PandoraPartyProject

シナリオ詳細

キノコのママ!!

完了

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

オープニング

●キノコの産声
 叫び声が聞こえた時には遅い。悠長に叫んでいる時は断末魔のそれに近いと思っていいのだ。
「なぜ駆除班に女性を同行させてしまったんだ!!」
「申し訳ありませんでした!」
「しかも貴族ご令嬢なんだろうあの子!! 私の首飛んじゃうよ!? ねえ、物理的に飛んじゃうよ!??」
「落ち着いて下さい隊長!!」
「いやああああ! 誰か、誰かとってよぉ、こんなのいやぁあ!!」
 まだ年若い女性の悲鳴がとある山中に木霊する。『駆除班』を名乗る男達の隊長格の男は直ぐに口を塞ぐ事を指示するが、もう遅かった。
 木々の合間を巧みに飛び回り、軽快な動きで近付いて来た “それ” に彼等は瞬く間に取り囲まれてしまう。

「「うわああああ!!」」
 その日、幾つもの悲鳴が重なり、山から犠牲者となった者達が次々に飛び出して来た。
 大量の『キノコ』を生やして、それを大事そうに抱えながら。

●その名は、【ばぶるテングダケ】
 速過ぎる秋の味覚。
 それを『色彩の魔女』プルー・ビビットカラー(p3n000004)は「ライトアプリコットね」と例えたが、イレギュラーズはいずれも首を傾げている。
「少し、斡旋するのも躊躇ってしまうのだけれど……ふふ。杞憂だったみたいね、シャモアな顔ぶれで安心したわ」
 プルーは数枚の紙を交えて語る、今回の依頼の話だ。
 幻想の山岳地帯でも比較的都市部に近い山中で、強い精神作用をもたらす毒キノコが大発生したのだという。
 そこで駆除すべく、領主が隊を派遣したのだが……数の多さに全員返り討ちに遭ってしまったのだ。
 一体、そのキノコとはどういった物なのか?
 その名は『バブルテングダケ』。群生地での外観からそう呼ばれるようになった毒キノコだが、実際はそんな可愛い物ではない。
 具体的には自分から走って来る。それも素早い。あと至近距離で茸傘の下にある『顔』を見てしまうと耐性の無い者は瞬く間に虜になる。つまり可愛い、円らな瞳がチャームポイントだと犠牲者は語る。
 これに捕まってしまうと瞬時に腹部に根を伸ばし一時的に寄生……暫くすると大量の胞子を撒いてから枯れて剥がれるのだ。
 剥がれる、と聞くと別に無害な様に思えるが、そもそも寄生して来るだけでも鳥肌モノだ。何より厄介なのは……

「このキノコに寄生されて時間が経つとね、自身を守らせるために宿主の精神に暗示を働きかけて『お腹にいるのは自分の子』だと思い込ませるのよ」

 余りの衝撃と恐ろしさにその場から逃げ出すイレギュラーズが後を絶たなかった。

GMコメント

 31度……涼しくなってきましたね。ちくわブレードです、宜しくお願いします。

 以下情報

●依頼内容
 山に発生した毒キノコを全て破壊、燃やす

●バブルテングダケ
 山中を駆け回る小さな妖精……なんて言われていたが、寄生された者の悲惨な姿にドン引きしてモンスターの一種として登録されてしまった。
 毒キノコ達はそれぞれ「おぎゃー!」とか「ばぁぶー!」という鳴き声を出しながら大人の膝までしかない小駆を活かして、軽快に、素早く迫って来て飛び付いて来ます。
 飛び付かれて直ぐに引き離す事が出来ないと、たちまちに下腹部に溶け込むように根を一気に張り巡らせて寄生して来るので注意しましょう。
 寄生されてしまうと2ターン後に「この子は私の子よぉ!!」と、たとえ男性であっても例外なく溢れ出る母性に身を任せてキノコを守るようになってしまいます。
 これは自身に寄生していないキノコに対してもそうです。
 なので、寄生されたら直ぐに火を放つか。……火を放ちましょう、多少の火傷を取って名誉を守るか、名誉を捨てて毒キノコのママになるかは皆様次第でしょう。
 最終的に全て駆除すれば問題ないのです。


 判定は毒キノコ除去に関する内容点を一人最大10点=%として判定し、合計点に対する評価が最大40点=%となります。
 キノコの弱点が【火炎】である事や、寄生したり駆け寄って来る事、その他の情報を踏まえて皆様のプレイングがなるべく埋まっている事がポイントとなります。

 以上

 皆様のご参加をお待ちしています。
 

  • キノコのママ!!完了
  • GM名ちくわブレード(休止中)
  • 種別通常
  • 難易度EASY
  • 冒険終了日時2018年09月08日 21時30分
  • 参加人数8/8人
  • 相談5日
  • 参加費100RC

参加者 : 8 人

冒険が終了しました! リプレイ結果をご覧ください。

参加者一覧(8人)

ロジャーズ=L=ナイア(p3p000569)
同一奇譚
メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)
悦楽種
カイト・シャルラハ(p3p000684)
風読禽
マリア(p3p001199)
悪辣なる癒し手
カノープス(p3p001898)
黒鉄の意志
クーア・M・サキュバス(p3p003529)
雨宿りのこげねこメイド
村昌 美弥妃(p3p005148)
不運な幸運
エリシア(p3p006057)
鳳凰

リプレイ

●スクリームファイア
 湿った空気に不快さは無く、寧ろその逆。微かに流れて来る風は夏季が過ぎる際の冷気を含んでいた。
 山の斜面を歩き、薪となる枝を拾い上げている『不運な幸運』村昌 美弥妃(p3p005148)は軽く背筋を伸ばして吐息を漏らす。
「時期的にはちょっと早めなキノコ狩りデスねぇ、
キノコなのにご飯にできないのがとても残念デスけれどぉ……まぁ、これはこれで楽しみマスよぉ♪」
 彼女は辺りを見回してにっこりとする。
 その笑顔を目にして軽く頷いた『黒鉄の意志』カノープス(p3p001898)は強硬な鎧を鳴らし、大量の薪……というより丸太を数本担いでいた。
「茸が真に護るべき存在ならば、母となるも辞さぬ構えだが、そうではあるまい。
 ならば、この身を焼こうとも茸を焼き尽くす迄」
 イレギュラーズは今回。バブルテングダケという毒茸を収穫及び破壊、及び焼き払う為に現地の山へ来ていた。
 その特性は凶悪にして恐怖の寄生型植物。しかも『ママ』にされるという、まさにホラー。これはもう焼き払って社会貢献するしかないだろう。
「寄生するキノコとはまた面妖な事だ……で、全部焼いてしまっても構わんのだろう?」
 朱い髪を揺らす度に毛先を七色に輝かせ『鳳凰』エリシア(p3p006057)は傾斜を登っ──
「合法的に山狩りでキノコをファイアー出来ると聞いて来たのです!!!」
「そうそう、山狩……いや駄目だよ!? なんかそのニュアンスおかしくね? イメージバックで山燃えてない!?」
 ───て来ている後ろから聞こえて来る盛大な放火予告。
 『くれなゐにそらくくるねこ』クーア・ミューゼル(p3p003529)の勢いに負けず『大空緋翔』カイト・シャルラハ(p3p000684)はツッコミ消火栓を放出する。
「……え? 山ごとは焼いちゃダメなのです? そんなあ……」
「本当に燃やすつもりだったのかよ!?」
 シュンとするクーア。
 そんな事をしながらも薪を拾い、彼等は山の中腹手前へ向かっていた。
 これから数時間の風向きや天候をカイトの翼が読み、最も火を焚くに適した位置を予測した結果がその辺りなのだという。
 それほど大きい山ではない。暫く登って行けば彼等は直にカイトが読んだ位置へ辿り着いた。
 そこは、丁度良い平坦な足場の空間が自然に作られていた。
 丁度良い決戦場を見つけたカイト達は直ぐに薪を組み始める。既に残された時間は少ない、こういった準備も含めて彼等の気配が流れぬよう風を読んでも『奴等』は着実に迫って来ていたのだから。
 カノープスが丸太を人が飛び込める規模で組み、他の薪を拾い上げて来ていた者達はその上へ組みつつ中に葉をどっさり詰め込んで行く。
 そんな彼等の後ろで何かを見つけた長身の影が動き。揺らぐ。
「茸狩りだ。偶には娯楽も悪くない。何。此度の茸は娯楽よりも喜劇寄りだと。
 ならば物語の時間だ。我等『物語』が貴様等全員を抱腹絶倒に陥れて魅せよう。さあ。苗床は此処だ。餓鬼ども。
 我等『肉』の中で果てるが好い。地獄の底で炎が狂う。まあ。狂うのは我等『物語』のキャラクターだがな!」
 高らかに布告し、裂けんばかりに笑う。両手を広げて迎える『復讐劇』オラボナ=ヒールド=テゴス(p3p000569)。
 直後、山のあちこちから開戦の時を告げる鳴き声が鳴り響く。
 オラボナの言う通り、これから始まるのは熾烈な喜劇だ。

「ばぶるてんぐ……泡って事かなぁ、あれ? オラボナはどこだ」
「此処だが」
「う、うわああああ!? もう寄生されてるって、ぎゃぁああっ!?」
 到着して一分。いきなり燃やされる者発生。

●ンママー!!!
 風が当たらないという事は、普段からその場所には菌類はそれほど生えていないとも言える。
 無暗に入山して探索するよりも効果はあったのだろう。次々と襲いに、走り回る毒茸の数は多くない。
「「ばぁぶぅーー!!」」
 木々を軽快に飛び回り、飛び移り、縫う様に狡猾な動きで翻弄しつつ迫る毒茸。その名は『バブルテングダケ』、小さくも一見愛らしく思えて来る傘部分は密集していると泡の塊の様に見えた事から名付けられていた。
 そんな事はきっとどうでもいいだろう。実際に鳴き声を聞いてしまえば絶対にそれは建前だと分かるのだから。
「我が身を母としたい者は、掛かって来い!」
「我等『物語』が抑制する。遠慮なく燃やし尽くせ! Nyahahahahahahaha!!!」
 焚火を挟んで双璧を為すのは彼等二人、オラボナとカノープスだ。
 次々と木々から飛び出して駆けて来る茸を一身に受けては仲間から引き剥がし、次いでは溢れんばかりの火炎に身を包んでいた。
「既に寄生された人は、遠慮なく焼くのです! ……もちろん可能な限りキノコだけを狙って」
「ほんとうに……?」
「本当なのです! ほら!」
「グゥ……! 私の事は気にせずやってくれ。頼んだぞ」
「六匹くらいひっついてるから仕方ないんだろうけど火力強! 一瞬カノープス唸ってたよ!? メイドの嗜み強くない!?」
 クーアがぽいっと放火した瞬間に火柱に包まれるカノープス。火焔を纏った翼を羽ばたかせ、頭上から茸を吹き散らしていたカイトが叫ぶがこれも仕方ない。囮となった者が一身に浴びた茸達を焼き払うならば数に比例して求められる火力は増すのだから。
 という最高の口実を得たクーアの焔は冴え渡っていた。迷いの無いメイドの焔は強いのです。火焔瓶まで持ち出して迎撃に当たる彼女はとても頼もしい姿に映るだろう。
 一方で悲鳴が上がる。
「な、中々に強烈なキノコなんですのねー……ってオラボナ様ー……!?」
「ばぶー」
「だーぁー」
「我等『物語』に魅せられ母とする者共。温いぞ。『物語』を我先に蹂躙せんとする仔等よ。我等『物語』は此処だ、集……
「「ま゛ぁ ー ま゛ぁ ー」」
 開戦間も無く忙しくなってきていたのは『悪辣なる癒し手』マリア(p3p001199)だった。
 天を仰ぎ見ながら一身に受け止めているオラボナが凄まじい造形を生み出していた。無数の茸に張り付かれ、足元からよじ登られ、服の中へ入り込もうとされて押し倒されて埋もれていたのだ。
 妙に集まっているのは、まさか何らかの適正でもあったというのか───或いは母体に似せた腹部の特徴を勘違いした個体が集まったのか。
「お助けしマスね」
 強烈な鳴き声とおぞましい光景に怯むマリアは、直後に美弥妃の放った焔式で火達磨になったオラボナを癒そうと努める。
「もしかしてワタシを庇ってるのもあったり? ……気のせいデスかねー?」
 例えばついさっき、木の上からムササビ飛びで襲いかかって来た茸が美弥妃に一直線に飛んで来て軌道を曲げたり。思い起こせば数秒前、地面から土遁の術で襲って来た茸に足元からよじ登られかけて急にオラボナへ吹っ飛んだり。
 心当たりがあるようで、逆に考えればオラボナに吸い込まれてる現象が原因なのではとも思ったり。
「Nyahahahaha!!!」
「寄生されたらママ化、面白そうだとは思いますけれどワタシはまだごめんデースぅ」
(……このお二人に吸い寄せられてるのでしょうかー……)
 傍から見ていたマリアにとっては茸にやけに狙われているのも、その軌道を曲げるレベルの魅力を発揮しているのも、どちらでも変わらぬ程度の怪現象が起きているのだった。

 一方で、もう一人の囮役である『蕩幻卿』メルトアイ・ザ・ベルベットムーン(p3p000674)もまた辛うじて茸の侵攻をギリギリ受け止めていた。
「『キノコ』の『ママ』になってしまうだなんて……まあまあ、なんて卑猥な響きですかしら♪」
 寧ろ彼女の背から伸びている触手が時折ビクついているのもあって、一瞬親玉にすら見えるレベルである。だが彼女は的確に自身を狙って来た茸達を正確に火花で迎え撃ち、着実に燃やして行った。
 三体、四体と彼女の足元には焦げた茸が香ばしい煙を出して転がって行く。
 その最中、不意に彼女の前方から傘を振り乱して駆けて来るキノコボーイが三匹現れる。
「「ばぶぁー!」」
「なっ、ひゃぁんっ! そこはぁ!」
 鳴き声を同時に挙げた茸達は一列に並んだかと思えば、恐るべき三連アタックで先頭の仲間を犠牲にした上でメルトアイに二匹が飛び掛かってしまう。
「メルトアイ! 待ってろ今そっちに……あっ」
 直ぐに気付いたカイトが少し目を逸らしつつ翼を広げ、駆け付けようとするが、不意に顔面に茸が「ひしっ」と張り付いた。
 刹那……彼の脳内に謎の声が響き渡る……【食材適性を持つ汝から生えた茸はさぞ美味となるだろう】……と。
 数瞬の空白、駆け巡る走馬燈。クチバシをもぞぞっと蠢く土の香り漂う山の幸。文字通りの鳥肌を立てて彼は叫んだ。
「うぉおおおおおお、KIAIで我慢だあああああ!!!!!」
 一瞬上昇した後、一気にキャンプファイヤー目掛け垂直落下を顔面から繰り出すカイト。その直後の姿は、かつて『鳳凰』と呼ばれていたエリシアが「……懐かしい」と呟くほどに神々しかったという。
 ダミ声で叫びのたうち回るカイトへ駆け寄る美弥妃。オラボナを治癒するマリア。カノープスがクーアを庇い、クーアが割と手加減しつつ燃やし。メルトアイはどうにか振りほどこうとして触手同士で絡み合うのだった。

 お気付きだろうか。この瞬間、隙を突かれたある人物が最初に寄生されようとしていた事に。
「ばぁぶぅぅぅ」
「おぎゃー!」
「オフクロ!」
「くっ……我が、このような……!」
 カノープスを飛び越えてしまった茸達が不意を突いたエリシアの体に纏わりつき、恐るべき速度で下腹部に根がミシリ、ミシリ、と張り巡らされてしまう。
 まさか、と思い視線を下げて茸の円らな瞳を見てしまった時には既に遅く。直後に彼女は揺らぐ意識の底から湧き上がって来た衝動のままに腹部を抱いてその場に居たクーアの前へと飛び出してしまった。

●ファイナルママンイレギュラーズ
 猛然と燃え上がるエリシア、事情を知らぬキャンプファイヤーから生還したカイトにはそれはもう完全に──
「や、やっちまったのか……」
「ちがうのです!? エリシアさんが寄生されて他の茸を庇ったのです!」
「……マジか、ってうしろー!!」
「!?」
 倒れるエリシアをマリアの方へ引き摺るカイトがクーアの方を見た瞬間、庇われた事で燃やせなかったカノープスの鎧に密着していた茸達が内部へ入り込もうとしていた。
 ぎょっとしたクーアが即座に火炎で彼を包む。しかしカノープスは……
「オオオオオォォォー!!」
 鎧の上から腹部を手で守りながら仁王立ちしてクーアの放火を受け止めた彼は、それだけでは足りぬと判断し焚火へとダイブする。鎧越しとは言え、最早中は凄まじい高温と化している。ジュウゥと鳴る音にカイトが目を見開いた。
「おのれ……許さん! 一匹残らず灰にしてくれる!!」
 その横ではマリアに癒され起き上がったエリシアが焔式を撃って茸を燃やし、更に踏みつけ焚火へ投げ込んでいく。
 ここまでで既に数十匹の茸を燃やしたイレギュラーズ。だが本当の恐ろしさはここからだった。
 バブルテングダケの真に恐ろしい点は、仲間が一度寄生されてその処理に追われた場合連鎖的に襲撃への対処が遅れて次々と寄生される被害が広がる事である。

 例えば、先程から茸と格闘していたメルトアイが静かな事に誰も気付かない。なんて状況がその典型であった。
「ああ、いけません。私の子供達が燃えてしまいます。この身で守って差し上げませんと……」
 歩いていたキノコを愛おしそうに抱き上げ、徐に舌を這わせながら腹部を撫でるメルトアイ。
 母性と扇情的な想いが混ざり合う彼女はその場で目も当てられぬ姿で地面に膝を着き、触手を他の茸にも絡ませ抱き締め……
「えいっ」
「!?」
 それだけ掻き集めて乱れていれば囮役としては満点だろう。美弥妃が投げ込んだ炎に巻かれてメルトアイ諸共燃えるのだった。
 上空から俯瞰していたカイトは「地獄だ……」と戦慄する。
 と、フラフラと立ち上がって美弥妃に謝られながら手当てを受け、カイトの視線に気づいたメルトアイはポツリと。
「……別に触手が焼けたからと言いましても、イカっぽい匂いはしませんのよ」
「な、なんの話……!?」
 触手の話である。

「我等『人間』の胎内には愛すべき仔が存在する。
 貴様等が如何に成そうとも『赤子』は守るべきだ。炎など。拳など。我等『母』の肉壁の前では無力だと知るが好い」
「……想像の十倍くらい、その、悲惨というかー……! 目を覆いたい光景ですわねこれはー……!」
 遂に美弥妃の焔式に回す余力が尽きた時。彼女を庇ったオラボナが遂に膝を着き、既に取り付いていた物を引き剥がす前に毒が回り洗脳されてしまう。
 焚火から取り出した火の着いた木を咄嗟に押し付けた美弥妃だったが、オラボナはその身を挺して庇ってしまったのだ。
 蹲り、完全に腹部に癒着した茸傘を撫でて。盲目的とも言える姿が見せるその姿にマリアは普段見る様子から余りにかけ離れていたが故に目を背けた。
 既にオラボナを回復させたばかりという事もある、現状の火力で茸を狙うのは至難だろう。
「ばぁぶー!」
「……!」
 一瞬の油断を突かれたマリアと美弥妃に襲いかかるバブルテングダケ。しかし、茸達は宙を舞っている最中に横合いからの一撃に薙ぎ払われてしまう。
「オラボナはもうだめか! 二人共俺の後ろへ!」
 最早朝からずっとツッコミを続けている気さえするカイトだったが、実は今回のパーティーの中ではマリアに続く被ダメージ最小のトップだった。
 上手く宙をホバー移動し、焚火や仲間の合間を飛び回りながら周囲から襲って来るバブルテングダケを燃やす彼は撃墜率も安定している。さらに言えば彼は前衛でありながらも一度も寄生されなかったのだ。
 成績を字面で後から見るであろう情報屋には分からないだろう。この時のカイトがそれだけ恐怖に悲鳴を上げていたとは。
「ばぁぶー!」
「うおおおお!?」
「だぁ~」
「くっ、またムササビジャンプかよ!」
「マンマー!」
「させるかぁーッ!!」
 全力の回避。回避。回避。防御。回避。防御。もはや何故そんなに避けられるのかと、見た者は問うに違いない。
 その表情は視界にチラつく味方の地獄絵図によって恐怖に引き攣っている、が。それでも彼は諦めない。
 何度でも叩き落として燃やし、貫いて焚火へ突っ込み、受け流して他の茸とぶつけさせる。
 そして自然。カイトの三叉蒼槍の穂先が次に向かうのはオラボナだ。
「今助けるからな、オラボナ……!」
「我等『母』。肉壁が。どれだけの激痛と焦燥に駆られようと、我等『母』は根源的尽きぬ。絶対にだ」
 下腹部を必死に押さえ、護る為に背を向ける。カイトの穂先はオラボナの背中を浅く切り付けるだけだった。
「これはオラボナに寄生した茸が枯れるのを待った方が早そうか……! マリア、一応アイツに治癒を……」
「……可愛い可愛い私の赤ちゃん達ー……ふふ、なんて愛らしいんでしょうー……!」
「いつの間にーー!!?」
「全く、こうも簡単に乗っ取られるものなのか……! 気休めだが我が回復に回ろう」
 イレギュラーズの戦いはまだまだ続くのだった。

●キノコのママたち
 漸く茸の群れを全て撃破、焼却したイレギュラーズは疲労困憊な姿で立っていた。
「……毒も転じれば薬になる、とは言いますけどもー……さて、このキノコは有用でしょうかー……?
 持ち帰って研究する事は出来ないでしょうかー……?」
 黒煙立ち込める中。フラつきながらマリアは煤けた足元に落ちていた茸の残骸を手に乗せ、仲間へと問いかけてみる。
「念の為燃やした方が良いかも知れんぞ」
「そうですのー……残念ですがそうしましょうかー……」
 全ての残骸や胞子、痕跡含めとにかく最後まで彼等は燃やし尽くした上で火を消す。灰も土に埋めれば少なくとも拡散の危険は無い筈である。

 そうして大量の煙が充満していた山を下りた頃、もう夕方になっていた。
 イレギュラーズはそれぞれ町へと帰る為に馬車へと乗り込み、互いに顔を見合わせる。
「……なんか、お袋って、子育てって、大変なんだな…………」
 今日一日とんでもない仲間の姿を目の当たりにしていた。カイトはとてもげっそりした表情で呟くが、もうそれに応える者はいない。
 ただの毒茸の駆除でまさかこれだけ披露するとは想ってもみなかった彼等は皆無言で馬車に揺られているのだった。
 勿論、中々の体験だったと満足していたり、どういった作用で洗脳状態にされるのか気になった者はいるかもしれない。
 そしてその中には。

「我等『物語』の女体化も素敵な嗜好か」
 下腹部をそっと撫で、何処か自嘲気味に三日月を揺らす。
 オラボナはそういう戯れも好いものかと、小さく首を傾げた。

成否

成功

MVP

なし

状態異常

なし

あとがき

 大変お疲れ様でした。依頼は成功となります。
 皆様の活躍により、これ以上の被害は秋の半ばまでは出ないでしょう!

 またの参加をお待ちしております。

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