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シナリオ詳細

<最後のプーロ・デセオ>海賊を蹴散らし、籠城バニーさんを救え!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング


 新装開店したばかりなのに。

「オラオラ、お客様ですよ~! とっとと出て来やがらねえと口では言えねえような目に遭わせるぜ、ウサギちゃんよお!」
「うさぎちゃんじゃなくしてやらあ!」
 ゲラゲラ笑いがこだまする。割れた窓ガラス。蹴り飛ばされたごみ箱。不規則に点滅するネオンサイン。
 店の前に殺到しているのは『海乱鬼衆・濁悪海軍』――圧倒的に品位もなければ矜持もない、食い詰めた結果の海賊だ。ロマンのかけらもない分、容赦がない。
「たすけてぇ」
 お店の机の下にもぐって小さな声を上げるバニーさんたち。
「イレギュラーズさぁん――」
 

「あっちこっち大変なんだよ」
『そこにいる』アラギタ メクレオ(p3n000084)は、何やら匂いのきつい茶を飲んでいる。医療系スキル持ちは胃薬と見当がついただろう。
「え~と。局面としては最終段階です。ここでこけると大変なことになるますのできっちりやっていきましょう。ここから作戦の説明に入るので全員意識を飛ばさないように。デヴシルメは意識がある間はこっちをどうこうできないからな」
 現況を招いたのは、ダガヌの力によって変異した、新型肉腫:『瘴緒(しょうのお・デヴシルメ)』である。人を、意識がない状況で操るデヴシルメを利用し、シレンツィオ連合軍の情報を得ていた。
 デヴシルメに寄生されるのは、総じて、悪意はなく、まったくの善人であるのがたちが悪い。助教方法がダメージを与えて消耗させることというのも忌々しい。罪なき善人を害さなくてはならないストレスは計り知れない。まさに邪神の所業。
「で。竜宮の方は乙姫代理のマール・ディーネー様が邪神・ダガヌの『神核』――これボコったら死ぬ――を実空間に現出させ、短期間ながら海底神殿に縫い付けることに成功しました」
 ここに至るまで、まーる・ディーネ―が払った代償はあまりにも大きい。
「更に、同時に真の力を発揮した竜宮の玉座とニューディは、ダガヌの力(欲望)を『喰らう』ことで、ダガヌをさらに弱体化させることに成功。もう、竜宮は出来ることをすべてやり尽くしてくれた。これ以上は瓦解しかねない」
 だから、と、情報屋は言う。
「今この時、ダガヌが力を存分に使えぬ今こそが、ダガヌを討伐する最大のチャンス――というか、今を除いてダガヌを倒すことは不可能だ。当然、向こうも攻撃は最大の防御とばかりに打って出てきてる。ダガヌチの巫姫は、フェデリア島へと転移。大量のダガヌチを以てフェデリア島を蹂躙し始めた。そして、天浮の里に潜む、悪しき者。欲望という、人の原初の願いより生まれた悪しきものも動き始めてる。それぞれの適性があるから、得意なところでがんばってほしい」


「――という訳で、君らには、竜宮に行ってもらいます」
 情報屋が、茶をあおる。
「あらゆるリソースを使い切ってるからな。超無防備。バニーさんたちが大変なんだよ」
 と、情報屋は言う。
「けなげなバニーさん達を救出。乱暴狼藉を働こうとしている海賊を掃討。その中にデヴシルメに寄生されてるのがいたら除去してもらいます」
 救出・掃討・除去。
 バニーさんたちが売り飛ばされてしまったら目も当てられない。いや、邪心のいけにえルートもあり得る。
「海賊は豊穣郷出身が主だ。こっちはバニーさんを避難させながらの撤退戦だから範囲攻撃ぶっぱとかできない分、慎重に。それから中途半端に殴って気絶させると、食い詰め系海賊団にいがちの「実はいい奴」がデヴシルメの支配下に落ちないとも限らない。急にバカツヨになる可能性があるから気を付けること」
 イレギュラーズよ。海のごとく心が広き娘さん達を、無頼の徒から守り導け!

GMコメント

 田奈です。
 この依頼に参加すると、涙目のバニーさんに駆け寄ってもらえます。

 優先順位は以下の通りです。
*バニーさんの救出
*海賊の掃討
*デヴシルメの掃討

敵:海賊集団・海乱鬼衆(かいらぎしゅう)×たくさん
 主に豊穣郷から来た流れ者で構成されています。体格はよく、狭い所での戦闘にも慣れています。強い奴は囲んで倒すなど連携もしてきます。

 実はいい奴×3名
 豊穣とその周辺の島に暮らす漁師が、深海魔の発生によって不漁となり海賊に身をやつすしかなかった、実はいい奴。デヴシルメに寄生されています。
 現場にはいますが、いい奴なので、バニーさんを襲ったりできません。
 一定以上ダメージが入ると意識を失い、支配下にはいってしまいます。
 自分の体の強度を度外視して暴れ出しますので、自分の攻撃で命が危険になります。
 戦闘不能状態にすればデヴシルメは簡単に力尽きますので、任意のタイミングで殴って下さい。

マイスター通りのとある店「真・ろっぷいやー」
 おっとりした嬢がタレ耳バニーなお店。嬢はみんな大人しく心が海のように広いのでハラスメントされ放題でしたが、イレギュラーズによって迷惑客は駆逐されました。

 現在、建物の入り口窓ガラスは中から椅子などが積み上げられてバリケードにされています。
 まだ中に入り込んでいませんが、海賊に破られるのは時間の問題です。
 ちなみにイレギュラーズが大技ぶっ飛ばせば入れますが、一緒に海賊もなだれ込んでくるでしょう。
 通風孔などは、海賊たちに知識がなかったので手付かずです。
 お店の中はボックスシートが並んでいます。射線はブツ切れ、見通し・悪、足場不安定で判定します。
 入り口、裏口両方とも海賊が殺到しています。
 テーブルの下に、バニーさんが五人バラバラに取り残されていますので、彼女たちの救出が最優先です。お店の内装は度外視ですが、建物を吹き飛ばす高火力技は当然NGです。

 お店の前にたどり着いたところからスタートです。

●特殊ルール『竜宮の波紋・応急』
 この海域ではマール・ディーネーの力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
 竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。

●特殊ドロップ『竜宮幣』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
 竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
 https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

  • <最後のプーロ・デセオ>海賊を蹴散らし、籠城バニーさんを救え!完了
  • GM名田奈アガサ
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年11月03日 22時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)
悦楽種
ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)
【星空の友達】/不完全な願望器
ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)
月夜の蒼
高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ
ジョージ・キングマン(p3p007332)
絶海
星芒 玉兎(p3p009838)
星の巫兎
エーレン・キリエ(p3p009844)
特異運命座標
ガイアドニス(p3p010327)
小さな命に大きな愛

リプレイ


「……酷い有様だな」
『特異運命座標』エーレン・キリエ(p3p009844)、きらびやかだったであろう「真・ろっぷいやー」の惨状を見て嘆息。新装開店したばかりなのに。
 割られて、地面に粉々になっている蛍光色のサンゴの破片が、ビルの隙もの裏路地からも見て取れる。先ほど裏口に向かう二人と別れてきた。表口には三人。
 隠れているバニーさんたちの心細さたるやいかばかりか。一刻も早く助けに行かねば。
「エーレンくん達とこっそりこそこそ《闇の帳》で潜入ね」
『超合金おねーさん』ガイアドニス(p3p010327)が声を潜めた。
「いい感じで《物質透過》できるとこかつ海賊さん達に気づかれないところから潜入したいわね!」
 事前情報と透視のたまもの。
 はやる気持ちを抑えつつ、手順を踏むのを惜しまないことがリスクを下げるのだ。
『悦楽種』メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)は、切なげな声を出した。
「折角迷惑なお客様方にお引き取り頂いたのに、もっと迷惑なお客様が来てしまいましたわねえ……」
 メルトアイはそれはもう頑張ったのに。
「今度は実力行使にて叩き出しに参りましょうか」
 ずぶり。三人は無造作に壁に手を突っ込んだ。
「大丈夫そうよ。よかったわ」
 ガイアドニスがにっこり微笑んだ。
 表口と裏口で仲間がドンパチやっている間に、バニーちゃんを連れてとんずらするのが三人の目下の指名なのである。

 繁華街の裏路地に女子高生と堅気にみえない偉丈夫。
『クノイチジェイケイ』高槻 夕子(p3p007252)は、借金のかたに売られるようなタマではない。
「戦争で忙しくなってるときに火事場泥棒とか、海賊ってほんと海賊だよね。イタイ目見ないと分かんないみたいだし、やっちゃいますか」
「ああ」
『絶海』ジョージ・キングマン(p3p007332)は粛々と導火線に火をつけた。殺傷能力が皆無の花火「轟々雷々」とわかっていても、カチコミの口火を切るダイナマイトにしか見えない。
 「耳」
 無言で耳を抑える二人。この火薬のとりえは音がギフトレベルに轟き渡るところだ。ここで鼓膜を言わせると作戦遂行に支障をきたす。
 
 店の裏手で壮絶な轟音。
「な、なんだあぁ!?」
 店の表の方にいた海賊達が
 暴虐の限りを尽くすのは自分達だけと高をくくっていたが、突然の爆音にすわ反撃か、やり過ぎてどこかが爆発したかと足並みが乱れる。裏口にいるジョージの思うつぼだ。
『月夜の蒼』ルーキス・グリムゲルデ(p3p002535)は嘆息した。
「いやはや、見事な悪役のテンプレ―ト。しかも弱者を食い物にするとか下の下だねぇ」
「敵の攻撃による破損は防げないけど……」
それね。と応じる『【星空の友達】/不完全な願望器』ヨゾラ・エアツェール・ヴァッペン(p3p000916)の保護結界を使う選択はイエスである。わざとじゃなければ壊れない。備えあれば憂いなし。出来ることからコツコツと。
 まったく。と、『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)と眉を顰める。
「「此度の狼藉を不本意と捉え、今からでも手を引きたいと考える者は武器を収めて事が片付くまで隅の方にでも退避なさい」
 白く輝く髪に深紅の瞳。竜宮のお嬢さんとは一線を画す凛然とした様に海賊たちは置く場を噛み鳴らす。平たく言えば、気に食わない女だ。そして、ろくでなしは、気に食わない女を引きずり回して留飲を下げる楽しみ方をする。
 その中にも恥じ入るように目をそらす者が複数いるのを見て取った。
「必要な処置の後で、寛恕の有るように然るべく取り計らいましょう。隣人の目が気になるのであれば、乱戦になってからそうして頂いても結構」
 青みを帯びた銀の光を放ち、美女は頬に笑みを浮かべた。


 海賊にもそれなりに種類はある。裏口から押し込むような海賊は誇りとは無縁の手合いだ。たまたまシノギの場所が海であるだけだ。敬意もなく、故に加護もない。
「バニーさんより、あーしと楽しまない? 昇天させてアゲル♡ ――って、ここからじゃ聞こえないかなあ!?」
 クノイチの二つ名は伊達じゃない。取っ手がネコ型で可愛い。にゃ~ん。
 でたらめに放たれた無数の苦無が地面や建物の壁で跳ね回り、暴力の嵐と化す。
「なんだてめえら」
「シャッスゾコラ」
「スマッニシトリダッゾッラ」
 簀巻きにしてほおり出すぞ、こら。という意味だ。と、ジョージは夕子に耳打ちした。
「え~、なにそれヤバい」
 きゃはははと、手を叩いて大笑いした後、ぐっと前かがみになる。あらゆる意味で攻撃的なJKの服。視線誘導、Vライン。上目遣いに海賊共の鼻の下が伸びる。いや、夕子の技術が伸ばさせるのだ。
「JKの《《ココ》》、見たい?」
 場の空気を悩殺に変えるJK力。
「――ジョージさん、目をそらしたのが後ろの方に二人」
 情報共有は大事なことだ。
「ジョージさんがブッパした後、あーしが即効きめっから」
「心得た。それ以外は俺が引き受けよう」
 ジョージからしてみれば、有象無象だ。ローレットの仕事でなければ、鼻もひっかけない手合いである。
「俺が誰か、知らないだろうな。海賊で、ここの用心棒だ」
 実際は、その元締めのさらに上。海鳥の端くれに名を連ねるに値しないものがどうして皇帝を冠する鳥の意を知ることがあろうか。
「今日の迷惑料は、貴様らの身体で払ってもらおうか!」
 貴様らの心臓を握りつぶすという気概が、海賊たちのなけなしの闘争心に火をつけた。
「今日は気分がいい。特別に、レディの扱いと悪党の流儀をその体に叩き込んでやろう!」
 怒りにつながれた海の魔獣の革をまとわせた拳が海賊たちを薙ぎ払う。


 店内は灯がすべて消されて薄暗い。出入り口と窓に向けて椅子と机が積み上げられている。席と席を区切るパーテーションは隠れるためにあえて残したらしい。
 パッと見、バニーさんたちがどこにいるかわからない。かくれんぼが上手らしい。
 店の外、表口からも裏口からも怒号が聞こえる。戦闘状態に突入したのだろう。持たされたファミリア―は何も言わないので、状況が悪化しているということはなさそうだ。
「俺はイレギュラーズ、鳴神抜刀流の霧江詠蓮だ。助けに来たぞ、慌てずに出てきてくれ」
 こそーっとエーレンが呟いた。返事がない。いたたまれないがこのくらい警戒心がここまで無事だった理由の一つだろう。
「この間のメルトアイですわ。ご安心なさって」
 先日の依頼で面識があるメルトアイが声をかけた。
 こそ。こそこそこそっ! そんな所に隠れる隙間があったのか? というテーブルの影や隙間からタレ耳バニーさんたちが這い出してくる。
 ピエンしている子もいるが、武装している殿方にすがらない礼儀をわきまえている。戦いにくいからね。覚悟はしていたエーレンも安堵。残念になど思っていない。
 店内に構築されたバリケードをさらに強固なものに変えながら、ガイアドニスは微笑んだ。
「バニーさん? がんばったわね。大丈夫よ。おねーさんがみんな守るわ」
 こんこんと叩いたバリケードから悲鳴のような軋みが消えた。よりしなやかに衝撃を吸収できるようになっている。いや、バニーちゃんを襲うより自分たちの進退について考えなくてはならない状態になっているだろう。外からうっすら入ってくる光の点滅具合から。
「時間稼ぎという側面もあるのだけれど、それ以上に中の様子を海賊さん達に見えないようにしたいわね!」
 これから、抜けだしたことがわからないように店外に脱出するのだ。
「それでは、この場はお任せいたしますね。裏口で戦闘中の夕子様・ジョージ様に加勢致します」
「ええ。さあ、バニーさん達。ゆっくりでいいから怪我のないようにしましょうね。エーレン君が先導してくれるから安心よ」
「今、俺達の仲間が外の悪い奴を食い止めている。通風孔までは連中はいないのでそこから避難してくれ。大丈夫、落ち着いて逃げればかならず助かるぞ」
 通風孔の覆いを外し、エーレンが潜り込む。安全を確認して、ガイアドニスがバニーさんを抱え上げ通風孔の中に。外はまだ戦闘中。ダクトの中に待機していた方がよさそうだ。
「そうね。じゃあ、安全になったら知らせが来るからここで待っていましょう。おねーさんが護衛として残るから心配しないでね」
 バニーさんたちが攀じよ持している間にすっかり隠蔽工作を済ませたガイアドニスが通風孔にふたをした。
 抜かりがないことを確信すると、表口、裏口、通風孔。いつでも手が差し伸べられるように待機した。仲間を信じている。その上でみんなを守るのだ。


「高火力NG……またか! またなのか!」
ヨゾラがうめいた。酒場で高火力は物理的にも比ゆ的にも炎上待ったなし。被害は最小限に越したことはない。
 市街戦では、火力を抑えて敵をせん滅させる技術が要求されるのだ。
「海賊なんて――切り刻めー!」
 背中から五体を伝い、あふれるように世界に伸びる細い糸が海賊たちを切り刻む。地面に伏せる様は生というくびきから解き放たれた物体――糸切傀儡の名にふさわしい。
「ボサっと突っ立ってんじゃねえ! 中の女どもをふん捕まえてズタ袋に押し込め!」
 後ろの方でたたらを踏んでいた者に血まみれの男から怒声が飛ぶ。
「失くすものなんざねえっつってたろうが、コラ!」
 以下、聞くに堪えない罵詈雑言。ヒトの品性というものを臓物と汚物のごった煮に投げ込んで溶解させてしまったらしい。玉兎やルーキスのような浮世離れした女性の耳に入れて歪んだ欲を満たしているようにも見えた。
 ルーキスが趣が足りないと殊更に嘆いてみせた。
「悪役なら悪役らしく、矜持の一つや二つぐらい持って欲しいものだ。残念ながらキミ達にそれを説いたところで何の意味もなさそうだけど」
 灰は灰へ。泥は泥へ。
「おや」
「ええ」
 お互いにお互いの選択を微笑みをもって肯定する。あふれる泥が海賊たちの足元を埋める。濁流がこれと見込んだ奴ばらの懐から命となけなしの運をこそぎ取っていく。
「あの方、――ではないかしら」
 玉兎の泥は、戦闘に参加できない男をよけて通る。
「寄生虫の処理は味方任せですわね。不殺の用意が叶いませんでしたから」
 お願いします。と、ヨゾラに水を向ける。
「任された! というか、調子に乗り出したらと思ったんだけどな!」
「暴れられると面倒でしょう? ルーキスさんはあの様子ですし」
 掴みかかってくる海賊を嬉々として仮初の剣の錆にしながら、ルーキスは二人に応じる。
「なんだい? ちゃんと用意はしてきているよ!」
 さあて、次は痺れてみようか? などと、軽口を叩いている。泥に飲まれた海賊はこの場にいた不運こそを嘆くべきだ。やることなすことみんな裏目に出るのだから。
「じゃ、俺が動きを封じますので」
「心得た! 慈悲の一撃。痛いのは一瞬だけだよ!」
 食い詰めて海賊の手下となった男は、体の自由を奪われた。遠のく意識の中、ふわっと夢の中に落ちていく感覚。今まで何度か味わったことがあるような気がした。体の内からあふれ出ようとするものに飲み込まれる直前。
「残念、肉腫君。一番きついのをお見舞いするよ」
 にじみ出るように熱いものが体からこぼれていった。
「――あぁ、聞こえるかい? こちら側には『いい奴』は一人だった。残りの二人はそっちにいるんじゃないかな?」
 ルーキスはファミリア―の口を借りて囁いた。肉腫に侵されていることに気づかず行動しているのは後二人。
「――君は――そうだな。それこそ真人間に生まれ変わるといいんじゃないかな? 泥に溺れてる奴らよりはましそうだ」


「きゃあああん! 海賊達にうさぎちゃんプレイされちゃうー!」
 笑ってしまうほどあっけなく、一人目は昏倒した。
 もう一人は、猛然と駆け込んでくる。デヴシルメが発動したのだ。宿主の力量を度外視して最大限の動きを要求する。
「――手荒く参りますが、どうぞ耐えてくださいまし?」
 壁をすり抜けてやってきたメルトアイの繰り出す触手が大顎を形成し、ばぐんと人呑みした。
「あ、息ありますね。大丈夫そうです」
 メルトアイは、触手の感触を確かめた。
「表で一人でしょー? こっちで二人だから、数合うね。じゃあ、ジョージさんのお手伝いしましょー」
 夕子は、言うが早いか、苦無を跳弾させる。
「そうですね。建物に当てないように注意しなくては」
「それな! あーし、ソフトタッチで狙ってっし!」

「覚えたか? 魅力的な女性には敬意を払う。それが紳士だ」
 苦無と触手と男の拳が交錯する路地裏に静寂が訪れる。
 この時のジョージは知らない。通風孔に隠れているタレ耳バニーさんたちが、音が出ないように指先を触れ合わせないように注意しながら拍手していたことを。


 海賊は一網打尽。肉腫の分離も確認。
「はいバニーさん点呼! 1、2、3――全員居る?」
 ルーキスの麗しヴォイスは点呼であろうと聞きほれてしまう。
「うっはー。とりあえず全員無事ね」
 夕子は全員の無事を確認して、ようやく一息ついた。
「怖い思いをなされたでしょう、ですがもう大丈夫ですわよ。私達が全部やっつけちゃいましたから♪」
 メルトアイが腕を広げる。緊張の糸が切れたのか、バニーさんたちは極上のおっぱいの上にきれいな涙をこぼした。
「よしよし、巻き込まれて大変だったねぇ。落ち着いた海でのんびりお仕事ができる日が必ず来るよ」
 いっぱいいっぱいになっている女子に必要なのはまず共感である。テストはないが人生の選択で知っていると役立つライフハックである。
「あ、お礼はタレ耳バニー服でいいわ」
 採寸必須だ。後日、スリーサイズ他精密な寸法を提出してほしい。


「えーと、後――店は大丈夫かな」
 ヨゾラが心配そうに声を上げた。戦闘ビフォアアフターを思い出そうとしている。
 保護結界は有効だった。多少の手直しが必要だろうが、厄払いの域だ。この騒動が終息する頃には工事は終了するだろう。

成否

成功

MVP

高槻 夕子(p3p007252)
クノイチジェイケイ

状態異常

なし

あとがき

お疲れさまでした。バニーさん達は無傷です。実はいい奴たちも生きてます。ゆっくり休んで次のお仕事頑張ってくださいね。

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