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シナリオ詳細

海洋海苔弁のプロフェッショナル

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●プロはいつでも本気

 ――海苔弁。

 それは炊いた白米の上に海苔という加工海藻を敷いた弁当。
 時にだし汁を吸わせた鰹節や昆布を挟み込み、魚のフライや卵焼き、ちくわの天ぷらなどをのせることがある。
 特に美味で知られるのはネオフロンティア海洋王国の主立った港で販売される海洋海苔弁当である。
 正しくは『サケちゃんマークの海洋海苔弁』。
 あまりのウマさに類似品があちこちで出回るほどで、昨今本物を見かけることは少なくなった。
 だが、本物は実在する!

「今日も、一日……」
 麦わら帽子に白いタンクトップ。
 白い髪を後ろにまとめた美女が、虫取り網を手に崖の上へと立った。
 眼下に広がる隠れビーチ。
 ひとけのない波打ち際にぴちぴちはねるは、海苔弁であった!
 そう。
 皆は知らないかもしれないが、あの竹で出来たかのような箱は殻であり、白米は肉であり、海苔は柔らかい腹部の皮なのだ!
 『リー』『ノリー』と仲むつまじくきゃっきゃする野生の海苔弁たち。
 美女――プロ海苔弁ハンター、ノリコ・ヒダカヤは崖を走って跳躍した。
「海苔弁タイムよ!」

 が、跳躍の寸前に小石に躓き、着地をミスって海辺の岩に頭からいった。
 全治一週間であった。

●海苔弁ってなんであんなに美味しいんだろ
「のりべんおいしいのです。うまうま、おいしいのです」
 『新米情報屋』ユリーカ・ユリカ(p3n000003)が人生の幸せを詰め込んだみたいな顔をして海苔弁をぱくぱくしていた。
 ここは海洋、大きな港。
 港に行くと船旅でお腹をすかせないようにとお弁当屋さんがあるもので、どこにいっても大体は海苔弁が置いてある。それもところによっては『海洋海苔弁』とあって、海料理自慢の海洋が誇るコスパがよくて美味い弁当として知られるのだ。
 だがそれにも……更に上があるという。
「炊いたご飯に干した海苔。これもとっても美味しいけど……上には上がいるのです。カニカマのような加工品じゃない。天然本物の海苔弁……その収穫作業が、依頼されたのです!」

 海洋でもかわった食材がとれることで有名なバスタービーチ。
 海水浴にはまるで適さない場所だが、食材集めにはとても重宝するのだ。
 とくに今の、ごく短い季節には『海苔弁』という生物が上陸し、暫く貝殻などのカルシウムを摂取してから海へ戻るという。
「この海苔弁を収穫するのです! 人間に敵対的な生物なので戦闘は発生するのですが……みんなで協力すればきっと大丈夫なのです!」

GMコメント

 天然本物の海苔弁は海でとれる。
 そう、これは海洋の常識。
 ウォーカーの皆さんが海苔弁は弁当の一種で白米がどうとか言ったなら、『天然物食べたことないのね……』とカニカマしか食べたことないひとみたいな目で見ると混沌を生きてる感じがしてお勧めです。
 さあ思い出すのです。幼い頃たべたごちそうの中に天然海苔弁があった記憶を。水族館でのり弁を見た思い出を。

●天然海苔弁
 高級品かつ鮮度が命の食材。
 海洋でも結構な高級品で、販売されてもすぐに売り切れちゃうといいいます。
 獲得方法はシンプルで、一年のごくわずかな時期に海岸にあがる海苔弁と戦い、倒すというものです。
 海苔弁には外傷を一切のこさないという特殊な免疫構造があり、地面に落ちてても綺麗なままだし焼いても斬っても凍らせても普通に暖かい海苔弁としてドロップします。

 海苔弁の攻撃方法も実にシンプル。
 のり弁の大きさによって違いますが
 ノーマルなやつは『体当たり』
 コンパクトなスピードタイプは『高速体当たり』
 大盛りなやつは『決死の体当たり』
 となっております。
 海苔弁は魔力噴射で短時間なら飛行できるという特徴も持っているので、戦闘するときは大体宙に浮いてる海苔弁と殴り合うことになるでしょう。

●戦闘後のオマケ
 なお、沢山ゲットできたら好きな海苔弁を一個だけ食べていいそうです。
 海苔弁の思い出をもういちど語りながら、仲間とお弁当タイムを楽しみましょう。

【アドリブ度】
 ロールプレイをよりお楽しみいただくため、リプレイにはキャラクターのアドリブ描写を用いることがございます。
 プレイングやステータスシートに『アドリブ歓迎』『アドリブなし』といった形でお書きくだされば、度合いに応じて対応いたします。ぜひぜひご利用くださいませ。

  • 海洋海苔弁のプロフェッショナル完了
  • GM名黒筆墨汁
  • 種別通常
  • 難易度NORMAL
  • 冒険終了日時2018年09月05日 20時50分
  • 参加人数8/8人
  • 相談7日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)
騎兵隊一番翼
十夜 縁(p3p000099)
幻蒼海龍
フェスタ・カーニバル(p3p000545)
エブリデイ・フェスティバル
モモカ・モカ(p3p000727)
ブーストナックル
マルベート・トゥールーズ(p3p000736)
饗宴の悪魔
ヨハン=レーム(p3p001117)
おチビの理解者
マリナ(p3p003552)
マリンエクスプローラー
フォーガ・ブロッサム(p3p005334)
再咲の

リプレイ

●海苔弁の味を思い出す
「嗚呼、なんということでしょうか……!」
 崖の上、祈るように組んだ手を空に翳す『再咲の』フォーガ・ブロッサム(p3p005334)。
「ここ海洋に来る度、決して短くない行列を並んで買い付けるあの弁当が……。まさか、まさか模造品だったなんて……!」
 でろんと前屈みにでろる『マリンエクスプローラー』マリナ(p3p003552)。
「海苔弁が海で泳いでるんだぞってじっちゃんに言われた時はさすがに耄碌したかと思ったものですが……」
 フォーガは顔を下ろし、マリナは顔を上げ、共に海岸を見た。
「本物がここにあったなんて!」
「そのままの姿で泳いでるじゃねーですか」
 ふうと額をぬぐうマリナ。
「いやはや海は広いですね。刺し身がそのまま泳いでる海もいずれ見つかるかもしれねーですね」
 春になると丘で空飛ぶワタリオサシミ漁が行なわれることを、マリナは知らない。ちなみに夏場はモドリオサシミが海にかえるさまが海洋で観測できるそうな。
 そんな海洋の流通に詳しい『放浪カラス』レイヴン・ミスト・ポルードイ(p3p000066)は、昔を懐かしむように唸った。
「当たり前のように卓に並んでいた海苔弁を自分で狩猟することになるとはね! 否が応でも海洋の実家を思い出しますとも。遠目に見れば愛嬌もある見てくれだけど、これも海洋の民のため……」
 グッと拳を握るレイヴン。
 『本心は水の底』十夜 縁(p3p000099)は穏やかな顔で彼らを眺めていた。
「そうか、もう海苔弁のやつらが上がってくる時期だったか。海洋歴イコール年齢のおっさんでも、お目にかかるのはこれが初めてだからなぁ……まさか、生きてる間にありつけるとは思ってなかったぜ。ローレット様様だ」
 昨今グローバルになってネオフロンティア進出も激しいローレットである。海洋出身者にとってすら物珍しい依頼がころころと舞い込んでいた。これもまた、その一つである。
「海洋といったらやっぱり海苔弁当のイメージがありますよね」
 『チラ見せプリンスメイド』ヨハン=レーム(p3p001117)がるんるん気分で剣をといでいる。
 ふと見れば、仲間たちが『なにこれ』って目で海苔弁を見ているのが分かる。
「他の世界には海苔弁が生息してないんですかね。エビやタコをゲテモノだっていう人もいるくらいですから」
 食文化も色々ですねーとのどかなことをいうヨハン。
「海洋の生きてるお弁当……ウワサには聞いてたけどほんとにいたなんてな」
 『のうきんむすめ』モモカ・モカ(p3p000727)がなにこれ目線でのり弁がぴちぴちしてる光景を眺めている。
「噂にだって聞いたことないよー。あの姿のまま生きてるの? すごい、ね? ホント、ビックリがつきない世界だよー」
 『エブリデイ・フェスティバル』フェスタ・カーニバル(p3p000545)もほうほうと手を額に翳して眺めている。
 二人の間をスッと割るように、『饗宴の悪魔』マルベート・トゥールーズ(p3p000736)が身を乗り出した。
「生きた海苔弁当? 想像した事すらない生き物だけど、ユリーカの顔を見る限りはとても美味しそうだったね。どうやって生きてるのかは気になる所だけど、でも、まあ、きっと些細な事だ」
 マルベートは地面に突き立てていた巨大なフォークを引き抜いて、くるくると回し始めた。
「味さえ良ければ、ね!」
 跳躍し、コウモリめいた翼を広げるマルベート。
 仲間たちも次々と崖から跳躍し、海苔弁の上陸した海岸へと飛び出していく。
 海苔弁ハントの、始まりである!

●人類VS海苔弁
 野生の海苔弁は夏の終わり産卵のために海岸へあがると言われ、産卵を終えた海苔弁を狩ることは旬の食材を獲得するという意味でも、生命のサイクルをたどるという意味でも善き行ないとされていた。この島に伝わる教えのひとつである。
 生き、子を産み、次世代へと託した海苔弁が置いて朽ちることをよしとせず、できるかぎり美味く喰うことこそ生命への愛であると。
「ひゃっはー、海苔弁狩りだーっ」
 ンなこと考えてないかもしれないマリナ。
 崖からジャンプした勢いのままマジックアサルトライフルをフルオートモードに設定すると、地面近くをただよう海苔弁たちめがけて薙ぎ払うような射撃を振らせた。
 魔術弾の雨にぴちぴちはねる海苔弁たち。
 マリナと同時に着地したモモカは両足と拳で落下衝撃を受け止め、周囲に砂を激しく散らした。
 それを戦闘の意志ありとみなした海苔弁たちが威嚇のためにぶわりと浮き上がり、ものすごい勢いで突っ込んでくる。
 たかが海苔弁と侮るなかれ。プラスチック製弁当箱にも似た外殻は見た目以上に硬く鋭く、角っこにぶつかると当たり所によっては悶絶することもあるというのだ。『海苔弁に小指をぶつける』とは島につたわる慣用句!
「うりゃー!」
 モモカは顔やお腹にばしばしあたる海苔弁アタックを両足ふんばりで耐えると、どっかメカメカしい拳をドカドカ眼前い打ち込んだ。
 スピードタイプの小盛海苔弁は風を切るがごとく走るが、真正面から来るのであれば手数で返せる。
「うりゃりゃりゃー!」
 モモカは腕が何本にも見えるくらいめちゃくちゃたくさんパンチしまくって海苔弁を殴り飛ばした。
 ピャーとかいいながらひっくり返り、地面に落ちるのり弁たち。どういう防衛本能なのか透明なフィルタに包まれ砂汚れひとつつかないようだ。
 それを踏んじゃわないようにして、フェスタは海苔弁の群れの中へあえて飛び込んだ。
 両腕に装備した盾をナックルモードに変形。身を丸くした特殊な着地姿勢で砂地へ激突したフェスタは、舞い上がる砂煙の中できらりと目を光らせた。
「私は、キミ達を、食べたい!」
 これが名乗り口上の使用シーンだって言ってもいい?
 ピキーとか言いながら次々に突っ込んでくる海苔弁たち。
 右から左からとめどなく叩き込まれる弁当箱角っこアタックに振り回されるフェスタだが、よろめく瞬間にレバーを握り込み盾の端から刃を展開。
 飛び込んでくる海苔弁にカウンターパンチを叩き込んだ。
「僕だって! 負けませんよー!」
 ヨハンは空中で身を小さくさせながら回転すると、尻尾(?)のコンセントから流れた電流を自らに纏い始めた。
 着地。と同時に放電。
 肉体の柔軟さを促す電撃のフィールドを作りながら、飛び込んでくる海苔弁をかろやかに回避。
 隙を突くように突っ込んできた海苔弁を片手でキャッチ。もう一方から突っ込んできた海苔弁の空いた手でキャッチ。
 正面から飛び込んできた大盛り海苔弁を、軽やかな飛び回し蹴りで迎撃した。
 蹴り飛ばされた大盛り海苔弁はしかし、豊富な体力も相まって空中で留まった。
 捨て身のタックルを仕掛けるべく勢いをつけた、その瞬間。
 宙より舞い降りたレイヴンが地面へ向けてパンチを打ち下ろすモーションをした。
 手の届く距離ではない。が、崖から飛び出た土の拳が連動するように大盛り海苔弁を殴り落とす。
 すたんと軽やかに着地したレイヴンは、髪をかきあげながら周囲に魔力水を振りまいた。
 鷹や隼を模した召喚魔力体が頭上を旋回し始める。
「さて、異界の力……この期に確かめておくとしよう」
 死角から突っ込む大盛り海苔弁。
 が、それを阻むように着地した縁が流れる水のように構えた。
「大盛りか……こんな高級品、次いつ食えるかわからねぇんだ。せっかくなら皆腹いっぱい味わいたいだろ」
 大盛り海苔弁の角っこ突撃を手の甲から指までに丸く流すようにして払うと、残った相手の勢いをそのまま利用するようにキャッチアンドシュート。
 同じく飛び込んできた別の海苔弁と衝突させた。
「本物を食らうまで帰れませんっ! フォーガの民は狩猟者にして補食者、必ずや本物の海苔弁を噛み締めてみせましょう!」
 横を駆け抜けていくフォーガ。
 海苔弁の群れへ拳銃を乱射しながら腰の剣に手をかけた。
 射撃をかわすように散った海苔弁のうちひとつが、銃弾をかわしながらフォーガの顔面めがけて飛び込んでくる。
 走る足をぴたりと止め、間合いをこちらのものにすると、剣のレバーを握り込みながら逆手抜刀。破裂の勢いでで高速抜刀された剣が眼前の海苔弁を打ち返した。
 くるりと腹の見えた海苔弁。腕を交差するようにして素早く銃口を押し当てるフォーガ。引き金を引きまくる。
 あちこちに落ちていく海苔弁たち。
 マルベートは上唇を小さく舐めると、群れの中へと飛び込んだ。
「あぁ…想像した事すらない生き物を食べる事が出来るなんて、今日は本当に幸せな日だ。心が躍るよ。愛すべき弁当達を沢山狩ろうじゃないか!未知を既知へと変える素晴らしき宴の為に!」
 群れを抜けて上昇。追いすがる無数の海苔弁。空中で上下反転ターンをかけるマルベートが太陽と重なったその瞬間。
 彼女の握った巨大ディナーナイフが海苔弁たちを次々と打ち落としていった。

 レイヴンの放った魔術体が次々と海苔弁に襲いかかる。
 その片手間に呼び出した別の召喚体がカモメの形をなし、傷ついた緑から傷みや疲れを取り去っていく。
「ちょっと、ごちそうにありつく前に倒れないでよね」
「悪ぃな。動き回ってるとだいぶキツくてよ……歳かねえ」
 額の汗をぬぐう縁。
 そう言いながらも、背後から迫る猛スピードの海苔弁に高速ターンパンチを叩き込んだ。
 鉄板を打ち抜くようなズパンという音と共に落ちていく海苔弁。めっちゃくちゃになっててもおかしくないのに、どういう防衛本能か美味しそうな弁当のままであった。
「いった、いったい! 痛たたたた!」
 盾をシールドモードにしたフェスタが大量にぽこぽこぶつかってくる海苔弁に耐えていた。
「いくらなんでも来すぎ来すぎ! だ、誰か変わってー!」
「いいよっ、交代!」
 フェスタのまえにすたんと着地したマルベートは、巨大フォークを地面に突き立てて死霊術を行使した。
 すると砂地をわるかのように大量の空箱海苔弁が飛び出し、マルベートの眼前をぴったり壁のごとく埋めた。
 ぼこぼこと激突して壁を破ろうとするのり弁たち。
 そこへ、フェスタはナックルモードにした盾を両手組み合わせるようにして突撃。次々とたたきつぶしていく(潰れてないけど)。
 一方で、ヨハンは足下に寝かせていた大盾を踏むことで持ち上げ、正面から来る大量の大盛り角っこアタックを受け止めていく。
 一個、二個、三個、四個。次々と重なっていく海苔弁。そう、海苔弁の外角はこのようにいくつも積み上げることに適しており、いくつも合わさった海苔弁は巨大な塊となって襲いかかるのだ。群れで生きる動物の知恵である。
「なんのーっ!」
 ヨハンはメイド服の裾が靡くほどの勢いで放電すると、全身をみっしりと硬くした。
 真上から押しつぶさんばかりにぶつかってくる海苔弁を、両手でがっしりと受け止める。
 重量を受け止める。
 それもすべては、勝利のために。
「いまです!」
 防御は最大の攻撃。
 フォーガとマリナが同時に岩陰から飛び出し、それぞれの銃を構えた。
 双方それぞれ、まったく異なる声とトーンで呟いた。
「「よりどりみどり」」
 一斉射撃。
 蜂の巣もかくやと穴だらけになった海苔弁の巨塊が、ぱんとはじけるように散らばっていった。
「いまだー! つみこめー!」
 モモカが片っ端から拾っては積み上げ拾っては積み上げ、時にはキャッチして積み上げ、なんかロバちゃんに繋がれたでっかい荷車にどすどす積み込んでいった。
「山口さん手伝――あっ、いないのか。でもなんだかそばにいるきがするー」
「言ってないで詰め込め詰め込めー!」
 こうしてイレギュラーズたちは、たくさんののり弁を獲得して海岸を後にしたのだった。

●海苔弁はうまい
 あれだけ斬ったり撃ったり殴ったりしてきた海苔弁だけれど、どれひとつとして傷が付いていなかった。
 かと思えばぱこっと簡単にフィルタとフタ(?)が外れる。
 一説によれば生命としての役目を終えるにあたって、海苔弁がより美味しく食べられることを善しとしたがためこのような能力が備わったとされている。
 島のプロ海苔弁ハンターたちもその説を信じ、海苔弁が住みよい海を守る活動をずっと昔から続けていた。
 そのせいだろう。
 崖から眺める海は美しいエメラルドグリーンで、透き通るような海苔弁礁ができあがっていた。
 海苔弁礁とは死んだ海苔弁の外殻だけが海中に沈み他の成分とまざり固まった末、海苔弁のえさとなる小魚などのすみかとなったというものである。
 幾何学模様にも見えるその風景はどこまでも続き、水面が美しく太陽光を乱反射していた。
 その光景を眺めながら、ヨハンとモモカは手を合わせた。
「それでは早速」
「海の命に感謝を込めて」
「「いただきまんじ!」」
 力を込めて割り箸をわると、二人は海苔弁に箸をつけた。
 可食部位は肉と皮。模造品の海苔弁のほうがポピュラーであるためにその素材名で呼ばれるが、いわゆる海苔と白米だ。
 箸でさしてみれば海苔は柔らかくもやや強く、ぱりっと一口大に避けてくれる。
 箱(外殻)の内側まで箸が通るのは一瞬。すくいあげてみればだし汁でよく煮た鰹節のようなものが海苔と白米の間に見えるだろう。
 それを頬張った時の、ほくほくとした熱さ。生命の躍動を感じる、どこか優しい熱さ。
 そしてすぐに分かる味醂と砂糖めいた甘みと海苔の風味。わずかな塩っ気。
 やわらかくも確かな歯ごたえを感じさせる白米と鰹節と海苔の層構造。
 そして鰹だしと海苔を深く煮詰めたような香りが鼻から抜けるのだ。
「ふはぁ~……おいしい……」
 うっとりするフェスタ。
 レイヴンと緑も、そのシンプルながらも美しい味わいを噛みしめていた。
「いやぁ、ギルドに所属してからずっと幻想だったけど久々に食べましたとも」
「あぁ、絶品だ。もうそこらの海苔弁じゃ満足できなくなっちまうな、こいつは」
 海苔弁は貝に分類といわれ、産卵期にあたる海苔弁は最高潮のうまみを含んでいるという。
「今まで食べていた海苔弁とは味わいの深さがまるで違う! 混沌の海には、これほどの美食がこうも群れを成して泳いでいるということか!!」
 フォーガが『同胞にも伝えたかった』となにかしんみりとするのも無理からぬことだ。
 鮮度最高かつ旬の海苔弁を絶景の中で食べることほど贅沢なことはないと言われるほどなのだ。
 マルベートはこのために用意したワイン(味が分からないので一旦ホタテ貝に合わせた)と共に、海苔弁の味わいにひたっていた。
「沢山苦労したぶん、ご飯が美味しいね」
「ではここでひとつ」
 マリナが懐からピッと明太子マヨネーズのミニボトルを取り出した。
 仲間たちの目がカッと光る。
「ぜったいおいしいやつです」

 こうしてイレギュラーズたちは海苔弁を満喫したのだった。
 来年にもまた、海苔弁の季節がやってくるだろう。プロ海苔弁ハンターたちの戦いと海苔弁の営みは、この先も続いていくのだ。ずっとずっと。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 だめだおなかすいた。しぬ。

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