熱くなっている少年へ対してこれまた冷めた口調で答える。
「なぁ、少年(ガキ)。こういった新しく発見されて比較的敵が弱いダンジョンってのは、どうしても競争者が多い」
 リーダーは毒に苦しむ冒険者の方へこれみよがしに目線を移し、吐き捨てる様に言いのけた。
「『お荷物』のせいでダンジョンから逃げ帰るっつーなら、一生かかってもマトモな冒険者にゃなれねぇよ」
 この言葉に少年は怒りの感情を抑えられなくなった。持っていた剣と盾をかなぐり捨てて、毒に苦しむ仲間を担ぎ上げる。そのまま振り返る事なくダンジョンの出口へとひた走っていった。
 リーダー以外の者は心配そうに見送り、あるいは手伝おうとしたがリーダーの男がどんどん深層へ向かっていくのを横目にし、仕方無しにリーダーの方へと着いて行くのであった。

●信頼の大事さを教えてくれ
「……以上が、彼らの此処に来た経緯だ」
『狗刃』エディ(p3n000008)は淡々と語る。その仏頂面にやり場の無い感情がにじみ出てるのは気の所為だろうか。
 若い少年の冒険者――名はアラタ――がローレットギルドへ薬を求めに駆け込んで来たのが30分前。
 適切な治療の甲斐もあって毒を喰らった仲間の容態は安定し、現在は仮眠室の方で療養中だ。
「彼が求める事はこうだ。彼自身を加えた新しいチームをこの場で結成し、最近発見されたダンジョンを踏破して欲しいとの事だ」
 エディの横に座っている少年は、しきりに頷いた。幻想で話題のイレギュラーズを見れて、心なしか嬉しそうでもあったが、何処か悔しそうに口を開いた。
「だけど、名の売れた熟練冒険者じゃ意味が無い! リーダー……じゃなくて、あの冷血漢の鼻を明かしてやるには、オイラみたいに無名に近い奴らで踏破してみせる必要があるんだ!」
 つまりは、依頼で活躍して名前が知れ渡っている者や、ギルド内でトップクラスの実力を誇る者達は依頼の対象外となるという事だろう。一応エディも候補外になるか。
 報酬についてはダンジョンアタックで手に入ったモノ全て此方に回してくれるというのだから、少年の依頼だからと実入りの悪い話でもなさそうだ。
 依頼の内容を伝え終えたエディは、ため息をつきながらゆっくり頷いた。
「強き個人が先導するのも、効率の面では間違いではないが……集団特有の強さ、そしてそれ以外にも大切なモノがあると、彼らに教えてやってほしい」
 君達なら心配は要らないと思うが。そう苦笑しながら、イレギュラーズの出発を見送った。

GMコメント

 何気に初のダンジョンアタックの稗田ケロ子です。
 私個人の言葉はさておき、以下情報。

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 新しく見つかったダンジョンという事もあり、深部に居る敵の正体・強さが不透明です。ご注意下さい。

●NPC一覧:
『新米冒険者 アラタ』
 典型的な前衛戦士といった感じの冒険者です。彼はLv1相当の実力を持っています。非戦スキルは無し。
 余程危険な指示でなければ、イレギュラーズの作戦には全て従うつもりの様です。
『エディ・ワイルダー』
 今回は彼は着いてきません。
 ただダンジョンアタックに必須な松明や食糧、またイレギュラーズが必要と判断した物資を、簡単に調達出来る範囲で用意します。

●環境情報:
 幻想内で最近発見された、不気味な像が何十体も立ち並ぶ全体が石造りのダンジョン。
 長い期間、誰の手も入っていなかったのか毒を持ったスライムが繁殖し、大量に居る状態。
 金目の物がほとんど手付かずの状態で、冒険者達はこれを回収中。
 隠れる歩く構造も幾らかあるとの事で、隠密あるいは何かしら役立つスキル・ギフトがあるキャラクターが先導すれば一定の戦闘回避が出来るかもしれません。
 浅層でもまだお宝が一定の量を回収出来る事もあって、深部に至った情報は少ない。

●エネミーデータ:
『ポイズンスライム』
 毒が特徴だが、耐久面が極端に低い。数で押して来るタイプ。大量の【毒】を食らうと非常に厄介。
 また、多数遭遇する事が想定される事から範囲攻撃が効果的です。
飛びつく:至近・【毒】 低ダメージ
足に絡みつく:至近・【足止】 低ダメージ

『深層エネミー』
 破壊力の大きい打撃で破壊された痕跡が各所に見受けられるが、深層を少し様子を見に行った他の冒険者曰く「スライム以外に特に居なかった」との事。
 出会ったと思われる冒険者は、ことごとく不意打ちに粉砕されたであろう形で死体として発見された。注意されたし。

  • 連携の重要さLv:5以下完了
  • GM名稗田 ケロ子
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月14日 23時25分
  • 参加人数8/8人
  • 相談4日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

十河・颯姫(p3p004807)
人斬り鬼姫
如月=紅牙=咲耶(p3p006128)
夜砕き
サイモン レクター(p3p006329)
パイセン
ワルド=ワルド(p3p006338)
最後の戦友
アナスタシア(p3p006427)
コールドティア
София・Ф・Юрьева(p3p006503)
おっとりお嬢様ソフィーヤ
ヴォーダン・ニール・グレイヴ(p3p006516)
蹴り穿つ白馬
ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)
奈落の虹

リプレイ

●道中
 暗い通路の先から聞こえる、粘り気のある卑しげな水音。
 斥候を担っていた『人斬り鬼姫』十河・颯姫(p3p004807)と『黒曜の鴉』如月=紅牙=咲耶(p3p006128)は身振りで仲間を制止し、カンテラの光を手で覆いながら様子を伺う。
 通路の先にはポイズンスライムの群生と、道半ばで命を落としてしまったのであろう冒険者の死体に群がっていた。
 死体はスライムの消化液で溶け、肉は毒液によって紫や黄土に変色しており、見ていてあまり気分の良いものではない。
「……スライムとはいえ数が集まる厄介ですね」
 颯姫は群生から外れていたスライムを静かに踏み潰し、仲間に向けて別の通路を進む事を指示する。
「あの女性もギルドに駆け込まなければあぁなっていたでござろうか。全く、仲間を切り捨てるとは呆れた御仁でござる」
 咲耶はアラタが依頼にやってきた動機を思い返し、そう言葉にした。無事にこの迷宮を踏破してみせて、あの者の鼻を明かしてやらねばならぬとも考える。
 現状は出来る限り隠れ潜みながら進行しているお陰か、戦闘を最小限に抑えられていて順調である。それでも幾度かの遭遇戦で避けられぬ戦いはあったのだが。
「皆さんの不調を、祓って下さりますよう天に祈りますわ」
 斥候や前衛陣達の負傷を見て、短杖を掲げながら回復の祈祷を始めるソフィーヤこと『おっとりお嬢様ソフィーヤ』София・Ф・Юрьева(p3p006503) 。
「回復魔法ってのは……やっぱり便利ですね」
 不意に喰らった毒の影響が軽微なものに済んで、そう口にするアラタ。しかしそれでも、以前の探索で仲間が死にかけた覚えからアラタは戦々恐々としている。
 その内心を知ってか知らずか。『蹴り穿つ白馬』ヴォーダン・ニール・グレイヴ(p3p006516)はアラタに対して宥める形で声をかける。今は同行者同士守り合えるから、そう怖がる事は無い、と。
「……。どうも私は、初対面の相手を怖がらせるらしいが……」
 宥める言葉と共にそう漏らすヴォーダン。アラタはその言葉を否定もせず、ぎこちなく乾いた笑いを浮かべた。……身長にしても頭一つ分くらいは高い上に精悼なブルーブラッドであるから、威圧感から萎縮するというのはある意味正しい反応なのだが。
「だ、大丈夫です! 俺だって一人の冒険者。ヴォーダンさんや他の人達の足手まといにならない様に……」
 アラタが意気込む様子を見て、くつくつと喉を鳴らす『吸血鬼を狩る吸血鬼』サイモン レクター(p3p006329)。
「若いねぇ。こういった負けん気の強いやつぁ好きだぜ俺は」
 そう言われ一人の冒険者は恥ずかしそうに頭を掻いた。サイモンはその様子を一頻り笑った後、ギルドから持ってきた解毒剤を投げ渡す。
「ま、くそったれリーダーをぎゃふんと言わせれる用に協力させてもらうぜ」
「そうですわね。野蛮なリーダーに一泡噴かせるくらい、罰は当たりませんわ」
 ソフィーヤや他の仲間もその言葉に頷いた。どうやらこの件に対して思うところは同じらしい。
「頼もしそうな方ばかりで安心ですね。今回の依頼、ワタシは何もしなくても終わりそうです」
 お互いの意気込みを認識したところで、場を和ませる形で冗談の様に言ってみせる『はにかみ青年』ワルド=ワルド(p3p006338)。
 アンタも働くんだよ。そうサイモンにツッコまれ、「えー、やっぱりダメですか……」と苦笑じみた微笑みを浮かべるワルドである。
 仲間達の様子に、後方や天井からを見張っている者も一息つく形で話を交える。『コールドティア』アナスタシア(p3p006427)、『特異運命座標』ウィリアム・ハーヴェイ・ウォルターズ(p3p006562)は互いに言葉を述べた。
「洞窟の中、スライムがいるってわかってはいますが、その先に何があるかわからないのは怖いですね」
「だね、何が出るか分からないけど……」
 アナスタシアはウィリアムが呼び寄せた鼠に干し肉を与えつつ、深層に居る敵とはなんだろうかと考えていた。植物との対話を試みても、スライムが悪食である事以外にいまいち判然としない。しかしスライムだけしか居ないのならば少なくとも打撃で殺害されているのは少々釈然としない。先程の死体の様に溶解しているのならまだしも……。
 最中。ファミリアの鼠がピクリと耳を立てたかと思うと、怯える様にウィリアムの衣服へ逃げ隠れてしまった。
「どうしたのでしょうか」
 アナスタシアは警戒する様にキョロキョロと周囲を見回すが、敵が居るワケでもなければ特に何か感じ取れたワケでもない。他の仲間達も同様である。
 ただファミリアと五感の一部を共有していたウィリアム、耳を研ぎ澄ませていた颯姫と咲耶は地下の深層から微細な、されど強烈であろう打撃音が鳴り響いたのを感じ取った。
「どうにも、噂は確かの様でござるな……」
 三人はお互いに顔を見合わせ、難しい顔をするのであった。

●正体不明の……
「この辺りが噂の深層ですわね」
 マッピングを担当しているソフィーヤは仲間達にそう告げながら、コンパスで羊皮紙に図形を描く。
 道中何度かスライムとの戦いはあったが、小休憩を挟みながら進軍を続けてどうにか誰も脱落せずに目的地の場所までたどり着けたらしい。構造から察するに、おそらくは此処からしばらく進めば迷宮の最深部であろうか。
「此処に来るまで随分とお宝見逃しちゃいましたねぇ」
 そんな事を言いながら栄養補給の体で、ワルドはソフィーヤにおやつを提供する。お宝の話に際して貨幣チョコが渡されるのは偶然なのか。
「取りこぼしに用はございませんの」
 チョコレートを受け取りながら、ソフィーヤは笑みを浮かべてそう言い切った。ワルドは勿体無いとは零しつつも、飄々とした面持ちで微笑みを返している。
「それにしても、この辺りから地響きが聞こえたのですが……」
「情報で聞いてた正体不明の敵か? 闇の中から急に、なんてことはないよな」
 ウィリアムの言葉に、サイモンはギフトの暗視能力で周囲を伺う。
 事前の情報通り、通路のあちらこちらが破砕されている事以外は特に変わりなく。スライムが少数、そして此処に至るまでと同じく不気味な石像が立ち並んでいるといった様子しか見当たらない。この階層もスライム以外に居ないのだろうかと思いつつも、訝しげに不気味な石像らを注視する。
 ――イイヤ、待て。今まで見てきた石像は全て例外なく整列された形で飾られていたが、その法則から少しばかり外れている石像が一体通路の先に…………。
「……。不意打ちを受けない私が、先行する……」
 サイモンから説明を受け、元々抱いていた石像への警戒をますます強めたヴォーダン。
「オ、俺も後に続きます」
「拙者も。後ろは任せるでござる」
 息を呑みながらも、そう申し出るアラタと咲夜。颯姫はハルバード静かに構え、一団となって通路の先へと歩み寄る。
「援護はワタシ達にお任せを」
 ヴォーダン達に対してスライム達が間合いを詰めて来ているのを見て、後衛陣もすかさず火器や術式を構える。サイモンは彼らを護衛する形で、スライム達を牽制する様に中間へ陣取った。
 スライムが距離を詰めるのが先か、射抜くのが先か。そんな瞬間。ヴォーダンの眼前で風切り音が鳴りかける。
「……ッ!」
 ヴォーダンは咄嗟に地面を勢い良く蹴って、その場から飛び退いた。石像の片腕が振り下ろされ、彼の居たはずの床を破砕する。
 ストーンゴーレム! 一同がそう言葉にする暇もなく、スライム達が隙を突こうと距離が近い者へ寄って集る様に群がって来た。
「チィッ! こっちにも来やがった!」
 顔面へ飛びかかってきたスライムをサイモンは地面に叩きつける様に剣で振り払い、返しの刃でスライムの核目掛けて刃の切っ先を通す。
 それを喰らった一匹は小動物の断末魔の様に聞くに堪えない音をあげ絶命したが。すぐさま他の一匹がサイモンの腕目掛けて飛びついてくる。
「ぐっ!」
 スライムの毒液は彼の蒼白の肌に侵食し、みるみる内に肌が変色していく。残ったスライムも、続けザマに飛びかかろうとした。
「おおっと、そうはいかないよ」
「……やらせません」
 アナスタシアとウィリアムの放った魔弾が、サイモンに襲いかかる寸前のスライムを空中から撃ち落とす様にして射抜き切った。後ろに控えていたソフィーヤもすぐに解毒の祈祷を始める。
「治療は任せて。神は常に我らの行う正義を見て下さりますわ」
「すまん、助かる!」
 ひとまず事なきを得たのを確認し、石像もといストーンゴーレムに対して火器を構えるワルド。
「へー、これもダンジョンの遺物ってヤツですかね? 持って帰ったら高く売れそうです」
 相変わらず飄々とした様子で言ってのける。石像の全長はヴォーダンよりも大きく、おおよそ四メートル程か。とても持って帰れる様な大きさではない。
 咲夜と颯姫は彼につられる様に、フッと笑みを浮かべる。
「持ち帰るならば、粉々に砕いた方が良さそうです」
「その方が懸命でござろうな。……その体、頂戴つかまつる!」
 二人はゴーレムとの間合いを詰めると、即座に火炎の術式を組み上げ、胴体へ目掛け撃ち放つ。
 飾り気のない黒色の岩肌は真紅に赤熱化し、猛火に悶えるに身を捩る。ワルドは、追撃を加える形で火炎が与えられたのと同じ箇所に射撃を行う。
「ゴーレムは頑丈と聞き及びますが、いくら耐えられますかね」
 強敵相手に優勢のムードに高揚するアラタ。いける。これなら、この人達とならリーダーを見返せる。
 彼がそう思いながら前衛へ邪魔を企てようとするスライムを切り払っていると、仕留め損なった一匹がアラタの足に絡み付いてきた。
「こいつっ……!」
 咄嗟に足元を切り払うアラタ。しかし、不幸にも示し合わせたかの様なタイミングで、ストーンゴーレムが腕を大きく横払いに振るい、前衛陣を巻き込んで吹き飛ばした。
 ヴォーダン、咲夜、颯姫の三人は戦線維持に問題はまだ無かったが、防御に手間取ったアラタはマトモに喰らってしまっている。
 彼が朦朧と立ち上がって前線へ戻ろうとするも、ヴォーダンはそれを首を横に振って静止した。
 まだいけます! やせ我慢で応えるアラタに対して、ヴォーダンはゴーレムに向き直りながら口にする。
「……。引き際を見極めるのも、大事な能力だと思う……」
「その通り。ひとまず後方に下がって傷を癒やしてもらうでござる」
 他の仲間達も同意する形で視線をやった。アラタは悔しげに、されど納得した様にサイモンと位置を入れ替える形で後退する。
「どうせリーダーを見返すなら全員無事に終わらねぇとな!」
 声高らかにそう言い放ち、ゴーレムの眼前で理力障壁を展開するサイモン。ヴォーダンも共に、鉄甲を構える。
 火炎の術式によって未だ赤熱しているゴーレムの体。それは微かにひび割れていて、苦しさからか肩で息をする様なモーションも取っていた。
 再び戦端を開いたのは後衛陣である。アナスタシアとワルドが、ゴーレムに向けて遠距離攻撃を撃ち放つ。
 ゴーレムは咄嗟にソレらを腕で弾き返すが、連打とばかりに他の仲間達が攻撃を加え始める。
「一気に勝負を決めます」
「拙者も続くでござる!」
 距離を詰めた颯姫が、ハルバードを頭上に構え、叩き伏せる様に振り下ろす。咲夜も構えた刀を横薙ぎに振るう。
 外殻を砕く打音が鳴り響き、ゴーレムの核らしき宝珠の部分が露出した。
 破壊寸前のゴーレムは目の前のいずれかを道連れにしようとばかりに、両腕を大きく上げる。しかしその前に、ソフィーヤが術式を唱え終えた。
「その悪しき行いに報いを。呪いなど人聞きの悪い。これは神罰ですの」
 彼女の唱えた呪文の魔力によって、ゴーレムの体を蝕んでいた火炎の術式が再び熱を噴き上げる。焔は宝珠を焦がし、やがてそれを粉々に砕いた。
 コアが破壊されると、途端糸が切れた人形の様な動作でゆっくりと倒れ込み。そのままゴーレムは動かなくなってしまった。

●最深部
「あぁ、骨がやられてるみたいだ。今治療してあげるから、動かないでね」
 戦闘後、ウィリアムはアラタを治療していた、状況が安定したからか、アラタも安堵したと共に大袈裟に痛がっている。
「いてて、もっと優しく。優しくッ!!」
 痛いのは、生きている証拠です、と呟くアナスタシア。サイモンもその一部始終にまたくつくつ喉を鳴らして笑っていた。
「いったー……に、しても。面目無い。まさかやられかけちまうなんて……感謝してもしきれないです」
 申し訳なさそうにするアラタ。そんな彼に対してヴォーダンは、また以前と同じ様に宥める様に声をかける。
「……。私は、同じ新人として……出来ることをしたまでだ……」
 少々驚いたのち、笑みを返してみせるアラタ。最初はヴォーダンに対して萎縮していた彼であったが、その様子は当に無い
 一方、倒れたゴーレムの内部にある壊れた宝珠をまじまじと見やる咲夜。
「これは価値のあるものでござろうか?」
 なんとなしにそう思い、ソフィーヤに話を振る。それを聞いて彼女は宝珠に目をやった。
 拳二つ分の宝珠は先程の戦闘により粉々に砕け散っているが、その破片は中々きらびやかであり魔力の残滓も伺える。
「万全の状態より価値は下がるでしょうけれど……えぇ、これでも道中の取りこぼしよりずっとマシだわ」
 好事家なり宝石商なりで、持ち帰れば買い手は見つかるだろう。そう聞いて、微笑みを強めるワルド。
「もしかしたら奥の方にもいくらかあるかもしれませんね」
 そんな楽観的な。と誰かが言いかけたが、元々踏破が目的なのだからどちらにしろ進む事には変わりない。
 周囲はお互い顔を見合わせ、そういう事にしようかと、とりあえず前へ歩を進めた。

「あはは、案外言ってみるものですね」
 案の定というべきか、奥地には彼の言葉通りゴーレムの部品とも思われる素材が何点か見つかり、それらである程度価値が見込める物を戦利品として回収する事になった。
 最中、咲夜と颯姫は微かな呻き声を耳にする。……ゾンビなどが居るという情報は聞いてないが。そう思いながら、様子を伺う為に声が聞こえた方を照らし出してみる。そこには先に深層へ踏み入っていた冒険者達であろうか、それらが倒れ伏していた。
「……リーダー!」
 アラタがそう声をあげ、彼らに駆け寄った。彼らが事前に聞いていたパーティーか。傷の具合を見たところゴーレムに襲われたのであろう。彼らは皆、瀕死の重傷であった。
「こりゃ、スライムに集られるより前にオレ達に見つかって幸いだな。どうする若いの」
 からかう様にアラタに問いかけるサイモン。アラタは一瞬悩んだ様に顔を顰める。
「出会ったら何か一言でも言い返してやろうかと思ったのに、これじゃ……」
「助けるのです? 以前切り捨てられたというのに」
「とはいえここで見捨てるのも非情でござろう」
 イレギュラーズとしても見殺しにするのは何処か目覚めが悪い部分もある。そしてやはり、アラタも最後にはソフィーヤとウィリアムに助けを求めた。
「死んでしまっては、見返す事も出来ませんし」
 先程と同じ声色で呟くアナスタシア。他の仲間達の思うところも、おおよそそんなところだ。
 彼らの介抱を無事に終え、この迷宮の踏破を終えられる。

 なお幻想の冒険者達の一部にて、先駆者より先んじて新参気鋭の冒険者が迷宮を踏破してみせたという噂が広まったのは余談である。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 稗田ケロ子です。私もお宝欲しい。

 それはともかく、今回の依頼お疲れ様でした。
 リーダーに才能が無いと見限られて帰らされたアラタ君でしたが、運命とは数奇なもので。彼含めたイレギュラーズがダンジョンを踏破し、リーダー一行も九死に一生を得る形になりました。
 アラタやリーダー達が今回の件で何を学んだのかは、まぁ此処で語るのは野暮な話。

PAGETOPPAGEBOTTOM