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シナリオ詳細

<総軍鏖殺>大きな兎とならず者

完了

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●鉄帝騒乱
 イレギュラーズ達の目が天空に向いている間に、鉄帝国の帝位が『煉獄編第三冠"憤怒"』バルナバス・スティージレッドによって簒奪された。
 そうして彼は勅命を下した。

 ――新皇帝のバルナバス・スティージレッドだ。
   諸々はこれからやっていくとして、俺の治世(ルール)は簡単だ。
   この国の警察機構を全て解体する。奪おうと、殺そうと、これからはてめぇ等の自由だぜ。
   強ぇ奴は勝手に生きろ。弱い奴は勝手に死ね。
   だが、忘れるなよ。誰かより弱けりゃ常に死ぬのはお前の番だ。
   どうした? 『元々そういう国だろう?』

 弱肉強食。弱き者は、強き者の糧となる。
 まるで弱いことが罪であるかのごとき法。
 バルナバスの勅令により解き放たれた犯罪者たちを始めとして、『人でなし』の者等は各地で様々な略奪や暴力――弱き者たちを蹂躙し始めたのであった。

●餓狼伯の居城
「兎をね、守ってあげてほしいんだ」
 餓狼伯の居城に集ったイレギュラーズたちに、劉・雨泽(p3n000218)がそう告げた。
「ヴィーザルジャイアントラビットって言う大きな兎が、どうやら悪い人たちに狙われているようなんだよね」
 ヴィーザル地域の険しい山々が連なる麓に『リアヘイム』という村がある。
 その村の近くの山にはヴィーザルジャイアントラビットと呼ばれる種の大きな兎が生息しており、その兎は絶滅の危機に瀕した過去もあるため数を定期的に確認していたのだが――どうやら近頃、数が減っていることにリアヘイム村の住人たちが気がついたのだ。
「ヴィーザルジャイアントラビットは臆病な性格だから危険な動物がいる場所には行かないし、そういった危険からも極力村の人達が守ってきていたのだけれどね……」
 一時期、ヴィーザルジャイアントラビットは絶滅に瀕した。それは彼等の肉が旨く、温かな毛皮が重宝されたからだ。しかし奪い尽くすだけではいけないと鉄帝の未来を考え、守り、繁殖させ、数を増やしてきた。長毛種である彼等を一年間守り育て、冬の寒さを乗り切った後の夏がくる前に毛を刈り、そしてまた一年、一年と時を重ねてきたのだ。何の不安も無さそうにモシャモシャと彼等が草を食めるのは、村人たちの努力の結晶であった。
 そんな彼等の数が減っているとあれば、調べるしか無い。
 早速雨泽が調査をしてきたところ、どうやら人の出入りがあることを突き止めた。
「村の人たちが使わないルート――山側の方から、少なくない人の出入りあるみたいだよ」
 保護や管理用の山小屋へ、村人たちは村から決まった道を通り、夜には帰る。しかし、それ以外の場所に他の人間の痕跡があれば――怪しむべきは肉食獣よりも人であろう。
 当然のことだが密猟は禁止――だったのだが、今の鉄帝ではそれすらも許されてしまう。
「力が正義というのだから、僕たちも力を揮って兎たちを守ろう。
 注意点はふたつかな。犯罪者は平和になった後で法によって処されるべきだから、命は奪わないこと。もうひとつは、兎たちの安全を守ること。悪い人たちは自分を守るためなら平気で兎を盾にするだろうからね」
 そうして一度口を閉ざした雨泽は、ああそうそう、と付け足した。
 ヴィーザルジャイアントラビットはね、大型犬くらいの大きさだよ、と。

GMコメント

 ごきげんよう、壱花です。
 初めまして、鉄帝。よろしくお願いします。

●目的
 ヴィーザルジャイアントラビットの乱獲阻止

●情報精度
 このシナリオの情報精度はBです。
 依頼人の言葉や情報に嘘はありませんが、不明点もあります。

●シナリオについて
 ヴィーザルジャイアントラビットを狙ったならず者たちが現れるので、ヴィーザルジャイアントラビットたちを怖がらせないように避難をさせ、ならず者たちを捕らえましょう。

●フィールド
 鉄帝北東部のヴィーザル地域の険しい山地です。
 木々も生えない急峻な山腹と平原があります。(アルプスの山等を想像ください)
 ヴィーザルジャイアントラビットは急勾配も気にせずぴょんぴょん山を上ったり、平原で草を食んで生息しています。

●ヴィーザルジャイアントラビット
 ヴィーザル地域の高山にはヴィーザルジャイアントラビットという兎が生息しています。彼等は大型犬ほどの大きさで、目が隠れるほどの長毛。寒さに強い温かな毛を有し、その毛は寒さが厳しいヴィーザル地域の人々を温める織物となってくれます。
 山をぴょんぴょんと飛び回らねばストレスとなるため人里では飼育されず、山小屋を幾つか建てて近隣にある『リアヘイム村』の人が保護や兎が好む草を育てたり等の管理をしています。過去に乱獲され、絶滅に瀕したことがあります。今居る個体は毛皮を剥がずに刈ること、出来るだけ伸びやかに暮らさせると過去の人々が努力をした結果でもあります。
 性格は穏やかで、臆病。基本的には大きな耳で危険を察知して逃げますが、音が大きいと震え上がって動けなくなります。

●ならず者 10名
 バルナバスの勅令により開放された犯罪者たちです。銃や剣を所持しています。
 首都から逃れてきた彼等はヴィーザルの山に潜み、そして偶然ジャイアントラビットに遭遇しました。飢えを凌ぐために捕らえて食べてみた所その肉は旨く、また毛皮は防寒具に使えると気付き、本格的に冬を迎える前に食料と防寒具にすることを決めました。
 山小屋から人が居なくなる夜間にやってきます。犯罪を起こせる程度には強いです。銃で大きな音を立てて兎を怯えさせ、捕まえます。

●特殊ドロップ『闘争信望』
 当シナリオでは参加者全員にアイテム『闘争信望』がドロップします。
 闘争信望は特定の勢力ギルドに所属していると使用でき、該当勢力の『勢力傾向』に影響を与える事が出来ます。
 https://rev1.reversion.jp/page/tetteidouran

 それでは、イレギュラーズの皆様、宜しくお願い致します。

  • <総軍鏖殺>大きな兎とならず者完了
  • GM名壱花
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2022年10月13日 22時05分
  • 参加人数10/10人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 10 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(10人)

イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)
業壊掌
炎堂 焔(p3p004727)
炎の御子
ミルヴィ=カーソン(p3p005047)
剣閃飛鳥
ソア(p3p007025)
猛獣
ゼファー(p3p007625)
魔女
リディア・T・レオンハート(p3p008325)
勇往邁進
ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)
変わる切欠
ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)
二花の栞
秦・鈴花(p3p010358)
パンケーキで許す
マリエッタ・エーレイン(p3p010534)
未来への葬送

リプレイ

●大きなもふもふ
 春になっても白化粧を解かない色白美人な高い山は、冬が近付くにつれてその白さを広げていく。今も一日一日と、てっぺんから下へ下へと、まるで頭からすっぽりと被ったドレスの裾を広げていくみたいに。
 ウサギという生物は冬眠しない生き物だ。もしかしたら混沌には冬眠するウサギもいるかも知れないが、一般的にはそうである。故に、ヴィーザルジャイアントラビットも冬眠はしない。けれども冬が近づき雪に覆われれば食料が減ってしまうから、今は平原でまだ雪に覆われていない草を食み、エネルギーを蓄える時期であった。
「ラビット……ラビットってあのちぃせぇ生き物の事、だよな?」
「とても大きい、ですね……」
 村人の案内で連れてきてもらったイレギュラーズたちの前で、ヴィーザルジャイアントラビットがもしゃもしゃと草を食んでいる。普段から村人に世話をされているせいだろうか、人が近寄っても反応せず、ただ美味しそうに下顎が忙しそうに動かしている様は愛らしい。
 しかし、大きいのだ。大型犬くらいに。
 一般的な両手包めるくらいのサイズではないことに『二花の栞』ジェラルド・ヴォルタ(p3p010356)と『輝奪のヘリオドール』マリエッタ・エーレイン(p3p010534)は目を丸くした。知らない土地には知らない生き物がたくさん居るとは話には聞くけれど、まさかこんなウサギもいるとは驚きだ。
「大きくったってウサギさんはウサギさんだよ」
「兎さん大きくて食べでもありそうだし、美味しそうよね」
「兎って美味しいのよね、ローストして粒マスタードで……って嘘よ」
 もしゃもしゃと口を動かすヴィーザルジャイアントラビットへと『炎の御子』炎堂 焔(p3p004727)が手を伸ばせば、その手はもふもふな毛の中へふかりと沈み込む。同意するように頷いてからの『雷虎』ソア(p3p007025)の一言にうんうんと頭を縦に振った『パンケーキで許す』秦・鈴花(p3p010358)が続いて、すぐに否定する。ついつい美味しそうな姿を想像してしまったし、大きくて美味しそうだけど、この子たちは食用のために飼育されているウサギではないのだ。
「大丈夫よ、食べたりしないわ」
 しゃがんで視線の高さを合わせ、抱きしめるように手を伸ばせば――もふん。あっ、これは! ちょっといけないやつ! 離れがたくなっちゃうもふもふ! なんて脳が警告を出してきちゃうくらいふかふかで。大きくても可愛くてふかふかなんて、絶対守ってあげないといけないやつー!
「……食べないわよ」
 動物疎通一応そう告げておくが、ウサギたちはもしゃもしゃと咀嚼するのを止めずに首を傾げる。
 何故ならこのウサギたちは『怖い』をあまり理解していない。危険な動物が居ない環境で、野生ではあるが人々に世話をされている、所謂『半野生』で育ってきている。『二足歩行の動物』は撫でてくれるし、美味しいご飯の場所を教えてくれたり、身軽にもしてくれる『良いもの』である。ウサギたちは自分たちが絶滅の危機に瀕したことがあることすら知らず、自らが食べられる危機的状況があるとすら知らず――空からの大きなゴロゴロ音だとか切り裂くような風の音の訪いが彼等にとっての危険であった。
 そんな穏やかに生きているウサギたちに夜の間に危機的状況が生じていたとしたら、朝になってやって来た村人たちは怯える姿で気づいたことだろう。けれども悟られなかったという事は――
(群れから外れた子が狙われていたのね)
 ならず者たちが大型犬ほどのサイズの集団に暴れられることを危惧したであろうことを察した『風と共に』ゼファー(p3p007625)は、なんて小悪党なのかしらとひとりごちる。
「しっかりと数を数えておこうか」
「それが良さそうね」
 ヴィーザルジャイアントラビットではない普通のウサギを連れた『不壊の盾』ミルヴィ=カーソン(p3p005047)の提案に、ゼファーが顎を引く。この場へ案内してくれた村人曰く、最近のヴィーザルジャイアントラビットの行動は昼間に平原で草を食み、お腹が膨れたら山腹をぴょんぴょん跳ねて運動し、また日暮れにこの平原へと戻ってきて集まって眠るのだそうだ。今のうちに数を把握しておけば、逸れた子が居ないか知れるし、こっそりと群れから離れて自由行動をしようとするやんちゃな子ウサギの存在にも気付くことが出来るだろう。
「最近は気の滅入る事案も多いし、ならず者相手と言っても動物保護カツドウはちょっと心が休まるね!」
 手伝えることがあったら何でも言ってとからりと笑う『業壊掌』イグナート・エゴロヴィチ・レスキン(p3p002377)。
「あ、イグナート君。穴を掘るのを手伝ってくれないかな?」
「オーケー、任せて」
 悪い人たちを待ち伏せるために身を隠す用の穴を掘りたいと焔が口にすれば、ジェットパックで浮かんだイグナートは山側へと少し移動してからこの辺りがいいんじゃないかなと焔に提案して。痩せた土地の土は堅いから、そうして焔の分と、それとは別に自分が潜むような穴を掘って夜への備えとした。
「焔さんたちは穴、ですね。私は山小屋に身を潜めます」
「僕は【闇の帳】を纏うので、奇襲のタイミングに合わせて動きますね」
 案内してくれた村人から壊さないのならば小屋も好きに使っていいと了承を得ている『勇往邁進』リディア・T・レオンハート(p3p008325)は明かりをつけずに小屋に潜み、仲間の援護に動くつもりの『千紫万考』ジョシュア・セス・セルウィン(p3p009462)は勘付かれないように闇の帳を纏うことを予め仲間たちに周知しておいた。
「ぶー、これは遊んでるんじゃないからね?」
 数を数えたり、周囲を見て回ったり、潜む穴を掘る仲間たちの中でひとり草の上にころんと転がったソアは言い訳みたいに口にした。一応、一応ね。皆きっと解ってくれると思うけど。
 ひんやりとした冷たい風が高い山々から駆け下りてくるけれど、ヴィーザル地方にしては太陽の日差しが温かいと感じられる陽光。瞳を閉じれば、もしゃもしゃと草を食んで冬支度を始めているヴィーザルジャイアントラビットたちの息遣いが感ぜられて、胸いっぱいに吸い込んだ空気からは草とウサギたち、それから北国特有の澄んだ香りがした。
「こんなにもいい天気なのに」
 きっと悪い人たちはウサギを襲いにやってくる。
 この地の香りに包まれて、匂いを覚えながらソアは空を見上げた。村人たちは良くしてくれて暮らしやすいから、きっとウサギたちもここが好きなのだろうなぁなんて思う。
 そんなソアに人馴れしているウサギたちが寄り添ってお昼寝なんて始めたら「あっ、いいな」と鈴花が気付いて、「私も」とゼファーも一緒に転がった。ふかふかで温かな毛に触れながら目を閉じると、本当に寝てしまいそうなくらいウサギたちは安らぎを齎してくれた。

●招かれざる客たち
 小さな塊が、月明かりの下でぴょんと跳ねる。
 ぴょん、ぴょんと跳ねる小さな黒い影は、ウサギのそれだ。
 子供が群れから離れたのだろうか、ヴィーザルジャイアントラビットよりも小さな影はぴょんっと跳ねて、それから動くのをやめた。『いつもより大きな体』が重たかったのだろう。
「お。いたいた」
「前見たやつより小さくないか?」
「そうか? あれくらいだろう?」
 がさりと草葉を揺らして、数人の男たちが静けき夜に声を混ぜ込んだ。
 小さなウサギの影は月明かりで膨らんでいるから、元のウサギ――ミルヴィが用意した布を纏わせたファミリアーの普通のウサギよりも大きく見えていた。
 ぴょん。ウサギが跳ねる。
「おっと。逃げられる前に捕まえちまわねぇと」
「そうだな、俺たちが冬を越せなくなっちまう」
 群れへ帰ろうとしているのかもしれない、と慌てて男たちはウサギを追った。
 それが、イレギュラーズ立ちの誘いだとは知らずに。

「きたよ……!」
 風に乗る人間の匂いと、複数人の大人が草を踏む足音。
(囮にしてごめんね、ブック。キミは絶対に傷つけさせないから……頑張ろう)
 上向けた鼻をスンと動かしたソアが小さく告げれば、ミルヴィがファミリアーを操ってウサギたちを狙う不届き者たちを誘い込む。他のヴィーザルジャイアントラビットたちはちゃんと昼間に数を数えたし、急峻な山腹を跳ね回る彼等がはぐれていないかも目立たずに飛行ができるイグナートと鈴花が着いて行って確認済み。ミルヴィは夜目が効くわけではないが、出来るだけ月光の当たる場所を選んでしっかりと『ブック』と名付けたウサギを操れば、他に狙われるウサギは出ないだろう。
 月光の落ちる平原には、何やら集団らしき黒い影のみがあった。暖を取り合い、ひとところに固まって眠るウサギたちの影だ。プスプスと気持ち良さそうに眠っているのを暗視を施した瞳で確認したジョシュアは、少しすれば攻撃範囲に入るであろうならず者たちを待ち構える。
 耳を澄まして――あと少し。
 一歩、二歩。夜目が効くのだろう。月だけが照らす中、光源を持たない男たちが近寄ってくる。

 ――今だ!

 暗がりの中に、ぼう、と赫が生じた。
「ん?」
「なんだ?」
 赤く揺れるその色は、炎の証。
 小さなウサギを捕まえようと動いていたならず者たちがそれを視界の端に収めた瞬間、男たちの上に鋼の雨が降り注ぐ。
「――っ!?」
 男たちの悲鳴が驟雨が如き鋼に飲み込まれる中に、一陣の赫が飛んでくる。赤々と燃え盛る、炎の槍だ。
「な!?」
「そこまでですよ、侵入者たち! 投降するなら命までは取りません、大人しくしなさい!」
「ウサギさんを捕まえてるのはアナタ達だね!」
 ならず者たちが混乱をきたす中、暗がりから凛とした声が響いて。
 幾つもの小さな小石程の灯りが草原にばらまかれた。
「ハロー、悪党さん達。檻の中での反省が足りなかったみたいね?」
 風を感じた。
 そう思った時にはひとりの女が男たちの懐へ飛び込んできて、挑発的な笑みを零す。お馬鹿さん、なんて言いたげなその笑みが、男たちの感情を逆撫でする。
「くそっ! 村の奴等、護衛を雇ったのか!?」
「こんな辺境までくるやつなんて居る訳が無いはずだったのに!」
 大方、帝都付近で蛮行に及ぶ勇気も力もない者たちなのだろう。暗がりに響く声には、焦りと苛立ちが窺えた。
 男たちが慌てた隙に、ミルヴィは「お疲れ様、よく頑張ったね」と焔が放ってくれた光る石やジョシュアが用意したランタンの明かりを頼りにブックを回収する。邪魔な布を取り払い労うように柔らかな毛をひと撫ですると、安全なところで待っていてとヴィーザルジャイアントラビットの群れへと向かわせた。
「く、くそ……」
 ゼファーの挑発に乗らなかった男が辺りへ忙しなく視線を向け、ジリ……と片足を下がらせた。それを目敏く見付けたイグナートが「おっと」とならず者たちの頭上を飛び越え、後退を許さじと回り込む。
「オレを倒すことが出来れば全員無事に逃げられるよ! 出来るもんならね!」
 イレギュラーズたちとならず者たちは同数だ。奇襲の一撃で倒れたならず者は居ないものの、ならず者たちの方が明らかに分が悪い。
 ほんの僅かな時間で、何度目か解らない悪態を投げ捨てるように吐いて、それでも活路をと探す男の視界に入るのは――固まって眠っているヴィーザルジャイアントラビットたちだ。
 目の前の者たちがあのウサギたちを守るために雇われた用心棒だとしたら、アレを質に取れば――。
 けれど。
「ふーん、鉄帝の男たちが売られた喧嘩を放って行っちゃうんだ? こんな可愛い女の子が怖いの?」
 活路を探そうとするものたちがどうしようとするか。イレギュラーズたちも知っている。
 ソアの挑発に、男の視線がイレギュラーズたちへと再度向かう。焦っていて気が付かなかったが、よくよく見てみれば、そうだ。人数は同じだが、あちらは女が大半じゃないか! 対してならず者たちは全員が男であるから、力に物を言わせてきたであろう男たちの間に逃げる必要は無いのではないか? と言った空気が流れた。
 なんて、お馬鹿さんなのだろう。
 目の前に居る相手の、戦力も測れない。
 だから小悪党止まりなのだ、彼等は。
「大人しくまた牢屋に入りなさい、この小悪党共!」
 啖呵を切るのはまた、娘と呼んでも良さそうな女じゃないか。
 男が下卑た笑みを浮かべるのと、男が思いっきりグーで殴られるのは、ほぼ同時だった。笑みを張り付かせたまま、男の口からは唾液と血液、それから歯がいくつか飛んでいた。
(ラビットたちは大丈夫そうだな)
 綺麗に《竜撃》を決めた同胞の姿に感嘆の笑みを浮かべながら、ヴォルタも踏み込んでいく。絶対にこの先へ抜けさせないようにとヴィーザルジャイアントラビットへの射線を塞ぐように立ち、自身の腕へと牙を。赤い血がぽたり、ぽたりと垂れれば、そこから――うぞりと『ナニカ』が現れる。
「コイツらはな、血を好むんだ」
「……ヒッ」
 血に集まって来たナニカが暗がりで蠢く。鈴花に殴られた男は息を呑み、ぼたぼたと血を零す口を開けるが――。
「ごめんなさい、出来るだけ静かにお願いします、ね!」
 ウサギたちが起きてしまうので。
 汚い悲鳴が響ききるその前に。リディアが命を奪わぬ一撃を綺麗に決めて、ならず者の男のひとりを落とした。
(うさぎさんは……まだ起きていなさそう、ですね)
 本当はウサギたちに保険として加護を与えておきたかったけれど、加護の力は80秒しか効かない。待ち伏せをする以上、また一体一体掛けなければいけない以上、それが出来なかったマリエッタは人一倍ウサギたちの事を案じ、せめて彼等が起きぬよう、そして通さぬようにと血の魔術を編んで攻め込んだ。
 ――鉄帝の冬は厳しい。彼等には彼等の事情があるのだろう。
 けれど生きるためとは言え、それでは仕方がありませんねで済ませては泣きをみるのはいつだって力を持たぬ無辜の民たちだ。しっかりと此処で止め、罪は罪と償わせ、その先に更生の道を示せてこそ、真の優しさだろう。
「それじゃあ、さよなら」
「――待って!」
 確実に止めをと必殺の技を放とうとしたゼファーに、不殺を心がけていた仲間たちから待ったが掛かる。『殺さないように』と言う依頼だったはずだ。彼等はきちんとした世になってから裁かれるべきで、また人よりも鼻の利くウサギたちの前で死臭を撒き散らすのはよくない。
「そうね、そうだったわ!」
 仲間たちの注意に、鈴花も黒の大顎成す一撃からグーパンへと切り替えた。
「たっぷりと反省してね」
 自慢の爪で殺してしまわないように、雷でヴィーザルジャイアントラビットたちを怯えさせないように、気をつけて。一人、また一人と、ならず者たちは『殺さずの一撃』を扱えるイレギュラーズたちによって気絶させられ、夜の冷たい草へと倒れていく。

「ロープ、此方に余っています」
 山小屋にあったロープでしっかりと全員を縛り上げれば、お仕事はおしまい。
 けれど一応、まだ隠れているならず者がいないか見てくるとイグナートとミルヴィ、ゼファーが見回りを買って出てくれる。気を抜いたところを――なんて、ごめんだから。
「おっと、起きちまったか」
 ウサギたちの様子を見に行けば、何羽かがぴょこりと頭を持ち上げていて。寝てていいぞとジェラルドが手を伸ばすのを受け入れ、撫でられたヴィーザルジャイアントラビットがまたぷすぷすと鼻を鳴らして寝始める。数羽しか起きていなかったのは、イレギュラーズたちが出来るだけ離れて、大きな音の出る技を使わずに処理したお陰だ。
「もう大丈夫ですよ」
「怖い人たちはもういないから、安心しておやすみ」
 ジョシュアと鈴花の声に微睡んで、うとうと、ぷすぷす、ウサギたちの頭が仲間の毛皮の上へと落ちていく。きっと夢の中で草を食んでいるのだろう。すぐに下顎がもごもごと動き出すのが愛らしい。
「ボクもいっしょに寝てもいいかなぁ」
 幸せそうに眠るウサギたちを眺めていると、ふあ、と欠伸が溢れて。
 一人零せば、また一人。伝わる欠伸に誰かがくすりと笑って、それじゃあならず者たちの見張りを交代でしながら朝までウサギたちと一休みしましょうか、なんて提案を。
 勿論、異論は上がることもなく。イレギュラーズたちは暫し、温かな体温とふかふかな毛皮を抱いて休息を取るのだった。
 朝日が昇り、村人たちがやってくるその時まで。

成否

成功

MVP

ソア(p3p007025)
猛獣

状態異常

なし

あとがき

ウサギたちを守ってくれてありがとうございました。
村の人々は春を迎えたら毛を刈って、来年もまた冬を越えられることでしょう。

お疲れさまでした、イレギュラーズ。

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