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シナリオ詳細

燃える車輪のゆくさき

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●骨馬車
「こういう道を走ってると、奴のことを思い出すよ」
 軋む車輪が小石をけって、野草のしげる平野をゆく。
 揺れる荷馬車に腰掛けた赤毛の女はマッチをこすった。
 炎が彼女の顔をてらすたび、顔全体をおおう焼けど跡が生き物のようにゆらめいてゆく。
 マッチの炎は紙煙草のくさに火をともし、揺れあがる煙はチョコレートのような甘い香りをもっていた。
 女の名はバッケル……『ローストフェイス』バッケル。
 パサジール・ルメスのキャラバンリーダーが一人であり、今回の依頼人でもあった。
「目的地はまだ先なんだ。暇つぶしに聞いていくかい?」

 バッケルが語ったのは、ある都市伝説であった。
「『燃える車輪に行き逢うと、馬車があの世へ連れて行かれる』って都市伝説をしってるかい?
 商人の間じゃまことしやかに語れる伝説さ。
 そうだね……今日みたいに晴れた日だったそうだ。ある商人は三台ほどの馬車を率いて野原を進んでた。馬車越しに大声で歌ったりしてね。
 商人の仕事は半分以上が暇つぶしでね。町から町へうつる間は歌でもうたって過ごすしかないのさ。
 まあいつも通りに平和で楽しい旅だったそうだ。
 けれど妙なことがあった。
 車輪がどうにもキイキイとうるさい。そいつの車輪は鉄製でね、海沿いを旅してるとよく錆びちまうからってんで頻繁に交換してたんだ。
 その時は車輪も交換したばっかりで油も充分さしていた。けどうるさい。
 念のためにともう一度油をさしたけれど、まだ軋む音が消えない。
 不思議に思って連中は野原の真ん中で馬車をとめてみた。
 するとどうだろう。まだキイキイ音がする。
 三つの馬車は止まったままなのに、車輪だけが軋んだ音をたてるのさ。
 いや? 正確には違うね。馬車は止まったままなのに、音だけが進んでいくんだ。
 キイキイ、キイキイ……ゆっくり前へ進んでいく。
 そして、暫く行ったところで止まった。
 そのとき商人ははっきり見たそうだ。骨だけの馬に、骨で組んだ馬車を引かせた、骨だけの御者。車輪だけはみょうにくっきりとしていて、炎に包まれていたそうだ。
 骨だけの御者が振り返ってこうった。

 『止まるな』

 ――次の日、別の商人が通った時不思議なものを見つけた。
 馬も人も居なくなった馬車が、荷物ごと取り残されていたのさ。扱っていた商人の行方はわからない。奴らに連れて行かれたって噂だよ」

 ちりちりと光る煙草の火。
 バッケルは左右非対称に笑って、煙草をくわえたまま煙を吐き出した。
「それからさ。こんな晴れた日に、見晴らしのいい野原で、新品の車輪が軋む音をたてたら『奴』が真横を走っている合図だって言われてる。
 ところで」
 バッケルは真下を指さした。
「この車輪は新品なんだがね?」
 キイキイという音が、強まった。

 右に左に、そして後ろに。
 骨の馬車が現われた。

GMコメント

【ここまでのあらすじ】
 パサジール・ルメスのキャラバン『ローストフェイス』の護衛を依頼されたローレット・イレギュラーズ。
 町から町へ移る間、あるモンスターと遭遇してしまいました。
 咄嗟のことながら対応し、モンスターを倒さなければなりません。

 ここからの情報はほぼメタ情報となるので、『戦闘中に察した』『豊富な知識ゆえに知っていた』といったテイでプレイングをかけるとよりお楽しみになれます。
 相談は若干メタ視点になってはしまいますが。依頼中一瞬のうちにすりあわせが済んだものとして扱います。

【戦闘導入】
 バッケルの乗る馬車A、仲間の商人が乗る馬車B、同じく馬車Cという三台の馬車を縦一列で進めていたところ、左右と後方を囲むように四台の『骨の馬車』が現われました。
 彼らは明確な敵意と殺意をもって、商人たちをあの世へ連れて行くつもりのようです。
 馬車をとめることなく走り続け、併走してくる『骨の馬車』と戦いましょう。
 PCたちはそれぞれ馬車A~Cのどの馬車に乗っていることにしてもOKです。
 もし御者として優れた技術を持っているなら御者を代わっていたことにしても良いですし、自前の馬で併走していたことにしてもOKです(その場合必ず自分でアクセサリーカテゴリに装備してください)。ただし最低一人以上はそれぞれの馬車に配置しておきましょう。

【骨の馬車】
 馬と馬車はダメージ無効。BSその他も効果をもちません。
 このとき戦闘対象となるのは『骨の御者』『亡者』です。
 骨の馬車は全部で【4台】。それぞれに配置されています。

●骨の御者
 アンデッド型カテゴリ。骨しかない馬車の御者。
 マスケット銃を装備しており、馬車をあやつりながら『銃撃(神超単【万能】)』を行なう。
 御者を倒すことで馬車は制御を失って消えてしまう。
 HPと特殊抵抗が非常に高く、馬車をうまく操縦する能力をもっている。

●亡者
 霊魂型カテゴリ。
 馬車の荷台から助けを求める亡霊たち。
 生者の馬車に飛び移り、乗組員を殺そうとします。
 攻撃方法は『生気を吸う(神至単【恍惚】【呪い】)』。
 骨馬車からおよそ無尽蔵に這い出てきます。
 PCたちは勿論商人も狙うため、亡者対策の人員を多めにさきましょう。

【おまけ解説】
・作戦のススメ
 骨馬車ひとつを集中攻撃しようとすると、フリーになった残りの骨馬車にこちらの馬車が速攻で潰されてしまいます。
 馬車ひとつにつき骨馬車ひとつを相手にする気持ちで、できる限り防衛を強くしていきましょう。
(※キャラバンのうちバッケルの乗る馬車Aだけでも残っていれば依頼成功扱いになりますが、誰かが欠けていると非常に後味が悪くなるおそれがあります)
 また、この作戦でいった場合馬車Cだけが骨馬車を2台同時に相手することになります。防御に優れた人員を予め配置し、意図的にぶつけることができるのもお勧めポイントです。

・プレイングのススメ
 序盤はどばっと乗り移ってくる亡者たちを振り払うことに集中すると後々楽になるでしょう。
 亡者が次々わき出るといってもペースがあるので、はじめのうちに今ある分を倒しきってしまうととても楽になるためです。
 いっそ骨御者を後回しにすることも検討してみては。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 燃える車輪のゆくさき完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月06日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ポテト=アークライト(p3p000294)
優心の恩寵
伊吹 樹理(p3p000715)
飴色
アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)
幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る
メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)
メイドロボ騎士
リカ・サキュバス(p3p001254)
瘴気の王
アト・サイン(p3p001394)
観光客
七鳥・天十里(p3p001668)
ラデリ・マグノリア(p3p001706)
再び描き出す物語

リプレイ

●燃える車輪のゆくさき
 バッケルは真下を指さした。
「この車輪は新品なんだがね?」
 キイキイという音が、強まった。
 右に左に、そして後ろに。
 骨の馬車が現われた。
「わーお」
 馬車列最後尾。二台の骨馬車に両サイドを挟まれて、『観光客』アト・サイン(p3p001394)は御者の男をつついた。
 スピードを上げよという合図である。
 鞭の音が三つ。いや七つ同時に響いた。
 速度をあげ風を巻き上げ音をさらっていく。靡くフードを押さえてアトは笑った。
「あの世からの迎えってわけかい。だが残念、食っても腹の足しにもならない幽霊は乗車お断りなんだよね!」
 大きな馬車のベンチで足を組んでいた『メイドロボ騎士』メートヒェン・メヒャーニク(p3p000917)は、長い髪を指でくるくると巻くようにして息をついた。
「あぁなるほど、これがフラグというやつか。本当に起こるものなんだね、こういうことが」
 いち早くスピードを上げた馬車だが、骨馬車はそれを超える速度でじわじわと追いついてくる。
 やがて追いつくであろう距離の縮まりを、そして怪しく光る骨馬の目を見て、『雨宿りの』雨宮 利香(p3p001254)はぞくりと肩をふるわせた。
「みんな何のんきに言ってるんですか!? バッケルさんも! 縁起でもない事言うから本物が出てきちゃってるじゃないですか!」
「はっはっは!」
 馬車ひとつ挟んで最前列。
 座席にあぐらをかいていた『ローストフェイス』バッケルは声を上げて笑った。焼けた顔面が左右非対称に歪む。
 隣に腰掛けていた『幻想乙女は因果交流幻燈を夢見る』アイリス・ジギタリス・アストランティア(p3p000892)が立てかけていた杖を手に取った。
「貴女はどうも、こう言った不運に縁があるようですね」
「危ないところを通るのも商売でね。貧乏くじは引きやすいが、悪運も強いんだよ? このために、予め八人も護衛を雇ったんじゃないか」
「悪運の強さは商人にとって、時に幸運以上の恩恵を齎すのでしょうか……」
 スピードにのった骨馬車が最前列の馬車と併走を始める。ぎらりと光る御者の目が、こちらをしっかりととらえていた。
『止まるな』
 『飴色』伊吹 樹理(p3p000715)が突撃盾を装着した。固定具をパチンとはめこみ、盾正面のスパイクを内側から立てる。
 盾の名はおあつらえ向きにもゲートキーパー。あの世とこの世の門番である。
「止まるな、ね。不思議だね。まるで逃げ切って欲しいみたい」
「その割にはワイルドハントの有様だな」
 同じく魔術兵器を装備した『信風の』ラデリ・マグノリア(p3p001706)が、ぱちぱちと瞬きをした。
 御者の後ろ。骨馬車の中には大量の亡者の霊がつまり、まるで檻にでも閉じ込められたように骨の柵を掴んでは揺すっていた。ぱきぱきと音を立て、柵は今にも開きそうだ。
「骨ではなく悪霊か。どちらにしろタチの悪さ、倒すべき敵だと言うことに変わらない……」
 接触が近い。
 中央のやや小型の馬車に乗っていた『優心の恩寵』ポテト チップ(p3p000294)は御者の商人を庇うようにあたりの荷物を端へどけた。
「噂話が本当にあって、それに遭遇するなんてな……良い土産話になりそうだが、その為にも燃える車輪を倒して全員で帰らないと!」
 こちらの馬車に乗っているのはポテトと御者の商人と、そして七鳥・天十里(p3p001668)の三人だけである。
 天十里は『そっちは任せたよ』と馬車の丈夫な天幕へ懸垂逆上がりの要領で飛び乗ると、ホルスターから中折れ式リボルバー拳銃を取り出した。
 セーフティーを解除。
「噂をすれば何とやらって感じかな。まあ護衛の仕事とか、何事もなく終わるとは思ってなかったけどね!」
 お仕事はじめ。
 サイドから骨馬車が猛烈に迫る。
 両者の車体が激しく激突。
 砕けるよう歪んだ開いた骨の柵をやぶって、亡者たちが馬車へ流れ込む。

●亡者の声
 馬車へと流れ込んできた亡者たちは、ラデリの足下や腕にすがりついた。
『とまれ』
『つれていけ』
『しにたくない』
『みとめたくない』
『まだやりたいことが』
 振り払ってもしがみつく。触れるたびに生気が吸われるようで、背筋がゾッと冷たくなった。
「よその馬車では静かにするものだ」
 手袋から魔術の光を放ち、すがりつく亡者たちを力強く振り払っていく。
 一度離れた馬車に目を向け、斜めがけしたベルトから試験管のひとつを抜いた。
 投擲。
 こちらに流れ込みそびれた亡霊たちが広がる魔術の霧におぼれてゆく。
「しかし、こう多くてはきりがないな」
「だったら――」
 盾で殴るように振り払っていた樹理が、ここに至って盾をずどんと床に立てるように構えた。
 内側のレバーを引いて窓を開き、横並ぶ銃口を覗かせる。
「ふせてて!」
 発射トリガーを引き絞る。すると銃口から色とりどりのキャンディドロップが飛び出した。
 ショットガンのように拡散したキャンディが亡霊たちにめり込み、一部を馬車の外へと吹き飛ばしていく。
 手前で伏せていたアイリスが頭を上げると、馬車の縁にしがみついていた亡霊がよじ登ってくるのが見える。さらには、骨馬車がもう一度体当たりを仕掛けてくるのが。
 次が来ます。
 アイリスは得意の呪文を一瞬で詠唱すると、骨の召使いたちを作り上げた。再び流れ込む亡者たちを押しとどめようと立ち向かう召使いたち。
「しばらくは持ちこたえます。今のうちに亡者の掃討を」
 掴みかかる亡者を杖で打ち払い、アイリスはラデリたちに呼びかけた。

 盾を使ってすがる亡者を振り払うポテト。
 冷や汗をながしながら馬を操る御者を背に庇い、亡者たちを一手に引き受けていた。
 足に、腕に、時折首に、亡者たちがすがりついては『つれていけ』とかすれた声で呼びかけてくる。
 だがその訴えとは真逆に、ポテトの生気がどんどん吸い取られ、彼らの世界へと連れて行かれてしまいそうだった。思わず声が漏れる。
「ポテトさん、大丈夫!?」
 頭上から天十里の声がするが、ポテトはニッと笑って見せた。
「大丈夫だ七鳥。商人は私に任せろ。『そっち』は任せたぞ!」
 ポテトは自らの抵抗力や回復力を引き上げ、治癒魔法を力の限り連発させた。
 支援の一部を受けて、天十里は敵に狙いをつける。
 亡者を払うことよりも、相手の御者を倒すことを優先しようとしたのだ。
 一見近道のように見えるが、亡者の波に呑まれてしまえば取り返しがつかなくなるリスキーな選択。茨の道どころか、裸足でガラス片の海を駆け抜けるがごとき所行である。
「ポテトさんがしのいでくれると信じて――!」
 両手でしっかりと構えた拳銃を骨の御者へ向ける。
 骨御者もまた、マスケット銃で狙いをつけていた。
 互いに回避するスペースはほとんどない。
 自分の弾が当たることを、相手の弾が外れることをなにかに祈って、引き金をひきまくるのみである。
 銃声が、いくつもいくつも交差した。

 このとき最もつらいのが最後尾の馬車である。
 『ローストフェイス』キャラバンはリスク分散のために大中小という三大の馬車で旅をしていた。最前列はバッケルの乗る中くらいの馬車。小さくて高価な、運搬優先度の高い商品が積み込まれている。
 真ん中を走る小さい馬車は商人たちの生活必需品その他を積み、最後尾の大きな馬車は商品を沢山詰め込んだものである。
 それだけに車幅は広く長く、商品を端に寄せれば軽く踊れるくらいのスペースが確保できた。
 今はそのスペースが。
「実際のところ」
 メートヒェンが亡霊をハイキックで馬車の外へ蹴り飛ばすために使われていた。
「馬車を守りながら私達だけで倒しきるのは厳しいか」
 ちらりと荷物を積み上げた先を見やる。商人と御者の合わせて三人が不安そうにこちらをのぞき見ている。
「まずは馬車の安全を最優先に考えるべきかな。数をできるだけ減らすから、彼らを守っていてもらえるかな?」
 足払いから膝蹴りまでの三段蹴りで亡者たちを蹴り飛ばしつつ、メートヒェンが視線を飛ばす。
 飛ばされた先は利香であった。
 『わたし?』という顔で自分を指さしてから、わしわしと髪をかきむしった。
「うー……わかりました。やりますやりますよ!」
 利香は乳房を片手で持ち上げるようにして、腰をうまいことひねって見返る姿勢をとりつつ、色気たっぷりにウィンクしてみた。
 一斉に振り返る亡霊たち。
 すこしはスルーしろと思うくらい、それはもう一斉に見た。
 広いとはいえ馬車内のスペース。戦闘中の亡者全員がその対象であった。
『つれてけ!』
『とまれ!』
『つれていけ!』
 一斉に飛びかかる亡者たち。生気に満ちあふれてるようにでも見えたのだろうか。わかる。
「あー! やっぱりこうなるんだー!」
 対する利香とていたずらにヘイト(?)を稼いだわけではない。
 豊富すぎるほど豊富な体力と鉄壁の防御力と抵抗力。加えていいかんじの回避能力を備えた彼女の、いわば本領発揮であった。
 次々と掴みかかる亡者たちを、剣と手のひらを巧みに使って次々と払いのけていく。
「うーん、頼もしいなあ」
 アトが亡霊を銃のグリップで殴り倒しながらうんうんと頷いた。
「ま、ダンジョンと同じだ、耐えるのには慣れていてさ!」
 はたと正気にもどって襲いかかってくる少数の亡者を殴り倒す。
 たまにがっしりと掴まれ生気を吸い上げられるが、それを補って余りあるエネルギーがアトの内面からわき上がっていく。
「こう、アンデッドが多いのもダンジョンを思い出すねえ、地獄の入口だったか」
 こいつら食えるかなあ。薄味っぽいなあ。そんなことを呟きながら、アトは亡霊を殴り倒した。

●黄泉辻
 何事にも永遠はなく、草木はやがて枯れ人は死に鉄塔とていつかさびて倒れ、空だっていつかは落ちるという。
 いつまでもやっていられた気がする利香のお色気作戦(本人は一度もそんなこと言ってない)も終わりがやってきた。
「も、もうむり……腰が……」
 ぜーぜー言いながら床に手を突く利香。
 そんな彼女に、大量の亡者が食らいついた。
 掴み、握り、抱きつき、噛みつき、食らうように生気を吸い上げていく。
 まずいと思って攻撃をしかけるも、巨大な土の山を掘るがごとしだ。
 中心にある利香は亡者の群れに耐えかね、うつ伏せに動かなくなっていた。
 ……かに見えた。
「あれは?」
 アトが目を細める。光りものをよく見つける彼であるが、利香のアンクレットが怪しく光ったように見えたのだ。
『アハハハハハ』
 声がした。利香の声だが、違う声。
 翼が広がった。
 青白い肌をした腕が、亡者の山から突き出た。
『アハハハハハ!』
 亡者の山が、衝撃によって内側から吹き飛ばされた。
 まがまがしい剣が生き物のように歪み、鉤爪形態へと変化する。
「しつこいわね。リカちゃんの身体はひとつだけなのよ?」
 一度に四人までね。そう言って、利香は亡者たちを強引に引き裂いていく。
「どうやら無事らしいね。よかったよかった」
 メートヒェンが何事もなかったかのようにステップを踏むと、ピンヒールでもって亡者たちを横一文字に『切断』した。
 無数の亡者が一斉に切り裂かれ、うらみごとを言いながらかき消えていく。
「よかったの? なんか肌色青紫なんだけど。まいっか、ああいうひとよくいるし」
 アトもちょっとどうかしてる価値観でスルーすると、弾切れになったリボルバー拳銃に弾を込めていく。
「あの様子だと盾役交代っぽいね? よしよし」
 アトは『今度は観光客が相手だぞー』と言って商人たちの前に立ち塞がる。
 次々と掴みかかる亡者たちに、歯を食いしばって耐えた。わき上がる豊富な生命力とくそまずい回復ドリンクでも、亡者の猛攻を耐えきるのは難しい。
 しかも。
「馬車の両サイド見えてる? 『もう一発』来そうだよ」
 骨馬車がサンドするように迫ってくる。ぶつかればその勢いで亡者が大量に流れ込むだろう。そうなれば、今度こそ耐えられない。
 距離が迫る。
 迫る。
 あと5メートル。
 3メートル。
 1メートル。
 という、瞬間。
「おまたせっ!」
 天十里が、輝く笑顔で叫んだ。
 バッケルの中馬車と小型馬車が、それぞれの骨馬車にまさかの体当たりを仕掛けたのだ。

 天十里の放り投げた手榴弾が骨馬車のなかで爆発する。
 派手に跳躍した天十里は残骸の上に着地し、骨の御者へと銃口を突きつけた。
 見れば、先頭あたりを走っていた二台の骨馬車は砕け散り、はるか後方に遠のいていく。
 振り返った骨御者が銃口をひくのと、天十里が銃口を引くのは、後者の方がコンマ二秒早かった。
 はじける骨の頭部。一方で肩に着弾した天十里は吹き飛び、宙を舞うが、馬車から手を伸ばしたポテトがぎりぎりでキャッチした。
 小型馬車が軽くドリフトしながらターン。ポテトは血を流す天十里の肩に手を当てて治癒魔術を施すと、続けざまにマジックロープの魔術を唱えた。
 頭を失った骨御者の背骨に巻き付く魔術のロープ。
 ポテトが勢いよく引っ張ると、骨御者は馬車から転げ落ちて砕け散った。

「皆さん、端に伏せてください」
 アイリスが茶色い酒瓶を振りかざした。
 否、酒瓶ではない。恐ろしい毒薬の詰まった瓶だ。
「誰一人、連れていかせるものか……悪意と炎の花で食い破ってやる」
 同じ瓶を振りかざしたラデリ。
 二人が骨馬車と大馬車へそれぞれ投げ込むと、激しい毒霧を広がらせた。
 亡者たちが溶けるように消えてゆく。
 残ったのは目を怪しく光らせる骨御者だけだ。
 いや、馬車からは今も尚亡者がわき出ているように見える。再びあふれるのも時間の問題だ。
 マスケット銃がむき、火をふいた。
 咄嗟に屍兵を形成して盾にするアイリス。はじけ飛ぶ屍兵。
 続けざまに放たれた銃撃がアイリスへ直接せまるが、ラデリの魔力を伴った手袋がそれを握りつぶして止めた。
「今だ。飛べ」
 誰に向けた言葉か?
 上向けば分かるだろう。
 樹理が服の裾を靡かせて、骨馬車へと飛び込んでいくのが分かるはずだ。
 盾をサーフボードよろしく足に踏み、魔力の波を引き起こす。
「怪談は、怪談のまま。終わらせてあげる。亡者も御者も、皆まとめて――」
 慌てて銃の狙いをつける骨御者。だが遅い。
「送り返してあげる!」
 破壊の魔力を纏った盾が、それに乗った樹理が、骨御者に飛び込み馬車ごと粉砕したのだ。
 破壊の衝撃が余り、着地を失敗してごろごろと草地を転がる樹理。
 消え去る亡者。骨の御者と馬車もゆっくりとかすむように、薄く透明になっていく。
 馬車がそれぞれ止まり、樹理を助け起こそうと仲間たちが駆け下りてくる。
 樹理は上半身を起こして、すぐそばに転がったガイコツの頭を見下ろした。
 頭だけが、こちらを見ている。
『止まるな』
 ゆっくりと消えゆくガイコツ。樹理は顔を近づけた。
「気になってたんだ。なんで、『止まるな』なの?」
 みじかい静寂。
 ガイコツは。
『ここは黄泉辻。冥府への交差点。生者ならば、止まるな。先へ――』
 言いながら、ガイコツから何かが抜けていくのが見えた。亡者の一種のように、それは見えた。
 ガイコツもまた、かすみきって見えなくなった。

 つれていけと言って連れて行こうとする亡者たち。
 止まるなといって止めようとする骨の御者。
 そんな都市伝説は、今なおまだ、語られている。
 ここは黒色商路。冥府が交わる、馬車の道。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 ――mission complete!
 ――good bye!

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