＜総軍鏖殺＞ベドルフ攻防戦

オープニング

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　鉄帝各地の状況は混迷を極めている。
　新皇帝バルナバスの下した勅令によりすべてが乱れているからだ――
　強きを良しとするは以前からの風潮ではあったが。
　警察機構すら解体せんとする新皇帝の下には『無法』しかない。
　……このような事態に対し国民の反応は様々だ。
　我が世の春が来たと他者を蹂躙する者。或いは救いを求める者――

　そのような状況下において、先代たるヴェルスの治世に戻さんとする帝政派は、以前の状況を良しとする民からの支持を多く得ていた。

「そしてまた我らに協力を申し出てくれる地区があっての。
　サングロウブルクから東にあるベドルフ街という地じゃ――が。
　かの地は新皇帝の治世を良しとするマフィア共がいるみたいなのじゃ」
　語るはバイル・バイオンだ。鉄帝国の宰相にして、帝政派の頭目。
　彼は新皇帝の治世を良しとせず、自らの派閥を率いてサングロウブルクという街を拠点に抗戦の構えを示している……が。ヴェルスを破り独自の――例えば魔種――らを配下とするバルナバスに抵抗するには戦力が足りなかった。
　故にこそ今は地固めの時期と見て新皇帝に反発する者らを糾合しているのである。
　そして今回もその帝政派に合流せんとする者らと連絡が取れた……のだが。
　先述した様にどうにもその街は、新皇帝に従わんとする輩もいる様だ。
「幸いと言うべきか、そのマフィアの勢力は決して大きくない。
　その上、街には帝政派に協力してくれる者らもいる様での。
　その者らと協力し、地区を奪取してほしいのじゃ」
「分かった。マフィア潰しをすればいいんだろう――そう難しい依頼じゃないな」
「うむ。頼んだ……と、それともう一つ。
　余裕があれば行ってほしいのじゃ――陛下の捜索を、な」
　刹那。話を窺っていたイレギュラーズの耳に新たに届いたのは、帝政派の悲願。
　先代皇帝ヴェルスの捜索――であった。
「……その街にいる可能性が？」
「いや。残念ながら陛下の安否に対する有力な情報はない……
　その街におるか、全く別の所にいるかすら分からん――
　しかし『探す』と言う事そのものは重要な事よ。
　究極的には、国を虱潰しに探していけばいつかは見つける事も叶おう。
　イレギュラーズにはその一歩を担ってほしいのじゃ」
　少なくとも、ヴェルスの生存を信じているバイルにとっては少しでも捜索の手を強めておきたい所であった。見つかるか、見つからないか、ではないのだ――自らの全てを託すに足ると信じた男の安否を探さぬ理由が何処に在ろうか。
　例えこの街で見つからなくてもいい。では他の所を探す、となるだけなのだから。
「ともあれ。繰り返すが、まず最優先はマフィアの排除じゃ。
　マフィア共は街の中枢に在る屋敷を拠点としておるようでの。
　現地の協力者と合流し、屋敷を攻め立て制圧してほしい。
　――陛下の捜索はその後余力があれば行ってくれ」
　咳払い一つ。バイルが話を戻す様に依頼の内容を繰り返せば『承知した』とイレギュラーズの一人は言葉を零すものだ。
　……ヴェルス・ヴェルグ・ヴェンゲルス。かつての皇帝。
　かの男が生きているか死んでいるかすら定かではないが。
　ともあれかつての治世を取り戻すための一歩を――担うとしようか。

参加者 : 8 人

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参加者一覧（8人）

リプレイ

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　鉄帝の状況は何処も混迷としているのであろうと『砂国からの使者』エルス・ティーネ（p3p007325）は屋敷を見据えながら思考するものだ。ベドルフ街にだけ限った話ではないのだろう……このように無法者が謳歌しているのは。
「だけどこれ以上好きにはさせないわ――
　自警団の皆さん全力は結構だけれど無理はないように、ね」
「やることは多いけどひとつずつ、がんばるですよ。
　細い糸でも撚り合わせたら太い糸になるように……
　いつかきっと、一つ一つの頑張りは、大きな実を結ぶのです」
「ああ、そうだよな……！　イレギュラーズもよく来てくれた。共に戦おう！」
　さりとて『ひだまりのまもりびと』メイ（p3p010703）は自警団の者達に言を紡ぐものだ――蒔かれた種があれば、きっといつか実を結び花は開くのだと。
　必ずや未来を切り拓こう。
　――突入する。エルスにメイは一階より、敵の屋敷へと。
　敵に状況把握の暇すら与えぬ。その為に『深き森の冒険者』ルカ・リアム・ロンズデール（p3p008462）は、突入前から既に準備を進めていたのだから。
「テ、テメェらどこの連中――ぐぁ！！」
「この扉の先に固まっています。行きましょう、援護します」
「よし。じゃあ僕が斬り込みを行うから、ルカは後ろから自警団の面子を連れて入ってきてくれ。此処から先は建物の中だ――至近距離で戦える者の領域なんだから、ね」
　それは透視の術だ。薄き壁を見通し、敵の配置を確認せしめていたのである――
　さすれば情報を受け取っていた『観光客』アト・サイン（p3p001394）もまた即座に行動。眼前に在った正門のドアラッチを拳銃で吹き飛ばし転がり込もう。絞り上げる引き金の先には声を挙げんとしていた男が一人。
　――これまた派手に撃ち抜き己が存在を誇示しようか。
　敵は『此処』から来ているのだと言わんばかりに。
　……そして、一階の突入が行われたのと時を同じくして。
　『二階』へ直接突入した新たな影があった――窓を破る。派手に、ではなく極小の音にて進入路を作った一人はマルク・シリング（p3p001309）である。
「行こう――敵はまだこっちの侵入に気付いていないみたいだ」
「二階から強襲できそうだね。混乱が鎮まる前に、出来る限り掻き乱させてもらうよ……！」
　マルクは突入前にファミリアーの使い魔による偵察を敢行していた。既に侵入口に関しては定めていたのである――後は一階突入とタイミングを見据えるのみ。続く『聖奠聖騎士』サクラ（p3p005004）もまた飛翔の力を得て二階から侵入すれば、一気に踏み込むもの。
　感じぬ敵意。敵の警戒の隙間を突く刹那は一階の喧騒に紛れて気付かれぬ――故に。；
「天義の聖騎士、サクラ・ロウライト。推して参る！」
「敵襲だと――！？　うわ、こっちにもいるぞ！　オイ人手を割……ぐあッ！」
　斬り込めば強襲の意義がより強まるものである。
　サクラが斬撃振るいて先陣を往き、直後には敵が防衛線を気付かんとしていた箇所にマルクの魔術――神秘の泥が襲い掛かれば、まるで面制圧の如く、だ。更には『蒼剣の弟子』ドラマ・ゲツク（p3p000172）や『特異運命座標』エーレン・キリエ（p3p009844）もまた、その動きに続いて。
「マフィアが堂々と表舞台に台頭してこようとするとは……
　やはり、この混乱を収拾する為にも前皇帝の安否は早急に確認したい所ですね――
　まぁ……まえから些か暴力的な直情的な所があるのが鉄帝ではあるのですが……」
「けれどこんな無法を是とした混沌よりはマシだろうね。この状況で水を得た魚みたいに元気になる連中が多いというのは……前帝陛下も治世に苦心してたんだろうな」
　互いに巡らせる思考は、曲がりなりにも一国として纏まっていた先代の時代だ。より厳密には現在行方不明であるヴェルス帝の事といえるか――安否が如何であるか、帝政派を率いるバイルだけでなく多くの者が気になっている。
　だからこそ調査の邪魔になる連中は不要だ。
「早々に、片付けしてしまいましょう」
　ドラマは往く。混乱の中で飛び出てきた無防備な敵へと、刃を一閃。
　街の掃除を成すべく――更に一歩深く踏み込むものであった。

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「敵だ――！　上にもいやがるぞ、気を付けろ！！」
「鳴神抜刀流、霧江詠蓮だ。無法を是とするお前たち、明日の朝日を拝めるといいな？」
　上でも下でも慌ただしい動きが見える中で、エーレンは神速なる抜刀術を振るう。
　一人一人を確実に倒していくのだと。連中の防備が固まる前に、数の優位を崩さん。同時――彼には一階のメイに渡したファミリアーの使い魔より情報が齎されるモノだ。鳥の姿をしたソレは、先のマルク同様に屋敷を偵察させた後に彼女に合流させておいたのである。
　簡易なれど連絡手段とする為に。然らば一階の戦況は――
「お部屋が沢山あるのです……！　でも、見逃さない様にしてくださいです！
　まふぃあの人が潜んでいたりするかもしれないのです……！」
　概ね順調であると察された。
　メイは周囲の者達に治癒の術を張り巡らせ戦線の維持に努めている。時には邪悪を祓う光をもってして敵を薙がんともしつつ――常に張り巡らせる彼女の号令の如き治癒が自警団の面々を支え続けていた。
　さすれば強襲の効果も相まってか此方側の士気は高く勢いが強い。
「敵を押し込みましょう――まずは僕が突破口を開きます！」
「数は多いが……簡単にあたってやると思うなよ！　やり様ってのは幾らでもあるものさッ」
　更にはルカの統率が自警団の動きをスムーズ化させる。彼の放つ蛇の如き雷撃がマフィア達だけを呑み込んで動きを乱せば――その間隙を突くように自警団の面々が突撃。次々と部屋を攻略し、制圧していくものである。
　続け様にはアトが、敵の注意を引き付けるべく一気に跳躍。
　派手な動きに目を取られ近付いてくる者がいれば――速度の儘に迎撃せしめようか。
「さぁ僕と殴り合いたい人間はいるかな！
　亀みたいに閉じこもってないでさ、やり合おうじゃないか――！
　それともビビったかい？　隅っこで息を潜めてればやり過ごせるかもね！」
「クソ、あのガキを好きにさせるな！　ハチの巣にしてやれ！！」
　アトは進む。恐れがないかのように、その歩みが留まる事はないのだ。
　――多少孤立しようとも関係あるものか。
　アトの超速の反射が銃弾の軌道から身を逸らす。信ずるは己が能。己が経験。
　そしてアトに気取られている敵の横っ面を――自警団の面々に打ちのめさせるのだ。
　それを成せればいいのだと。彼は自ら危険地帯へと突っ込んで。
「自警団の皆さん、全力は結構だけれど無理はないように。
　マフィアの鎮圧も大事だけれど――生き残らなきゃ意味はないわ。
　勝って、この街を取り戻した光景を必ず一緒に目にしましょう」
「おぉ勿論だ！　ここで死ぬ気はない……！」
　そして自警団の者達にはエルスが付いている。勝利も大事だが、生命も大事だと。
　生き残る事もまた一つの目標であると――
　告げながら、彼らが臆さぬ様に前衛として積極的に攻勢へと出でるのだ。
　彼女の一閃が振るわれるは死の権化が如く。マフィア共の息の根を止めん――！
「一階は順調みたいだね……こっちも負けてられないよ。叩き潰していこうか！」
　そして一階の攻勢に負けじと、サクラは二階側で奮戦するものだ。
　放たれる銃弾を、地を這う様な低き跳躍で凌ぎて。
　懐へといたれば――その剣の切っ先を天上へと振り払う。
　舞う血飛沫。轟く声。それでも絞り上げられる引き金があれ、ば。
「罪のない人をいじめる人はお仕置きだよ！
　自分達が何をしたのか……その胸に手を当てて、よく考えてみる事だね！」
　サクラは剣を振るいて銃弾を弾き落とそう。
　ここで暴れれば暴れる程に、マフィア共は一階へ回る戦力が少なくなるのだ――
　大立ち回り。さすればドラマにマルクも敵を薙ぎ払うように努めるもの。
「どうにも、攻め込まれるのには慣れていない様に見受けられますね。
　裏にいる自分達だけが他者を傷つけられるのだと……驕り。慢心がありましたか」
「こんな連中を謳歌させる訳にはいかない。だけど、まぁ折角だ。帝政派を始めとした、新皇帝への抵抗勢力此処に在り――と示させてもらう、その礎になってもらおうか、な！」
　ドラマは築かれたバリケード諸共敵を粉砕せんと、膂力の全てを剣に乗せるものだ。
　蒼き刃が煌めくように。圧倒的な破砕がマフィアを切り伏せ、バリケードにも亀裂を生じさせる。然らばマルクが紡ぎあげる魔術が、一旦態勢を立て直さんと後退するマフィアへと――放たれた。
　それは破壊の力を宿した魔術の光。超常の力を宿す一閃は敵を薙ぐか。
「クソ！　こいつら間違いねぇ……イレギュラーズだぞ！！」
「――落ち着け野郎ども。聞こえてくる数からして、敵の数は多くねぇ。
　イレギュラーズつっても無敵じゃあるめぇよ。複数人で掛かって押し返せ！」
　と、その時だ。
　二階。マフィア達の最奥から現れたのは、落ち着いた雰囲気の男――
　周りに指示を出しているのを見るに、奴が頭目だろうか。
「――急に動きが良くなってきたね。流石に、いつまでも混乱はしてない、か」
　であればマルクは肌に感じるものだ。時間が立ち、奇襲の効果も流石に薄れてきたか――一致団結した動きを敵が見せ始めれば、流石に数の優位に押されるもの。
　成程、頭目を中心にこれだけ抵抗出来るのであれば……初めから『こう』であったのならば、苦戦は免れなかっただろう。
「ですが。動揺を鎮めるのが一歩遅かったですね」
「ああ――来るぞ」
　しかしドラマやエーレンが気付いた。
　一階での戦闘が収束に向かっている事に。そしてソレが意味するのは。
「お待たせしました――！　一階側は、ほとんど終わったのですよ！
　ここが年貢の納め時！　っていう言葉はこういう時に使うってメイ知ってるです！」
「二階からの増援が押し留められてれば、こんなものかな。
　さて、それじゃあそろそろフィニッシュと行こうか」
　メイやアドなど――一階で戦っていた者達が二階へ至る、と言う事である。
　電撃戦と、そして同時に二階でも戦闘を勃発させていたのが功を奏した。敵の戦力が分散し、一階は勢いの儘に攻め立てる事が出来て敵を呑み込めたのだ――勿論二階側は自警団たちがいなかったが故に負担も些か大きかったが。
　しかし二階からもしも頭目を含めた増援が降りて来ていれば、話は別のものになっていたかもしれない。それを封じるためのイレギュラーズ達の作戦が完全に上手く行っていた――！
「あと一歩です。行きましょう――連中の思う通りには、させませんよ！」
「しゃらくせぇ！　叩き潰してやれ！！」
　更にルカも二階へと到達する。自警団の面々も参戦すれば、二階で総力戦が行われるものだ――ルカの統率と頭目の統率がぶつかり合い、激しい戦闘音が響き渡る。
　それでも、数の優位性をマフィアが活かせなくなっていれば徐々に戦況はイレギュラーズ側に傾くものであった。メイの治癒術が多くの者を援護し。エーレンにサクラ、アトが斬り込み敵の前衛を捻じ伏せて。
　直後にはルカにマルクの魔術が追い打つように敵陣に穴を開けるものだ。
　築き上げたバリケードなどドラマが崩し始めれば、遂に頭目の身にも斬撃が到達せしめる。彼女の魔力を紡ぎあげ引き起こした空気の振動が、奴の指揮能力すら奪わんとして……
「ぐ、うぅ、ぉぉぉ！　馬鹿な、俺がこんなガキ共に……！　俺たちの世が……！」
「こんな見た目だからってあまりナメないでちょうだい。
　この刃の錆になりたくなかったら、ね。あぁそれとも、ソレ自体がお望みかしら？」
　そしてエルスが軽やかに、頭目の眼前へと降り立つものだ。
　刹那の攻防。エルスの身を払わんとする抵抗を、しかし彼女の一撃は嘲笑うように。
　紅き闘気が――必滅足り得る一撃を紡ぎあげるものである。
　敵の身を食い破るが如き超常の一撃。
　受けた頭目の身が壁に叩きつけられるように力なく倒れれば――それは戦いの決着を、意味するものでもあった。

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　戦いは終わった。頭目が倒れれば、残ったマフィア達の士気も完全に崩れたのである。
　自警団の面々に捕縛される――
　これで、街を支配せんとしたマフィアの野望は折る事が出来ただろう。
「――待ってください。あなた達にはまだ話があります。
　街を統べようとしていたなら、街の情報には詳しいでしょう――？
　例えば。ヴェルス元皇帝の姿を見た、と言う様な話は聞いていませんか？」
「ヴ、ヴェルスだと……？　知らねぇよ。あの野郎は死んだんじゃねぇか？
　少なくともこの街に奴が入って来た――なんて話は聞いちゃいねぇよ」
　ならばとマフィア達から情報収集せんとルカは往く。先代皇帝ヴェルスの行方。はたして彼はどこにいる事か……少しでも有益な情報があれば、と。
「ふう。敵の数がこれだけ多いと、流石に厳しい戦いだった。疲れたよ。
　とは言え後はヴェルス帝の行方も探っておかないと、ね。
　たしかこの辺りには僕の知古の情報屋もいたはずだし……ちょっと行ってみるかな」
「もしかすれば死闘の末に記憶を失っている……という可能性もありそうだな。生きているのならばどこかの勢力に顔を出す筈だ。記憶喪失の鉄騎種……そういう類がいないかも聞いてみよう」
　更にアトとエーレンも調査へと赴くものである。
　アトは持ち前の人脈によってヴェルスの行方を知る者がいないかを――或いは奇妙な人物が最近鉄帝に出現していないかを中心に、だ。ヴェルスが今現在どういう状態かは分からない。もしかすればエーレンの言うように記憶を失っている可能性もあり得る。
　故にそう言った謎の人物の目撃情報がないか確認していくのだ。
「メイは、お屋敷の中をもうちょっとみてみるのです！　もしかしたら地下室とか隠し部屋とか……そういう所があるかもしれないですし。他にも何か、この人達が隠している情報があったりするかも……鍵のかかった引き出しとかは要チェック、ですよ」
「確かに……帝政派にも近いこの街で、マフィアは新皇帝派に与しようとする。
　帝政派からの干渉は予想できたでしょうに……
　もしかすれば何か『手土産』になるようなモノがあった、のかもしれませんね」
　ならば家探ししてみようかと――メイとドラマは動き出すものである。特にメイは屋敷の中に別の手掛かりでもあるのではと張り切って、屋敷をひっくり返す勢いで探索しようか。うおー！
（……まぁ。皇帝が変わったとはいえ、鉄帝の流儀なら『より強いモノに付く』というだけの事なのかしれませんが。バルナバスの勅令は些かやりすぎですが……根本的に鉄帝は武を尊ぶ所ですし、ね）
　同時にドラマは思考もするものだ。この国そのものの――行動原理に。
「ふむ……もしも街中でのヴェルス帝がいたとするなら、すぐにでも噂が立つ筈だ。そうでないなら街外の方が有力かもしれない。探索範囲をそちらに広げてみるかな」
　一方のマルクはむしろ街の『外』へと目を向けるものだ。
　ヴェルスが生きているのならばどう動くか？　如何な強者と言えど深い傷を負っているのならば、むしろどこかに身を隠すぐらいの事は行うのではないか？
　人目に付かず身を隠せて、水や食糧等を自給できそうなポイントを列挙。
　再びファミリアーらを駆使して探索を開始する――
「ヴェルス帝……本当にどこに行かれたのかしら……
　強い方だもの。まさか亡くなられている、とは思わないけれど……」
　そしてエルスは街に痕跡がないか探すもの。
　噂に聞く彼の話は正に鉄帝国最強であり……相手が冠位魔種であろうが簡単にやられる様な方ではないと思っていた。しかしやはり冠位との戦闘で彼は――亡くなられた可能性も――
「誰か一人でもいい……彼を見たって人が居ないか探さなきゃね
　あとは彼が身につけていた何かが落ちてたりとか……周辺をもっと捜索しなくちゃ」
　刹那、頭を振る。不吉な考えは振り払うように。
（……母様だって心配そうだもの）
　微かなる痕跡でもあればと――彼女は思考を重ねるものだ。

　やがて各所の調査は一段落する。結論としては、この街にヴェルスの姿はなかった。

　しかし……ヴェルスの行方は誰しもが気にする所。
　アトの尋ねた情報網だと、イレギュラーズのみならず市井の者達の間でも彼を探す者達はいるらしい。そう言った者達はどちらかと言うとマルクの様に、人目を忍んだ場所に潜んでいるのではと捜索している様だ。
　まだ誰も見つけた、という話はないが。
　それでもやはり――生きている事を信じている者も多い。
「――今回は協力をありがとうございました」
　同時。サクラは自らの調査に協力してくれた者達や自警団に礼を述べる。
　自らに纏う器の気質と共に。そして。
「もしまた何かあったら必ず駆けつけます。
　帝政派の一員としても、この事態は放っておけません……
　必ず一緒に――この国を取り戻しましょう！」
「ありがとう……君達は希望だ。一緒に戦ってくれるならこれ以上なく心強い……！」
　サクラは告げる。自らが帝政派の一員である事と、この国の未来を願っている事を。
　……必ず、この国を取り戻そう、と。
　厳しい冬が来ようとも。

　必ずいつか――穏やかな春は訪れるのだから。

成否

成功

ＭＶＰ

状態異常

なし

あとがき

　依頼お疲れさまでしたイレギュラーズ！
　ヴェルスは無事か、無事ならばどこで生きているのか……
　勢力が大きくなっていけばまた彼を探す捜索範囲は広げる事が出来ていくかもしれませんね――ともあれ、ありがとうございました！

●運営による追記
　本シナリオの結果により、＜六天覇道＞帝政派の求心力が+10されました！