PandoraPartyProject

シナリオ詳細

蚊≪モスキート≫

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●夜中に耳元でプーンって聞こえた時の殺意
 遠い地平の向こうから、無数の蚊が飛んできたのでございます。
 なぜそう見えるのかと申しますと、皆がいう蚊よりもずっと大きな、人の頭ほどもあろうかという蚊が、群れを成して飛んでおったがゆえでございます。

 その年は初夏よりよく雨がふりまして、わたくしどもの畑も随分潤ったものでございますが、その雨がよくなかったのでしょうね。
 北の泉にわくという巨蚊が繁殖しすぎてしまったのだと、後の学者先生はおっしゃいました。
 ええ、わたくしどもは毎日畑を耕すばかりで、そんなことはとんと考えたことがございません。
 その日も朝早くに起きて、農具を持って、麦わら帽子を被って外へ出ました。
 近くを蚊が飛んだものですから、もうそんな季節かと手ではたいて落としたのでございますが、どうにも蚊の羽音がとまりません。
 耳元でまだ聞こえるのかと見回してみても見えず、羽音だけが妙によく聞こえる。
 はてと北の空を見上げますと、灰色の霧が出ておるんですな。
 やあこれは奇妙なこともあるものだと思いましたが、すぐに考えも変わりました。
 霧なんかではございません。ええ、ええ、そうでございます。
 大量の蚊が、飛んできたのでございます。

●作戦コード『蚊遣火(カヤリビ)』
「海洋にあるバルカ島には毎年多く蚊が発生するらしくて、定期的にそれを駆除する運動が行なわれているの。あのあたりのニュースに詳しい人なら、そのくらいは知ってたかしら?」
 『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)は美しい形の鉄柵に寄りかかり、ゆれる波を眺めながら語った。
 ネオフロンティア海洋王国の港。ネコの歩く町である。
「でもバルカ島にはこんな伝説があって……『百年に一度、巨大な蚊が現われて人々を絶望の病におとす』というの。
 まあ、今回の巨蚊がそれだとはちょっと思えないけど……何十年もおきなかった大量発生だもの。彷彿とさせちゃうわよね」
 このたびローレットに依頼されたのは巨蚊の退治である。
 勿論海洋の警備隊たちも出動してあちこちでの駆除作業は進んでいるのだが、ローレットにはその中でも人での足りていない『北の泉』周辺での討伐作業が依頼されていた。
「巨蚊は吸血能力をもった虫型のモンスターよ。けれどここまで大量に発生するとなると、何かしら嫌な理由もありそうね。特別な個体を発見したら、それもできる限り駆除して欲しいと言われているわ。
 くれぐれも、気をつけてね」

GMコメント

【オーダー】
 成功条件:巨蚊の殲滅
 オプション:正体不明個体『???』の撃破

 北の泉周辺へと訪れ、巨蚊を次々と倒しましょう。
 範囲攻撃とかお勧めですが、しっかり倒すには単体ごとにぼこすか倒していくのも確実です。
 最低成功条件はこれら巨蚊の殲滅ですので、ある程度戦闘を継続できたらシナリオクリア扱いとなります。
 その先はオプション要素となりますので、成功条件を満たした上でトライするようにしてください。

【巨蚊】
 大量に発生している虫型モンスターです。
 胴体は人の頭ほどの大きさで、長い針とおおきな羽根をもっており、羽音は人の心を乱すとされています。
攻撃方法は『物理吸血(物至単【HP吸収】【毒】)』『魔力吸血(神至単【AP吸収】【不吉】)』の二種類があります。
 個体によって使う吸血の種類が決まっているようです。
 また、巨蚊が一体でも残っている場合羽音の効果が発生します。
 内容は『PC全員の特殊抵抗ダウン』というものです。
 なので、【毒】と【不吉】の効果が発生したときのことを想定して作戦を立てましょう。

 巨蚊は大量にいますが、逃げたりしないので暫くの間戦闘を継続できればクリアとなります。

【???】
 泉周辺で巨蚊を殲滅したあとで泉を訪れると『???』と遭遇します。
 「ここになんかヤバいのがいるな」というのは泉周辺に来た段階でなんとなく分かるので、戦闘の準備をしているものとしてOKです。
 この敵を撃破するなら『強敵一体』を想定しつつ『どんな能力の敵でもカバーできるように』作戦を立ててください。
 対策を一ランク下げてごく普通の戦闘プランで挑んでもOKですが、場合によっては撤退もやむない状況になるかもしれません。

※特殊な有利要素
 泉に発生する存在がどんなものか想像、もしくは予測してみましょう。
 もし予測に近かった場合、近い分だけPC全員の基礎クリティカル値にプラスボーナスを加えます。(すっごく有利になります)

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 蚊≪モスキート≫完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月09日 21時45分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)
灰雪に舞う翼
エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)
愛娘
シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)
死を齎す黒刃
Selah(p3p002648)
記憶の欠片
ルア=フォス=ニア(p3p004868)
Hi-ord Wavered
天之空・ミーナ(p3p005003)
貴女達の為に
サイモン レクター(p3p006329)
パイセン
空木・遥(p3p006507)
接待作戦の立案者

リプレイ

●モスキートマスター
「二回目にして同じことを言うんじゃが」
 『Hi-ord Wavered』ルア=フォス=ニア(p3p004868)がゆっくりと振り向いた。
「蚊取り線香は効かんのか?」
「効かん」
「じゃよねー」
 表情の読めない『神話殺しの御伽噺』エクスマリア=カリブルヌス(p3p000787)と頷きあって、ルアたちは道をゆく。
 馬車が通るにも狭苦しい、泥や石だらけででこぼこした道。
 エクスマリアは束ねた頭髪を自在に動かして石をひょいひょいどけているが、泥に汚れるのがいやなのかあまり動きにうれしさはない。
「蚊……蚊なー。まあ夏だし、水辺ならいてもおかしくはない、のか?」
 『紅の騎士』天之空・ミーナ(p3p005003)はぼんやりとそんなことを呟いた。
 ミーナの暮らしていた世界がどういう場所かはさておいて、蚊というものに『刺されたらかゆくなる』程度のイメージしかないのかもしれない。
 あと血を吸うらしいということくらいか。
「血を吸うのは経験あるけどよぉ、吸われる立場になるってのは初めてだぜ。ま、そう簡単に吸われる気はねぇけどな!」
 『吸血鬼を狩る吸血鬼』サイモン レクター(p3p006329)がからからとした調子でナイフをもてあそんだ。
 しかし、巨大な蚊の大量発生というのはきわめて恐ろしいことである。
 ある地球世界において最も人間を殺した生物は蚊とされており、病のキャリアーになることも多くそれが巨大かつ大量に増えるとあれば、非常に切迫した危機であるともとれるだろう。
「久方ぶりの依頼、セラも以前よりは力を付けたと自負しています」
 そういったことを考えているかはわからないが、『■■■■■』Selah(p3p002648)はとても真面目な様子で道を進んでいた。
「人であるならば、この場合、腕が鳴ると表現するのでしょうか?」
 『そういうもんかね』という顔をしていた『距離を詰める好色漢』空木・遥(p3p006507)が、ふと前方の様子に顔をしかめた。
「うわ」
 見て分かるほどにわらわらと、大量の巨蚊が飛び交っているのが見えるからだ。
 誰とて、そんな光景を見れば嫌な顔をするだろう。
 特にこの巨蚊は羽音によって対象を不快にし、毒などの抵抗力を下げるという。
「あんなのの中に入らなきゃいけないなんて、ある意味一番いやかも」
 軽く飛行して遠くの様子を観察していた『空歌う笛の音』アクセル・ソート・エクシル(p3p000649)が身震いをした。
 それはもうずっと先まで巨蚊の群れ。あれらが一斉にこちらへ襲いかかってくると考えただけでぞっとするものである。
「なんであんなに沸いてるんだろ」
「さあな……ただ事じゃねえのは確かだぜ」
 遥とアクセルがそんな風に話していると、『黒キ幻影』シュバルツ=リッケンハルト(p3p000837)が少し難しい顔をして唸った。
「奴らは北の泉から湧くって話だ。という事は泉に何らかの原因があるんだろ」
 拳を握り、ぱしんと手のひらに打ち当てる彼ら。
「ま、先にこいつらだ。害虫駆除といこうぜ」

●想像のできる恐怖
 蚊という生物は勿論幻想のあちこちにも生息している、まあまあ有名な虫である。
 比較的大きな音をたてて飛行し、表皮にとりついて口部分についている針を肉体に突き刺す。その際自身の体液を流し込むことで血液の逆流現象を防ぎ、一方的に血液を奪うのだ。
 奪った血液は子育てなどの栄養に使われるというが、わずかな血液だけでも身体がおもくなるためその時点で殺されてしまうことが多い。
 市販のぐるぐるした蚊取り線香を炊くことで殺すことが出来、その手軽さと商品の安さと普及率から蚊は脅威度の低い虫と見なされがちだ。
 しかしこれが巨大化した場合なにが起こるか。
 先述した吸血手順から、想像できるだろうか?
「かかってきな! クソ蚊ども! ……ねえ、これ効くの?」
 ミーナは魔剣を振りかざし、勇ましく巨蚊たちにタンカをきった。
 物理吸血型と魔力吸血型の二種がいると聞いていたが、刺されたところでミーナの強力な耐性能力と反撃性能からすれば脅威ではない。むしろ積極的に前へ出て囮になってやろうという構えである。
 とはいえ叫んだくらいで挑発にのってくれるのか……と思っていたら、周囲の巨蚊たちの多くが一斉にミーナへ群がってきた。
「うおっ!? ホントに来やがった! このやろ! 出てこい屍ども!」
 剣を地面に突き立て、死骸盾の力を発動……すると、泥の中から腐敗した死体がぼこぼこと無数に這い上がってはミーナを守るように整列した。
 そこまではいいのだが。
「このアンデッドは、元からこのような形状だったのですか?」
 Selahが周囲の気持ちを代弁した。
 アンデッドの肉体はなんでか穴あきチーズのようにあちこち穴だらけで、異常なほどぶくぶくと膨らんでいた。ただの腐敗現象でこうはなるまい。
 と思っていたら、巨蚊たちがアンデッドに群がった。
 コンバットナイフほどある太くて大きな注射針を、アンデッドたちの身体のあちこちへ一斉に突き刺していく。元々穴だらけだっただけに、アンデッドはあっとういうまに崩れていった。
「いいっ……!」
 どん引きするミーナ。Selahが彼女の手を引いて急いで後退した。
 抵抗力を引き上げる魔術や回復魔術施していく。
 それを追いかけて無数の巨蚊が走る。耳障りな羽音が鼓膜を麻痺させんばかりに響いてくる。
「気持ち悪い……けどチャンスだよ! エクスマリア君! ニア君! おいらたちの出番!」
 アクセルは大きく深呼吸をすると、魔力を片手の人差し指に集中させた。
 見れば、巨蚊たちはニーナとSelahたちを追いかけるために群れを成して移動している。元から同じ位置にいたわけではないので必然的に散った状態のままこちらへ近づいている状態である。
「こいつ(ライトニング)が一番役に立つシチュエーションってやつじゃな!」
 ニアはガンウォンドを両手に握り込むと、双方水平に構えて魔力をチャージしていく。
 赤色と青色に発光し光を膨らませていく銃口。
「なら、同時にいこう」
 エクスマリアもまた発射姿勢をとる。
 毛髪を四本の針状にして足下に突き立てて姿勢を固定させると、胸の前で編み編みにしていった毛髪を大砲の形に整える。銃口にあたる部分が黄金に輝き強い熱を持ち始めた。
「せー……のっ!」
 三人の砲撃が一斉に発射される。
 大量の巨蚊を数本の巨大な光が包み込み、バチンという音の連鎖と共に火花を散らしていく。
 巨蚊はこれだけの群れで行動するだけあって個体ごとの耐久力は低いらしい。さすがに両手でパンってやるだけでは倒せそうに無いが、アクセルたちの攻撃でも充分薙ぎ払うことができるだろう。エクスマリアに至っては掠っただけでも殺せるほどだ。
 しかしやっぱり数ある群れ。空間がすっきりするのは一瞬のことで、すぐに大量の巨蚊が埋め尽くすのだ。
「これだから蚊はうぜぇんだ!」
 シュバルツはエクスマリアたちが囲まれないように突撃。
 接近してくる巨蚊の顔面を右ストレートで打ち抜いた。
 首筋を狙って針を突き込んでくる巨蚊。しかしシュバルツはきわめて絶妙な間合いと上半身の移動だけで攻撃を回避。ローラーでもついているのかというほどなめらかなスウェー移動で続く吸血攻撃を次々に回避していく。
 たまに針が刺さることはあった、すぐさま引き抜いて粉砕していた。
「この程度ならなんてこたぁねえな。毒もそうそうくらわねえ」
 シュバルツの洗練された回避技術もさることながら、巨蚊のほうもたいして攻撃命中能力が高いわけではないらしい。これがバッチリクリーンヒットしないことには毒を流し込まれる心配もないというわけだ。
 かすり傷をおって吸血が発動してしまっても、それを補って余りある攻撃力で打ち消すことができる。
「つまり、針が刺さらなければ毒を入れられることはない」
 同じく飛び込んだ遥も、針が刺さった瞬間をかわすようにして相手を殴り飛ばしていくスタイルで戦っていた。
 恐ろしいのは囲まれてしまった時だが……。
「…………」
 遥とシュバルツは360度プラスアルファを囲んだ巨蚊たちに対応すべく背中をあわせ、ファイティングポーズをとった。
 と、その時。
 短剣を逆手持ちしたサイモンが次々と巨蚊の腹を切り裂きながら飛び込んできた。
 血を吸われるどころか逆に吹き流させる勢いで、次々と巨蚊を落としていった。
 一斉に襲いかかるつもりだった巨蚊がサイモンによって不意をつかれ、ほんの少しだけはあった群れとしての統率を乱した。
 その隙である。遥たちは力を合わせて巨蚊の群れを徹底攻撃。
 回復に集中していたSelahでさえ魔力の塊で直接殴りつけるかのようにして巨蚊を粉砕した。
 ぼてりと落ちてぴくぴくと動く巨蚊に、念のため魔力を打ち込んでトドメをさすSelah。
「これで殲滅は完了したようですが……」
 くるりと辺りを見回す。
 これ以上巨蚊が現われる様子はないようだ。
 このまま帰ってもいいくらいなのだが……。
「奥を探索してみますか?」

 Selahの提案で休憩を挟んだ仲間たちは、体力やスタミナを回復して泉へと向かって歩いていた。
「何事にも、原因というのは付き物です」
 Selahのいうことももっともで、これだけ大量の巨蚊が発生するにはワケがあるはずだと、皆考えていた。
「なーんか、嫌な感じがするのぅ」
 腕組みをするミーナとニア。
「原因つっても。なにがあるんだ?」
「そりゃあ、蚊なんだからボウフラがたっくさんいるんだよ。うわあ゛」
 アクセルは透明な泉のなかいっぱいに巨大なボウフラが泳ぎ回る光景を想像して身震いした。かなりガチめに気持ち悪い生き物なので無理からぬ。
「いや、巨大な蚊の母体がいる可能性もある」
 遥がもう一歩踏み込んだことを言った。
 二人の言っていることはある意味で類似していて、要するに巨蚊がかわいくみえるくらいばかデカい蚊がいて。大量の子供を産みまくっているという考え方だ。
 キモいからいやじゃなあとニアがむき出しの肩をさすった。
 思えば蚊に刺され放題みたいな服装である。
 似たような顔をするシュバルツ。
「要するに、泉にボウフラが大量に泳いでて、それを守ってるデカい女王がいるってことか?」
「マザー的存在ってやつだな。放っておけばまた増殖するかもしれないぜ」
 サイモンのいうことももっともで、依頼の内容通りに目に見える蚊だけ倒していてもキリがない。
 別に世界平和が目的ってわけではないにしても、こんなに気持ちの悪い生き物が無限にわいてくる環境は御免被りたいものである。善悪以前の問題だ。
「ただ、それだけとも言い切れない」
 エクスマリアがぽつりと語り始めた。
「『百年に一度、巨大な蚊が現われて人々を絶望の病におとす』……仮にそれがより巨大な蚊であるとすれば、疫病をまき散らす元ともなりかねない」
 それこそ、『人類を最も殺した生物』もかくやである。
「行こう」
 エクスマリアたちは頷きあい、深い茂みの奥へと進んでいった。

●グロテスク
 恐ろしい光景であった、と前置きをしておこう。
 もし食事中であるならば一旦とめることをすすめるとも、述べておきたい。
 茂みを抜けてたどり着いた泉は、白と黒に濁っていた。
 というのは目の錯覚で、白黒まだら模様の全長30センチ前後あるボウフラの群れが所狭しと泳ぎ回っていたのだ。
 泉に生息していたであろう魚や鳥はあちこちに死骸となって落ち、その全身には指二本分ほどの穴が無数に空いていた。
 流れた血や腐敗した肉が泉にとけこみ、その他諸々の明言しがたいものが沈殿ないしは浮遊している状態である。
 もはや泉とは呼べぬ。
 巨大な虫の巣である。
 そしてなによりも象徴的なのは、泉のむこうがわに足と尻をつけて休む巨大な蚊の存在であった。足や羽根を含めた全長は数メートルはあるだろうか。
 仮にこれをマザーモスキートと呼ぶとして……。
「奴が元凶で間違いねえな!」
 サイモンが腕まくりをして叫ぶ。
 音ではなく臭いや熱によってこちらに気づいたらしいマザーモスキートはぶわりと空に浮かび上がると、その周囲に残った少数の巨蚊と共にこちらへと飛行してきた。
「あっちの『小せえの』は私に任せな!」
 ミーナが盾を構えて突撃していく。
 泉を迂回するようなコースで、他の仲間たちもまた移動をはじめた。
「柄じゃねぇが、私が動けるうちは好き勝手にさせねぇよ!」
 ミーナは死骸盾で鳥や魚のアンデッドをいくつも作ると、巨蚊をおびき寄せながら叩き付けていった。
 すり抜けて接近してくる巨蚊が腕に突き刺さるが、それを剣で切り裂いて殺す。
 大きく空中をカーブしたマザーモスキートが接近してくる。
 対応は間に合わないだろうか……と思った所で、サイモンが飛び込んでナイフを深く突き立てた。
 きわめて絶妙なところに突き刺さったようで、赤緑の体液が派手に吹き出ていく。
「こいつは……?」
「巨蚊が流し込むっつー毒液だろう」
「ナイス!」
 アクセルがぴょんとジャンプして翼でホバリング。接近してくるマザーモスキートめがけて射程めいっぱいのところまで魔砲を連射した。
 勢い余った衝撃が水中の巨大ボウフラたちをぶちぶちと殺していく。
 その瞬間のことである。
 突如マザーモスキートが怒り狂ったように羽音を激しくし、勢いよくアクセルへと迫っていった。
「うわ!? なんか怒ってる! ……だよね!?」
 小さい子供殺したしね!
 と言いながら距離をとろうとするアクセルだが、間に挟まるようにしてエクスマリアが立ちはだかった。
 アクセルを守るため、ではない。
「巨大な羽虫か。叩いて潰すには些か以上に面倒だ」
 頭髪を大量にあみあげ、見上げるほど巨大な二本の腕へと変えていく。
 そして、両サイドからサンドするかのようにマザーモスキートへ叩き付けた。
 派手な衝撃にぶちんと何かが折れたり潰れたりした音がした。
 が、その直後に巨大な手を突き破ってマザーモスキートが飛び出してくる。
 折れたのはどうやら突き刺すための口の針と足だったようだ。突撃を失敗し、おかしな軌道を描いて飛んだマザーモスキートがエクスマリアへと衝突する。
 巨体の突撃はそれなりのもので、はじき飛ばされたエクスマリアをSelahが素早くキャッチ。
 回復を施すと、彼女を後方へさげて自分が前へと飛び出した。
「エネルギーもつきました。ここはセラにお任せください」
 残った力を結集させ、見えない障壁を生み出すSelah。
 そこへ再びの体当たりをしかけるマザーモスキート。
 が、それはある種の囮作戦。
 シュバルツと遥が両サイドから飛びかかり、二人同時に鋭い回し蹴りを叩き込んだ。
 狙いは羽根。
 べきんという激しい音と出血により、マザーモスキートはその場に墜落した。
「っし、トドメをさしてやれ」
「羽根も足もなければ逃げ回れないだろう」
「ひー! 譲ってくれて嬉しいやらもう帰りたいやらじゃ!」
 ニアがぼーふらきもいのじゃといいながらガンフォンドをめちゃくちゃに乱射。
 着弾地点で引き起こされた精神嵐がマザーモスキートの脳神経へ干渉。雲のように細かく広がる精神のネット構造をめちゃくちゃに引き裂いていく。
 最後には奇声をあげ、マザーモスキートは体液をあちこちから吹き出して絶命したのだった。

 こうして、バルカ島をおそったモンスター騒ぎは幕を閉じた。
 しかしこれだけ巨大なマザーモスキートがいかにして発生したかについては、未だに分かっていない。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――excellent!

PAGETOPPAGEBOTTOM