PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<奇病奇譚>泡沫病

完了

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●<奇病奇譚>第九頁
 とある名医の手記。その手記は原因不明の病のみが綴られ、社会に広まることはなく、ただその病気の罹患者と医療従事者のみが知るものとなっていた。
 此度綴られるのは『泡沫病』。
 恋なんてしなければよかった? そう後悔させてしまう呪いのような病気だ。
 死にたいほどに焦がれている。会いたいと願っている。
 でも。好きだと。愛していると。たった一度でも口にしたのなら最後。貴方はきっと、泡のようにとけて消えてしまう。

 九頁目。
 症状の自覚:つい最近。
 患者の症状:恋人に好きだと言おうとした瞬間に目の前がくらくらするような感覚に襲われる。
 断定はし難いのだが上記より泡沫病と判断する他無かった。治療方法はまた後述しよう。
 この病気は愛しているひととの絆が試される。
 あるいは己の忍耐力か。
 自分が死んでもかまわないから伝えるのか。あるいは、好きだと伝えないまま死なずに生きるのか。
 そのどちらかを天秤にかけて選ぶ必要がある。

 十頁目。
 病気について:感染病ではない。
 進行度:重症
 治療方法:好きになった相手が死ぬ。
 注意点:死んだからといって治る確証があるわけではない。
 完治が非常に難しい、また再発の可能性もあるため、期待はしない方がいい。

 好きだとか。愛してるとか。そんなことを伝えられないまま付き合っていたって苦しいだけだと思う。
 この病気はあまりにも酷い。……そして、それを伝えなければな無い医者の気持ちにもなって欲しい。
 この世はあんまりに残酷だ。
  

「……愛してる、って伝えられないの。随分とつらいよね」
 これは先程世界から帰ってきた絢。げっそりとした顔をしている。
 あんまりにもストレスだったのだろう、しっぽもげんなりと下を向いている。
「この病気を依頼として出して体験してもらうのはあんまりにもあんまりだ、って思うんだけど……」
 でも出さなきゃいけないんだ。具体的には染が見たいから。悪いな。
 どこからか天の声が聞こえたような気がするがきっと気のせいだ。そういうことにしておこう。
「ともかく。……大切な人に愛情が伝えられなくなる。たったそれだけ。伝えたら死んでしまうけど、それだけ。……君はいってみるかい?」
 おれはもういいかな。相当なストレスだったのだろう。初恋の人を思い浮かべてため息をついた絢は、妖怪のそれではなく、たったひとりの、恋した人を思い浮かべて、そして逃げ帰ってきたただの青年だった。

NMコメント

 あ! 恋愛感情を伝えられず死ぬよその子がみたい!(深夜の天啓)
 どうも、染です。見せてください。

●目標/できること
 【A】泡沫病を治療する
 【B】泡沫病で死ぬ
 【C】その他

 のいずれかを選んでいただくことが可能です。

●【A】泡沫病を治療する を選んだ場合
 貴方は泡沫病患者です。
 治療を選んだ場合は第三者、あるいは己の手でそれを喪失させなければなりません。

●【B】泡沫病で死ぬ を選んだ場合
 貴方は泡沫病患者です。
 大切な人に思いを伝えて死にましょう。
 ちなみに、伝えた後は。泡のようになって消えてしまいます。

●【C】その他 を選んだ場合
 貴方の大切な人は縛椛病です。
 貴方は一体どうするのでしょう。眼の前で消えていく大切な人を眺め続けますか?
 それとも、大切な人のために死にますか?

●プレイングでお願いしたいこと
 ・ある程度の文字数(薄いリプレイになってしまいます)
 ・行き先の明記
 ・(あるようなら)グループタグ
 ・大切だった相手(IDでも、感情欄指定でも、関係者さんでも大丈夫です)

●<奇病奇譚>の世界観
 染が担当させて頂くライブノベルシリーズの一つです。
 混沌に似たどこか。混沌と同じように考えていただいて大丈夫です。
 混沌と違う点は、原因不明の奇病がうじゃうじゃとあるところ。だいたい染の性癖です。
 <奇病奇譚>のタイトルがつけられています。

 ・過去作
 涙石病 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8400
 絆忘病 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8408
 花弁病 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8491
 縛椛病 https://rev1.reversion.jp/scenario/detail/8626

 以上となります。
 ご参加をお待ちしております。

  • <奇病奇譚>泡沫病完了
  • NM名
  • 種別ライブノベル
  • 難易度-
  • 冒険終了日時2022年11月16日 22時06分
  • 参加人数6/6人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 6 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(6人)

寒櫻院・史之(p3p002233)
冬結
シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)
花に願いを
ネーヴェ(p3p007199)
星に想いを
冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)
秋縛
星影 向日葵(p3p008750)
遠い約束
レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)
青薔薇救護隊

リプレイ


 まるで昔聞いた御伽噺を思い出す病名だ。
 俯いた『真意の選択』隠岐奈 朝顔(p3p008750)はきゅっと歯を食いしばって。
(あの物語の主人公は王子様の知らない所で泡になったけれど、この病気は思いを伝えれば泡になるなら、愛する人に死を伝えられるんですね――それを素敵だなんて、思っちゃいけないのになぁ……)
 伝えられないまま。忘れられないまま。たったひとりで死ぬだなんて、耐えられない。

 私は君の恋心を捨ててまで生きたくないよ――だから君に思いを伝えます。

 二人っきりの時に、笑顔を心がけて。
 大切な時間を。大切な記憶を。大切な瞬間を。
 誰にも奪わせない。

「××君、大好きです」
 いつも伝えていたはずなのに、声が震えてしまう。どうしてだろう。
「君の輝くばかりの笑顔も在り方も、無茶してしまう所も、涙や辛さを抱え込んでしまう所も……短所も長所も全部全部」
 黒い髪が揺れる。それから、呪いを。愛を込めた呪いを――『どうか、私の事は忘れて幸せになって下さい』。
 そう思うのが正しいのに、言うべきなのに。どうして言えないんだろう?

 ああ、そうか――本当は誰よりも私が君を幸せにしたかった、君が私で幸せになって欲しかった。

 ほろほろと、身体が崩れていく。
(君の1番になれなかった私が与えた物は。いつかは癒えてしまうけれど、乗り越えてしまうだろうけれど――君の心の傷になりますように)

 そうすれば少しは君の大切な存在だったと思えるかなって。
 どうして私はそう思ってしまうんだろう?
 そう思ってしまうから、あの人達みたいに彼の大きな存在になれないんだろうに。

 涙なのか、泡なのか。
 それすらもわからない。

 『私は君の恋心を捨ててまで生きたくないよ』――違うんだ。

「こんな恋心は捨てるべきなのに、捨てれない私は死んだ方が良いんです」

 1番醜いのは、私の心だ。
 そんなこと、1番私がわかってる。

 本当は誰よりも、愛してるんだって。そのままずっと、誰より幸せにしてみせたかったのに。


「愛を告げられない冬の時期は苦しかったね、しーちゃん」
 くったりと力の抜けた『しろがねのほむら』冬宮・寒櫻院・睦月(p3p007900)はかたわらの夫へと微笑みかける。
 お前が決めたことなら俺は従わなくては。それが隷属を宣言した『若木』寒櫻院・史之(p3p002233)の役目
「契を交わした間柄になれたのも、あのたった一言があったから……いまは信じているからこそ、ちょっとのわがままややきもちは許してよね」
 なにも答えることが出来ない。頷くだけで精一杯だ。
「代わりに僕は永遠を歌うから。その腕で抱いていてよ。鳥かごのように」
 そっと手が伸びる。つなぐ。むすばれる。永遠に。
「大好き、大好き。本当に大好きなの。初めて会ったときから、しーちゃんがずっと好き。しーちゃんしか見てないの。心揺れるときなんか一時もなかった。まっすぐしーちゃんだけを見てたんだよ」
「……かみさまをただの人にしてしまった責任は取るよなんて、俺も大きく出たものだけど。本音ではね、俺もずっとお前に恋してた」
 きゅ、とからめた指先。つめたくて、水みたいだ。
「……だからもう受け入れるしかなかったんだ、お前の想いを」
 冷え切った神社での生活でしーちゃんだけが心の支えだった。
 君は違ったみたいだけど、それでも従者としてそばにいてくれて嬉しかった。
 混沌へ呼ばれたとき、僕はもう何も我慢しないことにした。
 だからくっついてせかして名前を呼んで。すこしでも僕を見てほしくて。

 願いは叶い、僕たちは夫婦になった。

「いっしょに暮らすって、大変だね。今まで見えなかったところも見えてくる。ときには喧嘩することもある。同じベッドで眠れない夜だってある。だけどそんなところも、重ねていく日々の中、いとしいと思ってしまうから。いっしょになれてうれしい」
「……そうだね。愛してる、それがすべての終わりで始まりだったね。性別迷子だったお前が女になったきっかけだ」
 すり、と頬を寄せるその仕草すら弱々しくて。
「俺への恋情を愛と呼んだ。それが最初の一歩だつたね」
 だからぎゅっとだきしめる。いかないで、消えないで。ここにいて。
「愛してるよ僕のしーちゃん。僕だけのしーちゃん」

「知ってる。君がこのあとどうするか。そのくらいはわかるよ。夫婦だもの」

 とけていく。まるで人魚姫だ。とても、とても、きれい。
「溶けていくね、すこしずつ。抱きしめているのに泡になって、人魚姫みたいだ。お前が消えていく、消えていくよ」
 かきあつめても。口に含んでも。それでも、どうしても届かない。

 ならば、後を追わなくては。
 お前と合わせた肌が、唇が、心が、うずいているうちに――それはきっと灯火になって闇路のなかでも俺とお前を引き合わせてくれるだろうから。
 冥府への道のりもお前と二人なら楽しいものになるだろうから。

 きっと僕ら、同じ場所へ行ける。
 そこでまた共に暮らそう。眠るように溶けるようにはばたくように。
 だいじょうぶ、北辰はいつだって僕たちを祝福してくれる。

 愛してる、愛しているんだ睦月。はっきりと胸を張って言える。
 きっと俺達は同じ場所へいける。
 永遠というものがそこにあるのならそれすら飼いならして安穏と暮らそう。
 一振りの刃として、お前を守ると、定められたあの時から、きっとこうなることは決まっていたのだから。

 消えて、おちて。そうして転がった首は。
 ただひとり、愛したひとがいない世界を捨てて。
 そうして、初恋の名の元に、散っていったのだ。


 ヤマトは昔から恥ずかしがり屋でした。
 『青薔薇の奥様』レイア・マルガレーテ・シビック(p3p010786)は懐かしい日を思い出す。
 初めて出会ったときも、おどおどしてましたし、一体何をそんなに怯えているのか訪ねたら「お前は俺が怖くないのか」って。
 私はどうしてそんなことを聞くのかわかりませんでしたけど、彼が獣種の中でも力加減がわからず暴走してしまうタイプで周りから嫌われているのを知りました。
 私も足が不自由でしたからある意味お似合いの二人だったんだと思います。……周りからも嘲笑されながら過ごしてたことはわかってましたし。

 二人で大きくなって、自然とプロポーズされて……だから突然泡沫病になるなんて思いもしなかった。
 こうして手を翳せば、ほら。空が透けて見える。
 ……元々あまり「愛してる」なんて言わない人でしたけど、本当は彼が一生懸命言おうとしているのはヤマトが泡沫病になってから気がついた。
 伝えなくたって、気付くことが出来た。
 だから私があえて言おうとしても……なんだか恥ずかしい。
 結局私達似た者同士だなんて、こんな病気になってから気が付きました。
 もうどちらが病気なのかわかりません。ヤマトも言えなくて、私も言えなくて辛い。
 だから二人で伝えて……なんて、考えて。そんなの、だめですよね。彼が消えてしまうのに。

 治せるものなら治す方法を探したい。でも、私わかってるんです。
 彼が言えなくて辛そうにするたびに私達はしっかりと絆がつながっているということが。
 それが、この私達で交わした結婚指輪が物語っているから。
 でも、どうしてかしら。
 あなたの唇から愛が漏れることはないのだと思うと……胸が、いたいのです。
 慰めるように彼は口付けてくれるけれど、そこに言葉は伴わない。それだけが、ずっとずっと、くやしい。


 くらり、と、眩暈がして血の気が引いていく音がした。
 しゃがみこんだ『星に想いを』ネーヴェ(p3p007199)を支えるのは『カモミーユの剣』シャルティエ・F・クラリウス(p3p006902)。
 座り込んで眩暈が引くのを待って……なんて、している余裕はなくて。シャルティエが抱き上げ、そっとベンチで横に寝かせる。
 体が弱くて、屋敷から出られなかった時を思い出す。あの時に戻ったみたい。けれど、どうして急に?
(どうにも時折くらっと眩暈がするらしい。ネーヴェさんは気分が悪いからだって言うし、実際顔色は悪いように見える……けど、体調が悪いだけには思えない)
 じぃ、と見つめるシャルティエ。ネーヴェは目を開くことはなくて。ただ、緩やかに時が流れていく。
 それは決まって、クラリウス様が、いる時に。
 わたくしが、あることを、言おうとした時に。
(ひどく、いやな、予感。無理を通して、言ってしまったら…消えてしまいそうな、気がして。まるで…言うことを、拒んでいるみたい)
 はぁ、と。震えるようなため息がこぼれた。
 そうした時、何だか少し余所余所しいというか。一線を引かれたように距離を感じる事がある。
 何かを我慢しているようにも見える姿には既視感があって。心配になって尋ねても、誤魔化すように笑うだけ。そんな笑い方にもやっぱり見覚えがあるから、余計に何か隠してるように思えてしまう。
 なんでもなかったように、笑う。
 困らせたくないし、悲しい顔もされたくない。
 そんな仕草でより一層、あなたを想ってしまうのに。
(だから、絶対に、バレないように。いいえ、何かあることは、バレているのだろうけれど…少しでもわからないように)
 冷たい水ですべてを押し込んで。
「大丈夫ですか? ……さっき、何かいいかけてたのも、ありますけど」
「はい、へいき、です。言いたかったことは、忘れてしまったから。思い出したら、言いますね」
 うそだ。
 もう、わかってる。

 ■■■■■。

 だって、きっと、言わなければ良いのだから。言うべきではないと、いうことだから。
 込み上げそうになる想いを、飲み下すだけで、今まで通りでいられるのだから。
 悪い顔色は、化粧でどうにか誤魔化せばいい。
(嫌われた、……訳では無い、と思う。……分からない。もしかしたら、僕がそう思いたいだけなのかもしれない)
 席を立ったネーヴェの背中を目で追いながら。俯く。
(でも、……嫌われたのでなくても、様子のおかしい原因が僕だったなら。僕のせいで何か苦しんでいるなら。僕が居なくなれば…………なんて。そんな事を考えても実行なんて出来ないのは、僕自身が一番よく分かってる)
 消えたくない。消えられない。離れたくない。
(僕が原因とは限らないから。僕が解決してあげられるかもしれないから。そんな事を言い訳にして、きっと僕は離れようとはできない。だから)
 だから、これからも傍にいて、心配して、どうにか出来ないかを模索するんだろう。
 それが彼女を苦しめるとも知らずに。
 僕の大切な友人だから力になりたい、だなんて言って。■■、だとか。秘めた気持ちは伝えられないままなのに。
 それなのに、側にいたいのだと、願ってしまう。
 貴方が嫌いなわけではなくて。貴方のせいでもなくて。わたくしの問題なだけ、だから。どうか、どうか、気を揉まないでほしい。

 大丈夫、大丈夫。これまでだって、言わずにいられたのだから……だから、どうか。心配そうな顔をして、暴こうとしないで。

 逃げるように走る。お手洗いだと笑って、震える声を圧し殺す。
 ああ、いっそ。どこか遠くへ逃げてしまったなら、楽になるのかしら。
 そうすれば。■■■■■なんて五文字に、振り回されることもなくなるの?

成否

成功

状態異常

なし

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