PandoraPartyProject

シナリオ詳細

<総軍鏖殺> 線路整備の警備協力<トリグラフ作戦>

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

 鉄帝の とある街。
 群雄割拠の修羅の国と化した鉄帝の中で、他と変わらず影響を受けている。
 頻繁する野盗などに対抗するべく街の要塞化を進め、さらに外部から戦力を確保。
 一年ほど前から食料生産と確保を事業として行っていたこともあり、その気になれば外部に提供できるぐらい食料も潤沢だ。
 それは幻想の商人が関わっていたが、その内の1人、リリスが街の実質的な統治者である軍人ギギルに提案した。

「そろそろ次の段階に進もうと思うの。協力してくれない?」
「どういうこった?」
 ギギルに聞き返され、リリスは応える。
「今回の騒動が起こってから、四つの段階を考えてたの」
「今回の騒動ってのは、魔種の野郎が皇帝になりやがってしっちゃかめっちゃかになってることだよな? それで、なにしようってんだ?」
「順に説明するわね。第一段階は、あたし達の拠点になる場所の設置。拠点っていうのは、この街のことね。街を要塞化して、街を守れるだけの戦力を確保したわ」
 現在、街の周辺には壁を設置し、それ以外の場所には地雷を埋設している。
 また、侵入者があれば察知できるよう、複数の手段を講じていた。
 その上で、リリス達の商会が契約しているラサの傭兵や、練達の科学者に作って貰った小型のロボット兵を持ち込むことで、街の守りを固めていた。
「拠点が出来れば、ここを中継基地にして物資の集積と配布が出来るようになる。これが第一段階よ」
「……食料やら医薬品を大量に持ち込んでるのは知ってたが……それをするってことは、次はバラ撒く段階ってことか?」
「ええ。それが第二段階ね」
 リリスは説明する。
「まずは、この街と関わりの深い、他の街に持っていくわ。今の情勢だと物資が不足するところも多いでしょうから、必要でしょ?」
「それは良いが……用意出来るのか?」
「そこは商売よ。相手から得る物があれば、それを元に幾らでも用意してみせるわよ」
「対価ってことか……」
「ええ。ギブ&テイク。でなきゃ、続かないでしょ?」
「……ってもなぁ。何を差し出せってんだ?」
「遺跡の発掘と、遺物の所有権ね。あたし達がこの街との取引に使ってるのと、同じことよ」
 リリス達が、今いる鉄帝の街に関わるようになった切っ掛けは、街に隣接する遺跡群から出る遺物を独占利用する権利を得るためだ。
 遺跡から発掘した遺物をリリス達が取得。
 それを元に練達の科学者にリバースエンジニアリングして貰い、新商品を開発し利益を上げる。
 いま街の警備に当たっているロボット達も、そうして作られた物だ。
「遺跡ねぇ……」
 ギギルは考え込むように眉を寄せたあと言った。
「今の状況で遺跡の発掘なんざする余裕はないぞ」
「別に良いわよ。要は担保となるモノがあれば良いってだけだし」
「担保ねぇ……金借りるみたいだな」
「実質的に近いですね」
 話に加わったのは、リリスと同じ幻想の商人、ヴァン。
 彼は、手順を説明する。
「今回の件では、遺跡の発掘と遺物独占権をパッケージにして証券化します」
「……? どういうこった?」
「遺跡の発掘などは、現在の騒動が落ち着いてから行います。なので、権利の先物買いになるわけです。その権利を証券化し分割した上で販売し、それにより得たお金で食料や資材を購入。購入した物を鉄帝に持ち込み、遺跡を担保にした街に提供していくというわけです」
「……それって、なにがどうなるか分からねぇもんを売りつけようってことか?」
「そうです」
「詐欺師か、お前ら」
「今は無いモノを売り買いするのも立派な商売ですよ。もちろんリスクは発生しますが、それ込みで見極めて買えない者は商売人とは言いません」
「……おっそろしい話だな、おい……で、その証券化? だったか、それで金用意して物をこっちで配ると。それが第二段階ってことか?」
「ええ、そうよ」
 リリスが説明を引き継ぐ。
「第一段階で、拠点設置および物資分配のハブとなる場所の構築。
 第二段階で、周辺の街を取っ掛かりとした物資輸送の拡大。
 それが巧くいったら、さらに幅広くするために第三段階目。
 鉄帝の権力機構との交渉による、国全体を視野に入れた援助行動の拡大ね」
「……あー、そりゃあれか……帝政派とかにお墨付き貰って、大々的に動くってことか?」
「ええ。小さな街レベルなら、今の段階でも実行できるわ。でもそれ以上に広げるとなると、権力のお墨付きなきゃ無理だもの」
「物資の輸送以外にも、色々と手を広げたいですしね」
 ヴァンが話を続ける。
「帝政派は――ザーバ派もそうですが、鉄道施設の奪還を視野に入れ動いています。物資輸送に鉄道は有効ですし、我々としても利用できるようにしたい。そのために物資や人材の提供をする代わりに使用の許諾が欲しいですね。それと街の安全のため、野盗などの殲滅もしたいのですが、その際に野盗の持っていた財産の没収、並びに野盗の罪に応じた強制労働をさせられるようにしたいです」
「そいつはあれか……海洋の私掠船みたいな感じか?」
「はい。現在、刑務関係はまともに動いていません。犯罪者を殺さずに留める方法が難しい。それを避けるためも、必要かと」
「悪いことしてるんだから、生きて身体で払って貰わないとね」
「そういうことです。あとは、他にも事案があれば協力し、コネクションを作っておきたいですね。ヴェルス帝の捜索にも動いているようですし、その援助も出来れば」
「盛り沢山だな……んで、そこまでしても三段階目か……四段階目は何なんだ?」
「複数の権力機構と交渉して、より広く動けるようにすることよ。可能なら、交渉の橋渡しになれれば一番ね」
「……バラバラになってる派閥を一枚岩にしたいってことか?」
「そうなれば良いでしょうけど、難しいでしょうね。だから望むのは、戦後に荒廃しないよう事前に話し合って貰うことね」
「戦後……ね……」
 苦い顔になるギギルに、リリスは言った。
「現状は、内戦一歩手前みたいなもんでしょ? ここから落ち着くには、何か一波乱ないと無理でしょ。だからって、それで余力尽きて国が荒廃したり無くなったり、残った勢力で争い続けられたら堪らないもの」
「……他人事なのに、随分と気に掛けるんだな」
「他人事じゃないわよ」
 リリスの言葉を引き継ぐように、ヴァンが続ける。
「万が一国が無くなれば、難民が大量に発生します。そうでなくとも、国の荒廃や争乱の継続で発生する可能性はあります。そうなれば地続きの幻想などに押し寄せるかもしれない。確実に悪い影響が出るでしょう」
「だから、それを気にしてる幻想の貴族もいるのよ。一部だけどね」
 リリスは、知り合いの貴族を例に挙げ言った。
「商売の縁とかで知り合いの貴族が何人かいるのよ。家格が高いわけじゃないから、権力が強いわけじゃないけど。でもそれだけに、騒動には敏感なわけ。他国のことでもね」
「玉突き事故で自分の領地に悪影響が出たらたまらないという人もいるのですよ」
 ヴァンが言った。
「表だって動くのは難しいですが、今回の証券化の仕組みが巧くいけば、それを購入することで間接的に援護が出来る。手伝って貰えませんか?」
「……分かった。とりあえず、うちの街と関わり合いのある街に当たってみる。それでいいか?」
「はい。お願いします」

 ということがあり、ギギルは伝手を頼って複数の街に話をつけていった。
 その中で、頼まれごとをしたギギルはリリス達に提案した。

「ある街を援助したい。鉄道利用にも繋がるかもしれねぇ」
「どういうこと?」
 聞き返すリリスにギギルは応える。
「今、帝政派が鉄道を取り返す作戦を進めてるのは知ってるな?」
 これにヴァンが返す。
「トリグラフ作戦というヤツですか? ザーバ派も鉄道網の確保に動いているようですが」
「ああ。それで色んな所が動いてるんだが、俺に助けを求めた街は、線路の整備や点検をしてる街のひとつだ。だが今は、魔物が徘徊してるせいで整備できないらしくてな、それをどうにかしたいらしい」
「魔物を排除して線路を点検したいということですか?」
「ああ。定期検査ができなくなったんで、まともに列車を走らせられるか不安らしい。だから点検したいみたいなんだが、魔物をどうにかするのは無理っぽくてな。手を貸してやれねぇか?」
「その手助けをすることで、鉄道利用の口利きに繋がるかもしれませんね……分かりました。援助したいのですが、担保となる遺跡はありますか?」
「街の一存でどうにかできるのは――」
 詳しい話を聞いて査定したヴァンは言った。
「それなら大丈夫です。証券化して売りさばくのは時間が掛かるので、一端こちらで立て替えましょう。それで人員は――」
「ローレットに依頼出しましょう」
 リリスが言った。
「イレギュラーズの子達も、色々と動いてる子もいるみたいだし、興味を持って引き受けてくれる子もいるかもしれないでしょう?」
「いいですね。私達だけでは、どのみちできることは知れてますし、興味を持って貰うためにも依頼を出しましょう」

 ということで依頼が出され、『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が詳細を説明した。

「鉄帝の鉄道整備を邪魔する魔物を退治して欲しいのです」
 ユリーカが言うには、線路を魔物が徘徊しているとのこと。
「線路の点検や整備をするのに邪魔だから倒せるだけ倒して欲しいみたいです」
 点検する箇所に出る魔物は、強くないモノが多いようだが、稀に強いモノもいるらしい。
「線路の点検をする人たちを守りながら、魔物達を倒して欲しいのです」
 巧くいけば、鉄帝の鉄道利用の一助になるだろう。
 話を聞いたイレギュラーズ達は、現場に向かうことにした。

GMコメント

おはようございます。もしくはこんばんは。春夏秋冬と申します。
今回は、鉄帝の鉄道に関連するシナリオになっています。

以下が詳細になります。

●成功条件

魔物を倒し、線路の点検整備を成功させる。

●状況

今回は、以下のような流れで進みます。

1 線路で点検開始。

鉄道の整備点検を街の住人が行いますので、その警備につきます。

2 点検中に魔物が出没。

一斉に襲って来るのではなく、一定時間ごとに湧いて出る感じです。

だいたい30分に一回、敵の集団とエンカウントします。

一度に襲撃してくる敵の数は、2D6です。

3 6時間点検を続けたあと、完了。

6時間かけて線路の点検を行います。

点検は1か所だけでなく、スタート地点から移動して進むことになります。

6時間なので、敵とのエンカウントは12回になります。

●戦場

線路の傍での戦いになります。戦闘の際に支障のある地形はありません。

点検している街の人たちを守りながらの戦いになります。

点検している街の住人は鉄帝の人間だけあって腹が据わってるので、皆さんを信頼して点検に集中しています。

●敵

ストリガー×? 遭遇率は高です。

生前に激しい怒りを抱いていたアンデッドモンスターです。燃えさかる爪を振るって攻撃します。

いわゆる雑魚敵です。

燃えさかる爪を怒り任せに振るいます。至~近距離の単体や列への攻撃を行い、『火炎』系のBSを伴います。

ラタヴィカ×? 遭遇率は中です。

流れ星のように光の尾を引く、亡霊のような怪物です。

動きが素早く面倒な遊撃役タイプ。

俊敏性や機動力に優れており、戦場を縦横無尽に飛行します。高威力の物超貫移で体当たりをする他、怒りを誘発する神秘範囲攻撃を行います。

ラースドール×? 遭遇率は低です。

古代遺跡から出土したパワードスーツに怒りが宿り、動き出した怪物です。

非常にタフです。盾役として立ち回られると厄介です。

ハンマーのような長い腕による高威力近接攻撃や、機銃掃射による中距離扇攻撃を行います。ハンマー攻撃にはブレイクを伴います。

上記の敵が、30分毎に2D6の数出没し襲い掛かってきます。

基本はストリンガーが出て、その中にラタヴィカやラースドールが混ざっていることもある、という感じになります。

●味方NPC

リリス&ヴァン

依頼人です。回復とバフデバフ特化タイプ。

現地に行って協力します。軽食などの対応もします。

何か用意して欲しい物があれば、可能な範囲で用意してくれます。

ギギル隊×10

鉄帝の軍人です。戦い慣れしており強いです。

回復は持たず、攻撃主体です。

線路整備の鉄帝住人×40

整備点検のためのレールや枕木、その他の整備品を蒸気トラックに乗せて現地で作業しています。

整備点検に集中しており、戦闘には加われません。

●特殊ドロップ『闘争信望』

当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

●情報精度

このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

説明は以上になります。

それでは、少しでも楽しんでいただけるよう、判定にリプレイに頑張ります。

  • <総軍鏖殺> 線路整備の警備協力<トリグラフ作戦>完了
  • GM名春夏秋冬
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年11月05日 22時05分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

郷田 貴道(p3p000401)
竜拳
志屍 瑠璃(p3p000416)
遺言代行業
アト・サイン(p3p001394)
観光客
イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
黒撃
リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)
木漏れ日のフルール
オリーブ・ローレル(p3p004352)
鋼鉄の冒険者
アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)
不死呪
イズマ・トーティス(p3p009471)
青き鋼の音色

リプレイ

(守るべき人が多く、求められる時間も長い。中々に難しい部類の依頼ですね)
 現地で改めて依頼内容を聞き、難しさを覚える『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)に鉄道整備員が頼み込む。
「危険だが、あんたらが頼りだ。よろしく頼む」
 これにオリーブは応えた。
「受けたからには全力を尽くすのがイレギュラーズです。何とかやってみます」
 それを聞いて、整備員たちの表情は少し和らぎ、現地に向かう準備を進める。
 整備物資を運ぶ蒸気トラックの点検がされる横で、大柄亜竜の馬車ドレイク・チャリオッツの簡易改装をしているのは、『観光客』アト・サイン(p3p001394)。
「ドレイク・チャリオットを持ち込んでくれたのはありがたい。これなら簡易拠点に出来る」
 幌と布を利用し簡単な煙突を設置、レンガも組んで暖炉を作る。
「後で簡単に元に出来るようにしておくが、もう少し改装しても良いだろうか?」
 アトの問い掛けに、持ち主である『深緑魔法少女』リディア・ヴァイス・フォーマルハウト(p3p003581)は穏やかに応えた。
「大丈夫です。少しでも休めるよう、お願いします」
 話していると、依頼人であるリリスとヴァンが飲食物を持って来る。
「すぐに作れて食べ易い材料を持って来たわ」
「馬車の中に積んでも良いですか?」
「ええ、お願いします」
 和やかに話をしながら詰み込んでいく。
 必要な物は他にもあったが、それをギギル隊が運んでいると、『青き鋼の音色』イズマ・トーティス(p3p009471)も運んでくれた。
「今日もよろしくね!」
 以前依頼で共闘し顔見知りなギギル隊が信頼するように声を掛けると、イズマも親しげに返した。
「ギギルさんは久しぶり、また会えて嬉しい」
「こっちも顔見知りに会えて嬉しいね。頼りにしてるぜ」
「護衛なら任せてくれ。前よりも強くなったところを見せるよ」
 力強くイズマは返すと、馬車に荷物を持っていきリリス達にも声を掛ける。
「色々準備してくれて助かるよ、ありがとう」
「お礼を言うならこっちの方よ。来てくれてありがとう」
 そう言うと、必要物資の確認をする。
「飲み物、軽食、救急箱、他に必要な物はあるかしら?」
「そうだね――」
 二重チェックで不足の確認も終わらせ、現地に向かうことに。
 すると整備員の家族が見送りに来て、頼み込む。
「どうか、守ってやってください」
「任せておきな、何体だって片付けてやるぜ、HAHAHA!」
 元気付けるように返したのは、『喰鋭の拳』郷田 貴道(p3p000401)。
 剛毅な笑顔を浮かべ安心させながら、表情には出さず考える。
(鉄道整備は何処に行っても邪魔が入りやがるな。偶然か作為か……まあ、そこは置いといて、今はまず、目の前の障害を踏み潰さねえとな)
 貴道と同じように、安心させるようにてらえるのは『遺言代行業』志屍 瑠璃(p3p000416)。
「安全に整備点検が出来るように私達で守ります。大丈夫ですよ」
 安堵する家族に応えながら、内心で呟く。
(装備や道具の点検・整備は、とても大事ですからねえ。事故の原因にならないよう、点検や整備の邪魔な要素は排除しないと)
 2人と同じように、整備員の家族に声を掛けるのは、『不死呪』アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)。
「しっかりと護衛するデス。みんな無事に戻って来れるようにしますデス」
 これに礼を言いながら頼み込んでくる家族にアオゾラは、やる気を増した。
(人の移動に物を運んだりと今は危険デスガ今後必要になる鉄道の整備、頑張るデス。食べ物がないのは辛いので補給の為にとても重要な任務デスネ)
 意気込むアオゾラを見て、整備員も家族も表情が和らいだ。
 そして準備が終わり、出発。
「鉄道ルートがカクホ出来ればこれから冬にかけての支度を整えられる村も多くなる! 気合い入れて行こう!」
 号令を掛けるように声を上げたのは、『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)。
「東西南北の勢力共闘にもヒツヨウだし、交通手段を手に入れられるように頑張ろう!」
 整備員達から応じるように大きな声が上がる。
 意気込みも充分な中、街を離れる。
 道中、幸い何事もなく進み、現地到着すると即座に作業開始。
 整備員達は手早く点検整備を始め、イレギュラーズ達は配置につく。
 しばらく何事もなく続くかと思われたが――
「来ました。5体ほど近付いてきます」
 ファミリアーの鴉で警戒に当たっていた瑠璃が警告し――
「西の方からだ」
「他からは今のところ来てない。新手が来る前に倒そう」
 周辺の索敵をしていたイズマとイグナートが情報を補完するように告げ、戦闘が始まった。

●護衛戦闘
 燃え盛る爪を持ったアンデッドが5体。
 視認すると同時に動いたのは瑠璃。
(まずは機動力を削りますか)
 群れで固まっている所に、一斉掃射。
 鉛の奏音を響かせ撃ち抜き動きを止める。
 敵の動きが止まった隙に、イズマが仲間を強化。
「これで最適な動きが出来ると思う。間合いを詰められるよう援護射撃するから止めは頼むよ」
「分かった。頼らせて貰おう」
 アトは応えると突進。
 それに合わせ、イズマと瑠璃が一斉掃射し援護。
 敵は動けずアトの接近を許し、気付いた時には先制攻撃を受けた。
 足を払われ体勢を崩した所で、喉を鷲掴みにされ地面に叩きつけられる。
 生身ならただでは済まない衝撃だが、潰れながらもがく敵を見て――
(アンデットか!)
 最適な対処をアトは探る。
(脳に打撃を叩き込むのが大体の対処法だが――)
「さて!」
 敵の頭を蹴り上げ、地面に叩きつけるようにして踏み抜く。
 衝撃で頭が割れ潰れ、ぴくぴくと痙攣しながら動かなくなる。
「まずは1体」
 敵戦力の沈黙を確認し、新手に挑む。
 そちらには、既に他の仲間が向かっていた。
「あっちに行きたきゃ、ミーを倒してから行くんだな!」
 鉄槌の如き剛拳を、蛇の如きしなやかさで貴道は放つ。
 その威力は災害を思わせる。
 息もつかせぬ連続拳打で、片っ端から殴って殴って殴り倒す。

 ほどなくして、敵の第一波を全滅させた。

「お疲れさまです。飲み物の用意をしてますから、欲しい人は言って下さい。魔力も回復させますから、来て下さいね」
 後衛で補給担当に就いているリディアが声を掛ける。
「襲撃は一度だけではないと思います。次の襲撃に備えて休める時は皆さん少しでも休んでください」
 今回の依頼でイレギュラーズは、長期戦を見越した戦い方を想定している。
 幾つか方法はあるが、選んだのは全力を出して最短決着をつけつつ回復を行うこと。
 そのため回復要員と手段は重要だ。
「長丁場だ、食えるときに食っておけ」
 アトが用意していたスープを配る。
 じゃがいもと玉ねぎと人参、干し肉、そしてすりおろしたジンジャーを加えた、観光客の特性スープ。
「30分ごとにカップ1杯だけでもだいぶ違うぞ」
 場馴れしていることもあり、皆に勧めていった。

 休める時に休み、ひと息ついた所に第二派が。

「右手の集団を担当します」
 リトルワイバーンで上空から広く視界を取って経過していたオリーブが、第二派では真っ先に動く。
 敵はアンデッドなストリガー5体。
 そちらとは逆方向からも数体来るが、距離が近い方から片付ける。
(纏めて攻撃した方が良さそうですね)
 リトルワイバーンを操り急降下すると、爆撃するように一斉掃射。
 身体を撃ち抜かれながら敵は燃え盛る爪を振るうが、永久氷樹の腕輪で炎への耐性を得ているオリーブは最小限のダメージで抑える。
(これなら引き付け役も出来そうですね)
 仲間が攻撃し易いよう、敵を引き付ける。
 オリーブの援護もあり、皆は効率的に敵を叩くことが出来た。
 右手の敵を片付けている間に、左手からは俊敏に動き回るラタヴィカが2体襲撃。
 その内の1体を、イグナートが抑える。
「させるか!」
 整備員を狙おうと僅かに動きが止まった隙を逃さず、イグナートは渾身の一撃を叩きつけた。
 地面に叩きつける勢いで殴り、イグナートは挑発するように声を上げる。
「こっちだ! 掛かって来い!」
 怒りを滲ませ敵は突進。
 それを拳で迎撃しながら動きを誘導していく。
(誰も傷付けさせない)
 イグナートは整備員達の身を守るように戦いを進め、仲間の援護もあり倒した。
 明らかにイレギュラーズの方が強い。
 だが第二派は数が多く、整備員に向かおうとする者もいたが、それをアオゾラが身体を張って止める。
「これ以上は、行かせませんデス」
 整備員に向け突進するラタヴィカの前に立ちはだかり、受け止めると同時にカウンター。
 鋭い乱撃で傷を与えると、呪術で敵の怒りを自分に向ける。
「来て下さいデス。あなたが憎いのは、ワタシデス」
 術中に嵌り、敵はアオゾラを執拗に攻撃。
(これで良いデス。整備員さん達を守れますデス)
 身体を張ったアオゾラのお蔭で整備員に向かう敵は無く、引き付けている間に他の敵を倒した仲間が駆けつけ、止めを刺してくれた。

「怪我が! すぐに癒しますね」
 戦闘後、リディアが忙しく動く。
 ある意味リディアは、今回の長期戦の要だ。
 いつ新手が来ても良いように手早く癒さなければならない。
 それだけに疲労も大きかったが――
「お疲れさま」
「私達も援護しますから無理なさらずに」
 依頼人のリリスとヴァンがリディアの回復に動く。
 2人とも回復系に特化しており、リディアを助けるように動いていた。
「ココア、飲む?」
「ありがとうございます」
 皆を癒し終え一息つくようにお茶をする。
「美味しい」
「何か摘まみますか?」
「サンドイッチとかも用意してるわよ」
「ならひとつ――美味しい。料理得意なんですか?」
「得意というよりは慣れね。大人数向けにシチューとかよく作ってたわ」
「私はお菓子の類が。師匠が甘いもの好きだったので。リディアさんは、どんな物をよく作りますか?」
「私は……シーザーサラダを作ったりしますね」
 緊張をほぐすように軽い会話を交わしながら、小休憩を挟んだ。

 その後も敵の来襲はあったが危なげなく倒し、このまま進むかと思えたが――最大の襲撃が終盤でやって来た。

「敵の数が多い! ギギル隊抑えに行こう!」
 複数の箇所からの襲撃に、イズマがギギル隊を指揮して出る。
「戦闘開始!」
 狙いは数が多いストリガー8体。
「回復と援護はするから全力で叩き潰して!」
「おう! 頼りにしてるぜ大将!」
 ギギル隊は最初から全力攻勢。
 突進し距離を詰め、迎え撃とうとする敵にイズマは一斉掃射。
「他の敵と連携されたからやっかいだ! これ以上進ませるな!」
 ワイバーン『リオン』に乗って素早く移動しながら指示を出し、適切に一斉掃射。
 イズマの援護に応えるようにギギル隊は敵を潰していく。

 その間も異なる地点から敵が襲撃してくる。
 地響きをさせ西からラースドールが1体。
 東からはラタヴィカが3体突進してくる。

(亡霊はひきつけてもだいたい回避はできようが……あの機械人形は厄介だな)
 敵との相性を考え、アトは仲間に呼び掛ける。
「東から来る奴は僕が抑える。悪いが、あの機械人形は任せる。相性が悪い」
「分かった! あのデカブツの相手は任せて!」
 イグナートは力強く応え、ラースドールに向け突進。
 気付いた敵は腕に装備した機銃で一斉掃射しようとしたが――
「やらせん」
 オリーブが先んじて一斉掃射。
「そのまま進んで下さい! 接敵できるまで援護します!」
「ありがとう! 助かるよ!」
 援護を受けイグナートは接敵。
(一撃じゃ倒せない。でも――)
 渾身の一撃を敵の足関節部に向け叩きつける。
(皆が戦い易くすることは出来る!)
 イグナートの一撃で敵の体勢が崩れる。
 その隙を逃さず皆は距離を詰め、連携攻撃を開始した。
 巧く戦いが進んでいるのをアトは目の端で確認すると、自分の担当の敵に集中する。
(まずはひきつけるか)
 距離を詰め、戦いの鼓動を響かせる。
 それを受けた敵は、アトを無視できず突進。
(それで良い。来い)
 敵を引き付けながら、仲間の元に向かわないよう誘導する。
 高速で移動する敵は苛立たしげに飛び回り、逃げられないよう囲もうとしたが――
「させませんよ」
 瑠璃が一斉掃射。
 動きが鈍った所で距離を詰め、アトの背中を守るような配置につく。
「合流されて連携されると厄介です。ここで押し留めましょう」
「ああ。そうしよう」
 瑠璃とアトは互いの死角を補うように連携を取り敵を押し留める。
 2人とも戦いの鼓動でひきつけ続け、隙を見つけては距離を詰め叩く。
(速さ勝負といきましょうか)
 隙を見つけた瑠璃は、重心を落とすと瞬間加速。
 瞬時に間合いを侵し切り裂く。
 怒りの声を上げ敵は暴れる。
 その勢いに無傷とはいかなかったが、リディアが距離を詰め回復してくれる。
「傷は癒します! 心配しないで下さい!」
 力付けるように声を掛け、全力で支援した。
 戦いが激しさを増す中、苛烈に戦うのは貴道だった。
「あっちに行きたきゃ、ミーを倒してから行くんだな!」
 敵の合流を阻止するように、自身を壁にしてラースドールに立ち塞がる。
(力は惜しまねぇ。全力で行く!)
 災害を体現するかのような荒々しい構えから、息もつかせぬ連続攻撃。
 拳打から掌打に繋げ――
(ここだ!)
 敵内部に浸透させ重なった衝撃点に痛恨の一撃。
 轟音が敵内部から響く。
 衝撃の内部炸裂。
 只人なら弾けそうなそれを食らって、なおも敵は動く。だが――
「HAHA! 頑丈だな!」
 貴道は獰猛な笑みを浮かべ攻撃の手を止めない。
 それは仲間も同じ。
「確かに頑丈です」
 オリーブが剣を力強く振るう。
 その軌道は精妙にして、詭道。
 正道からは離れた邪道なれど、その威は鋭い。
 鋼を打ち合う轟音をさせ、確実に傷を刻んだ。そこに――
「頑丈なら壊れるまで叩き込む!」
 イグナートが目にも止まらぬ乱撃で連続攻撃。
 拳を打ちつける轟音と共に、敵は堪らず後退する。すると――
「ガアアアッ!」
 敵は雄たけびをあげ、ハンマーのような長い腕を振り回し距離を取る。
 どうにかして近付こうと、貴道やオリーブ、そしてイグナートが真正面から引き付けている間に――
(今なら、いけるデス!)
 敵の背後に回っていたアオゾラが、乾坤一擲の一撃を放つ。
 高めた闘気を全身から糸状に放つと、敵の関節部に向け巻きつけ拘束する。
 僅かな一瞬。
 だが確実に敵の動きを止め、アオゾラは叫ぶ。
「今デス!」
 それを耳にすると同時に、一斉に連続攻撃。
「いい加減、倒れろ!」
 イグナートは距離を詰めると、渾身の一撃を叩き込む。
 轟音を響かせ打ちつけられた拳は、敵足関節部を破壊。
 ぐらりと体勢を崩す敵に、オリーブが追撃。
(悪足掻きをされないよう、確実に潰しますか)
 イグナートが破壊したのとは別の足関節に向け、剣を振るう。
 邪道でありながら冴えわたる剣閃は、鋼さえも斬り裂いた。
 敵の動きは鈍り、それでもなお暴れるが、貴道が止めを刺す。
「下手に頑丈なテメェを恨みな、他の連中と違って全力で行かせてもらうぜ?」
 死角から踏み込み、敵の内部に侵透する掌打を叩き込む。
 浸透した衝撃が重なり合う瞬間、さらなる追撃。
 内臓を破裂させるような拳打を叩き込み、重なった衝撃が炸裂。
 鋼の砕ける音をさせ、敵は痙攣したあと崩れ落ちた。

 その後、ギギル隊を率いたイズマが、ラタヴィカの抑えに回ってくれていたアトと瑠璃、そしてリディアと合流し倒し切った。

「怪我した人がいたら言って。回復するよ」
 比較的傷の浅いイズマは、連続して回復に動いていたリディアと一時交代して回復を行う。
 それもあり、皆は傷を回復。
 リリス達も回復と、温かい飲み物を配り疲労を癒した。そして――

「終わった! もう撤収してくれて大丈夫だ!」
 ほとんど休みなく続けていた整備も終わり帰路につく。
 街に辿り着き、ほっと一息。
「皆さんのおかげで俺達も動きやすくなる。点検お疲れ様、ありがとう」
 イズマが皆を代表して整備員に礼を告げると――
「あんた等のお掛けだ。ありがとう」
 整備員達も、笑顔で礼を返すのだった。

 その後、それぞれ休みを取る中――

「ところでこれ、何者かの計画的な襲撃……という事はありませんよね?」
 瑠璃が、リリス達に言った。
「余計な心配かもしれませんが……」
「……どうかしら?」
「今回は魔物ですから、糸を引いてるとしたら魔種でしょうが……」
「そういうのとは関係なしに火事場泥棒みたいなことしてる奴らはいるみたいだし……そろそろ狩りに行った方が良いかもしれないわね」
 思案気に呟くリリスだった。

成否

成功

MVP

アト・サイン(p3p001394)
観光客

状態異常

アオゾラ・フルーフ・エーヴィヒカイト(p3p009438)[重傷]
不死呪

あとがき

皆さまお疲れ様でした!
長期戦の大変な戦いでしたが、それを見越した回復・攻撃・役割分担を巧くこなされたのが印象的でした。
皆さまの活躍のお蔭で、整備員は全員怪我もなく無事帰還できました。
整備員は多少怪我人や死傷者が出るかも? と思っていたのですがそれも無く、お見事でした。
整備員の家族達も、喜んでいるようです。

それでは、最後に重ねまして。
皆さま、お疲れ様でした。ご参加、ありがとうございました!

PAGETOPPAGEBOTTOM