シナリオ詳細
<総軍鏖殺>悪しき盗賊を誅せよ
オープニング
●盗賊の襲撃
「う、うわあああああ!」
「くそっ、奴等何処から出てきたんだ!」
ヴィーザル地方。
鉄帝北東部に存在するその場所は、この時期になると雪深くなる場所が多くなってくる。
当然、街道になるような場所は除雪が済んでいたり、あるいは万年雪になるような場所は除雪をしても無駄だと早々に諦めて「それなりの装備」で移動したりする。
ヴィーザル地方の村々を繋ぐ隊商も、そうした状況に合わせ移動しているのだが……盗賊も、そうした状況に適応した連中がいる。
今までは細々と活動していた連中が過激になれば、その勢いは何処までも増していく。
そしてそれを取り締まる官憲は、今はいないのだ。
「ハッハー! 奪え、やっちまえ!」
「ヒャッホー!」
何処から調達したものか雪原迷彩装備を纏った盗賊たちは、隊商を命ごと奪い尽くす。
多少派手にやったところで咎める者などいないのだから、ブレーキがかかるはずもない。
奪って、奪って、奪って。そのしわ寄せは、弱い人々へと向かっていく。
それが新帝の示した道ではある。
しかし、ならばだ。盗賊とて、その命を奪われても……何の文句もないはずだ。
彼等はそれだけのことをしているし、これからもし続けるのだから。
●盗賊団退治の依頼
ノーザンキングス解放戦線……いや、今はポラリス・ユニオン(北辰連合)と名乗るようになった彼等は、餓狼伯の居城と『餓狼伯』ヴォルフ・アヒム・ローゼンイスタフ(p3n000288)を中心に集まった勢力だ。
その行く先はまだ不透明な部分も多いが餓狼伯自身の言葉として「周辺の街や村がノーザンキングスの尖兵や、或いは無法者共に襲われているのならば見捨てる事は出来ん」と明言されている。
つまり……今回『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)が情報を掴んできた盗賊などは、積極的な駆除対象であるということになる。
「今回の件を受けて情報を調べてみたが……かなり用意周到な相手のようだ。付近の村などで情報を調べるのは勿論、相手の戦力を目視で把握して襲うようだ。それにあたり、何処から持ってきたかは不明だが雪原迷彩を使っているようだな」
盗賊団の名前は、不明。その辺りの尻尾を掴ませない「上手い」連中だったようだが、どうにも最近派手に動いているようだ、と餓狼伯の部下は説明する。
「つまり……あからさまに此方が強いという雰囲気を出したら出てこない、というわけね?」
レイリーがそう問えば餓狼伯の部下も「そうだ」と頷く。
相手は用意周到で卑劣な盗賊団だ。雪原に身を隠す技術も高く、彼我の戦力差も目視で測れる程度には危機管理能力もある。
これを倒すには、ある程度芝居を打つ必要なども出てくるだろうか?
かなり面倒な相手だが……レイリーは自分の胸をドンと叩いてみせる。
「私たちに任せて! その盗賊団……見事撃滅してみせるわ!」
そのみち、ポラリス・ユニオン(北辰連合)の一員としてそんな連中を放置するわけにはいかないのだから。
- <総軍鏖殺>悪しき盗賊を誅せよ完了
- GM名天野ハザマ
- 種別通常
- 難易度NORMAL
- 冒険終了日時2022年10月22日 22時05分
- 参加人数8/8人
- 相談7日
- 参加費100RC
参加者 : 8 人
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参加者一覧(8人)
リプレイ
●ヴィーザル地方にて
ヴィーザル地方の雪原は、万年雪と言われる程に積もる。
冬が近づけばその積雪量は加速度的に上がっていく。
それは今この瞬間すら例外ではなく……はらはらと雪が降る中、雪原をゆっくりと進む馬車はまあ、珍しい光景ではないということだ。
だからまあ……馬車を操るのが白衣の医者のような女性だったとしてもそれは、珍しいことではない。
ただ1つ、珍しいことがあるとすれば、そこにいるのは無力な医者ではなく『愛を知りたい』ココロ=Bliss=Solitude(p3p000323)……すなわち、イレギュラーズであるということだ。
(力こそが正義とされる、それが新帝の意思なのでしょうけど。何をしてもいいとは思っていません。今こそ、新帝以前よりもっと弱き者が救われなければいけない。その為にヴァイスドラッヘは在るのだとわたしは考えています)
ふと、そんなことを『ヴァイスドラッヘ』レイリー=シュタイン(p3p007270)は思う。
新帝の勅令は鉄帝中に広がり、今や弱き人々を襲う強盗団の類は珍しくないものになってしまっている。
しかし、だからこそヴァイスドラッヘの……レイリーの願いもまた、強く輝こうとするのだ。
それ故に、今回の「偽装」にもココロは気合を入れていた。
近くの街では、街の人に上着を借りてしまうほどにいかにも雪に慣れてないように振舞ってみたり。
積み荷は高い薬とたくさんの医療品だと聞かれたら説明しておくことも忘れない。
(寒冷地ほど病気は流行しやすいのだから医療品は金になりますものね)
金になるものは狙われる。金になるもので、なおかつ護衛が薄そうであれば……それは襲う理由になると、そう考えてのものだ。
更にはレイリーの情報網によって事前に不慣れな小隊が薬や食糧などを雪の中輸送するらしいという情報を流し盗賊団から見たらカモに見せられるようにもしていた。
『『幻狼』灰色狼』ジェイク・夜乃(p3p001103)もまた、ココロの馬車に商人に変装して乗っていた。
今回の設定としてはレイリーの流した噂の通りに「地理を知らない貧弱な行商人」であり、途中で立ち往生するような……まあ、そんな盗賊連中にとって都合の良い事態が起きるようなものになっている。
勿論警戒されないように「貧弱な行商人」部分は大切だ。
更には事前に立ち往生をする場所を選定することで、その場所へ事前に鳴り子と捕獲用の罠を設置しておくことも忘れてはいない。
罠の形跡は雪で隠せるだろうし、その位置は味方に伝えておくことも忘れてはいない、のだが。
(想像以上の雪だな。作動するかはある程度賭けになるか……?)
まあ、ギリギリといったところだろうか。更には武器を荷台に隠しており、いざという時にはいつでも取り出せるようにもしていた。
「元々多かったアレなレンチュウが本当に増えたねぇ……。先ずは根城まで潰して1団体カイメツさせよう!」
馬車の中で『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)もそう呟くが、その恰好はちょっとみすぼらしいものであり、衣装としては幻想のものを用意していた。「下男かドレイって様子で荷運び要員のフリをするよ!」とはイグナート本人の談だが、今のところジェイクが変装の手伝いをしたのもあってしっかりとそう見えている。顔が割れてる可能性もあるからと、マフラーで口元を隠して三つ編みもしまっておくのも忘れてはいない。
そんなイグナートは極寒超越で寒いのが平気……というよりは寒い程調子は上がっているのだが、寒がっているフリをしてもいた。
そしてイグナートと同じく『鋼鉄の冒険者』オリーブ・ローレル(p3p004352)も極寒超越で寒さは全く平気だった。
……なのだが、特に配役があるわけではなく、馬車の中で連中が来るまでじっと潜伏していることになっていた。
(しっかりと隠れていれば表に出ている味方が上手くやってくれます。足を引っ張る訳にはいきません。しっかり息を殺さなければ……)
そう、色々と役割はあるが『タコ助の母』岩倉・鈴音(p3p006119)などは変装して商人の従者を装い、うだうだ言いながらノロノロいく馬車を後ろから押したりしていた。
寒がって動いたりしながらエネミーサーチをしているが、今のところ反応はない。
(尻尾をつかませないこしゃくな盗賊どもの首根っこ、おさえなきゃな! そのためには過酷な寒さも耐える……しかねーよ)
イグナートやオリーブと違い寒さへの態勢がない分、その辺は根性だ。
そんな鈴音だが、荷馬車いっぱいの食糧を持ってくるなど偽装工作にも積極的だ。
(なんか嫌に勘の働く連中だしな、何もないと疑うかもしれん。あとはマントは日除けのヤツで大丈夫だったか……? 鉄騎種に産まれりゃよかった〜)
色々考えているせいか、不満そうにうだうた言う従者をよく演じられているといえるだろうか。
「へぇ今度は盗賊団ね。それも、中々尻尾を掴ませないって難しいわね。それなら何としても引きずり出してやるわ」
レイリーも女商人を装いながらイライラと『ライカンスロープ』ミザリィ・メルヒェン(p3p010073)と何かを言い合っているような様子を装っている。勿論演技だ。
(少しでも油断してもらえたら幸いね。可愛い女性がいるってのも付け加えてみたけどどうかしら?)
実際には、そんなことを考える余裕すらあったほどだ。
(盗賊団とかあ。後は……うん。やっぱ助かる人は助かってほしい。弱いからって見捨てていい理由にはなれへんのよ)
『放逐されし頭首候補』火野・彩陽(p3p010663)もそんなことを考えながら「超聴力」で別の音が無いか聞こえたらと耳を澄ましていた。
(何せ雪原。音は目立つやろ)
もう少し進めば、予定のポイントに辿り着く。だからこそ……馬車は、油断せずに雪原を進んでいく。
●盗賊団を退治せよ
「だから現地のひとに聞きましょうって言ったじゃないですか!」
ミザリィのそんな怒声が響く。
ヴィーザル地方の雪原で立ち往生した馬車でもめている商人たち……に見える光景だ。
「行ける行けると言っといてこのザマ? はあ? ばっかじゃないの??」
「だって、この季節なら馬車で行けると思ったの! 早く押して!」
ココロにレイリーもそう返しながら鈴音へと急かしている。
「ああ、どうしよう。荷馬車が動かなくなったぞ~」
ジェイクもそんな、如何にも説明台詞な……しかし分かりやすく現状を示す台詞を言う。
「どうするのよ、これ?」
「知らないわよ!」
「それより早く動かしませんと!」
そんな3人による大声での演技の最中、ジェイクは荷馬車から降りて鈴音、彩陽と一緒に後ろから押す仕草をしている。
勿論、本気で押してなど居ない。
ついでに二丁の拳銃も回収しているし、放ったファミリアーの烏を通じてハイセンスで索敵をするのも忘れていない。
(何せ雪原迷彩で姿を隠しているって話だ視覚のみならず、嗅覚と聴覚を駆使しないとな)
それだけではなく、ココロと彩陽も同様に超聴力を使い索敵をしていた。
そして……ついに、それが動き出す。雪原装備を纏った盗賊たち。
「ハッハー! 苦労してるみてえじゃねえか!」
「荷物減らすの手伝ってやるよ!」
こちらの戦力が低いと判断したのだろう、雪の上を滑るように近づいてくるその姿は、実に慣れている。
だが、彼等は見誤った。大型拳銃『狼牙』、凶銃『餓狼』。2丁の銃がジェイクの手の中に現れ、プラチナムインベルタからのラフィングピリオドを放つ。
総勢40のかなりの規模の盗賊団だが……逃がす気も、やられる気もない。
「私の名はヴァイスドラッヘ! 馬車の中までは行かせないわ! 私を倒さない限り絶対に通さないわよ、かかってきなさい!」
白亜城塞を発動させたレイリーは、自分を盾にするべく立ち塞がる。
特にライフルによる攻撃は自分に、そして銃弾は避けずにしっかり受け止めて後ろに流れ弾すら行かせないことを心に決めていた。
「わたしは裁きを下さない。そこに転がってなさい」
そんなレイリーをサポートするようにココロもフェニックスを発動させるが、その姿は先程までの言い争いが完全に演技であったと、そう知らしめるものだった。
「チッ、罠にかけられちまったか!」
「そういうコト! 逃がさないよ、諦めてもらおうか!」
「負傷させれば血が出ます。その赤はいかに雪原へ適応した装備でも格好の目印です」
ジェットパックを利用して跳び回るイグナートの名乗り口上が響き、オリーブのジャミル・タクティールが叩き込まれていく。
「全滅させても、これだけ数がいれば息のある奴が残るでしょう」
そんな殺伐とした台詞をオリーブは呟くが……相手は残忍な盗賊だ。彼等の命に配慮してやる理由は1つもなく、オリーブの台詞や態度は盗賊自身が招いた、至極当然な帰結とすら言えるだろう。
「馬車の商品やわたしに手をつけることは許さんでえー。聖王封魔でぶちかましたるッ」
それでも流石に40人もいれば馬車に近づいてくる者もいるが……鈴音の聖王封魔がそれを打ち倒す。
(40名だからうち漏らしは気になるな。数確認しとかないと)
鈴音は基本的には回復に専念しているが、そうした方面にも気を配っていた。
まあ、当然だろう。此処まで来て逃げられてはたまらない。
「できるだけ丁寧に魔力を練って精度を上げて、回復量を少しでも上げていきましょう。運も実力のうちですから……鈴音、そのままお願いしますねっ!」
ソリッド・シナジーを発動させたミザリィが鈴音にそう声をかければ鈴音からも「任せて!」と返ってくる。
「倒すだけ倒しとこ。一人くらいは両手足の自由奪って尋問とかするように残しとく?」
後方から狙い撃ちスタイルでギルティブレイクを放つ彩陽も、臨機応変に動きながらしっかりと狙撃していく。
敵の戦意は高く、上手く捕まえられない可能性も高いが……それはそれで次善の策はある。
そして……見事最後の一撃が炸裂し、僅かではあるが息の残っている1人を残して全ての盗賊の殲滅を完了する。
その1人への対処は、代表してオリーブが行っていた。
具体的な目標としては、ソリの場所を吐かせること。それと、あるのならば本拠地の場所だ。
前提として止めは刺すことはすでに確定している。
いわば、死に方の問題である。吐かなければ苦しむ事になり、吐けば一思いに終わらせる。
こういった事を無感情に行えるようになる程度には、碌でもない連中を数多く相手にしてきたとオリーブはひとりごちる。
まあ、自身の名誉と鉄帝の平和の為に戦っていたオリーブだからこそそういった経験も感覚がマヒする程にはあるのだろう。
尋問で場所を吐かなければ、周囲を捜索してソリを見つけ出します。時間はあるのです、焦らずにやっていきましょう、と……そう言っていたオリーブは実際にソリの場所を聞きだしてみせた。
しかしながら、それが真実であるかは分からない。だからこそジェイクはファミリアーで、イグナートはエコーロケーションも使いソリの場所を捜索していた。
そして……見つけ出したソリは、それ自体が雪原迷彩を施された立派なものだった。
乗せられているのは比較的簡単に換金できそうなものや、高額なものなど様々だ。現金そのものも積まれている。
食糧や酒なども積まれているところを見ると……盗賊の移動拠点と見做すのが正しいようにも見える。
「奪うものは奪われるってね」
鈴音もそう言うが……まあ、結果を見れば盗賊たちは新帝の勅令通りに「弱ければ死ぬ」を実践したとも言えるだろう。
そういう意味では、彼等に文句などあろうはずもない。
「これ、元の持ち主は辿れるかしら。返せるものは返したいわ」
「どうでしょうね……遺族がいるかどうかすらも」
レイリーにミザリィが言葉を僅かに濁し、彩陽もその理由をすぐに理解する。
「あー……まあ、たぶん皆殺しやろなあ」
そう、彼等は雪原迷彩を駆使し行商などを襲ってきた盗賊団だ。
これまで存在が露見しなかったことから考えても、そのスタイルは「皆殺し」であろうことは……まあ、間違いない。
「なんともやりきれない話ではあるな」
ジェイクもそう呟くが……こればかりは仕方ない。
だから、それでもと望むならば。
今こそ、新帝以前よりもっと弱き者が救われなければいけない。
そんなレイリーの理想を叶えるしか、手はないのだろう。今回のことは……僅かではあるが、その為の一歩になったのは間違いないだろう。
成否
成功
MVP
状態異常
なし
あとがき
名もなき盗賊団を排除しました!
●運営による追記
本シナリオの結果により、<六天覇道>ポラリス・ユニオン(北辰連合)の求心力が+10されました!
GMコメント
ヴィーザル地方の雪原に盗賊団が潜んでいます。
かなり慎重な連中のようなので、上手く作戦をたててやっつけましょう!
●盗賊団×40
雪原装備に身を包んだクズの集まり。
雪の上を移動するのが得意で、滑るように移動します。
武器はライフルとサーベル。同情の余地はありません。
●雪原迷彩荷ソリ
奪った品物を運ぶためのソリ。盗賊団からそんな離れていない場所に隠してありそうです。
略奪品が載っていますが、決まった拠点を持たずに移動していたのでしょうか……?
●情報精度
このシナリオの情報精度はBです。
依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。
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