シナリオ詳細
<最後のプーロ・デセオ>夢のまにまに
オープニング
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荒れる海、その波をものともせずに小舟が走る。その小舟に乗るのは、海乱鬼衆・濁悪海軍の遊撃を任されていた一部隊の生き残りと、何故か意識を失うとこちらの思う通りに動く便利な人質。軍服を着るその人質――ユアンは、薄ぼんやりとした意識の中、こっそりとその船員と船長たちの会話を盗み聞く。
「どうするんですかい? これじゃあ、戻るに戻れねぇですよね?」
「あの連中が邪魔してきたからな……いや、まだ方法はある」
船長は懐から小袋のような何かを取りだすと、その中身を全て海へとぶちまけた。しばらく待っていると、やって来たのは、人の胴体と手足に背びれや尾びれを持ち、首から上が魚のような異形。それが船の周りを取り囲んでいた。手には槍や斧等を持っている。数は三十体程だろうか。こちらを攻撃するつもりはないらしい。そんな異形たちは、小船を進めると大人しくついてくる。
「これはとっておきだったんだがな。ま、こういう時のための代物なんだけどよ」
「流石ですぜ、船長!」
「だろう?」
ケタケタと笑い合う船員たち。ユアンはその様子を気持ちが悪いと思うが、ここで盗み聞きしているのがばれてしまえば、どうなるか分からないので大人しくしている。なんせ、濁悪海軍に囚われてから、薬で眠らされていることが多く、意識がはっきりとしている時間が短いのだ。囚われて何日経っているのかも分からない。
「さぁて、目的地はシレンツィオ連合軍の海上拠点だ。今度こそ、成功させる」
「――!」
何故、海上拠点の場所を知っているのだろう。そう疑問に思う間もなく、ユアンは口元に布を押し当てられる。独特な甘い匂い。これは、ユアンが以前使われた催眠薬だ。抵抗するも、本調子ではないユアンの意識は再び闇に落ちた。
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インス島周辺で出会った濁悪海軍、そこに乗り込んでいたシレンツィオ連合軍の兵士ユアン。前回は彼を救出することは叶わなかった。しかし、見えてきたこともある。
「あれは確かにただの睡眠薬だった。だから、意識がある時は船長に抵抗していたんだろうね」
「つまり、裏切りではない、と?」
「その可能性が高いですね」
そうシレンツィオ連合軍の兵士であるグレンに答えたのは、『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)と『散華閃刀』ルーキス・ファウン(p3p008870)だ。グレンは二人の言葉にほっとしたような表情を浮かべたが、それもすぐに険しくなる。
「だとすると……前回、取り逃がしたのは惜しい」
『今、助けないで良いのか? 仲直りは早い方が良い』――そのようなことを言われたというのに、結局救出はできなかった。そんな風に落ち込んだグレンを、『愛を知りたい』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)が励ますように声をかけた。
「落ち込むことはないよ! きっと助ける術はあるはずよ」
「だが……」
「ユアンみたいに操られた事件が他にもあるかもしれない。それを洗っていけば、また見つかるんじゃないかな?」
「そうですね。現状、あの海賊共がどこに逃げたのか分かりませんし」
「……そうだな」
ならば早速行動に移した方が良いだろう。そう思い、グレンが席から立った時だった。
「ああ、皆帰ってきたようだね。お疲れ様」
そう言って四人の前に現れたのは、『黒猫の』ショウ(p3n000005)だ。別のテーブルから椅子を持ってきて勝手に座ると、四人に了承を得ることなく話し始めた。
「撃退してくれたお蔭で、あの後シレンツィオ連合軍が例の海賊船に乗っていたほとんどの奴らを捕まえることができたみたいだよ。けど、親玉だけは捕まえられなかったらしい。ユアンもまだ一緒に行動していると見ていい」
「二人の場所は分からないの?」
「残念だけどね。ただ、一つある情報を掴んだよ」
「何ですか?」
「前回も話したけど、ユアンが知っているもう一つの海上拠点。そちらに、『シーワンダラー』と呼ばれる半漁人が、小舟に先導されて近づいているらしい。しかも、あの拠点を使ったことがある兵しかしらないルートを通っているみたいだよ」
「それって……」
ユアンは再び操られ、そのルートを船長に教えているのかもしれない。その場にいた四人全員がそう思った。
「ああ。だから、君たちに頼もうと思ってね。君たちが到着する頃には、あいつらも拠点に上陸しているとは思う。とはいえ、拠点には兵がいるからね。多少は耐えれるはずさ」
「だとしても、早い方が良い。準備しよう」
鈴音の言葉に三人は頷くと、各々すぐに出撃できるように準備をし始めた。
- <最後のプーロ・デセオ>夢のまにまに完了
- GM名萩野千鳥
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年11月02日 22時10分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
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イレギュラーズたちはシレンツィオ連合軍の海上拠点の一つへと向かっていた。その航路は、本来ならばシレンツィオ連合軍の兵士しか知らない。
「やっぱり、ユアンさんがこの道を教えちゃったのかな?」
「前回もこの拠点を襲うつもりだったと聞きました。だとしたら、可能性は高いと思いますよ」
海上拠点へと向かっている最中の船上で、『愛を知りたい』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)と『ドラネコ配達便の恩返し』ユーフォニー(p3p010323)は皆を交えて話す。あの時、ユアンを連れて小舟で逃げて行った船長が、何らかの方法でシーワンダラーを連れているのだろう。
「しかし、睡眠薬を嗅ぐと操られるんだったか? 自害でも命令されちゃ厄介だ。取り返しのつかないことになる前にケリを付けないとな」
「ああ。早く助けないと……」
『航空猟兵』アルヴァ=ラドスラフ(p3p007360)の言葉に頷くグレン。その思いつめた表情を見たココロは、彼に思い切って尋ねる。
「あの、グレンさん……ユアンさんとはどのようなご関係なのですか?」
以前も薄々は感じていたのだが、ただの同僚というのでは感じられない何かがある――そう思ったのだ。ただの同僚だと言うには情が深い。
「――別になんてことはない。ユアンは俺を助けてくれた。だから、今度は俺の番。ただ、それだけだ」
過去何があったのかは話さない。しかし、その声色には重みがある。きっと、大きな恩を感じているのだろう。
「だとするならば、尚のこと救出を急がないといけませんね。今回こそは、必ず」
『救うという意志』ルーキス・ファウン(p3p008870)の言葉に、皆が頷く。拠点まではまだ少しある。その間に、拠点についてグレンに尋ねながら作戦をより綿密に練った。
●
拠点へと船をつける。そこには、『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)も見覚えのある小舟が泊まっていた。
「予想通り、ユアンと船長はここに来ているみたいだねぇ」
「となれば、もう既に交戦状態になっている筈ですわ。探知します」
鈴音と『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)は、自身のファミリアーを呼ぶ。その間に、『星の巫兎』星芒 玉兎(p3p009838)は悪意や害意などの負の感情を探す。既に船長とユアンを先行して探しに行った者たちもいるが、まだ彼らはまだ交戦していない筈だ。
「……だいぶ散らばっていますわね」
「だとしたら、個別に助けに行ったら良いんじゃないか?」
「そうですね。各自探知しながら奥へと進みましょう」
玉兎の言葉にジェイクも『高速機動の戦乙女』ウルリカ(p3p007777)も頷く。最終的には船長かユアンの元で合流するのだ。さっと二つの班に分かれると、シーワンダラーたちと交戦しているであろう兵士たちの元へと向かった。
「とりあえず、まだ占拠はされていないみたい」
鈴音の召喚した猫にこっそりと確認させたが、敵はまだ武器庫を占拠できていないらしい。しかし、その近くで交戦は行われていることは分かっている。ジェイクと鈴音、グレンの三人は急いで彼らの元へと向かう。
「っ! 伍長、こちらの方は……」
「イレギュラーズだ。加勢する」
「回復は任せな!」
グレンがそう告げると、鈴音はその場にいた負傷した兵士たちを纏めて回復する。「本当に味方、なのか」と口々に言う彼らに対し、ジェイクが告げる。
「加勢する、と言っただろう? 爆薬を奪われたら洒落にもならないぜ。まずはあいつらを倒すぞ! 構えろ!」
そう言ってジェイクが敵を見据える。どうやら、船員一人が小隊長のような形でシーワンダラーを率いているらしい。シーワンダラーたちは兵士に襲い掛かろうとしている。それをジェイクは後方から、狙いをつけて一気に弾丸を貫通させる。
「ガァアア!!」
「チッ……遠くから狙え!」
船員が怒鳴る。しかし、ジェイクの弾丸が当たったシーワンダラーたちは、地面に縫い付けられたかのように動けない。
「今だ、撃て!」
その場で銃を構えていた兵士たちは、ジェイクの指示に従い一斉射撃を行う。これには、シーワンダラーたちもそう簡単に避けることはできない。とはいえ、人間より丈夫だ。弾丸を受けながらも距離を詰め、槍である兵士を執拗に突く。
「ぐぅっ!」
「大丈夫だよ、傷はすぐ治る」
鈴音は攻撃を跳ね除けると、兵士を連れて下がる。扉で視線を切り、その陰で救急箱から包帯を出しながら手当てをした。
「しかし、あの船長……あいつらどこへ向かっていったんだ?」
ぼそり、と溢した声に、治療と回復を受けた兵士が答える。
「ドックの方だと思われます。軍艦がどうとか、あの男が言っていたので」
扉からちらりと顔を出し見つめる。その先にいるのは、濁悪海軍の船員だ。
「なるほどね……よし、ジェイクッ!」
「なんだ?」
「軍艦用のドックにいるかもしれないらしい」
「そうか。となれば、だ!」
ジェイクは自分の近くに、あらかじめ召喚していた烏を一体、軍艦用のドックへと飛ばす。もう一体には、ココロ、玉兎、ウルリカの方の様子を確認させる。
「これで様子が分かるはずだ。あいつらを倒したら、俺たちもすぐに向かうぞ」
「勿論だよ!」
ジェイクは銃を構えると、シーワンダラーを一撃で仕留めるように撃ち抜いた。
鈴音、ジェイク、グレンの三人と別れたココロ、玉兎、ウルリカは、最も敵の反応が多い方へと向かった。何とか兵士たちだけでも保っているようだが、ずるずると後退している。どうやら、限界らしい。ココロが真っ先に兵士たちの元へと向かうと、すぐさま回復を行った。
「さあ立ち上がって! 不死鳥のごとく!」
その声に鼓舞されたのか、その場にいる兵士たちは立ち上がる。しかし、三人に対して警戒は怠らない。流石、軍人である。勿論、警戒されるのは想定内である。
「救援のイレギュラーズです。動けるようでしたら指示に従ってください、掃討しますよ」
「ほ、本当か?」
「勿論です。そうでなければ、わざわざ回復なんてしないでしょう?」
ウルリカはそう言うと、ちらりとココロの方を見やる。彼女はその視線に気づくとにこっと笑む。
「わたくしたちを疑うのは構いませんが、そうしている内にやられてしまいますわ」
「その通りですね、玉兎様。私たちも、あれをさっさと倒してしまいましょう」
シーワンダラーの群れがゆっくりではあるものの、斧を振り上げ兵士たちを確実に仕留めようとする。しかし、それをウルリカが阻むと、どこからともなく現れた弾丸がシーワンダラーを撃つ。それに続くように、玉兎が『何か』を放った。
「ガ、ガァアアアッ!」
統率者がいないからか、随分と乱雑な動きだ。遠くからボウガンの矢が放たれるが、それらの狙いは全てバラバラだ。
「皆さん! あのボウガン持ちを最優先で狙って!」
「はっ! 了解であります!」
机などで矢を凌ぎ、兵士たちはボウガン持ちを狙う。その射撃はシーワンダラーを倒すとまではいかないが、確かにダメージを与えている。ボウガンからの攻撃が抑えられたせいか、斧持ちのシーワンダラーたちが突撃する。兵士たちは咄嗟に、矢を防いだ机などに身を隠す。
「そのまま、身を隠していてください!」
ウルリカがそう告げると、無差別に弾が飛び交った。その弾丸はシーワンダラーを貫く。
「これで、纏めて眠ってくださいませ!」
玉兎の声に合わせて、光が溢れる。その閃光はシーワンダラーたちを焼く。耐え切れなかったシーワンダラーは、その場で次々と倒れて行った。
「もう少しですね。早く船長たちの元へ向かいましょう」
「そうですわね」
ウルリカの言葉に二人は頷いた。ジェイクの烏がこちらに向かってきているのを見る限り、あちらもこちらを気に掛ける程度の余裕はあるようだ。このままいけば、シーワンダラーもほぼ撃退できるだろう。三人は、残ったシーワンダラーと決着をつけるために、兵士たちに檄を飛ばした。
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海上拠点に辿り着くや否や、アルヴァはルーキスたちから聞いた濁悪海軍の船員の姿へと変装した。
「敵が見つかったらちょっと居場所を聞いてくるから、その時は少し離れて待機してくれ」
「分かりました。私も予定通り、別口から探してみます」
ユーフォニーがそう言うと、使い魔である猫の『リーちゃん』を召喚する。ユーフォニーが船長たちの居場所を探すようお願いすると、「にゃあん」と一鳴きしてどこかへと去って行った。リーちゃんとは互換を共有しているので、見つかればすぐに分かるらしい。
「俺たちは俺たちで探しましょう。使われたという睡眠薬の匂いは覚えましたし……辿ってみましょう」
「そうですね。早く向かいましょう。……ユアンさんが操られているのは、瘴緒が原因の可能性が高いです。ある程度消耗させれば、消滅するはずです」
瘴緒――それはあの乙姫メーア・ディーネーも寄生されているという代物。メーアに寄生したものよりは弱いだろうが、それでも、意識のない者を操る能力は健在である。ならば、対処法も同じだろう。
「なるほど。ルーキス、ユアンの方は任せても?」
「勿論です」
互いに頷き合うと、三人は最も敵が少ないルートを取りながら、拠点内を探し始めた。
暫く探していると、ぺた、ぺた、と靴音とは明らかに異なる音が聞こえる。壁に身を隠しながら、そっと音のする方を確認すると、二体程だろうか。シーワンダラーが巡回していた。その様子を見た三人はアイコンタクトをすると、アルヴァが慌てたふりをしながらシーワンダラーに近づいた。
「敵襲だ! 船長はどこに行った? 早く伝えねぇと!」
「テキシュー? センチョー、ドックニイク、イッテイタガ……」
ドック、というのは、きっと軍艦用のドックのことだろう。
「そうだったな! それじゃあ――」
「オマエ、ナンデシラナイ? ニセモノ、カ?」
「――今頃気づいても、遅いんだよ」
不意を突くように、一撃を喰らわせる。流石に敵だと気付いたシーワンダラーは、斧を振り上げるが、それをルーキスが防ぐ。
「ユーフォニーさん!」
「任せてください」
色とりどりの光彩がシーワンダラーを包み込む。その間に、アルヴァは追撃すると、あっさりと倒れた。
「それで、どうでしたか?」
「軍艦用のドックの方にいるらしいが、」
「……アルヴァさん、それで合っているようです。行きましょう」
どうやら、リーちゃんの方も見つけ出したらしい。三人は急いで軍艦用ドックへと向かった。
軍艦用のドック。様々な器具や船のお蔭で、身を隠して近づくことは容易かった。どうやら、船長とユアン、そして船員が二人側にいるようだ。そこに船員に扮したアルヴァが、「船長ぉ!」と情けないような声を出しながら近づく。
「なんだ?」
「侵入者、侵入者がぁ!」
「へぇ? 侵入者、か」
そう言って、船長が振り返った瞬間、アルヴァは至近距離で空砲を放った。
「お前!」
怒りの矛先がアルヴァ自身に向いていることを確認すると、一発、船長に向けて銃弾を放つ。
「くっ、」
船長が撃たれた肩を抑えながら後退すると、ゆらり、とユアンが彼の前に立つ。手のひらに水が集まり、弾のような形になり放たれる。しかし、それは当たらなかった。
「ユアンさん、こちらです! ……グレンさんが貴方を心配していましたよ」
「…………」
「……と言っても、今は通じないか。ならば力づくで取り戻すのみ……御免!」
絶対に殺さないように、腕の関節などを狙い、斬る。少なくとも、これで、剣を振るうなどはし辛くなった筈だ。ちらりとアルヴァの方に目をやる。船長とユアンの引き離しには成功した。
「ユーフォニー! 今だ、ぶちかましてやれ!」
「その回避力、信じてます! ――それは、世界。私だけの世界」
ぎりぎりのところでアルヴァはユーフォニーの攻撃を避けると、その場に色彩がぶわりと広がる。船長と船員を囲むように展開したそれに魅せられたのか、否か、彼らはその場で膝をつく。
「お邪魔させてもらうよッ! 船長、あんただけは一発ぶん殴ってやらないとなッ」
丁度、ドックへと到着した鈴音が、双眼鏡片手に拳を握り船長へと向かう。その拳はしっかりと船長の身体に当たる。
「ぐ、ぅ……」
その場から動けないその隙に、どこからかパンッと狙撃される。それはアルヴァのものではない。ジェイクがどこかの隙間から狙っていたのだろう。辛うじて立っていた船長は倒れた。
「船長! くそっ……!」
そんな船長の様子を見た船員二人は、逃げ出そうとし始める。しかし、それもジェイクがしっかりと仕留めていく。
「あとは任せた!」
「ああ!」
「勿論です!」
逃げようとした船員たちに、アルヴァとユーフォニーが追いかけるように攻撃を放つ。船員たちもその攻撃には耐え切れずに、倒れ伏したのだった。
一方、引き離されていたユアンは、傷を負いながらも水の弾丸のような物をルーキスに放っていた。
「っ、流石、軍人ですね。戦い慣れている」
遠距離の相手に対しては距離を詰めて近距離で、近距離の相手には遠距離から攻撃する。非常にやりにくい。だが、それでもやり遂げなくてはならない。
「ユアン様、痣になったらすみません」
ふと、そのような声が聞こえてきたかと思うと、ユアンの死角となる位置からウルリカが彼を殴ったのだ。どうやらシーワンダラーを倒し、ここに到着したらしい。ウルリカの攻撃をもろに受けたユアンは、一瞬よろめくが、ゆらりと体勢を立て直す。まだ、立ち上がるのか。そう思ったところで、ココロがユアンの元へと近づく。
「いつまでうだうだしてるんですか! あなたも兵士でしょ、シャキッとしなさい!」
特に威力はない、そのパンチにユアンは吹っ飛ばされる。完全に体勢を崩したユアン。この隙を、ルーキスは見逃さなかった。
「――これで、終わりです」
そう言って、刀の峰で打つ。その一撃でユアンはその場から崩れ、倒れたのだった。
●
「――……こ、こは?」
「ユアン!」
「……グレン?」
この海上拠点へ向かう際に使った小型船の上で、ユアンは目を覚ました。拠点内で兵士たちの治療を行った後、イレギュラーズたちは一度ローレットに戻るためにグレンたちと共に移動していたのだ。
「気が付いて良かったですわ。まだ、ゆっくりしていてくださいね」
「あ、ああ……」
強制的に眠らされていたが、その間は普通に動いていたのだ。傷の回復はしていたとしても、疲労はしているだろう。ユアンは横になったまま、ゆっくりと記憶を辿るようなそぶりを見せる。
「俺は、何、を……」
「……覚えていないのか?」
「捕まっていたのは覚えているが……」
どうやら、記憶は途切れ途切れで、イレギュラーズたちと戦ったことすら覚えていないらしい。瘴緒の影響だろうか。
「あの、ユアンさんは海軍に戻りたいですか?」
ユーフォニーの質問に、ユアンは目を丸くする。操られていた際の記憶が無い、ということならば、今までに拠点を襲ったことや、機密を漏らしたことも覚えていないのだろう。つまり、自身が除隊されるかもしれない、ということにも気づいていないのだ。
「そう、ですね……少し、休んでから、復帰したいですね」
「そうですか」
それならば、上層部へ交渉しに行こう。他の者たちにも目で合図すれば、頷いてくれる。
「皆さん、ありがとう。本当に」
「……俺からも。助けてくれて、ありがとうございます」
グレンとユアンは深く頭を下げて礼を言う。そんな彼らを乗せた船は、ゆっくりと海の上を走るのだった。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
お疲れ様でした。
拠点に大きな被害はなく、船長を倒し、ユアンを救出することも成功しました。
ご参加頂き、ありがとうございました!
GMコメント
初めまして、こんにちは、こんばんは。萩野千鳥です。
早速ですが簡単に説明致します。
●目的
・海乱鬼衆・濁悪海軍の遊撃隊船長の撃破
・ユアンの救出
●地形
シレンツィオ連合軍の海上拠点内です。
軍艦用のドック、武器庫、訓練所、食堂、兵士の部屋等があります。
ドック内や訓練所は遮蔽物が多く、それ以外の部屋や通路等は遮蔽物が少なめです。
●敵
『濁悪海軍・船員』×3
逃げ切った海賊たちです。『シーワンダラー』と共に行動しています。
主に射撃したり、斬りつけたりします。
『シーワンダラー』×27
人の胴体と手足に、背びれや尾びれがある首から上が魚のようになっている半漁人です。
槍や斧、クロスボウを持っています。
斬ったり、突いたり、矢を放ったりします。
『濁悪海軍・船長』
遊撃隊の船長です。
部下に指示を出したり、狙撃したり、水を凍らせたり、氷の槍を降らせたりします。
『ユアン』
睡眠薬で眠らされていますが、まるで夢遊病のように行動しています。
その際は、水の弾丸を放ったり、斬りつけてきたりします。
●味方
『グレン』
海種のシレンツィオ連合軍の兵です。海上拠点までは彼が案内します。
銃による後方からのアシストが可能です。
『シレンツィオ連合軍』×15
拠点内にいる今動ける兵士たちです。
銃、剣は一通り扱えます。
●特殊ルール『竜宮の波紋・応急』
この海域ではマール・ディーネーの力をうけ、PCは戦闘力を向上させることができます。
竜宮城の聖防具に近い水着姿にのみ適用していましたが、竜宮幣が一定数集まったことでどんな服装でも加護を得ることができるようになりました。
●特殊ドロップ『竜宮幣』
当シナリオでは参加者全員にアイテム『竜宮幣』がドロップします。
竜宮幣を使用すると当シリーズ内で使える携行品アイテムと交換できます。
https://rev1.reversion.jp/page/dragtip_yasasigyaru
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
以上です。どうぞ宜しくお願いします!
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